(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】WASAB1取得シーケンスのサンプルに対して後処理を行うための方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20240416BHJP
【FI】
A61B5/055 380
(21)【出願番号】P 2022572717
(86)(22)【出願日】2021-10-13
(86)【国際出願番号】 FR2021051785
(87)【国際公開番号】W WO2022090644
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2022-12-27
(32)【優先日】2020-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】510139128
【氏名又は名称】オレア メディカル
【住所又は居所原語表記】93 avenue du Sorbier - Z.I ATHELIA IV - 13600 LA CIOTAT - FRANCE
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジー ブノワ
(72)【発明者】
【氏名】パパゲオルガキス クリストス
(72)【発明者】
【氏名】カサグランダ ステファノ
(72)【発明者】
【氏名】ブゥトゥリエ ティモンテ
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-059796(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03617733(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0286502(US,A1)
【文献】SCHUENKE et al.,Simultaneous Mapping of Water Shift and B1 (WASABI) - Application to Field-Inhomogeneity Correction of CEST MRI Data,Magnetic Resonance in Medicine,2017年,77,571-580,<URL: https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/mrm.26133>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01R 33/20-33/64
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
器官の基本ボリュームと関連付けられた、医用磁気共鳴イメージング装置(1)によるWASAB1取得シーケンスから生じる実験信号(10、12)のサンプルZ(Δω)の第1セットZに対して後処理を行うための方法(100)であって、前記第1セットZの前記サンプルZ(Δω)のそれぞれの値は水の共鳴周波数に対する周波数オフセットΔωに従う理論実験信号の大きさを表し、前記方法は、イメージング解析システムの処理ユニット(4)によって実行され、
前記理論実験信号(10、12)の値の極性が確かとみなされる前記第1セットZの前記サンプルZ(Δω)を検出し、サンプルY(Δω)の第2セットYを、
a.前記理論実験信号の極性が確か且つ正とみなされる場合、Y(Δω) = Z(Δω)、
b.前記理論実験信号(10、12)の極性が確か且つ負とみなされる場合、Y(Δω) = -Z(Δω)、のように構成するステップ(110)と、
それぞれ前記医用磁気共鳴イメージング装置(1)の静磁場B0及び励起磁場B1を示す2つのパラメータ
B0及びB1を有する、定められたモデルを前記第2セットYに合わせて調整し、前記モデルの前記パラメータB0及びB1の第1推定値を生成するステップ(120)と、を含むことを特徴とする方法(100)。
【請求項2】
前記このように調整されたモデルから前記サンプルZ(Δω)の全て又は一部に対して前記理論実験信号の値の極性を推定し、前記理論実験信号の極性が正と推定される場合、Y(Δω) = Z(Δω)、前記理論実験信号の極性が負と推定される場合、Y(Δω) =-Z(Δω)のように、サンプルY(Δω)のセットを含む前記サンプルの第2セットYを増進するステップ(130)と、
前記定められたモデルを前記サンプルの第2セットYに合わせて調整し、前記パラメータB0及びB1の第2推定値を生成するステップ(140)と、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記理論実験信号の値の極性が確かとみなされる前記第1セットZの前記サンプルZ(Δω)を検出するステップ(110)は、
絶対値で最大の負の周波数オフセット(Δω)からゼロのそのような周波数オフセットまで、任意のサンプルZ(Δω)に対して、前記サンプルの値を、それぞれ異なる周波数オフセットと関連した1つ以上のサンプルの値から外挿する第1サブステップ(111)と、
最大の周波数オフセット(Δω)からゼロのそのような周波数オフセットまで、任意のサンプルZ(Δω)に対して、前記サンプルの値を、それぞれ異なる周波数オフセットと関連した1つ以上のサンプルの値から外挿する第2サブステップ(112)と、を含み、
前記第1サブステップ(111)及び前記第2サブステップ(112)によって、前記サンプルZ(Δω)の外挿値Z(Δω)’を得ることが可能であり、
任意の周波数オフセットΔωに対する前記理論実験信号の極性は、前記周波数オフセットに対する前記サンプルZ(Δω)の前記外挿値Z(Δω)’の符号によって決定され、
所与の周波数オフセットΔωに対する前記理論実験信号の極性は、サンプルZ(Δω)の
前記外挿値Z(Δω)’が正のままである場合に限り、確か且つ正とみなされる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記サンプルZ(Δω)の値の外挿は、前記第1サブステップ(111)及び第2サブステップ(112)に対して、連続する周波数オフセットと関連した2つのサンプルZ(Δω)のそれぞれの値の間の最大の間隔(Gm)の事前評価と、前記値が外挿されるサンプルZ(Δω)と関連した前記周波数オフセットより絶対値で大きい前記周波数オフセットと関連した前記サンプルの値からの前記最大の間隔(Gm)の減算とからなる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記理論実験信号の測定された値の極性が確かとみなされる前記第1セットZの前記サンプルZ(Δω)を検出するステップ(110)は、
増加する周波数オフセットに従う前記第1セットZの前記サンプルの順序付けから生じる第1離散信号の導関数を計算する第1サブステップ(113)と、
前記導関数の極性のどんな不連続点でも検出する第2サブステップ(114)と、を含み、
前記理論実験信号の極性は考慮中の前記周波数オフセットΔωのセットに対して確かとみなされ、前記極性は、前記導関数の極性にどんな不連続点でも検出された場合に反転される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記器官の基本ボリュームと関連付けられた前記パラメータB0及びB1の推定に必要なステップ(100a、110、120、130、140)を、それぞれ前記器官の複数の基本ボリュームと関連付けられた前記パラメータB0及びB1の複数の推定値を生成するように反復する、請求項1から5の何れかに記載の方法。
【請求項7】
パラメータマップ(MB0、MrB1)の形で画像を生成するステップ(160)を含み、前記パラメータマップ(MB0、MrB1)のピクセルは、それぞれ、関心のある基本ボリュームに対して推定された前記パラメータB0又はB1の値を符号化している、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記イメージング解析システムのヒューマンマシン出力インターフェース(5)による前記生成された画像(MB0、MrB1)の表示をもたらすステップ(160)を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
