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特許7473749リラックス感向上剤中における補助成分の使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】リラックス感向上剤中における補助成分の使用方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/175 20160101AFI20240416BHJP
   A23L 29/231 20160101ALI20240416BHJP
   A23L 29/00 20160101ALI20240416BHJP
   A61K 31/19 20060101ALI20240416BHJP
   A61K 31/197 20060101ALI20240416BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
A23L33/175
A23L29/231
A23L29/00
A61K31/19
A61K31/197
A61P25/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023553146
(86)(22)【出願日】2022-10-25
(86)【国際出願番号】 JP2022039803
(87)【国際公開番号】W WO2023074709
(87)【国際公開日】2023-05-04
【審査請求日】2023-08-31
(31)【優先権主張番号】P 2021174129
(32)【優先日】2021-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521467869
【氏名又は名称】シード医療製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 梓
(72)【発明者】
【氏名】堤 巌
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第113519732(CN,A)
【文献】特開2008-113565(JP,A)
【文献】特開2008-167747(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112772760(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 33/175
A23L 29/231
A23L 29/00
A61K 31/19
A61K 31/197
A61P 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.03~12.5重量部のミネラルとしてのカルシウム及びマグネシウムと、0.05~8.5重量部のペクチンと、0.1~20.5重量部のクエン酸とよりなる組成物の、1.3~35.5重量部のγ-アミノ酪酸を含む100重量部のリラックス感向上剤中における前記γ-アミノ酪酸が有する緊張感緩和作用の助長のための補助成分としての使用方法。
【請求項2】
前記ペクチンは、りんご由来のペクチンであることを特徴とする請求項1に記載の使用方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リラックス感向上剤、同リラックス感向上剤を含む機能性食品及び医薬部外品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、γ-アミノ酪酸は、哺乳動物の中枢神経系において抑制性伝達物質として作用することが知られている。
【0003】
またγ-アミノ酪酸は、野菜や果物、乳酸発酵食品にも含まれており、日頃の食生活により摂取されている物質でもある。そのため、γ-アミノ酪酸は、経口摂取によって緊張感を緩和する機能性食品や医薬部外品(以下、経口摂取品ともいう。)に配合されて利用されている。
【0004】
