(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】圧電フィルム
(51)【国際特許分類】
H10N 30/857 20230101AFI20240417BHJP
H10N 30/30 20230101ALI20240417BHJP
H10N 30/20 20230101ALI20240417BHJP
H10N 30/045 20230101ALI20240417BHJP
H04R 17/00 20060101ALI20240417BHJP
H04R 17/02 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
H10N30/857
H10N30/30
H10N30/20
H10N30/045
H04R17/00
H04R17/02
(21)【出願番号】P 2019143046
(22)【出願日】2019-08-02
【審査請求日】2022-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2018195261
(32)【優先日】2018-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小谷 哲浩
(72)【発明者】
【氏名】酒見 沙織
(72)【発明者】
【氏名】尾藤 慎也
(72)【発明者】
【氏名】金村 崇
(72)【発明者】
【氏名】杉山 明平
【審査官】加藤 俊哉
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-102791(JP,A)
【文献】国際公開第2015/053346(WO,A1)
【文献】特開2016-219804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 30/857
H10N 30/30
H10N 30/20
H10N 30/045
H04R 17/00
H04R 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体フィルムからなり、
残留分極量が40mC/m
2以上であ
り、内部ヘイズ値[%]/膜厚[μm]の比が1.0を超える、圧電フィルム。
【請求項2】
残留分極量が45mC/m
2以上である、請求項1に記載の圧電フィルム。
【請求項3】
内部ヘイズ値[%]/膜厚[μm]の比が1.1以上である、請求項1
又は2に記載の圧電フィルム。
【請求項4】
内部ヘイズ値が30%を超える、請求項1~
3のいずれか一項に記載の圧電フィルム。
【請求項5】
内部ヘイズ値が40%以上である、請求項1~
4のいずれか一項に記載の圧電フィルム。
【請求項6】
内部ヘイズ値が45%以上である、請求項1~
5のいずれか一項に記載の圧電フィルム。
【請求項7】
面積が9cm
2以上である、請求項1~
6のいずれか一項に記載の圧電フィルム。
【請求項8】
残留分極量が50mC/m
2以上であり、且つ
内部へイズ値が50%を超えて80%以下の範囲内であり、且つ、
面積が9cm
2以上である、請求項1~
7のいずれか一項に記載の圧電フィルム。
【請求項9】
フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体フィルムからなり、
残留分極量が40mC/m
2
以上であり、
開口部が設けられたサンプルホルダにフィルム試料を直接載置し、回折角2θが10~40°である範囲にわたってX線回折測定を行ったときに得られるX線回折パターンにおいて、
10°の回折角2θにおける回折強度と、25°の回折角2θにおける回折強度とを結ぶ直線をベースラインとして設定し、及び
当該ベースラインと回折強度曲線とで囲まれる領域を、プロファイルフィッティングにより2つの対称性ピークに分離し、
このうち、回折角2θの大きい方を結晶性ピークと認定し、且つ回折角2θの小さい方を非晶性ハローピークと認定した場合に、
100×(結晶性ピークの面積)/(結晶性ピークの面積と非晶性ハローピークの面積との和)で表される結晶化度が、50%以上である
、圧電フィルム。
【請求項10】
結晶化度が55%以上である、請求項
9に記載の圧電フィルム。
【請求項11】
平面方向の全体に渡って1cm四方毎に10箇所において厚さを測定したときの厚さの変動係数が10%以下である、請求項1~
10のいずれか一項に記載の圧電フィルム。
【請求項12】
圧電定数d
33が15pC/N以上である、請求項1~
11のいずれか一項に記載の圧電フィルム。
【請求項13】
厚さが、5~3000μmである、請求項1~
12のいずれか一項に記載の圧電フィルム。
【請求項14】
内部ヘイズ値が60~80%の範囲内である、請求項1~
13のいずれか一項に記載の圧電フィルム。
【請求項15】
内部ヘイズ値が65~80%の範囲内である、請求項1~
14のいずれか一項に記載の圧電フィルム。
【請求項16】
