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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】充填方法および充填装置
(51)【国際特許分類】
   B67C 3/06 20060101AFI20240416BHJP
【FI】
B67C3/06
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023087478
(22)【出願日】2023-05-29
(62)【分割の表示】P 2019194191の分割
【原出願日】2019-10-25
(65)【公開番号】P2023101635
(43)【公開日】2023-07-21
【審査請求日】2023-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工機械システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】小林 宜弘
(72)【発明者】
【氏名】上田 敦士
(72)【発明者】
【氏名】林 柾行
(72)【発明者】
【氏名】安部 貞宏
(72)【発明者】
【氏名】古川 勝一
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-506200(JP,A)
【文献】特開昭58-125496(JP,A)
【文献】特開2006-044735(JP,A)
【文献】特開2014-221644(JP,A)
【文献】特開平02-191193(JP,A)
【文献】米国特許第05377726(US,A)
【文献】特開昭63-096096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B67C 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に製品液を充填する充填方法であって、
前記製品液を貯留する貯留タンクから、前記製品液を加圧された雰囲気下で貯留する計量タンクへ前記製品液を移送するステップと、
前記容器への充填に先立ち、前記容器の内部に正圧を付与するステップと、
前記計量タンクにおける圧力である計量タンク圧力と前記容器の内部の圧力との圧力差により前記計量タンクから前記容器へと前記製品液を供給しつつ、前記容器の内部から外部へと排気させながら、前記計量タンクにおける前記製品液の液位に基づいて、前記計量タンクから前記容器に前記製品液を規定の充填量まで供給する充填ステップと、を含む、
充填方法。
【請求項2】
前記容器への充填に先立ち前記容器の内部に正圧を付与するステップでは、前記容器の内部に前記計量タンク圧力に相当する第1圧力を付与し、
前記充填ステップでは、前記第1圧力よりも大きい第2圧力を前記計量タンクの内部に付与する、
請求項1に記載の充填方法。
【請求項3】
前記貯留タンクから前記計量タンクへと前記製品液を移送するステップでは、
前記貯留タンク内の前記製品液と前記計量タンク内の前記製品液との水頭差に従って、前記製品液が移送速度を次第に低下させつつ移送される、
請求項1または2に記載の充填方法。
【請求項4】
容器に製品液を充填する充填装置であって、
前記製品液を貯留する貯留タンクと、
前記貯留タンクから移送された前記製品液を加圧された雰囲気下で貯留し、液位に基づいて計量される前記製品液を前記容器に供給する計量タンクと、
前記計量タンクにおける前記製品液の液位を検知する液位検知部と、を備え、
前記容器への充填時には、
前記計量タンクにおける圧力である計量タンク圧力と、大気圧を超える圧力であって前記計量タンク圧力に対して低い前記容器の内部の圧力との圧力差により、前記計量タンクから前記容器へ、前記容器に定められた規定充填量に満たない所定量の前記製品液を供給した後、前記容器の内部から外部へと排気させつつ、前記計量タンクにおける前記製品液の液位に基づいて、前記計量タンクから前記容器に前記製品液を規定の充填量まで供給する、充填装置。
【請求項5】
容器に製品液を充填する充填装置であって、
前記製品液を貯留する貯留タンクと、
前記貯留タンクから移送された前記製品液を加圧された雰囲気下で貯留し、液位に基づいて計量される前記製品液を前記容器に供給する計量タンクと、
前記計量タンクにおける前記製品液の液位を検知する液位検知部と、を備え、
前記容器への充填に先立ち、前記容器の内部に正圧を付与し、
前記容器への充填時には、
前記計量タンクにおける圧力である計量タンク圧力と前記容器の内部の圧力との圧力差により前記計量タンクから前記容器へと前記製品液を供給しつつ、前記容器の内部から外部へと排気させながら、前記計量タンクにおける前記製品液の液位に基づいて、前記計量タンクから前記容器に前記製品液を規定の充填量まで供給する、充填装置。
【請求項6】
前記計量タンクの内部に第1圧力、および前記第1圧力よりも大きい第2圧力を選択的に付与可能な圧力付与手段を備える、
請求項5に記載の充填装置。
【請求項7】
前記容器の内部から外部へと連通した排気経路に設けられ、前記容器の内部の圧力が所定の設定圧力に対して低いときに閉じて高いときに開く排気式圧力設定弁を備え、
前記容器への充填時には、
前記排気式圧力設定弁を通じて前記容器の内部から外部へと排気させる、
請求項4から6のいずれか一項に記載の充填装置。
【請求項8】
前記貯留タンクから前記計量タンクへと前記製品液を移送する移送経路に設けられる第1液弁と、
前記計量タンクから前記容器へと前記製品液を供給する供給経路に設けられる第2液弁と、
前記容器の内部から外部へと連通した排気経路に設けられる排気式圧力設定弁と、を備える、
請求項4から7のいずれか一項に記載の充填装置。
【請求項9】
前記貯留タンクの内部の気相領域および前記計量タンクの内部の気相領域を連通させる連通経路を備える、
請求項4から8のいずれか一項に記載の充填装置。
【請求項10】
前記貯留タンクおよび前記計量タンクは、同一平面上または略同一面上に配置される、
請求項4から9のいずれか一項に記載の充填装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、容器に液体を充填する方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば炭酸ガス入りの飲料を容器に充填する方法として、特許文献1に記載されたカウンタープレッシャー方式が一般的であった。
