(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】センサコントローラ
(51)【国際特許分類】
G06F 3/03 20060101AFI20240416BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20240416BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
G06F3/03 400B
G06F3/03 400Z
G06F3/041 500
G06F3/044 B
(21)【出願番号】P 2023027265
(22)【出願日】2023-02-24
(62)【分割の表示】P 2020000750の分割
【原出願日】2018-09-05
【審査請求日】2023-02-24
(31)【優先権主張番号】P 2017178240
(32)【優先日】2017-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】110004277
【氏名又は名称】弁理士法人そらおと
(74)【代理人】
【識別番号】100130982
【氏名又は名称】黒瀬 泰之
(72)【発明者】
【氏名】原 英之
(72)【発明者】
【氏名】宮本 雅之
(72)【発明者】
【氏名】山本 定雄
【審査官】滝谷 亮一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0262084(US,A1)
【文献】特表2014-504773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/03
G06F 3/041
G06F 3/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアクティブペンを検出可能に構成されたセンサコントローラであって、
検出済みの1本以上の前記アクティブペンのそれぞれを特定するアップリンク信号を送信し、
前記アップリンク信号は、検出済みの前記アクティブペンの本数に応じて長くなる、
センサコントローラ。
【請求項2】
コマンドを含むコマンド信号を前記アップリンク信号に先立って送信する、
請求項1に記載のセンサコントローラ。
【請求項3】
前記アップリンク信号は、検出済みの1本以上の前記アクティブペンそれぞれの識別データに対応する対応データを含む、
請求項1又は2に記載のセンサコントローラ。
【請求項4】
前記対応データは、対応する前記識別データに所定の演算を施してなる所定長のデータである、
請求項3に記載のセンサコントローラ。
【請求項5】
前記アップリンク信号は、1個以上のマルチアップリンク信号を含み、
前記1以上のマルチアップリンク信号はそれぞれ、2つの前記対応データを収納可能に構成される、
請求項4に記載のセンサコントローラ。
【請求項6】
検出している前記アクティブペンの本数がn-1本又はn本(nは偶数である自然数)である場合、前記アップリンク信号はn/2個の前記マルチアップリンク信号を含む、
請求項5に記載のセンサコントローラ。
【請求項7】
前記1以上のマルチアップリンク信号は、前記マルチアップリンク信号が後続するか否かを示すフラグ情報を含む、
請求項5又は6に記載のセンサコントローラ。
【請求項8】
前記コマンド信号は、前記アップリンク信号が後続するか否かを示すフラグ情報を含む、
請求項2に記載のセンサコントローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクティブペン及びセンサコントローラに関し、特に、通信を開始する前にペアリングを行うアクティブペン及びセンサコントローラに関する。
【背景技術】
【0002】
位置検出システムを構成するアクティブペンとセンサコントローラとの間で行われる通信においては、ビーコン信号が用いられる場合がある。ビーコン信号は、センサコントローラがアクティブペンに対して定期的に供給(あるいは送信)する信号であり、未ペアリングのアクティブペンは、センサコントローラが供給しているビーコン信号を検出(あるいは受信)した場合、その直後に応答信号を送信するように構成される。センサコントローラは、この応答信号が受信されたことに応じて、アクティブペンとのペアリングを実行する。特許文献1には、このような動作を行うセンサコントローラの例が開示されている。
【0003】
ビーコン信号の送信インターバルは、アクティブペンがセンサコントローラに対して信号(上記応答信号を含む。以下、「ペン信号」という。)を送信するための期間として使用される。この期間は、複数の時間スロットと複数の周波数との組み合わせによって構成されており、アクティブペンは、このうちセンサコントローラによって割り当てられたもののみを用いて、ペン信号の送信を行うよう構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2016/0246390号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アクティブペンとセンサコントローラとの間で実行されるペアリングの手順について、詳しく説明する。上記応答信号を受信したセンサコントローラは、次に送信するビーコン信号内に、まだいずれのアクティブペンにも割り当てていないペンIDと、ビーコン期間内の時間スロット及び周波数とを指定するパケットを配置する。このパケットを受信した未ペアリングのアクティブペンは、パケット内に配置されたペンIDを記憶する。これにより、センサコントローラによるペンIDの割り当て、すなわちセンサコントローラとアクティブペンのペアリングが完了する。このアクティブペンはその後、指定された時間スロット及び周波数を用いて、センサコントローラに対するペン信号の送信を開始する。
【0006】
しかしながら、このようなペアリングの手順には、複数のアクティブペンに同じペンIDが割り当てられてしまう場合がある、という課題がある。以下、この課題について、例を挙げて詳しく説明する。
【0007】
センサコントローラとアクティブペンとでは送信電力に差があるため、ビーコン信号の到達距離は通常、ペン信号の到達距離よりも長くなる。ペン信号がセンサコントローラに到達する範囲内にアクティブペンAが入り、ペン信号がセンサコントローラに到達する範囲の外であるがセンサコントローラからのビーコン信号は受信できる範囲内にアクティブペンBが入った場合を考えると、センサコントローラが送信したビーコン信号はアクティブペンA,Bの両方によって受信されるので、アクティブペンA,Bの両方がこれに対する応答信号を送信することになる。こうして送信された2つの応答信号のうち、アクティブペンAが送信した応答信号はセンサコントローラまで届くが、アクティブペンBが送信した応答信号はセンサコントローラに届く前に減衰してしまい、センサコントローラまで届かない。したがって、センサコントローラは1本のアクティブペンから応答信号が受信されたものと判定し、そのアクティブペンに対して割り当てるべき1つのペンIDを含むビーコン信号を送信する。このビーコン信号もアクティブペンA,Bの両方によって受信されるので、アクティブペンA,Bの両方が同じペンIDを記憶することになる。こうして、アクティブペンA,Bに同じペンIDが割り当てられてしまう。
【0008】
したがって、本発明の目的の一つは、アクティブペンとセンサコントローラのペアリングにおいて、複数のアクティブペンに同じペンIDが割り当てられてしまうことを防止できるアクティブペン及びセンサコントローラを提供することにある。
【0009】
また、センサコントローラは、ペアリング中のアクティブペンに対してコマンドを送信する場合がある。この場合、センサコントローラは、コマンド送信先のアクティブペンに割り当てたペンIDと、コマンドの内容とを示すパケットをビーコン信号内に配置する。なお、1つのビーコン信号内に配置可能なペンID及びコマンドの数は、各1つである。アクティブペンは、受信したビーコン信号内に配置されたペンIDと、記憶しているペンIDとを比較し、これらが一致した場合にのみ、コマンドに従う動作を実行する。センサコントローラが送信するコマンドには、ペアリング済みのアクティブペンに割り当てる時間スロット及び周波数を変更するためのコマンドが含まれる。
【0010】
しかしながら、このようなコマンド送信の方法によれば、センサコントローラが新たなアクティブペンとペアリングを行う際に、処理遅延が発生してしまう場合がある。すなわち、新たなアクティブペンとペアリングする際には、そのアクティブペンがペン信号を送信できるようにするため、ペアリング中の他のアクティブペンに割り当てている時間スロット及び周波数の割り当て(以下、「送受信スケジュール」という)を変更する必要がある。この変更は、新たなアクティブペンに時間スロット及び周波数を割り当てる前に行う必要があるので、センサコントローラは、新たなアクティブペンにペンIDを割り当てるためのビーコン信号を送信する前に、他のアクティブペンの送受信スケジュールを変更するためのビーコン信号を送信しなければならない。そのため、新たなアクティブペンにペンIDを割り当てるためのビーコン信号を送信するタイミングが遅れ、ペアリング処理が遅延する結果となっていた。
【0011】
