(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】リン酸第一鉄から炭素被覆リン酸鉄リチウム材料を製造する方法
(51)【国際特許分類】
C01B 25/45 20060101AFI20240417BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20240417BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
C01B25/45 Z
H01M4/58
H01M4/36 C
(21)【出願番号】P 2022172514
(22)【出願日】2022-10-27
【審査請求日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】202210282867.5
(32)【優先日】2022-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522228241
【氏名又は名称】湖北融通高科先進材料集団股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100207561
【氏名又は名称】柳元 八大
(74)【代理人】
【識別番号】100230086
【氏名又は名称】譚 粟元
(72)【発明者】
【氏名】楊 吉
(72)【発明者】
【氏名】魏 義華
(72)【発明者】
【氏名】孫 傑
(72)【発明者】
【氏名】何 中林
(72)【発明者】
【氏名】何 健豪
(72)【発明者】
【氏名】劉 海▲ケン▼
(72)【発明者】
【氏名】李 浩
(72)【発明者】
【氏名】余 孟華
(72)【発明者】
【氏名】程 正▲チン▼
(72)【発明者】
【氏名】王 雄
(72)【発明者】
【氏名】祁 洪福
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第113054174(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 25/45
H01M 4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸第一鉄から炭素被覆リン酸鉄リチウム材料を製造する方法であって、
(1)結晶水含有リン酸第一鉄と炭素源を粉末にボールミリングするステップと、
(2)炭素被覆結晶水含有リン酸第一鉄が得られるように、ステップ(1)の粉末を保護雰囲気下で焼結して結晶水の一部を除去するステップと、
(3)スラリーが得られるように、ステップ(2)における炭素被覆結晶水含有リン酸第一鉄とリン酸リチウム、固相リン源、液相リン源、炭素源、分散剤とを均一に混合するステップと、
(4)
炭素被覆ナノリン酸鉄リチウム材料が得られるように、ステップ(3)における混合スラリーを乾燥させて不活性雰囲気中で焼結し、その後自然冷却して粉砕するステップと、を含
み、
ステップ(1)において、前記結晶水含有リン酸第一鉄では、Fe/Pモル比が1.46~1.50であり、
ステップ(2)において、保護雰囲気に用いるガスは、窒素ガス、アルゴンガス又はヘリウムガスから選ばれる少なくとも一つであり、前記焼結を行う温度は、250~400°Cであり、焼結時間は、3~6hである、
ことを特徴とするリン酸第一鉄から炭素被覆リン酸鉄リチウム材料を製造する方法。
【請求項2】
炭素源とリン酸第一鉄の質量比が2%~3.5%である、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(1)において、前記炭素源は、グルコース、PEG、スクロース、デンプン又はクエン酸から選ばれる一つ又は複数である有機炭素源であり、ボールミリングを行うステップは、湿式ボールミリング又は乾式ボールミリングである、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記炭素被覆結晶水含有リン酸第一鉄におけるリン酸第一鉄の化学式は、Fe
3(PO
4)
2*xH
