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特許7473709磁石埋込み型コアの製造装置及び製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】磁石埋込み型コアの製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/03 20060101AFI20240416BHJP
【FI】
H02K15/03 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023070012
(22)【出願日】2023-04-21
(62)【分割の表示】P 2019530518の分割
【原出願日】2018-11-05
(65)【公開番号】P2023099054
(43)【公開日】2023-07-11
【審査請求日】2023-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000170853
【氏名又は名称】黒田精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 正信
(72)【発明者】
【氏名】村山 友章
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-082807(JP,A)
【文献】特開2015-100157(JP,A)
【文献】国際公開第2017/179547(WO,A1)
【文献】特開2016-116374(JP,A)
【文献】特開2016-093006(JP,A)
【文献】特開2013-243863(JP,A)
【文献】特開2018-078785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/03
B29C 45/02
B29C 45/14
H02K 1/276
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向の両端面に開口した貫通孔をなす磁石挿入孔を備えたロータコアと、前記磁石挿入孔に配置された磁石片と、前記磁石挿入孔に充填された樹脂とを含む磁石埋込み型コアの製造装置であって、
溶融した樹脂を貯留する樹脂ポット室が開口した一つの面を含む基台と、
前記ロータコアを載置されて前記基台の前記一つの面に着脱可能に配置され、前記磁石挿入孔と前記樹脂ポット室とを連通させる連通通路を有するセパレートプレートと、
前記樹脂ポット室に移動可能に設けられ、前記樹脂ポット室の溶融樹脂を、前記連通通路を介して前記磁石挿入孔に圧送するプランジャとを具備し、
前記基台は、前記一つの面の側の外面に開口したポット保持孔を有する基台本体及び前記ポット保持孔に嵌合したポット部材を含み、
前記連通通路は前記樹脂ポット室側に位置するカル開口を含み、
前記ポット保持孔は前記カル開口よりも大きい横断面形状を有し、
前記樹脂ポット室は、前記ポット部材により画定されており、
前記ポット部材の前記一つの面の側の端面が前記基台本体の前記外面に比して前記セパレートプレートから離れる側にあり、
前記基台と前記セパレートプレートとの境界部に、前記ポット部材の前記端面と前記ポット保持孔の内周面と前記セパレートプレートの前記基台側の面とにより、前記樹脂ポット室の全周に亘って径方向外方に向けて延在し且つ径方向内方に向けて開口した環状の凹部が画定されている磁石埋込み型コアの製造装置。
【請求項2】
前記凹部の前記プランジャの移動方向の厚さが0.1mm~0.3mmである請求項1に記載の磁石埋込み型コアの製造装置。
【請求項3】
軸線方向の両端面に開口を有する貫通孔をなす磁石挿入孔を備えたロータコアと、前記磁石挿入孔に配置された磁石片と、前記磁石挿入孔に充填された樹脂とを含む磁石埋込み型コアの製造方法であって、
請求項1又は2に記載の製造装置が用いられ、
前記樹脂ポット室の溶融樹脂を前記プランジャによって前記磁石挿入孔に圧送する圧送工程を含み、