したがって、本発明の他の目的の一つは、アクティブペンとセンサコントローラのペアリング処理の遅延を防止できるアクティブペン及びセンサコントローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によるアクティブペンは、センサコントローラとともに使用されるアクティブペンであって、ペン先に備えられた電極と、識別データを保持するメモリと、前記電極及び前記メモリに接続されたプロセッサとを含み、前記プロセッサは、前記センサコントローラから送信された第1のアップリンク信号への応答として、前記メモリに保持された識別データを含む応答信号を返信し、前記応答信号を送信した後に受信した第2のアップリンク信号に前記識別データに対応する対応データが含まれているか否かに基づいて、前記センサコントローラが前記アクティブペンを未検出であるか検出済であるかを判定する、アクティブペンである。
【0013】
本発明の他の一側面によるアクティブペンは、上記アクティブペンにおいてさらに、前記第2のアップリンク信号により示される前記センサコントローラが検出中のアクティブペンの本数に応じて、ダウンリンク信号の送信レートを決定する、アクティブペンである。
【0014】
本発明によるセンサコントローラは、センサに接続され、前記センサに信号を送信する複数のアクティブペンを検出可能に構成されたセンサコントローラであって、第1のアップリンク信号を繰り返し送信する第1のアップリンク信号送信ステップと、前記第1のアップリンク信号を検出したアクティブペンから送信された応答信号を検出する応答信号検出ステップと、前記アクティブペンによって指定された識別データを前記応答信号から抽出する識別データ抽出ステップと、前記識別データに対応する対応データを含む第2のアップリンク信号を前記アクティブペンを送信する第2のアップリンク信号送信ステップと、を実行するセンサコントローラである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、アクティブペン側で識別データ(例えばペンID)が決定されることになるので、アクティブペンとセンサコントローラのペアリングにおいて、複数のアクティブペンに同じ識別データが割り当てられてしまうことを防止できる。
【0016】
また、本発明の他の一側面によれば、センサコントローラが検出しているアクティブペンの数の変化に応じてアクティブペンが自律的に送信レートを変更するので、センサコントローラから各アクティブペンに送受信スケジュールを指示する場合に比べ、アクティブペンとセンサコントローラのペアリング処理の遅延を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態による位置検出システム1の全体を示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態によるアップリンク信号USの種類を示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態によるアクティブペン2の構成を示す図である。
【
図4】本発明の実施の形態によるセンサ40及びセンサコントローラ41の構成の詳細を示す図である。
【
図5】本発明の実施の形態によるホストプロセッサ43が行う液晶表示部44の制御と、本発明の実施の形態によるセンサコントローラ41とアクティブペン2との間で行われる通信とを示す図である。
【
図6】本発明の実施の形態によるホストプロセッサ43が行う液晶表示部44の制御と、本発明の実施の形態によるセンサコントローラ41とアクティブペン2との間で行われる通信とを示す図である。
【
図7】本発明の実施の形態によるホストプロセッサ43が行う液晶表示部44の制御と、本発明の実施の形態によるセンサコントローラ41とアクティブペン2との間で行われる通信とを示す図である。
【
図8】本発明の実施の形態によるアクティブペン2のプロセッサ23が行う処理を示すフロー図である。
【
図9】本発明の実施の形態によるアクティブペン2のプロセッサ23が行う処理を示すフロー図である。
【
図10】本発明の実施の形態によるセンサコントローラ41が行う処理を示すフロー図である。
【
図11】本発明の実施の形態によるセンサコントローラ41が行う処理を示すフロー図である。
【
図12】本発明の実施の形態によるセンサコントローラ41が行う処理を示すフロー図である。
【
図13】本発明の実施の形態によるセンサコントローラ41が行う処理を示すフロー図である。
【
図14】
図12のステップS83、及び、
図13のステップS103,S104で実施されるローカルスキャンの詳細を示すフロー図である。
【
図15】本発明の実施の形態の変形例によるコマンド信号C及びマルチアップリンク信号M/Uを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0019】
図1は、本実施の形態による位置検出システム1の全体を示す図である。同図に示すように、位置検出システム1は、2本のアクティブペン2a,2bと、電子機器4とを含んで構成される。電子機器4は、センサ40と、センサコントローラ41と、パネル42と、ホストプロセッサ43と、液晶表示部44とを含んで構成される。
【0020】
アクティブペン2a,2bはいずれもアクティブ静電方式に対応する電子ペンであり、パネル42の表面(以下、単に「パネル面」と称する。)上の位置を電子機器4に指示するための指示器として、1人以上のユーザによって同時又は別々に使用される。位置検出システム1においては、この他にユーザの指3も指示器として使用される。以下、アクティブペン2a,2bを特に区別する必要がない場合には、アクティブペン2と表記する場合がある。また、以下では、電子機器4は最大で2本のアクティブペン2の同時使用に対応しているものとして説明する。ただし、3本以上のアクティブペン2が同時に使用可能となるように電子機器4を構成してもよいのは勿論である。
【0021】
例えばアクティブペン2aを使用する場合、ユーザは、アクティブペン2aをパネル面に徐々に近づけ(ダウン。
図1では「DOWN」と表記している)、最終的にアクティブペン2aのペン先をパネル面に接触させる(タッチ)。そして、ユーザがこの接触状態を保ちつつパネル面上でペン先を移動させる(ムーブ)と、後述する電子機器4の処理によって、移動の軌跡st1が液晶表示部44に描画される。この描画は、ユーザがアクティブペン2aのペン先をパネル面から離す(アップ。
図1では「UP」と表記している)まで継続される。その後、ユーザがダウン、タッチ、ムーブ、アップを再度実施すると、電子機器4の処理によって、その移動の軌跡st2がパネル面上に同様に描画される。
図1には、アクティブペン2bのダウン、タッチ、ムーブ、アップによって生じた軌跡st3、及び、指3のダウン、タッチ、ムーブ、アップによって生じた軌跡st4についても図示している。
【0022】
アクティブペン2は、
図1に示すように、アップリンク信号US及びダウンリンク信号DSを利用してセンサコントローラ41と相互に通信を行うよう構成される。具体的には、センサコントローラ41がセンサ40を介して送信したアップリンク信号USを検出するともに、そのアップリンク信号USに応じて所定のダウンリンク信号DSを送信するよう構成される。ダウンリンク信号DSはセンサ40によって受信され、センサ40からセンサコントローラ41に供給される。
【0023】
図2は、アップリンク信号USの種類を示す図である。同図に示すように、本実施の形態で使用するアップリンク信号USには、コマンド信号C(第1のアップリンク信号)とマルチアップリンク信号M/U(第2のアップリンク信号)の2種類が含まれる。
【0024】
コマンド信号Cは、
図2(a)に示すように、コマンドD1及び拡張フラグD2を含む信号である。コマンドD1には、センサコントローラ41が対応しているプロトコル(アクティブ静電方式など)を示す2ビットのデータと、アクティブペン2がダウンリンク信号DSを送信するために使用すべき周波数を示す3ビットのデータと、後述する時間スロットの配置(時間間隔、継続時間、1フレーム内のタイムスロット数)を示す4ビットのデータと、アクティブペン2が送信すべきダウンリンク信号DSの内容(バーストデータ又は既定のデータ)を示す1ビットのデータと、検出中の2本のアクティブペン2を識別するための1ビットのデータとが含まれる。なお、既定のデータの詳細はプロトコル内に既定されるが、例えば、後述する筆圧データやスイッチデータなどである。拡張フラグD2は、マルチアップリンク信号M/Uが後続するか否かを示す1ビットのデータ(フラグ情報)である。センサコントローラ41は、1本以上のアクティブペン2を検出中である場合(後述するフルモード又はツーペンモードにある場合)に拡張フラグD2を「1」とし、そうでない場合(後述するグローバルモードにある場合)に拡張フラグD2を「0」とするよう構成される。
【0025】
マルチアップリンク信号M/Uは、
図2(b)に示すように、検出済フラグD3a,D3bと、対応データD4a,D4bとを含む信号である。検出済フラグD3a,D3bはそれぞれ1ビットのデータであり、初期状態ではともに「0」である。対応データD4a,D4bはそれぞれ5ビットのデータであり、初期状態ではともに「00000」である。センサコントローラ41は、1本目のアクティブペン2を検出した場合に、検出済フラグD3aを「0」から「1」に変更するとともに、1本目のアクティブペン2の識別データに対応する対応データを、対応データD4aとしてマルチアップリンク信号M/U内に設定するよう構成される。なお、対応データは、識別データそのものであってもよいし、識別データに所定の演算を施すことによって得られるデータであってもよい。所定の演算は、プロトコルの一部としてアクティブペン2とセンサコントローラ41の両方に予め設定されている演算(すなわち、アクティブペン2とセンサコントローラ41によって予め共有されている演算)であり、例えば、四則演算であってもよいし、所定の値で除した場合の剰余であってもよいし、ビット列の巡回シフトでもよい。また、対応データのビット長は識別データのビット長と同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、アクティブペン2から供給された第1のビット長の識別データをセンサコントローラ41がサポートするアクティブペン2の本数に対応した第2のビット長のデータに短縮あるいは拡張してなるデータであってもよい。また、センサコントローラ41は、その後2本目のアクティブペン2を検出した場合に、検出済フラグD3bを「0」から「1」に変更するとともに、2本目のアクティブペン2の識別データに対応する対応データを、対応データD4aとしてマルチアップリンク信号M/U内に設定するよう設定するよう構成される。
