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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】電解質材料とその調製方法及び使用
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/06 20060101AFI20240416BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240416BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20240416BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240416BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
H01B1/06 A
H01M4/62 Z
H01M4/139
H01M4/13
H01B13/00 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022548855
(86)(22)【出願日】2021-02-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-30
(86)【国際出願番号】 CN2021077549
(87)【国際公開番号】W WO2022052425
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2022-08-10
(31)【優先権主張番号】202010941959.0
(32)【優先日】2020-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522354388
【氏名又は名称】蜂巣能源科技股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100159329
【弁理士】
【氏名又は名称】三縄 隆
(72)【発明者】
【氏名】▲呂▼ 文彬
(72)【発明者】
【氏名】▲デン▼ 素祥
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 少杰
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106785126(CN,A)
【文献】特開2017-183115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/06
H01M 4/62
H01M 4/139
H01M 4/13
H01B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと、コアの外側に被覆されたシェルとを含み、
前記コアは、難燃剤粒子を含み、
前記シェルは、イオン導電性ポリマーを含み、
前記イオン導電性ポリマーは、リチウム塩及びポリマー電解質の組み合わせを含み、
前記難燃剤粒子と前記イオン導電性ポリマーとの間に乳化剤が存在し、前記乳化剤は前記難燃剤粒子の表面に堆積されており
解質材料における難燃剤の質量比は5~20%である、電解質材料。
【請求項2】
前記コアの直径は0.5~10μmであり、及び、前記シェルの厚みは100~500nmであり、
前記難燃剤は、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリブチル、亜リン酸トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)、リン酸トリフェニル、ホスファイト又はホスファゼン系難燃材料のいずれか1種又は少なくとも2種の組み合わせを含む、請求項1に記載の電解質材料。
【請求項3】
前記リチウム塩は前記イオン導電性ポリマー質量の1~20%を占め、及び、前記ポリマー電解質の溶融温度は150~250℃であり、
前記リチウム塩は、過塩素酸リチウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム又はテトラフルオロホウ酸リチウムのいずれか1種又は少なくとも2種の組み合わせを含み、
前記ポリマー電解質は、ポリオキシエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジアクリレート又はポリビニレンカーボネートのいずれか1種又は少なくとも2種の組み合わせを含む、請求項1に記載の電解質材料。
【請求項4】
前記乳化剤は、ポリエチレングリコール、ドデシルスルホン酸ナトリウム、脂肪酸ポリオキシエチレンエーテル、アラビアゴム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、イソステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体、臭化セチルトリメチルアンモニウム、スチレン無水マレイン酸共重合体、非イオン性パラフィンマイクロ乳化剤、カチオン性パラフィンマイクロ乳化剤、アニオン性パラフィン乳化剤、OP-10、OP-15、ペレガル O-10、油中水型廃油乳化剤、油中水型ディーゼル乳化剤又は油中水型動植物油乳化剤のいずれか1種又は少なくとも2種の組み合わせを含む、請求項1に記載の電解質材料。
【請求項5】
請求項1に記載の電解質材料の調製方法であって、難燃剤分散液、ポリマーモノマー、リチウム塩及び開始剤を混合して分散し、混合溶液を得て、撹拌して加熱し、保温反応し、前記電解質材料を得ることを含み、
前記難燃剤分散液、ポリマーモノマー、リチウム塩及び開始剤を混合する前に、前記難燃剤分散液を乳化することをさらに含み、前記乳化する方法は、前記難燃剤分散液に乳化剤溶液を添加して乳化することを含む、調製方法。
【請求項6】
アルゴン雰囲気で行われ、前記分散する温度は80~90℃であり、前記加熱する温度は60~80℃であり、前記保温反応の時間は2~5hであり、
前記調製方法は、還流凝縮機器を使用することをさらに含み、
前記開始剤は、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)又は2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)の少なくとも1つを含む、請求項5に記載の調製方法。
