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特許7473764アルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物、該粘着剤組成物を用いてラベルが接着された容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】アルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物、該粘着剤組成物を用いてラベルが接着された容器
(51)【国際特許分類】
   C09J 153/02 20060101AFI20240417BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20240417BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240417BHJP
   C09J 123/22 20060101ALI20240417BHJP
   B65D 25/20 20060101ALI20240417BHJP
   B65D 23/08 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
C09J153/02
C09J11/08
C09J11/06
C09J123/22
B65D25/20 Q
B65D23/08 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023066851
(22)【出願日】2023-04-17
【審査請求日】2023-11-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石黒 秀之
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 洋一
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-118102(JP,A)
【文献】特開2016-204588(JP,A)
【文献】特開2021-95448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性エラストマー(A)、酸価が100~300mgKOH/gである固体粘着付与剤(B)、ワックス(C)、ポリブテン(D)(但し、水素未添加ポリブテンを除く)およびプロセスオイル(E)を含有し、
熱可塑性エラストマー(A)が、スチレン含有率が25~50質量%のスチレン系エラストマー(A-1)およびスチレン含有率が5質量%以上25質量%未満のスチレン系エラストマー(A-2)を含み、
ポリブテン(D)の100℃における動粘度150~300mm /sであり、
ホットメルト粘着剤組成物100質量%中、スチレン系エラストマー(A-1)およびスチレン系エラストマー(A-2)の含有率が、それぞれ2.5~35質量%であり、
プロセスオイル(E)の含有率が45質量%であることを特徴とするアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物。
【請求項2】
ワックス(C)の融点が、70~150℃であることを特徴とする請求項1記載のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物。
【請求項3】
アルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物100質量%中、熱可塑性エラストマー(A)の含有率が5~40質量%、固体粘着付与剤(B)の含有率が20~70質量%、ワックス(C)の含有率が1~20質量%、ポリブテン(D)の含有率が5~40質量%であることを特徴とする請求項1記載のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項に記載のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物を用いてラベルが接着された容器。
【請求項5】
ラベルが胴巻きラベルであることを特徴とする請求項記載の容器。
【請求項6】
材質がポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項記載の容器。
【請求項7】
炭酸飲料用であることを特徴とする請求項記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物および、当該粘着剤組成物を用いてラベルが接着された容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETという) ボトルの生産量と共に飲料用としてのPETボトルの使用量も伸びている。PETボトルの胴部外周は、商品名などを表示するためのプラスチックラベルが付けられているのが通常である。PETボトルの胴部外周にプラスチックラベルを付ける方法には、「胴巻きラベル方式」、「ストレッチラベル方式」、「シュリンクラベル方式」等がある。
【0003】
いずれの方式の場合も、使用されたPETボトルが回収され、原料としてリサイクルできることが求められる。例えば、PETボトルリサイクル推進協議会が出している「指定PET ボトルの自主規制ガイドライン」は以下の指標を掲げている。即ち、ラベル付きのボトルをカッティングして作ったペレットを、90℃の1.5%水酸化ナトリウム水溶液中にペレット濃度10%(重量比)で浸漬し、15分間攪拌した場合に、PETのペレットからラベルが剥離し、印刷インキ、接着剤等がPET のペレットに残らない、という指標である。リサイクル工程においてラベルを剥離させる(アルカリ分散型)ため、PETボトルなどの容器のラベル用粘着剤としてアルカリ分散型のホットメルト粘着剤組成物が開発、使用されている。
【0004】
一方、内容物に炭酸が含まれる場合、夏場の輸送時などの高温下(40~50℃)で放置されると、PETボトルが膨張する。PETボトルの膨張により胴巻きラベルに負荷がかかり、それにより胴巻きラベルの巻き終端部のプラスチックフィルムが、内側に位置するプラスチックフィルムからずれることがあり、胴巻きラベルの巻き終端部がずれにくく、たとえ、ずれたとしても剥がれないこと(実貼り適性)が求められる。そのためにラベルを構成する基材であるプラスチックフィルム同士間の接着強度(剥離強度)が大きいことや、ボトル膨張によるラベルのずれに対するホットメルト粘着剤組成物の抵抗力と追従性が求められる。
【0005】
さらに、近年では環境への配慮を理由にラベルに使用されるプラスチックフィルムや粘着剤の薄膜化(通常:30~50μm、薄膜:5~20μm)が進んでおり、塗工時の糸曳きがないこと、ラベル付き容器が落下した時の衝撃でラベルが剥離しないことが求められる。特に、非炭酸用等の丸型ではない形状の容器では落下時の衝撃でラベルが剥離しやすい傾向にあり、容器の形状によらずに耐衝撃性に優れたホットメルト粘着剤組成物が求められる。
【0006】
