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特許7473763導電性ホットメルト接着剤組成物、および積層体
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  • 特許-導電性ホットメルト接着剤組成物、および積層体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】導電性ホットメルト接着剤組成物、および積層体
(51)【国際特許分類】
   C09J 153/02 20060101AFI20240417BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20240417BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20240417BHJP
   C09J 9/02 20060101ALI20240417BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
C09J153/02
B32B7/025
B32B7/12
C09J9/02
C09J11/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022163490
(22)【出願日】2022-10-11
(62)【分割の表示】P 2018159781の分割
【原出願日】2018-08-28
(65)【公開番号】P2022186771
(43)【公開日】2022-12-15
【審査請求日】2022-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004436
【氏名又は名称】東洋インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】福地 良寿
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103540280(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107722889(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109096973(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 7/025
B32B 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂と導電性フィラーとを含む導電性ホットメルト接着剤組成物であって、体積抵抗率が1×10Ωcm未満であって、導電性ホットメルト接着剤組成物の弾性率が25℃で5MPa未満であり、
さらに、軟化剤を含み、
前記熱可塑性樹脂が、スチレン系熱可塑性樹脂を含み、前記導電性ホットメルト接着剤組成物中、前記導電性フィラーを25~70質量%含むことを特徴とする導電性ホットメルト接着剤組成物。
【請求項2】
スチレン系熱可塑性樹脂が、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体の水素添加物(SEPS)、スチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体の水素添加物(SEBS)、スチレン・ブタジエン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SBIS)、またはスチレン・エチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体の水素添加物(SEEPS)であることを特徴とする請求項に記載の導電性ホットメルト接着剤組成物。
【請求項3】
さらに、粘着付与剤を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の導電性ホットメルト接着剤組成物。
【請求項4】
組成物全体に対する軟化剤の含有率が3.0重量%以上、34.7重量%以下であることを特徴とする請求項1~いずれか1項に記載の導電性ホットメルト接着剤組成物。
【請求項5】
基材、請求項1~のいずれか1項に記載の導電性ホットメルト接着剤組成物、被着体の順で積層されてなることを特徴とする積層体。
【請求項6】
基材が導電体であることを特徴とする請求項に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性の被着体同士、例えば銀材やステンレス材、含水した木材等の多孔質部材といった材料間を導通させたまま、簡便に強固に接合することができるホットメルト接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報化技術が飛躍的に進歩しているなかで、情報をより正確に、長期的に、省電力で獲得することが可能なデバイスの開発が国内外で精力的に行われている。特にセンサー技術の躍進はすさまじく、センサーをありとあらゆる場所に張り巡らせることで従来は取り扱いにくかった情報や現場の熟練技に依存せざるを得なかった情報を精度よく半永久的に獲得でき、またセンサーの貼付固定技術向上により簡便に情報を得ることが可能となる。