当該圧送工程において、前記凹部に進入して当該凹部において流動しない溶融樹脂の硬化の進行が、他の部分で流動している溶融樹脂の硬化の進行より速い磁石埋込み型コアの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁石埋込み型コアの製造装置及び製造方法に関し、更に詳細には、回転電機に用いられる磁石埋込み型コアの製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機の磁石埋込み型コアの製造に関して、ロータコアに軸線方向に沿って形成された複数の磁石挿入孔の各々に磁石片を挿入した後に、その磁石挿入孔に液状の樹脂を充填し、充填した樹脂を硬化させることにより、ロータコアに磁石片を固定する技術が開発されている。
【0003】
このような磁石埋込み型コアの製造装置として、溶融した樹脂を貯留する樹脂ポット室が開口した上面を含む基台と、ロータコアを載置されて基台の上面に着脱可能に配置され、磁石挿入孔と樹脂ポット室とを連通させる連通通路を有するセパレートプレートと、樹脂ポット室に移動可能に設けられ、樹脂ポット室の溶融樹脂を、連通通路を介して磁石挿入孔に圧送するプランジャとを具備したものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO2017/179547 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の磁石埋込み型コアの製造装置では、プランジャによって樹脂ポット室の溶融樹脂を磁石挿入孔に圧送する工程及びその後の保圧工程において、樹脂ポット室から溶融樹脂が基台の上面とセパレートプレートの下面との間に侵入し、基台の上面とセパレートプレートの下面との間で溶融樹脂が硬化することにより、薄いバリ(フラッシュバリ)が生じる虞がある。フラッシュバリは基台等に付着し、打痕・樹脂漏れの原因になる。また、フラッシュバリは、粉砕され易いため小片となって溶融樹脂に混入し、磁石挿入孔に侵入して充填不良の原因になる。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、フラッシュバリの発生を抑制し、フラッシュバリに起因する不具合の発生を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの実施形態による磁石埋込み型コアの製造装置は、軸線方向の両端面に開口した貫通孔をなす磁石挿入孔を備えたロータコアと、前記磁石挿入孔に配置された磁石片と、前記磁石挿入孔に充填された樹脂とを含む磁石埋込み型コアの製造装置であって、溶融した樹脂を貯留する樹脂ポット室が開口した一つの面を含む基台と、前記ロータコアを載置されて前記基台の前記一つの面に着脱可能に配置され、前記磁石挿入孔と前記樹脂ポット室とを連通させる連通通路を有するセパレートプレートと、前記樹脂ポット室に移動可能に設けられ、前記樹脂ポット室の溶融樹脂を前記連通通路を介して前記磁石挿入孔に圧送するプランジャとを具備し、前記基台と前記セパレートプレートとの境界部に、前記樹脂ポット室の外方に向けて延在し且つ前記樹脂ポット室に連通する環状の凹部を有する。
【0008】
この構成によれば、フラッシュバリの発生が抑制され、フラッシュバリに起因する不具合の発生が抑制される。
【0009】
上記磁石埋込み型コアの製造装置において、好ましくは、前記凹部の前記プランジャの移動方向の厚さが0.1~0.3mmである。
【0010】
この構成によれば、無駄な樹脂の消費量が増えることが抑制される。
【0011】
上記磁石埋込み型コアの製造装置において、好ましくは、前記基台は、前記一つの面の側の外面に開口したポット保持孔を有する基台本体及び前記ポット保持孔に嵌合したポット部材を含み、前記樹脂ポット室は前記ポット部材により画定されており、前記ポット部材の前記一つの面の側の端面が前記基台本体の前記外面に比して前記セパレートプレートから離れる側にあり、前記凹部は前記ポット部材の前記端面と前記ポット保持孔の内周面と前記セパレートプレートの前記基台側の面とにより画定されている。
【0012】