特許文献1には、コポリエステルを含む水分散性のホットメルト接着剤組成物が開示されている。しかし、特許文献1記載のコポリエステルは、耐熱性が悪いために一部熱分解してしまい、接着剤組成物の接着強度が安定しないという問題があった。
【0007】
特許文献2には、熱可塑性エラストマー(A)、酸価が100~300mgKOH/gであるロジン系粘着付与剤(B)、テルペンフェノール樹脂(C)、プロセスオイル(D)および無水マレイン酸をグラフト重合させたポリプロピレンワックス(E)を含むホットメルト接着剤が開示されている。
【0008】
特許文献3には、熱可塑性エラストマー(A)、酸価が100~300mgKOH/gであるロジン系粘着付与剤(B)、プロセスオイル(C)、25℃の針入度が10dmm 以下であるワックス(D)および数平均分子量が1000以上のポリエチレングリコール(E)を含むホットメルト接着剤が開示されている。
【0009】
特許文献4 には、熱可塑性エラストマー(A) 、酸価が100~300mgKOH/gである固体粘着付与剤(B)、液状粘着付与剤(C)、ワックス(D)および特定のノニオン系界面活性剤(E)を含むホットメルト接着剤が開示されている。
【0010】
引用文献2~4に開示されるホットメルト接着剤を用いたラベルは、アルカリ分散型、プラスチックフィルム同士の接着強度、および保持力は十分に大きいが、ホットメルト粘着剤組成物の膜厚を薄膜にすることで接着強度が著しく低下し、さらにはボトル膨張によるラベルのずれに対するホットメルト粘着剤組成物の抵抗力と追従性が失われ、ラベルが剥がれてしまうという問題があった。
【0011】
即ち、ホットメルト粘着剤組成物を薄膜塗工した場合にも糸曳きが発生しにくく、十分な接着力を有し、ボトルの膨張によるラベルのずれに対するホットメルトの抵抗力と追従性が高く、長期保管した際にラベルがずれにくく、熱アルカリ水溶液により容器から接着物を容易且つ糊残りなく剥がすことのできるアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特表平11-512134号公報
【文献】特開2010-90185号公報
【文献】特開2010-280878号公報
【文献】特開2012-1624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、薄膜塗工した場合にも糸曳きが発生しにくく、十分な接着力を有し、ボトルの膨張によるラベルのずれに対するホットメルトの抵抗力と追従性が高く、長期保管した際にラベルがずれにくく、熱アルカリ水溶液により容器から接着物を容易且つ糊残りなく剥がすことのできるアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物および、当該ホットメルト粘着剤組成物を用いてラベルが貼り付けられた容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本開示は、以下のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物、該粘着剤組成物を用いてラベルが接着された容器を提供する。
[1]:熱可塑性エラストマー(A)、酸価が100~300mgKOH/gである固体粘着付与剤(B)、ワックス(C)、ポリブテン(D)およびプロセスオイル(E)を含有し、
ホットメルト粘着剤組成物100質量%中、プロセスオイル(E)の含有率が0~50質量%であることを特徴とするアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物。
[2]:熱可塑性エラストマー(A)が、スチレン含有率が25~50質量%のスチレン系エラストマー(A-1)およびスチレン含有率が5質量%以上25質量%未満のスチレン系エラストマー(A-2)を含む上記[1]記載のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物。
[3]:ポリブテン(D)の100℃における動粘度が70~1000mm/sである上記[1]または[2]記載のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物。
[4]:ワックス(C)の融点が、70~150℃である上記[1]~[3]いずれか記載のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物。
[5]:アルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物100質量%中、熱可塑性エラストマー(A)の含有率が5~40質量%、固体粘着付与剤(B)の含有率が20~70質量%、ワックス(C)の含有率が1~20質量%、ポリブテン(D)の含有率が5~40質量%である上記[1]~[4]いずれか記載のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物。
[6]:上記[1]~[5]いずれかに記載のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物を用いてラベルが接着された容器。
[7]:ラベルが胴巻きラベルである上記[6]記載の容器。
[8]:材質がポリエチレンテレフタレートである上記[6]または[7]記載の容器。
[9]:炭酸飲料用である上記[6]~[8]いずれか記載の容器。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、ホットメルト粘着剤組成物を薄膜塗工した場合にも糸曳きが発生しにくく、十分な接着力を有し、ボトルの膨張によるラベルのずれに対するホットメルトの抵抗力ならびに追従性が高く、特にボトル膨張率が大きい炭酸飲料用PETボトルにおいて、長期保管した際にラベルがずれにくいことに加え、熱アルカリ水溶液に漬けると容器などから簡単にラベルが糊残りなく剥離し、再付着することもない、アルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物を提供する。また、本発明のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物を用いてラベルが接着された容器を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示について詳細に説明する。なお、本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本発明の範疇に含まれることは言うまでもない。
【0017】
本明細書において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値の範囲として含むものとする。なお、本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に一種単独でも二種以上を併用してもよい。また、「部」および「%」は、特に断りのない限り、それぞれ「質量部」および「質量%」を表す。
また、本明細書においてはアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物を「ホットメルト粘着剤組成物」と略記する場合がある。「ホットメルト」とは、常温で固体あるいは粘稠な状態にあり、加熱により溶融して軟化、流動状体あるいは液状となる性質をいう。
