(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】バルクフィーダ
(51)【国際特許分類】
H05K 13/02 20060101AFI20240416BHJP
B65G 47/14 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
H05K13/02 J
B65G47/14 101Z
(21)【出願番号】P 2023523871
(86)(22)【出願日】2021-05-27
(86)【国際出願番号】 JP2021020246
(87)【国際公開番号】W WO2022249405
(87)【国際公開日】2022-12-01
【審査請求日】2023-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤本 智也
(72)【発明者】
【氏名】小谷 一也
(72)【発明者】
【氏名】小野 恵市
【審査官】福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/095218(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/105591(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/072314(WO,A1)
【文献】実開平3-49222(JP,U)
【文献】特開2007-8596(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00-13/08
B65G 47/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィーダ本体部と、
前記フィーダ本体部に対して振動可能に設けられ、ケースから排出された複数の部品である供給部品が搬送される搬送路を備える軌道部材と、
前記軌道部材を加振して前記搬送路上の前記供給部品を部品装着機が採取可能な供給領域に搬送する加振装置と、
前記供給領域に搬送された前記供給部品のうちの一つの部品が収容されるべきキャビティを前記供給領域に複数備えるキャビティユニットと、
を具備し、
前記キャビティユニットの前記複数のキャビティの各々は、
前記供給部品のうちの一つの部品が正規の姿勢で収容されるときに当該部品を支持する支持部と、
前記支持部よりも深く形成される凹部であって前記供給部品のうちの複数の部品である対象部品が正規の姿勢と異なる姿勢で収容されるときに前記対象部品を落ち込ませて前記対象部品の姿勢を変更する逃し部と、
を備えるバルクフィーダ。
【請求項2】
前記支持部は、前記供給部品のうちの一つの部品が正規の姿勢で収容されるときに当該部品と面接触可能な水平面を備える請求項1に記載のバルクフィーダ。
【請求項3】
前記水平面は、前記キャビティが前記逃し部を備えない場合に前記対象部品が正規の姿勢と異なる姿勢で収容されるときに前記キャビティの底面と面接触可能な前記対象部品の部位の面積の半分よりも小さくなるように、当該部位と面接触可能な前記水平面の領域の面積が設定されている請求項2に記載のバルクフィーダ。
【請求項4】
前記逃し部は、前記水平面に対して傾斜している傾斜面を備える請求項2または請求項3に記載のバルクフィーダ。
【請求項5】
前記逃し部は、複数の前記傾斜面を備え、
複数の前記傾斜面のうちの少なくとも一部は、前記水平面に直交する鉛直方向に対して前記対象部品を傾斜させる方向が互いに異なる請求項4に記載のバルクフィーダ。
【請求項6】
前記支持部は、二つの前記水平面を備え、
二つの前記水平面は、鉛直方向視において長方形状の前記キャビティの対角線上に配置されている請求項2~請求項5のいずれか一項に記載のバルクフィーダ。
【請求項7】
前記支持部は、一つの前記水平面を備え、
一つの前記水平面は、鉛直方向視において長方形状の前記キャビティの中央部に配置されている請求項2~請求項5のいずれか一項に記載のバルクフィーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、バルクフィーダに関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