【0026】
なお、センサコントローラ41は、検出済フラグD3a,D3bに代えて、センサコントローラ41が検出しているアクティブペン2の本数を示す1ビットのデータをマルチアップリンク信号M/U内に配置することとしてもよい。こうすることで、マルチアップリンク信号M/Uのサイズを1ビット分小さくすることが可能になる。
【0027】
また、センサコントローラ41は、コマンド信号C及びマルチアップリンク信号M/Uの他に、ピング信号P(後述する
図4~
図6を参照)をアップリンク信号USとして送信する場合がある。ピング信号Pは、ダウンリンク信号DSの送信タイミングをアクティブペン2に通知するための信号であり、例えば、1ビット分の時間長を有するバースト信号である。
【0028】
図1に戻る。ダウンリンク信号DSは、コマンド信号Cにより送信を指示されたデータ(バーストデータ又は既定のデータ)、又は、アクティブペン2の識別データによって変調されたキャリア信号からなる信号である。以下では、バーストデータによって変調されてなるダウンリンク信号DSを「バースト信号」、既定のデータによって変調されてなるダウンリンク信号DSを「データ信号」、識別データによって変調されてなるダウンリンク信号DSを「応答信号」と称する。これらを受信したセンサコントローラ41の処理については、後述する。
【0029】
ダウンリンク信号DSがセンサコントローラ41によって受信可能となるためには、ダウンリンク信号DSがセンサコントローラ41に到達する程度にまで、アクティブペン2がパネル面に接近している必要がある。
図1に破線で示したセンシング範囲SRは、ダウンリンク信号DSをセンサコントローラ41が検出できる範囲を模式的に示したものである。センサコントローラ41は、アクティブペン2がこのセンシング範囲SRに入った場合に、センサ40を介してダウンリンク信号DSを検出可能となる。上述した「ダウン」は、アクティブペン2に関しては、センシング範囲SRの外から中に移動するという動きを意味する。アクティブペン2がダウンによってセンシング範囲SRに入ったものの、未だパネル面に接触していない状態は「ホバー状態」と呼ばれる。
【0030】
一方、アクティブペン2は、センシング範囲SRの外にいる場合であっても、センサコントローラ31が送信するアップリンク信号USを受信できる場合がある。アップリンク信号USは、パネル面に並行して配設されたマトリクス状の電極の全てあるいは広い部分を用いて送信することが可能であり、後述する電極21を用いてアクティブペン2が送信するダウンリンク信号DSに比べて高い強度で送信することができるためである。図示したアップリンク検出高さAHは、アクティブペン2がアップリンク信号USを受信できる高さ(パネル面からの距離)の限界を示している。アップリンク検出高さAHは、センシング範囲SRの上限よりも高い位置(パネル面から遠い位置)となる。
【0031】
図3は、アクティブペン2の構成を示す図である。同図に示すように、アクティブペン2は、ペン先に備えられた電極21と、メモリ22と、プロセッサ23と、スイッチ24と、インジケータ25とを有して構成される。図示していないが、これらはアクティブペン2の内部で電気的に接続されている。
【0032】
電極21は、導体によって形成された部材であり、アクティブペン2が後述するアップリンク信号USを受信するとともに、後述するダウンリンク信号DSを送信するためのアンテナとして機能する。アップリンク信号USを受信するための電極と、ダウンリンク信号DSを送信するための電極とを分離して設けることとしてもよい。また、パネル面に直接接する部材(ペン先部材)に導電性を付与して電極21としてもよいし、ペン先部材の近傍に導電部材を配置することにより電極21を構成してもよい。
【0033】
メモリ22は、アクティブペン2に関する各種のデータを記憶する記憶部である。メモリ22に記憶されるデータには、プロセッサ23の動作を制御するためのプログラムと、アクティブペン2を他のアクティブペン2と区別するための識別データと、プロセッサ23によって一時的に書き込まれるデータ(ダウンリンク信号DSによって送信するためのデータ、インジケータ25に表示するためのデータなど)とが含まれる。
【0034】
ここで、メモリ22に記憶される識別データは、同じ電子機器4上で同時に使用されているアクティブペン2を区別できるデータであればよい。例えば、アクティブペン2ごとに予め割り当てられる所定長のスタイラス固有IDであってもよいし、このスタイラス固有IDに基づいて決定された所定数ビット以下のビット数の値(例えば、スタイラス固有IDを所定のハッシュ関数に代入することによって得られるハッシュ値)であってもよい。また、識別データは、プロセッサ23がランダムに決定する数値であるとしてもよいし、後述する色情報や、ブラシのタイプのようにアクティブペン2に外部から設定される設定情報であってもよい。
【0035】
プロセッサ23は、メモリ22に記憶されるプログラムを実行することによって動作するマイクロプロセッサである。プロセッサ23は、電極21に到来したアップリンク信号USを受信し、該アップリンク信号USに応じた処理を実行するよう構成される。この処理には、電極21を介してダウンリンク信号DSを送信する処理が含まれる。また、プロセッサ23は、スイッチ24のオンオフ状態に応じた処理(スイッチ24のオンオフ状態を示すスイッチデータの取得処理を含む)、インジケータ25の表示内容の制御処理、ペン先に加えられた圧力(筆圧)を示す筆圧データを図示しない筆圧センサから取得する処理なども行う。
【0036】
スイッチ24は、ユーザによってオンオフ可能に構成されたスイッチである。
図2では、スイッチ24がアクティブペン2の側面に形成されている例を示しているが、末端部など他の部分にスイッチ24を設けることとしてもよい。また、1つだけでなく複数のスイッチ24を設けることとしてもよい。
【0037】
インジケータ25は、識別データに対応する装置であり、識別データをアクティブペン2のユーザに対して通知するために使用される。
図3には、インジケータ25を小型ディスプレイによって構成した例を示しているが、機械的に制御可能な部材によってインジケータ25を構成してもよい。
【0038】
図3の例でインジケータ25に表示されているのは、色情報である識別データである。以下、色情報である識別データについて詳しく説明する。
【0039】
ユーザは通常、何らかの描画アプリケーションを起動した状態で、電子機器4に対しアクティブペン2による入力を行う。そして、この描画アプリケーションには、アクティブペン2ごとに異なる描画色を設定可能に構成されるものがある。例えば、アクティブペン2aと対応付けて赤色を設定し、アクティブペン2bと対応付けて青色を設定した場合、描画アプリケーションは、アクティブペン2aの軌跡(例えば、
図1に示した軌跡st1,st2)を赤色で描画し、アクティブペン2bの軌跡(例えば、
図1に示した軌跡st3)を青色で描画するよう構成される。
【0040】
色情報は、この描画色を示す情報である。各アクティブペン2の色情報は、アップリンク信号USによって電子機器4から通知することにより、又は、ユーザがスイッチ24の操作によって通知することにより、それぞれのプロセッサ23によって取得される。プロセッサ23は、こうして取得した色情報を、インジケータ25によりユーザに通知するよう構成される。なお、
図3には、色を示す文字をインジケータ25に表示することによって色情報を通知する例を示しているが、インジケータ25の表示色によって色情報を通知してもよい。
【0041】
次に、
図1に戻り、電子機器4の構成について詳しく説明する。
【0042】
液晶表示部44は、図示していないが、マトリクス状に配置された各複数の画素電極及び液晶層と、共通電極とを有する装置である。ホストプロセッサ43は、共通電極の電位を所定値(後述する
図3に示す画素駆動用電位Vcom)に維持した状態で各画素電極の電位を制御することにより、液晶表示部44に任意の表示を行うよう構成される。
【0043】
図5には、ホストプロセッサ43が行う液晶表示部44の制御の一例を示している。同図に示すように、ホストプロセッサ43は、所定のインターバルVTで活性化する同期信号Vsyncを内部で生成可能に構成されており、この同期信号Vsyncの周期を1フレームとするフレームの単位で液晶表示部44の制御を行うよう構成される。
図5には、2つのフレームF1,F2を示している。
【0044】
1つのフレーム内には、複数の水平帰線期間HBが配置される。水平帰線期間HBの前半では、ホストプロセッサ43による画素の駆動処理が実行される。一方、水平帰線期間HBの後半では、駆動対象の画素を画面(あるいは、画面を複数に分割した所定の領域)の右端から左端に戻す処理が行われ、この処理の間、ホストプロセッサ43による画素の駆動処理は休止状態となる。以下、この休止状態である期間をブランク期間BPと称する。
【0045】