処理ユニット(4)、外界と通信する手段、及び記憶手段を含み、
前記通信手段は、器官の基本ボリュームのスペクトルサンプリングによって生成されるデータのWASAB1取得シーケンスから生じる実験データを前記外界から受信するように設けられ、
前記記憶手段はプログラム命令を含み、前記プログラム命令の前記処理ユニットによる解釈によって、請求項1から8の何れかに記載の方法(100)が実行されることを特徴とする、イメージング解析システム(S)。
【請求項10】
請求項9に記載のイメージング解析システム(S)の前記処理ユニット(4)によって解釈され得る1つ以上の
コンピュータプログラム命令を含み、
前記コンピュータプログラム命令は前記システムの記憶手段に置くことが可能であり、前記
コンピュータプログラム命令の前記処理ユニットによる解釈によって、請求項1から8の何れかに記載の方法(100)が実行されることを特徴とする、コンピュータプログラム。
【請求項11】
請求項10に記載のコンピュータプログラムの前記
コンピュータプログラム命令を含む、コンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、以下で「刊行物」と表記される文献「Simultaneous mapping of water shift and B1 (WASAB1)_application tofield-inhomogeneity correction of CEST MRI data. Magnetic resonance inmedicine. 2017 Feb - Schuenke P, Windschuh J, Roeloffs V, Ladd ME, Bachert P,Zaiss M」に開示されているようなWASAB1取得シーケンスに対して後処理を行うための方法に関する。そのようなWASAB1シーケンスによって、頭字語MRIでよりよく知られた磁気共鳴イメージング装置の静磁場B0と励起磁場B1のマップを同時に作成することが可能になる。勿論、そのような後処理方法は、WASAB1シーケンスが発明されたCEST(化学交換飽和移動)イメージングの枠組み内で応用されるが、より一般に前記B0及びB1場の不均一性の補正が必要とされる任意の磁気共鳴イメージングで応用される。本発明による前記後処理方法の応用によって、それがCESTイメージングに応用される場合、この技術を臨床の現場で使用することが可能になり、従って、最後に、腫瘍、虚血組織、又は多発性硬化症のような代謝特性が変化した様々な病変を特徴付けるために、人間又は動物の器官の関心のある化学種と関連付けられたバイオマーカーの量を定めることが可能になる。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージングは、水分子のプロトンが磁場で励起されたときの水分子のプロトンの応答の解析に基づいている。この応答は、そのようなプロトンの環境に依存し、従って異なる種類の組織を識別することを可能にする。
図1及び
図2によって非限定的な例として示されるような核磁気共鳴イメージング装置1が一般に使用される。これは、患者の身体の1つ以上の部分、非限定的な例として、脳、心臓、肺の複数のデジタル画像シーケンス12を提供する。この目的で、前記装置は、高周波電磁波の組合せを考慮中の身体の部分に印加し、非限定的な例として核磁気共鳴イメージングに対する水素のような特定の原子によって再放出された信号を測定する。従って、その装置は、撮像されたボリュームの、一般にボクセルと呼ばれる、それぞれの基本ボリュームにおいて、磁気特性、従って生物学的組織の化学組成、それ故それらの性質を決定することを可能にする。核磁気共鳴イメージング装置1はコンソール2を用いて制御される。従って、ユーザ6、例えば、操作者、医師、又は研究者は、解析システムのヒューマンマシン入力インターフェース8を介して入力されるパラメータ又は命令16に基づいて、装置1を制御するためのコマンド11を選択し得る。そのようなヒューマンマシンインターフェース8は、例えば、コンピュータキーボード、ポインティングデバイス、タッチスクリーン、マイクロフォン、又は、より一般に、人間6によって与えられたジェスチャ又は命令を制御又は設定データに変換するように設けられた任意のインターフェースからなり得る。前記装置1によって生成された情報10から、人間又は動物の身体の一部の複数のデジタル画像シーケンス12が得られる。そのような情報10又は画像12は「実験データ」とも呼ばれるだろう。
【0003】
画像シーケンス12は、任意に、サーバ3、即ち自らの記憶手段を備え付けられたコンピュータ内に記憶され得、患者の医療ファイル13を構成し得る。そのようなファイル13は、組織の活性を強調する機能的画像、又は組織の特性を示す解剖学的画像のような異なる型の画像を含み得る。画像シーケンス12又はより一般に実験データは処理ユニット4によって解析され、処理ユニット4はこの目的で設けられる。そのような処理ユニット4は、例えば、前記イメージング解析システムの不揮発性メモリのような記憶手段に置かれた適切なアプリケーションプログラム命令を実行する1つ以上のマイクロプロセッサ又はマイクロコントローラからなり得る。前記処理ユニット4は画像を受け取るために外界と通信する手段を含む。前記通信手段によって、さらに、処理ユニット4は、最後に、磁気共鳴イメージングによって得られた実験データ10及び/又は12から前記処理ユニット4によって生成されたバイオマーカーの推定値又は定められた量の描写、例えばグラフィック及び/又はサウンド描写を、イメージング解析システムのユーザ6に、ヒューマンマシン出力インターフェース5を通じて提供することができる。本文書を通して、「ヒューマンマシン出力インターフェース」は、それ自体で又は組合せて使用され、再構成された生理学的信号、この特定の場合バイオマーカーの、グラフィック、ハプティック、若しくはサウンド表現、又はより一般に人間に知覚できるものを、磁気共鳴イメージング解析システムのユーザ6に出力又は提供することを可能にする任意の装置を意味する。そのようなヒューマンマシン出力インターフェース5は、非網羅的に、1つ以上のスクリーン、ラウドスピーカー、又は他の代替の適切な手段からなり得る。従って、解析システムの前記ユーザ6は、診断の間違いの有無の確認、適切と判断される治療行為の決定、研究作業の深化、測定装置の微調整のためのパラメータの改善等を行い得る。また、任意に、このユーザ6は、作動及び/又は取得パラメータ16によって、処理ユニット4又はヒューマンマシン出力インターフェース5の作動を設定し得る。従って、例えば、表示閾値を定めること、又は、表示を望む、推定された若しくは量を定められたバイオマーカー、指標、若しくはパラメータを選択することが可能である。この目的で、ユーザは、前述のヒューマンマシン入力インターフェース8、又はこのために設けられる第2入力インターフェースを使用する。有利に、ヒューマンマシン入力インターフェース8及びヒューマンマシン出力インターフェース5は1つの同じ物理的実体のみを構成し得る。また、イメージング解析システムの前記ヒューマンマシン入力インターフェース8及びヒューマンマシン出力インターフェース5は取得コンソール2に統合され得る。
図2に関して記述される変形例がある。それについて、前述のようなイメージングシステムは、画像シーケンス12を解析し、それから実験信号15を推定し、従ってこのタスクから解放される処理ユニット4にこれらの実験信号15を送るための前処理ユニット7をさらに含む。
【0004】
