(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】集水システム及び集水方法
(51)【国際特許分類】
B01D 51/00 20060101AFI20240416BHJP
E03B 3/28 20060101ALI20240416BHJP
C02F 1/04 20230101ALI20240416BHJP
【FI】
B01D51/00
E03B3/28
C02F1/04
(21)【出願番号】P 2023152533
(22)【出願日】2023-09-20
【審査請求日】2023-09-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522427899
【氏名又は名称】田中 太人
(74)【代理人】
【識別番号】100209886
【氏名又は名称】金森 寛
(72)【発明者】
【氏名】田中 太人
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-112493(JP,U)
【文献】特開2023-102749(JP,A)
【文献】特開2017-161110(JP,A)
【文献】特開2006-150148(JP,A)
【文献】特開2007-101033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 51/00-51/10
C02F 1/00- 1/04
C02F 1/34- 1/36
E03B 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水源と、
所定の周波数の音波を送信可能な音波送信機と、
壁面の少なくとも一部に、前記音波を伝搬可能な壁面を備えた構造体とを備える集水システムであって、
前記構造体が水源の上方に設置され、
前記音波送信機が、
前記構造体の外側に設置され、かつ、前記構造体の内部に前記音波を送信可能に設置され
、
前記音波送信機と、構造体内に存在する、該音波送信機により照射される被照射対象とが非接触である、集水システム。
【請求項2】
前記集水システムがさらに、
気流を発生させる気流生成装置を備え、
前記気流生成装置が、前記水源から前記構造体の内部へ気流を送り込むように設置された、請求項1に記載の集水システム。
【請求項3】
前記集水システムがさらに、
前記構造体を冷却するための冷却制御手段
を備える、請求項1又は2に記載の集水システム。
【請求項4】
前記構造体の内部に集水機構を有する、請求項1又は2に記載の集水システム。
【請求項5】
前記音波送信機が、音波を水平方向に送信可能に設置される、請求項1又は2に記載の集水システム。
【請求項6】
前記音波送信機が、35kHz以上かつ45kHz以下の周波数の音波を生じさせる、請求項1又は2に記載の集水システム。
【請求項7】
請求項1に記載の集水システムを用いた集水方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、新たな集水システム及び集水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気中の水分を超音波により凝縮させ水滴を製造する装置に関する開示がある(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された方法は、空気中の水分(水の粒子)に対して超音波を作用させて水滴を生じさせるものであるが、放物面体により超音波を共振させ、振幅を増大させる必要があり、実用的ではなかった。
【0005】
本開示の少なくとも1つの実施の形態の目的は、新たな集水システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
非限定的な観点によると、本開示に係る集水システムは、水源と、所定の周波数の音波を送信可能な音波送信機と、壁面の少なくとも一部に、前記音波を伝搬可能な壁面を備えた構造体とを備える集水システムであって、前記構造体が水源の上方に設置され、前記音波送信機が、前記構造体の内部に前記音波を送信可能に設置された、集水システムである。
【発明の効果】
【0007】
本開示の各実施形態により1または2以上の不足が解決される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の実施の形態の少なくとも1つに対応する、集水システムの構成を示す概念図である。
【
図2】本開示の実施の形態の少なくとも1つに対応する、集水システムの機能を示すブロック図である。
【
図3】本開示の実施の形態の少なくとも1つに対応する、シミュレーションの実験に用いた集水システムの構成例を示す概念図である。
【
図4】本開示の実施の形態の少なくとも1つに対応する、シミュレーションの実験結果(評価A)を示す図である。
【
図5】本開示の実施の形態の少なくとも1つに対応する、シミュレーションの実験結果(評価B)を示す図である。
【
図6】本開示の実施の形態の少なくとも1つに対応する、集水システムの構成を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本開示の実施の形態について説明する。以下、効果に関する記載は、本開示の実施の形態の効果の一側面であり、ここに記載するものに限定されない。また、以下で説明するフローチャートを構成する各処理の順序は、処理内容に矛盾や不整合が生じない範囲で順不同である。
【0010】
[第一の実施の形態]