図1に戻る。パネル42はガラス又はプラスチック製の透明な板であり、センサ40は、このパネル42と液晶表示部44の間に配置される。センサコントローラ31は、センサ40を介して、アクティブペン2との通信及び指3の検出を実行するよう構成される。
【0046】
図4は、センサ40及びセンサコントローラ31の構成の詳細を示す図である。以下、この
図4を参照しながら、センサ40及びセンサコントローラ31の構成及び動作について詳しく説明する。
【0047】
センサ40は、それぞれY方向に延在し、Y方向と直交するX方向に等間隔で配置された透明な導電体である複数のセンサ電極40Xと、それぞれX方向に延在し、Y方向に等間隔で配置された透明な導電体である複数のセンサ電極40Yとがマトリクス状に配置された構成を有している。センサ40は、これらセンサ電極40X,40Yによって、アクティブペン2又は指3との間に結合容量を形成するよう構成される。なお、ここではセンサ電極40X,40Yがともに直線状の導電体により構成される例を示しているが、他の形状の導電体によってセンサ電極40X,40Yを構成することも可能である。例えば、センサ電極40X,40Yの一方を、スタイラスの二次元座標が検出可能なように二次元に配置された複数の矩形導電体によって構成することとしてもよい。
【0048】
センサ電極40X,40Yの一方は、上述した液晶表示部44の共通電極としても使用され得る。センサ電極40X,40Yの一方を液晶表示部44の共通電極として使用する電子機器4は、例えば「インセル型」と呼ばれる。一方、センサ電極40X,40Yと液晶表示部44の共通電極とを別々に設ける電子機器4は、例えば「アウトセル型」と呼ばれる。以下では、電子機器4はインセル型であるとして説明を続けるが、本発明はアウトセル型の電子機器4にも適用可能である。また、以下では、センサ電極40Xを液晶表示部44の共通電極として使用するものとして説明を続けるが、センサ電極40Yを液晶表示部44の共通電極として使用してもよいのは勿論である。
【0049】
ホストプロセッサ43が画素の駆動処理を実行する際には、共通電極の電位を所定値に維持する必要がある。したがって、インセル型の電子機器4においては、ホストプロセッサ43が画素の駆動処理を実行している間、センサコントローラ41は、アクティブペン2との通信及び指3の検出を行うことができない。そこでホストプロセッサ43は、
図5に示したブランク期間BPを利用して、センサコントローラ31にアクティブペン2との通信及び指3の検出を実行させる。具体的には、1つのフレーム内に存在する複数のブランク期間BPの1つ1つを時間スロットに見立て、その時間スロット内でアクティブペン2との通信及び指3の検出を実行するよう、センサコントローラ31を制御する。
【0050】
図5には、1フレーム内に16個のブランク期間BPが存在する例を示している。センサコントローラ31は、この16個のブランク期間BPを16個の時間スロットT1~T16に見立て、この時間スロットT1~T16を利用してアクティブペン2との通信及び指3の検出を実行する。なお、本実施の形態では、1フレーム内に16個のブランク期間BPが存在する例を取り上げて説明するが、1フレーム内のブランク期間BPの個数が16個でない場合についても同様である。
【0051】
図4に戻り、センサコントローラ41は、MCU50、ロジック部51、送信部52,53、受信部54、選択部55を有して構成される。
【0052】
MCU50及びロジック部51は、送信部52,53、受信部54、及び選択部55を制御することにより、センサコントローラ41の送受信動作を制御する制御部である。具体的に説明すると、MCU50は内部にROM及びRAMを有しており、これらに格納されたプログラムを実行することによって動作するマイクロプロセッサである。MCU50は、液晶表示部44の画素駆動時に共通電極としてのセンサ電極40Xに供給される画素駆動用電位Vcomと、アップリンク信号USとして送信されるデータDATAとを出力する機能も有している。一方、ロジック部51は、MCU50の制御に基づき、制御信号ctrl_t1,ctrl_t2,ctrl_rを出力するよう構成される。
【0053】
送信部52は、MCU50の制御に従って、指3を検出するために使用される指検出用信号FDSを生成する回路である。指検出用信号FDSは、例えば、無変調のパルス列信号又は正弦波信号であってよい。
【0054】
送信部53は、MCU50及びロジック部51の制御に従ってアップリンク信号USを生成する回路であり、
図3に示すように、符号列保持部60、拡散処理部61、及び送信ガード部62を含んで構成される。
【0055】
拡散処理部61は、2つの入力端子及び1つの出力端子を有しており、一方の入力端子にはMCU50からデータDATAが、他方の入力端子には符号列保持部60から拡散符号PNがそれぞれ供給される。
【0056】
データDATAは、アップリンク信号US内に配置される複数ビットのデータである。MCU50は、コマンド信号Cを送信する場合には、
図2(a)に示したコマンドD1及び拡張フラグD2を生成し、データDATAとして拡散処理部61に供給する。一方、マルチアップリンク信号M/Uを送信する場合には、
図2(b)に示した検出済フラグD3a,D3b及び対応データD4a,D4bを生成し、データDATAとして拡散処理部61に供給する。
【0057】
拡散符号PNは、自己相関特性を有する所定チップ長のデータである。符号列保持部60は、ロジック部51から供給される制御信号ctrl_t1に基づき、拡散符号PNを生成して保持する機能を有する。
【0058】
拡散処理部61は、一方の入力端子に供給されたデータDATAに基づいて他方の入力端子に供給された拡散符号PNを変調することにより、所定チップ長の送信チップ列を取得する機能を有する。拡散処理部61が取得した送信チップ列は、送信ガード部54に供給される。
【0059】
送信ガード部62は、ロジック部51から供給される制御信号ctrl_t2に基づき、アップリンク信号USの送信期間とダウンリンク信号DSの受信期間との間に、送信動作と受信動作を切り替えるために必要となるガード期間(送信と受信の両方を行わない期間)を挿入する機能を有する。
【0060】
受信部54は、ロジック部51の制御信号ctrl_rに基づいて、アクティブペン2が送信したダウンリンク信号DS又は送信部52が送信した指検出用信号FDSを受信するための回路である。具体的には、増幅回路65、検波回路66、及びアナログデジタル(AD)変換器67を含んで構成される。
【0061】
増幅回路65は、選択部55から供給されるダウンリンク信号DS又は指検出用信号FDSを増幅して出力する。検波回路66は、増幅回路65の出力信号のレベルに対応した電圧を生成する回路である。AD変換器67は、検波回路66から出力される電圧を所定時間間隔でサンプリングすることによって、デジタル信号を生成する回路である。AD変換器67が出力するデジタル信号は、MCU50に供給される。MCU50は、こうして供給されたデジタル信号に基づき、アクティブペン2又は指3の位置検出と、アクティブペン2が送信したデータRes(上述した識別データ又は既定のデータなど)の取得とを行う。MCU50は、検出した位置を示す座標x,yと、取得したデータResとを、逐次、ホストプロセッサ43に出力する。また、MCU50は、識別データを取得した場合に、自身の動作モードを変更する処理を行う。この点については、後ほど詳しく説明する。
【0062】
選択部55は、スイッチ68x,68yと、導体選択回路69x,69yとを含んで構成される。
【0063】
スイッチ68yは、共通端子とT端子及びR端子のいずれか一方とが接続されるように構成されたスイッチ素子である。スイッチ68yの共通端子は導体選択回路69yに接続され、T端子は送信部53の出力端に接続され、R端子は受信部54の入力端に接続される。また、スイッチ68xは、共通端子とT1端子、T2端子、D端子、及びR端子のいずれか1つとが接続されるように構成されたスイッチ素子である。スイッチ68xの共通端子は導体選択回路69xに接続され、T1端子は送信部53の出力端に接続され、T2端子は送信部52の出力端に接続され、D端子は画素駆動用電位Vcomを出力するMCU50の出力端に接続され、R端子は受信部54の入力端に接続される。
【0064】
導体選択回路69xは、複数のセンサ電極40Xを選択的にスイッチ68xの共通端子に接続するためのスイッチ素子である。導体選択回路68xは、複数のセンサ電極40Xの一部又は全部を同時にスイッチ68xの共通端子に接続することも可能に構成される。
【0065】
導体選択回路69yは、複数のセンサ電極40Yを選択的にスイッチ68yの共通端子に接続するためのスイッチ素子である。導体選択回路69yも、複数のセンサ電極40Yの一部又は全部を同時にスイッチ68yの共通端子に接続することも可能に構成される。
【0066】
選択部55には、ロジック部51から4つの制御信号sTRx,sTRy,selX,selYが供給される。具体的には、制御信号sTRxはスイッチ68xに、制御信号sTRyはスイッチ68yに、制御信号selXは導体選択回路69xに、制御信号selYは導体選択回路69yにそれぞれ供給される。ロジック部51は、これら制御信号sTRx,sTRy,selX,selYを用いて選択部55を制御することにより、アップリンク信号US又は指検出用信号FDSの送信並びに画素駆動用電位Vcomの印加と、ダウンリンク信号DS又は指検出用信号FDSの受信とを実現する。
【0067】
以下、ロジック部51による選択部55の制御内容及びそれを受けたMCU10の動作について、指3の検出実行時、画素駆動動作実行時、アップリンク信号USの送信時、及びダウンリンク信号DSの受信時に分けて詳しく説明する。
【0068】