具体的な一例としては、アスパラガスから得られる組成物を含有する培地に、乳酸菌を接種し、培養して得られた培養物から得られたγ-アミノ酪酸を含有する食品が提案されている(例えば、特許文献1。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-289108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで上記従来の食品によれば、同食品中に含まれるγ-アミノ酪酸によってある程度の緊張感緩和作用に由来する効果(緊張感緩和に伴う効果)が期待されるものと思われるが、ドーズレスポンスの面において未だ十分とは言い難いものであった。
【0007】
すなわち、従来のγ-アミノ酪酸含有の経口摂取品は、経口摂取によりγ-アミノ酪酸が体内に取り込まれても、十分な緊張感緩和に伴う効果を享受することができなかった。
【0008】
この点、本発明者らは長年に亘る研究により、γ-アミノ酪酸が有する緊張感緩和作用を助長して、より顕著な緊張感緩和に伴う効果を発揮し得るような補助組成物、しかも食品素材にて構成された補助組成物を見出して、γ-アミノ酪酸と共に配合した製剤を完成するに至った。
【0009】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであって、γ-アミノ酪酸が有する緊張感緩和作用を助長して、より顕著な緊張感緩和に伴う効果を発揮し得るような補助組成物の使用方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記従来の課題を解決するために、本発明に係る使用方法では、(1)0.03~12.5重量部のミネラルとしてのカルシウム及びマグネシウムと、0.05~8.5重量部のペクチンと、0.1~20.5重量部のクエン酸とよりなる組成物の、1.3~35.5重量部のγ-アミノ酪酸を含む100重量部のリラックス感向上剤中における前記γ-アミノ酪酸が有する緊張感緩和作用の助長のための補助成分としての使用方法とした。
【0012】
また、本発明に係る使用方法では、以下の点にも特徴を有する。
(2前記ペクチンは、りんご由来のペクチンであること
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る使用方法によれば、0.03~12.5重量部のミネラルとしてのカルシウム及びマグネシウムと、0.05~8.5重量部のペクチンと、0.1~20.5重量部のクエン酸とよりなる組成物の、1.3~35.5重量部のγ-アミノ酪酸を含む100重量部のリラックス感向上剤中における前記γ-アミノ酪酸が有する緊張感緩和作用の助長のための補助成分としての使用方法としたため、γ-アミノ酪酸が有する緊張感緩和作用を助長して、より顕著な緊張感緩和に伴う効果を発揮し得るような補助組成物の使用方法を提供することができる。
【0016】
また、前記γ-アミノ酪酸は、100重量部の前記リラックス感向上剤中1.3~35.5重量部の割合で含まれることとすれば、γ-アミノ酪酸に由来する緊張感緩和に伴う効果をより堅実に享受することができる。
【0017】
また、前記ミネラルは、マンガン、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウムから選ばれる少なくともいずれか2以上の組み合わせよりなることとすれば、これらをいずれか1つ、或いはこれら以外のミネラルのみを補助組成物の成分として配合した場合と比較して、緊張感緩和作用をより顕著に助長することができる。
【0018】
また、前記ミネラルは、100重量部の前記リラックス感向上剤中に0.03~12.5重量部の割合で含まれることとすれば、緊張感緩和作用をより堅実に助長することができる。
【0019】
また、前記ペクチンは、りんご由来のペクチンであることとすれば、これ以外のペクチンのみを補助組成物の成分として配合した場合と比較して、緊張感緩和作用をより顕著に助長することができる。
【0020】
また、前記ペクチンは、100重量部の前記リラックス感向上剤中に0.05~8.5重量部の割合で含まれることとすれば、緊張感緩和作用をより堅実に助長することができる。
【0021】
また、前記有機酸は、クエン酸、乳酸、L-酒石酸、DL-リンゴ酸から選ばれる少なくともいずれか1つであることとすれば、これら以外の有機酸のみを補助組成物の成分として配合した場合と比較して、緊張感緩和作用をより顕著に助長することができる。
【0022】