そのような背景の中、導電材料同士を導通させたまま簡便に強固に接合させることができる導電性接着剤組成物が求められるようになってきている。エレクトロニクス分野の技術的な進歩の中で、電子材料のモジュール化が進められており、このような分野で導電性接着剤は必要不可欠である。
また、このような導電性接着剤組成物を衣服に強固に接着することで、生体センサーに活用することができる。ところが、高い導電性と接着力を両立した簡便接着可能なホットメルト接着剤組成物は市販されていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-200225号公報
【文献】特開2002-155261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、高い導電性を発現した状態で被着体同士を簡便に強固に接着することができる導電性ホットメルト接着剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示すホットメルト接着剤組成物により簡便かつ強固な接着ができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、熱可塑性樹脂と導電性フィラーとを含む導電性ホットメルト接着剤組成物であって、体積抵抗率が1×10Ωcm未満であって、導電性ホットメルト接着剤組成物の弾性率が25℃で5MPa未満であることを特徴とする導電性ホットメルト接着剤組成物に関する。
【0007】
また、本発明は、導電性フィラーが黒鉛(グラファイト)、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、酸化グラフェン、銀、銅、錫、亜鉛、酸化亜鉛、ニッケル、マンガン、およびITOからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記の導電性ホットメルト接着剤組成物に関する。
【0008】
また、本発明は、導電性フィラーが黒鉛(グラファイト)、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、および酸化グラフェンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記の導電性ホットメルト接着剤組成物に関する。
【0009】
また、本発明は、組成物全体に対する導電性フィラーの含有率が2重量%以上、65重量%以下であることを特徴とする前記の導電性ホットメルト接着剤組成物に関する。
【0010】
また、本発明は、熱可塑性樹脂が、スチレン系熱可塑性樹脂、ポリアミド系熱可塑性樹脂、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂、ポリエステル系熱可塑性樹脂、ポリ塩化ビニル系熱可塑性樹脂(PVC)、エチレン-酢酸ビニル系熱可塑性樹脂(EVA)、およびエチレン・プロピレン・ジエン系熱可塑性樹脂(EPDM)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする前記の導電性ホットメルト接着剤組成物に関する。
【0011】
また、本発明は、スチレン系熱可塑性樹脂が、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体の水素添加物(SEPS)、スチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体の水素添加物(SEBS)、スチレン・ブタジエン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SBIS)、またはスチレン・エチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体の水素添加物(SEEPS)であることを特徴とする前記の導電性ホットメルト接着剤組成物に関する。
【0012】
また、本発明は、さらに、粘着付与剤を含むことを特徴とする前記の導電性ホットメルト接着剤組成物に関する。
【0013】
また、本発明は、さらに、軟化剤を含むことを特徴とする前記のホットメルト接着剤組成物に関する。
【0014】
また、本発明は、基材、前記の導電性ホットメルト接着剤組成物、被着体の順で積層されてなることを特徴とする積層体に関する。
【0015】