【0018】
<アルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物>
本発明のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物は、熱可塑性エラストマー(A)、酸価が100~300mgKOH/gである固体粘着付与剤(B)、ワックス(C)、ポリブテン(D)およびプロセスオイル(E)を含有し、ホットメルト粘着剤組成物100質量%中にプロセスオイル(E)を0~50質量%含む。
【0019】
アルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物100質量%に、熱可塑性エラストマー(A)を5~40質量%、固体粘着付与剤(B)を20~70質量%、ワックス(C)を1~20質量%、ポリブテン(D)を5~40質量%を含むことが好ましい。熱可塑性エラストマー(A)を5~40質量%とすることにより接着性(凝集力)を良好に保ち、固体粘着付与剤(B)を20~70質量%とすることにより接着性(密着性)を良好に保ち、ワックス(C)を1~20質量%とすることにより凝集力が良好に保ち、ポリブテン(D)を5~40質量%とすることにより、容器の形状によらず、落下時にラベルが剥離することがない。
【0020】
アルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物100質量%中、熱可塑性エラストマー(A)、固体粘着付与剤(B)、ワックス(C)、ポリブテン(D)及びプロセスオイル(E)の合計の含有率は60~100質量%であることが好ましい。この範囲とすることにより、接着性および耐衝撃性をより効果的に引き出すことができる。より好適な範囲は70~100質量%であり、更に好適な範囲は80~100質量%である。
【0021】
(熱可塑性エラストマー(A))
熱可塑性エラストマー(A)は、熱可塑性エラストマーの一種である。熱可塑性エラストマーとは、常温では加硫ゴムと同様な性質を持ち、弾性のある材料をいい、高温では普通の熱可塑性樹脂と同じく、既存の成形機をそのまま使用できる高分子材料である。熱可塑性エラストマーは、分子中に弾性を持つゴム成分(ソフトセグメント:軟質相)と塑性変形を防止するための分子拘束成分(ハードセグメント:硬質相)との両方を持っているためゴムとプラスチックの中間の性質を持つ。
スチレン系エラストマーは、一般的にポリスチレンブロックとゴム中間ブロックとを有し、ポリスチレン部分が物理的架橋(ドメイン)を形成して橋掛け点となり、中間のゴムブロックは製品にゴム弾性を与える。中間のソフトセグメントにはポリブタジエン(B)、ポリイソプレン(I)およびポリオレフィンエラストマー(エチレン・プロピレン(EP)、エチレン・ブチレン(EB)、ブチレン・ブタジエン(BB)) があり、ハードセグメントのポリスチレン(S)との配列の様式によって、直鎖型(リニアタイプ)および分岐型(ラジアルタイプ)とに分かれる。
【0022】
ホットメルト粘着剤組成物100質量%中の熱可塑性エラストマー(A)の含有率は、5~40質量%が好ましく、10~30質量%がより好ましい。
上記範囲で熱可塑性エラストマー(A)を含有することで、凝集力、接着性を両立することができる。
【0023】
熱可塑性エラストマー(A)の25℃のトルエン溶液の粘度(固形分25質量%)は、100~2,000mPa・sであることが好ましい。25℃のトルエン溶液の粘度(固形分25質量%)が前記範囲であることで、耐衝撃性及び糸曳き性を両立できる。
【0024】
熱可塑性エラストマー(A)が、スチレン含有率25~50質量%からなるスチレン系エラストマー(A-1)およびスチレン含有率5質量%以上25質量%未満からなるスチレン系エラストマー(A-2)の二種類を含むことが好ましい。(A-1)と(A-2)を同時に含むことで、凝集力、接着性、溶解時粘度を低く抑えることができるため好ましい。
熱可塑性エラストマー(A-1)のスチレン含有率は、より好ましくは25質量~40質量%、さらに好ましくは30~40質量%である。
熱可塑性エラストマー(A-2)のスチレン含有率は、より好ましくは15質量%以上25質量%未満、さらに好ましくは15~20質量%である。
【0025】
スチレン系エラストマー(A-1)およびスチレン系エラストマー(A-2)は、それぞれアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物100質量%中に、2.5~35質量%、さらに好ましくは5~20質量%含まれることが好ましい。スチレン系エラストマー(A-1)を前記範囲とすることにより、凝集力及びラベリング時の糸曳き性低減の効果が高められる。
また、スチレン系エラストマー(A-2)を前記範囲とすることにより、凝集力、粘着力及び溶解時粘度を低く抑える効果が高められる。特に、スチレン系エラストマー(A-2)は、高分子でありながらホットメルト粘着剤組成物の溶解時粘度を低く抑えることができので、ラベリング時の糸曳きを抑制できる。
【0026】
スチレン系エラストマーとしては、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー(以下SBSと略記することもある)、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロックコポリマー(以下SEBSと略記することもある)、スチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロックコポリマー(以下SEPSと略記することもある)、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー(以下SISと略記することもある)、スチレン-ブチレン・ブタジエン-スチレンブロックコポリマー(以下SBBSと略記することもある)等が挙げられる。
【0027】
(固体粘着付与剤(B))
固体粘着付与剤(B)は酸価が100~300mgKOH/gである、常温で固体の粘着付与剤である。固体粘着付与剤(B)は、ホットメルト粘着剤組成物がラベル及びボトルへの密着性を高めることがある。酸価が300mgKOH/gを超えると相溶性が悪く、溶融粘度が高くなり塗工性が悪く、接着力(密着性)も強度も低下する。100mgKOH/g未満であると十分なアルカリ分散型が発揮できなくなる。なお、酸価は、試料1gを中和するに要する水酸化カリウム(KOH)のミリグラム数であり、JIS K5601-2-1酸価(滴定法)に準拠して測定した値である。酸価の測定方法は、実施例の欄で詳細を記載する。
【0028】
酸価が100~300mgKOH/gである固体粘着付与剤(B)としては、特に限定されない。一例としてロジン系粘着付与剤が挙げられる。
ロジン系粘着付与剤としては、変性処理されていない未水添ロジン 、変性処理されていない水添ロジン、(メタ)アクリル酸変性ロジン、水添(メタ)アクリル酸変性ロジン、マレイン酸変性ロジン、水添マレイン酸変性ロジン、フマル酸変性ロジン、水添フマル酸変性ロジン等が挙げられる。
【0029】