2Oであり、ただし、x=2~4である、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(3)において、前記固相リン源は、リン酸リチウムであり、前記液相リン源は、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸のうちの一つ又は複数であり、前記炭素源は、有機炭素源及び無機炭素源であり、前記分散剤は、水であり、前記混合スラリーにおける鉄リン比は、0.960~0.975である、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記有機炭素源は、グルコース、PEG、スクロース、デンプン又はクエン酸の一つ又は複数であり、前記無機炭素源は、アセチレンブラック、グラファイト、Super-P、カーボンナノチューブのうちの一つ又は複数であり、前記混合スラリーにおける鉄リン比は、0.960~0.975である、
ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(4)において、乾燥を行うステップは、噴霧乾燥、送風乾燥又は真空乾燥のうちの一つ又は複数であり、前記噴霧乾燥のガスは、窒素ガス、アルゴンガス及びヘリウムガスから選ばれる少なくとも一つであり、前記噴霧乾燥の吸気温度は、130~150℃であり、排気温度は、80~100℃である、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(4)において、前記不活性雰囲気に用いるガスは、窒素ガス、アルゴンガス及びヘリウムガスから選ばれる少なくとも一つであり、焼結を行う工程は、二段に分けられ、第1段の温度は、750~770℃であり、保温時間は、7hであり、第2段の温度は、760~780℃であり、保温時間は、1hであり、前記粉末を焼結した後、粒度0.8~3umまで粉砕する、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池用電極材料の製造技術分野に属し、特にリン酸第一鉄からリン酸鉄リチウム材料を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オリビン構造のリン酸鉄リチウム材料は、高い理論容量170mAh/gと高い放電電圧3.4Vを有し、充放電中のリチウムイオンの脱離は、固体構造への影響が小さく、循環寿命が長く、資源が豊富で、安価で、環境汚染が少なく、化学的安定性が良好であるなどの利点により、最も応用開発価値を有するリチウムイオン電池用正極材料の一つであると考えられている。
【0003】
リン酸第一鉄材料を自作することにより、異なる鉄リン比の水和リン酸第一鉄源材料を製造することができ、さらに有機炭素源を被覆し、窒素雰囲気中で低温焼結することにより、結晶水の一部を除去し、元の鉄とリンの比率を高め、原材料の利用率を向上させるため、完成品の品質を向上させることができるだけではなく、有機炭素源を分解させ、リン酸第一鉄材料の表面に導電性炭素の層を被覆し、材料の導電性を向上させることができる。固相と液相の二種類のリン源を添加することにより、固相がリン酸リチウムであり、液相がリン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム及びリン酸のうちの一つ又は複数であり、合成リン酸鉄リチウムにある程度の安定した枠構造を提供することができるだけではなく、リン源を均一に混合することができる。
【0004】
その結果、少ない炭素被覆結晶水含有リン酸第一鉄は、従来のリン酸鉄リチウム材料と比較して、より高い放電容量、より長い循環寿命を有することが分かった。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、リン酸第一鉄リチウム材料のコストが高い問題を解決するために、リン酸第一鉄からリン酸鉄リチウム材料を製造する方法を提供することにある。本発明の方法によれば、炭素被覆リン酸第一鉄材料が得られるように、まず前駆体を処理し、結晶水の一部を除去し、導電性が良好な炭素層を被覆し、さらに、リチウム源、鉄源、リン源及び炭素源を添加することにより、低コスト、高容量、長循環のリン酸鉄リチウム材料を製造することができる。
【0006】
上記目的を実現するために、本発明によれば、リン酸第一鉄から炭素被覆リン酸鉄リチウム材料を製造する方法であって、
(1)結晶水含有リン酸第一鉄と炭素源を粉末にボールミリングするステップと、
(2)炭素被覆結晶水含有リン酸第一鉄が得られるように、ステップ(1)の粉末を保護雰囲気下で焼結して結晶水の一部を除去するステップと、
(3)スラリーが得られるように、ステップ(2)における炭素被覆結晶水含有リン酸第一鉄とリン酸リチウム、固相リン源、液相リン源、炭素源、分散剤とを均一に混合するステップと、
(4)前記炭素被覆ナノリン酸鉄リチウム材料が得られるように、ステップ(3)における混合スラリーを乾燥させて不活性雰囲気中で焼結し、その後自然冷却して粉砕するステップと、を含むリン酸第一鉄から炭素被覆リン酸鉄リチウム材料を製造する方法という技術的手段が採られる。
