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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】デバイス
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/16 20060101AFI20240416BHJP
   H10N 30/88 20230101ALI20240416BHJP
   H10N 30/30 20230101ALI20240416BHJP
   H10N 30/85 20230101ALI20240416BHJP
   H10N 30/853 20230101ALI20240416BHJP
   H10N 30/857 20230101ALI20240416BHJP
   H10N 30/20 20230101ALI20240416BHJP
【FI】
G01L1/16 B
H10N30/88
H10N30/30
H10N30/85
H10N30/853
H10N30/857
H10N30/20
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023115336
(22)【出願日】2023-07-13
(62)【分割の表示】P 2021568055の分割
【原出願日】2020-05-15
(65)【公開番号】P2023134653
(43)【公開日】2023-09-27
【審査請求日】2023-07-14
(31)【優先権主張番号】102019112771.8
(32)【優先日】2019-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】300002160
【氏名又は名称】ティーディーケイ・エレクトロニクス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】TDK ELECTRONICS AG
【住所又は居所原語表記】Rosenheimer Strasse 141e, 81671 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】カッペルト, サンドロ
(72)【発明者】
【氏名】ザクス, シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】タファーナー, ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】ヘディリ, アミラ
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-150079(JP,A)
【文献】国際公開第2019/022114(WO,A1)
【文献】特開2007-119250(JP,A)
【文献】特開2017-198573(JP,A)
【文献】特開2005-41053(JP,A)
【文献】特開2016-90382(JP,A)
【文献】特表2000-507392(JP,A)
【文献】特表2002-513514(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/16
G02B 6/00
H01L 27/20
H10N 30/00-39/00
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイス(1)であって、
圧電変換素子(3)及び支持体(4)を有し、これらは、前記圧電変換素子(3)及び前記支持体(4)が力の作用下で共に変形されるよう、互いに機械的に結合されて結合体を成しており、
前記支持体(4)は、前記圧電変換素子(3)及び前記支持体(4)から成る前記結合体が湾曲した場合に長さが変化しない中立ファイバが、前記支持体(4)の内部に配置されるように構成されており、
前記支持体(4)は、導電性の材料を含むと共に、電極として使用されるように構成されている、デバイス(1)。
【請求項2】
前記圧電変換素子(3)は、セラミック層、又は、強誘電性ポリマー層、又は、セラミック材料及び圧電ポリマーマトリックスを含有する複合材料を含む層を有する、請求項1に記載のデバイス(1)。
【請求項3】
前記支持体(4)の厚さは、前記中立ファイバ(10)が前記支持体(4)の内部に配置されるように構成されている、請求項1又は2に記載のデバイス(1)。
