(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】カップ付き女性用衣類
(51)【国際特許分類】
A41C 3/12 20060101AFI20240417BHJP
【FI】
A41C3/12 A
(21)【出願番号】P 2019164987
(22)【出願日】2019-09-10
【審査請求日】2022-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】519099405
【氏名又は名称】株式会社アニーサ
(74)【代理人】
【識別番号】100132920
【氏名又は名称】阪田 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 幸子
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第203986165(CN,U)
【文献】特開2000-017505(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41C1/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、一対のカップ部、バージスラインに沿って前記カップ部に組み込まれた一対のワイヤー、一対のボーン、土台、アンダー部を含むブラジャー本体部に、
左ベロカップパッド部、ベロパッド部、右ベロカップパッド部が一体となった一体形ベロカップパッドが着用者側に接続された構成であって、
前記土台は、土台フロント、土台バック部からなり、前記土台フロントには土台前中心部があり、前記土台前中心部は、前記一対のカップ部間であり、前記土台前中心部の上縁(土台前中心部上縁部)は、前記一対のワイヤーの先端より上部にあり、
ブラジャー本体部側の接続箇所は、左カップ部上縁部分、前記左カップ部と右カップ部間の土台前中心部上縁、右カップ部上縁部分であって、
前記バージスラインに沿って前記カップ部に組み込まれた一対のワイヤーより上部の3カ所であり、
前記一体形ベロカップパッドの接続箇所は、左ベロカップパッド部左縁部分、ベロパッド部上端、右ベロカップパッド部右縁部分の3カ所であり、
左ベロカップパッド部左縁部分が左カップ部上縁部分と、ベロパッド部上縁が土台前中心部上縁部と、右ベロカップパッド部右縁部分が右カップ部上縁部分と接続されていて、
前記一体形ベロカップパッドは接続箇所以外は前記ブラジャー本体部から遊離し、
前記左右のベロカップパッド部は、その下縁が前記ワイヤー、前記ボーンにはみだすように形成され、ベロパッド部は、前記ワイヤーの中央側の先端である中央上端を覆い、前記ブラジャー本体部の前記アンダー部に接するように構成され、
前記一体形ベロカップパッドが前記ワイヤーの先端を含め前記ワイヤー全体を覆うことを特徴とする女性用カップ付き衣類。
【請求項2】
ブラジャー本体部が、少なくとも、一対のカップ部、バージスラインに沿って前記カップ部に組み込まれた一対のワイヤー、一対のボーン、一対のストラップ、土台、アンダー部を含むことを特徴とする請求項1記載の女性用カップ付き衣類。
【請求項3】
前記土台前中心部は、前記一対のカップ部の上辺の間であって、前記一対のワイヤーの中央上端間に位置することを特徴とする請求項1または2記載の女性用カップ付き下着。
【請求項4】
前記一体形ベロカップパッドは、着用者のバストを前記ベロカップパッド部で下から包み、前記ベロパッド部が胸の谷間に位置して、前記ブラジャー本体部の左ワイヤーの中央上端、右ワイヤーの中央上端を前記ベロパッド
部で覆うことで、着用者の胸の谷間に当たらないことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の女性用カップ付き衣類。
【請求項5】
前記一体形ベロカップパッドは、少なくとも2枚の布で構成され、前記左ベロカップパッド部、前記ベロパッド部、前記右ベロカップパッド部にそれぞれ縫い目を有し、前記ベロパッド部の縫い目を基準にして左右対称であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の女性用カップ付き衣類。
【請求項6】
前記一体形ベロカップパッドを構成する布のうち、着用者側の素材が木綿であることを特徴とする請求項5記載の女性用カップ付き衣類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、女性の乳房あるいはバスト(以下、「バスト」と記載する。)を整えるカップ付き女性用衣類に関するものであり、特に、ブラジャー及びブラジャー付き下着(以下、「ブラジャー等」と略記する。)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自分の身体をより美しく、より綺麗に見せたいという要望は、女性にとって古今東西変わらぬ一大関心事である。しかし、例えば、加齢に伴う体型変化では、バストの変化に悩む女性が多いのことが知られている。バストの変化は、胸の上部のボリュームが落ち、脇がそげる、下部がたわみ乳頭が下向きになる、外に流れバスト自体が下がるという順序をたどると指摘されている。そして女性の願望として胸の谷間を作りたいという気持ちがあるとしている(非特許文献1)。
【0003】
バストの形を綺麗に見せたいという要望は強く、従来からブラジャーやキャミソールなど数多くのカップ付き婦人下着が下着メーカーによって開発されてきた。女性のバストを整えるためにカップ付き女性用衣料には、例えば、ブラジャー、キャミソール、ブラスリップ等がある。例えば、ブラジャーを例にして考えると、求められる機能は、胸の贅肉を集め洋服着用時のバストのラインを整えること、胸の贅肉を集めて留め揺れを防ぐこと等のほかに、いわゆる補整機能をうたったものも知られている。以下、ブラジャー等についてブラジャーを例にして説明する。
【0004】
ブラジャーには、カップの下縁(通常、バージスラインに一致する箇所)にワイヤーを設けたワイヤー付きのブラジャーとワイヤーが存在しないワイヤーレス(ノンワイヤー)ブラジャーがある。
【0005】
一般に、カップ下縁部に挿入されたワイヤーは、バストを支え、理想的な形状に整えることが目的とされる。ワイヤーの素材は金属か樹脂で、形状記憶合金も素材として使用される。カップのお椀形の底面部分、つまりはおおよそ胸とバストの境目を示すバージスラインに沿って、ベルト芯のようにカップ素材の布の中に縫い込まれている。バージスラインはバスト下側の人体への付け根のラインである。。