この構成によれば、ポット部材の軸長によって凹部が的確に構成される。
【0013】
上記磁石埋込み型コアの製造装置において、好ましくは、前記凹部は前記基台側の面に形成された切欠部と前記基台とにより構成されている。
【0014】
この構成によれば、セパレートプレートの加工によって凹部が的確に構成される。
【0015】
本発明の一つの実施形態による磁石埋込み型コアの製造方法は、軸線方向の両端面に開口を有する貫通孔をなす磁石挿入孔を備えたロータコアと、前記磁石挿入孔に配置された磁石片と、前記磁石挿入孔に充填された樹脂とを含む磁石埋込み型コアの製造方法であって、上述の実施形態の製造装置が用いられ、前記樹脂ポット室の溶融樹脂を前記プランジャによって前記磁石挿入孔に圧送する圧送工程を含み、当該圧送工程において、前記凹部に進入して凹部において流動しない溶融樹脂の硬化の進行が、他の部分で流動している溶融樹脂の硬化の進行より速い。
【0016】
この方法によれば、フラッシュバリの発生が抑制され、フラッシュバリに起因する不具合の発生が抑制される。
【発明の効果】
【0017】
本発明による磁石埋込み型コアの製造装置及び製造方法によれば、フラッシュバリの発生が抑制され、フラッシュバリに起因する不具合の発生が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一つの実施形態に係る製造方法及び製造装置によって製造される磁石埋込み型コアの一例を示す斜視図
図2】同磁石埋込み型コアの縦断面図
図3】一つの実施形態による磁石埋込み型コアの製造装置の初期状態を示す縦断面図
図4】本実施形態による磁石埋込み型コアの製造装置の要部の拡大縦断面図
図5】本実施形態による磁石埋込み型コアの製造装置の固形樹脂及び磁石片の投入状態を示す縦断面図
図6】本実施形態による磁石埋込み型コアの製造装置の磁石挿入孔閉塞状態を示す縦断面図
図7】本実施形態による磁石埋込み型コアの製造装置の樹脂圧送・保圧状態を示す縦断面図
図8】本実施形態による磁石埋込み型コアの製造装置によって製造された磁石埋込み型コアの取外状態を示す縦断面図
図9】他の実施形態による磁石埋込み型コアの製造装置の要部の拡大縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る好適な実施形態を、添付図面を参照して説明する。
【0020】
先ず、図1及び図2を参照して本発明の一つの実施形態に係る製造方法及び製造装置によって製造される磁石埋込み型コアの一例について説明する。
【0021】
磁石埋込み型コア1は、モータ等の回転電機の構成部品であり、ロータコア2を含む。ロータコア2は、複数枚の電磁鋼板が公知の結合方法(かしめ結合、レーザ溶接、接着等)により互いに結合された状態で積層された積層鉄心であり、平面視において略円環状をなし、中央に軸方向に貫通した軸孔3を有する。
【0022】
ロータコア2には複数の磁石挿入孔4が形成されている。各磁石挿入孔4は、略直方体状の空間をなし、ロータコア2を軸方向に貫通してロータコア2の両端面に開口している。図示例では、磁石挿入孔4がロータコア2の周方向の4箇所に等間隔に配置された例を示しているが、これに限らず、磁石挿入孔4の形状、数、及び配置等については種々の変更が可能である。
【0023】
各磁石挿入孔4には略直方体状の磁石片5が収容されている。磁石片5は、例えば、フェライト系の焼結磁石片や、ネオジム磁石片等の永久磁石(着磁前のものを含む)によって構成することができる。磁石片5の各部の寸法は、磁石挿入孔4の各部の寸法よりも小さく設定されている。これにより、磁石挿入孔4内において、ロータコア2と磁石片5との間に隙間ができる。この隙間には樹脂6が充填される。各磁石片5は隙間に充填された樹脂6によってロータコア2に対して固定される。樹脂6としては、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることができる。
【0024】