ホットメルト粘着剤組成物100質量%中の固体粘着付与剤(B)の含有率は、20~70質量%が好ましく、30~60質量%がより好ましく、40~55質量%がさらに好ましい。
上記範囲でロジン系粘着付与剤(B)を含有することで、アルカリ分散性と接着性(接着性)を両立できるため、好ましい。
【0030】
(ワックス(C))
本発明で用いられるワックス(C)は、天然ワックス:動物系ワックス(蜜蝋、オゾケライトなど)、植物系ワックス(木蝋、米糠蝋など)、石油系ワックス(パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなど)、合成ワックス(フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレン及び酸などの変性ワックスなど)に大別される。ワックス(C)は単独もしくは2種類以上を組み合わせて使用される。ワックス(C)は、接着強度及び耐衝撃性の観点から合成ワックスが好ましい。更に好ましくは、接着力(密着性)の点からポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス及びその酸変性ワックスである。
【0031】
ワックス(C)の示差熱走査熱量計(DSC)により測定した融点は、70~150℃の範囲であることが好ましい、ワックス(C)の融点が70℃以上であることで耐熱性及び接着性(凝集力)が良好となり、150℃以下であることによりホットメルト粘着剤組成物の塗工性及びアルカリ分散性が良好となる。ワックス(C)の融点が、90~150℃以下であることが更に好ましい。融点の測定方法については実施例の欄に詳細を記載する。
【0032】
ホットメルト粘着剤組成物100質量%中のワックス(C)の含有率は、1~20質量%が好ましく、3~15質量%がより好ましく、5~10質量%がさらに好ましい。
上記範囲でワックス(C)を含有することで、接着性(保持力)及びアルカリ分散性を両立することができる。接着性(保持力)が高くなると炭酸飲料用ラベルとして保存時ラベルが剥離しないが、高くなりすぎるとアルカリ分散性が失われる。
【0033】
(ポリブテン(D))
ポリブテン(D)とは、イソブテンを主モノマーとし、副モノマーとしてノルマルブテンが一部反応した長鎖の共重合体である。かかるポリブテンのモノマー(原料)には、精製イソブチレンを主モノマーとする低分子量ポリイソブチレンと異なり、ナフサ分解で生成するC4留分からブタジエンを抽出した残りの留分をそのまま用いることができる。なお、ポリブテンは、若干のブテン-1が共重合した液状ポリマーであってもよい。
【0034】
ポリブテン(D)の100℃におけるの動粘度(JIS K2283)は、70~1000mm/sの範囲が好ましい。ポリブテン(D)の100℃における動粘度が70mm/s以上であることにより、ラベルの接着力(保持力)が強くなり、1000mm/s以下であることにより、熱アルカリ水溶液中でラベルを剥離性が良好になる。ポリブテン(D)の100℃における動粘度は、より好ましくは100~600mm/sで、更に好ましくは、150~300mm/sである。なお、動粘度の測定方法は実施例の欄に記載する。
【0035】
ホットメルト粘着剤組成物100質量%中のポリブテン(D)の含有率は、5~40質量%が好ましく、10~25質量%がより好ましく、15~20質量%がさらに好ましい。
上記範囲でポリブテン(D)を含有することで、保持力及びアルカリ分散性を両立することができる。
【0036】
(プロセスオイル(E))
本発明で用いられるプロセスオイル(E)は、ゴムや熱可塑性エラストマー等の可塑剤として一般的に使用されるオイル、いわゆる石油精製等において生産されるプロセスオイルであり、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイルに大別される。アルカリ分散性の観点からナフテン系オイルが好ましい。
プロセスオイルは、芳香族環・ナフテン環・パラフィン鎖の混合物であるが、本願におけるナフテン系プロセスオイルは、プロセスオイルの全炭素中のナフテン環炭素が35~46質量%のものを指す。また、全炭素中の芳香族炭素が30重量%以上のものを芳香族系プロセスオイル、全炭素中のパラフィン鎖炭素が50重量%以上のものをパラフィン系とプロセスオイルと分類する。
【0037】
プロセスオイル(E)の40℃での動粘度は、50~450mm/sの範囲であることが、好ましい。プロセスオイル(E)の40℃の動粘度は、50mm/s未満であると接着性(保持力)が強くなり、450mm/sより大きくなるとアルカリ分散性及び分散性の観点から好ましい。より好ましくは、100~450mm/s以下であり、更に好ましくは200~400mm/sである。なお、動粘度の測定方法は実施例の欄に記載する。
【0038】
ホットメルト組成物粘着剤100質量%中のプロセスオイル(E)の含有率は、0~50質量%が好ましく、5~40質量%がより好ましく、10~30質量%がさらに好ましい。上記範囲でプロセスオイル(E)を含有することで、アルカリ分散性と衝撃性が両立できる。特にプロセスオイル(E)を含有することによりPETボトルの形状によらず、落下させて衝撃を与えた時ラベルが剥がれなくなる。
【0039】
本発明のホットメルト組成物粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で更にその他成分を含有してもよい。その他成分としては、例えば、着色剤、ブロッキング防止剤、無機フィラー、酸化防止剤、充填剤、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重金属不活性化剤、蛍光増白剤などが挙げられる。これらの成分は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
前記着色剤は、赤、青、緑、黄などの慣用公知の着色剤を使用することができる。着色剤としては、顔料、染料、色素のいずれでもよく、例えば、モノアゾ系、ジズアゾ系、アゾレーキ系、ベンズイミダゾロン系、ペリレン系、ジケトピロロピロール系、縮合アゾ系、アントラキノン系、キナクリドン系、フタロシアニン系、アントラキノン系があり、顔料系はピグメント、ペリレン系、モノアゾ系、縮合アゾ系、イソインドリノン系、酸化チタン、カーボンなどが挙げられる。
【0041】
前記ブロッキング防止剤としてはシリコーン、ステアリン酸アマイド、オレイン酸アマイド、エルカ酸アマイド、オレイン酸アミド及びベヘン酸アマイドなどの不飽和脂肪酸アマイドなどが挙げられる。
【0042】
前記無機フィラーとしては、金属、金属酸化物及び金属水酸化物など粒子、繊維状などが挙げられる。具体的には、ガラス繊維、炭素繊維、珪酸カルシウム、チタン酸カルシウム、ホウ酸アルミニウム繊維、フレーク状ガラス、タルク、カオリン、マイカ、ハイドロタルサイト、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、リン酸一水素カルシウム、ワラストナイト、シリカ、ゼオライト、アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、アルミナ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、カーボンナノチーブ、グラファイト、銅、銀、アルミニウム、ニッケル、鉄、フッ化カルシウム、雲母、モンモリナイト、アパタイトなどが挙げられる。