バルクフィーダは、搬送路を備える軌道部材を加振装置によって加振して、搬送路上の供給部品を部品装着機が採取可能な供給領域に搬送する。特許文献1に記載の発明のように、供給領域に散在する供給部品を部品装着機に採取させるバルクフィーダが知られている。また、供給領域に搬送された供給部品のうちの一つの部品が収容されるべきキャビティを供給領域に複数備えるキャビティユニットを具備するバルクフィーダが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
キャビティユニットを具備するバルクフィーダでは、一つのキャビティに複数の部品が嵌まり込んだスタック状態が発生する可能性がある。スタック状態のキャビティの数が多くなるほど、供給部品を供給可能なキャビティの数が減少して基板製品の生産効率が低下する可能性がある。
【0005】
このような事情に鑑みて、本明細書は、一つのキャビティに複数の部品が嵌まり込んだスタック状態を解消可能なバルクフィーダを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、フィーダ本体部と、軌道部材と、加振装置と、キャビティユニットとを具備するバルクフィーダを開示する。前記軌道部材は、前記フィーダ本体部に対して振動可能に設けられ、ケースから排出された複数の部品である供給部品が搬送される搬送路を備える。前記加振装置は、前記軌道部材を加振して前記搬送路上の前記供給部品を部品装着機が採取可能な供給領域に搬送する。前記キャビティユニットは、前記供給領域に搬送された前記供給部品のうちの一つの部品が収容されるべきキャビティを前記供給領域に複数備える。前記キャビティユニットの前記複数のキャビティの各々は、支持部と、逃し部とを備える。前記支持部は、前記供給部品のうちの一つの部品が正規の姿勢で収容されるときに当該部品を支持する。前記逃し部は、前記支持部よりも深く形成される凹部であって前記供給部品のうちの複数の部品である対象部品が正規の姿勢と異なる姿勢で収容されるときに前記対象部品を落ち込ませて前記対象部品の姿勢を変更する。
【発明の効果】
【0007】
上記のバルクフィーダによれば、対象部品が正規の姿勢と異なる姿勢でキャビティに収容されるときに対象部品の姿勢が変更される。姿勢が変更された対象部品は、加振装置による軌道部材の加振によってキャビティから脱出し易くなる。これにより、一つのキャビティに複数の部品が嵌まり込んだスタック状態が解消される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】供給部品が供給されたキャビティユニットの一例を示す平面図である。
【
図5】一つのキャビティに二つの部品が嵌まり込んだスタック状態を示すキャビティの斜視図(透視図)である。
【
図6】本実施形態のキャビティの一例を示す斜視図(透視図)である。
【
図10】一つの部品が正規の姿勢で一つのキャビティに収容された状態を示す側面図である。
【
図11】二つの部品が正規の姿勢と異なる姿勢で一つのキャビティに収容された状態を示す側面図である。
【
図12】変形形態のキャビティの一例を示す斜視図(透視図)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書では、複数の形態が図面に基づいて説明されている。なお、図面は、各形態について共通する箇所には共通の符号が付されており、本明細書では、重複する説明が省略されている。また、一の形態において記述されている事項は、他の形態においても採用することができる。
【0010】
1.実施形態
1-1.部品装着機10の構成例
部品装着機10は、基板90に複数の部品91を装着する。
図1に示すように、部品装着機10は、基板搬送装置11、部品供給装置12、部品移載装置13、部品カメラ14、基板カメラ15および制御装置20を備えている。
【0011】
基板搬送装置11は、例えば、ベルトコンベアなどによって構成され、基板90を搬送方向(X軸方向)に搬送する。基板90は、回路基板であり、電子回路、電気回路、磁気回路などが形成される。基板搬送装置11は、部品装着機10の機内に基板90を搬入し、機内の所定位置に基板90を位置決めする。基板搬送装置11は、部品装着機10による複数の部品91の装着処理が終了した後に、基板90を部品装着機10の機外に搬出する。
【0012】