また、前記有機酸は、100重量部の前記リラックス感向上剤中に0.1~20.5重量部の割合で含まれることとすれば、緊張感緩和作用をより堅実に助長することができる。
【0023】
また、剤形を粉末、細粒、顆粒、ソフトカプセル、ハードカプセル、ゼリー状、グミ状、液体又は錠剤としたこととすれば、若年層から年配者まで、年齢に適した剤形でリラックス感向上剤の摂取を行うことができる。
【0024】
また、本発明に係る機能性食品は上述のリラックス感向上剤を含むこととしたため、機能性食品として取り扱いが可能なリラックス感向上剤含有製品を提供することができる。
また、日々の食事を通してγ-アミノ酪酸に由来する緊張感緩和に伴う効果を十分に享受することができる。
【0025】
また、本発明に係る医薬部外品は上述のリラックス感向上剤を含むこととしたため、医薬部外品としての取り扱いが可能なリラックス感向上剤含有製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】リラックス感向上剤含有食品A1の緊張感緩和作用の助長効果の確認試験結果を示す説明図である。
図2】γ-アミノ酪酸の含有量を変化させた場合の緊張感緩和作用の助長効果の確認試験結果を示す説明図である。
図3】ミネラルの含有量を変化させた場合の緊張感緩和作用の助長効果の確認試験結果を示す説明図である。
図4】ペクチンの含有量を変化させた場合の緊張感緩和作用の助長効果の確認試験結果を示す説明図である。
図5】有機酸の含有量を変化させた場合の緊張感緩和作用の助長効果の確認試験結果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明はリラックス感向上剤に関し、特にγ-アミノ酪酸と、γ-アミノ酪酸が有する緊張感緩和作用を助長する補助組成物と、を含むリラックス感向上剤に関するものである。
【0028】
従来、γ-アミノ酪酸は、野菜、果物、乳酸発酵食品等に含まれていてるアミノ酸の一種として知られている。特に、γ-アミノ酪酸は、英語名(gamma-aminobutyric acid)の頭文字をとった略称GABAとして親しまれており、これを積極的に含有させた商品は機能性食品や医薬部外品として流通している。
【0029】
ところが、経口摂取によって消化管から血液中に取り込まれたγ-アミノ酪酸は、細胞実験などによって予想される程の十分な緊張感の緩和効果を発揮しない。
【0030】
本発明は係る着想と長年の生化学的研究による知見に基いて完成されたものであり、γ-アミノ酪酸と、γ-アミノ酪酸が有する緊張感緩和作用を助長する補助組成物と、を含むリラックス感向上剤であって、補助組成物は、ミネラルと、ペクチンと、有機酸とよりなる点を特徴としている。なお、上記着想に関する説明は本発明の理解に供すべく記載したものであって、本発明者らが現時点で想定する機序である。従って、必ずしも正しい機序であることを保証するものではなく、また本発明の特許性には何ら影響を与えるもので無いことに留意されたい。
【0031】
ここで緊張感緩和作用とは、副交感神経の働きが活発になることで生起する心身全体への影響のうち有益な効果を奏するものをいう。具体的には、脳波の一つであるα波の増加、過剰に収縮した血管の弛緩、エネルギー消費の増加等が挙げられる。
【0032】
これらの緊張感緩和作用によってもたらされる効果、すなわち緊張感緩和に伴う効果としては、例えば、緊張感の緩和そのものの他、円滑な睡眠への誘導、集中力の向上、血圧の低下、体臭や口臭の抑制、痩身などの効果が挙げられる。
【0033】
γ-アミノ酪酸の由来は特に限定されるものではないが、本実施形態では一例として米胚芽又は米糠由来のものを使用する。
【0034】
また、100重量部のリラックス感向上剤中に、γ-アミノ酪酸を1.3~35.5重量部の割合で含むことが望ましい。このような濃度でγ-アミノ酪酸を含有させることにより、γ-アミノ酪酸に由来する緊張感緩和に伴う効果をより堅実に享受することができる。
【0035】
さらに、γ-アミノ酪酸が有する緊張感緩和作用は、ミネラル、ペクチン、有機酸とよりなる補助組成物との併用によって助長することができる。
【0036】
ミネラルは、マンガン、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウムから選ばれた2種以上の組み合わせからなる。
【0037】