【0006】
かかるワイヤーを挿入したブラジャーにはワイヤーの硬いものと軟らかいものがあり、ワイヤーなしを含めてワイヤーの種類は大きく分けて3つある。
ノンワイヤー:ワイヤーをまったく使っていないもの。
ソフト・ワイヤー:ワイヤーが芯に入ってはいるが、かなり柔らかいもの。
ハード・ワイヤー:ワイヤーが芯として入っており、柔らかさがないもの。
ハード・ワイヤーのブラジャーは、バストの大きさや形状に合ったワイヤー形状である場合、バストが安定しまた補正効果も良い。しかし、着用して跡がはっきり残ったり痛みがあったりすることが知られている。
【0007】
ワイヤー付きのブラジャーは、カップの下縁に沿って設けられたワイヤーをバストのバージスラインに沿ってあてがうことによりバストを下方から支えてバストの形を美しく整え、しかも、長時間にわたってその美しいバスト形状を保持することが可能である。しかしながら、ワイヤーそのものが金属や樹脂等の硬い材質によって形成されているため、長時間の着用時にはワイヤーが肌に食い込んで着用者に苦痛を与えるという問題があった。
【0008】
ワイヤーレスブラジャーの場合、肌に食い込むワイヤーが存在しないことからワイヤーレスブラジャーのカップのバージスラインに沿う部分は、ソフトタッチ感覚となり快適に着用することができる。しかしながら、ワイヤーレスブラジャーの着用感はワイヤー付きブラジャーに比べて格段に優れているものの、長時間着用していると、(これは特にバストサイズが大きな女性に顕著であるが)カップが少しずつ摺り上がってきて、着用時にせっかく綺麗に作ったバージスラインが崩れてしまい、バストの形が崩れてしまうという問題があつた。すなわち、ワイヤーによる痛みがないことに優れるが、補整力に劣り補整機能を持つ下着としては不向きであり、特に、胸の揺れ等の防止力が弱いことが指摘されている。
【0009】
以上のことから、需要者である女性の願望とブラジャーの現状から、ワイヤー付きブラジャーでは、ワイヤーによる痛み対策を、ノンワイヤーブラジャーでは補整力をその改良すべき課題としてきた。
【0010】
特に、ブラジャーのカップ下縁部に挿入されたワイヤーは、バストの形を美しく整えるようにしたものとされている。しかし、このワイヤーはバストの形を美しく整えるという効果が期待されるものの、長時間の着用により、バストの痛み、着用の違和感を感じる等の問題が指摘されている。
【0011】
従って、ブラジャー等のカップ部を有する衣類に関し、特に、バストの下半周の輪郭縁、即ち、バージスラインに沿ってワイヤーを取り付けるものにおいて、着用時に、ワイヤーの肌当たりを柔らかくして、着用感の向上を図ると共に、ワイヤーをバージスラインに沿う位置に保持して補整機能を高めるものとして、ブラジャー類について各種の試みがなされている。
【0012】
例えば、肌側カップ布の外側に、バストの下半周外縁に沿った位置から肌側カップ布の下端縁まで延在させたワイヤー連結布を設け、該ワイヤー連結布と肌側カップ布の下端縁を一体に縫着する一方、上記ワイヤー連結布の上端縁に沿って上記ワイヤーを封入している袋状テープを略全長にわたって縫着したものが提案されている(特許文献1)。
【0013】
さらに、カップを構成する表地と裏地の間にワイヤを装着したブラジャーにおいて、ワイヤが表地又は裏地のどちらか一方にのみ接合されており、ワイヤが表地に接合されている場合はワイヤと裏地が分離し、ワイヤが裏地に接合されている場合はワイヤと表地が分離するように構成することが提案されている(特許文献2)。
【0014】
さらに、少なくとも下カップ部を構成する肌に接する肌側布を、クッション材で形成すると共にワイヤーの取付位置で表側へ折り返すことなく、該肌側布よりも表側にワイヤーを装着し、かつ、該肌側布の下端縁は、ワイヤーをカバーする位置あるいはワイヤーより下方へ延在させた位置とすることが提案されている(特許文献3)。
さらに、例えば、肌側のバストカップ部分は弾力性を有する素材を用い、その形状がワイヤーを入れる筒状の布の外円周まで覆う設計とすることが提案されている(特許文献4)。
【0015】
例えば、肌への刺激が少なく、かつ、着用時にずれにくく快適な着心地の下着としてが提案されていて、ワイヤーによる痛みのほかに、いわゆる「縫い目の段差」、ゴムの存在による肌への刺激や痛みが指摘され、本体の縫い目が、カップ及びサイドベルト等の外側に縫製することが提案されている(特許文献5)。しかし、縫い目がブラジャーの外側にあるということは、その縫い目と下着がブラジャーの上に装うブラウス、シャツ等に下着の線として現れやすくなるという問題がある。
【0016】
例えば、アンダーバスト形成テープ、吊り寄せパネル、吊り上げテープが提案されている(特許文献6)。
【0017】
さらに、ブラジャーの違和感について、バージスラインに沿って設けられたブラジャーのワイヤーの違和感に対する検討のほかに、ブラジャーの前中心近傍の違和感に対するものがある。前中心側上端近傍よりも低い高さ位置まで設けられるワイヤーの移動を規制するワイヤー規制部と伸び止め部を備えることが提案されている(特許文献7)。特に、ワイヤーの前中心側の上端の位置を特定し、骨材が所定位置よりも上方へ移動しないようにしている(特許文献7、特に、
図6)。
【0018】
特許文献7で指摘されているのは、ブラジャーにおいてワイヤーは、カップ部の前中心側の上端までが延伸して配設される。従って、上半身の体の動きなどによっては、ワイヤーが、カップ部の前中心側の上端を押して上半身に食い込み、着用者は、ワイヤーが上半身に刺さるような違和感を覚える場合があると指摘しているのである。
【0019】
一方、ブラジャーの着用に際して、パットの使用がある。パット又はブラパットは使用者がブラジャーを着用したとき、バストを理想的な形に維持することがでるものとされている。例えば、バストアップ用として使用するか、バストセンター寄せ(谷間メイク)用として使用するか、あるいはその両方用として使用するかを適宜選択することができ、理想的なバストを作り、維持することができると記載がある(特許文献8)。
【0020】