また、本発明は、基材が導電体であることを特徴とする前記の積層体に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、高い導電性と接着力を発現する導電性ホットメルト接着剤組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の積層体の構成例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0019】
本発明の導電性ホットメルト接着剤組成物は、熱可塑性樹脂と導電性フィラーとを含むことを特徴とする。
【0020】
<導電性フィラー>
本発明で用いられる導電性フィラーとしては銀、金、銅、ニッケル、亜鉛、酸化亜鉛、マンガン、アルミニウムなどの金属、酸化スズドープ酸化インジウム(ITO)、酸化スズドープ酸化インジウム(FTO)、酸化スズ(IO)、ネオジム・バリウム・インジウム酸化物などの金属酸化物、ポリチオフェン系、ポリピロール系、ポリアニリン系、オリゴチオフェン系等の有機物、アルミナ、ガラスなどの無機絶縁体やポリエチレンやポリスチレンなどの高分子などの表面を導電性物質でコーティングしたもの、カーボンブラック、黒鉛、グラフェン、カーボンナノチューブ、フラーレン、酸化グラフェン、アセチレンブ
ラックなどカーボン系が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、導電性フィラーは銀、カーボン系であることが好ましい。
【0021】
導電性フィラーの形状に関しては、フレーク状(鱗片状)、球状、針状、繊維状、樹枝状が挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、接着力を強固にするために導電性フィラーの添加量を減らしたい場合は、フレーク状(鱗片状)およびフレーク状(鱗片状)と他の導電性フィラーの混合物が好ましい。中でも少量添加で低い抵抗率を発現することが可能となるため、また厚み方向の電気伝導性を発揮しやすくなるため他の混合物として球状、またはスパイク上の導電性フィラーを用いることが好ましい。中でもケッチェンブラックを用いることが好ましい。
【0022】
導電性ホットメルト接着剤組成物全体に対する導電性フィラーの含有比率に関しては、特に限定されることはないが、接着力と導電性の観点から、銀や金などの金属に関しては40~80重量%が好ましく、より好ましくは50~70重量%が好ましい。40重量%未満であると導電性が十分でなく、80重量%を超えると接着強度が不十分となるため好ましくない。一方、カーボンブラック、黒鉛などのカーボン系に関しては2~65重量%が好ましく、より好ましくは、5~40重量%が好ましい。2重量%未満であると導電性が十分でなく、60重量%を超えると接着強度が不十分となるために好ましくない。
【0023】
<ホットメルト接着剤>
本発明のホットメルト接着剤組成物は、熱可塑性樹脂と軟化剤、粘着付与剤、酸化防止剤とその他必要に応じて用いられる任意成分をロール、バンバリーミキサー、ニーダー、撹拌機を備えた溶融釜、または一軸または二軸の押し出し機などを用いて加熱混合してなる加熱溶融型接着剤や、適当な溶剤に溶解して攪拌混合してなる溶剤型接着剤を用いて得ることができる。本発明に用いられるホットメルト接着剤組成物は、溶剤除去によるプロセス煩雑化およびそれに伴うコスト増大の観点、さらに溶剤使用による地球環境への悪影響の観点から溶剤を使用しない加熱溶融型接着剤が好ましい。また本発明に用いられるホットメルト接着剤組成物は熱可塑性樹脂単体でも使用可能だが、流動性、粘着性、酸化安定性付与の観点から軟化剤、粘着付与剤、酸化防止剤を含めた方が好ましい。
【0024】
<熱可塑性樹脂>
熱可塑性樹脂は、高温で流動可能になり、冷却により非流動可能な状態へと戻る非硬化性樹脂とするいわゆるホットメルト樹脂とすることができる。また、熱可塑性樹脂が基材に適用された後に、硬化(架橋)反応を受ける、硬化性樹脂とすることもできる。
【0025】
熱可塑性樹脂は、ポリウレタン系、アクリロニトリル系、ジエン系、アクリル系、ブタジエン系、ポリアミド系、ポリビニルブチラール系、オレフィン系、イソプレン系、ブタジエン系、クロロプレン系、アクリロニトリル系、ポリエステル系、ポリ塩化ビニル系、スチレン系、エチレン-酢酸ビニル系、フッ素系、シリコーン系およびそれらの共重合体を含む熱可塑性樹脂等からなる群から選ばれる1種以上を含むことができる。ただし、これらの樹脂に限定されるわけではない。熱可塑性樹脂は、耐久性、耐候性、耐熱性と接着力の観点から、より好ましくは、スチレン系の熱可塑性樹脂を含むことができる。熱可塑性樹脂は1種単独で用いても良いし、2種以上併用しても良い。さらに熱可塑性樹脂は異なるモノマーが連結することによって形成される共重合体を用いても良い。
【0026】