【請求項4】
前記支持体(4)の厚さは、1μm~500μmの範囲にある、請求項1~3のいずれか1項に記載のデバイス(1)。
【請求項5】
前記支持体(4)の弾性率は、前記中立ファイバ(10)が前記支持体(4)の内部に配置されるように構成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載のデバイス(1)。
【請求項6】
前記デバイス(1)は、当該デバイス(1)に作用する力(F)によって生じる変形を検出するように構成されたセンサである、請求項1~5のいずれか1項に記載のデバイス(1)。
【請求項7】
前記デバイス(1)は、前記圧電変換素子(3)内の力が電圧及び/又は電荷を生成するように構成されており、
前記デバイス(1)は、前記電圧及び/又は前記電荷の大きさを測定するように構成された評価電子機器(2)と接続されている、請求項6に記載のデバイス(1)。
【請求項8】
前記デバイス(1)はアクチュエータである、請求項1~7のいずれか1項に記載のデバイス(1)。
【請求項9】
前記デバイス(1)は、前記圧電変換素子(3)に電圧が印加され、前記圧電変換素子(3)が印加された前記電圧の結果として変形することにより、前記力を生成するように構成されている、請求項8に記載のデバイス(1)。
【請求項10】
前記圧電変換素子(3)は、複数の圧電層及びその間に配置された内部電極を備える多層構造を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載のデバイス(1)。
【請求項11】
前記圧電変換素子(3)は、単一の圧電層(5)と、上部電極(6)とを有し、前記圧電層(5)は、前記上部電極(6)と前記支持体(4)との間に配置されている、請求項1~9のいずれか1項に記載のデバイス(1)。
【請求項12】
前記支持体(4)は、プラスチック又は金属を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載のデバイス(1)。
【請求項13】
前記圧電変換素子(3)は、PVDF:TrFEから成る層を有する、請求項1~12のいずれか1項に記載のデバイス(1)。
【請求項14】
評価電子機器(2)、及び、請求項1~13のいずれか1項に記載のデバイス(1)、を有する装置であって、
前記評価電子機器(2)は、前記デバイス(1)によって生成された電気信号を測定するように構成されている、装置。
【請求項15】
前記評価電子機器(2)は、測定された前記電気信号の変化に基づいて、物体が前記デバイス(1)に接近しているか、又は、物体が前記デバイス(1)に接触しているか、を検出するように構成されている、請求項14に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電変換素子及び支持体を有するデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
デバイスは、例えば機械的変形を検出するためのセンサであり得る。このようなセンサは、長らく、実に様々な応用分野で重要な役割を演じてきた。多くの制御プロセスでは、例えば圧力又はねじりによる機械的変形が検出され、制御変数として使用される。自律システムの使用が進展するにつれて、このような機械的変形の検出は、更に重要性を増すであろう。
【0003】
一般に、センサシステムは、測定変数を測定可能な電気信号に変換する変換素子と、信号処理に使用され、信号を例えば増幅し、フィルタリングし、及び/又は、デジタル化する、評価電子機器と、から成る。評価電子機器によって出力された出力信号は、更に、上位の制御システムに転送され得る。
【0004】
信号品質を改善するために、従来技術において、変換素子によって生成された信号を増幅することが試みられる解決策が知られている。例えば、特許文献1は、変換素子においてより強い信号を生成するために、圧電素子の多層構造を提案している。
【0005】
しかしながら、多層構造を有する圧電変換素子は、単一の圧電層を備える圧電変換素子と比較して、その製造中のプロセス制御において、付加的なコストをもたらす。特許文献2は、圧電変換素子の幾何学的及び機械的パラメータの選択を通じて、信号強度に狙いを定めて影響を及ぼすことを提案している。
【0006】
