(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】空気処理装置
(51)【国際特許分類】
B01D 53/04 20060101AFI20240416BHJP
A61L 9/014 20060101ALI20240416BHJP
B01D 53/73 20060101ALI20240416BHJP
B01D 53/86 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
B01D53/04 220
A61L9/014
B01D53/73 500
B01D53/86 100
(21)【出願番号】P 2022573568
(86)(22)【出願日】2021-04-22
(86)【国際出願番号】 GB2021050967
(87)【国際公開番号】W WO2021255412
(87)【国際公開日】2021-12-23
【審査請求日】2022-12-02
(32)【優先日】2020-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】500024469
【氏名又は名称】ダイソン・テクノロジー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100221899
【氏名又は名称】高倉 みゆき
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ テニソン レイリー
(72)【発明者】
【氏名】ベン トーマス エドモンズ
【審査官】石岡 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-034771(JP,A)
【文献】特開平02-078417(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2002-0084932(KR,A)
【文献】欧州特許出願公開第02581127(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D53/00-53/96
A61L9/00-9/22
B01J20/00-20/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気流を発生させる空気流発生器と、
1つ以上の浮遊汚染物質を吸着する吸着材であって、前記空気流の少なくとも一部が前記吸着材を通過するように構成される、前記吸着材と、
前記吸着材の少なくとも一部分を加熱して、吸着汚染物質を脱着させるように構成される加熱器と、
前記吸着材の加熱部分から脱着された前記汚染物質を受け取るように構成される光触媒反応器と、を備える空気処理装置であって、
前記光触媒反応器は、1つ以上の前記汚染物質を光触媒分解する光触媒
を含む第1の部分と、前記光触媒を照明して光触媒分解を促進する1つ以上の光源
を含む第2の部分と、
前記1つ以上の光源を前記光触媒から分離する少なくとも部分的に透明な隔壁と、を備え、
前記空気処理装置は、前記吸着材の前記加熱部分を通過していない前記空気流の少なくとも一部が前記1つ以上の光源に接触するように構成され、
前記第1の部分は、前記吸着材の前記加熱部分から脱着された前記汚染物質を受け取るように構成され、
前記第2の部分は、前記吸着材の前記加熱部分を通過していない前記空気流の少なくとも一部を受け取るように構成され、
前記隔壁は、前記第1の部分を前記第2の部分から分離する、空気処理装置。
【請求項2】
空気流を発生させる空気流発生器と、
1つ以上の浮遊汚染物質を吸着する吸着材であって、前記空気流の少なくとも一部が前記吸着材を通過するように構成される、前記吸着材と、
前記吸着材の少なくとも一部分を加熱して、吸着汚染物質を脱着させるように構成される加熱器と、
前記吸着材の加熱部分から脱着された前記汚染物質を受け取るように構成される光触媒反応器と、
前記吸着材の一部分を囲むように構成される脱着チャンバと、を備える空気処理装置であって、
前記光触媒反応器は、1つ以上の前記汚染物質を光触媒分解する光触媒と、前記光触媒を照明して光触媒分解を促進する1つ以上の光源と、を備え、