【請求項7】
ポリマーモノマー、リチウム塩及び開始剤の総質量を100%として、前記ポリマーモノマーの質量比は70~90%であり、
ポリマーモノマー、リチウム塩及び開始剤の総質量を100%として、前記リチウム塩の質量比は1~20%であり、
ポリマーモノマー、リチウム塩及び開始剤の総質量を100%として、前記開始剤の質量比は0.1~1%である、請求項5に記載の調製方法。
【請求項8】
前記難燃剤分散液の調製方法は、難燃剤を分散剤と混合して分散し、前記難燃剤分散液を得ることを含み、
前記難燃剤分散液の調製方法における前記分散の温度は20~30℃であり、
前記難燃剤分散液における難燃剤の粒径は0.1μm~10μmである、請求項5に記載の調製方法。
【請求項9】
前記調製方法は難燃剤分散液、ポリマーモノマー、リチウム塩及び開始剤を混合する前に、前記難燃剤分散液のpHを3~4に調整することをさらに含み、
前記pHの調整方法は酢酸溶液を用いて調整することを含み、
前記調製方法は前記保温反応の後に、乾燥させて、粉体粒子状の電解質材料を得ることをさらに含み、
前記乾燥はアルゴン雰囲気で行われ、前記乾燥の温度は70~90℃であり、及び前記乾燥の時間は20~30hであり、
前記調製方法は前記粉体粒子状の電解質材料をアルゴン雰囲気で保存することをさらに含む、請求項5に記載の調製方法。
【請求項10】
難燃剤を分散剤と混合し、20~30℃で分散させて、難燃剤の粒径が0.1μm~10μmの難燃剤分散液を得るステップ(1)と、
前記難燃剤分散液に乳化剤溶液を添加し、蒸留水を用いて乳化処理するステップ(2)と、
10%酢酸溶液を用いて前記難燃剤分散液のpHを3~4に調整するステップ(3)と、
前記難燃剤分散液、ポリマーモノマー、リチウム塩及び開始剤を混合し、80~90℃で分散させて、ポリマーモノマーの含有量が70~90%、リチウム塩の含有量が10~30%、開始剤の含有量が0.2~1%の混合溶液を得るステップ(4)と、
前記混合溶液を撹拌して60~80℃まで加熱し、2~5時間保温反応して、前記電解質材料を得るステップ(5)と、
70~90℃で20~30時間乾燥させて、粉体粒子状の電解質材料を得るステップ(6)と、
を含み、
前記ステップ(1)~(6)はいずれもアルゴン雰囲気で行われる、請求項5に記載の調製方法。
【請求項11】
請求項1に記載の電解質材料を含む、電極スラリー。
【請求項12】
表面に請求項11に記載の電極スラリーが塗工される、電極片。
【請求項13】
請求項12に記載の電極片を含む、電池セル。
【請求項14】
請求項13に記載の電池セルを含む、電池。
【請求項15】
請求項14に記載の電池の使用であって、前記電池は電子製品又は新エネルギー自動車に適用される、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は電池技術の分野に関し、例えば、電解質材料とその調製方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
社会の急速な発展と進歩に伴い、エネルギー不足及び環境汚染の問題はますます深刻になり、クリーンエネルギーに対する需要がますます重要視されるようになった。同時に、新エネルギー自動車がますます普及し、エネルギー動力の発展がますます拡大することにより、より高いエネルギー密度のリチウムイオン電池の開発が促進されている。現在、市販のリチウム電池では、エネルギー密度に関するボトルネックがすでに現れており、高エネルギー密度の面では改善することは困難であり、次世代電池として、固体電池が最前線位置に挙げられているが、固体電池の研究開発は、難易度が高く、プロセス要求が高く、現在、大量生産をすぐに実現できないため、半固体電池は過渡的な製品として登場した。
【0003】
固体電池は製造方法によって、主に(i)半固体電池と(ii)全固体電池に分けられ、そのうち、全固体電池の正極と負極とセパレータとの間は固固接触し、Li伝導抵抗が大きく、現在、全固体電池の性能は従来の液体電池のレベルに達することが困難であり、半固体電池は、従来の液体電池と全固体電池の間の過渡状態として、製造の操作可能性、電池のレート性能、サイクル性能でいずれも従来の液体電池に十分に近く、安全性能は従来の液体電池よりもさらに優れている。
【0004】
ポリマー固体電解質は、安全で低密度の材料として大きな注目を集めているが、従来の方法を用いてポリマー固体電解質を電極に添加することも大きな問題があり、ポリマー電解質材料自体が非常に柔らかく、ヤング率が低いため、ポリマー電解質材料を添加した後の電池は、ロールプレス過程で、電解質が非常に柔らかいため、電極の大きな伸びを引き起こし、プレス密度の向上が困難である。
【0005】
新エネルギー自動車の自然発火が次々と発生し、人々は、より安全で信頼性の高い新型な電池の開発に取り組んでおり、全固体電池は、電解液成分を含まないため、電池セルの内部でより安定して存在可能であり、人々の注目を広く集めてきた。現在の全固体電池の技術はまだ未成熟であり、工業化までにまだ長い道のりがある。半固体電池は液体電池と全固体電池の中間製品として、電池セルの内部における電解液の用量を減らし、電池セルの安全性能をある程度改善することができ、現在、最も近く、最も容易に大量生産を実現する過渡製品である。
【0006】
電解液のリチウムイオン電池の熱暴走過程での役割は非常に重要であり、現在、材料の観点から、リチウムイオン電池の熱暴走、発火、燃焼、爆発を防ぐための安全上の改善策略が多く、難燃性電解質の使用は、最も経済的で簡単で効果的な策略であり、リチウムイオン電池の熱暴走、燃焼、爆発のリスクを効果的に低減し、熱暴走による人員損害及び財産損害を大幅に低減することができるが、電池に難燃剤を添加すると、電池のサイクル性能とレート性能が低減し、電池の電気的性能に大きな影響を与えることが多く、添加量が少ないと難燃効果を果たさないため、現在、難燃剤を添加した電池の性能はあまり理想的ではなく、難燃性能と電気化学的性能を兼ねることは困難である。
【0007】
CN105261742Aは、硫黄系半固体リチウム電池及びその製造方法を開示し、該電池は、半固体硫黄系正極、半固体電解質及びリチウムシート負極により積み重ねて形成され、該半固体硫黄系正極は、まずリチウム塩含有ポリマー、硫黄系材料、炭素導電剤を半固体に混合し、次にアルミ箔又はニッケルメッシュを集電体として形成される。該半固体電解質は、多孔質無機酸化物とリチウム塩含有ポリマーを混合することにより形成される。該リチウム塩含有ポリマーは、流動状態ポリマーとリチウム塩を混合することにより形成される。