部品供給装置12は、基板90に装着される複数の部品91を供給する。部品供給装置12は、基板90の搬送方向(X軸方向)に沿って設けられる複数のフィーダ12bを備えている。複数のフィーダ12bの各々は、スロット12aに着脱可能に取り付けられている。本実施形態のフィーダ12bは、テープフィーダおよびバルクフィーダ30のうちの少なくともバルクフィーダ30が用いられる。テープフィーダは、複数の部品91が収納されているキャリアテープをピッチ送りして、供給位置において部品91を採取可能に供給する。バルクフィーダ30は、複数の部品91をバルク状態(複数の部品91の姿勢が不規則な状態)で収容するケース32から排出された複数の部品91である供給部品91s(ケース32に収容されている複数の部品91の一部)を採取可能に供給する。
【0013】
部品移載装置13は、ヘッド駆動装置13a、移動台13b、装着ヘッド13cおよび保持部材13dを備えている。ヘッド駆動装置13aは、直動機構によって移動台13bを、X軸方向およびY軸方向(水平面においてX軸方向と直交する方向)に移動可能に構成されている。移動台13bには、クランプ部材によって装着ヘッド13cが着脱可能(交換可能)に設けられている。装着ヘッド13cは、少なくとも一つの保持部材13dを用いて、部品供給装置12によって供給される部品91を採取し保持して、基板搬送装置11によって位置決めされた基板90に部品91を装着する。保持部材13dは、例えば、吸着ノズル、チャックなどを用いることができる。
【0014】
部品カメラ14および基板カメラ15は、公知の撮像装置を用いることができる。部品カメラ14は、光軸が鉛直方向(X軸方向およびY軸方向と直交するZ軸方向)の上向きになるように、部品装着機10の基台に固定されている。部品カメラ14は、保持部材13dに保持されている部品91を下方から撮像することができる。基板カメラ15は、光軸が鉛直方向(Z軸方向)の下向きになるように、部品移載装置13の移動台13bに設けられている。基板カメラ15は、基板90を上方から撮像することができる。部品カメラ14および基板カメラ15は、制御装置20から送出される制御信号に基づいて撮像を行う。部品カメラ14および基板カメラ15によって撮像された画像の画像データは、制御装置20に送信される。
【0015】
制御装置20は、公知の演算装置および記憶装置を備えており、制御回路が構成されている。制御装置20には、部品装着機10に設けられる各種センサから出力される情報、画像データなどが入力される。制御装置20は、制御プログラムおよび予め設定されている所定の装着条件などに基づいて、各装置に対して制御信号を送出する。
【0016】
例えば、制御装置20は、基板搬送装置11によって位置決めされた基板90を基板カメラ15に撮像させる。制御装置20は、基板カメラ15によって撮像された画像を画像処理して、基板90の位置決め状態を認識する。また、制御装置20は、部品供給装置12によって供給された部品91を保持部材13dに採取させ保持させて、保持部材13dに保持されている部品91を部品カメラ14に撮像させる。制御装置20は、部品カメラ14によって撮像された画像を画像処理して、部品91の保持姿勢を認識する。
【0017】
制御装置20は、制御プログラムなどによって予め設定される装着予定位置の上方に向かって、保持部材13dを移動させる。また、制御装置20は、基板90の位置決め状態、部品91の保持姿勢などに基づいて、装着予定位置を補正して、実際に部品91を装着する装着位置を設定する。装着予定位置および装着位置は、位置(X軸座標およびY軸座標)の他に回転角度を含む。
【0018】
制御装置20は、装着位置に合わせて、保持部材13dの目標位置(X軸座標およびY軸座標)および回転角度を補正する。制御装置20は、補正された目標位置において補正された回転角度で保持部材13dを下降させて、基板90に部品91を装着する。制御装置20は、上記のピックアンドプレースサイクルを繰り返すことによって、基板90に複数の部品91を装着する装着処理を実行する。
【0019】
1-2.バルクフィーダ30の構成例
バルクフィーダ30は、ケース32から排出された複数の部品91である供給部品91sを部品装着機10に供給する。
図2に示すように、本実施形態のバルクフィーダ30は、フィーダ本体部31と、ケース32と、排出装置33と、カバー34と、軌道部材40と、キャビティユニット50と、加振装置60と、フィーダ制御装置70とを具備している。フィーダ本体部31は、扁平な箱状に形成されている。フィーダ本体部31は、部品供給装置12のスロット12aに着脱可能に装備される。
【0020】