前記空気処理装置は、前記吸着材の前記加熱部分を通過していない前記空気流の少なくとも一部が前記1つ以上の光源に接触するように構成され、
前記加熱器は、前記脱着チャンバに囲まれる前記吸着材の前記一部分を加熱するように構成され、
吸着材の非加熱部分が前記脱着チャンバの外側に位置し、前記加熱器によって発生する熱に曝されない、空気処理装置。
【請求項3】
前記空気処理装置は、前記空気処理装置の外部からの空気が前記1つ以上の光源の少なくとも1つに接触することを可能にする、少なくとも1つの空気流路を提供するように構成され、
前記空気流路は、前記吸着材の前記加熱部分を通過しない、請求項1
又は請求項2に記載の空気処理装置。
【請求項4】
前記空気流路は、前記空気処理装置の外部からの空気が吸着材の非加熱部分を通過できるように構成される、請求項
3に記載の空気処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気処理装置は、空気を処理して汚染物質を除去するものである。従来の空気処理装置は、粒径排除によって浮遊微小粒子を物理的に捕捉する微粒子フィルタのみを使用しており、高効率微粒子空気(HEPA)フィルタは、0.3μm粒子の少なくとも99.97%を除去する。空気処理装置の中には、活性炭フィルタを使用して空気中の揮発性化学物質を濾過するものがある。活性炭は周知の炭素質材料であり、吸着又は化学反応に利用可能な表面積を増加させる多数の開いた又はアクセス可能な微細孔及びメソ細孔を有するように加工されている。例えば、特許文献1にはファン組立体の円筒形本体上に取り付けられた管状のバレル型フィルタを有するファン組立体が記載されている。フィルタは、活性炭布の内層を囲むプリーツHEPAフィルタの外層を含む2層構造のフィルタ媒体を備える。
【0003】
活性炭を空気浄化に使用するとき、活性炭は吸着によって汚染物質を濾過するため、容量が限られており、濾過性能を維持しようとすると活性炭フィルタをいずれ交換しなければならない。そこで、このような吸収フィルタを再生して、交換の必要がないようにすることが望まれる。この再生を実現するための手法として、吸収フィルタから汚染物質を熱脱着させ、それから汚染物質を外部環境に放出する、又は光触媒酸化(PCO)などの技術を用いて汚染物質を破壊する方法があり、このうち後者は空気処理装置が外部環境に通気できる必要がないため好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、空気処理装置が提供される。空気処理装置は、空気流を発生させる空気流発生器と、1つ以上の空気中の汚染物質を吸着する吸着材であって、空気流の少なくとも一部が吸着材を通過するように構成される吸着材と、吸着材の一部分を加熱して、吸着汚染物質を脱着させるように構成される加熱器と、吸着材の加熱部分から脱着された汚染物質を含む空気を受け取るように構成される光触媒反応器と、を備える。光触媒反応器は、1つ以上の汚染物質を光触媒分解する光触媒と、光触媒を照明して光触媒分解を促進する1つ以上の光源と、を備える。空気処理装置は、吸着材の加熱部分を通過していない空気流の少なくとも一部が1つ以上の光源に接触するように構成される。
【0006】
空気処理装置は、空気処理装置の外部からの空気が1つ以上の光源の少なくとも1つに接触することを可能にする、少なくとも1つの空気流路を提供するように構成されてもよく、この空気流路は吸着材の加熱部分を通過しない。空気流路は、空気処理装置の外部からの空気が吸着材の非加熱部分を通過できるように構成されてもよい。
【0007】
光触媒反応器は、光触媒を含む第1の部分と、1つ以上の光源を含む第2の部分と、を備えてもよく、第1の部分は、吸着材の加熱部分から脱着された汚染物質を受け取るように構成され、第2の部分は、吸収材の加熱部分を通過していない空気流の少なくとも一部を受け取るように構成される。
【0008】
光触媒反応器は、1つ以上の光源を光触媒から分離する少なくとも部分的に透明な隔壁を備えてもよく、隔壁は、第1の部分を第2の部分から分離する。隔壁は、空気を通さないものであってもよい。
【0009】