ブラジャー用のパットはカップ部に収納されるように使用するものであるが、ベロ形状パットについての提案がある。例えば、 ブラジャーのカップ周囲からはみ出るバスト脇側を包み込むカップ用パット付きブラジャーを提供することを課題として、ブラジャーのカップ用パットをベロ形状パットに作成し、ベロ形状部以外を裏カップに取り付け、ベロ形状部は浮かせてワイヤーループにかぶせてはみ出るようにしたことを特徴とするベロ形状パット付きブラジャーが提案されている(特許文献9)。
【0021】
しかし、特許文献9では、ベロ形状部の形状、枚数、ベロ形状パット取り付け部の位置、ベロ形状部をどのように固定するのかについては明記されていない。具体的な実施の形態は、図面に記載された形態のみである。特に、ベロ形状パット取り付け部は裏カップであればどこでもよいとしていて具体的な記載はない。パットである以上、図面の記載からも、左右の2つのカップを有するブラジャーの裏側に取り付けた左右対称の2つのパットである。通常のパットと比較して、パットがカップ部からバージスラインよりはみ出た形となっていることで異なる。
【0022】
以上のことから、ブラジャー用パットは、基本的に、左右のカップ部に収納または取り付けられるもので、理想的なバストを作りだすよう考えられたもので、バストアップ用とバストセンター寄せ(谷間メイク)用として使用するものである。従って、ワイヤー入りブラジャーのカップ部に入れられた場合には、ワイヤーの痛みを緩和するという効果は基本的に有しない。また、ベロ形状パットであっても、パットがカップ部からバージスラインよりはみ出た形となっているので、特許文献7で指摘されているような痛みについては対応できない。
【0023】
従って、ベロ形状パットでは、バストセンター寄せの場合、ワイヤーの先端によるバストの痛みという問題については考慮されていない。また、ベロ形状パットでは、バストを脇から寄せて持ち上げる効果が生まれるが、下から包み込む、つまり、バストアップについては考慮されていない。
【0024】
一方、ノンワイヤーブラジャーでは、ワイヤーが体に食い込む不快感が解決できることから、胸の谷間を強調すべく伸縮帯体を取り付けたものが提案されている(特許文献10)。
【0025】
なお、ブラジャーの本質的機能は、様々な動きに対してバストを支え、またバストを本来の形に保つことである(特許文献2,11)。さらには、バストの下垂と脇流れを補整しつつ、左右のバスト間に豊かな谷間を形成することである。そこで、かかるブラジャー、特にワイヤー入りブラジャーの場合、バストをそのカップにいかに適切に入れるかということで、正しいブラジヤーの付け方という考え方の指導がなされているのである(非特許文献1)。
【0026】
また、ワイヤーの働きは、ブラジャーの保形性を高めると共にバストシルエットを維持するとしている。従来技術として、バストカップ形状をより美しく保つ為に、大きい剛性を有する半円弧状の金属製のワイヤーをバストカップの円周に設置している(特許文献4)。
【0027】
一方、ボーンは、胸の肉が脇側に流れにくくして、胸の形を整えるが、ボーンにも痛みが発生することが記載され、ワイヤーとボーンを使用しないブラジャーでは生地のストレッチ性を重視しているとしている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【文献】実用新案登録3068244
【文献】特開2000-45103
【文献】特開2001-316909
【文献】特開2006-138056
【文献】特開2014-181412
【文献】特開2011-032610
【文献】特開2018-178295
【文献】特開2008-075191
【文献】特開2006-124898
【文献】特開2015-209597
【文献】特開2009-270212
【非特許文献】
【0029】
【文献】朝日新聞「体型変化に合った下着を 元気にキレイに ブラ選び」2019年7月27日発行9ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
本発明者は、「美しいバストを整える」という女性の願望についてブラジャーの役割を再検討した。ブラジャーには、ワイヤー入りブラジャーとノンワイヤーブラジャーがあることは上述の通りである。ブラジャーのカップ部にワイヤーを挿入したワイヤー入りブラジャーは、ノンワイヤーブラジャーと対比して、カップの形状維持に優れると判断できる。すなわち、ブラジャーに使われるワイヤーは、カップの形状、特に、その縁の形状を維持することに優れると考えられ、ワイヤーの機能は、カップの形状を維持することで、カップに入ったバストをカップが支えるのに役立つと考えるべきであるとの結論に達した。一方、ノンワイヤーブラジャーでは、カップの形状維持がワイヤー入りブラジャーより困難なことが知られている。
【0031】
本発明者は、美しいバストを整えたいという希望と、大きな胸の場合にバストの重さを支えたいという要請があることも考慮し、さらには、ワイヤー入りブラジャーについて、ワイヤーの有する違和感を総合的に緩和する仕組みを検討した。本発明はこれらの課題を以下の5つにまとめた。
【0032】
第1の課題は、「バストを支え、洋服着用時のラインを整え、同時にバストの留め揺れを防ぐ」というブラジャーの本来の機能に、ワイヤー入りブラジャーの「補整力に優れ、理想のバストのラインを形作る」という機能を維持しつつ、ワイヤーの痛みを軽減することにより違和感の緩和をはかることである。第2の課題は、ワイヤーの胸にかかる痛みについても軽減することである。第3の課題は、特許文献7で指摘されている「ワイヤーによる前中心近傍の違和感を軽減する」ことについて、特許文献7とは違ったより有効な新たな試みをすることである。第4の課題は、バストアップ用としても、バストセンター寄せ(谷間メイク)用としても使用できるブラジャーを提供することである。そして、第5の課題として、第1から第4の課題を解決するブラジャーであって、「ブラジャーの正しい付け方」(非特許文献1)によることなく簡便に着用でき、全体として締め付け感をなくしたブラジャーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0033】
少なくとも、一対のカップ部、バージスラインに沿って前記カップ部に組み込まれた一対のワイヤー、一対のボーン、土台、アンダー部を含むブラジャー本体部に、
左ベロカップパッド部、ベロパッド部、右ベロカップパッド部が一体となった一体形ベロカップパッドが着用者側に接続された構成であって、
前記土台は、土台フロント、土台バック部からなり、前記土台フロントには土台前中心部があり、前記土台前中心部は、前記一対のカップ部間であり、前記土台前中心部の上端(土台前中心部上端部)は、前記一対のワイヤーの先端より上部にあり、