しかしながら、それによって、変換素子の幾何学的形状及び機械的構成に関して、設計の自由度が制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第6434917号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/0181871号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、改良されたデバイスを提供することである。例えば、変換素子の構成に関して特別な要求を課さず、及び/又は、簡易な製造プロセスを可能にする、デバイスが提供されることになる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、請求項1によるデバイスによって解決される。更なる請求項は、デバイスの好ましい実施形態を提示する。
【0010】
圧電変換素子及び支持体を有するデバイスが提案され、圧電変換素子及び支持体は、力の作用下で共に変形されるよう、互いに機械的に結合されて結合体を成している。支持体は、圧電変換素子及び支持体から成る結合体が湾曲した際に長さが変化しない中立ファイバが、支持体内に配置されるよう、構成されている。
【0011】
デバイスの特性は、ここでは、支持体の機械的及び幾何学的特性の適切な選択を通じて、決定することができる。特に、支持体は、圧電変換素子における高い電気的応答を可能にするよう、構成することができる。中立ファイバは支持体の内部にあるため、圧電変換素子は、その全容積にわたってアクティブであることができる。中立ファイバは、圧電変換素子の内部に形成されておらず、その結果、圧電変換素子の全容積が長さの変化を受け、したがって電圧の生成に寄与する。
【0012】
デバイスは、センサ及び/又はアクチュエータとして作動することができる。センサとして作動する場合、デバイスは、圧電変換素子において生成される電圧に基づいて、デバイスに作用する力の大きさを決定するよう、構成することができる。
【0013】
アクチュエータとして作動する場合、圧電変換素子及び支持体を変形させる力は、圧電変換素子自体によって生成され得る。その際、力は、電圧が圧電変換素子に印加されることによって生成される。これは、デバイスの撓みをもたらし得る。中立ファイバは、圧電変換素子内ではなく支持体内に配置されているので、圧電変換素子の全容積が撓みに寄与し得る。
【0014】
圧電変換素子及び支持体は、圧電変換素子の変形が常に支持体の変形をもたらす場合に、結合体と呼ぶことができる。圧電変換素子は、支持体上に平坦に固定されている。特に、圧電変換素子の下面は、支持体の表面上に固定することができ、デバイスが湾曲した場合にも、圧電変換素子の下面は支持体の上面と密着している。
【0015】
圧電変換素子は、支持体の上に配置することができる。特に、圧電変換素子は、支持体の上に印刷することができる。例えば、圧電変換素子は、スクリーン印刷によって支持体の上に塗布することができる。代替的に、孔版印刷、インクジェット印刷、ドクターブレード、蒸着又はスパッタリングも可能である。
【0016】
デバイスは、例えば、片側でクランプされたビーム又は両側でクランプされたビームであり得る。
【0017】
圧電変換素子は、セラミック層、又は、強誘電性ポリマー層、又は、セラミック材料及び圧電ポリマーマトリックスを含有する複合材料を含む層を有することができる。セラミック圧電層は、その内部で、圧電効果のために圧電ポリマー層と比較して高い電圧が生成される点において、際立っている。それに対して、強誘電性ポリマー層は、プラスチックの機械的特性を、セラミック材料の電気的特性と組み合わせることを可能にする。強誘電性ポリマー層は、更に、低い弾性率、したがって高い機械的柔軟性を有する点において、際立っている。
【0018】
強誘電性ポリマー層の例は、PVDF:TrFEである。セラミック圧電層の例は、PZTである。
【0019】
支持体の厚さは、中立ファイバが支持体の内部に配置されるように構成することができる。その際、支持体の厚さは、下面から上面までの支持体の広がりを示す。支持体の上面上には、圧電層を平坦に配置することができる。したがって、支持体の厚さは、中立ファイバの好ましい位置をもたらすために適切に選択され得る支持体の特性の1つである。
【0020】