空気処理装置は、吸着材の一部分を囲むように構成される脱着チャンバを備えてもよく、加熱器は、脱着チャンバに囲まれる吸着材の一部分を加熱するように構成される。空気処理装置は、吸着材の非加熱部分が脱着チャンバの外側に位置し、加熱器によって発生する熱に曝されないように構成されてもよい。
【0010】
光触媒は、光触媒反応器の1つ以上の表面上に配置されてもよく、1つ以上の光源は、1つ以上の表面を照明するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図5A】本明細書に記載の空気処理装置と共に使用するのに適したフィルタの一例の斜視図である。
【
図6A】本明細書に記載の空気処理装置と共に使用するのに適した濾過構成の一例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を、以下の図を参照して単なる例として説明する。
【0013】
ここで空気処理装置の一例を、
図1、
図2、
図3を参照して単なる例として説明する。空気処理装置は、全体として符号100で表し、空気処理装置100を通る空気流を発生させる空気流発生器120を収容する外側ケーシング131を備える。
【0014】
図2と
図3に示す例では、外側ケーシング131は円筒形であり、側壁と、下端部と、上端部と、を有する。下端部は囲まれており、空気処理装置100を載置する(すなわち支持する)基部(すなわち下表面)を提供している。次いで、外側ケーシング131の側壁には空気処理装置100の空気入口が設けられ、空気入口は、外側ケーシング131の側壁に形成される開口部の配列(図示せず)を含む。あるいは、空気入口は、外側ケーシング131に形成される窓内に取り付けられる1つ以上の格子又は網目を含むことができる。
【0015】
次いで、空気流発生器120は外側ケーシング131内に取り付けられ、空気流発生器120の排気は外側ケーシング131の上端部に設けられた円形開口部130内に配置されて、空気流発生器120から排出された空気流が開口部130を通って空気処理装置100の外側ケーシング131から出るようにする。これにより、円形開口部130は、空気処理装置100の空気出口を提供する。
【0016】
空気流発生器120は、モータ121と、モータ121によって駆動されて空気処理装置100を通る空気流を発生させるように構成されるインペラ(羽根車)122と、を備える。インペラ122は、一般的な円錐台形状であり、モータ121は、インペラ122の後部によって画定される空洞132内に部分的に配置される。
【0017】
空気処理装置100は、1つ以上の空気中の汚染物質を吸着する吸着材101をさらに備える。吸着材101は、空気処理装置100を通過する空気流の少なくとも一部が吸着材101を通過するように構成されており、空気流のその部分に存在する汚染物質が吸着材101によって除去されるようになっている。
【0018】
図2と
図3に示す例では、外側ケーシング131の側壁に設けられた空気処理装置100の空気入口の下流側かつ空気流発生器120の上流側にあるように外側ケーシング131の内周に分布する、複数の湾曲モノリシック炭素フィルタ101′、101″によって、吸着材101が提供されている。したがって、空気流発生器120によって空気処理装置100の空気入口から吸い込まれた空気流は、湾曲モノリシック炭素フィルタ101′、101″を通過して、空気流発生器120の空気出口130を通して排出される。
【0019】
図2と
図3に示す例では、空気処理装置100は、空気処理装置100を通過する空気流が吸着材101を通過する前に、空気流を事前濾過する前置フィルタ組立体133をさらに備え、この前置フィルタ組立体133は、空気流から微粒子を濾過する微粒子フィルタ媒体を備える。例えば、この微粒子フィルタ媒体は、プリーツポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又はガラス極細繊維不織布を含むことができる。また、前置フィルタ組立体133は、空気流が吸着材101を通過する前に特定の化学物質を濾過する化学フィルタ媒体をさらに備えることができる。例えば、この化学フィルタ媒体は、空気透過性材料の層の間に保持されたプリーツ炭素布又は活性炭顆粒のような活性炭フィルタ媒体を備えることができる。
【0020】
