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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】プロセッサ及びデータ経路再構成方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 15/177 20060101AFI20240417BHJP
【FI】
G06F15/177
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022505967
(86)(22)【出願日】2021-03-03
(86)【国際出願番号】 JP2021008133
(87)【国際公開番号】W WO2021182223
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-07-22
(31)【優先権主張番号】P 2020042174
(32)【優先日】2020-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100113549
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 守
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 真司
(74)【代理人】
【識別番号】100169199
【弁理士】
【氏名又は名称】石本 貴幸
(72)【発明者】
【氏名】広津 鉄平
【審査官】坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-038494(JP,A)
【文献】特開昭62-274454(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1784499(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 15/177
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の演算機(16)が2次元状に配列されて並列処理を行うプロセッサ(10)であって、
前記演算機の故障を検出する故障検出部(46)と、
前記故障検出部によって前記演算機の故障が検出された場合に、故障した前記演算機を含む行及び列の少なくとも一方に含まれる前記演算機の全てを無効化する無効化部(32)と、
を備え、
前記演算機は、隣接する他の前記演算機とデータ交換を行う第1経路(30A)と、少なくとも一つ置きで隣接する他の前記演算機とデータ交換を行う第2経路(30B)とを有し、
前記無効化部は、前記第1経路が故障した場合、前記第1経路を介したデータ交換先の前記演算機を含む行及び列の少なくとも一方に含まれる前記演算機の全てを無効化し、
無効化した前記演算機を用いることなく処理を実行する、プロセッサ。
【請求項2】
無効化された前記演算機と隣接する前記演算機は、無効化された前記演算機とのデータ交換を前記第1経路を用いて行わずに、前記第2経路を用いて他の前記演算機とのデータ交換を行う、
請求項1記載のプロセッサ。
【請求項3】
複数の前記演算機の各々で処理されるデータの分割態様を示したデータパターン(60)が記憶部(20)に記憶され、
前記データパターンは、2次元状に配列された複数の前記演算機に故障がない場合に用いられる第1データパターン(60A)、及び前記演算機が無効化された場合に用いられる第2データパターン(60B、60C)を含む、請求項1又は請求項2記載のプロセッサ。
【請求項4】
前記無効化部は、2つ以上の前記演算機の故障が検出された場合に、隣り合う2つの行又は隣り合う2つの列の全ての前記演算機を無効化しないように、無効化する前記演算機を決定する、請求項1から請求項3の何れか1項記載のプロセッサ。
【請求項5】
複数の演算機が2次元状に配列されて並列処理を行うプロセッサのデータ経路再構成方法であって、
前記演算機の故障を故障検出部によって検出する第1工程と、
前記故障検出部によって前記演算機の故障が検出された場合に、故障した前記演算機を含む行及び列の少なくとも一方に含まれる前記演算機の全てを無効化する第2工程と、
無効化した前記演算機をバイパスして前記演算機同士でデータ交換を行うようにデータ経路を変化させる第3工程と、
を有し、
前記演算機は、隣接する他の前記演算機とデータ交換を行う第1経路(30A)と、少なくとも一つ置きで隣接する他の前記演算機とデータ交換を行う第2経路(30B)とを備え、
前記第1経路が故障した場合、前記第1経路を介したデータ交換先の前記演算機を含む行及び列の少なくとも一方に含まれる前記演算機の全てを無効化する、