磁気共鳴イメージングに基づく技術又は方法のうち、化学交換飽和移動又はCESTイメージングが有名である。そのような技術は、関心のある化学種が飽和状態に達するように、異なる定められた共鳴周波数ωに従って高周波パルスを印加することからなる。前記定められた共鳴周波数ωは、実際に、それぞれ、非限定的に、アミド基(-NH)、アミン基(-NH2)、又はヒドロキシル基(-OH)のような関心のある異なる化学種と関連付けられている。このように励起されたそれらの不安定な水素プロトンは、水の励起されていない水素プロトンと交換される。定められた持続時間、例えば数秒間、継続的に反復された、水と関連した共鳴周波数ω0とは別の定められた共鳴周波数ωでの、高周波パルスのそのような印加によって、関心のある化学種の水飽和が蓄積される。関心のある化学種の濃度は、水の信号の減少、「CEST効果」と呼ばれる現象によって間接的に測定され得る。CEST効果はZスペクトルの形で解析される。そのような減少は「シングルショットエコープラナーイメージング」のような高速磁気共鳴イメージング取得シーケンスによって容易に検出され得る。
図3は、水の周波数に対する相対的な周波数オフセットΔωに従うサンプルZ(Δω)のセット(又は「データセット」)の形のZスペクトルの一例を示し、そのようなオフセットΔωはppmで表わされる。サンプルZ(Δω)が、
図3に示されるように、減少するΔωに従って順序付けられる場合、前記Zスペクトルは、有利に高周波による飽和なしで測定された信号によって規格化されて割合で表される、器官の基本ボリュームに対する測定装置1によって提供される実験信号の大きさの測定値を示す離散信号の形で示され得る。
図3によれば、サンプルのこのセットは、これらのサンプルが減少する周波数オフセットΔωに従って順序付けられる場合、実質的に「V」を描く離散Z信号を構成し、その最小値Z(Δω)mは周波数オフセットΔω = 1 ppmと関連付けられている。論理的に、前記装置が完全に微調整され、及び/又は静磁場が均一である場合、前記最小値Z(Δω)mはゼロの周波数オフセットΔωと関連付けられるべきである。
【0005】
CEST技術は、濃度が従来の磁気共鳴イメージングシーケンスで検出するのに不十分である人体の代謝産物の検出を改善する。従って、このCEST技術によって、診断を確立して病変の治療において治療の決定を行おうとする医師にとって非常に貴重な情報を得ることが可能になる。しかし、臨床の現場において、そのようなバイオマーカーは速やか且つ正確に生成されなければならない。しかし、CEST技術の実行には、現状技術によれば、特に臨床の現場によって課される必要条件と相容れない能力及び/又は計算時間が必要である。
【0006】
高周波パルスの継続的な印加の間、直接水飽和(DS)又は他の磁化移動(MT)コントラストのような数多くの効果が飽和移動と相互作用する。磁場の不均一性のような磁気共鳴イメージング技術の実行に固有の他の現象が前記効果に結合される。実際、CESTコントラストは不安定なプロトンと水の間の化学交換に基づいている。MTコントラストは水のプロトンと固体又は半固体環境中のプロトンとの間の磁化交換から生じる。それ故、信頼できるCEST信号を得るために、補正が必要である。さらに、理論的に、関心のある分子の濃度、水飽和を示す信号を抽出するには、例えば主に水の共鳴周波数の周りの幾つかのスペクトルの位置の決定のみが必要であるが、実際には、そのような抽出は磁気共鳴イメージング装置の静磁場B0の不均一性の存在のために複雑である。この不均一性は、部分的に患者の組織特性によって引き起こされ、
図3に示されるように、取得されるスペクトルサンプルのオフセットに影響する。
【0007】
この問題を克服するために、水の共鳴周波数の周りで密なサンプリングが行われる。それから、取得された測定値は高周波による飽和なしで測定された信号で規格化される。適切な数学的補間を用いて、
図4に示されるように、ボクセル毎に、関心のある周波数オフセットの範囲に対して、Zスペクトルが得られる。そのサンプルは、減少する周波数オフセットΔωに従って順序付けられた後、実質的に「V」字形状又は曲線を有する離散信号を示す。それから、前記Zスペクトルは、
図5に示されるように、その最小値Z(Δω)mが水の周波数に一致するように「中心に再配置される」。従って、Zスペクトルは相対的な形で示され得、水の周波数はゼロの周波数オフセットΔωと等しく、周波数ωは、水の周波数に対して正又は負である相対的な周波数オフセットΔωの形で、ppmで表される。そのような相対的な周波数オフセットは一般にppmで表される。従って、
図5に示されるようなパラメータB0の補正は、複数のボクセル又は基本ボリュームに適用され得る。そして、基本ボリュームのセットに対するZスペクトルの最小値Z(Δω)mのオフセット位置を用いて、固有マップMB0と呼ばれるマップ、即ちラスター画像が計算されて表示され得る。
【0008】
図6Aは、
図3から
図5と関連して前述されたようなZスペクトルから生成されるバイオマーカーの第1の非限定的な例の決定を示す。そのようなバイオマーカーは、ゼロの周波数オフセットに関して対称な周波数オフセットΔωのそれぞれの範囲について、サンプルZ(Δω)からのZスペクトルの補間曲線下の一般に「ラベル」と呼ばれる第1面積ZA1と、前記曲線下の一般に「リファレンス」と呼ばれる第2面積ZA2との間の差分に相当し得る。この特定の場合、
図6Aの例において、面積ZA1は+3ppmと+4ppmの間に含まれる周波数オフセットと関連付けられ、面積ZA2は-3ppmと-4ppmの間に含まれる周波数オフセットと関連付けられる。そのような範囲の選択は、通常、アミドと関連付けられている。実際、アミドの共鳴周波数は概して平均で周波数オフセットΔω = 3.5ppmに一致する。変形例として、共鳴周波数が概して平均で周波数オフセットΔω = 2 ppmに一致するアミンに関心がある場合、前記範囲は、それぞれ、面積ZA1に対して1.5 ppmから2.5 ppmまで、面積ZA2に対して-1.5 ppmから-2.5 ppmまでに含まれるように選択され得るだろう。このバイオマーカーと関連したパラメータマップが、関心のある複数の基本ボリュームに対する前記バイオマーカーを示すために作られて任意に表示され得る。
【0009】
図6Bは、
図3から
図5と関連して前述されたようなZスペクトルから生成されるバイオマーカーの第2の非限定的な例の決定を示す。バイオマーカーが2つの面積ZA1とZA2の減算によって得られる前述の例に反して、前記バイオマーカーはZスペクトルのサンプルの2つの補間値Z1とZ2の減算によって生成され得、前記サンプルも、それらとそれぞれ関連した周波数オフセットΔω1とΔω2が周波数オフセットΔω=0に関して対称であるように選択される。前述の例のやり方で、関心がアミドにある場合、
図6Bに示されるように、周波数オフセットΔω1 = 3.5ppmとΔω2 = -3.5ppmが好まれるだろう。変形例として又は加えて、関心がアミドにある場合、周波数オフセットΔω1 = 2ppmとΔω2 = -2ppmが選択され得るだろう。そのようなバイオマーカーは「磁化移動率非対称性(MTRasym)」と呼ばれる。そのような選択は、事前に準備される設定の対象、又は適切なヒューマンマシン入力インターフェースでユーザによって入力される選択肢の対象を形成し得る。
【0010】
Zスペクトルのサンプルの密度の増加は計算されるMB0マップのより高い分解能に繋がるが、Zスペクトルの幾つものサンプリングの取得は、長い計算時間をもたらし、パラメータB0のマップの作成に対する最適な結果と必ずしも一致しない。
【0011】
磁気共鳴イメージング装置の静磁場B0の不均一性によって引き起こされる困難の他に、Zスペクトルは励起磁場B1の不均一性によっても影響される。この問題を克服する目的で、信頼できるCEST信号の抽出に成功するために、パラメータB1の補正も一般に実行される。
【0012】
これらの欠点を軽減する目的で、「バルク」水プロトンの共鳴周波数のより正確な決定を可能にするために、WASAB1シーケンスが提案された。前述のように、静磁場B0及び/又は励起磁場B1の不均一性は磁気共鳴イメージングにおいて避けられない。それらは取得される画像の強度に歪みを生じさせる。それ故、前記強度の妥当性を高め、磁気共鳴イメージング装置の磁場B0及びB1の分布と関連付けられた空間情報を正確に決定するために、WASAB1シーケンスに対して後処理を行うための方法を実行することが必要である。