まず、指3の検出時におけるロジック部51は、T2端子が共通端子に接続されるようスイッチ68xを制御するとともに、R端子が共通端子に接続されるようスイッチ68yを制御する。さらに、複数のセンサ電極40X,40Yの組み合わせが順次選択されることとなるよう、導体選択回路69x,69yを制御する。こうすることで、複数のセンサ電極40X,40Yによって構成される複数の交点のそれぞれを通過した指検出用信号FDSが、順次、受信部54によって受信されることになる。MCU50は、こうして順次受信される指検出用信号FDSの受信強度に基づいて、パネル面上における指3の位置を検出する。
【0069】
次に、画素駆動動作実行時におけるロジック部51は、D端子が共通端子に接続されるようスイッチ68xを制御するとともに、複数のセンサ電極40Xのすべてがスイッチ68xに同時に接続されるよう導体選択回路69xを制御する。これにより、MCU50から各センサ電極40Xに画素駆動用電位Vcomが供給されることになるので、ホストプロセッサ43による画素駆動動作の実行が可能になる。なお、MCU50は、ホストプロセッサ43から供給されるタイミング信号に基づくタイミングで、ロジック部51に上記制御を実行させる。
【0070】
次に、アップリンク信号USの送信時におけるロジック部51は、T1端子が共通端子に接続されるようスイッチ68xを制御するとともに、T端子が共通端子に接続されるようスイッチ68yを制御する。さらに、複数のセンサ電極40X,40Yのすべてが同時に選択されることとなるよう、導体選択回路69x,69yを制御する。これにより、複数のセンサ電極40X,40Yのすべてからアップリンク信号USが送信されることになる。
【0071】
最後に、ダウンリンク信号DSの受信時におけるロジック部51は、R端子が共通端子に接続されるようスイッチ68x,68yのそれぞれを制御する。導体選択回路69x,69yの制御方法は、受信しようとするダウンリンク信号DSの種類によって異なる。
【0072】
すなわち、バースト信号又は応答信号であるダウンリンク信号DSを受信する場合には、ロジック部51は、複数のセンサ電極40X,40Yの組み合わせが順次選択されることとなるよう、導体選択回路69x,69yを制御する。以下、このような導体選択回路69x,69yの制御方法を「グローバルスキャン」と称する。グローバルスキャンを行うことで、複数のセンサ電極40X,40Yによって構成される複数の交点のそれぞれを通過したバースト信号又は応答信号が、順次、受信部54によって受信されることになる。MCU50は、こうして順次受信されるバースト信号の受信強度に基づいて、パネル面上におけるアクティブペン2の位置を検出する。また、受信部54から供給される応答信号を復号することにより、応答信号内に含まれる識別データを取得する。
【0073】
一方、データ信号であるダウンリンク信号DSを受信する場合のロジック部51は、複数のセンサ電極40X,40Yのうち、データ信号の送信元であるアクティブペン2が送信したバースト信号に基づいて検出された最新の位置の近辺にある所定数本(例えば1本)のみが選択されることとなるよう、導体選択回路69x,69yを制御する。以下、このような導体選択回路69x,69yの制御方法を「ローカルスキャン」と称する。選択された所定数本のセンサ電極によって受信されたデータ信号は、受信部54を介してMCU50に供給される。MCU50は、こうして供給されたデータ信号を復号することにより、アクティブペン2が送信したデータを取得する。
【0074】
以上、本実施の形態による位置検出システム1の全体概要を説明した。次に、位置検出システム1の構成のうち本発明に特徴的な部分について、さらに詳しく説明する。
【0075】
図5~
図7はそれぞれ、ホストプロセッサ43が行う液晶表示部44の制御と、センサコントローラ41とアクティブペン2との間で行われる通信とを示す図である。
図5は、センサコントローラ41がアクティブペン2を1つも検出していない状態から新たにアクティブペン2aを検出する場合を示し、
図6は、センサコントローラ41がさらにアクティブペン2bを検出する場合を示し、
図7は、センサコントローラ41がアクティブペン2a,2bを検出済みである場合を示している。
【0076】
初めにセンサコントローラ41の動作モードについて説明する。
【0077】
図5に示すように、アクティブペン2を1つも検出していない状態にあるセンサコントローラ41は、時間スロットT1でコマンド信号Cを送信し、時間スロットT3,T4でピング信号Pの送信とグローバルスキャン(GS)とを実施し、時間スロットT5~T7,T9~T11で指3の検出動作(TS)を実施する。以下、このような送受信スケジュールで動作するセンサコントローラ41の動作モードを「グローバルモード」と称する。
【0078】
また、
図6に示すように、アクティブペン2を1つだけ検出している状態にあるセンサコントローラ41は、時間スロットT1でコマンド信号Cを送信し、時間スロットT2でマルチアップリンク信号M/Uを送信し、時間スロットT3,T4,T7,T8,T11,T12,T14,T15でピング信号Pの送信とローカルスキャン(LS)とを実施し、時間スロットT5,T6でピング信号Pの送信とグローバルスキャン(GS)とを実施し、時間スロットT9,T10,T13で指3の検出動作(TS)を実施する。以下、このような送受信スケジュールで動作するセンサコントローラ41の動作モードを「フルモード」と称する。
【0079】
さらに、
図7に示すように、アクティブペン2を2つ検出している状態にあるセンサコントローラ41は、時間スロットT1でコマンド信号Cを送信し、時間スロットT2でマルチアップリンク信号M/Uを送信し、時間スロットT3,T4,T11,T12でピング信号Pの送信と1本目のアクティブペン2に対するローカルスキャン(LSA)とを実施し、時間スロットT7,T8,T14,T15でピング信号Pの送信と2本目のアクティブペン2に対するローカルスキャン(LSB)とを実施し、時間スロットT5,T6でピング信号Pの送信とグローバルスキャン(GS)とを実施し、時間スロットT9,T10,T13で指3の検出動作(TS)を実施する。以下、このような送受信スケジュールで動作するセンサコントローラ41の動作モードを「ツーペンモード」と称する。
【0080】
初めに
図5を参照すると、まだセンサコントローラ41によって検出されていないアクティブペン2aは、センサコントローラ41によって送信されるコマンド信号Cを受信すると、その中に含まれるデータから時間スロットの配置を取得する。そして、時間スロットT2に相当するタイミングでマルチアップリンク信号M/Uの受信を試みる。
図5の例では、センサコントローラ41はマルチアップリンク信号M/Uを送信しないので、アクティブペン2aはマルチアップリンク信号M/Uを受信しないことになる。
【0081】
時間スロットT2でマルチアップリンク信号M/Uを受信しなかったと判定したアクティブペン2aは、センサコントローラ41の動作モードが「グローバルモード」であると判定し、それに応じて自身の動作モードを「グローバルモード」に設定する。アクティブペン2のグローバルモードは、時間スロットT1でコマンド信号Cを受信し、時間スロットT2でマルチアップリンク信号M/Uを受信し、時間スロットT3,T4で応答信号及びバースト信号の送信を行うモードである。
【0082】
自身の動作モードをグローバルモードに設定したアクティブペン2aは、時間スロットT3,T4を利用して応答信号及びバースト信号の送信を行う(
図5~
図7では、バースト信号及び応答信号をまとめて「A」と記す。)。なお、このときアクティブペン2aはピング信号Pの受信に応じて送信動作を行うが、ピング信号Pを受信しない場合であっても、同様に送信動作を行うこととしてもよい。アクティブペン2aは、コマンド信号Cを受信したことによって既に時間スロットの配置を取得しているので、ピング信号Pに頼らずとも、時間スロットT3,T4内で応答信号及びバースト信号を送信することができるからである。この点は、他のタイミングでダウンリンク信号DSの送信を行う場合においても同様である。
【0083】
センサコントローラ41は、アクティブペン2aが送信した応答信号及びバースト信号をグローバルスキャンによって受信する。そして、応答信号内に含まれる識別データを取得するとともに、バースト信号の各センサ電極における受信強度に基づいて、パネル面上におけるアクティブペン2aの位置を検出する。センサコントローラ41は、こうして取得した識別データ及び検出した位置を互いに対応付けて自身のメモリ(図示せず)に登録するとともに、ホストプロセッサ43に出力する。また、こうして1本目のアクティブペン2aを検出したセンサコントローラ41は、自身の動作モードを上述したフルモードに変更する。
【0084】
フルモードでセンサコントローラ41が送信するコマンド信号Cは、拡張フラグD2に1本以上のアクティブペン2を検出中であることを示す「1」が設定された信号となる。また、マルチアップリンク信号M/Uは、検出済フラグD3a,D3bの一方に「1」、他方に「0」が設定され、対応データD4a,D4bのうちこの「1」に対応する一方に、検出中のアクティブペン2の識別データ(応答信号から取得したもの)に対応する対応データが設定された信号となる。対応データD4a,D4bの他方には、初期値「00000」が設定される。
【0085】
グローバルモードのアクティブペン2aは、応答信号及びバースト信号を送信したフレームの次のフレームで、コマンド信号Cを受信した後にマルチアップリンク信号M/Uの受信を試みる。
図6の例では、センサコントローラ41はマルチアップリンク信号M/Uを送信するので、アクティブペン2aはマルチアップリンク信号M/Uを受信することになる。