データ経路再構成方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願への相互参照】
【0001】
本出願は、2020年3月11日に出願された特許出願番号2020-042174号に基づくものであって、その優先権の利益を主張するものであり、その特許出願のすべての内容が、参照により本明細書に組み入れられる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、プロセッサ及びデータ経路再構成方法に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等の演算装置(コアプロセッサ)を複数備えたマルチコアプロセッサが一般的となっている。このようなプロセッサには、特許文献1に開示されているように、コアの動作を監視するためにDCLS(Dual Core Lock-Step)のような故障検知機構を備えたものもある。そして、故障が検出されたコアプロセッサは、その動作が停止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2018/198184号
【発明の概要】
【0005】
ここで、GPUのように2次元状に複数の演算機(Processing Element、以下「PE」という。)が配列されて構成されるPEアレイは、複数のPEによる並列処理を可能としている。
【0006】
このようなPEアレイは、全てのPEが正常に動作することを前提として設計されている。このため、PEアレイを構成するPEのうち一つでも故障すると、一般的に動作を停止又は機能させない。例えば、CPUとGPUで構成されるプロセッサでは、GPUを構成するPEが故障した場合にGPUの機能が失われるので、プロセッサとしての性能が大幅に低下してしまう。また、プロセッサの製造段階でPEの故障が発見されると、そのPEを含むPEアレイを機能させない下位グレードのプロセッサとして出荷されたりもする。
【0007】
本開示は、2次元状に配列された複数の演算機の何れかに故障が発生しても使用を可能とする、プロセッサ及びデータ経路再構成方法を提供することを目的とする。
【0008】
本開示の一態様のプロセッサは、複数の演算機が2次元状に配列されて並列処理を行うプロセッサであって、前記演算機の故障を検出する故障検出部と、前記故障検出部によって前記演算機の故障が検出された場合に、故障した前記演算機を含む行及び列の少なくとも一方に含まれる前記演算機の全てを無効化する無効化部と、を備え、無効化した前記演算機を用いることなく処理を実行する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、2次元状に配列された複数の演算機の何れかに故障が発生しても使用を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本開示についての上記目的およびその他の目的、特徴や利点は、添付の図面を参照しながら下記の詳細な記述により、より明確になる。その図面は、
図1図1は、実施形態のプロセッサの概略構成図である。
図2図2は、実施形態のデータ経路の再構成を示す模式図であり、(A)は正常時のデータ経路を示し、(B)はPEに故障が発生した場合のデータ経路を示す。
図3図3は、実施形態のPEアレイの概略構成図である。
図4図4は、実施形態のPEの概略構成図である。
図5図5は、実施形態のPE故障検出部から出力される故障検出信号を示す模式図である。
図6図6は、実施形態のデータ経路再構成処理の流れを示すフローチャートである。
図7図7は、実施形態のPEアレイの動作状態を示す模式図であり、(A)は正常時のPEアレイにおける動作状態を示し、(B)は一行のアレイを無効化した場合のPCアレイの動作状態を示し、(C)は一列のアレイを無効化した場合のPEアレイの動作状態を示す。
図8図8は、実施形態のPEアレイの動作状態に対応するデータパターンを示す模式図であり、(A)は正常時のPEアレイに対応するデータパターンを示し、(B)は一行のアレイを無効化した場合のデータパターンを示し、(C)は一列のアレイを無効化した場合のデータパターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本開示の実施形態を説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本開示を実施する場合の一例を示すものであって、本開示を以下に説明する具体的構成に限定するものではない。本開示の実施にあたっては、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてよい。