カウンタープレッシャー方式による充填処理は、典型的には、製品液を貯留するタンクの内圧に対応した製品液の吐出圧力と同等のカウンター圧を容器の内部に付与する過程と、カウンター圧が付与された容器の内部に製品液を水頭差により充填する過程と、容器内部のガスを低速で排出させて容器内部の圧力を次第に減少させるスニフト過程とからなる。
こうしたカウンタープレッシャー方式の充填処理に要する時間が長い。近年、特許文献2および特許文献3に記載されているように、予め容器の内部を減圧により負圧にしておき、貯留タンクにおいて加圧されている炭酸ガス入りの製品液を圧力差に基づいて容器内に瞬時に充填する方法が提案されている。充填時には、製品液を容器に噴出させながら、容器の内部の圧力変化を監視することで充填量を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実公昭59-23758号公報
【文献】特開2015-199545号公報
【文献】特開2015-199546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2,3に記載された充填方法は、充填に先立ち、容器の内部を大気圧に対して負圧にする必要がある。こうした方法は、ガラスびんのように剛性が相対的に高い容器に充填の対象が限られる。例えば、剛性が相対的に低い樹脂製容器は、減圧により負圧にした際に潰れるおそれがある。
【0005】
また、容器に充填された液からの炭酸ガスの放出および再溶解の現象に起因して充填量が変動し得るため、特許文献2,3に記載されているように、容器内の圧力に基づいて充填量を制御したとしても、規定量の製品液を容器に充填することが難しい。
【0006】
以上より、本開示は、樹脂製の容器に充填する場合であっても、容器の形状を維持したまま、飲料、その他の製品液の充填に要する時間をカウンタープレッシャー方式に対して短縮しつつ、規定の量の製品液を容器に充填することが可能な充填方法および充填装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の充填方法は、容器に製品液を充填する充填方法であって、製品液を貯留する貯留タンクから、製品液を加圧された雰囲気下で貯留する計量タンクへと、所定量の製品液を移送するステップと、計量タンクにおける圧力である計量タンク圧力と、大気圧以上であって計量タンク圧力に対して低い容器の内部の圧力との圧力差により、計量タンクから容器へ、容器に定められた規定充填量に満たない所定量(例えば、規定充填量の約9割の
量)の製品液を供給する第1充填ステップと、容器の内部から外部へと排気させつつ、計量タンクにおける製品液の液位に基づいて、計量タンクから容器に製品液を規定の充填量まで供給する第2充填ステップと、を含む。
【0008】
本開示の充填方法は、容器に製品液を充填する充填方法であって、製品液を貯留する貯留タンクから、製品液を加圧された雰囲気下で貯留する計量タンクへ製品液を移送するステップと、容器への充填に先立ち、容器の内部に正圧を付与するステップと、計量タンクにおける圧力である計量タンク圧力と容器の内部の圧力との圧力差により計量タンクから容器へと製品液を供給しつつ、容器の内部から外部へと排気させながら、計量タンクにおける製品液の液位に基づいて、計量タンクから容器に製品液を規定の充填量まで供給する充填ステップと、を含む。
【0009】
本開示の充填装置は、容器に製品液を充填する充填装置であって、製品液を貯留する貯留タンクと、貯留タンクから移送された製品液を加圧された雰囲気下で貯留し、液位に基づいて計量される製品液を容器に供給する計量タンクと、計量タンクにおける製品液の液位を検知する液位検知部と、を備え、容器への充填時には、計量タンクにおける圧力である計量タンク圧力と、大気圧以上であって計量タンク圧力に対して低い容器の内部の圧力との圧力差により、計量タンクから容器へ、容器に定められた規定充填量に満たない所定量の製品液を供給した後、容器の内部から外部へと排気させつつ、計量タンクにおける製品液の液位に基づいて、計量タンクから容器に製品液を規定の充填量まで供給する。
【0010】
本開示の充填装置は、容器に製品液を充填する充填装置であって、製品液を貯留する貯留タンクと、貯留タンクから移送された製品液を加圧された雰囲気下で貯留し、液位に基づいて計量される製品液を容器に供給する計量タンクと、計量タンクにおける製品液の液位を検知する液位検知部と、を備え、容器への充填に先立ち、容器の内部に正圧を付与し、容器への充填時には、計量タンクにおける圧力である計量タンク圧力と容器の内部の圧力との圧力差により計量タンクから容器へと製品液を供給しつつ、容器の内部から外部へと排気させながら、計量タンクにおける製品液の液位に基づいて、計量タンクから容器に製品液を規定の充填量まで供給する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、加圧された雰囲気下で製品液が計量される計量タンクを用いて、計量タンクの内圧と容器の内圧との圧力差を製品液の充填に利用し、充填工程の少なくとも一部において容器から排気させつつ製品液の充填を計量タンクの液位に基づく制御の下に行うことにより、樹脂製の容器に充填する場合であっても、容器の形状を維持したまま、製品液の充填処理に要する時間をカウンタープレッシャー方式に対して短縮でき、しかも、計量タンク4の液位に基づいて充填量が決まるため、規定量の製品液を容器に充填することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の第1実施形態に係る充填装置の構成を示す模式図である。
図2図1に示す充填装置を用いて行われる貯留タンクから計量タンクへの送液ステップ、および計量タンクの液位を検知する液位検知ステップを説明するための図である。
図3図2に示すステップに続いて行われる第1充填ステップを説明するための図である。
図4図3に示すステップに続いて行われる第2充填ステップを説明するための図である。
図5】第1実施形態の変形例の構成を示す図である。
図6】本開示の第2実施形態に係る充填装置の構成を示す模式図である。