【0043】
前記酸化防止剤としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジエチル〔[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル〕ホスフォネート、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-t-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル]プロピオネート、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト等が挙げられる。これらの酸化防止剤は、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0044】
前記充填剤としては、湿式シリカ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、モンモリロナイト、マイカ、スメクタイト、有機化モンモリロナイト、有機化マイカ、有機化スメクタイト等が挙げられる。
【0045】
前記難燃剤としては、燐含有化合物系難燃剤、ハロゲン含有化合物系難燃剤、スルホン酸金属塩系難燃剤、珪素含有化合物系難燃剤等が挙げられる。
【0046】
前記可塑剤としては、フタル酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤、脂肪族一塩基酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、テトラヒドロフタル酸エステル系可塑剤、グリコール系可塑剤、及びビスフェノールAアルキレンオキサイド誘導体などが挙げられる。
【0047】
前記帯電防止剤としては、プラスチックの帯電防止剤として汎用されているものでよく、具体的には、非イオン界面活性剤(例えば、多価アルコールの脂肪酸エステル、アルキルアミンのエチレンオキサイド付加物、及びアルキルアミンのエチレンオキサイド付加物の脂肪酸エステルなど)、陰イオン界面活性剤(例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩など)、陽イオン界面活性剤(例えば、脂肪族アミン塩、4級アンモニウム塩など)、両性界面活性剤(例えばイミダゾリン型、ベタイン型など)が挙げられる。
【0048】
前記光安定剤としては、ヒンダードアミン系化合物及びベンゾエイト系化合物などが挙げられる。
【0049】
前記紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0050】
前記重金属不活性化剤としては、サリチル酸誘導体、ヒドラジド誘導体又はシュウ酸アミド誘導体などが挙げられる。
【0051】
前記 蛍光増白剤としては、スチルベン系、クマリン系、オキサゾール系、ナフタルイミド系が挙げられる。
【0052】
熱可塑性エラストマー(A)、酸価が100~300mgKOH/gである固体粘着付与剤(B)、ワックス(C)、ポリブテン(D)およびプロセスオイル(E)以外のその他成分の含有量はアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物100質量%中に0~40質量%であることが好ましい。より好ましくは0~30質量%であり、0~20質量%が更に好ましい。
【0053】
本発明のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物は、紙、プラスチックフィルムなどをガラス、プラスチック、金属などの種々の基材に接着するための粘着剤として用いることができる。本発明のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物は、貼り付けられた紙、フィルムなどを熱アルカリ水により簡単に剥離することができることから、清涼飲料水、調味料、洗剤、シャンプー、食用油、化粧品、医薬品などに使用されているガラス瓶などのガラス容器やPET (ポリエチレンテレフタレート) ボトルなどのプラスチック容器のラベル用粘着剤として用いることが好ましい態様として挙げられる。しかし本発明の粘着剤の用途はこのラベル用途に限られるものではなく、ガムテープ用、クリヤケース用、組み立て用など、従来知られた全ての用途の粘着剤として用いることができる。しかし、実施例において具体的に示すように、本発明のアルカリ粘着剤組成物は、PETボトルリサイクル推進協議会が出している「指定PET ボトルの自主規制ガイドライン」の熱アルカリ水によるラベルの剥離要件を満たすことやボトル膨張によるラベルのずれに対するホットメルト粘着剤組成物の追従性を有していることから、PETボトルにラベルを接着する際の粘着剤としての用途、すなわちPETボトルのリサイクル適合粘着剤用途が特に好ましいものである。
【0054】
PETボトルのラベル基材としては通常、二軸延伸ポリプロピレン(OPP) 、ポリエチレン(PE) 、PETさらには紙なども用いられている。また、ラベルとしては、アルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物が塗布される面と反対側、すなわちラベルの表面に、あるいはアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物が塗布される面、すなわちラベルの裏面に適宜印刷などが施されたものが用いられている。本発明のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物は、印刷が施されたラベル印刷面に塗布することもできるし、勿論印刷が施されていないものに塗布されてもよく、いずれの場合にも、所定の接着性、剥離性と熱アルカリ水溶解性を示す。また、印刷は、ラベル裏面の全面が印刷されたものであってもよいし、面の一部が印刷されたものであってもよい。印刷は、グラビア印刷、UV印刷など、従来知られた印刷法の何れの方法により行われたものでもよい。
【0055】
(アルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物の製造)
本発明のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物は、例えば、撹拌機を備えた溶融釜でワックス(C)、ポリブテン(D)必要に応じてプロセスオイル(E)を溶融したものに熱可塑性エラストマー(A)を混合分散し、さらに固体粘着付与剤(B)を添加し混合することにより製造することができる。
【0056】
本発明のホットメルト粘着剤組成物は配合成分を混合し、所望の形状に成形したものを用いてもよい。所望の形状として、顆粒状、ペレット状、面状、あるいはブロック状が例示できる。これらの方法は、公知の方法を制限なく利用することができる。
【0057】
(容器)