【0008】
CN110265715Aは、リチウム電池の半固体電解質専用のゲル化剤及び調製方法を開示し、前記ゲル化剤は、まずポリマーマトリックスをヒドロキシプロピルメチルセルロースと難燃剤とを混合して研磨して複合粒子を得た後、ペルヒドロポリシラザン、多孔質無機物をアンモニア水と混合したものを複合粒子の表面に吹き付け、最後に製造された被覆型複合粒子をエアフローミキサーで分散剤と完全に分散させて製造される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、当技術分野では、難燃性と電気化学的性能を兼ねることができる電解質材料を開発することが急がれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下は本明細書で詳述される主題の概要である。本概要は請求項の保護範囲を制限するためのものではない。
【0011】
本開示は電解質材料とその調製方法及び使用を提供する。
【0012】
本開示は一実施例において、コアと、コアの外側に被覆されたシェルとを含む電解質材料を提供し、前記コアは難燃剤粒子を含み、前記シェルはイオン導電性ポリマーを含み、
前記イオン導電性ポリマーはリチウム塩とポリマー電解質の組み合わせを含む。
【0013】
本開示は一実施例において、イオン導電性ポリマー材料を用いて難燃剤を被覆してコアシェル材料を形成し、この材料を電極極片に添加すると、電池は安全上の問題に遭遇し、機械的な乱用条件下で、例えばニードリング、圧縮、衝撃などの状況で、電気的な乱用条件、例えば過充電、強制短絡などの状況、熱的な乱用条件下でヒートボックス、熱衝撃などの状況が発生する。電池は内部短絡により発熱し、発熱過程でイオン導電性ポリマー電解質が溶けて破裂し、難燃剤を放出し、難燃剤が難燃効果を発揮するため短期間で電池の熱暴走を阻止し、人員が安全に離れるという目的を達成する。通常の使用状態で、難燃剤がポリマー電解質により被覆されるため、電池のサイクル性能とレート性能に影響を与えず、優れた電気化学的性能を有する。
【0014】
また、ポリマー電解質は良好な弾性を有し、負極の膨脹を抑えることができる。従来の、ポリマー電解質を添加した電極がプレス密度を上げることが困難である状況と比較して、本開示では、難燃剤を含むイオン導電性ポリマー電解質コアシェル材料(難燃剤@イオン導電性ポリマー電解質コアシェル材料)を添加して半固体電池に適用することにより、半固体電池の安全性を向上させるとともに、ポリマー電解質を電極極片に十分に分散させることで、固体電解質の含有量を著しく向上させ、固体電解質の均一な分布を保証し、リチウムイオンチャネルを向上させ、極片内のリチウムイオンの正常な移動を保証し、電池の電気的性能に影響を与えず、さらに電極が高いプレス密度を有することを保証し、且つ極片は高い伸びが発生しにくい。
【0015】
本開示の一実施例に係る電解質材料を電極極片に使用すると、電池が安全上の問題に遭遇し、内部短絡で発熱するときに、発熱過程でイオン導電性ポリマー電解質が溶けて破裂し、難燃剤を放出し、難燃剤が難燃効果を発揮するため短期間で電池の熱暴走を阻止し、人員が安全に離れるという目的を達成する。通常の使用状態で、難燃剤はポリマー電解質により被覆されるため、電池のサイクル性能とレート性能に影響を与えず、優れた電気化学的性能を有する。
【0016】
本開示の一実施例に係る電解質材料を電極極片に使用すると、プレス密度を向上させるとともに、負極の膨脹を抑えることができる。
【0017】
一実施例において、前記電解質材料における難燃剤の質量比は5~20%、例えば、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%などであり、一実施例において、前記電解質材料における難燃剤の質量比は10%である。
【0018】
本開示に係る一実施例において難燃剤の比率を5~20%にすることにより、ニードリング及びヒートボックス実験で発火しない効果を得て、比率が低すぎると、発火につながり、比率が高すぎると、電池容量の低下につながる。
【0019】
一実施例において、前記コアの直径は0.5~10μm、例えば、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μmなどである。
【0020】
一実施例において、前記シェルの厚みは100~500nm、例えば、150nm、200nm、250nm、300nm、350nm、400nm、450nmなどである。
【0021】
一実施例において、前記難燃剤は、リン酸トリメチル(TMP)、リン酸トリエチル(TEP)、リン酸トリブチル(TBP)、亜リン酸トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)(TFP)、リン酸トリフェニル(TPP)、ホスファイト又はホスファゼン系難燃材料のいずれか1種又は少なくとも2種の組み合わせを含む。
【0022】
一実施例において、前記リチウム塩は前記イオン導電性ポリマー質量の1~20%を占め、例えば、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%などを占め、一実施例において、前記リチウム塩は前記イオン導電性ポリマー質量の12%を占める。
【0023】
一実施例において、前記リチウム塩は、過塩素酸リチウム(LiClO)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiTFSI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBOB)又はテトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)のいずれか1種又は少なくとも2種の組み合わせを含む。
【0024】
一実施例において、前記ポリマー電解質の溶融温度は150~250℃、例えば、160℃、170℃、180℃、190℃、200℃、210℃、220℃、230℃、240℃などであり、一実施例において、前記ポリマー電解質の溶融温度は200℃である。
【0025】