図7図6に示す充填装置を用いて行われる貯留タンクから計量タンクへの送液ステップ、計量タンクの液位を検知する液位検知ステップ、および容器への正圧付与のステップを説明するための図である。
図8図7に示すステップに続いて行われる充填ステップを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら、本開示の実施形態に係る充填方法および充填装置を説明する。
〔第1実施形態〕
図1に示す充填装置1は、製品液、例えば、炭酸ガス入りの炭酸飲料を容器2に充填する。充填装置1は、製品液が容器2に充填されてなる飲料製品を製造する図示しない製造ラインの一部を構成している。
【0014】
容器2は、ポリエチレンテレフタレート(PET:Polyethyleneterephthalate)等の樹脂材料から形成されたボトルである。容器2の口部2Aがシール機構21により封止された状態で、充填ノズル22から吐出される製品液が容器2の内部に規定の量まで充填される。
容器2は、金属材料から形成されたボトル状の缶であってもよい。
【0015】
〔充填装置の構成〕
充填装置1は、製品液を貯留する貯留タンク3と、貯留タンク3から移送された製品液を貯留し、液位に基づいて計量される製品液を容器2に供給する計量タンク4と、計量タンク4における製品液の液位を検知する液位検知部としての液位計5と、制御部15とを備えている。
充填装置1は、制御部15による制御下において、製造ラインの他のシステムと連係をとりつつ、図示しない搬送装置により供給される容器2のそれぞれに製品液を充填する。製品液が充填された容器2には、図示しない機構により蓋が装着される。
【0016】
貯留する製品液を炭酸ガス(二酸化炭素)が溶解した状態に保つため、貯留タンク3の内部および計量タンク4の内部はいずれも、炭酸ガスの導入により加圧されている。これら貯留タンク3および計量タンク4は、加圧された雰囲気下で製品液を貯留する。
ヘンリーの法則より、温度が一定であるとき、気体の分圧が高いほど液体への気体の溶解度が高い。したがって、炭酸ガスの圧力が高いほど、製品液に炭酸ガスを効率よく溶解させることができる。「溶解度」は、溶質が一定量の溶媒に溶解する限界量をいう。
貯留タンク3および計量タンク4のそれぞれの内部では、炭酸ガスと、水に溶存していた酸素や窒素等の他のガスがそれぞれ、ヘンリーの法則により、分圧に従う量だけ液に溶解する。
炭酸ガスの溶解度を高め、炭酸ガスが溶解した状態に製品液を保つため、加圧に加え、図示しない冷却機構により、常温よりも低い温度にまで製品液が冷却されることが好ましい。
【0017】
図1に示す貯留タンク3は、製品液供給部6と、炭酸ガス供給部7とにそれぞれ接続されている。製品液供給部6は、例えば、製品液の供給源61および弁62を含んで構成されている。炭酸ガス供給部7は、例えば、高圧下で液化した二酸化炭素を貯留する二酸化炭素供給源71と、弁72とを含んで構成されている。
【0018】
貯留タンク3の内部には、炭酸ガス供給部7により、二酸化炭素供給源71から図示しない圧力調整器による減圧を経てガス化した二酸化炭素、つまり炭酸ガスが供給される。そのため、貯留タンク3の製品液よりも上方の空間である気相領域3Gには炭酸ガスが貯えられている。気相領域3Gにおける炭酸ガスの圧力は、炭酸ガス供給部7により、充填する製品液の特性に対応した大気圧を超える一定の圧力(正圧)になるように、弁72とガス排出弁73の開閉動作で制御されている。
また、製品液は、容器2に充填される分が補充され、貯留タンク3における液面が定位置になるように制御される。
【0019】
本実施形態では、貯留タンク3の気相領域3Gと、計量タンク4の気相領域4Gとが、連通経路8を通じて連通している。計量タンク4の内部は、炭酸ガス供給部7により炭酸ガスが貯留タンク3を介して供給されることで、大気圧に対して加圧されている。
内部の雰囲気が加圧されている計量タンク4では、液位に基づいて製品液が正確に計量される。
【0020】
液位計5(レベルセンサ)は、計量タンク4に貯留されている製品液の液位に応じた信号を出力する。制御部15は、液位計5から送られる信号により、充填に先立ち計量タンク4の液位を得るとともに、液位を連続的に検知しながら、容器2に製品液を規定の充填量まで充填することが可能である。
液位計5には、フロート式、超音波式、静電容量式、圧力式(水圧式)等の公知の液位計を採用することができる。
【0021】
計量タンク4には、容器2に定められた規定充填量に適合する容積が与えられている。計量タンク4の容積は、規定充填量に対して大きい。
液位計5により検知される計量タンク4の液位と、計量タンク4の内部の横断面積とから、容器2に充填される製品液の充填量(体積)を算出することができる。そのため、液位に基づいて、充填量の制御を行うことができる。規定充填量を計量タンク4の液位(入り味線)に換算しておき、その液位を充填量の制御に用いることもできる。
計量タンク4は、液位検知の精度を向上させるため、直径に対して高さが大きいシリンダ状に形成されていることが好ましい。
【0022】
充填装置1は、1つの貯留タンク3に対して、複数の計量タンク4を備えることができる。1つの容器2の充填には1つの計量タンク4が用いられることが好ましい。
【0023】
充填装置1は、計量タンク4における圧力である計量タンク圧力P1と、大気圧以上であって計量タンク圧力P1に対して低い容器2の内部の圧力P2との圧力差により、計量タンク4から容器2に製品液を供給した後(第1充填ステップS31)、容器2の内部のヘッドスペースから外部へと排気させつつ、計量タンク4における液位に基づいて、計量タンク4から容器2に製品液を規定充填量まで供給する(第2充填ステップS32)。
【0024】
それを実現するため、充填装置1は、貯留タンク3から計量タンク4へと製品液を移送する移送経路9に設けられる第1液弁11と、計量タンク4から容器2へと製品液を供給する供給経路10に設けられる第2液弁12と、容器2の内部から外部へと連通した排気経路13に設けられる排気部14と、計量タンク4における製品液の液位に基づいて、容器2に充填される製品液を計量する制御部15とを備えていることが好ましい。
供給経路10は、充填ノズル22に接続されている。第2液弁12は、典型的には充填バルブと称される。
排気部14は、絞り141と、排気弁142とを含んで構成されている。
【0025】