フィーダ本体部31は、供給部品91sの搬送方向の先端側に、コネクタ31aおよび複数(同図では、2つ)のピン31b,31bを備えている。コネクタ31aは、バルクフィーダ30がスロット12aに装備されたときに、制御装置20と通信可能に設けられる。また、バルクフィーダ30は、コネクタ31aを介して給電される。複数(2つ)のピン31b,31bは、フィーダ本体部31がスロット12aに装備される際の位置決めに用いられる。
【0021】
フィーダ本体部31には、複数の部品91をバルク状態で収容するケース32が着脱可能に取り付けられている。ケース32は、収容している複数の部品91を順に排出することができる。本実施形態のケース32は、バルクフィーダ30の外部装置である。例えば、作業者は、複数のケース32の中から装着処理に使用される部品91を収容する一つのケース32を選択して、選択したケース32をフィーダ本体部31に取り付ける。
【0022】
排出装置33は、ケース32から排出させる部品91の数量を調整する。排出装置33は、
図3に示す軌道部材40の受容領域Ar0に供給部品91sを排出する。供給部品91sは、ケース32から排出されて部品装着機10に供給される複数の部品91の一部である。カバー34は、供給部品91sの搬送方向の先端側上部に着脱可能に取り付けられる。カバー34は、
図3に示す軌道部材40の搬送路Rd0を搬送する供給部品91sが外部へ飛散することを抑制する。
【0023】
軌道部材40は、ケース32から排出された複数の部品91である供給部品91sが搬送される搬送路Rd0を備える。軌道部材40は、供給部品91sの搬送方向の先端側上部に設けられる。
図3に示すように、軌道部材40は、供給部品91sの搬送方向(
図3の紙面左右方向)に延伸するように形成されている。搬送路Rd0の幅方向(
図3の紙面上下方向)の両縁には、上方に突出する一対の側壁41,41が形成されている。一対の側壁41,41は、軌道部材40の先端部42と共に搬送路Rd0の周縁を囲い、搬送路Rd0を搬送する供給部品91sの漏出を抑制する。
【0024】
図3に示すように、軌道部材40は、受容領域Ar0、供給領域As0および搬送路Rd0を備えている。受容領域Ar0は、バルク状態の供給部品91sを受容する領域である。本実施形態の受容領域Ar0は、ケース32の排出口の下方に設けられている。供給領域As0は、部品装着機10が供給部品91sを採取可能な領域である。具体的には、供給領域As0は、装着ヘッド13cに支持された保持部材13dによって供給部品91sを採取可能な領域であり、装着ヘッド13cの可動範囲に含まれる。
【0025】
搬送路Rd0は、受容領域Ar0と供給領域As0との間に設けられ、受容領域Ar0と供給領域As0との間で供給部品91sが搬送される。本実施形態の搬送路Rd0は、底面が水平な溝形状に形成されている。搬送路Rd0の側面は、一対の側壁41,41によって形成される。搬送路Rd0の上方の開口部は、カバー34によって概ね閉塞されている。軌道部材40は、フィーダ本体部31に対して鉛直方向(Z軸方向)に僅かに変位可能(即ち、振動可能)に支持される。
【0026】
キャビティユニット50は、供給領域As0に搬送された供給部品91sのうちの一つの部品91が収容されるべきキャビティ51を供給領域As0に複数(本実施形態では、120個)備える。つまり、複数(120個)のキャビティ51の各々は、一つの部品91を収容することが予定されている。具体的には、複数(120個)のキャビティ51は、供給領域As0においてマトリックス状に配列されている。例えば、キャビティユニット50は、供給部品91sの搬送方向に10個、搬送路Rd0の幅方向に12個それぞれ配列された合計120個のキャビティ51を備えている。
【0027】
また、複数(120個)のキャビティ51の各々は、搬送路Rd0の上方に開口しており、例えば、四角柱形状の部品91の高さ方向(
図5等に示す矢印H方向)が鉛直方向(Z軸方向)と一致する姿勢(後述する正規の姿勢)で部品91を収容することが予定されている。キャビティ51の開口部は、鉛直方向(Z軸方向)視における部品91の外形形状よりも若干大きく形成されている。キャビティ51の深さは、部品91の種類(形状、質量など)に応じて適宜設定される。また、キャビティ51の形状、必要数、搬送性に影響し得る密集度を加味して、キャビティ51の数が適宜設定される。
【0028】