本開示に係る一実施例において、上記溶融温度を選択することにより、電解質が溶融した後に液体効果になり、溶融温度が低すぎると、ポリマー電解質が非液体になり、難燃剤を均一に被覆できないことにつながり、溶融温度が高すぎると、ポリマー電解質の酸化分解につながる。
【0026】
一実施例において、前記ポリマー電解質は、ポリオキシエチレン(PEO)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)又はポリビニレンカーボネート(PVCA)のいずれか1種又は少なくとも2種の組み合わせを含む。
【0027】
本開示に係る一実施例において、ポリマー電解質は、電極スラリーで一般的に使用される粘着剤と同じ分子セグメントを含むため、粘着剤との親和性及び可撓性がより良く、電極活物質間の粘着性能がより多い。ポリマー電解質は粘着剤と同じセグメントを含み、同じセグメントが互いに絡み合っており、シリコン負極の膨脹がさらに減少する。また、ポリマー電解質は電解液と相溶せず、電解液に溶解できないので、電解液がポリマーの溶出によってより粘稠になり、導電率が低下し、レート性能及びサイクル性能が低下することを減少する。
【0028】
一実施例において、前記難燃剤粒子と前記イオン導電性ポリマーとの間に乳化剤が存在する。
【0029】
一実施例において、前記乳化剤は前記難燃剤粒子の表面に堆積される。
【0030】
一実施例において、難燃性粒子の表面に乳化剤が堆積するのは、乳化剤の表面に親水性及び親油性基があるからであり、乳化剤を使用することで、ポリマー電解質をより容易に難燃剤微小球と組み合わせることができ、均一で緻密な被覆効果を得ることができる。
【0031】
一実施例において、前記乳化剤は、ポリエチレングリコール、ドデシルスルホン酸ナトリウム、脂肪酸ポリオキシエチレンエーテル、アラビアゴム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、イソステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体、臭化セチルトリメチルアンモニウム、スチレン無水マレイン酸共重合体、非イオン性パラフィンマイクロ乳化剤(NMP)、カチオン性パラフィンマイクロ乳化剤(CMP)、アニオン性パラフィン乳化剤(AMP)、OP-10、OP-15、ペレガル(Peregal) O-10、油中水型廃油乳化剤(EEO)、油中水型ディーゼル乳化剤(EDO)又は油中水型動植物油乳化剤(EAP)のいずれか1種又は少なくとも2種の組み合わせを含む。
【0032】
本開示は一実施例において、本開示の一実施例に係る電解質材料の調製方法を提供し、該調製方法は、難燃剤分散液、ポリマーモノマー、リチウム塩及び開始剤を混合して分散し、混合溶液を得て、撹拌して加熱し、保温反応し、前記電解質材料を得ることを含む。
【0033】
本開示の一実施例に係る電解質材料の調製方法により、コアシェル構造を有する電解質材料を調製して得ることができ、且つ該調製方法は操作が簡単で材料が安価であり、難燃効果が著しく電池の他性能に影響を及ぼさない。
【0034】
一実施例において、前記調製方法はアルゴン雰囲気で行われる。
【0035】
一実施例において、前記調製方法は還流凝縮機器を使用することをさらに含む。
【0036】
一実施例において、前記分散する温度は80~90℃、例えば、81℃、82℃、83℃、84℃、85℃、86℃、87℃、88℃、89℃などである。
【0037】
一実施例において、前記開始剤は、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)又は2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(V65)の少なくとも1つを含む。
【0038】
一実施例において、ポリマーのモノマー、リチウム塩及び開始剤の総質量を100%とし、前記ポリマーモノマーの質量比は70~90%、例えば、72%、74%、76%、78%、80%、82%、84%、86%、88%などであり、一実施例において、ポリマーモノマー、リチウム塩及び開始剤の総質量を100%とし、前記ポリマーモノマーの質量比は80%である。
【0039】
一実施例において、ポリマーモノマー、リチウム塩及び開始剤の総質量を100%とし、前記リチウム塩の質量比は10~30%、例えば、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%などであり、一実施例において、ポリマーモノマー、リチウム塩及び開始剤の総質量を100%とし、前記リチウム塩の質量比は19.5%である。
【0040】
一実施例において、ポリマーモノマー、リチウム塩及び開始剤の総質量を100%とし、前記開始剤の質量比は0.2~1%、例えば、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%などであり、一実施例において、ポリマーモノマー、リチウム塩及び開始剤の総質量を100%とし、前記開始剤の質量比は0.5%である。
【0041】
一実施例において、前記加熱する温度は60~80℃、例えば、62℃、64℃、66℃、68℃、70℃、72℃、74℃、76℃、78℃などである。
【0042】
一実施例において、前記保温反応の時間は2~5h、例えば、2h、3h、4hなどである。
【0043】
一実施例において、前記難燃剤分散液の調製方法は、難燃剤を分散剤と混合して分散し、前記難燃剤分散液を得ることを含む。
【0044】
一実施例において、前記分散剤は、難燃剤と相溶しない有機液体又は無機液体を含み、当該有機液体又は無機液体の沸点が100℃を超え且つ難燃剤と反応しない。
【0045】
一実施例において、前記難燃剤分散液の調製方法における前記分散の温度は20~30℃、例えば、21℃、22℃、23℃、24℃、25℃、26℃、27℃、28℃、29℃などである。
【0046】
一実施例において、前記難燃剤分散液における難燃剤の粒径は0.1μm~10μm、例えば、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μmなどである。
【0047】
一実施例において、前記した難燃剤分散液、ポリマーモノマー、リチウム塩及び開始剤を混合する前に、前記難燃剤分散液を乳化する。
【0048】