本実施形態では、連通経路8を通じて、貯留タンク3の内圧と計量タンク4の内圧とをバランスさせることができる。連通経路8に設けられている連通弁81は、充填装置1による処理中は、常時開いている。本実施形態の連通経路8には、必ずしも連通弁81が設けられていなくてもよい。
充填装置1は、制御部15による制御の下、少なくとも、第1液弁11、第2液弁12、および排気弁142を適時に開閉させることで、容器2に製品液を充填する。
【0026】
〔充填工程の説明〕
以下、図2図4を参照しながら、充填装置1により行われる充填工程について具体的に説明する。図2は送液ステップS1および液位検知ステップS2を示し、図3は第1充填ステップS31を示し、図4は第2充填ステップS32を示している。これらのステップS1,S2,S31,S32が繰り返される。
図2図4等において、開いている弁を白色で示し、閉じている弁を黒色で示している。図7および図8も同様である。
【0027】
(送液ステップ)
図示しない搬送装置により充填装置1に供給された容器2に製品液を充填するにあたり、図2に示すように、貯留タンク3に貯留されている製品液を貯留タンク3から計量タンク4へ移送する(送液ステップS1)。製品液の移送は、貯留タンク3内の製品液と計量タンク4内の製品液との水頭差(ヘッド差)に基づいて行われる。
送液ステップS1を行うため、制御部15は、所定量の製品液が貯留タンク3から計量タンク4に移送されるまでの間に亘り、第1液弁11を開く。このとき、第2液弁12は閉じられている。連通経路8の連通弁81は開かれている。
【0028】
制御部15は、第1液弁11を開いた後、例えば、液位計5により計量タンク4における予め設定された液位の上限(図2のLV0)が検知されたならば、第1液弁11を閉じる。
または、制御部15は、第1液弁11を開いた後、タイマーにより所定時間が計時されたならば、第1液弁11を閉じて、計量タンク4の液位LV0´を液位計5により検知する。
いずれの方法により貯留タンク3から計量タンク4へと製品液を移送するとしても、容器2への充填に先立ち、計量タンク4の液位が液位計5により検知されることとなる(液位検知ステップS2)。
【0029】
貯留タンク3から所定量の製品液が移送されたことで、計量タンク4には、容器2に定められた規定充填量に対して多い量の製品液が貯留されている。
以降、計量タンク4における液位に基づいて、制御部15により、計量タンク4の液位に基づく充填量の制御が行われる。
【0030】
(充填ステップ)
計量タンク4に必要量の製品液が貯留されたならば、図3および図4に示す充填ステップS3を実施することにより、容器2への充填を実施する。充填ステップS3は、第1充填ステップS31(図3)および第2充填ステップS32(図4)からなる。
【0031】
第1充填ステップ:
まず、図3に示す第1充填ステップS31では、制御部15により第2液弁12を開いて、計量タンク4の内部の圧力と、容器2の内部の圧力との差ΔPにより、計量タンク4から空の状態の容器2に、規定充填量に満たない所定量の製品液を供給する。このとき第1液弁11および排気弁142は閉じておく。また、容器2の口部2Aはシール機構21により封止されている。
【0032】
第1充填ステップS31に先立ち、計量タンク4の内部の圧力を計量タンク圧力P1とする。同じく第1充填ステップS31に先立ち、容器2の内部の圧力を容器圧力P2とする。容器圧力P2は、大気圧以上であって、計量タンク圧力P1に対して低い。例えば、計量タンク圧力P1は5気圧であり、容器圧力P2は1気圧(大気圧)である。貯留タンク3および計量タンク4の圧力と容器2内の圧力との差に基づいて充填を適切に行えるように、容器2の内圧を大気圧以上の適宜な値に定めることができる。供給経路10を通じて製品液を送り、充填ノズル22から製品液を吐出させるために必要な押出し力が、圧力差ΔP(P1-P2)によって十分に確保されるため、圧力差ΔPに従い、製品液は計量タンク4から容器2へと、水頭のみによって計量タンク4から容器2に製品液が充填される場合と比べて高速で、瞬時に充填される。
【0033】
第1充填ステップS31において、製品液が流入する容器2の内圧は上昇し、それに伴い、計量タンク4の内圧(P1)と容器2の内圧との圧力差が減少する。当該圧力差の減少に伴い、計量タンク4から容器2に充填される製品液の流量は低下し、容器2の内圧と計量タンク4の内圧とが平衡になり差が無くなると、自律的に充填が停止する。
【0034】
圧力差ΔPによる容器2への製品液の充填を終えた時点では、容器2に充填された製品液からの炭酸ガスの放出および再溶解に起因して、たとえ容器2の内部の圧力を検知していたとしても、容器2に充填されている製品液の量が必ずしも安定しない。
【0035】
そこで、高速で充填する第1充填ステップS31に続いて第2充填ステップS32を行うことにより、計量タンク4における液位を検知しながら、容器2に規定充填量まで製品液を補充する。第1充填ステップS31により容器2に充填された液量に対応して第2充填ステップS32により計量タンク4の液面検出信号に基づき必要な補填量が充填されることで、容器2内に規定の充填量を正確に充填することができる。
【0036】
第2充填ステップ:
第1充填ステップS31から引き続き、第1液弁11が閉じ、第2液弁12が開いたまま、容器2の口部2Aがシール機構21により封止された状態で、第2充填ステップS32が行われる。
図4に示す第2充填ステップS32では、制御部15により、例えば、計量タンク4における液位の低下速度がほぼ0になった時点で、排気弁142を開く。そうすると、容器2からの排気を伴い、計量タンク4内の製品液が容器2に充填される。
【0037】
第2充填ステップS32では、容器2内ガスの排出速度に対応して計量タンク4からの排出流量と同流量の製品液が容器2に充填され、容器2内圧力も一定に保たれながら第2充填ステップS32が行われることとなる。すなわち、第2充填ステップS32では、容器2に製品液が一定流量、一定速度で充填される。
【0038】
第2充填ステップS32では、容器2の内部の圧力により製品液からの炭酸ガスの放出および再溶解を抑えながら、容器2からの排気の一定速度に相当する速度で、計量タンク4の充填前後における液位の差分に相当する規定充填量の製品液を容器2に充填することができる。
【0039】