また、キャビティ51の数は、一回のピックアンドプレースサイクルにおいて採取される部品91の最大数よりも多く設定されると良い。なお、上記の最大数は、装着ヘッド13cが支持する保持部材13dの数に相当する。例えば、装着ヘッド13cが24本の吸着ノズルを支持する場合、キャビティ51の数は、少なくとも24個より多くなるように設定されると良い。
【0029】
軌道部材40は、フィーダ本体部31に対して振動可能に設けられる。加振装置60は、軌道部材40を加振して搬送路Rd0上の供給部品91sを部品装着機10が採取可能な供給領域As0に搬送する。具体的には、加振装置60は、供給部品91sの搬送方向に直交する水平方向において、軌道部材40に時計回りまたは反時計回りの楕円運動をさせる。このとき、加振装置60は、搬送路Rd0上の供給部品91sに対して、供給方向先端側(
図3の紙面右側)かつ上方に向かう外力または供給方向基端側(
図3の紙面左側)かつ上方に向かう外力が加えられるように軌道部材40を加振する。
【0030】
加振装置60は、例えば、フィーダ本体部31と軌道部材40を連結する支持部材と、支持部材に設けられる圧電素子と、圧電素子に給電する駆動部とを備えている。駆動部は、フィーダ制御装置70の指令に基づいて、圧電素子に供給する交流電力の印加電圧および周波数を変動させる。これにより、軌道部材40に付与される振動の振幅および周波数が調整され、軌道部材40の楕円運動の回転方向が規定される。軌道部材40の振動の振幅、周波数、振動による楕円運動の回転方向が変動すると、搬送される供給部品91sの搬送速度、分散度合い、搬送方向などが変動する。
【0031】
ここで、搬送路Rd0上の供給部品91sを供給領域As0に向かって搬送する際の加振装置60の動作を送り動作とする。また、搬送路Rd0上の供給部品91sを受容領域Ar0に向かって搬送する際の加振装置60の動作を戻し動作とする。加振装置60の送り動作および戻し動作の切り替えによって、軌道部材40の楕円運動の方向が切り替わる。加振装置60は、供給部品91sをキャビティユニット50の少なくとも一部のキャビティ51に収容させる収容装置として機能する。
【0032】
フィーダ制御装置70は、公知の演算装置および記憶装置を備えており、制御回路が構成されている。フィーダ制御装置70は、バルクフィーダ30がスロット12aに装備された状態において、コネクタ31aを介して給電され、部品装着機10の制御装置20と通信可能な状態になる。フィーダ制御装置70は、供給領域As0に供給部品91sを供給する供給処理において、加振装置60の送り動作および戻し動作を実行する。
【0033】
具体的には、フィーダ制御装置70は、送り動作を実行する場合に、加振装置60の駆動部に対して指令を送出する。これにより、駆動部が圧電素子に所定の電力を供給し、支持部材を介して軌道部材40が加振される。その結果、搬送路Rd0上の供給部品91sは、搬送方向先端側に移動するように外力を受けて搬送される。
【0034】
また、フィーダ制御装置70は、加振装置60の送り動作および戻し動作を組み合わせることにより種々の搬送態様を実現する。例えば、フィーダ制御装置70は、搬送路Rd0上の供給部品91sの少なくとも一部が供給領域As0に到達した後に、
図3に示す供給部品91sが軌道部材40の先端部42の付近に到達するまで送り動作を継続する。このとき、フィーダ制御装置70は、戻し動作および送り動作を繰り返し実行して、軌道部材40が振動した状態で供給領域As0に供給部品91sを滞留させるようにしても良い。
【0035】
その後に、フィーダ制御装置70は、搬送路Rd0上の供給部品91sの少なくとも一部が複数のキャビティ51に収容された状態で戻し動作を実行して、残りの供給部品91sを供給領域As0から受容領域Ar0の側に退避させる。これにより、キャビティユニット50の複数(120個)のキャビティ51のうちの所定数以上のキャビティ51に部品91が適正に収容される。フィーダ制御装置70は、送り動作および戻し動作の実行時間、収容工程における滞留の動作時間、繰り返し動作の実行回数を適宜設定することができる。また、フィーダ制御装置70は、ケース32に収容されている部品91の種類に応じて、加振装置60が軌道部材40を加振する際の振動の振幅、周波数などを調整しても良い。
【0036】
1-3.キャビティ51の構成例
図4は、供給部品91sが供給されたキャビティユニット50の一例を示している。同図は、供給部品91sの搬送方向に10個、搬送路Rd0の幅方向に12個それぞれ配列されている合計120個のキャビティ51における供給部品91sの収容状態の一例を示している。例えば、領域AR1のキャビティ51に収容されている部品91のように、正規の姿勢(例えば、四角柱形状の部品91の高さ方向(