スチレン系の熱可塑性樹脂より具体的にはスチレン系エラストマーは、一般的にポリスチレンブロックとゴム中間ブロックとを有し、ポリスチレン部分が物理的架橋(ドメイン)を形成して橋掛け点となり、中間のゴムブロックは製品にゴム弾性を与える。中間のソフトセグメントにはポリブタジエン(B)、ポリイソプレン(I)及びポリオレフィンエラストマー(エチレン・プロピレン、EP)があり、ハードセグメントのポリスチレン(S)との配列の様式によって、直鎖状(リニアタイプ)及び放射状(ラジカルタイプ)とに分かれる。前記した好ましいスチレン系エラストマーの中でも、本発明ではより具体的にスチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体の水素添加物(SEPS)、スチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体の水素添加物(SEBS)、スチレン・ブタジエン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SBIS)またはスチレン・エチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体の水素添加物(SEEPS)からなる群から選ばれる1種以上を含むことができる。ただし、これらの樹脂に限定されるわけではない。
【0027】
<粘着付与剤>
粘着付与剤として例えば、水素添加されたテルペン系樹脂、テルペン系樹脂、水素添加されたロジン系樹脂ロジン系樹脂、水素添加された炭化水素系樹脂炭化水素系樹脂、エポキシ系樹脂、水素添加されたエポキシ系樹脂、ケトン系樹脂、水素添加されたケトン系樹脂、ポリアミド系樹脂、水素添加されたポリアミド系樹脂、エラストマー系樹脂、水素添加されたエラストマー系樹脂、フェノール系樹脂、水素添加されたフェノール系樹脂、石油系樹脂、水素添加された石油系樹脂、スチレン系樹脂および水素添加されたスチレン系樹脂などが挙げられる。これらの粘着付与樹脂は、単独または2種以上使用できる。
これらの中でも耐久性の観点から、水素添加された炭化水素系樹脂が好ましい。水素添加することで分子内構造に共役二重結合を持たなくなるので、粘着付与剤を含むホットメルト接着剤が被着体へ永久接着する際に光または熱による劣化が起こりにくいため10年以上の接着力保持が可能になる。
【0028】
<軟化剤>
軟化剤としては、例えば、ワセリン、鉱物油、植物性油脂、動物性油脂などが挙げられる。鉱物油としては、流動パラフィン、パラフィン、パラフィン鎖炭素数が全炭素数の50%以上を占めるパラフィン系鉱物油、ナフテン環炭素数が全炭素数の30~40重量%を占めるナフテン系鉱物油、および芳香族炭素数が全炭素数の30重量%以上を占める芳香族系鉱物油等を挙げることができる。植物性油脂:オリーブ油、カルナウバロウ、米胚芽油、コーン油、サザンカ油、ツバキ油、ヒマシ油、ホホバ種子油、ミンク油、ユーカリ葉油などを挙げることができる。動物性油脂:ミツロウ、スクワラン、はちみつを挙げることができる。その他、ミスチル酸、オレイン酸、ミスチル酸イソプロピル、ミスチル酸亜鉛、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリイソオクタン酸グリセリン、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、ステアリン酸、イソステアリン酸、クロタミトン、中鎖脂肪酸トリグリセリト、サリチル酸エチレングリコール、エチルヘキサン酸セチル、ジステアリン酸グリコール、セテアリルアルコール、セタノール、パルミチン酸セチル、パルミチン酸エチルヘキシル、パルミチン酸イソプロピル、ベヘニルアルコール等も軟化剤として挙げられる。これらの軟化剤は、単独または2種以上使用できる。
【0029】
<酸化防止剤>
酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジエチル〔[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル〕ホスフォネート、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-t-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル]プロピオネート、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト等が挙げられる。 フェノール系酸化防止剤
は、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が好ましく、リン系酸化防止剤は、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイトが好ましい。
【0030】
<その他の成分>