第2充填ステップS32において制御部15は、充填に先立ち検知された計量タンク4の液位(一例として図4のLV0)と、液位計5により充填中に検知される計量タンク4の液位との差分ΔLV、および計量タンク4の断面積を用いて算出される液量(液の体積)が、規定充填量に到達したならば、第2液弁12と排気弁142を閉じる。このとき、算出された液量が規定充填量に到達したことに代えて、ΔLVが、規定充填量に相当する液位(入り味線)に到達したときに第2液弁12と排気弁142を閉じるようにしてもよい。
【0040】
あるいは、充填ステップS3に先立ち検知された計量タンク4の液位が、液位の一定の上限値を示すものである場合は、液位の上限および規定充填量から、液位の下限が決まる。その場合は、第2充填ステップS32において制御部15は、排気弁142を開いた後、液位計5により、液位下限が検知されたならば、第2液弁12と排気弁142を閉じるとよい。
この方法で充填量を制御する場合は、液位を連続的に検知する液位計5に代えて、上限検知用のレベルスイッチおよび下限検知用のレベルスイッチを用いることができる。
【0041】
充填に先立ち検知された液位がLV0であり、充填ステップS3の終了時における液位がLV2であり、計量タンク4の断面積がA、規定充填量がQであるとすれば、計量タンク4の液位を用いた上記の制御のいずれも、A(LV0-LV2)=Qに基づくことは言うまでもない。
【0042】
以上により充填ステップS3を終えたならば、容器2の内圧を保持した状態で容器2に図示しない蓋を装着し、次の充填サイクルのため、貯留タンク3から計量タンク4に製品液を移送する。つまり、図2に示す送液ステップS1に戻る。送液ステップS1は、充填済の容器2に蓋を装着する処理と並行して行うことが好ましい。
【0043】
〔本実施形態による効果〕
以上で説明したステップS1~S3に亘り、容器2の内部の圧力が大気圧以上に維持される。そのため、容器2が樹脂製であって、ガラス製や金属製の容器と比べて剛性が低く、撓み易いとしても、容器2の内部に負圧を付与して容器2の内部と上流の貯留部との圧力差により充填を行う場合とは異なり、容器2が周囲の大気圧によって潰れることなく形状を保つ。
第1充填ステップS31の開始時に容器2の内部の圧力P2が大気圧であっても、上述したように、計量タンク4から容器2まで製品液を送り、充填ノズル22から吐出させるために必要な押出し力に足りる圧力差ΔPを計量タンク圧力P1により得ることができる。
つまり、第1充填ステップS31によれば、樹脂製の容器2に充填する場合であっても容器2の潰れを防ぎつつ、容器2の内圧と計量タンク4の内圧との圧力差ΔPに基づいて、従来のカウンタープレッシャー方式に対して高速な充填を実現することができる。
【0044】
本実施形態によれば、上述したように、計量タンク4から容器2へと第1充填ステップS31および第2充填ステップS32の二段階の充填ステップS3を実施する。
第2充填ステップS32において容器2に製品液が充填される速度が、第1充填ステップS31における充填速度と比べて低速であるとしても、第2充填ステップS32により容器2に充填される製品液の量は、第1充填ステップS31により充填される製品液の量に対して少量である。第2充填ステップS32に要する時間が第1充填ステップS31に要する時間に対して仮に長いとしても、両者は大きくは変わらない。
また、貯留タンク3から計量タンク4へと製品液を移送する送液ステップS1は、前サイクルにおいて製品液が充填された容器2に蓋を装着する処理と並行して行うことができる。
したがって、ステップS1~S3によれば、従来のカウンタープレッシャー方式に対して、規定充填量の製品液の充填に要する時間の短縮が可能であるとともに、送液に要する時間および蓋装着に要する時間を含めた、充填に係る一連の処理に要するサイクルタイムを短縮することが可能である。
【0045】
以上で説明したように、本実施形態の充填装置1およびステップS1~S3による充填方法によれば、樹脂製の容器に充填する場合であっても、容器の形状を維持したまま、製品液の充填処理に要する時間をカウンタープレッシャー方式に対して短縮でき、しかも、計量タンク4の液位に基づいて充填量が決まるため、規定量の製品液を容器に充填することができる。
【0046】
〔変形例〕
図5に示す例では、貯留タンク3と計量タンク4とが、二点鎖線で示す同一平面100上に配置されている。貯留タンク3内の気相領域3Gと計量タンク内の気相領域4Gとは、連通経路8を通じて連通している。
図5に示す構成によれば、貯留タンク3から計量タンク4へ製品液を移送する送液ステップS1において、貯留タンク3と計量タンク4とのそれぞれの内圧がバランスされている条件下で、貯留タンク3内の製品液と計量タンク4内の製品液との水頭差Δh(ヘッド差)のみに従って移送される。
【0047】
このとき、移送の進行による水頭差Δhの減少に伴い、水頭差Δhに相当するエネルギーが減少するため、貯留タンク3から計量タンク4へと移送される製品液の速度は次第に低下する。このとき、貯留タンク3から計量タンク4に移動する製品液に対して、水頭差Δhに相当するエネルギーのみが作用し、その他のエネルギーが製品液に作用することを避けることができる。そのため、送液の速度が安定的に低下し、送液の停止直後に、計量タンク4の液位は、静置された状態の如く、安定する。
そうすると、液位計5による液位の検出値も安定するので、液位に基づく制御による充填量の精度が第1実施形態(図1図4)と比べて向上する。また、送液ステップS1と第1充填ステップS31との間で製品液を静置する必要がないため、充填処理の短縮に寄与できる。
【0048】
貯留タンク3と計量タンク4とは、厳密に同一平面100上に配置されている必要はない。製品液に作用するエネルギーとして、水頭差Δhに相当するエネルギーが支配的であれば、送液の速度が安定的に低下し、送液停止時における計量タンク4の液面の揺動を避けて液位を安定させることができる。そのため、貯留タンク3と計量タンク4とは略同一面に配置されていれば足りる。
【0049】
〔第2実施形態〕
次に、図6図8を参照して第2実施形態について説明する。
以下では、第1実施形態と同様の構成要素には同じ符合を付している。
【0050】
図6に示す充填装置1-1は、製品液、例えば、炭酸ガス入りの炭酸飲料を容器2に充填する。充填装置1-1は、製品液が容器2に充填されてなる飲料製品を製造する図示しない製造ラインの一部を構成している。
【0051】