また、空気処理装置100は、吸着材101の少なくとも一部分から汚染物質を断続的又は周期的に脱着するように構成される脱着組立体102、107を備える。そのために、脱着組立体は、吸着材101の異なる部分を交換可能に囲むように構成される脱着チャンバ107と、吸着汚染物質を脱着させるために脱着チャンバ107に囲まれる吸着材を加熱するように構成される加熱器102と、を備える。また、脱着チャンバ107は、吸着材101の加熱部分101′から脱着された汚染物質を少なくとも一時的に含むように構成される。
【0021】
図2と
図3に示す例では、脱着組立体が空気処理装置100内に回転可能に取り付けられており、脱着チャンバ107と加熱器102は、湾曲モノリシック炭素フィルタ101′、101″の一方から他方へ移動し、それによって吸着材101の一部分が脱着チャンバ107内で配置される位置を断続的又は周期的に交換するために、回転することができる。したがって、空気処理装置100は、脱着組立体を回転させるように構成される回転組立体も備え、回転組立体は、駆動部材135を回転させるように構成される回転モータ134と、駆動部材135によって駆動されて脱着組立体を回転軸線周りに回転させるようにように構成される従動部材136と、を備える。
図2と
図3に示す例では、駆動部材135はピニオンを備え、従動部材136は、脱着組立体上に設けけられる少なくとも部分的に円形又は円弧状のラックを備える。
【0022】
代替構成では、脱着組立体は空気処理装置100内に固定して取り付けられ、次いで、吸着材101は、吸着材101の一部分が脱着チャンバ107内で配置される位置を断続的又は周期的に交換するために、吸着材101の一部分が脱着チャンバ107の内外に回転できるように、外側ケーシング131内に回転可能に取り付けることができる。さらなる代替構成では、脱着組立体は、空気処理装置100内で長手方向に(すなわち垂直に)移動して、吸着材101のある部分から別の部分に移動し、それによって、吸着材101の一部分が脱着チャンバ107内で配置される位置を断続的又は周期的に交換するように構成することができる。
【0023】
光触媒反応器103、104、105は、吸着材の加熱部分101′から脱着された汚染物質を含む空気を受け取るように構成される。
図2の例では、吸着材101の加熱部分101′から脱着された汚染物質を含む空気は、脱着チャンバ107から導管109を通ってスペーサ容積106に入り、導管113を通って光触媒反応器103に入る。光触媒反応器103は、脱着汚染物質を含む空気を受け取るように構成される反応器チャンバ103と、反応器チャンバ103内の1つ以上の表面上に配置される1つ以上の汚染物質(二酸化チタン、TiO
2など)を光触媒分解する光触媒104と、光触媒を照明して1つ以上の汚染物質の光触媒分解を促進する1つ以上の光源105と、を備える。
図2と
図3に示す例では、光源105は細長いプリント回路基板(PCB)上に搭載された発光ダイオードであり、これらの発光ダイオードは約365nmの波長で紫外(UV)光を放射する。
【0024】
空気処理装置100は、装置100の外部からの空気が1つ以上の光源105の少なくとも1つに接触することを可能にする、少なくとも1つの空気流路(FP)を提供するように構成され、この流路(FP)は吸着材101の加熱部分101′を通過しない。具体的には、空気は、吸着材101の非加熱部分101″を通る流路(FP)に沿って流れる。吸着材101のこの非加熱部分101″は脱着チャンバ107の外側に位置しているため、加熱器102によって発生する熱に曝されず、濾過された空気は吸着材101の加熱部分を通過することなく光源105の上を通過する。後述するように、この非加熱空気は1つ以上の光源105の上を通過し、冷却する。
【0025】
反応器チャンバ103は、光触媒104を1つ以上の光源105から分離する透明障壁又は隔壁123を備える。透明隔壁123は、透明隔壁123を通過する触媒UV波長の光が光触媒104による汚染物質の分解を触媒するのに十分な強度を有するように、1つ以上の光源105から放射される紫外(UV)光に対して十分に透明な材料を含む。
【0026】