また、100重量部のリラックス感向上剤中に、ミネラルを0.03~12.5重量部の割合で含まれることが望ましい。このような濃度でミネラルを含有させることで、緊張感緩和作用をより堅実に助長することができる。
【0038】
本実施形態に係るリラックス感向上剤に使用するペクチンは、食品として一般に使用されるペクチンであれば良く、その分子量や由来は特に限定されるものではないが、中でもリンゴ由来のペクチンが好適である。
【0039】
また、100重量部のリラックス感向上剤中に、ペクチンを0.05~8.5重量部の割合で含まれることが望ましい。このような濃度でペクチンを含有させることで、緊張感緩和作用をより堅実に助長することができる。
【0040】
有機酸は、クエン酸、乳酸、L-酒石酸、DL-リンゴ酸から選ばれる少なくともいずれか1つ以上とする。
【0041】
また、100重量部のリラックス感向上剤中に、有機酸を0.05~8.5重量部の割合で含まれることが望ましい。このような濃度でペクチンを含有させることで、緊張感緩和作用をより堅実に助長することができる。
【0042】
以下、本実施形態に係るリラックス感向上剤を含む機能性食品について、実際の製造例や効果確認試験の結果を参照しながら更に説明する。
【0043】
〔1〕基本処方での効果確認試験
(1)リラックス感向上剤含有食品の製造
5重量部のγ-アミノ酪酸と、補助組成物としてのミネラルを構成する食品添加物用のカルシウム製剤(カルシウムとして0.5重量部)及び食品添加物用のマグネシウム製剤(マグネシウムとして0.5重量部)と、補助組成物としての0.5重量部のペクチンと、補助組成物としての有機酸である0.5重量部のクエン酸と、基材としての澱粉とを混合して混合粉体を調製し、これを細身のアルミパウチに個包装することで本実施形態に係るリラックス感向上剤含有食品A1とした。1包(1.5g)のリラックス感向上剤含有食品A1中に含まれるγ-アミノ酪酸は75mg、カルシウムは7.5mg、マグネシウムは7.5mg、ペクチンは7.5mg、クエン酸は7.5mgである。
【0044】
また比較のため、下記の比較用食品X1~X3も調製した。比較用食品X1~X3はリラックス感向上剤含有食品A1と同様の製造方法であるが、一部原料を欠いたものである。
【0045】
具体的には、比較用食品X1は、5重量部のγ-アミノ酪酸と、基材としての澱粉とで構成したものであり、リラックス感向上剤含有食品A1と比較すると補助組成物としてのミネラル(カルシウム及びマグネシウム)やペクチン、有機酸(クエン酸)を含有しない食品である。
【0046】
比較用食品X2は、5重量部のγ-アミノ酪酸と、補助組成物としてのミネラルを構成する食品添加物用のカルシウム製剤(カルシウムとして0.5重量部)及び食品添加物用のマグネシウム製剤(マグネシウムとして0.5重量部)と、基材としての澱粉とで構成したものであり、リラックス感向上剤含有食品A1と比較すると補助組成物としてのペクチンや有機酸(クエン酸)を含有しない食品である。
【0047】
比較用食品X3は、5重量部のγ-アミノ酪酸と、補助組成物としてのミネラルを構成する食品添加物用のカルシウム製剤(カルシウムとして0.5重量部)及び食品添加物用のマグネシウム製剤(マグネシウムとして0.5重量部)と、補助組成物としての0.5重量部のペクチンと、基材としての澱粉とで構成したものであり、リラックス感向上剤含有食品A1と比較すると補助組成物としての有機酸(クエン酸)を含有しない食品である。
【0048】
比較用食品X4は、5重量部のγ-アミノ酪酸と、補助組成物としてのミネラルを構成する食品添加物用のカルシウム製剤(カルシウムとして0.5重量部)及び食品添加物用のマグネシウム製剤(マグネシウムとして0.5重量部)と、補助組成物としての有機酸である0.5重量部のクエン酸と、基材としての澱粉とで構成したものであり、リラックス感向上剤含有食品A1と比較すると補助組成物としてのペクチンを含有しない食品である。
【0049】
比較用食品X5は、5重量部のγ-アミノ酪酸と、補助組成物としての0.5重量部のペクチンと、基材としての澱粉とで構成したものであり、リラックス感向上剤含有食品A1と比較すると補助組成物としてのミネラル(カルシウム及びマグネシウム)や有機酸(クエン酸)を含有しない食品である。
【0050】