各磁石片5は、例えば、図1に示されているように、磁石挿入孔4において内側(ロータコア2の中心側)に偏倚して配置されており、ロータコア2の中心側に向いた外面5Aは当該外面5Aに対応する磁石挿入孔4の内面4Aに当接している。これにより、各磁石片5のロータコア2の径方向の配置位置が一様に決まり、磁石挿入孔4がロータコア2の周方向に等間隔に設けられることと相まって、磁石片5がロータコア2の回転方向のアンバランス要因になることがない。尚、各磁石片5は、図1に示されている位置と反対側(ロータコア2の外周側)に偏倚して配置されてもよい。
【0025】
次に、図3図7を参照して本実施形態に係る磁石埋込み型コア1の製造装置10について説明する。
【0026】
製造装置10は、上下方向に延在する複数のタイバー12と、各タイバー12の上部に固定された平板状の固定プラテン16と、固定プラテン16の下方において各タイバー12に上下方向に移動可能に設けられた平板状の可動プラテン14とを含むプレス構造を有する。可動プラテン14は不図示の型締装置によって上下方向に駆動される。型締装置は、公知のトグルリンク式のものや送りねじ式であってよい。
【0027】
固定プラテン16の下面には上部部材18が固定されている。上部部材18には上部部材18の下面から下方に突出した複数のロッド19によって磁石挿入孔4毎の複数の閉塞部材20が固定されていると共にばね22によって上部部材18からコア押さえ部材24が吊り下げられている。各閉塞部材20は、ロータコア2の各磁石挿入孔4に対応して設けられており、対応する磁石挿入孔4の上側の開口を閉塞すべく、平面視で、磁石挿入孔4の平面形状より大きい略矩形の平面形状をしている。コア押さえ部材24には閉塞部材20が上下方向に嵌合する貫通孔26が形成されている。尚、各閉塞部材20は各磁石挿入孔4よりも少し大きい略矩形の平面形状をなしていてよい。また、閉塞部材20は、隣接する複数の磁石挿入孔4を包含する領域となる平面形状をなしていて、装置の簡素化を図ったものであってもよい。
【0028】
可動プラテン14上には下部部材30が固定されている。下部部材30上には基台32が取り付けられている。基台32の上面(後述の基台本体56の上面56A)にはロータコア保持具34のセパレートプレート36が着脱・交換可能に配置されている。
【0029】
ロータコア保持具34は、ロータコア2を載置されるトレーをなす平板状のセパレートプレート36及びセパレートプレート36の上方に配置された平板状のアッパプレート38を含む。セパレートプレート36とアッパプレート38とは、セパレートプレート36に取り付けられた可動係止爪40とアッパプレート38に取り付けられた固定係止爪42との係合により互いに連結され、両者間にロータコア2を上下に挟んで着脱可能に保持する。ロータコア保持具34は、セパレートプレート36とアッパプレート38とでロータコア2を挟持した状態で、基台32上に搬入・搬出可能であり、可搬性を有する。
【0030】
アッパプレート38には、ロータコア2の各磁石挿入孔4に整合する位置に、各閉塞部材20が進入可能な挿入孔44が上下に貫通形成されている。挿入孔44はコア押さえ部材24に形成された貫通孔26と同等の大きさに形成されていてよい。挿入孔44と閉塞部材20とは、可動プラテン14の上昇移動によって貫通孔26の外周縁に形成された突起25(図3参照)と挿入孔44の外周縁に形成された凹部45(図3参照)とが係合することにより、正確に整合する。
【0031】
セパレートプレート36は、図4に示されているように、平板によるゲートプレート46とカルプレート48とを互いに重ね合わせたものである。ゲートプレート46とカルプレート48とはボルト(不図示)によって分解可能に一体化されていてよい。ゲートプレート46は、ロータコア2の下端面2Aに当接する上面46A及び各磁石挿入孔4の下端の開口4Bに個別に連通するゲート50を含む。カルプレート48は、ゲートプレート46の下側にあり、各ゲート50と後述する各樹脂ポット室64とに連通する円形横断面形状のカル開口52を含む。かくして、ゲート50及びカル開口52が磁石挿入孔4と樹脂ポット室64とを連通させる連通通路をなす。
【0032】