図5等に示す矢印H方向)が鉛直方向(Z軸方向)と一致する姿勢)でキャビティ51に収容されている部品91が存在する。
【0037】
また、部品91が収容されていないキャビティ51が存在する。さらに、収容されている部品91の上に他の部品91が堆積している(重なっている)キャビティ51が存在する。これらのキャビティ51では、部品装着機10が供給部品91sを採取することができないが、加振装置60によって軌道部材40が加振され供給部品91sの供給が繰り返されるうちに解消される可能性がある。
【0038】
しかしながら、領域AR21~領域AR23のキャビティ51に収容されている部品91のように、一つのキャビティ51に複数(同図では、二つ)の部品91が嵌まり込んだスタック状態が発生すると、スタック状態を解消することは困難である。具体的には、
図5に示すように、正規の姿勢と異なる姿勢で一つのキャビティ51に収容されている複数(二つ)の部品91は、加振装置60によって軌道部材40が加振されても、互いに衝突し合ってキャビティ51から脱出できなくなる。同図に示すように、正規の姿勢と異なる姿勢は、例えば、四角柱形状の部品91の幅方向(
図5等に示す矢印B方向)が鉛直方向(Z軸方向)と一致する姿勢である。
【0039】
スタック状態のキャビティ51の数が多くなるほど、供給部品91sを供給可能なキャビティ51の数が減少して基板製品の生産効率が低下する可能性がある。そこで、
図6~
図11に示すように、キャビティユニット50の複数のキャビティ51の各々は、支持部52と、逃し部53とを備えている。
【0040】
支持部52は、供給部品91sのうちの一つの部品91が正規の姿勢で収容されるときに当該部品91を支持する。支持部52は、正規の姿勢で収容される部品91を支持することができれば良く、種々の形態をとり得る。既述したように、正規の姿勢は、例えば、四角柱形状の部品91の高さ方向(矢印H方向)が鉛直方向(Z軸方向)と一致する姿勢である。部品91の高さ方向(矢印H方向)は、四角柱形状の部品91が基板90に正常に装着されたときに、鉛直方向(Z軸方向)に延びる辺の方向に相当する。
図10に示すように、例えば、支持部52は、供給部品91sのうちの一つの部品91が正規の姿勢で収容されるときに当該部品91と面接触可能な水平面52aを備えることができる。
【0041】
図6に示すように、本実施形態の支持部52は、水平面52aと、台座部52bとを備えており、水平面52aは、台座部52bの上面に設けられている。本実施形態の台座部52bは、四角柱形状に形成されているが、台座部52bの形状は、四角柱形状に限定されない。また、台座部52bは、省略することもできる。この場合、水平面52aは、キャビティ51の壁面に固定される。さらに、支持部52は、複数のピン部材であっても良い。複数のピン部材は、水平面52aが設けられている高さ位置に相当する高さに、各々の先端部が位置するように設けられると良い。この場合も、支持部52は、正規の姿勢で収容された部品91を支持することができる。
【0042】
逃し部53は、支持部52よりも深く形成される凹部であって供給部品91sのうちの複数の部品91である対象部品91tが正規の姿勢と異なる姿勢で収容されるときに対象部品91tを落ち込ませて対象部品91tの姿勢を変更する。既述したように、正規の姿勢と異なる姿勢は、例えば、
図5に示すように、四角柱形状の部品91の幅方向(矢印B方向)が鉛直方向(Z軸方向)と一致する姿勢である。部品91の幅方向(矢印B方向)は、四角柱形状の部品91が基板90に正常に装着されたときに、水平方向に延びる辺のうちのいずれかの辺(同図では、長手方向に延びる辺)の方向に相当する。
図11に示すように、
図5に示す部品91の姿勢から姿勢が変更された対象部品91tは、加振装置60による軌道部材40の加振によってキャビティ51から脱出し易くなる。これにより、一つのキャビティ51に複数(この場合、二つ)の部品91が嵌まり込んだスタック状態が解消される。
【0043】
逃し部53は、支持部52よりも深く形成される凹部であって対象部品91tが正規の姿勢と異なる姿勢で収容されるときに対象部品91tを落ち込ませて対象部品91tの姿勢を変更することができれば良く、種々の形態をとり得る。