ブラジャー本体部側の接続箇所は、左カップ部上縁部分、前記左カップ部と右カップ部間の土台前中心部上縁部、右カップ部上縁部分であって、
前記バージスラインに沿って前記カップ部に組み込まれた一対のワイヤーより上部の3カ所であり、
前記一体形ベロカップパッドの接続箇所は、左ベロカップパッド部左縁部分、ベロパッド部上縁、右ベロカップパッド部右縁部分の3カ所であり、
左ベロカップパッド部左縁部分が左カップ部上縁部分と、ベロパッド部上縁が土台前中心部上縁部と、右ベロカップパッド部右縁部分が右カップ部上縁部分と接続されていて、
前記一体形ベロカップパッドは接続箇所以外は前記ブラジャー本体部から遊離し、
前記左右のベロカップパッド部は、その下縁が前記ワイヤー、前記ボーンにはみだすように形成され、ベロパッド部は、前記ワイヤーの中央側の先端である中央上端を覆い、前記ブラジャー本体部の前記アンダー部に接するように構成され、
前記一体形ベロカップパッドが前記ワイヤーの先端を含め前記ワイヤー全体を覆うことを特徴とする女性用カップ付き衣類とした。
【0034】
さらに、ブラジャー本体部が、少なくとも、一対のカップ部、バージスラインに沿って前記カップ部に組み込まれた一対のワイヤー、一対のボーン、一対のストラップ、土台、アンダー部を含むことを特徴とする女性用カップ付き衣類とした。
【0035】
さらに、 前記土台前中心部は、前記一対のカップ部の上辺の間であって、前記一対のワイヤーの中央上端間に位置することを特徴とする女性用カップ付き衣類とした。
【0036】
さらに、前記一体形ベロカップパッドは、着用者のバストを前記ベロカップパッド部で下から包み、前記ベロパッド部が胸の谷間に位置して、前記ブラジャー本体部の左ワイヤーの中央上端、右ワイヤーの中央上端を前記ベロパッド部で覆うことで、着用者の胸の谷間に当たらないことを特徴とする女性用カップ付き衣類とした。さらに、前記一体形ベロカップパッドは、少なくとも2枚の布で構成され、前記左ベロカップパッド部、前記ベロパッド部、前記右ベロカップパッド部にそれぞれ縫い目を有し、前記ベロパッド部の縫い目を基準にして左右対称であることを特徴とする女性用カップ付き衣類とした。さらに、前記一体形ベロカップパッドを構成する布のうち、着用者側の素材が木綿であることを特徴とする女性用カップ付き衣類とした。
【発明の効果】
【0037】
本発明の一体形ベロカップパッドを接続したブラジャー部分は、ブラジャーの本来の機能に、ワイヤー入りブラジャーの「補整力に優れ、理想のバストのラインを形作る」という機能を維持しつつ、ワイヤーの痛みを軽減することにより違和感の緩和をはかるという効果が得られる。本発明の一体形ベロカップパッドは、左ベロカップパッド部、ベロパッド部、右ベロカップパッド部の一体となった部分から構成されているので、ワイヤーの胸にかかる痛みとワイヤーによる全中心近傍の違和感を軽減するという効果が得られる。本発明の一体形ベロカップパッドは、着用者のバストを前記ベロカップパッド部中心部で下から包み、前記ベロカップパッド部脇側部で横から包むので、バストアップ用としても、バストセンター寄せ(谷間メイク)用としても使用できる。本発明の一体形ベロカップパッドは、着用するとまずバストを包んで調整してから、バストをカップ部に収めるので、本発明の女性用カップ付き衣類は簡便に着用でき、全体として締め付け感をなくしている。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明のブラジャーの裏側(着用側)に取り付けられる一体形ベロカップパッドの一例である。
【
図2】本発明のブラジャー本体部の一例であって、
図1の一体形ベロカップパッドを取り付け前の状態で裏側(着用者側)から見た図である。
【
図3】
図1の一体形ベロカップパッドを
図2のブラジャー本体部に取り付けたときの一例で、着用する女性の側から見た図である。
【
図4】
図3のブラジャーの着用直前の状態を着用者側からみた図である。
【
図5】本発明のブラジャー着用中でバストを包み込んだ状態を左前方から見た模式図である。
【
図6】本発明のブラジャーを着用した状態を左側面から見た模式図である。
【
図7】本発明の一体形ベロカップパッドの作用効果を説明する模式図である。
【0039】
図面では、本発明の効果をわかりやすく説明するために模式的に記載した部分があり、図面の説明のところで、模式的に示した各部分につき説明する。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の実施の形態に係る衣類は、ブラジャー、ボディースーツ、ブラスリップ、カップ付きタンクトップ、カップ付きキャミソールなどのバストを被覆するカップ部を有する衣類である。特に、ブラジャー、ブラスリップ、カップ付きキャミソールが有効である。また、カップ部には半円形のワイヤーが取り付けられた構造のものである場合に本発明の効果が最大限発揮される。しかし、本発明の一体形ベロカップパッドをノンワイヤータイプのブラジャーに実施することを妨げるものではない。
【0041】
発明の実施の形態においては、カップ部を有する衣類の一例として、ブラジャー、特にワイヤー入りブラジャーの場合を例に挙げ説明する。但し、本発明はその発明特定事項を備える限りにおいて広く包含するものであり、以下の実施形態に限定されるものではない。上述の通り、本発明は、ブラジャーをその代表的な一例とする女性用衣類(下着)に関するものである。
【0042】
ブラジャーの一般的な構成は、一対のカップ部、土台(土台フロント部と土台バック部)、アンダー部で、一対のストラップはあるものとないものがある。カップ部にワイヤーがバージスラインに沿って入れられているものと無いものがある。また、バージスラインとは、バストと胸部の境界線のラインと言われている。一対のボーンが土台に組み込まれ、これを境に土台は土台フロント部(前中心)、土台バック部に区分される。また、一対のストラップとブラジャー全体をつなぐジョイント部分をストラップタブという。また、カップ部について、上の部分の縁を上縁、下の部分の縁を下縁というが、上縁であっても、前中心からストラップタブにかけての上縁は、上辺とよぶ。従って本明細書でもカップ部の上辺(ストラップタブより内側)とカップ部の上縁(ストラップタブより外側)と呼ぶこととする。なお、ストラップを有しないブラジャーの場合は、概ね、カップ部の形状から、前中心側を上辺、外側を上縁と呼ぶこととした。