基台32は、平らな上面(外面)56A及び磁石挿入孔4毎に形成された上端開口の円形横断面形状のポット保持孔54を有する基台本体56及び各ポット保持孔54に嵌合した円筒形状のポット部材58を含む。ポット部材58は、下端にフランジ部60を有し、フランジ部60が基台本体56と下部部材30とに挟まれることにより、これらに固定されている。ポット部材58は、熱膨張による応力を受けないように、上端が自由端になっている。
【0033】
ポット部材58内にはプランジャ62が上下方向(ポット部材58の軸線方向)に移動可能(摺動可能)に設けられている。ポット部材58はプランジャ62の上側に樹脂ポット室64(図6参照)を画定している。樹脂ポット室64は、カル開口52と同心の円形横断面形状の空間であり、基台32の上面56Aに開口している。樹脂ポット室64の内径は、カル開口52の内径より小さく、且つポット部材58の肉厚分だけポット保持孔54の内径より小さい。
【0034】
ポット部材58の上端面58Aは、基台本体56の上面56Aより低い位置、つまり、上面56Aに比してセパレートプレート36から離れる側にある。これにより、ポット部材58の上端面58Aとポット保持孔54の内周面54Aとカルプレート48の下面48A(セパレートプレート36の基台32側の面)とにより環状の凹部66が画定されている。凹部66は、基台32とセパレートプレート36との境界部において、樹脂ポット室64の径方向外方に向けて延在し、径方向内方に向けて開口した溝状をなし、樹脂ポット室64を取り囲むようにして樹脂ポット室64に直接に連通している。凹部66のプランジャ62の移動方向の厚さ(幅)は、図では誇張して示されているが、後述する有効なシール効果を得るために、0.1mm~0.3mmであってよい。本実施形態では、ポット部材58の軸長によって凹部66の厚さが的確に構成される。
【0035】
下部部材30には、各プランジャ62に対応してシリンダボア70が形成されている。各シリンダボア70にはピストン72が上下方向(軸線方向)に移動可能に嵌合している。各ピストン72から上方に向けて延出したピストンロッド74は、下部部材30に形成された貫通孔76を貫通してポット部材58内に突出し、ねじ63(図4参照)によってプランジャ62と一体的に連結されている。
【0036】
下部部材30は各ピストン72の下側に加圧室としてシリンダ室78を画定している。各シリンダ室78は、プランジャ62毎、換言すると、樹脂ポット室64毎に個別に設けられ、下部部材30に形成されたマニホールド通路80及び外部配管82によって油圧発生装置84に接続され、油圧発生装置84から圧力油を供給される。各ピストン72は、油圧発生装置84から対応するシリンダ室78に圧力油を供給されることにより、上昇移動し、ピストンロッド74によって対応するプランジャ62を上方へ向けて押圧(加圧)する。
【0037】
下部部材30には、各樹脂ポット室64の溶融樹脂8を加熱する電気式ヒータ86が埋め込まれている。
【0038】
次に、図3図8を参照して製造装置10を用いた本実施形態による磁石埋込み型コア1の製造方法を各工程順に説明する。
【0039】
先ず、図3に示されているように、可動プラテン14が降下した状態下で、セパレートプレート36とアッパプレート38とによってロータコア2を挟持したロータコア保持具34を基台32上に載置する。この載置により各磁石挿入孔4が対応するゲート50に連通すべく整合する。尚、ロータコア2はロータコア保持具34と共に予加熱されていてよい。
【0040】
この状態で、樹脂・磁石片投入孔工程として、各磁石挿入孔4の上側の開口から磁石挿入孔4に固形樹脂7が投入され、その後、各磁石挿入孔4に磁石片5が投入される。固形樹脂7は、未硬化(熱硬化性樹脂の場合は加熱による化学反応前)の粉末或いは比較的小径の顆粒状の原料樹脂や充填材(フィラーや添加剤等)を不図示の打錠機によって円柱状等の任意の形状に成形したものや、未硬化の粉末の原料樹脂を比較的大きい粒径の顆粒に成形したものである。
【0041】