支持体の厚さは、例えば1μm~500μmの範囲にあることができる。支持体の厚さは、圧電変換素子の厚さを考慮して選択されるべきである。適切な厚さ比によって、中立ファイバが支持体の内部に形成されることが保証され得る。1μm~500μmの範囲の厚さを有する支持体が、10nm~100μmの範囲の厚さを有する圧電変換素子と組み合わされて、結合体を成す場合、中立ファイバは支持体内にある。
【0021】
10nm~100μmの厚さを有する変換素子が、1μm~500μmの範囲の厚さを有する支持体上で組み合わされる場合、変換素子の出力信号の改善が観察され得る。なぜなら、中立ファイバの位置が変換素子から遠く離れており、したがって、より大きな機械的応力が変換素子に作用するからである。
【0022】
支持体の弾性率は、中立ファイバが支持体内に配置されるように構成することができる。硬い支持体は、柔軟な支持体と比較して、圧電変換素子から離れる方向への中立ファイバの変位を引き起こす。例えば、用途上の制約で支持体の厚さを変えることができない場合、支持体の弾性率の適切な選択を通じて、中立ファイバが支持体の内部に形成されることを保証することができる。
【0023】
したがって、支持体の弾性率は、中立ファイバの位置を変えることを可能にする、更なる特性を形成する。これにより、圧電変換素子の変更を必要とすることなく、中立ファイバの所望の位置への変位を達成することができる。
【0024】
デバイスは、デバイスに作用する力によって生成される変形を検出するように構成されたセンサであることができる。このようにして、力を測定することができる。デバイスは、圧電変換素子内の力が電圧及び/又は電荷を生成するように構成することができ、デバイスは、電圧及び/又は電荷の大きさを測定するように構成された評価電子機器と接続されている。デバイスは、例えば圧力センサ、距離センサ又は近接センサとして使用することができる。支持体の特性を適切に選択することにより、特に強い出力信号を変換素子内で生成することができる。
【0025】
代替的に又は付加的に、デバイスはアクチュエータであることができる。デバイスは、電圧が圧電変換素子に印加され、印加された電圧の結果として圧電変換素子が変形することにより、力を生成するよう、構成することができる。支持体の特性を適切に選択することにより、圧電変換素子の特に大きな変形を生じさせることができる。中立ファイバが圧電変換素子の内部に配置されていない場合、圧電変換素子の各容積単位が、変形に寄与し得る。
【0026】
圧電変換素子は、複数の圧電層及びその間に配置された内部電極を備える多層構造を有することができる。代替的に、圧電変換素子は、単一の圧電層を有することができる。多層構造は、圧電変換素子においてより高い電圧が生成される、又は、アクチュエータとして作動する場合により大きな機械的変形をもたらすという利点を提供する。それに対して、堆積構造は、製造プロセスがより複雑でなくなるという利点を提供する。
【0027】
圧電変換素子は、単一の圧電層と、上部電極と、下部電極とを有することができ、圧電層は、上部電極と下部電極との間に配置されている。代替的に、圧電変換素子は、単一の圧電層と上部電極のみを有することができ、圧電層は、上部電極と支持体との間に配置されており、支持体は、導電性の材料を含むと共に、電極として使用されるように構成されている。
【0028】
支持体は、例えばポリイミド、PET又はPENのようなプラスチックを含むことができる。代替的に、支持体は金属を含むことができる。例えば、支持体は、スチール又はアルミニウムを含むことができる。
【0029】
更なる態様は、評価電子機器と、上述したデバイスと、を有する装置に関する。評価電子機器は、デバイスによって生成された電気信号を測定するように構成されている。評価電子機器は、測定された電気信号の変化に基づいて、物体がデバイスに接近しているか、又は、物体がデバイスに接触しているか、を検出するように構成され得る。信号品質を改善するための評価電子機器の変更は、大きさ及び複雑さを低減することができ、これは、更にコスト上の利点でもあり得る。なぜなら、支持体の変更によって、変換素子が強い信号を提供し得ることが保証されるからである。したがって、簡易な評価電子機器を使用することができる。
【0030】
以下において、本発明が、図面に基づいて更に記述される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】デバイス及び電子機器を有する構成を示す。