【0013】
WASAB1取得は、オフレゾナンス照射によって引き起こされるラビ振動に基づいて、静磁場B0と励起磁場B1のマップを同時に作成することを可能にする磁気共鳴イメージング取得シーケンスであり、オフレゾナンス照射は前述の不均一性を補正するために使用され得る。
【0014】
WASAB1シーケンスにから生じるZスペクトルは、水の共鳴周波数の周りの幾つかの周波数オフセットに従うサンプリングから生じる。そして、これは、水の周波数から遠く離れた周波数に対して取得された画像M0を用いて規格化される。ただ1つのボクセルのWASAB1 Z(Δω)スペクトル強度は、例えば非限定的に刊行物によって提案されたように、ブロッホ方程式に基づいて、
【数1】
とモデル化され得る。ここで、Δωは水の周波数の周りの相対的な周波数オフセットであり、c、d、B1、及びB0は4つの自由パラメータである。パラメータc及びdはどの周波数オフセットとも無関係に振幅調整を行う。パラメータB1は周期性を変化させ、B0は関数の対称軸を変化させ、γは磁気回転比であり、tpはパルスの持続時間である。
【0015】
前述の関数又はモデルは、
【数2】
ように簡略化された形で書かれ得る。
【0016】
図7に示されるように、
図7で例として参照される基本ボリュームVa及びVbのような、WASAB1シーケンスの対象を形成した関心のあるそれぞれの基本ボリュームに対するこれらのパラメータを調整することで、不均質性マップMB0及びMrB1を作成し、それらを品質管理目的で使用し、取得されるイメージングシーケンスを補正し得る。マップMrB1はWASAB1のマップMB1を励起場の公称振幅で除算することで得られる。一般に、WASAB1シーケンスの取得に使用される公称励起磁場B1は3.7μTである。WASAB1シーケンスの短い取得時間にもかかわらず、後処理を実行するための計算時間は非常に長い。なぜなら、その計算時間は、Bloch方程式から得られる4つのパラメータc、d、B0、及びB1を有するモデルの調整に基づくからである。
【0017】
現時点で、WASAB1シーケンスのパラメータB0及びB1を決定するためのただ1つの後処理方法、即ち刊行物に発表された方法が文献上で提案されている。
【0018】
そのような方法は非線形最適化手法を用いて測定値とモデルとの間の残差の平方和を最小化することからなる。そのような既知の後処理は2つのステップを備える。
【0019】
第1ステップによれば、関心のあるそれぞれボクセル又は基本ボリュームに対して、最適なパラメータc、d、B0、及びB1を見つけるために、4次元のルックアップテーブル又はグリッドを用いて、パラメータc、d、B0、B1の空間を網羅的に探索する。実際、調整ステップの実行中に局所的最小値を避けるために、信号のモデルの非線形性を考慮して、著者らは、調整アルゴリズムをそのまま適用する前に、4つの調整パラメータの全ての可能な組合せに対してWASAB1 Zスペクトルに関するこのルックアップテーブル又はグリッドを作成した。前記パラメータの最適な組合せは、ボクセルに対して取得されたWASAB1 Zスペクトルと、前記ルックアップテーブル又はグリッドから選択されたパラメータの所与のセットに対してシミュレーションされたスペクトルとの間の最小の平均二乗誤差(又はMSE)を生成するものである。
【0020】
現状技術によるそのような後処理方法の第2ステップは、パラメータc、d、B0、及びB1の前もって見つけられた最適な組合せが、レーベンバーグ・マルカートアルゴリズムを用いた有界最小化法の初期条件として使用される、モデルをデータに合わせて調整するステップである。
【0021】
モデルのデータに合わせた調整を実行するために計算時間の増加と共に積み上げられる、ボクセル毎に実行しなければならない非常に多くの反復は、1時間より長い後処理方法の実行持続時間に繋がる。そのような持続時間は臨床の現場における応用にとって非常に長い。
【0022】
その上、WASAB1シーケンスから生じる実験信号を記述する解析モデルは、パラメータの特定のセットに対して、前記信号(それは「理論的」とみなされ得、その大きさのみが様々な周波数オフセットに対して測定されて既知となり、従って非極性の実験信号が構成される)が負になり得ることを予測する。
図7に示されるように、第2基本ボリュームVbと関連付けられたそのような理論実験信号の大きさの測定値が変換されたものに反して、そのような理論実験信号は、第1基本ボリュームVaに対して、変化する極性を示し得る。それ故、磁気共鳴イメージング装置は理論実験信号の大きさを測定するため、前記理論実験信号の符号又は極性は取得中に「失われる」。Zスペクトルは「非極性」とみなされ得る信号又はサンプルのセットである。従って、基本ボリュームVaと関連したZaスペクトルが示すように、「尖点」C1とC2の間のサンプルは負の極性を有する理論実験信号の大きさを示す。それ故、装置によって行われる測定は、非極性の実験信号を生成するために、絶対値フィルタを前記理論実験信号に適用するので、前記尖点C1及びC2が非極性の実験信号に現れる。その結果、モデルはこの測定結果を考慮に入れるために絶対値を伴う。絶対値の使用はモデルの推定を複雑にする。なぜなら、それは最小化しようとする関数に不連続点(尖点)を導入するからである。加えて、これによって、前記信号の符号が「失われない」場合に可能だろう妥当な最適化のどんな実行も損なわれる。従って、
図7は、それぞれ2つの異なる基本ボリュームVaとVbと関連した2つの理論実験WASAB1信号の大きさの測定サンプルを示す。整然と正の極性を有する理論実験信号の大きさの測定値を示す、関心のある第2ボリュームVbと関連したZbスペクトルに反して、第1基本ボリュームVaと関連したZaスペクトルは、変化又は変動する極性を有する、即ち、時には正、時には負である理論実験信号の大きさを示す。従って、Zaスペクトルは尖点C1とC2の形で2つの最小値を示す。振幅が考慮中の周波数オフセットに対して正の極性を有する理論実験信号の大きさを示す、前記2つの尖点C1及びC2の両側に位置するサンプルに反して、尖点C1とC2の間で、測定された信号の大きさは第1基本ボリュームVaと関連した理論実験信号の負の振幅に対応する。その上、
図7は、人間の脳のスライスの基本ボリュームのセットに対する前述のパラメータマップMB0及びMrB1を示す。パラメータB0は-0.1 ppmと+0.3 ppmの間に含まれる不均一な静磁場を示すことに留意されたい。
【発明の概要】
【0023】
本発明は、既知又は前述の解決策によって提起された欠点の全て又は一部に応ずることを可能にする。
【0024】
本発明によってもたらされる数多くの利点のうち、
-WASAB1シーケンスから生じる実験信号のサンプルに対して後処理を行うための方法は、現状技術による実行の時間及び難しさと比較して、理論実験信号のサンプル測定を行う医用イメージング装置の静磁場及び励起磁場をそれぞれ示すパラメータB0及びB1のロバストな非常に速い推定をもたらすように設計され、
-そのような後処理方法の実行は、特に臨床の現場に、数多くの病変と関連した決定及び診断のためのツールを提供することに特に有望なCEST技術を開き、
-本発明による前記パラメータB0及びB1の推定は、現状技術に従って記述されるモデルより、モデルが4つのパラメータの代わりに2つのパラメータのみを含むため簡単であり、さらに安定したモデルの使用に基づき、前記パラメータB0及びB1の推定における逸脱が著しく低減され、その結果、高品質で正確な医療従事者に提供されるパラメータマップを生成することが可能になり、
-本発明による後処理方法によって、前記B0及びB1場の不均一性の補正が必要とされる任意の磁気共鳴イメージングへの応用が直接的且つ能率的に実行される、ことが挙げられるだろう。
【0025】