比較用食品X6は、5重量部のγ-アミノ酪酸と、補助組成物としての0.5重量部のペクチンと、補助組成物としての有機酸である0.5重量部のクエン酸と、基材としての澱粉とで構成したものであり、リラックス感向上剤含有食品A1と比較すると補助組成物としてのミネラル(カルシウム及びマグネシウム)を含有しない食品である。
【0051】
比較用食品X7は、5重量部のγ-アミノ酪酸と、補助組成物としての有機酸である0.5重量部のクエン酸と、基材としての澱粉とで構成したものであり、リラックス感向上剤含有食品A1と比較すると補助組成物としてのミネラル(カルシウム及びマグネシウム)やペクチンを含有しない食品である。
【0052】
(2)ヒト試験
次に、本実施形態に係るリラックス感向上剤含有食品A1に関し、補助組成物の含有によってγ-アミノ酪酸の緊張感緩和に伴う効果と同等の効果をより少ない量のγ-アミノ酪酸の量で発現させることができるか否か、すなわち、γ-アミノ酪酸が有する緊張感緩和作用が助長されるかについて確認を行うべく、ヒト試験を行った。
【0053】
被験者は20~50代の男女であり、リラックス感向上剤含有食品A1を摂取させる群(以下、被験群という。)に6名(男性3名、女性3名)、比較用食品X1を摂取させる群(以下、比較第1群という。)に6名(男性3名、女性3名)、比較用食品X2を摂取させる群(以下、比較第2群という。)に6名(男性3名、女性3名)、比較用食品X3を摂取させる群(以下、比較第3群という。)に6名(男性3名、女性3名)、比較用食品X4を摂取させる群(以下、比較第4群という。)に6名(男性3名、女性3名)、比較用食品X5を摂取させる群(以下、比較第5群という。)に6名(男性3名、女性3名)、比較用食品X6を摂取させる群(以下、比較第6群という。)に6名(男性3名、女性3名)、比較用食品X7を摂取させる群(以下、比較第7群という。)に6名(男性3名、女性3名)を、募集した男女からそれぞれランダムに割り当てた。なお、以下の説明において比較第1~7群を総称して比較群ともいう。
【0054】
被験群には、リラックス感向上剤含有食品A1を12週間に亘り1日1包夕食30分前に摂取させた。同様に比較群に対しても対応する比較用食品X1~X7のいずれかを12週間に亘り1日1包夕食30分前に摂取させた。
【0055】
また本試験では、被験者に対しVAS法による抗疲労及びストレスへの評価を行わせることで緊張感緩和作用の助長効果について確認することとした。評価は、試験開始前、4週間後、8週間後、12週間後に行った。その結果を図1に示す。
【0056】
まず、γ-アミノ酪酸と補助組成物であるミネラル(カルシウム及びマグネシウム)、ペクチン、有機酸(クエン酸)4つの機能成分のうち、γ-アミノ酪酸のみ含有する比較用食品X1を摂取した比較第1群では、抗疲労及びストレスの変化に緩やかな低下傾向が認められた。
【0057】
また、機能成分のうちγ-アミノ酪酸とミネラル(カルシウム及びマグネシウム)を含有する比較用食品X2を摂取した比較第2群や、γ-アミノ酪酸とミネラル(カルシウム及びマグネシウム)、ペクチンを含有する比較用食品X3を摂取した比較第3群、γ-アミノ酪酸とミネラル(カルシウム及びマグネシウム)、有機酸(クエン酸)を含有する比較用食品X4を摂取した比較第4群、γ-アミノ酪酸とペクチンを含有する比較用食品X5を摂取した比較第5群、γ-アミノ酪酸とペクチン、有機酸(クエン酸)を含有する比較用食品X6を摂取した比較第6群、γ-アミノ酪酸と有機酸(クエン酸)を含有する比較用食品X7を摂取した比較第7群についても、比較第1群と概ね同様に抗疲労及びストレスの変化に緩やかな低下傾向が認められた。
【0058】
これら比較第1群~比較第7群における抗疲労及びストレスの変化の緩やかな低下傾向は、おそらくγ-アミノ酪酸が元来有している緊張感緩和作用により惹起されたものと考えられた。また、比較第2群~比較第7群は比較第1群と同様の挙動を示したことから、ミネラル(カルシウム及びマグネシウム)やペクチン、有機酸(クエン酸)単独やいずれかを欠いた状態でのγ-アミノ酪酸の緊張感緩和作用の助長効果は確認できなかった。
【0059】