したがって、反応器チャンバ103は、光触媒を含む第1の部分125と、1つ以上の光源105を含む第2の部分124とを備え、透明隔壁123が第1の部分125と第2の部分124とを分離している。第1の部分125は、吸着材の加熱部分101′から脱着された汚染物質を含む空気を受け取るように構成され、第2の部分124は、吸着材101の加熱部分101′を通過していないが、吸着材101の非加熱部分101″を通過した空気流の少なくとも一部を受け取るように構成される。そのために、透明隔壁123は、吸着材101の非加熱部分101″を通過した空気が第2の部分124を通過できるように構成されている。特に、透明隔壁123は、1つ以上の光源105が内部に位置する導管を提供する。
【0027】
空気処理装置100は、吸着材101に吸着された汚染物質が光触媒反応器に送られる前に放出及び貯蔵され得るスペーサ容積106を提供することによって、光触媒104が過剰な量の汚染物質に曝されて「毒される」可能性を低下させる。したがって、スペーサ容積106は、脱着組立体から受け取った脱着汚染物質を含む空気を受け取り、保持するように構成される。加えて、空気処理装置100は、スペーサ容積へ希釈ガスを導入できるように構成される希釈ガス入口(図示せず)と、希釈ガス入口を通る希釈ガスの導入を制御するように構成される希釈ガス入口弁(図示せず)と、をさらに備えてもよい。スペーサ容積に希釈ガスを導入することで、スペーサ容積内に含まれる汚染物質の濃度が低下し、光触媒104が過剰な量の汚染物質に曝されて「毒される」可能性をさらに低下させることができる。
【0028】
ここで空気処理装置100を示す
図1、
図2、
図3を参照して、
図1、
図2、
図3の装置の動作を説明する。モータ121によるインペラ122の回転により、空気処理装置100の空気入口を通る空気流が発生し、この空気流は、脱着チャンバ107内に配置されていない吸着材101の一部を通過する。続いて、空気処理装置100は、吸着材101のこの部分の再生が必要であると判断し、したがって、吸収材101のこの部分の再生プロセスを開始する。再生プロセスの第1のステップでは、再生されるべき吸着材101の一部分を脱着チャンバ107内に配置し、好ましくは密封する。
図2と
図3に示す例では、このステップは、脱着組立体を回転させ、それによって現在脱着チャンバ107内に配置されている湾曲モノリシック炭素フィルタと再生されるべき湾曲モノリシック炭素フィルタ101′とを交換するために、回転組立体を作動させることを含む。
【0029】
再生プロセスの第2のステップでは、吸着汚染物質を脱着させるために、脱着チャンバ107に囲まれている吸着材101の一部分101′を加熱するために加熱器102を作動させる。吸着材101の一部分101′の加熱前又は加熱中に、脱着チャンバ107とスペーサ容積106との間に配置されたスペーサ容積入口弁108を開き、空気と汚染物質が脱着チャンバ107からスペーサ容積106に移動することを可能にし、またスペーサ容積106と光触媒反応器の反応器チャンバ103との間に配置されたスペーサ容積出口弁112を閉じて、脱着汚染物質を含む空気が光触媒反応器に到達するのを防ぐ。この手法は、吸着材101の加熱をゆっくりにする必要も正確に制御する必要もなく、むしろ急速な加熱と脱着が可能である。加えて、空気を脱着チャンバ107に入れて脱着チャンバ107が負圧になるのを防ぐために、吸着材101の一部分101′の加熱前又は加熱中に脱着チャンバ入口弁114を開く。
【0030】
脱着チャンバ107からスペーサ容積106への脱着汚染物質の移動は、加熱器102による加熱に起因する熱膨張のみを用いて達成することができるが、第2のステップ中の脱着チャンバ107からスペーサ容積106への空気と汚染物質の移動は、スペーサ容積106を画定するスペーサチャンバ110の容積を増加させることによって容易にしてもよい。例えば、これは、スペーサチャンバ110の可動部分111を移動させることによって達成することができる。次いで、可動部分111は、スペーサチャンバ110の膨張を容易にするひだ又は折り目を備えてもよい。
図2と
図3に示す例では、スペーサチャンバ110は、空気処理装置100の底部に向かって位置する比較的平坦な円筒形チャンバである。
【0031】