この目的で、本発明は、まず、器官の基本ボリュームと関連付けられた、医用磁気共鳴イメージング装置によるWASAB1取得シーケンスから生じる実験信号のサンプルZ(Δω)の第1セットZに対して後処理を行うための方法(100)に関し、前記第1セットZのサンプルZ(Δω)のそれぞれの値は水の共鳴周波数に対する周波数オフセットΔωに従う理論実験信号の大きさを示し、前記方法はイメージング解析システムの処理ユニットによって実行される。
【0026】
そのような方法の特に効果的で速い実行のため、最後に正確でロバストな推定をもたらすために、そのような方法は、
-理論実験信号の値の極性が確かとみなされる第1セットZのサンプルZ(Δω)を検出し、サンプルY(Δω)の第2セットYを、
○理論実験信号の極性が確か且つ正とみなされる場合、Y(Δω) = Z(Δω)、
○前記理論実験信号の極性が確か且つ負とみなされる場合、Y(Δω) = -Z(Δω)、のように構成するステップと、
-それぞれ医用磁気共鳴イメージング装置の静磁場B0及び励起磁場B1を示す2つのパラメータを有する、定められたモデルをサンプルの第2セットYに合わせて調整し、前記モデルの前記パラメータB0及びB1の第1推定値を生成するステップと、を含む。
【0027】
必要に応じて、生成される推定値の妥当性を改善するために、本発明による方法は、
-このように調整されたモデルから、サンプルZ(Δω)の全て又は一部に対して測定された理論実験信号の値の極性を推定し、理論実験信号の極性が正と推定される場合、Y(Δω) = Z(Δω)、理論実験信号の極性が負と推定される場合、Y(Δω) = -Z(Δω)のように、サンプルY(Δω)のセットを含むサンプルの第2セットYを増進するステップと、
-前記定められたモデルをサンプルの第2セットYに合わせて調整し、前記パラメータB0及びB1の第2推定値を生成するステップと、を含み得る。
【0028】
第1実施形態によれば、大きさが測定される理論実験信号の値の極性が確かである第1セットZのサンプルZ(Δω)を検出するステップは、
-絶対値で最大の負の周波数オフセットからゼロのそのような周波数オフセットまで、任意のサンプルZ(Δω)に対して、前記サンプルの値を、それぞれ異なる周波数オフセットと関連した1つ以上のサンプルの値から外挿する第1サブステップと、
-最大の周波数オフセットからゼロのそのような周波数オフセットまで、任意のサンプルZ(Δω)に対して、前記サンプルの値を、それぞれ異なる周波数オフセットと関連した1つ以上のサンプルの値から外挿する第2サブステップと、を含み得る。
【0029】
この第1実施形態によれば、周波数オフセットΔωに対する理論実験信号の極性は、前記周波数オフセットに対するサンプルZ(Δω)の外挿値Z(Δω)’の符号によって決定され得る。所与の周波数オフセットΔωに対する理論実験信号の前記極性は、サンプルZ(Δω)の外挿値Z(Δω)’が正のままである場合に限り、確か且つ正であると見なされる。
【0030】
大きさが測定される理論実験信号の値の極性が確かである第1セットZのサンプルZ(Δω)を検出するステップのこの第1実施形態によれば、サンプルZ(Δω)の値の外挿は、第1サブステップ及び第2サブステップに対して、連続する周波数オフセットと関連した2つのサンプルZ(Δω)のそれぞれの値の間の最大の間隔の事前評価と、値が外挿されるサンプルZ(Δω)と関連した周波数オフセットより絶対値で大きい周波数オフセットと関連したサンプルの値からの前記最大の間隔の減算からなり得る。
【0031】
変形例として、本発明は、測定された理論実験信号の値の極性が確かである第1セットZのサンプルZ(Δω)を検出するステップの第2実施形態を提供する。この第2実施形態によれば、前記ステップは、
-増加する周波数オフセットに従う前記第1セットZのサンプルの順序付けから生じる第1離散信号の導関数を計算する第1サブステップと、
-前記導関数の極性のどんな不連続点でも検出する第2サブステップと、含み得る。
【0032】
理論実験信号の測定値の極性は、考慮中の周波数オフセットΔωのセットに対して確かとみなされ、前記極性は、前記導関数の極性にどんな不連続点でも検出された場合に反転される。
【0033】
値の極性が確かである理論実験信号の大きさの測定値を表す第1セットZのサンプルZ(Δω)を検出するステップの実施形態がどんなものでも、器官の基本ボリュームと関連付けられたパラメータB0及びB1の推定に必要なステップを、それぞれ前記器官の複数の基本ボリュームと関連付けられた前記パラメータB0及びB1の複数の推定値を生成するように反復し得る。
【0034】
この場合、イメージング装置を較正するために、又は特定の人間又は動物の病変を診断するための非常に貴重なツールを提供するために、本発明による方法は、パラメータマップの形で画像を生成するステップを含み得、パラメータマップのピクセルは、それぞれ、関心のある基本ボリュームに対して推定されたパラメータB0又はB1の値を符号化している。
【0035】
そして、本発明は、そのような方法が、イメージング解析システムのヒューマンマシン出力インターフェースによる前記生成された画像の表示をもたらすステップを含み得ることを提供する。
【0036】
第2の主題によれば、本発明は、処理ユニット、外界と通信する手段、及び記憶手段を含むイメージング解析システムに関する。そのようなシステムの通信手段は、器官の基本ボリュームのスペクトルサンプリングによって生成されるデータのWASAB1取得シーケンスから生じる実験データを前記外界から受信するように設けられ、記憶手段はプログラム命令を含み、プログラム命令の前記処理ユニットによる解釈又は実行によって、本発明によるWASAB1取得シーケンスから生じる実験信号のサンプルZ(Δω)の第1セットZに対して後処理を行うための方法が実行される。
【0037】
第3の主題によれば、本発明は、イメージング解析システムの処理ユニットによって解釈され得る1つ以上のプログラム命令を含むコンピュータプログラムに関し、前記プログラムは前記システムの記憶手段に置くことが可能であり、前記命令の前記処理ユニットによる解釈によって、本発明によるWASAB1取得シーケンスから生じる連続的な理論実験信号のサンプルZ(Δω)の第1セットZに対して後処理を行うための方法が実行されることを特徴とする。
【0038】
第4の主題によれば、本発明はそのようなコンピュータプログラムのプログラム命令を含むコンピュータ可読記憶媒体に関する。
【0039】
他の特徴及び利点は、以下の説明を読み、それに付随する図を検討すると、より明確にわかるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】既に説明された
図1は、核磁気共鳴で得られた画像を解析するためのシステムの簡略化された描写を示す。
【
図2】既に説明された
図2は、核磁気共鳴で得られた画像を解析するためのシステムの変形例の簡略化された描写を示す。
【
図3】既に説明された
図3は、器官の関心のある基本ボリュームと関連付けられた、順序付けられたサンプルZ(Δω)のセットの形のZスペクトルの第1例を示す。
【
図4】既に説明された
図4は、
図3のサンプルと同様に順序付けられたサンプルZ(Δω)のセットの形のZスペクトルの同じ例を示す。そのサンプルは、現状技術に従って、前記Zスペクトルのサンプルに合わせて、定められたモデルが調整された後に推定された連続的な実験信号に重ねられている。
【
図5】既に説明された
図5は、
図3のサンプルと同様に順序付けられたサンプルZ(Δω)のセットの形のZスペクトルの同じ例を示す。そのサンプルは、医用イメージング装置の補正及び微調整後、現状技術に従って、前記Zスペクトルのサンプルに合わせて、定められたモデルが調整された後に推定された連続的な実験信号に重ねられている。
【
図6A】既に説明された
図6Aは、イメージング装置の補正及び微調整後の現状技術によるZスペクトルのサンプルからの第1バイオマーカーの推定を示す。
【
図6B】既に説明された
図6Bは、イメージング装置の補正及び微調整後の現状技術によるZスペクトルのサンプルからの第2バイオマーカーの推定を示す。
【
図7】既に説明された