前記フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体において、フッ化ビニリデンに由来する繰り返し単位とテトラフルオロエチレンに由来する繰り返し単位とのモル比が、60/40~97/3の範囲内である、請求項1~
15のいずれか一項に記載の圧電フィルム。
【請求項17】
リタデーション[nm]/膜厚[μm]の比が0.02~2.5の範囲内である、請求項1~
16のいずれか一項に記載の圧電フィルム。
【請求項18】
センサ、アクチュエータ、タッチパネル、ハプティックデバイス、振動発電装置、スピーカー、及びマイクからなる群より選択される1種以上に使用するための、請求項1~
17のいずれか一項に記載の圧電フィルム。
【請求項19】
積層体であり、
請求項1~
17のいずれか一項に記載の圧電フィルム、及び
前記圧電フィルムの少なくとも一方の面上に設けられた電極を備える圧電体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧電フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
圧電フィルムは、圧電性(加えられた力を電圧に変換する性質、又は加えられた電圧を力に変換する性質)を有するフィルムである。圧電フィルムは、圧電性を利用する様々な用途[例:センサ、アクチュエータ、タッチパネル、ハプティックデバイス(ユーザに触覚をフィードバックする機能を有するデバイス)、振動発電装置、スピーカー、マイク]に利用される。
圧電フィルムとして、典型的には、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルムが使用される。PVDFフィルムに良好な圧電性を付与するためには、PVDFフィルムを一軸延伸して分極処理を施すことが必要である(例えば、特許文献1)。
また、圧電フィルムとして、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体フィルムを使用することも提案されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-171935号公報
【文献】特開2016-219804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、一軸延伸されたPVDFフィルムは熱により収縮し、圧電性が低下する。したがって、製造工程が熱処理を含む圧電体にPVDFフィルムを使用する場合、圧電性が低下することが特に問題となる。
また、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体フィルムは、PVDFフィルムよりも圧電性が低いため、圧電性について更なる改善が求められる。
本開示は、良好な圧電性を有する圧電フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、次の態様を含む。
項1.
フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体フィルムからなり、
残留分極量が40mC/m2以上である、圧電フィルム。
項2.
残留分極量が45mC/m2以上である、項1に記載の圧電フィルム。
項3.
内部ヘイズ値[%]/膜厚[μm]の比が1.0を超える、項1又は2に記載の圧電フィルム。
項4.
内部ヘイズ値[%]/膜厚[μm]の比が1.1以上である、項1~3のいずれか一項に記載の圧電フィルム。
項5.
内部ヘイズ値が30%を超える、項1~4のいずれか一項に記載の圧電フィルム。
項6.
内部ヘイズ値が40%以上である、項1~5のいずれか一項に記載の圧電フィルム。
項7.
内部ヘイズ値が45%以上である、項1~6のいずれか一項に記載の圧電フィルム。
項8.
面積が9cm2以上である、項1~7のいずれか一項に記載の圧電フィルム。
項9.
残留分極量が50mC/m2以上であり、且つ
内部へイズ値が50%を超えて80%以下の範囲内であり、且つ、
面積が9cm2以上である、項1~8のいずれか一項に記載の圧電フィルム。
項10.
開口部が設けられたサンプルホルダにフィルム試料を直接載置し、回折角2θが10~40°である範囲にわたってX線回折測定を行ったときに得られるX線回折パターンにおいて、
10°の回折角2θにおける回折強度と、25°の回折角2θにおける回折強度とを結ぶ直線をベースラインとして設定し、及び
当該ベースラインと回折強度曲線とで囲まれる領域を、プロファイルフィッティングにより2つの対称性ピークに分離し、
このうち、回折角2θの大きい方を結晶性ピークと認定し、且つ回折角2θの小さい方を非晶性ハローピークと認定した場合に、
100×(結晶性ピークの面積)/(結晶性ピークの面積と非晶性ハローピークの面積との和)で表される結晶化度が、50%以上である、項1~9のいずれか一項に記載の圧電フィルム。
項11.