ホットメルト接着剤組成物は、本発明による効果を損なわない範囲であれば、各種添加剤を適宜配合することも可能である。例えば、硬化収縮率低減、熱膨張率低減、寸法安定性向上、弾性率向上、粘度調整、強度向上および靭性向上等の観点から、ポリイソシアネートやエポキシ樹脂、ポリカルボジイミド化合物等の硬化剤や有機又は無機の充填剤を配合することができる。このような充填剤は、ポリマー、セラミックス、金属、金属酸化物、金属塩、および染顔料等の材料から構成されるものであってよい。また、その形状については、特に限定されず、例えば、粒子状および繊維状等であってよい。また、基材とのレベリング性、塗工性の調整や接着性の向上のために、液状ゴム、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、難燃化剤、保存安定剤、酸化防止剤、金属不活性化剤、紫外線吸収剤、チキソトロピー付与剤、レベリング剤、消泡剤、分散安定剤、流動性付与剤、消泡剤および色材等も添加することができる。また、流動性を向上させるために溶剤を含ませてもよい。
【0031】
<導電性ホットメルト接着剤組成物>
本発明の導電性ホットメルト接着剤組成物は、上記、熱可塑性樹脂を必須成分とするホットメルト接着剤、導電性フィラーを必須成分とし、更に必要に応じて、軟化剤、粘着付与罪、酸化防止剤およびその他の成分を配合後、均一に分散することで製造することができる。
【0032】
ホットメルト接着剤組成物と導電性フィラーとの分散は、ニーダー、バンバリーミキサー、一軸押し出し機、二軸押し出し機、三本ロール、二本ロール、でホットメルト接着剤組成物を150℃以上の高温下で溶融し、導電性フィラーを添加した後、溶融混錬することで行うが、ホットメルト接着剤組成物と導電性フィラーの溶融混練を可能にするものであれば150℃以下の温度下で混練しても良い。あるいはホットメルト接着剤組成物を溶剤に溶解し、導電性フィラーを添加した後、遊星攪拌法や三本ロール法、二本ロール法、スキャンデックス法、ビーズミル法、ジェットミル法、スターバースト法、サンドミル法によって行う。使用する溶剤は熱可塑性樹脂およびホットメルト接着剤組成物を溶かすものであれば特に制限されない。ただし、物性を低下させない範囲であれば上記以外の分散方法を用いても良い。
【0033】
<積層体>
本発明の導電性ホットメルト接着剤組成物は、基材の片面に導電性ホットメルト接着剤組成物を塗布または印刷することによる導電性ホットメルト接着剤組成物層を有しており、シート型電極として利用することができる。
導電性ホットメルト接着剤組成物の塗工・印刷方法は、特に限定されることはない。塗工方法としてはスロットスプレー塗工法、オメガ塗工法、スパイラル塗工法、コントロールシーム塗工法、スロットスプレー塗工法、ドット塗工法、ホットメルトアプリケーター塗工法、ホットメルトコーター塗工法、ブレードコート塗工法、ディップ塗工法、グラビアコート塗工法、カーテンスプレー塗工法、ビード塗工法、ホットメルトロールコータースピンコート塗工法が挙げられ、印刷方法としてはインクジェット印刷法、スプレー印刷法、ロールコート印刷法、ドクターロール印刷法、ドクターブレード印刷法、カーテンコート印刷法、スリットコート印刷法、スクリーン印刷法、反転印刷法、プッシュコート印刷法、スリットコーター印刷法等を挙げることができる。溶剤を使用した場合の乾燥条件は、特に制限はなく、熱風乾燥、赤外線や減圧法を利用したものが挙げられる。乾燥条件としては、膜厚や選択した有機溶剤にもよるが、通常60~200℃程度の熱風加熱が用い
られる。導電性ホットメルト組成物の厚みは、100~300μmが好ましい。また、導電性ホットメルト組成物層は、加熱または紫外線照射によって架橋することもできる。
【0034】
<基材>
基材は、樹脂シート、紙、アルミニウムシート(アルミ箔)からなる群より選ばれる。例えば、樹脂シートとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアリレート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポオリノルボルネン等のポリオレフィン系樹脂などの樹脂から形成される樹脂シートが挙げられる。また、これらのシートに金属が積層した積層体であってもよく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)シートに金属が積層した積層体であってもよい。また、基材が熱で変形する場合があるため、ポリイミドシート、ポリナフタレンシート、プロピレンシート、シリコーン樹脂シートなどの耐熱性が高い基材もしくはフィラー充填により耐熱性が向上した基材が好ましい。
【0035】
<接着プロセス>
次に導電性ホットメルト接着剤組成物と基材を被着体上に設置し、特に限定されないがアイロンやIH加熱装置などを用いて被着体上で導電性ホットメルト組成物を溶融させて導電性ホットメルト接着剤組成物と被着体を接合させることで製造することができる。基材は、導電体、非導電体等、複数が挙げられるが、特に限定されることはない。被着体は、銀、ステンレス、銅、鉄、アルミ、コンクリート、モルタル、スレート、木材、セラミック、ガラス、コルク、紙、鉱物、非鉄金属、ポリマー、人間の皮膚等が挙げられるが特に限定されることはない。