一実施例において、前記乳化の方法は、前記難燃剤分散液に乳化剤溶液を添加して乳化することを含む。
【0049】
一実施例において、前記乳化剤は、ポリエチレングリコール、ドデシルスルホン酸ナトリウム、脂肪酸ポリオキシエチレンエーテル、アラビアゴム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、イソステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体、臭化セチルトリメチルアンモニウム、スチレン無水マレイン酸共重合体、非イオン性パラフィンマイクロ乳化剤(NMP)、カチオン性パラフィンマイクロ乳化剤(CMP)、アニオン性パラフィン乳化剤(AMP)、OP-10、OP-15、ペレガル O-10、油中水型廃油乳化剤(EEO)、油中水型ディーゼル乳化剤(EDO)又は油中水型動植物油乳化剤(EAP)のいずれか1種又は少なくとも2種の組み合わせを含む。
【0050】
一実施例において、前記乳化の方法は、既に希釈された10%乳化剤、難燃剤及び脱イオン水を使用して乳化処理し、10000~15000r/minの回転速度で30分間乳化することを含む。
【0051】
一実施例において、前記した難燃剤分散液、ポリマーモノマー、リチウム塩及び開始剤を混合する前に、前記難燃剤分散液のpHを3~4に調整する。
【0052】
一実施例において、前記pHの調整方法は酢酸溶液を用いて調整することを含み、一実施例において、前記pHの調整方法は10%酢酸溶液を用いて調整することを含む。
【0053】
一実施例において、前記調製方法は、前記保温反応の後に、乾燥させ、粉体粒子状の電解質材料を得ることをさらに含む。
【0054】
一実施例において、前記乾燥はアルゴン雰囲気で行われる。
【0055】
一実施例において、前記乾燥の温度は70~90℃,例えば、72℃、74℃、76℃、78℃、80℃、82℃、84℃、86℃、88℃などであり、一実施例において、前記乾燥の温度は80℃である。
【0056】
一実施例において、前記乾燥の時間は20~30h、例えば、22h、24h、26h、28hなどであり、一実施例において、前記乾燥の時間は24hである。
【0057】
一実施例において、前記粉体粒子状の電解質材料をアルゴン雰囲気で保存する。
【0058】
一実施例において、前記調製方法は、
難燃剤を分散剤と混合し、20~30℃で分散し、難燃剤の粒径が0.1μm~10μmの難燃剤分散液を得るステップ(1)と、
前記難燃剤分散液に乳化剤溶液を添加し、蒸留水を用いて乳化処理するステップ(2)と、
10%酢酸溶液を用いて前記難燃剤分散液のpHを3~4に調整するステップ(3)と、
前記難燃剤分散液、ポリマーモノマー、リチウム塩及び開始剤を混合し、80~90℃で分散し、ポリマーモノマーの含有量が70~90%、リチウム塩の含有量が10~30%、開始剤の含有量が0.2~1%の混合溶液を得るステップ(4)と、
前記混合溶液を撹拌して60~80℃まで加熱し、2~5時間保温反応し、前記電解質材料を得るステップ(5)と、
70~90℃で20~30時間乾燥させ、粉体粒子状の電解質材料を得るステップ(6)と、を含み、
前記ステップ(1)~(6)はいずれもアルゴン雰囲気で行われる。
【0059】
本開示は一実施例において、本開示の一実施例に係る電解質材料を含む電極スラリーを提供する。
【0060】
一実施例において、前記電極スラリーは正極スラリー又は負極スラリーを含む。
【0061】
一実施例において、前記電解質材料が前記電極スラリーに占める質量百分率は1~20%、例えば、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%などである。
【0062】
一実施例において、前記電極スラリーに粘着剤を含む。
【0063】
一実施例において、前記粘着剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニルピロリドン(PVP)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ヒドロキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリオキシエチレン(PEO)、ポリアクリロニトリル(PAN)、キトサンシリーズ、アルギン酸ナトリウムシリーズ又は天然ゴムシリーズ(Binder)のいずれか1種又は少なくとも2種の組み合わせを含む。
【0064】
一実施例において、前記電極スラリーの調製方法は、均質化の過程で本開示の一実施例に係る電解質材料を添加することを含む。
【0065】
本開示は、均質化の方法及び電解質材料の添加順序を具体的に限定せず、正極スラリーの均質化方法及び負極スラリーの均質化方法を例示的に提供するものにすぎず、ただし、正極スラリーの均質化方法は、図1で示される方法及び図2で示される方法を含み、負極スラリーの均質化方法は、図3で示される方法、図4で示される方法、及び図5で示される方法を含む。当業者は、前述の方法に従って調製してもよく、他の方法に従って調製してもよい。
【0066】
本開示は一実施例において、表面に本開示の一実施例に係る電解質スラリーが塗工される電極片を提供する。
【0067】
一実施例において、前記電極片は正極電極片又は負極電極片を含む。
【0068】
一実施例において、前記電極片の基材はアルミ箔又は銅箔を含む。
【0069】
一実施例において、前記電極片の調製方法は、基材に本開示の一実施例に係る電極スラリーを塗布してから、ロールプレスすることを含む。
【0070】
一実施例において、前記塗布の厚みは0.1~100μm、例えば、1μm、10μm、20μm、30μm、40μm、50μm、60μm、70μm、80μm、90μmなどである。
【0071】
一実施例において、前記塗布の幅は0.1~1000mm、例えば、20mm、50mm、100mm、200mm、300mm、400mm、500mm、600mm、700mm、800mm、900mmなどである。
【0072】
一実施例において、前記塗布の面密度は0.1mg/cm~100mg/cm、例えば、2mg/cm、10mg/cm、20mg/cm、30mg/cm、40mg/cm、50mg/cm、60mg/cm、70mg/cm、80mg/cm、90mg/cmなどであり、一実施例において、前記塗布の面密度は5mg/cmである。
【0073】