結晶化度が55%以上である、項10に記載の圧電フィルム。
項12.
平面方向の全体に渡って1cm四方毎に10箇所において厚さを測定したときの厚さの変動係数が10%以下である、項1~11のいずれか一項に記載の圧電フィルム。
項13.
圧電定数d33が15pC/N以上である、項1~12のいずれか一項に記載の圧電フィルム。
項14.
厚さが、5~3000μmである、項1~13のいずれか一項に記載の圧電フィルム。
項15.
内部ヘイズ値が60~80%の範囲内である、項1~14のいずれか一項に記載の圧電フィルム。
項16.
内部ヘイズ値が65~80%の範囲内である、項1~15のいずれか一項に記載の圧電フィルム。
項17.
前記フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体において、フッ化ビニリデンに由来する繰り返し単位とテトラフルオロエチレンに由来する繰り返し単位とのモル比が、60/40~97/3の範囲内である、項1~16のいずれか一項に記載の圧電フィルム。
項18.
リタデーション[nm]/膜厚[μm]の比が0.02~2.5の範囲内である、項1~17のいずれか一項に記載の圧電フィルム。
項19.
センサ、アクチュエータ、タッチパネル、ハプティックデバイス、振動発電装置、スピーカー、及びマイクからなる群より選択される1種以上に使用するための、項1~18のいずれか一項に記載の圧電フィルム。
項20.
積層体であり、
項1~18のいずれか一項に記載の圧電フィルム、及び
前記圧電フィルムの少なくとも一方の面上に設けられた電極を備える圧電体。
【0006】
また、本開示は、次の態様も包含する。
・圧電フィルムの製造方法であって、
(1)フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体及び溶媒を含む液状組成物を調製する工程;
(2)前記液状組成物を基材上に適用する工程;及び
(3)前記液状組成物を適用した基材を所定の温度に暴露してフィルムを形成させる工程を含む製造方法。
・工程(3)が、前記基材を150~200℃の範囲内で1時間未満暴露し、次いで110℃以上150℃未満の範囲内で5時間以上暴露する工程である、前記製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、良好な圧電性を有する圧電フィルムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例の圧電フィルムの製造に用いた製造装置の概要を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の前記概要は、本開示の各々の開示された実施形態または全ての実装を記述することを意図するものではない。
本開示の後記説明は、実例の実施形態をより具体的に例示する。
本開示のいくつかの箇所では、例示を通してガイダンスが提供され、及びこの例示は、様々な組み合わせにおいて使用できる。
それぞれの場合において、例示の群は、非排他的な、及び代表的な群として機能できる。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられる。
【0010】
用語
本明細書中の記号及び略号は、特に限定のない限り、本明細書の文脈に沿い、本開示が属する技術分野において通常用いられる意味に理解できる。
本明細書中、語句「含有する」は、語句「から本質的になる」、及び語句「からなる」を包含することを意図して用いられる。
特に限定されない限り、本明細書中に記載されている工程、処理、又は操作は、室温で実施され得る。
本明細書中、室温は、10~40℃の範囲内の温度を意味することができる。
本明細書中、表記「Cn-m」(ここで、n、及びmは、それぞれ、数である。)は、当業者が通常理解する通り、炭素数がn以上、且つm以下であることを表す。
【0011】
圧電フィルム
本開示の一実施形態の圧電フィルムは、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体フィルムからなる。
前記フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体において、フッ化ビニリデンに由来する繰り返し単位(-CH2-CF2-)及びテトラフルオロエチレンに由来する繰り返し単位(-CF2-CF2-)のモル比は、限定されるものではないが、例えば50/50~99/1の範囲内であることができる。前記モル比は、熱による寸法安定性を向上する点から、60/40~97/3の範囲内が好ましく、65/35~95/5の範囲内がより好ましく、70/30~90/10の範囲内が特に好ましい。