本発明における容器は、アルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物を用いてラベルが接着されたものを指す。容器の材質としてはガラス、プラスチック、紙などが挙げられるが、特に限定されない。また、その形状は丸型であっても角型等の非丸型であっても良い。具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)ボトルにラベルが接着されたものなどが挙げられる。
【0058】
PETボトルにおいては、PETボトルの胴周りの一部にラベルが貼着されたものの他、ボトルの胴周りを周状に覆うように巻きまわされた胴巻きラベルが利用されており、本発明のホットメルト粘着剤組成物は、この胴巻きラベルの接着にも好ましく用いられる。このような胴巻きラベルとしてはOPPフィルムが多用されている。本発明のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物は、このようなOPPフィルムなどの胴巻きラベルについても、裏面に印刷がなされているものも、印刷がなされていないものも同様に、良好な接着を行うことができる。本発明のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物は、ラベル裏面全面に塗工されてもよいが、粘着剤の塗工はラベル裏面の一部であってもよい。塗布方式としては、オープンホイール方式、クローズガン方式、ダイレクトコート方式などがある。剥がしたときにPETボトルなどに糊が残らない方式としては、オープンホイール方式、ダイレクトコート方式が好ましい。
【0059】
本発明の容器に貼り付けられるラベルのアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物の塗工量は、10~300g/mが好ましい。塗工量が10~300g/mであることにより、アルカリ分散性、接着性などの点で優れた効果を発揮する。
【実施例
【0060】
以下、本発明を実施例および比較例を挙げてさらに具体的に説明する。しかし、本発明
は、以下の実施例に限定されるものではない。例中、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を示し、「%」は「質量%」を示す。
【0061】
[粘度]
固形分が25質量%となるようにスチレン系エラストマーをトルエンに溶解させた25℃の溶液を調製し、B型粘度計で粘度を測定した。
【0062】
[酸価]
酸価の測定は、JIS K5601-2-1酸価(滴定法)に準拠して行った。具体的には、試料1gを精密に量り、250mlのフラスコに入れ、エタノールまたはエタノールおよびエーテルの等容量混液50mlを加え、加温して溶かし、時々振り混ぜながら0 .1N水酸化カリウム液で滴定した(指示薬:フェノールフタレイン)。滴定の終点は、液の淡紅色が30秒残存する点とした。次いで、同様の方法で空試験を行って補正し、次の式から酸価の値を求めた。
酸価=〔0.1N水酸化カリウム液の消費量(ml)×5.611〕/〔〔試料量(g)〕
【0063】
[融点]
ワックスの融点は、示差走査熱量測定装置(日本分光(株)社製FT/IR―4X)で測定を行った。約5mgのサンプルを取り、0℃に冷却した後昇温速度10℃/分で170℃まで加熱を行い、次に-20℃/分の冷却速度で0℃まで冷却を行った。0℃1分間保持した後10℃/分の昇温速度で再び加熱を行い、170℃に加熱した時の発熱吸熱量を測定した。ワックスが溶ける時の融解ピークを融点とした。
【0064】
[動粘度]
ポリブテン(D)およびプロセスオイル(E)の動粘度は、JIS K2283に準拠して行った。なお、ポリブテン(D)の動粘度は100℃、プロセスオイル(E)の動粘度は40℃で測定した。
【0065】
次に、比較例と対比しながら本発明の具体的な実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り実施例における「部」及び「%」は、各々「質量部」及び「質量%」を表す。
【0066】
実施例および比較例のホットメルト粘着剤組成物
に用いた原料を以下に示す。
【0067】
[熱可塑性エラストマー(A)]
クレイトンG1650(クレイトンポリマー社製)、スチレン含有率:30質量%、固形分25質量%トルエン溶液の粘度:8,000mPa・s、SEBS
クレイトンG1651(クレイトンポリマー社製)、スチレン含有率:33質量%、固形分25質量%トルエン溶液の粘度:50,000mPa・s以上、SEBS
クレイトンG1652(クレイトンポリマー社製)、スチレン含有率:30質量%、固形分25質量%トルエン溶液の粘度:1,800mPa・s、SEBS
クレイトンG1726(クレイトンポリマー社製)、スチレン含有率:30質量%、固形分25質量%トルエン溶液の粘度:200mPa・s、SEBS
クレイトンD1102(クレイトンポリマー社製)、スチレン含有率:28質量%、固形分25質量%トルエン溶液の粘度:1,100mPa・s、SBS
クレイトンD1162(クレイトンポリマー社製)、スチレン含有率:43質量%、固形分25質量%トルエン溶液の粘度:120mPa・s、SIS
クレイトンG1645(クレイトンポリマー社製)、スチレン含有率:13質量%、固形分25質量%トルエン溶液の粘度:120mPa・s以下、SEBS
クレイトンD1161(クレイトンポリマー社製)、スチレン含有率:15質量%、固形分25質量%トルエン溶液の粘度:1,200mPa・s、SIS
クレイトンG1643(クレイトンポリマー社製)、スチレン含有率:19質量%、固形分25質量%トルエン溶液の粘度:200mPa・s、SEBS
クレイトンD1111(クレイトンポリマー社製)、スチレン含有率:22質量%、固形分25質量%トルエン溶液の粘度:1,100mPa・s、SIS
【0068】
[固体粘着付与剤(B)]
RHR-301(Wuzhou Sun Shine Forestry & Chemicals Co., LTD. Of Guangxi社製)、水添ロジン、酸価:165mgKOH/g
KE-604B:パインクッリスタルKE-604B(荒川化学社製)、アルカリ変性ロジン、酸価:246mgKOH/g
ハリタックAQ-90A(ハリマ化成社製)、酸価:105mgKOH/g
[その他粘着付与剤]
アルコンP-100(荒川化学社製)、脂環族飽和炭化水素樹脂、酸価0mgKOH/g
KR-120:パインクリスタルKR-120(荒川化学社製)、酸変性超淡色ロジン、酸価:320mgKOH/g
KR-50M:パインクリスタルKR-50M(荒川化学社製)、超淡色ロジン、酸価:95mgKOH/g
【0069】
[ワックス(C)]
HNP-11(日本精蝋社製)パラフィンワックス、融点:68℃
リコセンPPMA6252(クライアントケミカルズ社製)、酸変性ポリプロピレンワックス、融点:140℃
POLYWAX655(NuCera Solutions社製)ポリエチレンワックス、融点:95℃
ビスコール660P(三洋化成社製)、ポリエチレンワックス、融点:136℃
【0070】
[ポリブテン(D)]
HV-35(ENEOS社製)100℃動粘度:85mm/s
HV-50(ENEOS社製)100℃動粘度:110mm/s