一実施例において、前記塗布の方法はナイフ塗布、転移塗布又は押出塗布のいずれか1種又は少なくとも2種の組み合わせを含み、一実施例において、前記塗布の方法は転移塗布を含む。
【0074】
一実施例において、前記ロールプレスは乾燥条件下で行われる。
【0075】
一実施例において、前記乾燥ブースの露点温度は-50℃以下、例えば、-60℃、-70℃、-80℃などである。
【0076】
一実施例において、前記ロールプレスする温度は180℃~250℃、例えば、190℃、200℃、210℃、220℃、230℃、240℃などであり、一実施例において、前記ロールプレスの温度は180℃である。
【0077】
一実施例において、前記ロールプレスする圧力は50MPa~500Mpa、例えば、100MPa、200MPa、300MPa、400MPaなどであり、一実施例において、前記ロールプレスの圧力は300Mpaである。
【0078】
一実施例において、前記ロールプレスのローラの直径は0.1mm~1000mm、例えば、10mm、10mm、100mm、200mm、300mm、400mm、500mm、600mm、700mm、800mm、900mmなどであり、一実施例において、前記ロールプレスのローラの直径は500mmである。
【0079】
一実施例において、前記ロールプレスした後の電極スラリーの厚みは0.1~50μm、例えば、5μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm、45μmなどである。
【0080】
一実施例において、前記正極電極片において、ロールプレスのプレス密度は2.6~4.0mg/cm、例えば、2.8mg/cm、3mg/cm、3.2mg/cm、3.4mg/cm、3.6mg/cm、3.8mg/cmなどであり、一実施例において、前記正極電極片において、ロールプレスのプレス密度は3.6mg/cmである。
【0081】
一実施例において、前記負極電極片において、ロールプレスのプレス密度は1.0~1.8mg/cm、例えば、1.1mg/cm、1.2mg/cm、1.3mg/cm、1.4mg/cm、1.5mg/cm、1.6mg/cm、1.7mg/cmなどであり、一実施例において、前記負極電極片において、ロールプレスのプレス密度は1.6mg/cmである。
【0082】
本開示は一実施例において、本開示の一実施例に係る電極片を含む電池セルを提供する。
【0083】
一実施例において、前記電池セルは半固体電池セルを含む。
【0084】
本開示は一実施例において、本開示の一実施例に係る電池セルを含む電池を提供する。
【0085】
本開示の一実施例に係る電池は使用過程で、難燃剤@イオン導電性ポリマー電解質コアシェル材料が正負極で正極の高電圧のために酸化されず、負極の低電圧のために還元されず、イオン導電性ポリマー電解質コア構造はリチウムイオンを導通する役割を果たすことができ、電池は電解質材料の添加によってレート性能を低下させることはない。電池は、熱的な乱用の過程、電気的な乱用の過程、機械的な乱用の過程で、電池が発熱し、コアシェル構造が熱を受けて溶融して破裂し、難燃剤が溢れ出し、難燃と消火の役割を果たし、これは安全上非常に重要である。
【0086】
一実施例において、前記電池は半固体電池である。
【0087】
一実施例において、前記電池はリチウム電池である。
【0088】
本開示において、前記半固体電池の組み立て方法は複数種であってもよく、極片は積層の方法で組み立てもよく、巻き取りの方法で組み立ててもよく、電池の組み立て方法は限定されず、組み立てた後に電池に液体を注入し、液体を注入した後に45℃の高温で24時間エージングしてから、化成のフローを行い、液体の注入及び化成のフローは限定されず、組み立てる電池はパウチ型電池でもよく、角型アルミケース型電池、円筒型電池であってもよく、一実施例において、組み立てる電池はパウチ型電池である。
【0089】
本開示は一実施例において、本開示の一実施例に係る電池の使用を提供し、前記電池は電子製品又は新エネルギー自動車に適用される。
【0090】
他の態様は、図面と詳細な説明を読んで理解した後に明らかになる。
図面は、本開示の技術案のさらなる理解を提供するために使用され、且つ明細書の一部を構成し、本開示の実施例とともに、本開示の技術案を説明するために使用され、本開示の技術案に対する制限を構成するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0091】
図1】本開示の一実施例における正極スラリーの均質化方法である。
図2】本開示の一実施例における正極スラリーの均質化方法である。
図3】本開示の一実施例における負極スラリーの均質化方法である。
図4】本開示の一実施例における負極スラリーの均質化方法である。
図5】本開示の一実施例における負極スラリーの均質化方法である。
図6】本開示の実施例の電解質材料の調製フローの模式図である。
図7】本開示の実施例の電解質材料の形態変化の模式図である。
図8】本開示の実施例の電解質材料の内部層状構造の模式図である。
図9】本開示の実施例の電解質材料の外部層状構造の模式図である。
図10a】本開示の実施例の電解質材料の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
図10b】本開示の実施例の電解質材料のSEM写真である。
図11】本開示の使用例の5Ahニッケルコバルトマンガン三元-石墨(NCM-Gr)セルが150℃ヒートボックスを通過する時の実験温度-電圧のテストデータ図である。
図12a】本開示の使用例の5Ah NCM-Gr電池セルが150℃ヒートボックスを通過した後の状態図である。
図12b】比較使用例の5Ah NCM-Gr電池セルが150℃ヒートボックスを通過した後の状態図である。
図13a】本開示の使用例の5Ah NCM-Gr電池セルのニードリング安全性の比較図である。
図13b】比較使用例の5Ah NCM-Gr電池セルのニードリング安全性の比較図である。
図14】本開示の使用例の5Ah NCM-Gr電池セルの1Cサイクル寿命のデータ図である。
【発明を実施するための形態】
【0092】
以下、図面を参照しながら、具体的な実施形態によって本開示の技術案をさらに説明する。
【実施例
【0093】
実施例1