【0012】
図1は、本実施形態のプロセッサ10の概略構成図である。本実施形態のプロセッサ10は、一例として、演算装置(コアプロセッサ)として4つのCPU(Central Processing Unit)12と一つのGPU(Graphics Processing Unit)14によって構成されるマルチコアプロセッサである。
【0013】
ここで、GPU14は、演算機である複数のプロセッシングエレメント(Processing Element、以下「PE」という。)16を2次元状に配列したPEアレイ18によって構成される。PEアレイ18は、隣接するPE16がデータ交換をしながら、並列分散処理を行う。
【0014】
本実施形態のプロセッサ10は、一例として、記憶装置20から入力される画像データに対して処理を行い、処理結果を出力する。そして、GPU14(PEアレイ18)を構成するPE16同士が交換するデータは、一例として、画像データ処理における畳み込み演算に用いる重複領域や重み係数等である。なお、プロセッサ10が行う処理は、画像データ処理だけでなく、例えば、ニューラルネットワークを用いた機械学習等、他の処理に用いられてもよい。
【0015】
また、図1等に示される本実施形態のPEアレイ18は、16個のPE16が4行×4列で2次元配列されているが、これは一例であり、PEアレイ18を構成するPE16の数、行数及び列数は限定されない。
【0016】
PEアレイ18は、上述のように、複数のPE16によって並列分散処理を行うものである。このため、一つでもPE16が故障すると、従来では、PEアレイ18全体が無効化され、プロセッサ10としての性能が大幅に低下する。
【0017】
このため、PE16が故障した場合であっても、故障したPE16のみを無効化してPEアレイ18の使用を継続することも考えられるものの、どのPE16が故障するかを事前に予測することはできない。このため、無効化したPE16を除外したPEアレイ18に対応するデータの配置方法やプログラムのパターンをn行×m列通り予め設計する必要がある。このような手法は、PEアレイ18を構成するPE16の数が増加すると、設計するべきパターンの数が膨大となり、現実的ではない。
【0018】
そこで、本実施形態のプロセッサ10は、故障したPE16を含む行及び列の少なくとも一方に含まれるPE16の全てを無効化し、無効化したPE16(以下「無効化PE」という。)を用いることなく処理を実行する。これにより、プロセッサ10は、2次元状に配列された複数のPE16の何れかに故障が発生しても使用可能となる。
【0019】
図2は、本実施形態のデータ経路の再構成を示す模式図である。なお、図2では、最も左側のPE16から右側に隣接するPE16へのデータ経路のみが表記されているが、これは他のPE16のデータ経路を省略しているに過ぎず、他の隣接するPE16同士等でもデータ交換が可能とされている。
【0020】
図2(A)はPEアレイ18を構成するPE16に故障が発生していない場合、すなわち正常時のデータ経路を示す。図2(A)に示されるように、故障が発生していない場合には、PE16は隣接するPE16との間でデータ交換を行う。
【0021】
一方、図2(B)はPE16に故障が発生した場合のデータ経路を示す。図2(B)の例では、一例として故障が発生したPE16Xを含む列に含まれる全てのPE16が無効とされる(斜線でハッチングされたPE16)。そして、無効化PEと隣接するPE16は、無効化PEとはデータ交換を行わずに、無効化PEを挟んだ他のPE16との間でデータ交換を行う。このように、本実施形態のプロセッサ10は、故障したPE16を含む行又は列に含まれるPE16全てを無効化し、故障していないPE16同士が無効化PEをバイパスするようにデータ交換を行う。
【0022】
図3は、本実施形態のPEアレイ18の概略構成図である。
【0023】
図3においてPEアレイ18を構成するPE16は、紙面左上方向のPE16をPE00として、紙面右方向をx方向とし、紙面下方向をy方向とし、PExyとのように配置位置が表記される。また、図3では、各PE16において紙面上方向が“N”と表記され、紙面下方向が“S”と表記され、紙面右方向が“E”と表記され、紙面左方向が“W”と表記される。
【0024】
本実施形態のPE16は、隣接する他のPE16とデータ交換を行う正常時データ経路30Aと、一つ置きで隣接する他のPE16とデータ交換を行う無効時データ経路30Bとを有している。なお、以下の説明では、PE16が隣接することを1隣接といい、PE16が一つ置きで隣接することを2隣接という。
【0025】