一方、γ-アミノ酪酸と補助組成物であるミネラル(カルシウム及びマグネシウム)やペクチン、有機酸(クエン酸)との4つの機能成分の全てを含むリラックス感向上剤含有食品A1を摂取した被験群は、比較第1群との間で、少なくとも第12週に抗疲労及びストレスの変化の有意な低下が認められた(p<0.05)。
【0060】
このことから、本実施形態に係るリラックス感向上剤含有食品A1に含まれる補助組成物は、γ-アミノ酪酸が有する緊張感緩和作用を助長することが示された。
【0061】
また図示は割愛するが、興味深いことに被験群の抗疲労及びストレスの変化の有意な低下は、被験群と比較第2群~比較第7群との間でも、少なくとも第12週にそれぞれ認められた(p<0.05)。
【0062】
このことから、ミネラルであるカルシウムやマグネシウムと、ペクチンと、有機酸であるクエン酸とのいずれもが相乗的に作用して補助組成物として機能した結果、γ-アミノ酪酸の緊張感緩和作用が助長されたことが示された。
【0063】
〔2〕含有割合を変更させた場合の効果確認試験
次に、リラックス感向上剤含有食品中におけるγ-アミノ酪酸やミネラルであるカルシウムやマグネシウム、ペクチン、有機酸であるクエン酸の含有量を変化させた場合、どの程度であれば緊張感緩和作用の助長効果が惹起されるのかについて、先のリラックス感向上剤含有食品A1をベースとして複数のリラックス感向上剤含有食品や比較用食品を調製し、それぞれについて検討を行った、
【0064】
(1)γ-アミノ酪酸含有量検討のためのリラックス感向上剤含有食品の製造
γ-アミノ酪酸の含有量を変化させた食品は、表1に示す3種類とした。
【表1】
【0065】
すなわち、リラックス感向上剤含有食品B1は、先のリラックス感向上剤含有食品A1の処方と比較して、γ-アミノ酪酸の含有量を、食品の全重量を100重量部とした際の1.3重量部に相当する19.5mgとし、ミネラルの含有量を、食品の全重量を100重量部とした際の0.03重量部に相当する0.45mg(カルシウムとして0.225mg、マグネシウムとして0.225mg)とし、ペクチンの含有量を、食品の全重量を100重量部とした際の0.05重量部に相当する0.75mgとし、クエン酸の含有量を、食品の全重量を100重量部とした際の0.1重量部に相当する1.5mgとしつつ澱粉で合計重量を調整したリラックス感向上剤含有食品である。
【0066】
また、リラックス感向上剤含有食品G1は、先のリラックス感向上剤含有食品B1の処方と比較して、γ-アミノ酪酸の含有量を、食品の全重量を100重量部とした際の35.5重量部に相当する532.5mgとし、その他の機能成分は同じ含有量としつつ澱粉で合計重量を調整したリラックス感向上剤含有食品である。
【0067】
また、リラックス感向上剤含有食品G2は、先のリラックス感向上剤含有食品B1の処方と比較して、γ-アミノ酪酸の含有量を、食品の全重量を100重量部とした際の40重量部に相当する600mgとし、その他の機能成分は同じ含有量としつつ澱粉で合計重量を調整したリラックス感向上剤含有食品である。
【0068】
(2)γ-アミノ酪酸含有量を変化させた場合の助長効果確認
次に、上記リラックス感向上剤含有食品B1やリラックス感向上剤含有食品G1,G2を被験者に摂取させることで、緊張感緩和作用の助長効果が惹起されるかについて確認を行った。なお、試験方法は前述の「〔1〕基本処方での効果確認試験」と同様であり、各群に男女3名ずつ6名の被験者を割り当てて、12週に亘り食品を摂取させ、各評価日に抗疲労及びストレスの評価を行わせた。その結果を図2に示す。
【0069】
図2からも分かるように、機能成分のうちγ-アミノ酪のみ含有する比較用食品X1と比較すると、リラックス感向上剤含有食品B1、リラックス感向上剤含有食品G1、リラックス感向上剤含有食品G2のいずれを摂取させた群においても抗疲労及びストレスの変化の有意な低下(p<0.05)が認められ、ミネラルであるカルシウムやマグネシウムと、ペクチンと、有機酸であるクエン酸とのいずれもが相乗的に作用して補助組成物として機能した結果、γ-アミノ酪酸の緊張感緩和作用が助長されたことが示された。
【0070】
(3)ミネラルの含有量検討のためのリラックス感向上剤含有食品の製造
ミネラルの含有量の検討をすべくミネラルの含有量を変化させた食品は、表2に示す4種類とした。
【表2】
【0071】