本開示の第一の実施の形態の概要について説明をする。以下では、水源と、所定の周波数の音波を送信可能な音波送信機と、壁面の少なくとも一部に、前記音波を伝搬可能な壁面を備えた構造体とを備える集水システムを例に挙げ説明する。
【0011】
図1は、本開示の実施の形態の少なくとも1つに対応する、集水システムの構成を示す概念図である。集水システム1は、構造体2と、所定の周波数の音波を送信可能な音波送信機3と水源5とを少なくとも備える。また、例として、気流生成装置4と、集水機構6とを備えてもよい。
【0012】
構造体2は、例えば筒状の形状を有するが、水源からの気流が流れ込む形状であればよく、形状は限定されない。
図1においては、円筒形の構造体で、試験管のような形状を想定している。
【0013】
図示したように、構造体2の先端が閉じて球体型である円筒形の場合、構造体2の直径は、音波送信機3から送信される音波が、音波送信機3より遠い、対面の壁面に到達可能な程度であることが好ましい。音波の到達距離は、周波数の高低により異なるため、用いる周波数を考慮して構造体2の設計をしてもよい。
【0014】
構造体2の一部は、音波送信機3から送信された音波を伝搬可能な材質で構成されていることが好ましい。音波を伝搬可能であれば材質は問わない。
【0015】
音波送信機3は、所定の周波数の音波を送信可能である。所定の周波数は、20kHz以上であることが好ましい。言い換えれば、所定の周波数は超音波であることが好ましい。超音波とは、人間の耳には聞こえない高い振動数をもつ弾性振動波をいう。
【0016】
気流生成装置4は、例えばプロペラのように所定の方向に気流を発生させることが可能な装置であれば形状は問わない。また、気流生成装置4は少なくとも1以上存在すればよく、複数台を配置するようにしても問題ない。
【0017】
水源5は、水が含まれている液体であればよく、以下の例では、海水を想定して説明するが、これに限定されない。
【0018】
集水機構6は、集水を補助する機構である。図中では鉛直上向きに傾いた構造物を付着させ、集水可能にしているが、これに限定されない。例えば、結露しやすい素材を壁面に貼付し、集水可能にしてもよい。
【0019】
集水システム1はさらに、冷却制御機能を備えてもよい。音波送信機3から送信された音波が照射された部分が熱される虞がある。そこで、所定のタイミングで冷却するべく、照射を制御するようにしてもよい。制御は、例えば、音波送信機3により行われてもよく、あるいは、別途コンピュータ装置により音波送信機3を制御させるようにしてもよい。また、冷却制御機能は、照射しないよう制御するだけでなく、例えば、冷風を送風する等により熱された箇所を冷却するように制御するものであってもよい。
【0020】
集水システム1に用いる構造体等の具体例について説明する。構造体2の内壁の幅は約6m、内壁の高さは約19.7m、音波送信機3の周波数は約40kHz、気流生成装置4の直径は約1.7mとして構成することが好ましい。水源5は、淡水又は海水であることが好ましい。
【0021】
[機能説明]
図2は、本開示の実施の形態の少なくとも1つに対応する、集水システムの機能を示すブロック図である。集水システム1は、音波送信部101、気流生成部102、及び冷却制御部103を備え得る。
【0022】
音波送信部101は、所定の周波数の音波を送信する機能を有する。気流生成部102は、気流を発生させる機能を有する。冷却制御部103は、構造体2を冷却するために音波送信機3を制御する機能を有する。
【0023】
[集水処理]
集水システム1を用いた集水について説明する。
図1のように設置された構造体2、音波送信機3、気流生成装置4、及び水源5がある。気温は、摂氏氷点下10度から摂氏40度までの範囲が好ましい。ただし、本件開示はこれに限定されるものではなく、水源5が液体で存在可能な気温であればよい。
【0024】
水源5から生じた上昇気流に対し、音波送信機3から所定の周波数の音波を送信し、照射する。所定の周波数は、いわゆる超音波であることが好ましい。所定の周波数は、20kHz~50kHzであることが好ましく、35kHz~45kHzであることがより好ましい。
【0025】
音波送信機3は構造体2に接触していても、非接触であってもよい。また、音波送信機3は構造体2の外側に設置されているが、構造体2の内部に設置してもよい。音波を気流に照射すると、集水機構6の上方、構造体2の壁面に結露する。結露した液体は、重力により落下し、集水機構6に蓄えられる。
【0026】
このような集水システム1によれば、構造体2に水滴を結露させ、集水することが可能となる。さらに、集水機構6を備えることで、より効率的に集水することが可能となる。
【0027】
[シミュレーション結果]
上記効果を確認するために行ったシミュレーション結果を説明する。
図3は、本開示の実施の形態の少なくとも1つに対応する、シミュレーションの実験に用いた集水システムの構成例を示す概念図である。
【0028】
図3における集水システム1は、構造体2、音波送信機3、気流生成装置4、及び水源5を備える。構造体2には、内容量が900mLのペットボトルを用いた。水源5には常温の水道水を用い、構造体2に当該水を3.3cm入れた。音波送信機3として、シチズン社製超音波洗浄器SWT710(40kHz、振動子2個)を用いた。実験を行った部屋の室温は、摂氏27.4度、湿度は58%であった。
【0029】
音波送信機3の有無、気流生成装置4の有無、及び水源5の有無をそれぞれ変更して、結露の状況を評価した。評価結果を表1に示す。各実験において、音波送信機3から音波を照射した時間は、約900秒である。
【0030】
【0031】