【0007】
ステップ(1)において、前記結晶水含有リン酸第一鉄では、Fe/Pが1.46~1.50であることが好ましい。
【0008】
ステップ(1)において、前記炭素源は、グルコース、PEG、スクロース、デンプン又はクエン酸から選ばれる一つ又は複数である有機炭素源であり、前記ボールミリング方式は、湿式ボールミリング又は乾式ボールミリングであることが好ましい。前記有機炭素源は、PEGであることがより好ましい。
【0009】
ステップ(2)において、前記保護雰囲気に用いるガスは、窒素ガス、アルゴンガス又はヘリウムガスから選ばれる少なくとも一つであり、前記焼結温度は、250~400°Cであり、焼結時間は、3~6hであり、前記炭素被覆結晶水含有リン酸第一鉄におけるリン酸第一鉄の化学式は、Fe3(PO4)2*xH2Oであり、ただし、x=2~4であることが好ましい。
【0010】
ステップ(3)において、前記固相リン源は、リン酸リチウムであり、前記液相リン源は、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸のうちの一つ又は複数であり、前記炭素源は、有機炭素源及び無機炭素源であり、前記分散剤は、水であり、前記混合スラリーにおける鉄リン比は、0.960~0.975であることが好ましい。
【0011】
前記有機炭素源は、グルコース、PEG、スクロース、デンプン又はクエン酸の一つ又は複数であり、前記無機炭素源は、アセチレンブラック、グラファイト、Super-P、カーボンナノチューブのうちの一つ又は複数であり、前記混合スラリーにおける鉄リン比は、0.960~0.975であることが好ましい。
【0012】
ステップ(4)において、前記乾燥方法は、噴霧乾燥、送風乾燥又は真空乾燥のうちの一つ又は複数であり、前記噴霧乾燥のガスは、窒素ガス、アルゴンガス及びヘリウムガスから選ばれる少なくとも一つであり、前記噴霧乾燥の吸気温度は、130~150℃であり、排気温度は、80~100℃であることが好ましい。
【0013】
ステップ(4)において、前記不活性雰囲気に用いるガスは、窒素ガス、アルゴンガス及びヘリウムガスから選ばれる少なくとも一つであり、前記焼結工程は、二段に分けられ、第1段の温度は、750~770℃であり、保温時間は、7hであり、第2段の温度は、760~780℃であり、保温時間は、1hであり、前記粉末を焼結した後、粒度0.8~3umまで粉砕することが好ましい。
【0014】
また、本発明は、前記方法により製造された炭素被覆リン酸鉄リチウム材料及びリチウムイオン電池用正極材料としての前記炭素被覆リン酸鉄リチウム材料の用途についても保護を要求する。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、従来技術と比較して、以下の利点と有益な効果を有する。
1、本発明によれば、リン酸第一鉄と炭素源とを混合し、低温で焼結することにより、結晶水の一部を除去し、原材料における鉄とリンの比率を高め、原材料の利用率をさらに向上することができる。さらに窒素雰囲気下で低温焼結ことにより、炭素源を分解させてリン酸第一鉄の表面に炭素被覆層を形成することができ、二価鉄の酸化を抑制し、三価鉄を二価鉄に還元することができるだけではなく、材料の導電性を向上させることができる。また、粒子の過剰成長を抑制し、粒径の大きさが均一な炭素被覆リン酸鉄リチウム材料を形成することができる。
【0016】
2、本発明によれば、リン酸第一鉄、リン酸リチウムを原材料とすることにより、合成コストを低減させることができる。さらにリン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸を補充液相リン源として添加することにより、適切な鉄リン比に調整される。
【0017】
3、本発明によれば、有機炭素源と無機炭素源の二種類の炭素源を添加することにより、有機炭素源は、窒素雰囲気において還元性ガスを供給し、リン酸鉄リチウムにおける三価鉄の含有量を低減させることができ、さらに被覆炭素を供給し、リン酸鉄リチウム材料の導電性をさらに向上させることができる。無機炭素源は、スラリーに混合されることで複数の鎖状の導電性ネットワークを提供することができるため、リン酸鉄リチウム材料の物理的内部抵抗を低減させ、電子伝導性を提供することができる。
【0018】
4、本発明によれば、二段の焼結温度曲線により、第1段の焼結工程では、小粒子のリン酸鉄リチウム材料を形成することができ、第2段の焼結温度を向上させることにより、リン酸鉄リチウム粒子の成長を促進し、リン酸鉄リチウム材料の圧縮を向上させることができる。