図3を参照すると、左右同士で1隣接するPE16は、正常時データ経路30Aによって経路E0-W0が接続され、上下同士で1隣接するPE16は、正常時データ経路30Aによって経路S0-N0が接続される。一方、左右同士で2隣接するPE16は、無効時データ経路30Bによって経路E1-W1が接続され、上下同士で2隣接するPE16は、無効時データ経路30Bによって経路S1-N1が接続される。
【0026】
また、PEアレイ18は、PEイネーブル生成器32を備える。PEイネーブル生成器32は、PE16の故障が検出された場合に、故障したPE16を含む行又は列に含まれるPE16の全てを無効化する。なお、PEイネーブル生成器32は、このためのイネーブル信号PExy_ENを生成し、無効化させるPE16へ出力する。一例として、イネーブル信号PExy_ENが“0”の場合に、イネーブル信号PExy_ENが入力されたPE16の動作が停止される。
【0027】
また、PEイネーブル生成器32は、正常時データ経路30Aを用いて無効化PEとのデータ交換を行わずに、無効時データ経路30Bを用いて他のPE16とのデータ交換を行うように、無効化PEに隣接するPE16へ出力する。なお、PEイネーブル生成器32は、このためにインターフェース選択信号を生成し、PE16へ出力する。インターフェース選択信号が入力されたPE16は、データ交換を行う経路を正常時データ経路30Aから無効時データ経路30Bへ切り替える。インターフェース選択信号の詳細は後述する。
【0028】
また、PEイネーブル生成器32は、PE16を無効化した場合に、ユーザインタフェース(不図示)を介して、ユーザにPEアレイ18に故障が発生したことを報知する。これにより、ユーザは、PEアレイ18の故障を認識し、修理等の対応を行うことが可能となる。
【0029】
なお、図3の例では、斜め方向に隣接するPE16同士でデータ交換を行う正常時データ経路30A及び無効時データ経路30Bは図示されていないが、PEアレイ18には斜め方向でデータ交換を行うデータ経路が設けられてもよい。
【0030】
図4は、本実施形態のPE16の概略構成図である。PE16は、ALU(Arithmeticand Logic Unit)40、レジスタ42、RAM(Random Access Memory)44、PE故障検出部46、インターフェース部48N,48E,48W,48S、及び制御部50を備える。なお、以下の説明において、各インターフェース部48N,48E,48W,48Sの各々を区別しない場合は、末尾のアルファベットを省略する。
【0031】
ALU40は、レジスタ42からのデータに基づいて演算を行い、演算結果をレジスタ42に出力する。
【0032】
レジスタ42は、ALU40、RAM44、及びインターフェース部48との間でデータの入出力を行い、データを記憶する。
【0033】
RAM44は、レジスタ42及びインターフェース部48との間でデータの入出力を行い、データを記憶する。
【0034】
PE故障検出部46は、PE16の故障を検出し、その検出結果を故障検出信号としてPEイネーブル生成器32へ出力する。
【0035】
図5は、PE故障検出部46から出力される故障検出信号の例を示す模式図である。一例として、故障検出信号PExy_Diagは、自身を備えるPE16の配置位置xyを特定するPExyと共に、故障の有無を示す識別子Diagである“0”から“5”で構成される。
【0036】
具体的には、PE故障検出部46は、PE16に故障がない場合に故障検出信号としてPE16の配置位置xyと共に“0”を出力する。一方、PE16に故障が発生した場合、PE故障検出部46は、故障検出信号としてPE16の配置位置xyと共に“1”~“5”の何れかを出力する。
【0037】
この“1”~“5”は故障個所を示しており、“1”は故障個所が制御部50、ALU40、レジスタ42、及びRAM44の何れかであることを示す。すなわち、故障検出信号が“1”の場合は、PE16そのものが故障している場合である。
【0038】
故障検出信号が“2”の場合は故障個所がN0経路であることを示し、故障検出信号が“3”の場合は故障個所がS0経路であることを示し、故障検出信号が“4”の場合は故障個所がW0経路であることを示し、故障検出信号が“5”の場合は故障個所がE0経路であることを示す。すなわち、故障検出信号が“2”~“5”の場合は、正常時データ経路30Aの何れかが故障している場合である。
【0039】
このように、PE故障検出信号は、PE16そのものの故障の有無だけでなく、故障経路も特定可能とされている。なお、図4に示されるPE故障検出信号は、一例であり、これに限られない。
【0040】