【0043】
本発明のブラジャーについて説明する。本発明のブラジャーは、ブラジャー本体部と一体形ベロカップパッドから構成される。本発明のブラジャー本体部は、ブラジャーの一般的構成により、ストラップのついたものが本発明の効果をより発揮するが、ストラップのないものでも本発明には有効である。なお、ストラップを取り外せるブラジャーについても有効である。一体形ベロカップパッドは、ブラジャー本体部と3カ所でつながり、その他は遊離した構造である。この構造が、本発明の課題解決に不可欠である。詳細は、図面の説明のところで記する。
【0044】
本発明に使用される一体形ベロカップパッドは、少なくとも2枚の布を縫い合わせて積層したものである。一体形ベロカップパッド全外周と、各部に合計3本の縫い目がある。一体形ベロカップパッドの素材は特に限定されないが、着用者側は、天然繊維、特に、木綿が望ましく、例えば、天竺織りの木綿、フライス織りの木綿が挙げられる。カップ部側は、カップと同じ素材、メッシュの入った素材等通気性のある生地が好ましい。例えば、ダブルラッセル生地が挙げられる。左右のバスト対応部分(本発明で、「左又は右ベロカップパッド部」という。)と前中心部対応部分(本発明で、「ベロパッド部」という。)が一体となったもので、本発明では「一体形ベロカップパッド」と名付けている。本発明で、ベロカップパッド部、ベロパッド部というのは、これらは一体形ベロカップパッドの一部であり、全体として作用するものである。一体形でないと本発明の課題は解決できない。
【0045】
ベロカップパッド部は、バストを包む部分で、右ベロカップパッド部は、その外周が、上縁、右縁、下縁で構成され、上縁と下縁は、円弧状となっている。ベロパッド部は、その外周が、直線状の上縁と円弧状の下縁からなっている。ベロパッド部の上縁とベロカップパッド部の円弧状の上縁との境目は角状になっている。一方、ベロパッド部の下縁はベロカップパッド部の円弧状の下縁につながっていて境目はない。なお、左ベロカップパッド部も同様に、その外周が上縁、左縁、下縁で構成される。
【0046】
すなわち、一体形ベロカップパッドの外周は、中央部から時計回りで、ベロパッド部上縁、右ベロカップパッド部上縁、右ベロカップパッド部右縁、右ベロカップパッド部下縁、ベロパッド部下縁、左ベロカップパッド部下縁、左ベロカップパッド部左縁、左ベロカップパッド部上縁、そして、ベロパッド部上縁となる。なお、右ベロカップパッド部下縁、ベロパッド部下縁、左ベロカップパッド部下縁は角状はなく連続した縁となっている。ベロカップパッド部左縁と右縁は、ワイヤー入りブラジャー本体部の形状に対応して、その形を整えることが望ましい。
【0047】
一体形ベロカップパッドがブラジャー本体部とつながるのは、右ベロカップパッド部右縁、ベロパッド部上縁、左ベロカップパッド部左縁の3カ所である。なお、3カ所以外、一体形ベロカップパッドはブラジャー本体部と遊離している。従って、右ベロカップパッド部、ベロパッド部、左ベロカップパッド部はそのほぼ全体がブラジャー本体部から遊離していることになる。従って、ベロカップパッド部はブラジャー本体部のワイヤー入りカップ部のワイヤー挿入部位全体さらにはボーンの部分までを容易に覆うことができる。また、ベロパッド部はいわゆる着用者の「胸の谷間」の部分に容易に対応できる。従って、本発明の課題2,3について解決できる。
【0048】
ブラジャー本体部がストラップを有する場合、右ベロカップパッド部右縁と左ベロカップパッド部左縁は、ブラジャー本体部のストラップタブへ縫い合わされる部分とカップ部上縁へ縫い合わされる部分に対応した構造とすることが望ましい。ストラップのないブラジャーの場合、カップ部上縁に縫い合わせることに対応した構造とすることが望ましい。以下、図面に従って説明する。
【0049】
図1に本発明のブラジャーの裏側(着用側)に取り付けられる一体形ベロカップパッドの一例(以下、「一体形ベロカップパッド」と略記する。)についてその平面図を示した。この例は、ストラップのあるブラジャーに対応した一例である。(A)が着用者から見た平面図、(B)が断面図である。断面図は模式的に示したものである。縫い合わせた縫い目については破線で示した。一体形ベロカップパッドは、W文字状またはU字を二つ重ねた文字状の形をしている。一体形ベロカップパッドは、右ベロカップパッド部31、ベロパッド部7、左ベロカップパッド部32とから構成される。3つの部分はそれぞれその中央に縫い目が付けられている。右ベロカップパッド部31には縫い目4、ベロパッド部7には縫い目10、左ベロカップパッド部32には縫い目12である。左右のベロカップパッド部は、ベロパッド部縫い目10を境に左右対称となっている。
【0050】
左ベロカップパッド部32は左のバストに、右ベロカップパッド部31は右のバストに、ベロパッド部7は前中心近傍(いわゆる「胸の谷間」に該当する部分)に対応する。右ベロカップパッド部の縫い目11と左ベロカップパッド部の縫い目12は、着用者側から見て谷形状(へこんだ形状)になるスリット状の縫い目である。
【0051】
左右のベロカップパッド部31,32はスリット状の縫い目11,12を境に中心部27,28と脇側部26,29から構成される。左ベロカップパッド部32は左ベロカップパッド部脇側部29、スリット状の縫い目12、左ベロカップパッド部中心部28から構成される。外周は、左ベロカップパッド部上縁9と左ベロカップパッド部下縁5に構成されるが、左ベロカップパッド部上縁9は緩やかで、左ベロカップパッド部下縁5はより急な円弧状をなしている。左ベロカップパッド部上縁9は左カップ部左縁48につながり、右ベロカップパッド部上縁8は、右ベロカッププ部右縁47につながる。前述したように、右ベロカップパッド部右縁47と左ベロカップパッド部左縁48は、ブラジャー本体部のストラップタブとカップ部上縁に縫い付けられる。
【0052】
なお、「右ベロカップパッド部右縁」は、
図1では、右カップ部上縁縫い付け部37と右カップ部上縁縫い付け部2からなる。右ストラップ縫い付け部37と右カップ部上縁縫い付け部2の境目33である。また、「左ベロカップパッド部左縁」は、同様に、左ストラップ縫い付け部38と左カップ部上縁縫い付け部3からなる。左ストラップ縫い付け部38と左カップ部上縁縫い付け部3の境目34である。これらは、ブラジャー本体部がストラップ付きである場合の対応の一例である。また、境目33、34については、ブラジャー本体部の構造に対応して、適宜調整することが望ましい。