HV-100(ENEOS社製)100℃動粘度:220mm/s
HV-300(ENEOS社製)100℃動粘度:590mm/s
【0071】
[プロセスオイル(E)]
PW-32:ダイアナプロセスオイルPW-32(出光興産社製)、40℃動粘度:31mm/s
PW-90:ダイアナプロセスオイルPW-90(出光興産社製)、40℃動粘度:95mm/s
PW-150:ダイアナプロセスオイルPW-150(出光興産社製)、40℃動粘度:145mm/s
PW-380:ダイアナプロセスオイルPW-380(出光興産社製)、40℃動粘度:381mm/s
PS-430:ダイアナプロセスオイルPS-430(出光興産社製)、40℃動粘度:438mm/s
【0072】
[酸化防止剤]
IRG1010(IRG1010,BASF社製)、ペンタエリスリトール=テトラキス[3-(3’,5’-ジ―tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]
【0073】
(実施例1)
<アルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物の製造>
攪拌機を備えたステンレスビーカーに、ワックス(C):HNP-11を7部、ポリブテン(D):HV-100を21部及びその他成分:IRG1010を0.5部投入し、加熱して溶融した。加熱は内容物が130~150℃になるように注意して行った。溶融後攪拌を行い、均一溶融溶液とした後、130~150℃の温度を保ちながら、かつ攪拌を続けながら、この溶融物にスチレン系エラストマー(A-1)としてクレイトンD1102を7部及び(A-2)としてクレイトンG1645を25部、を徐々に加え、添加終了後、130~150℃の温度で加熱撹拌し、スチレン系エラストマー(A)を完全に溶融させた。その後、固体粘着付与剤(B):RHR-301を40部添加して、溶融均一混合物とし、冷却してアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物を作製した。
【0074】
(実施例2~12、比較例1及び4)
表1、3に示す組成にて、スチレン系エラストマー(A-1)及び(A-2)、固体粘着付与剤(B)、ワックス(C)、ポリブテン(D)及びその他成分を実施例1と同様に溶融・混合して、ホットメルト粘着剤組成物を作製し、同様に評価した。
【0075】
(実施例13)
攪拌機を備えたステンレスビーカーに、ワックス(C):リコセンPPMA6252を2部、ポリブテン(D):HV-100を5部、プロセスオイル(E):PW-380を35部及びその他成分IRG1010を0.5部投入し、加熱して溶融した。加熱は内容物が130~150℃になるように注意して行った。溶融後攪拌を行い、均一溶融溶液とした後、130~150℃の温度を保ちながら、かつ攪拌を続けながら、この溶融物にスチレン系エラストマー(A-1)としてクレイトンG1651を3部及び(A-2)としてクレイトンG1645を10部、を徐々に加え、添加終了後、130~150℃の温度で加熱撹拌し、スチレン系エラストマー(A)を完全に溶融させた。その後、固体粘着付与剤(B):RHR-301を45部添加して、溶融均一混合物とし、冷却してアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物を作製した。
【0076】
(実施例14~25、比較例2,3,5~8)
表2、3に示す組成にて、スチレン系エラストマー(A-1)及び(A-2)、固体粘着付与剤(B)、ワックス(C)、ポリブテン(D)、プロセスオイル(E)及びその他成分を実施例1と同様に溶融・混合して、ホットメルト粘着剤組成物を作製し、同様に評価した。
【0077】
得られたアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物の接着性(密着性)、接着性(凝集性)、耐衝撃性、アルカリ分散性及び糸曳き性を下記の方法により評価した。結果を表3に示す。
【0078】
<接着性(密着性)>
(サンプル作製方法)
粘着剤組成物付きラベルは、厚さ30μmの片面に印刷を施したOPPの印刷面にホットメルト粘着剤を塗工量約20g/mになるようにハンドアプリケーターを用いて塗工(粘着剤組成物の温度:150℃)して作製した。厚さ30μmのOPPフィルムの非印刷面に前記ホットメルト粘着剤組成物付きラベルを23℃で貼り付けて、ハンドローラーで1往復させて圧着し、15mm幅に断裁した。
(試験方法)
接着性(密着性)評価は、温度23%相対湿度50%の恒温室中で、引張試験機で180度剥離(剥離速度:300mm/分)の剥離強度を測定し、評価した。剥離強度が強い方が良好であり、評価結果2~5を合格、評価結果1を不合格とした。
(評価基準)
5:3.5N/15mm以上
4:2.5N/15mm以上3.5N/15mm未満
3:1.5N/15mm以上2.5N/15mm未満
2:1.0N/15mm以上1.5N/15mm未満
1:1.0N/15mm未満
【0079】
<接着性(凝集力)>
(サンプル作製方法)
長さ:325mm、幅:62mmの大きさの印刷を施したOPPフィルム(厚さ30μm)の印刷面に150℃に加熱したホットメルト粘着剤組成物をハンド塗工で両末端に厚さ20μm幅15mmに塗工し、試験ラベルを作製した。コカ・コーラ入りの1.5リットルのPETボトルに貼り付けられているラベルをあらかじめ剥がしておき、一度開栓して直ぐに密栓した後、元のラベル位置に作製した試験ラベルを貼付した(片端はPETボトルに貼付し、もう一方はラベル同士が重なるように貼付した)。
(試験方法)
40℃の恒温オーブン内に前記ボトルを入れ、1週間後の外観を観察した。ラベルの剥離状態とズレ幅を測定し、接着性(凝集力)の評価を行った。ラベルはズレるが剥離しない、評価結果2~5を合格とし、ラベルが剥離した評価結果1を不合格とした。ラベルのズレが少ないほど良好である。
(評価基準)
5:ラベルのズレが3mm未満
4:ラベルのズレが3mm以上5mm未満
3:ラベルのズレが5mm以上8mm未満
2:ラベルのズレが8mm以上であるがラベルが剥離しない
1:ラベルが剥がれる
【0080】
<耐衝撃性1(炭酸飲料入り丸型容器)>
(サンプル作製方法)
長さ:325mm、幅:62mmの大きさの印刷を施したOPPフィルム(厚さ30μm)の印刷面に150℃に加熱したホットメルト粘着剤組成物をハンド塗工で両端に幅15mm厚さ20μmに塗工し、試験ラベルを作製した。コカ・コーラ入りの1.5リットルのPETボトルに貼り付けられているラベルをあらかじめ剥がしておき、作製した試験ラベルを元のラベル位置に貼付した(片端はPETボトルに貼付し、もう一方はラベル同士が重なるように貼付した)。
(試験方法)
作成したラベル付きボトルを横にして高さ50cm、80cm、120cm、150cmから順に塩ビタイルに落下させ、ラベルが剥がれるか高さを測定した。50cmの高さから落下してもラベルが剥離しない評価結果2~5を合格とし、50cmの高さから落下させるとラベルが剥離する評価結果1を不合格とした。より高いところから落下させてもラベルが剥離しない方が良好である。
(評価結果)
5:50cm、80cm、120cm、150cmのいずれの高さから落下させてもラベルが剥離しない