インターフェース部48は、1隣接又は2隣接する他のPE16とのデータ交換を行うための入出力部である。本実施形態のインターフェース部48は、1隣接用の入出力部(N0,E0,W0,S0)と2隣接用の入出力部(N1,E1,W1,S1)との2系統を有する。
【0041】
制御部50は、PE16に対するプログラムを解読して、ALU40、レジスタ42、及びRAM44への制御信号を生成し、これらへ出力する。また、制御部50は、PEイネーブル生成器32からのイネーブル信号PExy_ENの入力を受け付ける。そして、制御部50は、例えば、イネーブル信号が“0”の場合には、自身を備えるPE16の動作を停止させて無効化する。
【0042】
また、制御部50は、PEイネーブル生成器32からのインターフェース選択信号が入力される。一例として、インターフェース選択信号には、PExy_Nsel,PExy_Esel,PExy_Wsel,PExy_Sselの4種類があり、Nsel,Esel,Wsel,Sselは、各々インターフェース部48N,48E,48W,48Sに対応している。そして、インターフェース選択信号が“0”の場合には、1隣接用の入出力部N0,E0,W0,S0に接続される正常時データ経路30Aが用いられる。一方、インターフェース選択信号が“1”の場合には、2隣接用の入出力部N1,E1,W1,S1に接続される無効時データ経路30Bが用いられる。
【0043】
図6は、本実施形態のデータ経路再構成処理の流れを示すフローチャートである。図6に示されるデータ経路再構成処理は、PEアレイ18を構成するPE16の何れかが備えるPE故障検出部46がPE16の故障を検出し、PEイネーブル生成器32に故障検出信号PExy_Diagが入力された場合にPEイネーブル生成器32によって実行される。また、データ経路再構成処理は、プロセッサ10が備える記録媒体に格納されたプログラムによって実行される。なお、このプログラムが実行されることで、プログラムに対応する方法が実行される。
【0044】
まず、ステップ100では、PE故障検出部46からの故障検出信号PExy_Diagに基づいて、故障したPE16及びその故障個所を特定する。
【0045】
次のステップ102では、故障検出信号PExy_Diagに基づいて、PE16そのものが故障しているか否かを判定し、肯定判定の場合はステップ104へ移行し、否定判定の場合はステップ106へ移行する。
【0046】
ステップ104では、故障したPE16が含まれる行又は列のPE16全てを無効化するように、該当するPE16へイネーブル信号を出力し、ステップ108へ移行する。イネーブル信号が入力されたPE16の制御部50は、自身を備えるPE16の動作を停止させる。
【0047】
なお、無効化PE16を行とするか列とするかは、予め設定された方法で決定されればよい。例えば、最初に発生したPE16の故障に対しては、故障したPE16が含まれる列のPE16全てを無効化するとし、2回目に発生したPE16の故障に対しては故障したPEが含まれる行のPE16全てを無効化するとする。これにより、PEアレイ18を構成する2つのPE16に故障が生じても、隣り合う2つの行又は隣り合う2つの列の全てのPE16が無効化されることを防止できる。すなわち、PEイネーブル生成器32は、複数のPE16が故障した場合、無効化する行と列とが隣り合うことなく交差するように、無効化するPE16を決定する。
【0048】
また、無効化PEを行とするか列とするかは、PEアレイ18の構成により決定されてもよい。例えば、N行>M列のPEアレイ18の場合には無効化PEが行とされ、N行<M列のPEアレイ18の場合には無効化PEが列とされる。
【0049】
ステップ102で否定判定となる場合は、正常時データ経路30Aに故障が発生している場合である。この場合の移行先であるステップ106では、正常時データ経路30Aを介したデータ交換先のPE16が含まれる行又は列のPE16全てを無効化するように、PEイネーブル生成器32が対象となるPE16へイネーブル信号を出力し、ステップ108へ移行する。
【0050】
図3を参照してステップ106による処理の例を説明する。例えば、PE11に故障が検出され、それがS0経路の正常時データ経路30Aであった場合、PE11の下の行であるPE02~PE22のPE16が無効化PEとされる。また、PE11のE0経路の正常時データ経路30Aに故障が発見された場合、PE11の右側の列であるPE20~PE23のPE16が無効化PEとされる。
【0051】
次のステップ108では、無効化PEに隣接するPE16に対してPEイネーブル生成器32が無効時データ経路30Bを選択させるインターフェース選択信号を出力する。これにより、インターフェース選択信号が入力された制御部50は、自身を備えるPE16のデータ経路として無効時データ経路30Bを選択し、本データ経路再構成処理を終了する。これにより、このインターフェース選択信号が入力されたPE16は、無効化PEをバイパスして2隣接する他のPE16とデータ交換を行うこととなる。