脱着が完了したと判断された後に開始する再生プロセスの第3のステップでは、脱着チャンバ107とスペーサ容積106との間のスペーサ容積入口弁108を閉じる。次いで、加熱器102を停止させ、吸着材101の加熱部分101′を冷却することができる。スペーサ容積出口弁112を少なくとも部分的に開き、脱着汚染物質を含む空気をスペーサ容積106から光触媒反応器に送ることができる。
図2と
図3に示す例では、スペーサ容積出口弁112を十分に開いて、光触媒反応器の反応器チャンバ103に一定の制御された空気と汚染物質の流れを提供し、その流量は、光触媒104が取り返しのつかないほど毒されることなく、空気流から所望の量の汚染物質(例えば実質的に全て)を除去できるように、十分に制限されている。
【0032】
第3のステップ中、スペーサ容積106から光触媒反応器への空気と汚染物質の移動を容易にするために、スペーサ容積106を画定するスペーサチャンバ110の容積を減少させてもよい。例えば、これはスペーサチャンバ110の可動部分111を移動させ、可動部分111のひだ又は折り目がスペーサチャンバ110の収縮を容易にすることによって達成することができる。次いで、スペーサチャンバ110の収縮を制御することで、脱着汚染物質を含む空気の光触媒反応器への流れを制御することが可能である。
【0033】
この第3のステップ中、光触媒反応器の光源105は、反応器チャンバ103内の1つ以上の表面上に配置された光触媒104を照明するように作動する。その結果、スペーサ容積106から反応器チャンバ103に送られた空気は、空気中に存在する脱着汚染物質の光触媒分解によって処理される。
図1、2、3に示す例では、脱着汚染物質を含む空気をスペーサ容積106から反応器チャンバ103へ制御された速度で送り、光触媒反応器は反応器チャンバ103を流れる空気を処理するように構成される。特に、光触媒反応器は、スペーサ容積106から反応器チャンバ103に送られた空気が反応器入口115を通って反応器チャンバ103に入り、制御された速度で反応器チャンバ103を流れ、反応器出口116から放出され、空気が反応器入口115から反応器出口115に流れる間に光触媒分解による空気の処理が行われるように構成される。
【0034】
光触媒反応器103を通過した後、空気流は、空気処理装置100から放出されてもよい。あるいは、空気処理装置100は、光触媒反応器から放出された空気が、空気流が空気処理装置100を出る前に吸着材101などのフィルタを通過するように構成されてもよい。例えば光触媒反応器は、処理済み空気が空気処理装置100から放出される前に吸着材101の少なくとも一部を通過するように、処理済み空気を放出するように構成されてもよい。この手法により、汚染物質は、光触媒反応器内で完全に分解されず、したがって処理済み空気内に残っていても、処理済み空気が空気処理装置100から放出される前に、依然として吸着材101に吸着される可能性がある。
【0035】
当業者は、2つ以上のチャンバを使用してスペーサ容積を画定し得ることを認識するであろう。同様に、1つ以上の導管を1つ以上のチャンバと組み合わせて、又は1つ以上のチャンバの代わりに使用して、スペーサ容積を画定してもよい。このような複数の導管とチャンバを直列及び/又は並列に使用して、スペーサ容積を画定してもよい。
【0036】
上述の例は、加熱部分101′が第1のフィルタを備え、非加熱部分101″が第2のフィルタを備える方法について実証している。もちろん、加熱部分101′と非加熱部分101″の両方が1つのフィルタによって提供されることも可能であろう。
【0037】
図1、
図2、
図3に示す例では、空気処理装置100は、家庭用空気濾過/浄化ユニットである。当業者は、空気処理装置が、空気を冷却及び/又は加熱するために一般的に使用される空調ユニットであってもよいことを認識するであろう。代替的に又は追加的に、空気処理装置は、例えば公共の場所での使用に適した業務用空気処理ユニットであってもよい。
【0038】
次に、
図4を参照して、本発明による空気処理装置の別の例を説明する。空気処理装置200は、
図1、
図2、
図3を参照して上述したものと同様であり、装置200は、吸着材101の加熱部分101′から脱着された汚染物質を含む空気を受け取るように構成されるスペーサ容積106を備える。