本実施例は電解質材料(難燃剤を含むイオン導電性ポリマー電解質コアシェル材料)を提供し、その調製方法は次のとおりである(図6に示すように、以下のステップはいずれもアルゴン雰囲気で行われ、且つ凝縮還流装置が使用された)。
(1)10gの難燃剤(エトキシペンタフルオロシクロホスファゼン)を30gの分散剤(脱イオン水)と混合し、25℃で分散し、難燃剤分散液を得て(粒径は5μm)、
(2)前記難燃剤分散液に1gの乳化剤溶液(10%のOP-10水溶液)を添加し、蒸留水を用いて乳化処理し、
(3)10%酢酸溶液を用いて前記難燃剤分散液のpHを3~4に調整し、
(4)前記難燃剤分散液、ポリマーモノマー(炭酸ビニレン)、リチウム塩(LITFSI)及び開始剤(2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル))を混合し、85℃で分散し、ポリマーモノマーの含有量が80%、リチウム塩の含有量が19.5%、開始剤の含有量が0.5%(ポリマーモノマー、リチウム塩及び開始剤の総質量を100%として)の混合溶液を得て、
(5)前記混合溶液を撹拌して70℃まで加熱し、4時間保温反応し、前記電解質材料を得て、
(6)80℃で24時間乾燥させ、粉体粒子状の電解質材料を得た(難燃剤をコアとし、ポリビニレンカーボネートをシェルとし(溶融温度は180℃)、難燃剤の質量比は10%である)。
【0094】
本実施例の調製過程は、図7に示すように、まず難燃剤粒子の表面に乳化剤を堆積し、次にイオン導電性ポリマーを被覆することを含む。
【0095】
本実施例で調製して得られた難燃剤を含むイオン導電性ポリマー電解質コアシェル材料の内部層状構造の模式図は図8に示し、外部構造の模式図は図9に示し、SEM写真は図10a及び10bに示す。
【0096】
実施例2
本実施例は電解質材料を提供し、その調製方法は次のとおりである(以下のステップはいずれもアルゴン雰囲気で行われた)。
(1)10gの難燃剤(ヘキサフルオロシクロホスファゼン)を30gの分散剤(脱イオン水)と混合し、20℃で分散し、難燃剤分散液を得て(粒径は0.1μm)、
(2)前記難燃剤分散液に1gの乳化剤溶液(10%のOP-10水溶液)を添加し、蒸留水を用いて乳化処理し、
(3)10%酢酸溶液を用いて前記難燃剤分散液のpHを3~4に調整し、
(4)前記難燃剤分散液、ポリマーモノマー(アクリロニトリル)、リチウム塩(LITFSI)及び開始剤(2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル))を混合し、80℃で分散し、ポリマーモノマーの含有量が70%、リチウム塩の含有量が29%、開始剤の含有量が1%(ポリマーモノマー、リチウム塩及び開始剤の総質量を100%として)の混合溶液を得て、
(5)前記混合溶液を撹拌して60℃まで加熱し、5時間保温反応し、前記電解質材料を得て、
(6)70℃で30時間乾燥させ、粉体粒子状の電解質材料を得た(難燃剤をコアとし、ポリアクリロニトリルをシェルとし(溶融温度は205℃)、難燃剤の質量比は10%である)。
【0097】
実施例3
本実施例は電解質材料を提供し、その調製方法は次のとおりである(以下のステップはいずれもアルゴン雰囲気で行われた)。
(1)10gの難燃剤(亜リン酸トリス(2,2,2-トリフルオロエチル))を30gの分散剤(無水エタノール)と混合し、30℃で分散し、難燃剤分散液を得て(粒径は10μm)、
(2)前記難燃剤分散液に1gの乳化剤溶液(10%のOP-10水溶液)を添加し、蒸留水を用いて乳化処理し、
(3)10%酢酸溶液を用いて前記難燃剤分散液のpHを3~4に調整し、
(4)前記難燃剤分散液、ポリマーモノマー(具体的には、メタクリル酸メチル)、リチウム塩(具体的には、LiTFSI)及び開始剤(具体的には、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル))を混合し、90℃で分散し、ポリマーモノマーの含有量が89.8%、リチウム塩の含有量が10%、開始剤の含有量が0.2%(ポリマーモノマー、リチウム塩及び開始剤の総質量を100%として)の混合溶液を得て、
(5)前記混合溶液を撹拌して70℃まで加熱し、4時間保温反応し、前記電解質材料を得て、
(6)80℃で24時間乾燥させ、粉体粒子状の電解質材料を得た(難燃剤をコアとし、ポリメタクリル酸メチルをシェルとし(溶融温度は196℃)、難燃剤の質量比は10%である)。
【0098】
実施例4
本実施例と実施例1の違いは、ステップ(4)で使用されるポリマーモノマーはビニルエチレンカーボネートであり、得られたポリマー電解質はポリビニルエチレンカーボネート(溶融温度は210℃)であることにある。
【0099】
実施例5
本実施例と実施例1の違いは、ステップ(4)で使用されるポリマーモノマーはトリエチレングリコールジアクリラートであり、得られたポリマー電解質はポリトリエチレングリコールジアクリラート(溶融温度は250℃)であることにある。
【0100】
実施例6
本実施例と実施例1の違いは、ステップ(4)で使用されるポリマーモノマーはジアクリル酸1.6-ヘキサンジオールであり、得られたポリマー電解質はポリジアクリル酸1.6-ヘキサンジオール(溶融温度は140℃)であることにある。
【0101】
実施例7
本実施例と実施例1の違いは、ステップ(4)で使用されるポリマーモノマーはペンタエリトリトールテトラアクリラートであり、得られたポリマー電解質はポリペンタエリトリトールテトラアクリラート(溶融温度は260℃)であることにある。
【0102】
実施例8~11
本実施例と実施例1の違いは、電解質材料における難燃剤の質量比はそれぞれ5%(実施例8)、20%(実施例9)、3%(実施例10)、25%(実施例11)であることにある。
【0103】
比較例1
本比較例と実施例4の違いは、電解質材料の調製方法は次のとおりであることにあった。
(1)3gの難燃剤(エトキシペンタフルオロシクロホスファゼン)を30gのポリマー電解質(ポリビニルエチレンカーボネート、溶融温度は210℃)とリチウム塩(具体的には、LITFSI)と混合し、85℃で分散し、ポリマー電解質の含有量が80%、リチウム塩の含有量が19.5%、開始剤の含有量が0.5%(ポリマー電解質、リチウム塩及び開始剤の総質量を100%とし)の混合溶液を得て、難燃剤及びポリマー電解質の総質量を100%として、前記難燃剤の質量百分率は10%であり、ポリマー電解質と難燃剤が簡単にブレンドされた材料を得た。
【0104】