【0053】
右ベロカップパッド部を例に説明すると、
図1で、右ベロカップパッド部右縁47と右ベロカップパッド部上縁8の境目39、右ベロカップパッド部右縁47と右ベロカップパッド部下縁4の境目35が示される。ストラップのない場合には、ストラップ縫い付け部は、ブラジャー本体部に取り付ける必要がない。この場合は、境目39と33が一致し、また、境目34と40が一致することになる。
【0054】
右ベロカップパッド部下縁4は、下に凸となる円弧形状であり、続く、ベロパット部下縁6は上に凸の円弧形状であり、続く、左ベロカップパッド部下縁5は、下に凸となる円弧形状である。これらの円弧状の縁には境目の角はない。
【0055】
一体形ベロカップパッドの断面を、一例として、2枚の布を使用した場合について、右ベロカップパッド部の縫い目11につき示した。一体形ベロカップパッドの表布41(着用者側)と一体形ベロカップパッドの裏布(カップ部側)42は、縫い目11(他に、10と12の縫い目)で縫われている。3本の縫い目と外周部の縫い目を除いて縫われていない。従って、2枚の布の間には空気層が構成されている。上述のように、本発明の実施に当たり、特に、着用者側は、天竺織りの木綿生地、カップ部側は、ダブルラッセル生地で具体的な実施サンプルを作成している。その厚さは、天竺織りの木綿生地の場合、0.01~0.5mmで、特に、0.02~0.4mmが好ましい。ダブルラッセル生地の場合、0.1~2.0mmで、特に、0.2~1.0mmが好ましい。2枚の布を使用するときは、ダブルラッセル生地の方を厚くすることが好ましい。
【0056】
図2は、一体形ベロカップパッドを取り付ける前のブラジャー本体部の一例で、ストラップ付きの場合である。ワイヤー13、14については、ワイヤーを覆う布等については省略している。本発明の説明に当たり、特に記載していないが、ワイヤーについては周知の方法で布で覆うことを妨げるものではない。カップ部上縁16、ボーン17、左ワイヤー中央上端19、右ワイヤー中央上端20、ストラップ21である。一体形ベロカップパッドを接続するのは、
土台前中心部上縁部24、カップ15の外縁30上部である。ブラジャー本体部では、さらに、土台フロント22、土台バック部23、アンダー部18となっている。
【0057】
本発明の一体形ベロカップパッドは、ブラジャー本体部と3カ所で縫い合わせて固定される。一体形ベロカップパッドのベロパッド部上縁1はブラジャー本体部側の土台前中心部上縁部24と縫い合わせて接続される。これにより、ブラジャー本体部の左ワイヤー中央上端19、右ワイヤー中央上端20は一体形ベロカップパッドのベロパッド部に覆われて、着用者の胸の谷間に直接当たることはない。この縫い付けにより、本発明の課題3を解決できる。一体形ベロカップパッドの効果はこの縫い付け部の位置により発揮される。
【0058】
一体形ベロカップパッドの右カップ部上縁縫い付け部2はブラジャー本体部の右側のカップ部上縁部分30に、左カップ部上縁縫い付け部3はブラジャー本体部の左側のカップ部上縁部分30に縫い付けられる。一体形ベロカップパッドの右ストラップ縫い付け部37は、ブラジャー本体部の右側のストラップタブ近傍に、左ストラップ縫い付け部38は、ブラジャー本体部の左側のストラップタブ近傍に縫い付けて接続される。従って、一体形ベロカップパッドはブラジャーカップのワイヤー13の内面に接続されることはない。ワイヤー内面に接続されると、本発明の課題2,3を解決することはできない。
【0059】
図3は、
図2のワイヤー付きブラジャー本体部に一体形ベロカップパッドを取り付けた一例である。一体形ベロカップパッドは、ベロパッド部上縁1がブラジャー側の
土台前中心部上縁部24に縫い付けて接続されている。右ベロカップパッド部下縁4と左ベロカップパッド部下縁5は、ブラジャーのボーン17とアンダー部18にたれる形で付けられる。一体形ベロカップパッドは、着用時には左右のバストを包みこむように保持する。これにより、カップ部バージスラインに沿って取り付けられたワイヤーが肌に接触する感を取り除いていると同時に、ワイヤーによる全中心近傍の違和感を軽減する働きがある。すなわち、本発明の課題2,3を解決することができる。
【0060】
なお、一体形ベロカップパッドの左右のバストに対応した部分(ベロカップパッド部)がベロ形状と似ていることからベロ形状パットと称されることも考えられる(特許文献9)。しかし、本発明の一体形ベロカップパッドは1枚のものであり前述のように3カ所で、ブラジャー本体部に縫い付けて接続される。一般に、ブラジャーの「パット」とは左右一組のものを称するのが一般的であるので、一体形ベロカップパッドとベロ形状パットは、その作用及び考え方が異なる。ベロ形状パットでは、本発明の課題1から5が解決できない。特に、課題1,3,5については全く考慮されていない。
【0061】
一体形ベロカップパッドのベロパッド部7は、右ベロカップパッド部31、左ベロカップパッド部32により包み込むように持ち上げられたバストの谷間に相当する部分に対応し、ブラジャーのバージスラインに沿って取り付けられたワイヤーの先端部(左ワイヤー中央上端19、右ワイヤー中央上端20)に対応して、その痛みを緩和するものである。これにより、課題3が解決できる。なお、本発明で示した一体形ベロカップパッドのベロパッド部による方法は、特許文献7で示されている方法とは全く異なるし、特許文献7に記載された事項からは想到できないことである。
【0062】
図4は、
図3の本発明のブラジャーを着用する場合を示した斜視図である。一体形ベロカップパッドはブラジャーとベロパッド部上縁1で縫い付けられて接続されているので、着用者がワイヤー(破線で示す)のワイヤーの先端部(左ワイヤー中央上端19、右ワイヤー中央上端20)で、ワイヤーによる全中心近傍の違和感、すなわち、ワイヤーの先端部が胸の谷間に与える違和感を感じることはない。着用時には、ベロパッド部7は、ベロパッド部縫い目10に沿って、着用者の胸の谷間に位置する。これによって本発明の課題3が解決できるのである。
【0063】