【0052】
このように、本実施形態のプロセッサ10は、無効化PEをバイパスしてPE16同士でデータ交換を行うようにデータ経路を変化させるので、複数のPE16の何れかに故障が発生してもPEアレイ18を使用することができる。
【0053】
図7は、本実施形態のN行M列のPEアレイ18の動作状態を示す模式図である。図7(A)は正常時のPEアレイ18における動作状態を示しており、4行4列の計16個のPE16が全て動作している。一方、図7(B)は一行のPE16を無効化した場合のPEアレイ18の動作状態を示し、図7(C)は一列のPE16を無効化した場合のPEアレイ18の動作状態を示す。
【0054】
図7(B)に示されるように、一行のPE16を無効化するとPEアレイ18は、N-1行M列となり、図7(B)の例では3行4列の計12個のPE16が動作することとなる。また、図7(C)に示されるように、一列のPE16を無効化するとPEアレイ18は、N行M-1列となり、図7(B)の例では4行3列の計12個のPE16が動作することとなる。
【0055】
図8は、本実施形態のPEアレイ18の動作状態に対応するデータパターン60を示す模式図である。データパターン60は、複数のPE16の各々で処理されるデータの分割態様を示したものであり、一例として、記憶装置20に記憶されているが、これに限らず、データパターン60はプロセッサ10に備えられた記憶媒体に記憶されてもよい。
【0056】
図8に示されるデータパターン60は、一例として、車載カメラで取得された一つの画像データを複数の領域に分割するための分割パターンであり、このデータパターン60で分割された各画像データ領域が複数のPE16の各々で分散並列処理される。なお、データパターン60において斜線で示される領域は、畳み込み演算等により用いられる重複領域である。
【0057】
本実施形態のデータパターン60は、PEアレイ18を構成するPE16に故障がない場合に用いられるデータパターン60A、及びPE16が無効化された場合に用いられるデータパターン60B,60Cを含む。すなわち、図8(A)は正常時のPEアレイ18に対応するデータパターン60Aを示し、図8(B)は一行のPE16を無効化した場合のデータパターン60Bを示し、図8(C)は一列のPE16を無効化した場合のデータパターン60Cを示す。
【0058】
この図8(A),(B),(C)は、上述の図7(A),(B),(C)に対応している。すなわち、データパターン60Aは、PEアレイ18を構成する複数のPE16に故障がない場合に用いられるデータパターン60であり、データパターン60B,60Cは、PE16の故障が検出された行又は列に含まれるPE16の全てが無効化された場合に用いられるデータパターン60である。
【0059】
このように、PE16が故障した場合には、無効化PEとした行又は列に応じたデータパターン60が用いられることとなる。すなわち、本実施形態のプロセッサ10は、PE16を無効化した場合に対応するデータパターン60B,60Cを予め準備することにより、行又は列を無効化PEとしたPEアレイ18の使用を簡易な処理で継続することができる。また、現実的には、複数のPE16が故障することは想定し難いため、一例として、データパターン60Aに加え、一行を無効化PEとした場合のデータパターン60Bと一列を無効化PEとした場合のデータパターン60Cの2種類のデータパターン60を記憶装置20に記憶させればよい。
【0060】
なお、PE16を無効化した場合にデータパターン60Bとデータパターン60Cの何れを用いるかは、一例として、PEイネーブル生成器32によって選択される。
【0061】
以上、本開示を、上記実施形態を用いて説明したが、本開示の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。開示の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、該変更又は改良を加えた形態も本開示の技術的範囲に含まれる。
【0062】
例えば、上記実施形態では、プロセッサ10が4つのCPU12及び一つのGPU14で構成される形態について説明したが、本開示は、これに限定されるものではない。プロセッサ10は、PEアレイ18で構成される演算装置が少なくとも一つ備えられていればよく、CPU12やGPU14等の演算装置の数は限定されない。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8