〔充填装置の構成〕
充填装置1-1は、貯留タンク3と、計量タンク4と、液位計5と、正圧付与部17と、制御部20とを備えている。
充填装置1-1は、制御部20による制御下において、製造ラインの他のシステムと連係をとりつつ、図示しない搬送装置により供給される容器2のそれぞれに製品液を充填する。製品液が充填された容器2には、図示しない機構により蓋が装着される。
【0052】
充填装置1-1の貯留タンク3、計量タンク4、および液位計5は、第1実施形態の充填装置1(図1)の貯留タンク3、計量タンク4、および液位計5と同様である。 第1実施形態と同様に、貯留タンク3の内部には、炭酸ガス供給部7により、二酸化炭素供給源71から図示しない圧力調整器による減圧を経てガス化した二酸化炭素、つまり炭酸ガスが供給される。炭酸ガス供給部7は、貯留タンク3の内部に送り込んだ炭酸ガスにより、大気圧よりも高い所定の圧力(正圧)に貯留タンク3を加圧する。
【0053】
貯留タンク3と計量タンク4とは、上述の変形例(図5)と同様に、同一平面100上または略同一平面上に配置されていることが好ましい。
【0054】
貯留タンク3の気相領域3Gと、計量タンク4の気相領域4Gとは、連通経路8を通じて連通しており、炭酸ガス供給部7により同じ圧力P1に加圧される。
内部の雰囲気が加圧されている計量タンク4では、液位に基づいて製品液が正確に計量される。
【0055】
充填装置1-1は、充填時に計量タンク4の雰囲気に付与される押出圧力P3と、押出圧力P3に対して低い容器2の内部の圧力P2との圧力差により、計量タンク4から容器2に製品液を供給しつつ、容器2の内部のヘッドスペースから外部へと排気させながら、計量タンク4における製品液の液位に基づいて、計量タンク4から容器2に製品液を規定の充填量まで供給する。押出圧力P3は、炭酸ガス供給部7により計量タンク4の雰囲気に付与される圧力P1以上である。
【0056】
充填装置1は、貯留タンク3から計量タンク4へと製品液を移送する移送経路9に設けられる第1液弁11と、計量タンク4から容器2へと製品液を供給する供給経路10に設けられる第2液弁12と、容器2の内部から外部へと連通した排気経路13に設けられる排気部としての排気式圧力設定弁19と、容器2の内部に正圧を付与する正圧付与部17と、計量タンク4における製品液の液位に基づいて容器2に充填される製品液を計量する制御部20とを備えていることが好ましい。
【0057】
正圧付与部17は、充填に先立ち、容器2の内部に大気圧よりも高い正圧を付与する。正圧付与部17は、例えば、正圧付与用タンク171と、圧力導入弁172とを含んでいる。
図6に示す例では、正圧付与用タンク171は、貯留タンク3および計量タンク4に炭酸ガスを供給する炭酸ガス供給部7(圧力源)の二酸化炭素供給源71に接続されている。二酸化炭素供給源71から正圧付与用タンク171に炭酸ガスが送り込まれることで正圧付与用タンク171に蓄えられる圧力を用いて、正圧付与部17は、図示しない搬送装置により充填バルブ(第2液弁12)に容器2が供給される度に圧力導入弁172を開いて、容器2に適宜な圧力P2を付与することができる。
本実施形態では、炭酸ガス供給部7により計量タンク4に付与される計量タンク圧力P1と同一の圧力P2が、正圧付与部17により容器2に供給されるものとする。
【0058】
正圧付与部17は、二酸化炭素供給源71とは別に構成されていてもよい。例えば、正圧付与部17が、高圧下で液化した二酸化炭素を貯留する二酸化炭素供給源と、弁とを含んで構成されていてもよい。
【0059】
本実施形態では、炭酸ガス供給部7により付与される計量タンク圧力P1と容器圧力P2とが等しいので(P1=P2)、計量タンク4から容器圧力P2に圧力差により充填するためには、計量タンク圧力P1よりも大きい押出圧力P3を計量タンク4に得る必要がある。
そのため、充填装置1-1は、計量タンク圧力P1に追加圧力ΔAPを加えた押出圧力P3を計量タンク4の内部に付与する押出圧力付与部18(他の圧力源)を備えている。
つまり、充填装置1-1は、計量タンク4の内部に第1圧力(P1)、および第1圧力(P1)よりも大きい第2圧力(P3)を選択的に付与可能な圧力付与手段を備えている。本実施形態の圧力付与手段は、炭酸ガス供給部7と、押出圧力付与部18とを含んで構成されている。但し、同一の圧力源により計量タンク4の内部に第1圧力(P1)と第2圧力(P3)とが選択的に付与されるようにしてもよい。例えば、押出圧力付与部18に備わる二酸化炭素供給源181により第2圧力(P3)を計量タンク4の内部に付与することができ、かつ、二酸化炭素供給源181から図示しない減圧弁を介して計量タンク4の内部に第1圧力(P1)を付与することができる。
【0060】
本実施形態とは異なり、計量タンク圧力P1が容器圧力P2よりも大きい場合(P1>P2)、換言すると、計量タンク圧力P1よりも小さい正圧(P2)が容器2に付与される場合には、P1,P2により容器2への充填に供する圧力差(P1-P2)を得ることができる。その場合には、充填時に押出圧力P3として計量タンク圧力P1が計量タンク4に付与されていれば足りるから(P3=P2)、充填装置1-1が押出圧力付与部18を備えている必要はない。
【0061】
本実施形態における追加圧力ΔAPは、押出圧力P3(P1+ΔAP)により、供給経路10および充填ノズル22を通じて製品液を容器2の正圧雰囲気に吐出させることが可能な程度に、また、サイクルタイムから必要な充填時の吐出流量に足りる程度に、小さくてよい。
例えば、計量タンク圧力P1および容器圧力P2は約3気圧であれば、押出圧力P3は約3.2気圧で良い。製品液は、押出圧力P3と容器圧力P2との圧力差ΔP(P3-P2)に従って計量タンク4から容器2へと充填される。
【0062】
押出圧力付与部18は、例えば、二酸化炭素供給源71とは別の二酸化炭素供給源181と、弁182とを含んでいる。押出圧力付与部18は、充填バルブ(第2液弁12)に容器2が供給される度に弁182を開いて、押出圧力P3を計量タンク4の内部に付与することができる。
【0063】
排気式圧力設定弁19は、容器2の内圧が設定圧力P4に対して高ければリリーフ機構が作動して開き、設定圧力P4に対して低いときに閉じるように構成されている。排気式圧力設定弁19のリリーフ機構は、容器2の内圧が設定圧力P4を超えると、設定圧力P4よりも高い圧力で作動する。設定圧力P4は、例えば、正圧付与部17により容器2の内部に付与される圧力P2に設定することができる。このときP4=P2である。容器2の内圧(P2)が、充填時の上限である押出圧力P3に到達したとき、排気式圧力設定弁19のリリーフ機構が作動している。