図2】デバイスを示す。
図3】第1の端部でクランプされたデバイス、及び、当該デバイスにおいて発生する機械的変形を示す。
図4】比較デバイスを示す。
図5】測定の結果を示す。
図6】有限要素法を用いて行われたシミュレーションの結果を示す。
図7】更なるシミュレーションの結果を示す。
図8】更なるシミュレーションの結果を示す。
図9】第2の実施例によるハデバイスを示す。
図10図9に示されたデバイスの平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、デバイス1及び電子機器2を有する構成を示している。図1に示された構成は、センサシステムとして、及び/又は、アクチュエータシステムとして、作動させることができる。
【0033】
センサシステムとしての作動のために、デバイス1は、物理的な入力信号を電気的な出力信号に変換するように構成されている。物理的な入力信号は、例えば、デバイス1に作用する力である。デバイス1は、とりわけ、圧電変換素子3を有している。圧電変換素子3は、圧電効果に基づいて、物理的な入力信号を電気的な出力信号に変換し、当該電気的な出力信号は、デバイス1から電子機器2に転送される。
【0034】
電子機器2は、デバイス1の電気的な出力信号を更に処理するように構成されている。例えば、電子機器2は、デバイス1によって生成された電気的な出力信号を評価し、デジタル信号に変換するように構成することができる。
【0035】
アクチュエータシステムとしての作動のために、電子機器2から、電気的な入力信号が、デバイス1に転送される。圧電変換素子3は、電気的な入力信号を、アクチュエータ機能を実現する機械的変形に変換する。
【0036】
ここに記載された構成では、電子機器2における信号処理の要件を低く保つことができる。なぜなら、デバイス1は、センサ作動においては、強い応答信号を電気的な出力信号として提供し、アクチュエータ作動においては、圧電変換素子3の大きな機械的変形をアクチュエータ信号として生成するよう、構成されているからである。強い応答信号又は強いアクチュエータ信号は、特に、デバイス1の支持体4の特性の適切な選択を通じて達成される。
【0037】
図2は、デバイス1の第1の実施例を示している。デバイス1は、圧電変換素子3及び支持体4を有する。圧電変換素子3は、直接的に支持体4の上に配置されている。圧電変換素子3の下面は、支持体4の上面に接触している。圧電変換素子3と支持体4は、機械的に互いに接続されている。特に、圧電変換素子3及び支持体4は結合体を形成し、一緒にのみ変形、例えば湾曲させることができる。
【0038】
圧電変換素子3は、圧電層5と、上部電極6と、下部電極7とを有し、圧電層5は、上部電極6と下部電極7との間に配置されている。アクチュエータ作動において、2つの電極6、7の間には電圧が印加され、当該電圧は、圧電層5の機械的変形を生じさせる。センサ作動において、圧電層5は、外部からデバイス1に作用する力によって変形され、その結果、電極6、7にタップされる電圧を生成することができる。
【0039】
圧電層5は、強誘電性ポリマーを含むか、又は、強誘電性ポリマーから成ることができる。強誘電性ポリマーは、プラスチックの機械的特性を有し、これらをセラミック材料の電気的特性と組み合わせる。強誘電性ポリマーから成る層は、スクリーン印刷、孔版印刷又はインクジェット印刷によって製造することができる。代替的に、強誘電性ポリマーから成る層は、蒸着若しくはスパッタリングによって又はドクターブレードを用いて、製造することができる。上述の方法は、それぞれ、その上に圧電変換素子が塗布される支持体4を必要とする。
【0040】
代替的に、圧電層5は、圧電セラミック材料を含むか、又は、圧電セラミック材料から成ることができる。代替的に、圧電層5は、ポリマーマトリックス及び圧電セラミック材料から成る複合材料を含むか、又は、このような複合材料から成ることもできる。
【0041】
支持体4は、例えばポリイミド、PET又はPENのようなプラスチックから成ることができる。
【0042】
支持体4は、圧電変換素子3及び支持体4から成る結合体の、機械的及び電気的な特性の決定に、実質的に参与する。例えばその厚さ、その弾性率及び材料のような、支持体4の構造的な特性の適切な選択を通じて、結合体の機械的及び電気的な特性が決定される。この関係は、外力Fが作用するデバイス1を示す図3を参照して、より詳細に説明される。