図4において
図1、
図2、
図3と符号が同じ構成は、
図1、
図2、
図3に関連して説明した構成に対応し、同じように動作する。
【0039】
図4に示す例では、光触媒反応器の反応器チャンバ103は、処理済み空気を光触媒反応器から放出させる前に、スペーサ容積106から受け取る汚染物質を含む空気を貯蔵するように構成される。したがって、反応器チャンバ103は、スペーサ容積106から受け取る脱着汚染物質を含む空気を受け取り、保持するように構成される。そのために、光触媒反応器は、スペーサ容積106から脱着汚染物質を含む空気を受け取る反応器入口115と、光触媒反応器内から処理済み空気を放出するように構成される反応器出口116と、光触媒反応器からの処理済み空気の放出を制御する反応器出口弁212と、を備える。脱着汚染物質を含む空気をスペーサ容積106から受け取るときに反応器チャンバ103内の圧力を維持するために、反応器チャンバ103の容積を増加させてもよい。例えば、これは、反応器チャンバ103の可動部分211を移動させることによって達成することができる。次いで、可動部分211は、反応器チャンバの膨張と収縮を容易にするひだ又は折り目を備えてもよい。
【0040】
使用時、汚染物質を含む空気のバッチは、スペーサ容積出口弁112を開くことによってスペーサ容積106から通過させることができる。スペーサ容積106から光触媒反応器への空気と汚染物質の移動を容易にするために、スペーサ容積106を画定するスペーサチャンバ110の容積を減少させてもよい。例えば、これはスペーサチャンバ110の可動部分111を移動させ、可動部分111のひだ又は折り目がスペーサチャンバ110の収縮を容易にすることによって達成することができる。次いで、スペーサチャンバ110の収縮を制御することで、脱着汚染物質を含む空気の光触媒反応器への流れを制御することが可能である。
【0041】
可動部分211が移動して反応器チャンバ103が膨張することで、反応器チャンバ103内の圧力が維持され、脱着汚染物質を含む空気をスペーサ容積106から反応器チャンバ103に引き込むように作用し得る。脱着汚染物質を含む空気が反応器チャンバ103に移送される間、反応器出口弁212は閉じられ、空気は反応器チャンバ103内に保持される。
【0042】
空気の「バッチ」が反応器チャンバ103に移送されると、スペーサ容積出口弁112は閉じられ、反応器チャンバ103の空気は、反応器チャンバ103内の1つ以上の表面上に配置された光触媒104を照明するように光触媒反応器の光源105を作動させることによって処理される。その結果、反応器チャンバ103内に含まれる空気は、空気中に存在する脱着汚染物質の光触媒分解によって処理される。処理が完了すると、処理済み空気は、反応器出口弁212を開くことによって光触媒反応器から出ることができる。反応器チャンバ103の容積を再び減少させるように可動部分211を移動させることにより、反応器チャンバ103内の圧力が維持され、また、処理済み空気を光触媒反応器から押し出すように作用し得る。
【0043】
図5Aと
図5Bは、本明細書に記載の空気処理装置と共に使用するのに適した吸収フィルタの一例を示す。吸着フィルタは、全体として符号1000で表している。フィルタ1000は活性炭などの炭素系吸着材を備え、モノリシックである。具体的には、フィルタ1000は、空気などの濾過される入口ガスを導入する入口面1001と、入口面の反対側にある出口面1002と、を備える剛性の開放構造体である。フィルタ1000は、入口面1001から出口面1002まで延在する複数のチャネル1003をさらに備える。複数のチャネル1003は、チャネルの規則的な配列、並びにチャネル及び/又は開孔の不規則なネットワークのいずれかを備えてもよい。
【0044】
図5Aと
図5Bに示す例では、入口面1001と出口面1002の両方が湾曲している。特に
図5Bから分かるように、入口面1001と出口面1002は曲率が同じであり、入口面と出口面の曲率はともに円筒形である。ただし、これは必ずしもそうである必要はない。例えば、入口面と出口面の曲率は異っていてもよい。例えば、出口面の曲率は、入口面の曲率より大きくてもよい。入口面と出口面を湾曲させることで、より適応性の高いフィルタが提供され、異なる幾何学的形状での濾過が容易になる。特に、上述のような吸収フィルタは、少なくとも部分的に円筒形の空気処理装置内に配置されたフィルタの円周方向配列内で使用するように最適化される。また、このような吸収フィルタにより、回転組立体を使用して、脱着チャンバ内に配置されたフィルタを断続的又は周期的に交換することが容易になる。