使用例1~11、比較使用例1
上記使用例はそれぞれ半固体電池セルを調整し、それぞれ実施例1~11、比較例1の電解質材料を使用し、具体的な方法は次のとおりである。
(1)正極スラリー:図1に示す方法に従って調製し、電解質材料の含有量が10%の正極スラリーを得て、
(2)負極スラリー:図3に示す方法に従って調製し、電解質材料の含有量が10%の負極スラリーを得て、
(3)正極電極片:調製された正極スラリーをアルミ箔に塗布し、塗布厚みは50μm、塗布幅は500mm、塗布長さは10mであり、塗布面密度:5mg/cm、塗布方法:転移塗布、露点-50℃の乾燥条件下でロールプレスし、ロールプレスする温度は180℃、圧力は300Mpa、ローラの直径は500mm、ロールプレス後の厚みは25μm、プレス密度は3.6mg/cmであり、
(4)負極電極片:調製された負極スラリーをアルミ箔に塗布し、塗布厚みは50μm、塗布幅は500mm、塗布長さは10mであり、塗布面密度:5mg/cm、塗布方法:転移塗布、露点-50℃の乾燥条件下でロールプレスし、ロールプレスする温度は180℃、圧力は300Mpa、ローラの直径は500mm、ロールプレス後の厚みは25μm、プレス密度は1.6mg/cmであり、
(5)半固体電池(パウチ型):正負電極片を積層の方法で組み立て、組み立てた後に電池に液体を注入し、液体を注入した後に45℃の高温で24時間エージングしてから、化成フローを行い、製品を得た(5Ah NCM-Gr電池セル)。
【0105】
比較使用例2
本比較使用例と使用例1の違いは、ステップ(1)及びステップ(2)ではいずれも電解質材料を添加しないことにある。
【0106】
図11は使用例1の5Ah NCM-Grセルが150℃ヒートボックスを通過する時の実験温度-電圧のテストデータ図であり、図に難燃剤を含むイオン導電性ポリマーを添加したNCM-Gr電池は150℃ヒートボックスを順調に通過できることを示し、これは本材料の難燃特性が優れていることを証明している。
【0107】
図12a及び12bはそれぞれ、使用例1及び比較使用例2の5Ah NCM-Gr電池セルが150℃ヒートボックスを通過した後の状態図であり、図12aでは基本的に損傷しないが図12bでは既に焼損され、これは、本開示に係る電解質材料は電池の難燃性能を効率的に向上でき、安全性がより高いことを証明している。
【0108】
図13a及び13bはそれぞれ、使用例1及び比較使用例2の5Ah NCM-Gr電池セルのニードリング安全性の比較図であり、図13aではニードリングを順調に通過できるが図13bではニードリングにより発火し、これは、本願の電解質材料は電池の難燃性能を効率的に向上できることをさらに証明している。
【0109】
図14は使用例1の5Ah NCM-Gr電池セルの1Cサイクル寿命のデータ図であり、この図で200サイクルの後に、容量保持率は依然として93.7%であり、これは、本開示に係る電解質材料を電池に適用すると、良好なサイクル性能を得ることができることを証明している。
【0110】
性能テスト
上記使用例及び比較使用例で得られた5Ah NCM-Grセルについて、それぞれ下記の性能テストを行った。
【0111】
(1)難燃性能テスト:ニードリング及びヒートボックスに従ってテストした。
安全性(ニードリングテスト)条件について
GBT31485-2015電気自動車用動力蓄電池の安全要件と試験方法を参照し、ステップは次のとおりである。
a)モノマー電池を充電し、
b)φ6.5mmの耐高温鋼針(針先の円錐角度は50°、針の表面は滑らかで、錆、酸化物層及び油汚れがない)を25mm/sの速度で使用し、蓄電池の極板に垂直な方向から貫通し、貫通位置は刺し面の幾何学的中心に近く、鋼針を電池内に留まり、
c)1時間観察した。
【0112】
(1)難燃性能テスト:ニードリング及びヒートボックスに従ってテストした。
安全性(ヒートボックステスト)条件について
a)モノマー電池を充電し、
b)モノマー電池を温度箱に入れ、リチウムイオン電池については、温度箱を5℃/minの速度で室温を150±2℃まで上げ、この温度を30分間保持した後に加熱を停止し、
c)1時間観察した。
【0113】
(2)サイクル性能テスト:
初回効率テストの条件について
環境温度は25℃であり、
a)定電流・定電圧充電:0.05Cの定電流で4.25Vまで22時間充電(CC)し、定電圧で0.01Cまで充電(CV)し、
b)10分間静置し、
c)定電流放電(DC):0.05Cで2.5VまでDCした。
【0114】
サイクル性能テスト条件について
テスト温度は25℃であり、
a)定電流・定電圧充電:1Cで4.25VまでCCし、0.05CまでCVし、
b)5分間静置し、
c)定電流放電:1Cで2.5VまでDCし、
d)ステップa)~ステップc)を100回サイクルした。
【0115】
(3)レート性能テスト:
テスト条件について
a)定電流・定電圧充電:0.33Cで4.25Vまで4時間CCし、0.05CまでCVし、
b)5分間静置し、
c)定電流放電:0.33Cで2.5VまでDCし、
d)5分間静置し、
e)定電流・定電圧充電:0.33Cで4.25Vまで4時間CCし、0.05CまでCVし、
f)5分間静置し、
g)定電流放電:1Cで2.5VまでDCした。
【0116】
テストして1C/0.33Cのレート性能を得て、他の条件で0.1C/0.1C、0.33C/0.33C、0.33/0.5C、0.33/2Cのレート性能のテストのパラメータは上記条件を参照した。
【0117】
上記のテスト結果を表1に示す。
【表1】
【0118】
表1から、本開示に係る電解質材料は半固体電池に適用されると、優れた難燃性能を有するとともに優れたサイクル性能及びレート性能を有することが分かった。
【0119】
実施例1、4~7を比較することにより、ポリマー電解質の溶融指数が150~250℃の範囲内にあるとき(実施例1、4、5)、電池はより優れた難燃性能、サイクル性能及びレート性能を有することが分かった。
【0120】
実施例1、8~11を比較することにより、電解質材料における難燃剤の質量比が5~20%であるとき(実施例1、8、9)、電池はより優れた難燃性能、サイクル性能及びレート性能を有することが分かった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10a
図10b
図11
図12a
図12b
図13a
図13b
図14