右ベロカップパッド部を例に説明する。右ベロカップパッド部31は、右ベロカップパッド部中心部27と右ベロカップパッド部脇側部26からなる。着用時には、着用者の右バストは右ベロカップパッド部31に包み込むように支えられる。スリット状の右ベロカップパッド部縫い目11が谷となってバストを包み込み、右バストの下部は右ベロカップパッド部中心部27に、右バスト脇部は右ベロカップパッド部脇側部26に支えられるように包み込まれる。すなわち、一体形ベロカップパッドがバストを上げて寄せることで、理想のバストに近づけてからバストトップが右ベロカップパッド部上縁8の上を通りブラジャー本体部のカップ部15に収まる。これによって本発明の課題5が解決できる。
【0064】
着用時に、着用者の右バストは、そのバストトップをカップ部15にそのまま入れることで着用する。バストはその際に、右ベロカップパッド部上縁8の上を通りカップ部15に収まる。その際、右ベロカップパッド部31は、右ベロカップ接続部2で右のカップ部15の外縁でブラジャー本体部と接続されているので、ベロパッド部7に繋がる右ベロカップパッド部中心部27はバストを下から包みバストアップし、右ベロカップパッド部縫い目11で谷状におり曲がる右ベロカップパッド部脇側部26はバストを右脇側から包みバストを寄せることになる。すなわち、右バストは右ベロカップパッド部31により、バストアップとバストセンター寄せ(谷間メイク)が図られる。左バストも同様である。これによって本発明の第4の課題が達成できる。ブラジャーを着用するだけで、バストはベロカップパッド部の上に収まることとなるので、先行非特許文献1のようにバスト全体を手で包みカップ部に寄せるといった作業は不要となり、本発明の課題5を達成できる。
【0065】
図5に本発明のブラジャーを着用する際の左前方から見た状態を模式的に示す。着用時には、一体形ベロカップパッドは、バストを包み込むと共に、ベロパッド部7は、左右のワイヤー中央上端19,20を覆い、左ベロカップパッド部は、左ベロカップパッド部中心部28がワイヤー14を覆い、左ベロカップパッド部脇側部29がワイヤー14とボーン17を覆っていることを示す。これによりワイヤー等の違和感とバストの谷間にワイヤーが当たることによる不和感を緩和すると同時にバストを包み込み、バストアップとバストを寄せる効果が得られる。従って、本発明の第2~5の課題を解決できる。
【0066】
なお、着用時には、一体形ベロカップパッドの左ベロカップパッド部上縁9はバストトップの下、すなわちカップ部内に位置し、左ベロカップパッド部下縁5は、ワイヤー14の外縁で、アンダー部18より上となり、ブラジャー本体部の外にはみ出すことはない。従って、ブラジャー装着時の装飾上の違和感はない。なお、
図5では、一部ワイヤーが一体形ベロカップパッドで覆われていない部分もあるがワイヤーの説明のためである。
【0067】
図6に本発明のブラジャーを着用し左側から見た状態を模式的に示す。着用前のバストトップが下を向いてたれた状態(一点鎖線で示す。)から着用時のバストトップが水平ないし上を向いた状態(実線及び破線)になることを示している。バストトップは左ベロカップパッド部上縁9の上となり、一体形ベロカップパッドは、バストを包み込むことで、左ベロカップパッド部下縁5はバージスラインからアンダー部18近くになり、ベロカップパッド部はワイヤー14とバストの間に位置して、ワイヤーの痛みの緩和をはかる。ワイヤー14は左ベロカップパッド部により着用者のバストから完全に遮断され、ワイヤーの違和感を緩和する。一体形ベロカップパッドに包まれてバストはカップ部15に収まる。一体形ベロカップパッドはバストを包み込み理想のバストに近づけるという効果がある。これにより、本発明の第1の課題を達成できる。なお、
図6でも、
図5と同様に一部ワイヤーが一体形ベロカップパッドで覆われていない部分もあるがワイヤーの説明のためである。
【0068】
上述のように、本発明は、下に垂れ脇に流れたバストをバストトップを上向きにし、バストを寄せる効果を発揮するものである。また、着用時に手でバストをつかんでカップ部に入れるという作業も不要である。本発明の効果をさらに
図7に示した。
【0069】
図7(A)は、理想のバスト(点線)と下に垂れ脇に流れたバスト(実線)を模式的に示したもので、正面から見た図と左側から見た図である。
図7(B)は、本発明のブラジャー装着時の一体形ベロカップパッド44の働きを示したもので、下に垂れ脇に流れたバスト(破線)が一体形ベロカップパッド44で包まれて理想のバスト(実線)となった様子を示している。一体形ベロカップパッド44は、バストを包むことで、バストアップ(下からの包み込み)とバストを寄せる(脇からの包み込み)ことにより理想のバストに近づけることができる。矢印はバストアップとバストを寄せる効果を示している。これにより、本発明の課題4,5が解決できる。
図7(C)は、一体形ベロカップパッド44で包まれたバストがワイヤー付きカップ部46に収まった状態を示している。一体形ベロカップパッドが着用者のバストを理想型に維持しつつ、バストがカップ部に収まった状態を示している。一体形ベロカップパッドは、着用者からワイヤー45を完全に遮断しワイヤーによる違和感を緩和することを示している。これにより、本発明の課題2、3、5が解決できる。
【0070】
すなわち、装着者が本発明のブラジャーを装着すると、ブラジャーの保形性を高めると共にバストシルエットを維持すブラジャー本体部のワイヤーを備えたカップ部に、一体形ベロカップパッドに包まれた理想のバストが収まることを示している。つまり、本発明では、単に装着することで、理想のバストに近づけてから、バストをワイヤーを備えたカップ部に収まることを示している。これにより、本発明の第1の課題を達成できる。
【0071】
従来のブラジャーのブラジャーの正しい付け方によることなく、本発明のブラジャーでは、バストを手で持って寄せるようにカップに入れるという作業は不要で、一体形ベロカップパッドが着用と同時にバストを包み理想のバストに近づけてからカップ部にバストを入れることになる。従って、着用がしやすく、ワイヤー、ボーン等の痛み、無理な締め付けがないという効果が得られる。
【0072】
以下に、実際に5人のモニター(20代から50代の女性)に着用してもらいその着用感を表にまとめた。使用したブラジャーは本発明の
図3に示したブラジャー(試料1)、一体形ベロカップパッドを付ける前の
図2のブラジャー(試料2)、特許文献9に記載されている従来のベロパット装着ブラジャーに近いもので本発明の一体形ベロカップパッドと異なる1対のベロパットを取り付けたブラジャー(試料3)の3種である。ブラジャーのサイズは、65F、65G、65Hとした。なお、従来のベロパット装着ブラジャーに近い試料3のブラジャーは