【0086】
マルチアップリンク信号M/Uを受信したアクティブペン2aは、まず初めに、その中に含まれる検出済フラグD3a,D3bを参照することにより、センサコントローラ41が検出中のアクティブペン2の本数を取得する。そして、取得されるアクティブペン2の本数が「1」である場合にはセンサコントローラ41がフルモードであると判定し、「2」である場合にはセンサコントローラ41がツーペンモードであると判定する。
【0087】
図6の例では、アクティブペン2aは、センサコントローラ41がフルモードであると判定することになる。この判定をしたアクティブペン2aは、自身の動作モードを「フルモード」に変更する。アクティブペン2のフルモードは、時間スロットT1でコマンド信号Cを受信し、時間スロットT2でマルチアップリンク信号M/Uを受信し、時間スロットT3,T4,T7,T8,T11,T12,T14,T15でデータ信号を送信し(
図5~
図7では、データ信号を「D」と記す。)、時間スロットT5,T6でバースト信号を送信するモードである。
【0088】
また、アクティブペン2aは、マルチアップリンク信号M/U内の対応データD4a,D4bを参照することにより、センサコントローラ41が自身を検出したか否かを判定する。その結果、検出していないと判定した場合には、時間スロットT5,T6で応答信号及びバースト信号の再送信を行う(図示せず)。なお、このとき同時に他のアクティブペン2がセンサコントローラ41の指示に応じてバースト信号を送信する可能性があるが、通常、他のアクティブペン2はパネル面内の異なる位置にあるので、センサコントローラ41は、アクティブペン2aが送信した応答信号及びバースト信号と、他のアクティブペン2が送信したバースト信号とを区別して受信することができる。
【0089】
センサコントローラ41が自身を検出したと判定した場合には、アクティブペン2aは、時間スロットT1で受信していたコマンド信号Cを参照することによって、自身に対するコマンドが送信されているか否かを判定する。その結果、バーストデータの送信が指示されていた場合には、時間スロットT5,T6を利用してバースト信号の送信を行う。一方、既定のデータの送信が指示されていた場合には、時間スロットT3,T4,T7,T8,T11,T12,T14,T15を利用してデータ信号の送信を行う。送信するデータのサイズが大きく1つのフレーム内で送信しきれない場合には、次のフレームにおいても引き続きデータ信号の送信を行う。自身に対するコマンドが送信されていなかった場合には、次のフレームでのコマンド信号Cの受信を待機する。
【0090】
センサコントローラ41は、アクティブペン2aが送信したバースト信号をグローバルスキャンによって受信し、そのバースト信号の各センサ電極における受信強度に基づいて、パネル面上におけるアクティブペン2aの位置を再検出する。そして、アクティブペン2aの識別データと対応付けてメモリに記憶している位置を更新するとともに、ホストプロセッサ43に出力する。また、センサコントローラ41は、アクティブペン2aが送信したデータ信号をローカルスキャンによって受信し、受信したデータをホストプロセッサ43に出力する。
【0091】
図6には、センサコントローラ41がフルモードで動作している間に、2本目のアクティブペン2bがパネル面に接近した場合を示している。この場合、まずアクティブペン2bが、上述したアクティブペン2aの場合と同様にして、自身のモードをフルモードに設定する。そして、
図6に示すように、時間スロットT5,T6で応答信号及びバースト信号を送信する。これをグルーバルスキャンによって受信したセンサコントローラ41は、応答信号内に含まれる識別データを取得するとともに、バースト信号の各センサ電極における受信強度に基づいて、パネル面上におけるアクティブペン2bの位置を検出する。センサコントローラ41は、こうして取得した識別データ及び検出した位置を互いに対応付けて自身のメモリに登録するとともに、ホストプロセッサ43に出力する。また、こうして2本目のアクティブペン2bを検出したセンサコントローラ41は、自身の動作モードを上述したツーペンモードに変更する。
【0092】
フルモードのアクティブペン2a,2bはそれぞれ、次のフレームで、コマンド信号Cを受信した後にマルチアップリンク信号M/Uの受信を試みる。
図7の例では、アクティブペン2a,2bのそれぞれが同じマルチアップリンク信号M/Uを受信することになる。
【0093】
マルチアップリンク信号M/Uを受信したアクティブペン2a,2bはそれぞれ、まず初めに、その中に含まれる検出済フラグD3a,D3bを参照することにより、センサコントローラ41が検出中のアクティブペン2の本数を取得する。
図7の例では、この本数が「2」となるので、アクティブペン2a,2bはそれぞれ、センサコントローラ41がツーペンモードであると判定することになる。
【0094】
アクティブペン2a,2bはさらに、対応データD4a,D4bを参照することにより、センサコントローラ41が自身を検出したか否かを判定する。その結果、検出していないと判定した場合には、センサコントローラ41との通信を断念し、例えばインジケータ25を用いてユーザにその旨を通知する。自身の識別データ以外の2つの識別データがマルチアップリンク信号M/Uによって通知されているということは、最大2本のアクティブペン2の同時使用にしか対応していないセンサコントローラ41が自身以外の2本のアクティブペン2を既に検出中であるということであり、センサコントローラ41に自身を検出させることが不可能となったことを意味するからである。
【0095】
センサコントローラ41が自身を検出したと判定した場合のアクティブペン2a,2bは、自身の識別データに対応する対応データが対応データD4a,D4bのいずれに含まれていたかを判定する。その結果、対応データD4aに含まれていたと判定した場合には、自身の動作モードを「ハーフモードA」に変更し、対応データD4bに含まれていたと判定した場合には、自身の動作モードを「ハーフモードB」に変更する。ハーフモードAは、時間スロットT1でコマンド信号Cを受信し、時間スロットT2でマルチアップリンク信号M/Uを受信し、時間スロットT3,T4,T11,T12でデータ信号を送信し、時間スロットT5,T6でバースト信号を送信するモードである。また、ハーフモードBは、時間スロットT1でコマンド信号Cを受信し、時間スロットT2でマルチアップリンク信号M/Uを受信し、時間スロットT7,T8,T14,T15でデータ信号を送信し、時間スロットT5,T6でバースト信号を送信するモードである。
【0096】
その後、アクティブペン2a,2bはそれぞれ、時間スロットT1で受信していたコマンド信号Cを参照することによって、自身に対するコマンドが送信されているか否かを判定する。その結果、バーストデータの送信が指示されていた場合には、時間スロットT5,T6を利用してバースト信号の送信を行う。一方、既定のデータの送信が指示されていた場合には、対応するデータ信号送信用の時間スロット(ハーフモードAでは時間スロットT3,T4,T11,T12、ハーフモードBでは時間スロットT7,T8,T14,T15)を利用してデータ信号の送信を行う。送信するデータのサイズが大きく1つのフレーム内で送信しきれない場合には、次のフレームにおいても引き続きデータ信号の送信を行う。自身に対するコマンドが送信されていなかった場合には、次のフレームでのコマンド信号Cの受信を待機する。
【0097】
センサコントローラ41は、アクティブペン2a,2bが送信したバースト信号をグローバルスキャンによって受信すると、そのバースト信号の各センサ電極における受信強度に基づいて、バースト信号の送信元であるアクティブペン2のパネル面上における位置を再検出する。そして、そのアクティブペン2の識別データと対応付けてメモリに記憶している位置を更新するとともに、ホストプロセッサ43に出力する。また、センサコントローラ41は、アクティブペン2a,2bが送信したデータ信号をローカルスキャンによって受信し、受信したデータをホストプロセッサ43に出力する。
【0098】
以上説明したように、本実施の形態によれば、識別データを決定するのはアクティブペン2側であり、アクティブペン2が決定した識別データが応答信号によってセンサコントローラ41に通知される。したがって、アクティブペン2とセンサコントローラ41のペアリングにおいて、複数のアクティブペン2に同じ識別データが割り当てられてしまうことを防止できる。
【0099】
また、本実施の形態によれば、センサコントローラ41が検出しているアクティブペン2の数の変化に応じてアクティブペン2が自律的に自身の動作モードを変更するので、センサコントローラ41から各アクティブペン2に送受信スケジュールを指示する場合に比べ、アクティブペン2とセンサコントローラ41のペアリング処理の遅延を防止できる。
【0100】
次に、アクティブペン2及びセンサコントローラ41の処理フローを参照しながら、本実施の形態によるこれらの動作について、再度より詳しく説明する。なお、以下では、
図5~
図7に示したフレーム構成を前提として説明を行う。
【0101】
図8及び
図9は、アクティブペン2のプロセッサ23が行う処理を示すフロー図である。ここで、
図8のステップS10に示す「応答信号送信済フラグ」は、メモリ22内に記憶されるデータである。アクティブペン2の電源が投入された段階では、応答信号送信済フラグは初期値Falseに設定されている(ステップS10)。
【0102】