【0043】
図3に示されたデバイス1は、第1の端部8でクランプされている。力Fは、デバイス1のうち、第1の端部8とは反対側の第2の端部9に作用する。したがって、デバイス1は、片側でクランプされたビームである。しかしながら、デバイス1は、決してこのような構成に限定されるものではない。代替的に、デバイス1は、例えば1及び第2の端部8、9でクランプされ、第1及び第2の端部の間に配置されたデバイス1の中央領域は、デバイス1に作用する力の結果として曲げられることができる。
【0044】
圧電変換素子3及び支持体4は、デバイス1に作用する力の結果として湾曲するが、圧電変換素子3及び支持体4は、第2の端部9では移動され、第1の端部8では不動のままである。デバイス1の上面に配置された圧電変換素子3は、湾曲によって伸ばされ、すなわち、第1の端部8から第2の端部9までの長さが増大する。支持体4のうち、圧電変換素子3から離れる方を向く下面は、湾曲によって圧縮され、すなわち、第1の端部8から第2の端部9までの長さが減少する。
【0045】
図3では、矢印によって、デバイス1内の様々な位置で局所的に発生する機械的応力が示されている。図3は、デバイスの上面付近及び下面付近で特に高い機械的応力が発生し、発生する機械的応力がデバイス1の中心に配置された中立ファイバ10に向かって減少することを示している。中立ファイバ10は、作用する応力の結果として長さの変化が生じない、デバイス1の平面を示す。中立ファイバ10の正確な位置は、必ずしも圧電変換素子3の幾何学的中心にあるのではなく、圧電変換素子3及び支持体4の弾性率及び幾何学的設計によって影響を受ける。
【0046】
図3に示された実施例では、中立ファイバ10は、支持体4内で、圧電変換素子3から遠く離れて配置されている。圧電変換素子3は、その全容積に亘って長さが変化し、全容積において電圧が発生する。
【0047】
図4は、図3に示されたデバイスと比較して支持体が薄い、比較デバイスを示している。より薄く構成された支持体によって、中立ファイバは、圧電変換素子内に変位している。圧電変換素子は、デバイスに作用する力の結果として、図4に示された比較デバイスにおいては、図3に示された実施例よりも、明らかに低い機械的応力を受ける。それに応じて、図4に示された実施例においては、圧電層内でより低い電圧しか生成されず、デバイスによって生成された電気的な出力信号は、図3に示されたデバイスと比較して小さい。
【0048】
図3及び4のデバイスの比較は、支持体4の厚さを適切に選択することによって、圧電変換素子3の圧電層5が高い機械的応力を受けることが保証され得ることを、示している。このようにして、センサ作動におけるデバイス1の強い電気的な出力信号が保証される。アクチュエータ作動においては、十分に厚い支持体4によって、デバイス1の大きな機械的変形が可能となる。
【0049】
支持体4の厚さは、少なくとも、中立ファイバ10が支持体4の内部に位置する程度に大きくなければならない。支持体4が厚く構成されるほど、中立ファイバ10は支持体4内により深く変位することができ、圧電変換素子3によって生成される信号はより強くなり得る。
【0050】
圧電変換素子3によって供給される信号への支持体形状の影響が、構造的に同一の圧電変換素子3を有する2つのデバイス1を用いた比較測定において、調査された。図5は、比較測定の結果を示している。
【0051】
両方のデバイス1は、それぞれ、20mmの長さ及び10mmの幅を有する。長さは、第1の端部8から第2の端部9までの広がりを示す。幅は、それに対して垂直な方向の広がりを示す。デバイス1の厚さは、支持体4と圧電変換素子3が互いの上に積み重ねられる積層方向における、デバイス1の広がりを示す。厚さは、幅及び長さに対して垂直である。
【0052】
両方のデバイス1は、10μmの厚さの強誘電性ポリマー、PVDF:TrFEから成る圧電層5を備える、圧電変換素子3を有する。下部電極7はPEDOT:PSSから成り、上部電極6はカーボンから成る。両方のデバイス1について、ポリイミドから成る支持体4が使用された。2つのデバイス1は、支持体4の厚さのみが異なる。第1のデバイス1は、75μmの厚さの支持体4を有する。第2のデバイス1は、25μmの厚さの支持体4を有する。両方のデバイス1は、テストスタンド内で、同一の変形速度で同一の変形経路に亘って、変形された。変形速度は0.4m/sであり、変形経路は4mmであった。