【0036】
<その他の積層体>
その他の積層体成分として、積層体の強度向上のために組成物と基材の間にメッシュ層を設けることもできる。
【0037】
<抵抗率>
導電性ホットメルト接着剤組成物を構成するにあたり体積抵抗率を1×10Ω・cm未満の値とすることが好ましい。この理由は、導電性ホットメルト接着剤組成物の体積抵抗率がかかる範囲内の値であれば、導電性ホットメルト接着シートとした場合に好適な導電性を付与することができるためである。したがって、導電性ホットメルト接着剤組成物の体積抵抗値を1×10Ω・cm未満の値とすることがより好ましく、1×10Ω・cm未満の値とすることがさらに好ましい。なお、体積抵抗率の詳細な測定方法については、実施例で具体的に記載する。
【0038】
<弾性率>
本発明の組成物の弾性率の好ましい範囲は5MPa未満であり、より好ましくは1MPa未満である。この理由は、導電ホットメルト接着剤組成物の弾性率がかかる範囲の値であれば、導電ホットメルト接着シートとした場合に、複雑な被着体形状にも追随でき、さらに好適な接着力を発現することができるためである。なお、弾性率の詳細な測定方法については、実施例で具体的に記載する。
【0039】
<接着力>
導電性ホットメルト接着剤組成物の接着強度値は被着体によっても異なるが、好ましい範囲は2N/25mm以上10N/25mm未満であり、より好ましくは、10N/25mm以上である。なお、接着力の詳細な測定方法については、実施例で具体的に記載する。
【実施例
【0040】
以下、本発明を実施例により具体的かつ詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の一態様に過ぎず、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。なお、表中、「部」とあるのは「重量部」を、「%」とあるのは「重量%」をそれぞれ表すものとする。
【0041】
[ホットメルト接着剤の調整]
(製造例1~29)
攪拌機を備えたステンレスビーカーに、軟化剤として軟化剤1:10部と、熱可塑性樹脂としてSIS1:40部と、粘着付与剤として粘着付与剤1:50部と、酸化防止剤1:1部を投入し、150℃の温度領域に加熱して溶融した。その後、攪拌を行って、均一溶融溶液を得た後、冷却してホットメルト接着剤1を得た。
原料と組成比を表1の記載のとおりに変更した以外は、ホットメルト接着剤1の調整と同様の方法にて、ホットメルト接着剤2~29の作製を行った。
【0042】
[導電性フィラーの調整]
(製造例30~50)
表2に示した部数で、各フィラー粉体を手混ぜし導電性フィラー1~21を得た。
【0043】
[導電性ホットメルト接着剤の調整]
撹拌機を備えたニーダーにホットメルト接着剤1:70部と、導電性フィラー1:30とを、150℃で3時間混練し、導電性ホットメルト接着剤組成物1を得た。
ホットメルト接着剤、および導電性フィラーの種類および配合比率を表3に記載のとおりに変更した以外は、導電性ホットメルト接着剤1の調整と同様の方法にて、導電性ホットメルト接着剤2~65を調整した。
【0044】
表1に記載の熱可塑性樹脂、粘着付与剤、軟化剤、その他成分の略号を以下に示す。
【0045】
<熱可塑性樹脂>
・SEBS1:クレイトン株式会社 商品名:G1652
・SEBS2:クレイトン株式会社 商品名:G1726
・SEBS3:クレイトン株式会社 商品名:G1650
・SEBS4:クレイトン株式会社 商品名:G1651
・SBS1:クレイトン株式会社 商品名:D0243
・SBS2:クレイトン株式会社 商品名:D4433
・SIS1:クレイトン株式会社 商品名:D1117
・SIS2:クレイトン株式会社 商品名:D1114
・SEPS1:株式会社クラレ 商品名:SEPTON 2063
・SEPS2:株式会社クラレ 商品名:SEPTON 2005
・SEPS3:株式会社クラレ 商品名:G1730
・オレフィン1:宇部丸善ポリエチレン株式会社 商品名:UBE BOND F1100

・オレフィン2:東洋紡株式会社 商品名:PMA H3000P
・ポリアミド1:ヘンケル株式会社 商品名:PA6858
・ポリアミド2:アルケマ株式会社 商品名:プラタミドM1276
・ポリエステル1:東洋紡株式会社 商品名:バイロン200
・PVC1:三菱ケミカル株式会社 商品名:サンプレーンFG40EA
・EVA1:三井デュポンポリケミカル株式会社 商品名:エバフレックスV5733
・EPDM1:JSR株式会社 商品名:EP96
【0046】
<粘着付与剤>
・粘着付与剤1:荒川化学工業株式会社 商品名:P-100
・粘着付与剤2:ハリマ化成株式会社 商品名:ハリタックF