表1の「結露評価」の欄に評価結果を示した。この評価は、A、B、Cで分け、最も結露した最も良い評価をA、それより評価が落ちるが結露した評価をB、ほとんど結露が見られなかった評価をCとした。表1から理解されるように、音波送信機3及び水源5が有る組み合わせの場合に結露することがわかる。
【0032】
今回の実験において、気流生成装置4が存在する方が結露し難い結果となった。これは、音波を照射した時間が約900秒という限定的な、短時間であった場合に、結露するのに十分な水蒸気が存在したためと考えられる。本開示の集水システムを長期間稼働させる場合には、気流生成装置4を用いることにより、より多くの水蒸気を構造体2に供給することができ、より多量の結露を集めることができる。
【0033】
図4は、本開示の実施の形態の少なくとも1つに対応する、シミュレーションの実験結果(評価A)を示す図である。
図5は、本開示の実施の形態の少なくとも1つに対応する、シミュレーションの実験結果(評価B)を示す図である。評価Aの方が大粒の水滴が付着していることが見てわかる。
【0034】
水源5から生じた上昇気流には、空気の分子、水蒸気、及びエアロゾルが含まれ得る。所定の周波数の音波が、断熱状態で、空気の圧力の高低が次々と隣に伝わることで伝搬する際、空気の分子同士あるいは水蒸気及びエアロゾルと衝突やこすれあいを起こし、空気自身の分子運動のエネルギーを減少させ、温度低下が発生し、気体が液化するものであると発明者は考察している。
【0035】
第一の実施の形態において、音波を水平方向に送信するように音波送信機3を設置したが、これに限定されない。構造体2内に存在する気体に音波を照射可能であれば、音波を照射する角度は斜め30度、45度等であってもよい。
【0036】
第一の実施の形態において、音波送信機3を構造体2の外側に設置したが、これに限定されない。理論上、音波(特に超音波)は、固体、液体、気体いずれでも伝搬するため、構造体2の内側に超音波送信機を設置しても同一結果になり得る。
【0037】
第一の実施の形態の一側面として、新たな集水システムを提供することができる。
【0038】
[第二の実施の形態]
次に、本開示の第二の実施の形態の概要について説明をする。以下では、水源と、所定の周波数の音波を送信可能な音波送信機と、壁面の少なくとも一部に、前記音波を伝搬可能な壁面を備えた構造体とを備える集水システムを例に挙げ説明する。
【0039】
図6は、本開示の実施の形態の少なくとも1つに対応する、集水システムの構成を示す概念図である。集水システム1は、構造体2と、所定の周波数の音波を送信可能な音波送信機3と水源5とを少なくとも備える。また、例として、気流生成装置4と、集水機構6とを備えてもよい。
【0040】
構造体2は、例えば筒状の形状を有するが、水源からの気流が流れ込む形状であればよく、形状は限定されない。
図6においては、円筒形の構造体で、試験管のような形状を想定した。
【0041】
図示したように、構造体2の先端が閉じて球体型である円筒形の場合、構造体2の直径は、音波送信機3から送信される音波が、音波送信機3より遠い、対面の壁面に到達可能な程度であることが好ましい。音波の到達距離は、周波数の高低により異なるため、用いる周波数を考慮して構造体2の設計をしてもよい。
【0042】
構造体2、音波送信機3、気流生成装置4、水源5、集水機構6、及び冷却制御機能に関しては、第一の実施の形態に示した内容を必要な範囲で採用することができる。
【0043】
第二の実施の形態における集水システムの機能は、第一の実施の形態に示した機能説明の内容を必要な範囲で採用することができる。
【0044】
[集水処理]
集水システム1を用いた集水について説明する。
図6のように設置された構造体2、音波送信機3、気流生成装置4、及び水源5がある。気温は、摂氏氷点下10度から摂氏40度までの範囲が好ましい。ただし、本件開示はこれに限定されるものではなく、水源5が液体で存在可能な気温であればよい。
【0045】
水源5から生じた上昇気流に対し、音波送信機3から所定の周波数の音波を送信し、照射する。所定の周波数は、いわゆる超音波であることが好ましい。所定の周波数は、20kHz~50kHzであることが好ましく、35kHz~45kHzであることがより好ましい。
【0046】
音波送信機3は構造体2に接触していても、非接触であってもよい。また、音波送信機3は構造体2の外側に設置されているが、構造体2の内部に設置してもよい。音波を気流に照射すると、気流の下流方向で、構造体2の閉じた先端部分方向の壁面に結露する。結露した液体は、重力により落下し、集水機構6に蓄えられる。
【0047】
このような集水システム1によれば、構造体2に水滴を結露させ、集水することが可能となる。さらに、気流生成装置4及び集水機構6を備えることで、より効率的に集水することが可能となる。
【0048】
第二の実施の形態の一側面として、新たな集水システムを提供することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 :集水システム
2 :構造体
3 :音波送信機
4 :気流生成装置
5 :水源
6 :集水機構
【要約】
【課題】
新たな集水システム及び集水方法を提供することである。
【解決手段】
水源と、所定の周波数の音波を送信可能な音波送信機と、壁面の少なくとも一部に、前記音波を伝搬可能な壁面を備えた構造体とを備える集水システムであって、前記構造体が水源の上方に設置され、前記音波送信機が、前記構造体の内部に前記音波を送信可能に設置された、集水システム。
【選択図】
図1