図6に示すように、本実施形態の逃し部53は、水平面52aに対して傾斜している傾斜面53aを備えているが、逃し部53は、傾斜面53aを備えない形態であっても良い。本実施形態の傾斜面53aは、逃し部53の凹部を形成する基部53bの一面に設けられている。同図に示すように、本実施形態の基部53bは、三角柱形状に形成されているが、基部53bの形状は、三角柱形状に限定されない。また、基部53bは、省略することもできる。この場合、傾斜面53aは、水平面52aの端部およびキャビティ51の壁面に固定される。
【0044】
また、水平面52aおよび傾斜面53aは、射出成形などによってキャビティ51と共に一体に形成することもできる。さらに、一つのキャビティ51における支持部52と逃し部53の占有割合、支持部52および逃し部53の配置、水平面52aに対する傾斜面53aの傾斜角度などは、シミュレーション、実機による検証などによって予め設定することができる。上記事項は、対象部品91tが加振装置60による軌道部材40の加振によってキャビティ51から脱出可能に設定される。
【0045】
例えば、
図6に示す水平面52aの面積が傾斜面53aの側に大きくなるほど、傾斜面53aの傾斜角度も大きくなり、逃し部53における対象部品91tの落ち込みも大きくなる。このように、傾斜面53aの傾斜角度は、水平面52aの面積によって規定することもできる。また、
図5に示すように、キャビティ51が逃し部53を備えない場合に対象部品91tが正規の姿勢と異なる姿勢で収容されるときにキャビティ51の底面51bと面接触可能な対象部品91tの部位91pの面積を面積S2とする。本実施形態では、正規の姿勢と異なる姿勢は、四角柱形状の部品91の幅方向(矢印B方向)が鉛直方向(Z軸方向)と一致する姿勢であり、対象部品91tの部位91pは、部品91の側壁面に相当する。
【0046】
さらに、
図6に示すように、当該部位91pと面接触可能な水平面52aの領域52a1の面積を面積S1とする。面積S1が面積S2の半分以上の場合、対象部品91tの部位91pと、水平面52aの領域52a1とが面接触した状態が維持され易く、対象部品91tは、逃し部53に落ち込み難くなる。そこで、水平面52aは、面積S2の半分よりも小さくなるように、面積S1が設定されると良い。これにより、対象部品91tは、面積S1が面積S2の半分以上の場合と比べて、逃し部53に落ち込み易くなる。
【0047】
また、
図6に示すように、本実施形態の逃し部53は、複数(二つ)の傾斜面53aを備えている。複数(二つ)の傾斜面53aが、水平面52aに直交する鉛直方向(Z軸方向)に対して同じ方向に対象部品91tを傾斜させる場合、対象部品91tは、加振装置60によって軌道部材40が加振されても、互いに衝突し合ってキャビティ51から脱出し難くなる可能性がある。
【0048】
そこで、
図6および
図11に示すように、複数(二つ)の傾斜面53aは、水平面52aに直交する鉛直方向(Z軸方向)に対して対象部品91tを傾斜させる方向が互いに異なると良い。これにより、対象部品91tの間の干渉を低減することができ、対象部品91tは、キャビティ51からの脱出が容易になる。なお、
図11に示す対象部品91tは、傾斜面53aと、キャビティ51の壁面とによって支持されているが、姿勢が変更されることによってキャビティ51から脱出しても良い。
【0049】
また、一つのキャビティ51に対象部品91tが三つ以上収容される場合、鉛直方向(Z軸方向)に対して対象部品91tを傾斜させる方向は、隣接する対象部品91tの傾斜方向が異なるように設定されると良い。例えば、一つのキャビティ51に複数(三つ)の対象部品91tが収容される場合を想定する。複数(三つ)の対象部品91tのうちの一の対象部品91tは、
図11の紙面右側に傾斜され、当該対象部品91tと隣接する他の一の対象部品91tは、紙面左側に傾斜され、残りの一の対象部品91tは、紙面右側に傾斜されるようにすると良い。この場合、複数(三つ)の傾斜面53aのうちの二つの傾斜面53aは、鉛直方向(Z軸方向)に対して対象部品91tを傾斜させる方向が互いに異なる。
【0050】
このように、複数の傾斜面53aのうちの少なくとも一部は、水平面52aに直交する鉛直方向(Z軸方向)に対して対象部品91tを傾斜させる方向が互いに異なると良い。これにより、対象部品91tの間の干渉を低減することができ、対象部品91tは、キャビティ51からの脱出が容易になる。
【0051】