図7は、人間の脳の複数の基本ボリュームVa、Vbに対する順序付けられたサンプルZa(Δω)、Zb(Δω)のセットの形のZスペクトルの幾つかの例と、医用イメージング装置の静的な場B0及び励起場B1と関連したパラメータマップとを示す。
【
図8】
図8は、考慮中の周波数オフセットにおいて極性が正とみなされる理論実験信号の大きさを示すWASAB1スペクトルのサンプルを検出する目的で、本発明に従って、WASAB1スペクトルに対して後処理を行うための方法のステップの第1実施形態を示す。
【
図9】
図9は、考慮中の周波数オフセットにおいて極性が既知とみなされる理論実験信号の大きさを示すWASAB1スペクトルのサンプルを検出する目的で、本発明に従って、WASAB1スペクトルに対して後処理を行うための方法のステップの第2実施形態を示す。
【
図10】
図10は、本発明によるWASAB1スペクトルに対して後処理を行うための方法の機能的なアルゴリズム例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
次に、
図10と関連して、
図1又は2と関連して前述されたような医用磁気共鳴イメージング装置1によるWASAB1取得シーケンスから生じる実験信号10、12のサンプルZ(Δω)の第1セットZに対して、本発明に従って、後処理100を行うための方法の一例が記述される。
【0042】
そのような方法100は、関心のある器官の複数の基本ボリュームに対して反復して実行され得る処理100aを含む。
【0043】
ボクセル又は基本ボリュームに対して実行されるそのような処理100aは、2つの有利な実施形態と関連して後で見られるように、ことによると2つのステップ130及び140によって補われる2つのステップ110及び120を含む。この処理100aの第1の目的は、ステップ110において、WASAB1シーケンスから生じる第1Zスペクトルのサンプルのセットからサンプルの第2セットYを構成することからなる。サンプルZ(Δω)が、極性が不確か又は不定な理論実験信号10、12の振幅を示し得る前記Zスペクトルに反して、サンプルの第2セットYは、極性が既知である前記理論実験信号10、12の振幅を示すサンプルY(Δω)を含む。第2セットYのそのような構成は、2つの異なる実施形態を示す
図8及び
図9と関連して引き続いて検討される。
【0044】
図8及び
図10によって共同で示される第1実施形態によれば、大きさが測定される理論実験信号の極性が確か且つ正である場合に、サンプルY(Δω)がそれぞれサンプルZ(Δω)と等しいZスペクトルのサブセットの形で、サンプルの第2セットYが生成され得る。この目的で、ステップ110は、大きさが測定される理論実験信号の極性が考慮中の周波数オフセットΔωにおいて不確かな又は恐らく負でさえある場合、第1セットZの特定のサンプルが切り離される故に第2セットYにおいて再現されないように、サブステップ111及び112を含む。
【0045】
変形例として、
図9の例と関連して、ステップ110がサブステップ113及び114を含む場合において、大きさが測定される理論実験信号の極性が確かに正である場合、サンプルの第2セットYのサンプルY(Δω)はそれぞれ第1セットZのサンプルZ(Δω)と等しい。大きさが測定される前記理論実験信号の極性が確かに負である場合、前記サンプルY(Δω)はそれぞれ-Z(Δω)と等しい。それ故、サンプルの第2セットYはZスペクトルに反して「極性を与えられる」。
【0046】
使用される実施形態がどんなものだろうと、パラメータB0及びB1を推定するためのモデルは、ステップ120又は140において、大きさが考慮中の周波数オフセットにおいて測定される理論実験信号の極性が既知であるサンプルの第2セットYに合わせて調整されるとき、現状技術によるモデルに反して絶対値の概念をもはや統合しない。それ故、本発明の寄与のために、前記モデルは、調整することがより簡単であり、よりロバストである。また、このモデルは4つのパラメータから2つのパラメータまで「低減」され得、本発明による後処理方法100の実行における性能が現状技術と比較して100倍高まることがわかるだろう。
【0047】
本発明による後処理方法100の第1ステップ110の第1実施形態が、
図8及び10と関連して検討される。前記ステップ110は、大きさが測定される理論実験信号の値の極性が確か且つ正である第1セットZのサンプルZ(Δω)を検出することからなる。その上、前記ステップ110は、考慮中の周波数オフセットΔωにおいて正の極性を有する理論実験信号の測定値を示すものとして前もって検出されたひとまとまりのサンプルZ(Δω)からY(Δω) = Z(Δω)のようにサンプルY(Δω)の第2セットYを構成することからなる。
図8は、左側部分に、サンプルZ(Δω)が、点によって表され、増加する周波数オフセットに従って、この特定の場合、-2ppmと等しい周波数オフセットから+2ppmと等しい周波数オフセットまで順序付けられたZスペクトルを示す。サンプルのこの第1セットZは、極性が演繹的に既知ではない理論実験WASAB1信号の大きさの測定値を表す正の値のみを含む。第1セットZから構成されたサンプルの第2セットYは、前記
図8の右側部分に、周波数オフセットΔωの同じ順序付けに従って示されている。このステップ110の目的は、サンプルZ(Δω)が、それぞれ、極性が考慮中の周波数オフセットΔωにおいて確か且つ正である理論実験信号の大きさの測定値を表す場合且つその場合に限り、セットYが第1セットZのZ(Δω)と等しいサンプルY(Δω)のみを含むようにセットYを構成することにある。極性が考慮中の周波数オフセットΔωにおいて不確かな又は恐らく負でさえある理論実験信号の測定値を表す第1セットZのサンプルZ(Δω)は切り離される。それ故、サンプルの第2セットYは、
図8に示されるように、第1セットZのサブセットである。セットYは極性を与えられたサンプルのセットとみなされ得る。なぜなら、大きさが測定される理論実験信号の極性が考慮中の周波数オフセットに対して既知だからである。
【0048】
考慮中の周波数オフセットΔωにおいて確かに正の極性を有する理論実験信号の測定値を示すサンプルZ(Δω)を検出するために、ステップ110は、絶対値で最大の負の周波数オフセットΔωからゼロのそのような周波数オフセットまで、任意のサンプルZ(Δω)に対して、前記サンプルZ(Δω)の値を、それぞれ絶対値でより大きい負の周波数オフセットと関連した一つ以上のサンプルの値から外挿することからなる第1サブステップ111を含む。好ましいが非限定的な例として、
図8によれば、
図8において「x」で表されるサンプルZ(Δω)の外挿値Z(Δω)’は、
図8において符号Gmを与えられた、連続する周波数オフセットと関連した2つのサンプルZ(Δω)のそれぞれの値の間の最大の間隔の事前評価からなり得る。そして、前記ステップ111は、値が外挿されるサンプルZ(Δω)と関連した周波数オフセットより絶対値で大きい周波数オフセットと関連したサンプルの値から前記最大の間隔Gmを減算することで、外挿値Z(Δω)’を計算することからなる。従って、
図8において「x」で表される外挿値に接続された縦棒は、-2 ppmに近い周波数オフセットΔωから0 ppmに近い周波数オフセットまでのサンプルZ(Δω)の左から右へ行われるこの外挿演算を示す。測定された大きさがサンプルZ(Δω)に一致する理論実験信号の極性は、外挿値Z(Δω)’が正のままである限り、又は考慮中の周波数オフセットΔωがゼロでない限り、確か且つ正とみなされる。外挿値Z(Δω)’が負になるとすぐに、これは、第1セットZのサンプルによって示される離散実験信号が尖点を有することを意味する。ステップ111は停止し、次のサンプル、即ちより大きな周波数オフセットΔωと関連したものは、極性が不確か又は負である理論実験信号の測定値を示すとみなされる。前のサンプルのみが考慮中の周波数オフセットにおいて正の極性を有する理論実験信号の大きさの測定値を示すものとして検出される。従って、これらの検出されたサンプルは第2セットYにおいてY(Δω) = Z(Δω)のように再現される。従って、