電源が投入されて動作を開始したプロセッサ23は、まず初めにコマンド信号Cの検出動作を行う(ステップS11)。その結果としてコマンド信号Cか検出された場合、プロセッサ23は、その中に含まれるデータを復号することにより、時間スロットの配置を含む各情報を取得する(ステップS15)。一方、コマンド信号Cか検出されない場合には、コマンド信号Cが検出されない状態で所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS12)。そして、経過していないと判定した場合には、ステップS11に戻って引き続きコマンド信号Cの検出動作を行い、経過したと判定した場合には、応答信号送信済フラグに値Falseを設定したうえで(ステップS13)、ステップS11に戻って引き続きコマンド信号Cの検出動作を行う。ステップS13の処理は、アクティブペン2がアップリンク信号USを受信できない程度にパネル面から離れた場合に、後述するステップS24で値Trueを設定した応答信号送信済フラグを元の値Falseに戻すための処理である。
【0103】
ステップS15を実行した後、プロセッサ23は、時間スロットT2のタイミングでマルチアップリンク信号M/Uの検出動作を行う(ステップS16)。その結果、マルチアップリンク信号M/Uが検出されなければ、自身の動作モードをグローバルモードに設定し(ステップS17)、時間スロットT3,T4を利用して、自身の識別データを含む応答信号及びバースト信号を送信する(ステップS18)。さらに、応答信号送信済フラグに値Trueを設定し(ステップS24)、ステップS11に処理を戻す。
【0104】
ステップS16でマルチアップリンク信号M/Uを検出した場合のプロセッサ23は、応答信号送信済フラグの値がTrueであるかFalseであるかを判定する(ステップS19)。その結果、Falseであると判定した場合には、マルチアップリンク信号M/Uが自身の識別データに対応する対応データと同じものを含むか否かを判定し(ステップS20)、含むと判定した場合には、メモリ22内に自身の識別データとして保持しているデータを変更する(ステップS21)。このステップS21の処理により、複数のアクティブペン2が同じ識別データを送信してしまうことの防止が可能になる。
【0105】
ステップS20で含まないと判定した場合、又は、ステップS21の処理が終了した場合、プロセッサ23は、自身の動作モードをフルモードに設定し(ステップS22)、時間スロットT5,T6を利用して、自身の識別データを含む応答信号及びバースト信号を送信する(ステップS23)。さらに、応答信号送信済フラグに値Trueを設定し(ステップS24)、ステップS11に処理を戻す。
【0106】
ステップS19でTrueであると判定した場合のプロセッサ23は、
図9に示すように、マルチアップリンク信号M/Uが自身の識別データの対応データを含むか否かを判定する(ステップS30)。その結果、含まないと判定した場合には、センサコントローラ41は自身を未検出であると判定し、ステップS11に処理を戻す。一方、含むと判定した場合には、センサコントローラ41は自身を検出済であると判定し、マルチアップリンク信号M/U内の検出済フラグD3a,D3bを参照することによってセンサコントローラ41が検出中のアクティブペン2の本数を取得する。そして、取得した本数が1又は2のいずれであるかを判定する(ステップS31)。
【0107】
ステップS31で1と判定した場合、プロセッサ23は、自身の動作モードをフルモードに設定する(ステップS32)。一方、ステップS31で2と判定した場合、プロセッサ23はさらに自身の識別データに対応する対応データが対応データD4a,D4bのいずれに含まれていたかを判定し(ステップS33)、対応データD4aに含まれていた場合には自身の動作モードをハーフモードAに設定し(ステップS34)、対応データD4bに含まれていた場合には自身の動作モードをハーフモードBに設定する(ステップS35)。
【0108】
ここで、以上のようにしてプロセッサ23が自身の動作モードを設定することは、センサコントローラ41が検出中のアクティブペン2の本数に応じてダウンリンク信号DSの送信レートを決定することに等しい。すなわち、上述したように、フルモードでは8つの時間スロットT3,T4,T7,T8,T11,T12,T14,T15を用いてダウンリンク信号DSの送信を行うのに対し、ハーフモードA及びハーフモードBではそれぞれ4つの時間スロットしかダウンリンク信号DSの送信に使えないので、送信レートがフルモードの場合の半分となる。したがって、プロセッサ23が動作モードをハーフモードA及びハーフモードBに設定することは、ダウンリンク信号DSの送信レートを、動作モードをフルモードに設定する場合の1/2の値に決定していることになる。
【0109】
また、上記のような動作モードの設定方法によれば、プロセッサ23は、マルチアップリンク信号M/Uが検出中アクティブペン2の本数の増加を示す場合にダウンリンク信号DSの送信レートを減少させ、マルチアップリンク信号M/Uが検出中アクティブペン2の本数の減少を示す場合にダウンリンク信号DSの送信レートを増加させている、と言うことができる。
【0110】
ステップS32,S34,S35においていずれかの動作モードにエントリしたプロセッサ23は、動作モードに応じた時間スロットを利用してコマンド信号C内のコマンドに従うダウンリンク信号DSの送信を実施するとともに、送信しない時間を利用してコマンド信号Cの検出を実施する(ステップS36)。ステップS36を実施している間、プロセッサ23は、次のフレームの時間スロットT1のタイミングが到来すると、
図8のステップS11に処理を戻す(ステップS37)。また、次のフレームの時間スロットT1のタイミングが到来する前であっても、コマンド信号Cが検出された場合には、
図8のステップS15に処理を移す(ステップS38)。こうして、次のフレームの処理が開始される。
【0111】
図10~
図13は、センサコントローラ41が行う処理を示すフロー図である。センサコントローラ41は、まず
図10に示すように、自身の動作モードをグローバルモードに設定する(ステップS50)。そして、現在の動作モードがグローバルモード、フルモード、ツーペンモードのいずれであるかを判定する(ステップS51)。
【0112】
図11には、ステップS51で現在の動作モードがグローバルモードであると判定された場合の1フレーム分の処理を示している。この場合のセンサコントローラ41が各時間スロットで行う処理は、次のとおりである(ステップS60)。
【0113】
すなわち、センサコントローラ41は、まず時間スロットT1においてコマンド信号Cの送信を行う(ステップS61。第1のアップリンク信号送信ステップ)。
【0114】
次いでセンサコントローラ41は、時間スロットT3,T4においてグローバルスキャンを実施する(ステップS63。応答信号検出ステップ)。そして、応答信号が受信されたか否かを判定し(ステップS64)、受信されたと判定した場合にのみ、応答信号に含まれる識別データ(以下、識別データ#1とする)を抽出して自身のメモリに登録する(ステップS65。識別データ抽出ステップ)とともに、自身の動作モードをフルモードに設定する(ステップS67。送送受信スケジュール変更ステップ)。また、センサコントローラ41は、バースト信号が受信されたか否かを判定し(ステップS68)、受信されたと判定した場合にのみ、複数のセンサ電極40X,40Yのそれぞれにおけるバースト信号の受信強度に基づいてパネル面上におけるアクティブペン2の位置を取得し、識別データ#1と対応付けて記憶する(ステップS69)。図示していないが、センサコントローラ41は、取得した識別データ#1及び位置をホストプロセッサ43に出力する処理も行う。
【0115】
なお、図示していないが、ステップS64では、パネル面内の2箇所で応答信号が受信される場合があり得る。これは例えば、2本のアクティブペン2が同時にパネル面に接近した場合である。このような場合、センサコントローラ41は、ステップS65でそれぞれの応答信号に含まれる識別データを自身のメモリにともに登録し、ステップS66で自身の動作モードをツーペンモードに設定すればよい。
【0116】
センサコントローラ41はさらに、時間スロットT5~T7,T9~T11において指3の検出動作を実施する(ステップS70)。この動作の具体的な内容は上述したとおりであるので、説明を省略する。
【0117】
図12には、ステップS51で現在の動作モードがフルモードであると判定された場合の1フレーム分の処理を示している。この場合のセンサコントローラ41が各時間スロットで行う処理は、次のとおりである(ステップS80)。
【0118】
すなわち、センサコントローラ41は、まず時間スロットT1においてコマンド信号Cの送信を行い(ステップS81。第1のアップリンク信号送信ステップ)、次いで時間スロットT2において、識別データ#1の対応データを含むマルチアップリンク信号M/Uの送信を行う(ステップS82。第2のアップリンク信号送信ステップ)。
【0119】
センサコントローラ41はさらに、時間スロットT3,T4,T7,T8,T11,T12,T14,T15において、識別データ#1についてのローカルスキャンを実施する(ステップS83)。
【0120】
図14は、ステップS83及び後述するステップS103,S104(
図13を参照)で実施されるローカルスキャンの詳細を示すフロー図である。同図に示すように、センサコントローラ41はまず、データ信号の受信動作を行う(ステップS110)。この受信動作は、上述したように、複数のセンサ電極40X,40Yのうち、スキャン対象のアクティブペン2の位置(スキャン対象のアクティブペン2の識別データ(以下、
図14において識別データ#kとする。)と対応付けて記憶している位置)の近辺にある所定数本のみを利用して実行される。