また、対象部品91tを傾斜させる方向は、キャビティ51における水平面52aの配置によって規定することもできる。
図6に示すように、本実施形態では、支持部52は、二つの水平面52aを備える。さらに、
図7に示すように、二つの水平面52aは、鉛直方向(Z軸方向)視において長方形状のキャビティ51の対角線Dg0上に配置されている。この場合、二つの逃し部53は、キャビティ51の他の対角線上に配置される。よって、
図11に示すように、複数(二つ)の対象部品91tのうちの一の対象部品91tは、紙面右側に傾斜され、残りの一の対象部品91tは、紙面左側に傾斜される。つまり、鉛直方向(Z軸方向)に対して対象部品91tを傾斜させる方向が互いに異なる。
【0052】
なお、二つの水平面52aは、鉛直方向(Z軸方向)視において長方形状のキャビティ51の対角線Dg0上から外れた位置に配置されても良い。また、二つの水平面52aのうちの少なくとも一つは、キャビティ51の壁面から離間されても良い。さらに、二つの水平面52aのうちの少なくとも一つは、対象部品91tが正規の姿勢と異なる姿勢で収容されるときに、水平面52aの中心と、部位91pの中心とが異なるように配置されていれば良い。例えば、二つの水平面52aのうちの少なくとも一つは、水平面52aの中心と、キャビティ51のいずれかの壁面との間の距離が、部位91pの中心から当該壁面までの距離よりも短くなるように配置することができる。
【0053】
1-4.キャビティ51の変形形態
既述したように、支持部52および逃し部53は、種々の形態をとり得る。
図12~
図15に示すように、本変形形態では、キャビティユニット50の複数のキャビティ51の各々は、一つの支持部52を備え、一つの支持部52は、一つの水平面52aを備える。また、一つの水平面52aは、鉛直方向(Z軸方向)視において長方形状のキャビティ51の中央部51cに配置されている。
【0054】
実施形態と同様に、一つのキャビティ51は、正規の姿勢(例えば、四角柱形状の部品91の高さ方向(矢印H方向)が鉛直方向(Z軸方向)と一致する姿勢)で一つの部品91を収容可能である。また、一つのキャビティ51は、正規の姿勢と異なる姿勢(例えば、四角柱形状の部品91の幅方向(矢印B方向)が鉛直方向(Z軸方向)と一致する姿勢)で複数(二つ)の部品91を収容可能である。実施形態と同様に、一つの水平面52aは、面積S2の半分よりも小さくなるように、面積S1が設定されても良い。
図12および
図13に示すように、一つの水平面52aの面積は、面積S1の二倍に設定することができる。
【0055】
図13に示すように、本変形形態では、キャビティユニット50の複数のキャビティ51の各々は、複数(二つ)の逃し部53を備える。また、複数(二つ)の逃し部53は、一つの部品91が正規の姿勢で収容されるときの当該部品91の幅方向(矢印B方向)の両端側に設けられている。さらに、複数(二つ)の逃し部53の各々は、傾斜面53aを備えることができる。
【0056】
また、複数(二つ)の傾斜面53aは、水平面52aに直交する鉛直方向(Z軸方向)に対して対象部品91tを傾斜させる方向が互いに異なる。具体的には、複数(二つ)の対象部品91tのうちの一の対象部品91tは、
図13の紙面右側に傾斜され、残りの一の対象部品91tは、紙面左側に傾斜される。なお、支持部52と接触しているキャビティ51の壁面と支持部52との間に逃し部53を設けることもできる。この場合、支持部52の周辺領域に複数(四つ)の逃し部53が設けられ、複数(四つ)の傾斜面53aを設けることもできる。
【0057】
2.実施形態および変形形態の効果の一例
バルクフィーダ30によれば、対象部品91tが正規の姿勢と異なる姿勢でキャビティ51に収容されるときに対象部品91tの姿勢が変更される。姿勢が変更された対象部品91tは、加振装置60による軌道部材40の加振によってキャビティ51から脱出し易くなる。これにより、一つのキャビティ51に複数の部品91が嵌まり込んだスタック状態が解消される。
【符号の説明】
【0058】
10:部品装着機、30:バルクフィーダ、31:フィーダ本体部、
32:ケース、40:軌道部材、50:キャビティユニット、
51:キャビティ、51b:底面、51c:中央部、52:支持部、
52a:水平面、52a1:領域、53:逃し部、53a:傾斜面、
60:加振装置、91:部品、91p:部位、91s:供給部品、
91t:対象部品、As0:供給領域、Dg0:対角線、
Rd0:搬送路、S1,S2:面積。