【0019】
5、本発明に係る方法により製造される炭素被覆リン酸鉄リチウム材料は、材料性能が優れており、1C初回放電容量が148.39mAh/gに達し、1C充放電で150周循環させた放電容量が141.84mAh/gに達し、1C充放電で150周循環させた容量維持率が95.59%に達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施例1における自作鉄リン比1.46のリン酸第一鉄のSEMマップである。
【
図2】本発明の実施例1における自作鉄リン比1.46のリン酸第一鉄のXRDマップである。
【
図3】本発明の実施例1における炭素被覆結晶水含有リン酸第一鉄のSEMマップである。
【
図4】本発明の実施例1において製造されたリン酸鉄リチウム材料のSEMスペクトルである。
【
図5】本発明の実施例1において製造されたリン酸鉄リチウム材料のXRDスペクトルである。
【
図6】本発明の実施例1において製造された試料の循環グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の具体的な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本明細書に記載される具体的な実施形態は、本発明を説明及び解釈するためにのみ使用され、本発明を限定するものではない。
【0022】
本明細書において開示される範囲の端点及び如何なる値は、いずれもその正確な範囲又は値に限定されず、これらの範囲又は値は、これらの範囲又は値に近い値を含むように理解されるべきである。数値範囲の場合、一つ又は複数の新しい数値範囲が得られるように、各範囲の端点値間、各範囲の端点値と個々のポイント値との間及び個々のポイント値間を互いに組み合わせることができ、これらの数値範囲は、本明細書に具体的に開示されていると見なされるべきである。
【0023】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明の保護範囲はこれに限定されるものではない。
【0024】
(実施例1)
リン酸第一鉄から炭素被覆リン酸鉄リチウム材料を製造する方法は、
(1)グルコースとリン酸第一鉄の質量比が3%となるように鉄リン比1.46の結晶水含有リン酸第一鉄とグルコースを粉末にボールミリングするステップと、
(2)炭素被覆結晶水含有リン酸第一鉄が得られるように、ステップ(1)の粉末を窒素雰囲気下で400℃で2時間保温し、焼結して結晶水の一部を除去するステップと、
(3)スラリーが得られるように、ステップ(2)における炭素被覆結晶水含有リン酸第一鉄とリン酸リチウム1000g、リン酸二水素アンモニウム8g、PEG89g、アセチレンブラック10g、水2500gとを2h均一に混合するステップと、
(4)前記炭素被覆ナノリン酸鉄リチウム材料が得られるように、ステップ(3)における混合スラリーを窒素雰囲気下で噴霧乾燥し、吸気温度を150℃にし、排気温度を100℃にし、乾燥粉末を得た後、窒素雰囲気中で焼成し、第1段の焼結温度を750℃にし、保温時間を7hにし、第2段の焼結温度を760℃にし、保温時間を1hにし、最後に自然冷却して粉砕し、粉砕粒径D50=1.6umとなるように制御するステップと、を含む。
【0025】
(実施例2)
リン酸第一鉄から炭素被覆リン酸鉄リチウム材料を製造する方法は、
(1)グルコースとリン酸第一鉄の質量比が2%となるように鉄リン比1.48の結晶水含有リン酸第一鉄とグルコースを粉末にボールミリングするステップと、
(2)炭素被覆結晶水含有リン酸第一鉄が得られるように、ステップ(1)の粉末を窒素雰囲気下で380℃で2.5時間保温し、焼結して結晶水の一部を除去するステップと、
(3)スラリーが得られるように、ステップ(2)における炭素被覆結晶水含有リン酸第一鉄1000gとリン酸リチウム294g、リン酸二水素アンモニウム6g、グルコース99g、アセチレンブラック4g、水2500gとを3h均一に混合するステップと、
(4)前記炭素被覆ナノリン酸鉄リチウム材料が得られるように、ステップ(3)における混合スラリーを窒素雰囲気下で噴霧乾燥し、吸気温度を145℃にし、排気温度を90℃にし、乾燥粉末を得た後、窒素雰囲気中で焼成し、第1段の焼結温度を755℃にし、保温時間を7hにし、第2段の焼結温度を765℃にし、保温時間を1hにし、最後に自然冷却して粉砕し、粉砕粒径D50=1.3umとなるように制御するステップと、を含む。
【0026】