すなわち、リラックス感向上剤含有食品M1は、先のリラックス感向上剤含有食品B1の処方と比較して、ミネラルの含有量を、食品の全重量を100重量部とした際の0.03重量部に相当する0.45mg(カルシウムとして0.225mg、マグネシウムとして0.225mg)とし、その他の機能成分は同じ含有量としつつ澱粉で合計重量を調整したリラックス感向上剤含有食品である。
【0072】
また、リラックス感向上剤含有食品M2は、先のリラックス感向上剤含有食品B1の処方と比較して、ミネラルの含有量を、食品の全重量を100重量部とした際の12.5重量部に相当する187.5mg(カルシウムとして93.75mg、マグネシウムとして93.75mg)とし、その他の機能成分は同じ含有量としつつ澱粉で合計重量を調整したリラックス感向上剤含有食品である。
【0073】
また、リラックス感向上剤含有食品M3は、先のリラックス感向上剤含有食品B1の処方と比較して、ミネラルの含有量を、食品の全重量を100重量部とした際の0.015重量部に相当する0.225mg(カルシウムとして0.1125mg、マグネシウムとして0.1125mg)とし、その他の機能成分は同じ含有量としつつ澱粉で合計重量を調整したリラックス感向上剤含有食品である。
【0074】
(4)ミネラル含有量を変化させた場合の助長効果確認
次に、上記リラックス感向上剤含有食品B1やリラックス感向上剤含有食品M1~M3を被験者に摂取させることで、緊張感緩和作用の助長効果が惹起されるかについて確認を行った。なお、試験方法は前述の「〔1〕基本処方での効果確認試験」と同様であり、各群に男女3名ずつ6名の被験者を割り当てて、12週に亘り食品を摂取させ、各評価日に抗疲労及びストレスの評価を行わせた。その結果を図3に示す。
【0075】
図3からも分かるように、機能成分のうちγ-アミノ酪酸のみ含有する比較用食品X1と比較すると、リラックス感向上剤含有食品B1やリラックス感向上剤含有食品M1,M2のいずれを摂取させた群においても抗疲労及びストレスの変化の有意な低下(p<0.05)が認められ、ミネラルであるカルシウムやマグネシウムと、ペクチンと、有機酸であるクエン酸とのいずれもが相乗的に作用して補助組成物として機能した結果、γ-アミノ酪酸の緊張感緩和作用が助長されたことが示された。
【0076】
一方、ミネラルの含有量を、食品の全重量を100重量部とした際の0.015重量部に相当する0.225mg(カルシウムとして0.1125mg、マグネシウムとして0.1125mg)としたリラックス感向上剤含有食品M3は、γ-アミノ酪酸のみ含有する比較用食品X1と同程度の抗疲労及びストレスの変化であり、ミネラルが減量された結果、各機能成分は相乗的には作用しておらず補助組成物としての機能は発現しなかったものと考えられた。
【0077】
(5)ペクチンの含有量検討のためのリラックス感向上剤含有食品の製造
ペクチンの含有量の検討をすべく含有量を変化させた食品は、表3に示す4種類とした。
【表3】
【0078】
すなわち、リラックス感向上剤含有食品P1は、先のリラックス感向上剤含有食品B1の処方と比較して、ペクチンの含有量を、食品の全重量を100重量部とした際の8.5重量部に相当する127.5mgとし、その他の機能成分は同じ含有量としつつ澱粉で合計重量を調整した食品である。
【0079】
また、リラックス感向上剤含有食品P2は、先のリラックス感向上剤含有食品B1の処方と比較して、ペクチンの含有量を、食品の全重量を100重量部とした際の10重量部に相当する150mgとし、その他の機能成分は同じ含有量としつつ澱粉で合計重量を調整した食品である。
【0080】
また、リラックス感向上剤含有食品P3は、先のリラックス感向上剤含有食品B1の処方と比較して、ペクチンの含有量を、食品の全重量を100重量部とした際の0.01重量部に相当する0.15mgとし、その他の機能成分は同じ含有量としつつ澱粉で合計重量を調整した食品である。
【0081】
(6)ペクチン含有量を変化させた場合の助長効果確認
次に、上記リラックス感向上剤含有食品B1やリラックス感向上剤含有食品P1~P3を被験者に摂取させることで、緊張感緩和作用の助長効果が惹起されるかについて確認を行った。なお、試験方法は前述の「〔1〕基本処方での効果確認試験」と同様であり、各群に男女3名ずつ6名の被験者を割り当てて、12週に亘り食品を摂取させ、各評価日に抗疲労及びストレスの評価を行わせた。その結果を図4に示す。