・粘着付与剤3:ヤスハラケミカル株式会社 商品名:YSポリスターT30
・粘着付与剤4:荒川化学工業株式会社 商品名:P-90
【0047】
<軟化剤>
・軟化剤1:出光興産株式会社 商品名:ダイアナプロセスオイルNS90S
・軟化剤2:出光興産株式会社株式会社 商品名:ダイアナプロセスオイルPW90
・軟化剤3:日本サン石油株式会社 商品名:SUNPURE N100
【0048】
<その他成分>
・酸化防止剤1:BASFジャパン株式会社 商品名:イルガノックス1010
・液状ゴム1:株式会社クラレ 商品名:クラプレンLIR290
【0049】
表2に記載の導電性フィラーの略号を以下に示す。
・フィラー1:SECカーボン株式会社 商品名:SGO-10(フレーク状黒鉛)
・フィラー2:CABOT株式会社 商品名:VULCAN XC-72R(カーボンブラック)
・フィラー3:ライオンスペシャリティケミカルズ株式会社 商品名:EC300J(ケッチェンブラック)
・フィラー4:ライオンスペシャリティケミカルズ株式会社 商品名:EC200L(ケッチェンブラック)
・フィラー5:ライオンスペシャリティケミカルズ株式会社 商品名:EC600JD(ケッチェンブラック)
・フィラー6:日本黒鉛工業株式会社 商品名:CMX―100(黒鉛)
・フィラー7:日本黒鉛工業株式会社 商品名:LEP(黒鉛)
・フィラー8:ハイペリオンカタリシスインターナショナル株式会社 商品名:ハイペリオンBN(カーボンナノチューブ)
・フィラー9:アイ・テック株式会社 商品名:iGurafen-α(グラフェン)
・フィラー10:福田金属箔粉工業株式会社 商品名:Ag-XF301S(銀)
・フィラー11:大明化学工業株式会社 商品名:タイミクロン TM-DA(アルミナ)
【0050】
次に得られた組成物を使用して、以下の実験を行った。(実施例1~65、比較例1~5)
ただし、実施例33、58、59、61~65は参考例である。
【0051】
1.体積抵抗率の測定
組成物例1~65、比較例1~5で得られた、組成物に熱をかけた状態でプレス板で圧をかけることによって組成物とプラスチックフィルムの積層体からなるシートを形成させ、さらにその積層体を1.5cmラ3cmに裁断し、低抵抗抵抗率計(株式会社三菱化学アナリテック製:ロレスターGX MCP-T700)を用いた4探針法で組成物層の体積抵抗率の測定を行った。2段階で評価を行った。
「○」評価の場合、本請求項を満たす。
○:体積抵抗率が1×10Ωcm未満
×:体積抵抗率が1×10Ωcm以上
【0052】
2.弾性率の測定
導電性ホットメルト接着剤の引張試験には島津製作所社製の引張試験機EX―SXを用いて測定した。測定方法としては、組成物実施例1~65、比較例1~5で得られた、組成物を5mm×1mm×24mmに裁断したものを測定サンプルとし、25℃下で測定サン
プルを設置後、クロスヘッド速度を50mm/min.とし、クロスヘッド変位および破断直後までの荷重歴を測定するとともに、ひずみゲージを用いて測定サンプルの長手方向のひずみを測定した。得られた応力-ひずみ線図より、弾性率を算出した。
◎:弾性率が1MPa未満
○:弾性率が1MPa以上5MPa未満
×:弾性率が5MPa以上
【0053】
3.接着力の測定
導電性ホットメルト接着剤の接着力判定には島津製作所社製の引張試験機EX―SXを用いて測定した。測定サンプルの作製は導電性ホットメルト接着剤組成物1~65、比較例1~5で得られた、200umの厚みを持つ組成物とポリイミドフィルムの積層物からなるシートを7cm×7cmの各種被着体(コンクリートの場合グラインダーで事前に表面
処理済)、に対して貼りつけ、上から2cm×7cmのサイズのプレス板を200℃の温
度にした状態で0.1MPaの圧力をかけながら1分間押し付け接着させることで行った。加熱終了後、室温に戻るまで24時間放置したものを測定サンプルとした。測定方法は組成物シートが被着体に接着した測定サンプルを25mm幅になるように調整し、シートの端を90度の角度で速度を50mm/min.で引き剥がしたときの荷重から接着力を計算し下記に従って3段階で評価を行った。
◎:接着力が10N以上
○:接着力が2N以上10N未満
×:接着力が2N未満
使用グラインダー:Monotaro スリムディスクグラインダー(MRO-100DG)
使用熱プレス機:TP‐701B
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】

【表3】
【0057】
表3の結果から実施例1~実施例65で調製された組成物を用いて形成された積層体は、比較例1~比較例5で調製された導電性ホットメルト接着剤組成物を用いて形成された比較例の積層体と比べ、非常に良好な接着性、体積抵抗率を有することがわかった。すなわち、実施例1~実施例65で調製された組成物は、比較例1~比較例5で調製された組成物と比べ、導電性ホットメルト接着剤積層体の形成に好適使用できることがわかった。
図1