【0045】
図6Aと
図6Bは、本明細書に記載の空気処理装置と共に使用するのに適した濾過構成の一例を示す。濾過構成は、全体として符号2000で表し、モノリシック吸着フィルタ2001と、担体2002と、を備える。フィルタは、担体2002によって画定される担体開口部2003内に保持される。担体2002は、担体2002の周辺部2006の周りに分布する複数の弾性変形可能な支持体2004を備える。弾性変形可能な支持体2004は、濾過構成2000が望ましくない衝撃を受けた場合に、フィルタ2001に損傷が生じる可能性を軽減する。支持体は、フィルタ2001が損傷するリスクを軽減するクッションを提供する。
【0046】
図6Aと6Bに示す例では、担体2002は、シリコンから一体形成され、担体2002は、弾性変形可能な支持体2004と一体形成されるフィルタ保持部分2007を備える。しかしながら、当業者であれば、担体は必ずしも一体形成されなくてもよいことを認識するであろう。例えば、フィルタ保持部分2007は、支持体2004と一体形成されなくてもよい。
【0047】
図示の例では、弾性変形可能な支持体2004は、担体の周辺部に構成される複数の突起2005によって提供される。この例では、各変形可能な突起2005は、半径方向減衰プロファイルダンパの形態である。しかしながら、当業者であれば、弾性変形可能な支持体の他の構成を使用してもよいことを認識するであろう。例えば各支持体は、軸線方向減衰プロファイルダンパの形態であってもよい。あるいは、濾過構成は、異なるタイプの支持体、例えばいくつかの半径方向減衰プロファイルダンパと、いくつかの軸線方向減衰プロファイルダンパと、を備えてもよい。
【0048】
図6Aと6Bに示す例では、濾過構成2000は、ケーシング2008をさらに備え、担体2002は、ケーシング2008によって画定されるケーシング開口部2011内に受け入れられる。ケーシング開口部2011と担体2002は、ケーシング開口部2011内に担体2002を受け入れると、支持体2004が少なくとも部分的に変形するように構成されている。図示の例では、ケーシング2008は、開口部画定本体部分2009と、開口部画定本体部分2009の周辺部に延在するフランジ部分2010と、を備える。ケーシング2008は、プラスチック材料から一体形成される。使用時には、開口部画定本体部分2009は、空気処理装置の適切な開口部(いずれも図示せず)に受け入れられる。
【0049】
当業者であれば、他の形状のフィルタを使用してもよいことを認識するであろう。例えば、フィルタは正方形又は長方形である必要はなく、円形であってもよい。
【0050】
誤解を避けるために、当業者は、ケーシングが本発明の態様の濾過構成の不可欠な部分ではないことを認識するであろう。
【0051】
当業者であれば、上述の濾過装置は、本明細書に記載の他の構成と共に使用してもよいことを理解するであろう。例えば、濾過構成は、
図5Aと5Bに関連して上述したような1つ以上の湾曲面を有するフィルタと共に使用してもよい。さらに、濾過構成は、
図1~
図3に関連して上述したような空気処理装置に使用してもよい。
【0052】
前記の説明において、既知の、明白な、又は予測可能な均等物を有する整数又は要素が言及されている場合、そのような均等物は、個々に記載されているかのように本明細書に組み込まれる。本発明の真の範囲を決定するための特許請求の範囲を参照すべきであり、それは、任意のそのような均等物を包含するように解釈されるべきである。また、好ましい、有利な、便利な等と記載される本発明の整数又は構成は任意選択であり、独立請求項の範囲を限定するものではないことも読者には理解されるであろう。さらに、そのような必要に応じた整数又は構成は、本発明のいくつかの実施形態では可能な利益があるが、他の実施形態では望ましくない場合があり、したがって存在しない場合があることを理解されたい。