【0082】
図4からも分かるように、機能成分のうちγ-アミノ酪酸のみ含有する比較用食品X1と比較すると、リラックス感向上剤含有食品B1やリラックス感向上剤含有食品P1,P2のいずれを摂取させた群においても抗疲労及びストレスの変化の有意な低下(p<0.05)が認められ、ミネラルであるカルシウムやマグネシウムと、ペクチンと、有機酸であるクエン酸とのいずれもが相乗的に作用して補助組成物として機能した結果、γ-アミノ酪酸の緊張感緩和作用が助長されたことが示された。
【0083】
一方、ペクチンの含有量を、食品の全重量を100重量部とした際の0.01重量部に相当する0.15mgとしたリラックス感向上剤含有食品P3は、γ-アミノ酪酸のみ含有する比較用食品X1と同程度の抗疲労及びストレスの変化であり、ペクチンが減量された結果、各機能成分は相乗的には作用しておらず補助組成物としての機能は発現しなかったものと考えられた。
【0084】
(7)有機酸の含有量検討のためのリラックス感向上剤含有食品の製造
有機酸の含有量の検討をすべくクエン酸の含有量を変化させた食品は、表4に示す4種類とした。
【表4】
【0085】
すなわち、リラックス感向上剤含有食品O1は、先のリラックス感向上剤含有食品B1の処方と比較して、クエン酸の含有量を、食品の全重量を100重量部とした際の20.5重量部に相当する307.5mgとし、その他の機能成分は同じ含有量としつつ澱粉で合計重量を調整した食品である。
【0086】
また、リラックス感向上剤含有食品O2は、先のリラックス感向上剤含有食品B1の処方と比較して、クエン酸の含有量を、食品の全重量を100重量部とした際の25重量部に相当する375mgとし、その他の機能成分は同じ含有量としつつ澱粉で合計重量を調整した食品である。
【0087】
また、リラックス感向上剤含有食品O3は、先のリラックス感向上剤含有食品B1の処方と比較して、クエン酸の含有量を、食品の全重量を100重量部とした際の0.01重量部に相当する0.15mgとし、その他の機能成分は同じ含有量としつつ澱粉で合計重量を調整した食品である。
【0088】
(8)有機酸含有量を変化させた場合の助長効果確認
次に、上記リラックス感向上剤含有食品B1やリラックス感向上剤含有食品O1~O3を被験者に摂取させることで、緊張感緩和作用の助長効果が惹起されるかについて確認を行った。なお、試験方法は前述の「〔1〕基本処方での効果確認試験」と同様であり、各群に男女3名ずつ6名の被験者を割り当てて、12週に亘り食品を摂取させ、各評価日に抗疲労及びストレスの評価を行わせた。その結果を図5に示す。
【0089】
図5からも分かるように、機能成分のうちγ-アミノ酪酸のみ含有する比較用食品X1と比較すると、リラックス感向上剤含有食品B1やリラックス感向上剤含有食品O1,O2のいずれを摂取させた群においても抗疲労及びストレスの変化の有意な低下(p<0.05)が認められ、ミネラルであるカルシウムやマグネシウムと、ペクチンと、有機酸であるクエン酸とのいずれもが相乗的に作用して補助組成物として機能した結果、γ-アミノ酪酸の緊張感緩和作用が助長されたことが示された。
【0090】
一方、クエン酸の含有量を、食品の全重量を100重量部とした際の0.01重量部に相当する0.15mgとしたリラックス感向上剤含有食品O3は、γ-アミノ酪酸のみ含有する比較用食品X1と同程度の抗疲労及びストレスの変化であり、クエン酸が減量された結果、各機能成分は相乗的には作用しておらず補助組成物としての機能は発現しなかったものと考えられた。
【0091】
上述してきたように、本実施形態に係るリラックス感向上剤含有食品によれば、γ-アミノ酪酸と、γ-アミノ酪酸が有する緊張感緩和作用を助長する補助組成物と、を含むリラックス感向上剤であって、補助組成物は、ミネラルと、ペクチンと、有機酸とよりなることとしたため、所定量のγ-アミノ酪酸により得られる緊張感緩和に伴う効果と同等の効果をより少ない量のγ-アミノ酪酸の量で発現させることができ、しかも、添加しても非食品化せず食品として取扱可能なリラックス感向上剤を提供することができる。
【0092】
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
図1
図2
図3
図4
図5