【0121】
ステップS110においてデータ信号を受信したと判定したセンサコントローラ41は、スキャン対象のアクティブペン2が送信したデータを取得する(ステップS111)。図示していないが、こうして取得されたデータは、センサコントローラ41から識別データ#kと対応付けてホストプロセッサ43に供給される。
【0122】
一方、ステップS110においてデータ信号を受信しなかったと判定したセンサコントローラ41は、スキャン対象のアクティブペン2からのデータ信号が検出されない状態が所定時間継続したか否かを判定し(ステップS113)、継続したと判定した場合に、自身のメモリから識別データ#kを削除する(ステップS114)。そして、検出中のアクティブペン2の本数(残りのアクティブペン2の本数)が0又は1のいずれであるかを判定し(ステップS115)、1であれば自身の動作モードをフルモードに設定し(ステップS116)、0であれば自身の動作モードをグローバルモードに設定する(ステップS117)。これにより、パネル面から離れたアクティブペン2とのペアリングが解除される。
【0123】
ステップS111,S116,S117の処理が終了した後、又は、ステップS113で継続していないと判定した場合、センサコントローラ41は、ローカルスキャンの処理を終了する。
【0124】
図12に戻る。センサコントローラ41は、時間スロットT5,T6においてグローバルスキャンを実施する(ステップS84。応答信号検出ステップ)。そして、応答信号が受信されたか否かを判定し(ステップS85)、受信されたと判定した場合にのみ、応答信号に含まれる識別データ(以下、識別データ#2とする)を抽出して自身のメモリに登録する(ステップS86。識別データ抽出ステップ)とともに、自身の動作モードをツーペンモードに設定する(ステップS87)。また、センサコントローラ41は、バースト信号が受信されたか否かを判定し(ステップS88)、受信されたと判定した場合にのみ、複数のセンサ電極40X,40Yのそれぞれにおけるバースト信号の受信強度に基づいてパネル面上におけるアクティブペン2の位置を取得し、識別データ#2と対応付けて記憶する(ステップS69)。図示していないが、センサコントローラ41は、取得した識別データ#2及び位置をホストプロセッサ43に出力する処理も行う。
【0125】
なお、ステップS88では、識別データ#1のアクティブペン2が送信したバースト信号も受信される可能性がある。この場合、センサコントローラ41は、このバースト信号に基づいて取得されるアクティブペン2の位置を識別データ#1と対応付けて記憶するとともに、ホストプロセッサ43に出力する。
【0126】
センサコントローラ41はさらに、時間スロットT9,T10,T13において、指3の検出動作を実施する(ステップS90)。
【0127】
図13には、ステップS51で現在のモードがツーペンモードであると判定された場合の1フレーム分の処理を示している。この場合のセンサコントローラ41が各時間スロットで行う処理は、次のとおりである(ステップS100)。
【0128】
すなわち、センサコントローラ41は、まず時間スロットT1においてコマンド信号Cの送信を行い(ステップS101。第1のアップリンク信号送信ステップ)、次いで時間スロットT2において、識別データ#1,#2の対応データを含むマルチアップリンク信号M/Uの送信を行う(ステップS102。第2のアップリンク信号送信ステップ)。
【0129】
センサコントローラ41はさらに、時間スロットT3,T4,T11,T12において識別データ#1についてのローカルスキャンを実施する(ステップS103)とともに、時間スロットT7,T8,T14,T15において識別データ#2についてのローカルスキャンを実施する(ステップS104)。ローカルスキャンの詳しい処理内容は、
図14を参照して説明したとおりである。
【0130】
また、センサコントローラ41は、時間スロットT5,T6においてグローバルスキャンを実施する(ステップS105)。そして、バースト信号が受信されたか否かを判定し(ステップS106)、受信されたと判定した場合にのみ、バースト信号に基づいてアクティブペン2の位置を取得し、送信元のアクティブペン2の識別データと対応付けて記憶する(ステップS107)。図示していないが、センサコントローラ41は、取得した位置を対応する識別データとともにホストプロセッサ43に出力する処理も行う。
【0131】
ここで、ツーペンモードにあるセンサコントローラ41は、応答信号の検出動作を行わない。これは、センサコントローラ41が既に最大本数(=2)のアクティブペン2を検出済みであるからである。この場合、新たなアクティブペン2がパネル面に接近し、応答信号を送信したとしても、センサコントローラ41によって無視されることとなる。
【0132】
センサコントローラ41はさらに、時間スロットT9,T10,T13において、指3の検出動作を実施する(ステップS108)。
【0133】
以上、本実施の形態によるアクティブペン2及びセンサコントローラ41の動作について、これらの処理フローを参照しながら、より詳細に説明した。
【0134】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明が、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施され得ることは勿論である。
【0135】
例えば、上記実施の形態では、電子機器4において同時使用可能なアクティブペン2の本数を最大2本としたが、3本以上のアクティブペン2を同時に使用できるように電子機器4及びアクティブペン2を構成することも可能である。
【0136】
図15は、電子機器4においてn本のアクティブペン2を同時に使用可能とする場合のコマンド信号C及びマルチアップリンク信号M/Uの例を示す図である。
図15(a)は、センサコントローラ41のモードがグローバルモードである場合(0本のアクティブペン2を検出している場合)を示し、
図15(b)は、センサコントローラ41が2本のアクティブペン2を検出している場合を示し、
図15(c)は、センサコントローラ41がn本のアクティブペン2を検出している場合を示している。この例のように、検出数が増えるにしたがって送信するマルチアップリンク信号M/Uの個数を増やしていくことにより、電子機器4において3本以上のアクティブペン2を同時に使用できるようにすることが可能となる。
【0137】
なお、
図15の例においては、2本分の検出済フラグの後ろに2本分の対応データを有するセットを順に並べることによって複数のマルチアップリンク信号M/Uを構成しているが、n本分の検出済フラグの後ろにn本分の対応データを配置することによって複数のマルチアップリンク信号M/Uを構成することとしてもよいし、1本分の検出済フラグの後ろに1本分の対応データを有するセットを順に並べることによって複数のマルチアップリンク信号M/Uを構成してもよいし、m本分(mは3~n-1のいずれか)の検出済フラグの後ろにm本分の対応データを有するセットを順に並べることによって複数のマルチアップリンク信号M/Uを構成してもよい。また、対応データを検出済フラグの前に配置することとしてもよい。
【0138】
また、検出中のアクティブペン2が一本のみである場合、センサコントローラ41は、マルチアップリンク信号M/Uの送信を行わないこととしてもよい。この場合、センサコントローラ41に対して応答信号を送信したアクティブペン2は、センサコントローラ41からマルチアップリンク信号M/Uが受信されない場合に、センサコントローラ41が検出中のアクティブペン2は自身のみであると判定することとすればよい。
【0139】
また、マルチアップリンク信号M/Uを含むアップリンク信号USは、必ずしもマトリクス状のセンサ電極から送信するとしなくてもよい。例えば、Bluetooth(登録商標)などの無線通信により、アクティブペン2に対し、電極21から送信するダウンリンク信号DSの送信タイミングと対応データとを伝えるものであってもよい。
【0140】
また、上記実施の形態では、アクティブ静電方式に対応する電子ペンを用いる場合を例に取って説明したが、本発明は、パネル面から電子ペンまでの距離が近い(例えば、10cm以内)場合に電子ペンの信号が検出できるような通信方式、例えば、電磁誘導方式、電磁共鳴方式(EMR(登録商標))などに広く適用可能である。
【符号の説明】
【0141】
1 位置検出システム
2,2a,2b アクティブペン
3 指
4 電子機器
21 電極
22 メモリ
23 プロセッサ
24 スイッチ
25 インジケータ
31 センサコントローラ
40 センサ
40X,40Y センサ電極
41 センサコントローラ
42 パネル
43 ホストプロセッサ
44 液晶表示部
51 ロジック部
52,53 送信部
54 受信部
54 送信ガード部
54 受信部
55 選択部
60 符号列保持部
61 拡散処理部
62 送信ガード部
65 増幅回路
66 検波回路
67 アナログデジタル変換器
68x,68y スイッチ
69x,69y 導体選択回路
AH アップリンク検出高さ
BP ブランク期間
C コマンド信号
ctrl_t1,ctrl_t2,ctrl_r 制御信号
D1 コマンド
D2 拡張フラグ
D3a,D3b 検出済フラグ
D4a,D4b 対応データ
DS ダウンリンク信号
F1,F2 フレーム
FDS 指検出用信号
HB 水平帰線期間
M/U マルチアップリンク信号
P ピング信号
PN 拡散符号
SR センシング範囲
st1~st4 軌跡
sTRx,sTRy,selX,selY 制御信号
T1~T16 時間スロット
US アップリンク信号
Vcom 画素駆動用電位
Vsync 同期信号