(実施例3)
リン酸第一鉄から炭素被覆リン酸鉄リチウム材料を製造する方法は、
(1)グルコースとリン酸第一鉄の質量比が2.5%となるように鉄リン比1.5の結晶水含有リン酸第一鉄とグルコースを粉末にボールミリングするステップと、
(2)炭素被覆結晶水含有リン酸第一鉄が得られるように、ステップ(1)の粉末を窒素雰囲気下で350℃で3時間保温し、焼結して結晶水の一部を除去するステップと、
(3)スラリーが得られるように、ステップ(2)における炭素被覆結晶水含有リン酸第一鉄1000gとリン酸リチウム294g、リン酸4g、グルコース84g、グラファイト4g、水2500gとを4h均一に混合するステップと、
(4)前記炭素被覆ナノリン酸鉄リチウム材料が得られるように、ステップ(3)における混合スラリーを窒素雰囲気下で噴霧乾燥し、吸気温度を130℃にし、排気温度を95℃にし、乾燥粉末を得た後、窒素雰囲気中で焼成し、第1段の焼結温度を760℃にし、保温時間を7hにし、第2段の焼結温度を770℃にし、保温時間を1hにし、最後に自然冷却して粉砕し、粉砕粒径D50=1.6umとなるように制御するステップと、を含む。
【0027】
(実施例4)
リン酸第一鉄から炭素被覆リン酸鉄リチウム材料を製造する方法は、
(1)グルコースとリン酸第一鉄の質量比が2%となるように鉄リン比1.46の結晶水含有リン酸第一鉄とグルコースを粉末にボールミリングするステップと、
(2)炭素被覆結晶水含有リン酸第一鉄が得られるように、ステップ(1)の粉末を窒素雰囲気下で400℃で2時間保温し、焼結して結晶水の一部を除去するステップと、
(3)スラリーが得られるように、ステップ(2)における炭素被覆結晶水含有リン酸第一鉄1000gとリン酸リチウム294g、リン酸二水素アンモニウム6g、PEG89g、カーボンナノチューブ12g、水2500gとを2h均一に混合するステップと、
(4)前記炭素被覆ナノリン酸鉄リチウム材料が得られるように、ステップ(3)における混合スラリーを窒素雰囲気下で噴霧乾燥し、吸気温度を140℃にし、排気温度を80℃にし、乾燥粉末を得た後、窒素雰囲気中で焼成し、第1段の焼結温度を770℃にし、保温時間を7hにし、第2段の焼結温度を780℃にし、保温時間を1hにし、最後に自然冷却して粉砕し、粉砕粒径D50=1.2umとなるように制御するステップと、を含む。
【0028】
(実施例5)
リン酸第一鉄から炭素被覆リン酸鉄リチウム材料を製造する方法は、
(1)グルコースとリン酸第一鉄の質量比が3.5%となるように鉄リン比1.47の結晶水含有リン酸第一鉄とグルコースを粉末にボールミリングするステップと、
(2)炭素被覆結晶水含有リン酸第一鉄が得られるように、ステップ(1)の粉末を窒素雰囲気下で360℃で3時間保温し、焼結して結晶水の一部を除去するステップと、
(3)スラリーが得られるように、ステップ(2)における炭素被覆結晶水含有リン酸第一鉄1000gとリン酸リチウム294g、リン酸水素二アンモニウム6g、スクロース44g、Super-P10g、水2500gとを3h均一に混合するステップと、
(4)前記炭素被覆ナノリン酸鉄リチウム材料が得られるように、ステップ(3)における混合スラリーを窒素雰囲気下で噴霧乾燥し、吸気温度を135℃にし、排気温度を85℃にし、乾燥粉末を得た後、窒素雰囲気中で焼成し、第1段の焼結温度を760℃にし、保温時間を7hにし、第2段の焼結温度を770℃にし、保温時間を1hにし、最後に自然冷却して粉砕し、粉砕粒径D50=1.5umとなるように制御するステップと、を含む。
【0029】
(実施例6)
リン酸第一鉄から炭素被覆リン酸鉄リチウム材料を製造する方法は、
(1)グルコースとリン酸第一鉄の質量比が3%となるように鉄リン比1.49の結晶水含有リン酸第一鉄とグルコースを粉末にボールミリングするステップと、
(2)炭素被覆結晶水含有リン酸第一鉄が得られるように、ステップ(1)の粉末を窒素雰囲気下で280℃で4時間保温し、焼結して結晶水の一部を除去するステップと、
(3)スラリーが得られるように、ステップ(2)における炭素被覆結晶水含有リン酸第一鉄1000gとリン酸リチウム294g、リン酸8g、クエン酸88g、グラフェン12g、水2500gとを3h均一に混合するステップと、
(4)前記炭素被覆ナノリン酸鉄リチウム材料が得られるように、ステップ(3)における混合スラリーを窒素雰囲気下で噴霧乾燥し、吸気温度を140℃にし、排気温度を85℃にし、乾燥粉末を得た後、窒素雰囲気中で焼成し、第1段の焼結温度を755℃にし、保温時間を7hにし、第2段の焼結温度を765℃にし、保温時間を1hにし、最後に自然冷却して粉砕し、粉砕粒径D50=1.8umとなるように制御するステップと、を含む。