排気式圧力設定弁19には、リリーフタイプのレギュレータや、圧力逃し弁等を用いることができる。
【0064】
〔充填工程の説明〕
以下、図7および図8を参照しながら、充填装置1-1により行われる充填工程について具体的に説明する。図7は送液ステップS1、液位検知ステップS2、および容器への正圧付与のステップS4を示し、図8は充填ステップS5を示している。これらのステップS1,S2,S4,S5が繰り返される。
【0065】
(送液ステップ)
図示しない搬送装置により充填装置1に供給された容器2に製品液を充填するにあたり、図7に示すように、貯留タンク3に貯留されている製品液の一部を貯留タンク3から計量タンク4へ移送する(送液ステップS1)。製品液の移送は、貯留タンク3内の製品液と計量タンク4内の製品液との水頭差(ヘッド差)に基づいて行われる。
送液ステップS1を行うため、制御部20は、所定量の製品液が貯留タンク3から計量タンク4に移送されるまでの間に亘り、第1液弁11を開く。このとき、第2液弁12は閉じられている。連通経路8の連通弁81は開かれており、押出圧力付与部18の弁182は閉じられている。
【0066】
制御部20は、第1液弁11を開いた後、例えば、液位計5により計量タンク4における予め設定された液位の上限(図7のLV0)が検知されたならば、第1液弁11を閉じる。
または、制御部20は、第1液弁11を開いた後、タイマーにより所定時間が計時されたならば、第1液弁11を閉じて、計量タンク4の液位LV0´を液位計5により検知する。
いずれの方法により貯留タンク3から計量タンク4へと製品液を移送するとしても、容器2への充填に先立ち、計量タンク4の液位が液位計5により検知されることとなる(液位検知ステップS2)。
【0067】
送液ステップS1では、貯留タンク3の製品液と計量タンク4の製品液との水頭差に従って、製品液が貯留タンク3から計量タンク4への移送速度を次第に低下させつつ移送される。そのため、送液の停止直後に計量タンク4の液位が安定し、液位計5による液位の検出値も安定する。したがって、液位に基づく制御による充填量の精度を向上させることができるとともに、充填処理の短縮に寄与できる。
【0068】
貯留タンク3から所定量の製品液が移送されたことで、計量タンク4には、容器2に定められた規定充填量に対して多い量の製品液が貯留されている。
以降、計量タンク4における液位に基づいて、制御部20により、計量タンク4の液位に基づく充填量の制御が行われる。
【0069】
(正圧付与ステップ)
容器2に対しては、製品液の充填に先立ち、正圧付与部17により、内部に正圧を付与する(正圧付与ステップS4)。このとき、排気経路13における排気式圧力設定弁19の下流に設けられた弁192は閉じられる。
正圧付与ステップS4は、上記の送液ステップS1および液位検知ステップS2と並行して行われることが好ましい。
本実施形態では、容器2の内部に、計量タンク圧力P1と同一の圧力P2(第1圧力)が付与される。
【0070】
(充填ステップ)
計量タンク4に必要量の製品液が貯留されたならば、図8に示す充填ステップS5を実施することにより、容器2への充填を実施する。このとき弁192は開かれる。
【0071】
充填ステップS5では、制御部20により、連通弁81を閉じた後に押出圧力付与部18の弁182を開き、圧力P2よりも大きい第2圧力としての押出圧力P3(P1+ΔAP)を計量タンク4の内部に付与するとともに、第2液弁12を開く。このとき第1液弁11は閉じておく。また、容器2の口部2Aはシール機構21により封止されている。
充填ステップS5では、押出圧力P3と、容器2の内部の圧力P2との差ΔPにより、計量タンク4から空の状態の容器2に製品液を供給しつつ、排気式圧力設定弁19を通じて容器2の内部から外部へと排気させながら、計量タンク4における製品液の液位に基づいて、計量タンク4から容器2に製品液を規定の充填量まで供給する。
圧力差ΔPに従い、製品液は計量タンク4から容器2へ充填され、水頭のみによって計量タンク4から容器2に充填する場合と比べて高速で充填される。
【0072】
製品液の充填に伴い容器2の内圧が上昇すると排気式圧力設定弁19のリリーフ機構が作動して排気式圧力設定弁19が開く。以降は、製品液が充填される間に亘り、容器2の内圧の増加分に相当する排気量にて排気式圧力設定弁19を通じて容器2から排気させつつ、計量タンク4から容器2に製品液が規定充填量まで充填される。
【0073】
本実施形態においても、ステップS1,S2,S4,S5に亘り、容器2の内部の圧力が大気圧以上に維持される。
【0074】
本実施形態では、容器2の内部が正圧(P1=P2)に加圧されており、容器2への充填に供される圧力差ΔP(P3-P2)を得るために必要な限度で押出圧力P3が計量タンク4に付与されるとともに、排気式圧力設定弁19を通じて容器2から連続的に排気させる。このとき、計量タンク4内の圧力は、押出圧力付与部18による圧力の印加により一定に保たれている。
本実施形態によれば、容器2の内部に一定の正圧が付与された状態を維持できることにより、製品液からの炭酸ガスの放出および再溶解を抑え、容器2の内部の圧力変動や炭酸ガスの放出および再溶解等を発生させることなく安定した充填状態が保持されるとともに、計量タンク4の液位に基づいて規定充填量の製品液を容器2に充填することができる。本実施形態では、1度の充填ステップS5により容器2への充填が完了する。
【0075】
充填ステップS5において制御部20は、第2液弁12を開いた後、例えば、充填に先立ち検知された計量タンク4の液位(一例として図8のLV0)と、液位計5により充填中に検知される計量タンク4の液位との差分ΔLV、および計量タンク4の断面積を用いて算出される液量(液の体積)が規定充填量に到達したならば、第2液弁12を閉じる。このとき、算出された液量が規定充填量に到達したことに代えて、ΔLVが、規定充填量に相当する液位(入り味線)に到達したときに第2液弁12を閉じるようにしてもよい。
【0076】