図8に示した。一対のベロカップ52のブラジャー本体部への接続は、ワイヤーの端とカップ部上縁に接続されたストラップ間のカップ部上縁部分54と、カップ部のワイヤーに取り付けるベロパット接続部51とした。ブラジャー本体部の土台の前中心部に向けて装着されているワイヤー51の先端部55,56は何の手当もされていない。従来のものは、本発明と異なり一体型でなく、ブラジャーのカップ部内縁に接続されている。本発明ではこのような接続は排除している。
【0073】
評価方法は、非常に良い◎、良い○、普通△、不快感あり×、とした。
結果を表1に示す。なお評価の対象は本願の課題に対応したもので、以下の通りである。
第1の課題に対応し、「補整力に優れ、理想のバストのラインを形作り、ワイヤーの痛みは全体としてどのように感じたか」という評価をした(「補整力とバストラインと痛み」と略記した。)。機能を維持しつつ、ワイヤーの痛みを軽減することにより違和感の緩和をはかることである。第2の課題は、ワイヤーの胸にかかる痛みについても軽減することである(「ワイヤーの胸への痛み」と略記した。)。第3の課題は、特許文献7で指摘されている「ワイヤーによる全中心近傍の違和感を軽減する」ことについて、特許文献7とは違ったより有効な新たな試みをすることである(「全中心近傍の違和感」と略記した。)。第4の課題は、バストアップ用としても、バストセンター寄せ(谷間メイク)用としても使用できるブラジャーを提供することである(「バストアップセンター寄せ」と略記した。)。そして、第5の課題として、第1から第4の課題を解決するブラジャーであって、「ブラジャーの正しい付け方」(非特許文献1)によることなく簡便に着用でき、全体として締め付け感をなくしたブラジャーを提供することである(「簡単な着用」と略記した。)。
【0074】
【0075】
評価の結果、本発明の試料1は、すべてのモニターの女性から、補整力とバストラインと痛み、ワイヤーの胸への痛み、全中心近傍の違和感、バストアップセンター寄せ、簡単な着用のすべての項目で非常に良いの評価を得た。良い○、普通△、不快感あり×
一体形ベロカップパッドを付ける前の
図2のブラジャー(試料2)は、ワイヤーの胸への痛み、全中心近傍の違和感で不快感ありの評価で、その他3項目では普通の評価であった。従来型ベロパッドを付けたブラジャー(試料3)は、全中心近傍の違和感で不快感ありの評価で、ワイヤーの胸への痛みは良いとの評価で、バストアップセンター寄せでは、良いと普通に評価が分かれた。補整力とバストラインと痛み、簡単な着用では、普通の評価であった。
【0076】
ストラップのないブラジャーの例として、試料4,5,6を作成した。なお、試料作成の簡素化のため、試料1、2、3からストラップを取り除いて試料4,5,6とした。モニターの女性と評価方法は、試料1、2、3と同様とした。結果を表2に示す。
【0077】
【0078】
評価の結果、ストラップのないブラジャー本体部を使用した本発明の試料4は、すべてのモニターの女性から、補整力とバストラインと痛み、ワイヤーの胸への痛み、全中心近傍の違和感、バストアップセンター寄せ、簡単な着用のすべての項目で非常に良いの評価を得た。試料5,試料6の評価は、試料2,3とか大差はないが、ストラップがない分、試料6は、「バストアップセンター寄せ」の評価がやや低下した。
【0079】
さらに、アンダーバスト70で、ブラジャーのサイズが、70D、70E、70F、70G、70Hである別の女性モニター5名に、試料1、試料2、試料3の3種について、着用時の評価を行った。表3に示す。
【0080】
【0081】
評価の結果、本発明の試料1は、すべてのモニターの女性から、補整力とバストラインと痛み、ワイヤーの胸への痛み、全中心近傍の違和感、バストアップセンター寄せ、簡単な着用のすべての項目で非常に良いの評価を得た。特に、大きい胸の場合に、ワイヤーの胸の痛み緩和に優れたものであることがわかった。本発明のブラジャーは、DカップからHカップの大きな胸の女性に特に有効と評価できた。
【0082】
以上のように本発明のブラジャーは5つの課題に対する評価で優れたものであることが確認された。特に、Hカップで、特に優れると判断でき、大きなバストの女性に対して、優れた効果を示した。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、女性用下着、特に、カップ部を有する下着、特に、ブラジャー、ブラスリップ、カップ付きキャミソールに利用することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 ベロパッド部上縁
2 右カップ部上縁縫い付け部
3 左カップ部上縁縫い付け部
4 右ベロカップパッド部下縁
5 左ベロカップパッド部下縁
6 ベロパッド部下縁
7 ベロパッド部
8 右ベロカップパッド部上縁
9 左ベロカップパッド部上縁
10 ベロパッド部縫い目
11 右ベロカップパッド部縫い目
12 左ベロカップパッド部縫い目
13 ワイヤー
14 ワイヤー
15 カップ部
16 カップ部上辺
17 ボーン
18 アンダー部
19 左ワイヤー中央上端
20 右ワイヤー中央上端
21 ストラップ
22 土台フロント部
23 土台バック部
24 土台前中心部上縁部
26 右ベロカップパッド部脇側部
27 右ベロカップパッド部中心部
28 左ベロカップパッド部中心部
29 左ベロカップパッド部脇側部
30 カップ部上縁部分
31 右ベロカップパッド部
32 左ベロカップパッド部
33 右ベロカップパッド部右縁角
34 左ベロカップパッド部左縁角
35 右ベロカップパッド部右縁と下縁の境目
36 左ベロカップパッド部左縁と下縁の境目
37 右ストラップ縫い付け部
38 左ストラップ縫い付け部
39 右ベロカップパッド部上縁と右縁の境目
40 左ベロカップパッド部上縁と左縁の境目
41 一体形ベロカップパッドの表布
42 一体形ベロカップパッドの裏布
44 一体形ベロカップパッド
45 ワイヤー
46 ブラジャーのカップ部
47 右ベロカップパッド部右縁
48 左ベロカップパッド部左縁
49 ベロパッド部上縁と右ベロカップパッド部上縁の境目
50 ベロパッド部上縁と左ベロカップパッド部上縁の境目
51 カップ部のワイヤーに取り付けるベロパット接続部
52 ベロパット
53 ワイヤー
54 ワイヤーの端とカップ部上縁に接続されたストラップ間のカップ部上縁部分