【0012】
前記フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体は、
フッ化ビニリデン及び/又はテトラフルオロエチレンからなる共重合であってもよく、フッ化ビニリデン及び/又はテトラフルオロエチレンから本質的になる共重合であってもよい。
前記フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体は、また、フッ化ビニリデン及び/又はテトラフルオロエチレンと共重合可能なコモノマーを含んでいてもよい。当該コモノマーは、エチレン性不飽和二重結合を有していてもよい。
当該コモノマーの具体例は、
フッ素含有モノマー[例:ビニルフルオリド(VF)、トリフルオロエチレン(TrFE)、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、1-クロロ-1-フルオロエチレン(1,1-CFE)、1-クロロ-2-フルオロエチレン(1,2-CFE)、1-クロロ-2,2-ジフルオロエチレン(CDFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、トリフルオロビニルモノマー、1,1,2-トリフルオロブテン-4-ブロモ-1-ブテン、1,1,2-トリフルオロブテン-4-シラン-1-ブテン、ペルフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)、ペルフルオロアクリラート、2,2,2-トリフルオロエチルアクリラート、2-(ペルフルオロヘキシル)エチルアクリラート)]、
フッ素非含有モノマー[例:α-オレフィン(例:エチレン、プロピレン);不飽和ジカルボン酸、又はその誘導体(例:マレイン酸、無水マレイン酸);ビニルエーテル(例:エチルビニルエーテル);アリルエーテル(例:アリルグリシジルエーテル);ビニルエステル(例:酢酸ビニル);アクリル酸、又はそのエステル;メタクリル酸、又はそのエステル]、及び
これら1種又は2種以上の組合せ
を包含する。
前記フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体は、前記コモノマーに由来する繰り返し単位を、全モノマーに由来する繰り返し単位中、例えば10モル%以下、好ましくは0.01~5モル%の範囲内で含有することができる。
【0013】
前記フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体は、好ましくは、分極化フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体である。本明細書において、用語「分極化」は、表面に電荷が付与されていることを意味する。すなわち、分極化フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体は、エレクトレットであることができる。
【0014】
前記圧電フィルムは、樹脂フィルムに通常用いられる添加剤を含有することができる。 前記添加剤の具体例は、充填剤(例:無機酸化物粒子)、親和性向上剤、熱安定化剤、紫外線吸収剤、顔料、これら1種又は2種以上の組合せを包含し、その好適な例は、無機酸化物粒子、並びに、無機酸化物粒子及び親和性向上剤の組合せを包含する。
【0015】
前記無機酸化物粒子の好適な例は、以下の無機酸化物粒子(B1)~(B3)からなる群より選択される少なくとも1種を包含する。
【0016】
[無機酸化物粒子(B1)]周期表の2族、3族、4族、12族又は13族の金属元素の酸化物の粒子、又はこれらの無機酸化物複合粒子
前記金属元素の例は、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、Ti、Zr、Zn、及びAlを包含する。
(B1)の好適な例は、Be、Al、Mg、Y、及びZrの酸化物の粒子を包含する。前記粒子は、汎用で安価であり、また体積抵抗率が高い点から好ましい。
(B1)の更に好適な例は、Al2O3、MgO、ZrO2、Y2O3、BeO、及びMgO・Al2O3からなる群より選ばれる少なくとも1種の無機酸化物の粒子を包含する。前記粒子は、体積抵抗率が高い点から好ましい。