図8の例では、サブステップ111の実行の最後において、最初の16個のサンプルのみがセットYを作るために有利に考慮される。最初のサンプルZ(Δω)、即ち絶対値で最大の周波数オフセットと関連したものは、仮定で、ステップ111を初期化するために有利に検出される。
【0049】
その上、ステップ110はサブステップ111の振舞いと似た振舞いを示すサブステップ112を含む。それは、極性が考慮中の周波数オフセットにおいて確か且つ正である理論実験信号の大きさの測定値を表す第1セットZのサンプルZ(Δω)を検出するために、
図8において右から左へ、即ち最大の周波数オフセットΔωからゼロの周波数オフセットまで、サンプルZ(Δω)を調べることからなる。その上、それは、これらのひとまとまりの検出されたサンプルを基にしてサンプルの第2セットYをY(Δω) = Z(Δω)のように増進し、考慮中の周波数オフセットに対して不確かな又は恐らく負の極性を有する理論実験信号の大きさの測定値を示すサンプルZ(Δω)を切り離すことからなる。
【0050】
この目的で、サブステップ112は、最大の正の周波数オフセットΔωからゼロのそのような周波数オフセットまで、任意のサンプルZ(Δω)に対して、前記サンプルZ(Δω)の値を、より大きな正の周波数オフセットΔωとそれぞれ関連した1つ以上のサンプルZ(Δω)の値から外挿することからなる。好ましいが非限定的な例として、
図8によれば、
図8において「x」で表されるサンプルZ(Δω)の外挿値Z(Δω)’は、値が外挿されるサンプルZ(Δω)と関連した周波数オフセットより小さい周波数オフセットと関連したサンプルの値から、2つの連続する周波数オフセットと関連した2つのサンプルのそれぞれの値の間の最大の間隔Gmを減算することで、サンプルZ(Δω)の外挿値Z(Δω)’を計算することからなり得る。間隔Gmはサブステップ111の枠組み内で既に言及されている。従って、
図8において「x」で表される外挿値に接続された縦棒は、+2 ppmに近い周波数オフセットΔωから0 ppmに近い周波数オフセットΔωまでのサンプルZ(Δω)の右から左へ行われるこの外挿演算を示す。大きさZ(Δω)が周波数オフセットΔωに対して測定される理論実験信号の極性は、外挿値Z(Δω)’が正のままである限り、且つ考慮中の周波数オフセットΔωがゼロでない限り、確か且つ正であると見なされる。外挿値Z(Δω)’が負になるとすぐに、これは、第1セットZのサンプルによって示される離散信号が尖点を有することを意味する。サブステップ112は停止し、次のサンプル、即ちより小さい周波数オフセットΔωと関連したものは、極性が不確か又は負である理論実験信号の測定値を示すと見なされる。前のサンプルのみが、極性が考慮中の周波数オフセットにおいて正である理論実験信号の測定値を示すものとして検出される。従って、これらのサンプルは第2セットYにおいてY(Δω) = Z(Δω)のように再現される。従って、
図8の例では、サブステップ112の実行の最後において、最初の15個のサンプルのみがセットYを増進するために有利に考慮され、最大の周波数オフセットと関連したサンプルZ(Δω)は、仮定で、サブステップ112を初期化するために有利に検出される。
【0051】
サブステップ111及び112は好ましい実施例を通じて記述された。その実施例によれば、
図8において「x」で表されるサンプルZ(Δω)の外挿値Z(Δω)’を計算することは、
図8において符号Gmを与えられた、連続する周波数オフセットと関連した2つのサンプルZ(Δω)のそれぞれの値の間の最大の間隔を事前評価してから、値が外挿されるサンプルZ(Δω)と関連した周波数オフセットより絶対値で大きい周波数オフセットと関連したサンプルの値から前記最大の間隔Gmを減算することからなり得る。変形例として又は加えて、他の外挿手法が実行され得る。より一般に、サンプルZ(Δωi)、即ち利用できるn個のサンプルのうちの周波数オフセットΔωiと関連したi番目のサンプルの外挿値Z(Δωi)’は、関係Z(Δωi)’ = f (Z(Δω1), Z(Δω2), …, Z(Δωn), P)に従って書かれ得ることが考えられ得る。ここで、nは正の整数、fは任意の関数、Pは、任意のパラメータ、ことによると複数のパラメータである。従って、前述の例によれば、関数fは、間隔Gmを計算し、減算を行う目的を有し、P = 1は、値Z(Δωi)が外挿されるサンプルより前のサンプルのランクを決定する。変形例として、第2の非限定的な実施例によれば、関数fは、値を外挿しようとするサンプルに続くP個のサンプルの値の平均値の計算からなり得る。変形例として、本発明の範囲から外れることなく、組(f, P)の他の組合せが使用され得る。
【0052】
図9は、本発明による後処理方法100のステップ110の第2実施形態を示す。前記ステップ110は、大きさが測定される理論実験信号の値の極性が確かである第1セットZのサンプルZ(Δω)を検出することからなる。その上、前記ステップ110は、サンプルZ(Δω)が確かな且つ正の極性を有する理論実験信号の測定値を示す場合にY(Δω) = Z(Δω)のように、確かな且つ負の極性を有する理論実験信号の測定値を示すひとまとまりのサンプルZ(Δω)からY(Δω) = -Z(Δω)のように、サンプルY(Δω)の第2セットYを構成することからなる。
図9は、前述の
図8と同様に、左側部分に、サンプルZ(Δω)が、点によって表され、増加する周波数オフセットに従って、この特定の場合、-2 ppmから+2 ppmまで順序付けられたZスペクトルを示す。サンプルのこの第1セットZは、極性が演繹的に既知ではない理論実験WASAB1信号の大きさの測定値を表す正の値を含む。第1セットZから構成されたサンプルの第2セットYは、前記図の右側部分に、周波数オフセットΔωの同じ順序付けに従って示されている。このステップ110の目的は、サンプルZ(Δω)が、それぞれ、極性が考慮中の周波数オフセットΔωにおいて確か且つ正である理論実験信号の大きさの測定値を表す場合且つその場合に限り、セットYが第1セットZのそれらのZ(Δω)と等しいサンプルY(Δω)のみを含むようにセットYを構成することにある。極性が考慮中の周波数オフセットにおいて確かに負である理論実験信号の大きさの測定値を表す第1セットZのサンプルZ(Δω)は、Y(Δω) = -Z(Δω)のようになる。それ故、サンプルの第2セットYは、
図9に示されるように、「極性を与えられた」とみなされ得るサンプルのセットである。なぜなら、理論実験信号の極性が考慮中の周波数オフセットにおいて既知だからである。
【0053】
考慮中の周波数オフセットΔωに対して確かに正又は負の極性を有する理論実験信号の大きさの測定値を示すサンプルZ(Δω)を検出するために、ステップ110は、最大の負の周波数オフセットΔωから、任意のサンプルZ(Δω)に対して、増加する周波数オフセットΔωに従うサンプルZ(Δω)の順序付けから生じる離散Z信号の導関数を計算することからなる第1サブステップ113を含む。この導関数は
図9において不連続な曲線の形で現れる。前記離散Z信号の尖点C1及びC2の存在を考慮に入れて、導関数はその符号又は極性の2つの明確な不連続点dd1及びdd2を有する。そのような尖点が存在しない場合、即ちサンプリングされた理論実験信号の極性が一定である場合、事情は全く異なるだろう。ステップ110は、前記導関数の極性のそのような不連続点を検出する第2サブステップ114を含み、1つ以上の連続する周波数オフセットΔωに対する理論実験信号の測定値の極性は前記導関数の極性の不連続中に反転される。従って、
図9によって示される例によれば、ステップ110は、前記尖点C1及びC2の上流及び下流それぞれ、即ち前記不連続点dd1及びdd2の上流及び下流それぞれにおいて、理論実験信号の極性が確か且つ正であるとみなすことを可能にする。逆に、理論実験信号の前記極性は、前記尖点C1とC2の間に含まれる周波数オフセットの灰色に見える範囲に対して確か且つ負とみなされる。測定された信号の形状は実質的に「V」であるため、導関数の符号の不連続点は多くて2つ予期される。このようにして、考慮中の周波数オフセットにおいて正の極性を有する理論実験信号の大きさの測定値を示すものとして検出されたサンプルZ(Δω)は第2セットYにおいてY(Δω) = Z(Δω)のように再現され、考慮中の周波数オフセットにおいて負の極性を有する理論実験信号の大きさの測定値を示すものとして検出されたサンプルZ(Δω)は第2セットYにおいてY(Δω) = -Z(Δω)のように再現される。従って、