次に、可動プラテン14が上昇移動することにより、下部部材30が上昇移動し、図5に示されているように、アッパプレート38がコア押さえ部材24に当接する。これより更に下部部材30が上昇移動することにより、図6に示されているように、ばね22が撓み、各閉塞部材20が対応する挿入孔44に進入し、各閉塞部材20によって対応する磁石片5を磁石挿入孔4内に押し込むことが行われる。そして、ロータコア2の上面が閉塞部材20の下面に当接することにより、磁石挿入孔4の上側の開口が閉塞部材20によって閉塞される。このようにして閉塞工程が行われる。
【0042】
この時には、各磁石挿入孔4の固形樹脂7はロータコア2の予加熱及び電気式ヒータ86による加熱により、溶融した溶融樹脂8となり、その一部がゲート50及びカル開口52を通過してプランジャ62、ピストンロッド74及びピストン72を押し下げつつ対応する樹脂ポット室64及び凹部66に流入する。
【0043】
この後に、図7に示されているように、圧送工程として、油圧発生装置84から各シリンダ室78に油圧が供給されることにより、各ピストン72が上昇移動し、プランジャ62によって樹脂ポット室64の溶融樹脂8をゲート50及びカル開口52を通過させて対応する磁石挿入孔4に圧送することが行われる。
【0044】
この圧送工程では、凹部66は淀み領域となって、凹部66に流入(進入)した溶融樹脂8は流動し難いことから、凹部66の溶融樹脂8の硬化の進行が、ゲート50、カル開口52等の部分で磁石挿入孔4に向けて流動している溶融樹脂の硬化の進行より速い。また、凹部66の溶融樹脂8は、カル開口52等に比して容積が小さく、壁面との接触面積が大きいことによっても他の部分より速く硬化する。
【0045】
凹部66に硬化した樹脂があることにより、当該樹脂はシール部材として作用し、カルプレート48の下面48Aと基台本体56の上面56Aとの間に間隙があっても、この間隙に溶融樹脂8が侵入することが阻止される。この作用は、圧送工程後に行われる、溶融樹脂8の加圧を維持する保圧工程においても得られる。
【0046】
これにより、カルプレート48の下面48Aと基台本体56の上面56Aとの間に間隙した溶融樹脂8が硬化したことによるフラッシュバリの発生が抑制され、フラッシュバリが基台32等に付着したことに起因する打痕・樹脂漏れの発生が抑制される。フラッシュバリが粉砕されて小片となって溶融樹脂に混入すること及び磁石挿入孔4に侵入して充填不良になることが抑制される。
【0047】
所定の保圧時間経過後に、各シリンダ室78に対する油圧の供給が停止され、その後に、可動プラテン14が降下移動し、搬出工程として、ロータコア保持具34を基台32から取り外すことが行われる。搬出されたロータコア保持具34は、図8に示されているように、ゲート50及びカル開口52に硬化した樹脂が付着していると共に凹部66から抜け出した部分に、カル開口52で硬化した樹脂と繋がった厚みがある厚バリ9が付着している。
【0048】
厚バリ9は、フラッシュバリとは異なって粉砕され難く、且つカル開口52で硬化した樹脂と繋がっている状態を安定して維持する厚さを得えている。この厚さは、凹部66のプランジャ62の移動方向の厚さによって決まり、0.1mm~0.3mm程度であってよい。厚バリ9の厚さが0.1mm未満であると、上述の厚バリ9としての作用が得られにくくなり、厚バリ9の厚さが0.3mmを上回る厚さであると、過剰になり、無駄な樹脂の消費量が増える。
【0049】
溶融樹脂8の硬化が完了した後に、取外し工程として、可動係止爪40と固定係止爪42とによるセパレートプレート36とアッパプレート38との連結を解除し、ロータコア保持具34からロータコア2を取り外すことが行われる。この取り外しの工程で、ゲート50及びカル開口52に硬化した樹脂及び厚バリ9は、ゲート50において磁石挿入孔4の樹脂6と切り離され、その後に、ロータコア保持具34の再使用のためにセパレートプレート36から除去される。
【0050】
次に、磁石埋込み型コアの製造装置の他の実施形態を、図9を参照して説明する。尚、図9において、図4に対応する部分は、図4に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0051】