(B1)の更に好適な例は、結晶構造がγ型のAl2O3を包含する。前記粒子は、比表面積が大きく、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体への分散性が良好な点から好ましい。
【0017】
[無機酸化物粒子(B2)]式:M1
a1M2
b1Oc1(式中、M1は2族金属元素;M2は4族金属元素であり;a1は0.9~1.1の範囲内であり;b1は0.9~1.1の範囲内であり;c1は2.8~3.2の範囲内である;M1及びM2はそれぞれ1種又は2種以上の金属元素であることができる)で表される無機複合酸化物の粒子
前記2族金属元素の好適な例は、Mg、Ca、Sr、及びBaを包含する。
前記4族金属元素の好適な例は、Ti、及びZrを包含する。
(B2)の好適な例は、BaTiO3、SrTiO3、CaTiO3、MgTiO3、BaZrO3、SrZrO3、CaZrO3、及びMgZrO3からなる群より選ばれる少なくとも1種の無機酸化物の粒子を包含する。前記粒子は、体積抵抗率が高い点から好ましい。
【0018】
[無機酸化物粒子(B3)]周期表の2族、3族、4族、12族、又は13族の金属元素の酸化物の粒子、及び酸化ケイ素の無機酸化物複合粒子
前記金属元素の例は、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、Ti、Zr、Zn、及びAlを包含する。
(B3)の具体例は、3A12O3・2SiO2、2MgO・SiO2、ZrO2・SiO2、及びMgO・SiO2からなる群より選ばれる少なくとも1種の無機酸化物の粒子を包含する。
【0019】
前記無機酸化物粒子は、必ずしも高誘電性である必要はなく、前記圧電フィルムの用途により適宜選択できる。例えば、汎用で安価な無機酸化物粒子[例:(B1)、特に、Al2O3の粒子、及びMgOの粒子]を使用すると、体積抵抗率の向上を図ることができる。これら1種類の無機酸化物粒子(B1)の比誘電率(1kHz、25℃)は、通常100未満、好ましくは10以下の範囲内である。
【0020】
前記無機酸化物粒子として、誘電率を向上させる目的で、強誘電性[例:比誘電率(1kHz、25℃)が100以上]の無機酸化物粒子[例:(B2)及び(B3)]を用いてもよい。強誘電性の無機酸化物粒子を構成する無機材料は、複合金属酸化物、その複合体、固溶体、及びゾルゲル体を包含し、これらのみに限定されるものではない。
【0021】
前記無機酸化物粒子の比誘電率(25℃、1kHz)は、好ましくは10以上の範囲内である。圧電フィルムの誘電率を高くする観点から、前記比誘電率は、好ましくは100以上、より好ましくは300以上の範囲内である。前記比誘電率の上限は特に制限されないが、通常3000程度である。
前記無機酸化物粒子の比誘電率(ε)(25℃、1kHz)は、LCRメーターを用いて容量(C)を測定し、容量、電極面積(S)、焼結体の厚さ(d)から、式C=εε0×S/d(ε0:真空の誘電率)で算出した値である。
【0022】
前記無機酸化物粒子の平均一次粒子径は小さい方が好ましく、特に平均一次粒子径1μm以下のいわゆるナノ粒子が好ましい。このような無機酸化物ナノ粒子が均一分散することにより、少量の配合でフィルムの電気絶縁性を大幅に向上させることができる。前記平均一次粒子径は、好ましくは800nm以下、より好ましくは500nm以下、更に好ましくは300nm以下の範囲内である。前記平均一次粒子径は、製造の困難性、均一分散の困難性、及び価格の面から、好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上、更に好ましくは50nm以上の範囲内である。
前記無機酸化物粒子の平均一次粒子径は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置 LA-920(商品名)(堀場製作所社)又はその同等品を用いて算出される。
【0023】
前記圧電フィルムは、前記フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体100質量部に対し、前記無機酸化物粒子を、好ましくは0.01~300質量部、より好ましくは0.1~100質量部の範囲内で含有することができる。
前記含有量の下限は、電気絶縁性を向上する点から、好ましくは0.1質量部、より好ましくは0.5質量部、更に好ましくは1質量部である。
前記含有量の上限は、前記無機酸化物粒子を前記共重合体中に均一に分散させ、電気絶縁性(耐電圧)の低下、及びフィルムの引張強度の低下を防止する点から、好ましくは200質量、より好ましくは150質量部、更に好ましくは100質量部である。