図9の例では、サブステップ114の実行の最後に、第1セットZのサンプルのセットは極性を与えられたサンプルの第2セットYを作るために有利に考慮され、理論実験信号の測定値の極性は考慮中の周波数オフセットΔωのセットに対して確かとみなされる。
【0054】
ステップ110の実行によって、理論実験信号の極性が考慮中のそれぞれの周波数オフセットにおいて既知となる。サンプルY(Δω)の第2セットYは理論実験信号の極性から得られる。ブロッホ方程式に基づくWASAB1 Zスペクトルの強度のモデルが、前記Z(Δω)スペクトルのサンプルが4つの自由パラメータc、d、B1、及びB0の関数の絶対値であるように、簡略化された形で表される現状技術に反して、Zスペクトルの代わりに「極性を与えられた」サンプルの第2セットYを使用することで、絶対値と関連した複雑さの問題を切り抜けることが可能である。なぜなら、理論実験信号の極性はそれぞれのサンプルY(Δω)に対して既知だからである。従って、Yスペクトルの強度のモデルはY(Δω) = c-d.f(B0, B1, Δω)のように簡略化された形で書かれ得る。
【0055】
このモデルのパラメータは、有利に、二乗誤差の総和を最小にすることで得られる。即ち、
【数3】
ここで、
【数4】
は二乗誤差の総和である。
【0056】
パラメータB0及びB1が一定であると仮定すると、モデルはパラメータc及びdに関して線形になる。これらのパラメータc及びdは少なくとも最小二乗法によるそれらの推定値に置き換えられ得る。それらの推定値はB0及びB1の関数として解析的に表される。これらのパラメータc及びdをB0及びB1の関数としてのそれらの推定値に置き換えることで、モデルは2つの明示的なパラメータB0及びB1のみを有する。2つの線形パラメータは潜在的に含まれる。本発明によれば、そのモデルは、もはや4つのパラメータを有するモデルではなく、2つのパラメータを有するモデルであり、それにより、B0及びB1の推定は、2桁速くなり、よりロバストになり、局所的最小値の影響をより受けにくくなる。
【0057】
実際、モデルは、T個の基本ボリュームに対して、行列形式で、Y = M(B0, B1)βのように書かれ得る。ここで、Y=[Y(Δω1), …, Y(Δωn)]^Tは、基本ボリューム毎の周波数オフセットΔω1からΔωnに対するn個のサンプルY(Δω)を含むベクトルを表し、Mは、モデルのリグレッサ又は変数を含む、2nのサイズを有する行列、即ち、
【数5】
である。
【0058】
その上、β = [c,d]^Tは、線形パラメータc及びdを含む、それぞれの基本ボリュームに対する、2のサイズを有するベクトルである。行列Mは、モデルの非線形パラメータ、この特定の場合、B0及びB1に明示的に依存する。従って、前に表された二乗誤差の総和は、次に、
【数6】
の形で書かれ得る。
【0059】
一定のB0及びB1に対して、二乗誤差の総和を最小にするβの最適な推定値は、
【数7】
ように解析的に計算され得る。
【0060】
βのこの推定値が前式において置き換えられた場合、
【数8】
が得られる。
【0061】
パラメータc及びdは、
【数9】
を用いて推定され得る。ここで、
【数10】
である。
【0062】
このように、本発明による後処理方法100は、定められたモデルを、極性を与えられたサンプルの第2セットYに合わせて調整するステップ120を含み、そのセットはステップ110で前もって生成され、前記定められたモデルの2つのパラメータは、それぞれ、
図1によって例として示されるような医用磁気共鳴イメージング装置1の静磁場B0及び励起磁場B1を示す。従って、前記ステップ120は前記モデルの前記パラメータB0及びB1の第1推定値を生成する。
【0063】
好ましい例として、この有利な実施形態は任意であるが、本発明は、方法100が、極性を与えられたサンプルの第2セットYの可能な増進の後に、前記パラメータB0及びB1の第2推定値を生成することを一緒に目指す2つのステップ130及び140を含むことを提供する。
【0064】
実際、ステップ120がモデルのパラメータの第1推定値を提供したので、理論実験信号の極性が考慮中の周波数オフセットに対して負であるとしても、理論実験信号の大きさの測定値に対応するZスペクトルのサンプルを正確に決定することが可能である。特に、サンプルの第2セットYがステップ110の第1実施形態の例の実行から生じる場合、即ち前記ステップ110がサブステップ111及び112を含む場合、サンプルの第2セットYを増進することは、特に有利であり得る。この場合、サンプルの前記第2セットYは第1セットZのサブセットである。理論実験信号の極性が正である場合、サブセットのサンプルY(Δω)はそれぞれサンプルZ(Δω)と等しい。Zの他のサンプルはセットYを生成するために切り離される。
【0065】
この場合、本発明は、方法100が、上のようにステップ120において調整されたモデルからサンプルZ(Δω)の全て又は一部に対して理論実験信号の値の極性を決定し、理論実験信号の極性が正と推定される場合にY(Δω) = Z(Δω)、理論実験信号の極性(Δω)が負と推定される場合にY(Δω) = -Z(Δω)のようにサンプルの第2セットYを再び構成する任意のステップ130を含み得ることを提供する。ステップ111、112、120、及び130の連続した実行のおかげで、サンプルの第2セットYは、前記ステップ110が前述のサブステップ113及び114を含む場合に得られるもののような、ステップ110の単独の実行の後に得られるものより充実している。
【0066】
そして、方法100は、
図10においてステップ140で表される、ステップ130に続く、極性を与えられたサンプルのこのように増進されたセットYに合わせてモデルを調整するステップ120の新たな反復を含み得る。従って、ステップ140は、現状技術によるモデルと比較して簡略化されたモデルの使用から生じる利益を考慮に入れて、方法100の実行に著しく不利にすることなく、より多くのサンプルを使用してモデルのパラメータの新たな推定値を生成する。
【0067】
パラメータB0及びB1は特に関心のある基本ボリュームに対して処理100aの1つの段階の最後に正確に速く推定されるため、本発明は、本発明による方法100が関心のある複数の基本ボリュームに対して特にパラメータB0及びB1の推定値を生成するために前記処理100aの同数の反復を含むことを提供する。
【0068】
そして、方法100は、
図7と関連して前述されたマップMB0又はMrB1のようなパラメータマップの形で画像を生成するステップ150を含み得、そのピクセルは、それぞれ、関心のある基本ボリュームに対して推定されたパラメータB0又はB1の値を符号化している。その上、この又はこれらのパラメータマップは、イメージングシステムSのユーザ6が前記パラメータB0若しくはB1の推定値又は前記パラメータから生成され得る他の任意のバイオマーカーの推定値にさえ注目し得るように、
図1及び2と関連して示されるインターフェース5のような適切なヒューマンマシン出力インターフェースによって表示され得る。医用磁気共鳴イメージング装置1によるWASAB1取得シーケンスから生じる理論実験信号の大きさを示すサンプルZ(Δω)の第1セットZに対して後処理を行うための方法の実行は、臨床の現場で完全に使用できるようになり、従って特にCEST技術への扉を前記臨床の現場に開き、人間又は動物の器官の関心のある化学種と関連付けられた1以上のバイオマーカーの量を定め、最後に、変化した代謝特性を有する様々な病変を特徴付ける。本発明はこのただ1つの利用に限定され得ない。従って、それは、静的な場B0及び励起場B1の不均一性の補正が必要とされる任意の磁気共鳴イメージング応用に重要な位置を占める。