この実施形態では、カルプレート48の下面48A、つまり基台32側の面に、カル開口52の外縁を径方向外方に拡張する切欠部90が形成されており、切欠部90とポット部材58とによって凹部92が構成されている。凹部92は、前述の実施形態の凹部66と同等のものであり、樹脂ポット室64の径方向外方に向けて延在し、径方向内方に向けて開口した溝状をなし、樹脂ポット室64を取り囲むようにして樹脂ポット室64に直接に連通している。凹部92のプランジャ62の移動方向の厚さは、図では誇張して示されているが、前述の実施形態と同様に、有効なシール効果を得るために、0.1mm~0.3mmであってよい。
【0052】
この実施形態でも、凹部92に流入(進入)した溶融樹脂8は流動することがないから、凹部92の溶融樹脂8の硬化の進行が、ゲート50、カル開口52等の部分で磁石挿入孔4に向けて流動している溶融樹脂の硬化の進行より速い。また、凹部92の溶融樹脂8は、カル開口52等に比して容積が小さく、壁面との接触面積が大きいことによっても他の部分より速く硬化する。
【0053】
これにより、カルプレート48の下面48Aと基台本体56の上面56Aとの間に間隙した溶融樹脂8が硬化したことによるフラッシュバリの発生が抑制され、フラッシュバリが基台32等に付着したことに起因する打痕・樹脂漏れの発生が抑制される。フラッシュバリが粉砕されて小片となって溶融樹脂に混入すること及び磁石挿入孔4に侵入して充填不良になることが抑制される。
【0054】
以上、本発明を、その好適な実施形態について説明したが、当業者であれば容易に理解できるように、本発明はこのような実施形態により限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0055】
例えば、ポット部材58は必須でなく、凹部66は基台32(基台本体56)の樹脂ポット室64の外周縁を径方向外方に拡張する切欠部によって構成されてもよい。凹部66、92は基台32の上面及びセパレートプレート36の下面の双方に形成されてもよい。
【0056】
請求の範囲では、基台32が下側配置の図示の実施形態の場合について記載しているが、これは説明の便宜上のことであり、本発明は基台32が上側配置になる上下反転の場合を含む。
【0057】
本発明による磁石埋込み型コアの製造装置及び製造方法は、特開2017-7353号公報に示されているような、樹脂ポット室64に固形樹脂7が装填されるトランスファモールド方式によるものにも適用可能である。
【0058】
また、上記実施形態に示した構成要素は必ずしも全てが必須なものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 :磁石埋込み型コア
2 :ロータコア
2A :下端面
3 :軸孔
4 :磁石挿入孔
4A :内面
4B :開口
5 :磁石片
5A :外面
6 :樹脂
7 :固形樹脂
8 :溶融樹脂
9 :厚バリ
10 :製造装置
12 :タイバー
14 :可動プラテン
16 :固定プラテン
18 :上部部材
19 :ロッド
20 :閉塞部材
22 :ばね
24 :コア押さえ部材
25 :突起
26 :貫通孔
30 :下部部材
32 :基台
34 :ロータコア保持具
36 :セパレートプレート
38 :アッパプレート
40 :可動係止爪
42 :固定係止爪
44 :挿入孔
45 :凹部
46 :ゲートプレート
46A :上面
48 :カルプレート
48A :下面
50 :ゲート
52 :カル開口
54 :ポット保持孔
54A :内周面
56 :基台本体
56A :上面(外面)
58 :ポット部材
58A :上端面
60 :フランジ部
62 :プランジャ
63 :ねじ
64 :樹脂ポット室
66 :凹部
70 :シリンダボア
72 :ピストン
74 :ピストンロッド
76 :貫通孔
78 :シリンダ室
80 :マニホールド通路
82 :外部配管
84 :油圧発生装置
86 :電気式ヒータ
90 :切欠部
92 :凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9