あるいは、充填ステップS5に先立ち検知された計量タンク4の液位が、液位の一定の上限値を示すものである場合は、液位の上限および規定充填量から、液位の下限が決まる。その場合は、充填ステップS5において制御部20は、第2液弁12を開いた後、液位計5により、液位下限が検知されたならば、第2液弁12を閉じるとよい。
この方法で充填量を制御する場合は、液位を連続的に検知する液位計5に代えて、上限検知用のレベルスイッチおよび下限検知用のレベルスイッチを用いることができる。
【0077】
充填に先立ち検知された液位がLV0であり、充填ステップS5の終了時における液位がLV2であり、計量タンク4の断面積がA、規定充填量がQであるとすれば、計量タンク4の液位を用いた上記の制御のいずれも、A(LV0-LV2)=Qに基づくことは言うまでもない。
【0078】
以上により充填ステップS5を終えたならば、容器2の内圧を保持した状態で容器2に図示しない蓋を装着し、次の充填サイクルのため、貯留タンク3から計量タンク4に製品液を移送する。つまり、図7に示す送液ステップS1に戻る。上述の送液ステップS1、液位検知ステップS2、および正圧付与ステップS4は、充填済の容器2に蓋を装着する処理と並行して行うことが好ましい。
なお、充填の完了後も容器2内に正圧が付与されている状態であり、その状態のままで容器2に蓋が装着される。そのため、容器2の内圧を大気圧まで漸次低下させるスニフト処理は必要ない。
【0079】
〔本実施形態による効果〕
以上で説明したように、本実施形態の充填装置1-1およびステップS1,S2,S4,S5による充填方法によれば、容器2への製品液の充填を一度のステップS5により実現しながら、第1実施形態による効果と同様に、樹脂製の容器に充填する場合であっても、容器の形状を維持したまま、製品液の充填処理に要する時間をカウンタープレッシャー方式に対して短縮でき、しかも、計量タンク4の液位に基づいて充填量が決まるため、規定量の製品液を容器に充填することができる。
【0080】
本実施形態では、充填に先立ち容器2の内部が正圧に加圧されているため、製品液の充填に供される圧力差ΔPは、充填に必要な吐出圧力に十分でありながら、容器2の内部に負圧が付与される場合に製品液の充填に供される圧力差と比べて小さいことは勿論のこと、計量タンク圧力P1と、正圧が付与されないで大気圧雰囲気下にある容器2の内部の圧力との圧力差と比べても小さい。圧力差ΔPが小さければ、容器2に吐出される製品液の吐出圧力も小さい。圧力差ΔPは、充填時に計量タンク4に付与される押出圧力P3に基づいて決まるので、計量タンク圧力P1の値とは関係なく、充填に足りる程度の大きさに圧力差ΔPを留めることができる。但し、圧力差ΔPが小さくても、容器2の内部は充填ステップS5の間に亘り正圧に維持される。
そうすると、圧力差ΔPを利用してカウンタープレッシャー方式に対して充填の高速化を図り、かつ容器2内部への正圧付与により炭酸ガスの製品液からの離脱、再溶解を抑えつつ、さらに吐出圧力が小さい点でも、容器2内の圧力変動等に起因した炭酸ガスの製品液からの放出および再溶解を抑え、計量タンク4において計量された製品液の容器2への移送により、一定量の製品液を容器2に充填することができる。
【0081】
第2実施形態によれば、圧力差Δを抑えて、炭酸ガスの放出、再溶解による充填量変動を抑えられることにより、第1実施形態のように二段階の充填ステップS31,S32を行う必要がないので、一度の充填ステップS5により容器2への充填を完了させることができる。
【0082】
圧力差ΔPは、計量タンク圧力P1を付与する炭酸ガス供給部7とは別の圧力源である押出圧力付与部18により、適宜な値に設定することができる。圧力差ΔPに応じて、容器2の特性等に合わせた充填流量の設定が可能である。
【0083】
本実施形態において、充填に先立つ送液ステップS1から正圧付与ステップS4にかけては、前サイクルにおいて製品液が充填された容器2に蓋を装着する処理と並行して行うことができる。
したがって、ステップS1,S2,S4,S5によれば、従来のカウンタープレッシャー方式に対して、規定充填量の製品液の充填に要する時間の短縮が可能であるとともに、送液に要する時間および蓋装着に要する時間を含めた、充填に係る一連の処理に要するサイクルタイムを短縮することが可能である。
【0084】
上記以外にも、本開示の主旨を逸脱しない限り、上記各実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
上記各実施形態として、炭酸入りの飲料を充填する例を説明したが、本開示は、炭酸が含まれていない飲料、さらには、薬液等の製品液にも適用できる。
また、炭酸入りの飲料を充填する上記各実施形態では、貯留タンク3や計量タンク4、容器2の加圧に使用するガスとして炭酸ガスを用いているが、炭酸ガスに限らず、容器に充填される製品液の特性維持に必要なガス、例えば窒素ガス等の不活性ガスを貯留タンク3や計量タンク4、容器2の加圧に用いることもできる。
また、上記各実施形態で説明した容器2は樹脂製であるが、容器2は、例えば金属製の缶容器であってもよく、可撓性を有しない例えばガラス製のびんを充填の対象から排除するものではない。
【符号の説明】
【0085】
1 充填装置
2 容器
2A 口部
3 貯留タンク
3G 気相領域
4 計量タンク
4G 気相領域
5 液位計(液位検知部)
6 製品液供給部
7 炭酸ガス供給部(圧力源)
8 連通経路
9 移送経路
10 供給経路
11 第1液弁
12 第2液弁
13 排気経路
14 排気部
15 制御部
17 正圧付与部
18 押出圧力付与部(他の圧力源)
19 排気式圧力設定弁
20 制御部
21 シール機構
22 充填ノズル
61 製品液供給源
62 弁
71 二酸化炭素供給源
72 弁
73 ガス排出弁
81 連通弁
100 同一平面
141 絞り
142 排気弁
171 正圧付与用タンク
172 圧力導入弁
181 二酸化炭素供給源
182 弁
192 弁
LV0,LV1,LV2,LV3 液位
P1 計量タンク圧力
P2 容器圧力
P3 押出圧力
P4 設定圧力
S1 送液ステップ
S2 液位検知ステップ
S3 充填ステップ
S31 第1充填ステップ
S32 第2充填ステップ
S4 正圧付与ステップ
S5 充填ステップ
ΔAP 追加圧力
Δh 水頭差
ΔLV 差分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8