4:50cm、80cm、120cmから落下させると剥離しないが、150cmの高さから落下させると剥離した
3:50cm、80cmから落下させると剥離しないが、120cm、150cmの高さから落下させると剥離した
2:50cmから落下させると剥離しないが、80cm、120cm、150cmの高さから落下させると剥離した
1:50cm、80cm、120cm、150cmのいずれの高さから落下させてもラベルが剥離した
【0081】
<耐衝撃性2(非炭酸飲料入り非丸型容器)>
(サンプル作製方法)
長さ:348mm、幅:83mmの大きさの印刷を施したOPPフィルム(厚さ30μm)の印刷面に150℃に加熱したホットメルト粘着剤組成物をハンド塗工で両端に幅15mm厚さ20μmに塗工し、試験ラベルを作製した。2リットルの伊藤園むぎ茶のPETボトルのラベルをあらかじめ剥がしておき、作製した試験ラベルを元のラベル位置に貼付した(片端はPETボトルに貼付し、もう一方はラベル同士が重なるように貼付した)。
(試験方法)
作製したラベル付きボトルを横にして高さ50cm、80cm、120cm、150cmから順に塩ビタイルに落下させ、ラベルが剥がれるか高さを測定した。50cmの高さから落下してもラベルが剥離しない評価結果2~5を合格とし、50cmの高さから落下させるとラベルが剥離する評価結果1を不合格とした。より高いところから落下させてもラベルが剥離しない方が良好である。
(評価結果)
5:50cm、80cm、120cm、150cmのいずれの高さから落下させてもラベルが剥離しない
4:50cm、80cm、120cmから落下させると剥離しないが、150cmの高さから落下させると剥離した
3:50cm、80cmから落下させると剥離しないが、120cm、150cmの高さから落下させると剥離した
2:50cmから落下させると剥離しないが、80cm、120cm、150cmの高さから落下させると剥離した
1:50cm、80cm、120cm、150cmのいずれの高さから落下させてもラベルが剥離した
【0082】
<アルカリ分散性>
(サンプル作製方法)
厚さ30μmのOPPフィルムに印刷を施したラベルの印刷面に150℃に加熱したホットメルト粘着剤組成物をハンド塗工で厚さ20μmに塗工し、粘着剤付き試験ラベルを作製した。作製した試験ラベルを500mlコカ・コーラPETボトルのラベルと同じサイズに裁断し、あらかじめラベルを剥がした500mlコカ・コーラPETボトルに貼り付け、約8mm×8mm角に裁断して、評価用サンプル(ペレット)を作製した。
(試験方法)
1000ml丸型フラスコに、85~90℃の2.0質量%水酸化ナトリウム水溶液180gと前記ペレット20gを入れて、120rpmで攪拌(攪拌羽:プロペラ)した。10分後フィルターで濾過し、PETペレットに残った粘着剤の残存率(面積%)を目視で観察して、評価した。ラベルがPETのペレットから剥がれ、ホットメルト粘着剤組成物が少ない方がよく、評価結果2~5を合格とし、ラベルがPETのペレットに残存する評価結果1を不合格とした。
(評価基準)
5:ホットメルト粘着剤組成物付きラベルおよびホットメルト粘着剤組成物がPETのペレットに残存しない。
4:ホットメルト粘着剤組成物付きラベルが残らないが、ホットメルト粘着剤組成物がPETのペレットに30%未満残る。
3:ホットメルト粘着剤組成物付きラベルが残らないが、ホットメルト粘着剤組成物がPETのペレットに30%以上50%未満残る
2:ホットメルト粘着剤組成物付きラベルが残らないが、ホットメルト粘着剤組成物がPETのペレットに50%以上残る
1:ホットメルト粘着剤組成物付きラベルがPETに残る。
【0083】
<糸曳き性>
ラベラーでの糸曳き性の評価は、塗工温度での粘度に依存する為150℃での粘度を測定して行った。温度が高い程ホットメルト粘着剤組成物の粘度は低くなるが150℃より高くするとホットメルト粘着剤組成物よりヒュームが発生し、ラベラーを汚染する為150℃で行なった。
粘度の測定は、「日本工業規格」、JISK6862(A法)に準じて行なった。予め160℃付近まで溶融させたホットメルト粘着剤組成物300gを試験容器に入れ、大気中において棒温度計で充分に攪拌しながら150℃になったところでB型温度計(東機産業(株)社製TOKIMEC VISCOMETER MODEL:BM)を用いて行なった(使用したローターは、必要に応じて適当なものを用いた)。150℃の粘度が2500mPa/s未満の評価結果2~5を合格、150℃の粘度が2500mPa/s以上の評価結果1を不合格とした。150℃での粘度が低いほど糸曳き性は良好である。
(評価基準)
5:150℃での粘度が1000mPa/s未満
4:150℃での粘度が1000mPa/s以上2000mPa/s未満
3:150℃での粘度が2000mPa/s以上3000mPa/s未満
2:150℃での粘度が3000mPa/s以上5000mPa/s未満
1:150℃での粘度が5000mPa/s以上
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
【表3】
【0087】
表1~2から、本発明のホットメルト粘着剤組成物は、接着強度や炭酸水によるボトルの膨張によるラベルのずれに対するホットメルト粘着剤組成物の接着性(凝集力)及び耐衝撃性が強く、熱アルカリ分散性を有する。更に、ラベリング時の糸曳き発生が少ない。一方、比較例1~8(表3)は、接着性(密着性・凝集性)・耐衝撃性・アルカリ分散性及びラベリング時の糸曳き発生の全てを満たす結果は得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0088】
以上説明したとおり、本発明のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物により、使用後の容器をリサイクルする時に簡単にラベルが剥離し、また熱アルカリ水溶液に浸漬することにより簡単に分別することが可能になる。飲料用のPETボトルなどに好適であるが、PETボトルに限らずガラス容器でも同様な性能を発揮することが判っており、ガラス容器のリサイクルにも適したホットメルト粘着剤組成物である。
【要約】
【課題】
薄膜塗工した場合にも糸曳きが発生しにくく、十分な接着力を有し、ボトルの膨張によるラベルのずれに対するホットメルトの抵抗力と追従性が高く、長期保管した際にラベルがずれにくく、熱アルカリ水溶液により容器から接着物を容易且つ糊残りなく剥がすことのできるアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物および、当該ホットメルト粘着剤組成物を用いてラベルが貼り付けられた容器を提供すること。
【解決手段】
本願の課題は、熱可塑性エラストマー(A)、酸価が100~300mgKOH/gである固体粘着付与剤(B)、ワックス(C)、ポリブテン(D)およびプロセスオイル(E)を含有し、ホットメルト粘着剤組成物100質量%中、プロセスオイル(E)の含有率が0~50質量%であることを特徴とするアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物によって解決される。
【選択図】なし