【0030】
(比較例1)
実施例とは、ステップ(1)において、自作リン酸第一鉄の鉄リン比は1.4であり、鉄リン比が好適なリン酸鉄リチウム材料を製造するためには、リン源ではなく鉄源を補充する必要がある点で異なる。
【0031】
リン酸第一鉄から炭素被覆リン酸鉄リチウム材料を製造する方法は、
(1)グルコースとリン酸第一鉄の質量比が2%となるように鉄リン比1.4の結晶水含有リン酸第一鉄とグルコースを粉末にボールミリングするステップと、
(2)炭素被覆結晶水含有リン酸第一鉄が得られるように、ステップ(1)の粉末を窒素雰囲気下で400℃で2時間保温し、焼結して結晶水の一部を除去するステップと、
(3)スラリーが得られるように、ステップ(2)における炭素被覆結晶水含有リン酸第一鉄1000gとリン酸リチウム312g、酸化鉄30g、PEG93g、アセチレンブラック10g、水2500gとを2h均一に混合するステップと、
(4)前記炭素被覆ナノリン酸鉄リチウム材料が得られるように、ステップ(3)における混合スラリーを窒素雰囲気下で噴霧乾燥し、吸気温度を150℃にし、排気温度を100℃にし、乾燥粉末を得た後、窒素雰囲気中で焼成し、第1段の焼結温度を750℃にし、保温時間を7hにし、第2段の焼結温度を760℃にし、保温時間を1hにし、最後に自然冷却して粉砕し、粉砕粒径D50=1.6umとなるように制御するステップと、を含む。
【0032】
(比較例2)
実施例の方法とは、ステップ(1)の粉末を窒素雰囲気下30℃で2時間保温する点で異なる。
【0033】
リン酸第一鉄から炭素被覆リン酸鉄リチウム材料を製造する方法は、
(1)グルコースとリン酸第一鉄の質量比が2%となるように鉄リン比1.46の結晶水含有リン酸第一鉄とグルコースを粉末にボールミリングするステップと、
(2)結晶水を焼結除去できずにリン酸第一鉄とグルコースの混合物のみが得られるように、ステップ(1)の粉末を窒素雰囲気下で30℃で2時間保温するステップと、
(3)スラリーが得られるように、ステップ(2)におけるリン酸第一鉄とグルコースの混合物1000gとリン酸リチウム245g、リン酸二水素アンモニウム8g、PEG74g、アセチレンブラック10g、水2500gとを2h均一に混合し、完成品であるリン酸鉄リチウムの鉄リン比0.965と炭素含有量1.5%に調整するステップと、
(4)前記炭素被覆ナノリン酸鉄リチウム材料が得られるように、ステップ(3)における混合スラリーを窒素雰囲気下で噴霧乾燥し、吸気温度を150℃にし、排気温度を100℃にし、乾燥粉末を得た後、窒素雰囲気中で焼成し、第1段の焼結温度を750℃にし、保温時間を7hにし、第2段の焼結温度を760℃にし、保温時間を1hにし、最後に自然冷却して粉砕し、粉砕粒径D50=1.6umとなるように制御するステップと、を含む。
【0034】
(テスト例)
実施例1-6及び比較例1-2で製造されたリン酸鉄リチウム正極材料とSuper-P及びPVDFとを質量比80:10:10でNMPに分散させ、ボールミリングして均一に分散させた後、アルミ箔上に塗布し、真空乾燥し、正極極片である電解液1mol/LのLiPF6を製造した。ここで、溶媒の体積比は、EC:DMC:EMC=1:1:1(体積比)であり、セパレートは、Celgardポリプロピレンフィルムであり、金属リチウム片は負極であり、ボタン電池を形成するために一緒に組み立てられる。テスト電圧範囲は、2.5V~3.9Vであり、定電流定電圧充電方式で3.9Vまで充電し、定電流放電方式で2.5Vまで放電し、充放電電流0.2Cで3cycle循環させ、さらに1C充放電電流で150cycle循環させ、カットオフ条件は、0.2Cと同じである。テスト結果を表1に示す。
【0035】
【0036】
表1の結果から明らかなように、本発明で説明した方法で製造された炭素被覆リン酸鉄リチウム材料をリチウムイオン電池として製造した後、1C初回放電比容量、1C充放電で150周循環させた放電比容量及び1C充放電で150周循環させた容量維持率は、いずれも向上した。
【0037】
以上、本発明の好適実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の技術的概念の範囲内で、本発明の技術的手段に対して、各技術的特徴を他の如何なる適切な方法で組み合わせることを含む様々な単純な変更を行うことができ、これらの単純な変更及び組み合わせは、同様に本発明によって開示された内容と見なされるべきであり、いずれも本発明の保護範囲に属する。