【0053】
図5では、第1のデバイス1の電気的な出力信号が曲線K1に、第2のデバイス1の電気的な出力信号が曲線K2に、それぞれプロットされている。横軸には、時間が秒でプロットされている。縦軸には、電気的な出力信号がボルトでプロットされている。第1のデバイス1の電気的な出力信号が、圧電変換素子3の同一の変形及び同一の特性において、明らかにより大きいことが認識され得る。特に、第1のデバイス1の電気的な出力信号は、第2のデバイス1の電気的な出力信号の約9倍である。第1のデバイスの明らかにより高い電気的な出力信号は、第1のデバイスにおいては、第2のデバイスと比較して、中立ファイバ10がより好都合な位置を有するということから生じる。第1のデバイスの場合、支持体4のより大きな厚さの故に、中立ファイバ10は圧電変換素子3から更に離れて配置されており、圧電変換素子3はより大きな変形を受ける。
【0054】
図6は、有限要素法を用いて行われたシミュレーションの結果を示している。シミュレーションでは、2つのデバイス1が考慮され、それらは、それぞれ、PVDF:TrFEから成る圧電層5を備える圧電変換素子4を有する。支持体4は、両方のデバイス1において、ポリイミドから成る。第2のデバイス1の支持体4は、第1のデバイス1の支持体4と比較して、5倍の機械的強度を有する。
【0055】
横軸には、時間がmsでプロットされている。縦軸には、出力電圧がVでプロットされている。曲線K3は、変形の時間に亘って第2のデバイス1の圧電変換素子3によって生成される電圧の高さを示す。曲線K4は、変形の時間に亘って第1のデバイス1の圧電変換素子3によって生成される電圧を示す。両方のデバイスは、同じ距離だけ変形される。第2のデバイスは、その出力信号においてより高い電圧を生成する。第2のデバイスでは、支持体4の機械的強度がより大きいので、中立ファイバ10は支持体4内により深く、したがって圧電変換素子3から更に離れるように、変位される。それに応じて、圧電変換素子3は、より大きな機械的変形を受け、したがって、より高い電圧を生成する。
【0056】
図7及び図8は、更なるシミュレーションの結果を示している。図7及び8では、片側でクランプされたビームとして構成されたデバイス1において、当該デバイス内で局所的に生じる機械的応力が考慮される。その際、同一の距離だけ撓まされた構造的に同一の2つのビームが考慮される。ただし、図7に示されたビームは、支持体4の弾性率において、図8に示されたビームとは異なっている。図7で考慮されるビームの場合、支持体4はより低い強度を有する。図7及び8の比較は、高い強度を有する支持体4の上に塗布された圧電変換素子3において、同一の構造及び同一の撓みの場合、より高い機械的応力、したがってより高い電圧が発生することを、示している。支持体4の機械的強度又は弾性率を適切に選択することにより、圧電変換素子3が良好な出力信号を送出するか、又は、アクチュエータ作動において強い機械的変形を生じさせることを、保証することができる。
【0057】
図9は、デバイス1の第2の実施例を概略的に示している。図9に示されたデバイス1は、支持体4の材料において、図2に示されたデバイスとは異なっている。図9に示されたデバイスは、導電性材料から成る支持体、例えば金属製の支持体を有する。
【0058】
圧電変換素子3の別個の下部電極7は、この場合は必要ではない。むしろ、支持体4の材料は、圧電変換素子3の圧電層5の電気的な接触を担うことができる。この場合、圧電層5は、直接的に支持体4の上に塗布され得る。支持体4は接触面11を有し、当該接触面11を介して電圧が印加され得る。接触面11は、例えば銀又は銀エポキシ樹脂のような導電性の接続材料から成る。
【0059】
図10は、第1の実施例によるデバイス1の上面の平面図を示している。
【符号の説明】
【0060】
1 デバイス
2 電子機器
3 圧電変換素子
4 支持体
5 圧電層
6 上部電極
7 下部電極
8 第1の端部
9 第2の端部
10 中立ファイバ
11 接触面
F 力
K1 曲線
K2 曲線
K3 曲線
K4 曲線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10