前記圧電フィルムに、高い全光透過率、及び低い全ヘイズ値が要求される場合、前記含有量は、小さい方が好ましく、ゼロであることがより好ましい。
【0024】
前記圧電フィルムが前記無機酸化物粒子を含有する場合、前記圧電フィルムは、更に親和性向上剤を含有することができる。
前記親和性向上剤は、前記無機酸化物粒子と前記共重合体との間の親和性を高め、前記無機酸化物粒子を前記共重合体中に均一に分散させ、前記無機酸化物粒子と前記共重合体をフィルム中でしっかり結合させ、ボイドの発生を抑制し、及び比誘電率を高めることができる。
【0025】
前記親和性向上剤の具体例は、カップリング剤、界面活性剤、及びエポキシ基含有化合物を包含する。
【0026】
前記カップリング剤の例は、有機チタン化合物、有機シラン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機アルミニウム化合物、及び有機リン化合物を包含する。
【0027】
前記有機チタン化合物の例は、有機チタンカップリング剤(例:アルコキシチタニウム、チタニウムキレート、チタニウムアシレート)を包含し、及びその具体例は、テトライソプロピルチタネート、チタニウムイソプロポキシオクチレングリコレート、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタン、ジイソプロポキシチタンジイソステアレート、テトライソプロピルビス(ジオクチルフォスファイト)チタネート、及びイソプロピルトリ(n-アミノエチル-アミノエチル)チタネート、テトラ(2,2-ジアリルオキシメチル-1-ブチル)ビス(ジ-トリデシル)ホスファイトチタネートを包含する。 前記有機チタン化合物の好適な例は、無機酸化物粒子との親和性が良好な点から、アルコキシチタニウム、及びチタニウムキレートを包含する。
【0028】
前記有機シラン化合物は、高分子型であっても、低分子型であってもよく、その例は、アルコキシシラン(例:モノアルコキシシラン、ジアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、テトラアルコキシシラン)、ビニルシラン、エポキシシラン、アミノシラン、メタクロキシシラン、及びメルカプトシランを包含する。アルコキシシランを用いる場合、加水分解により、表面処理の効果である体積抵抗率のより一層の向上(電気絶縁性の向上)を図ることができる。
【0029】
前記有機ジルコニウム化合物の例は、アルコキシジルコニウム、及びジルコニウムキレートを包含する。
【0030】
前記有機アルミニウム化合物の例は、アルコキシアルミニウム、及びアルミニウムキレートを包含する。
【0031】
前記有機リン化合物の例は、亜リン酸エステル、リン酸エステル、及びリン酸キレートを包含する。
【0032】
前記親和性向上剤としての前記界面活性剤は、高分子型であっても、低分子型であってもよいが、熱安定性の点から、高分子型が好ましい。
前記界面活性剤の例は、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、及びカチオン性界面活性剤を包含する。
【0033】
前記非イオン性界面活性剤の例は、ポリエーテル誘導体、ポリビニルピロリドン誘導体、及びアルコール誘導体を包含し、及びその好適な例は、前記無機酸化物粒子との親和性が良好な点から、ポリエーテル誘導体を包含する。
【0034】
前記アニオン性界面活性剤の例は、スルホン酸、及びカルボン酸、及びそれらの塩を含有するポリマーを包含し、及びその好適な例は、前記共重合体との親和性が良好な点から、アクリル酸誘導体系ポリマー、及びメタクリル酸誘導体系ポリマーを包含する。
【0035】
前記カチオン性界面活性剤の例は、アミン化合物、含窒素系複合環(例:イミダゾリン)を有する化合物、及びそのハロゲン化塩を包含する。
【0036】
前記親和性向上剤としてのエポキシ基含有化合物は、低分子量化合物であっても、高分子量化合物であってもよく、その具体例は、エポキシ化合物、及びグリシジル化合物を包含し、及びその好適な例は、前記共重合体との親和性の点から、エポキシ基を1個有する低分子量の化合物を包含する。
【0037】
前記エポキシ基含有化合物の更に好適な例は、次式:
【化1】
(式中、Rは、水素原子、メチル基、酸素原子若しくは窒素原子を介在してもよい炭素数2~10の炭化水素基、又は置換されていてもよい芳香環基を表す。lは0又は1を表し、mは0又は1を表し、nは0~10の整数を表す。)
で表される化合物を包含する。
【0038】
前記式で表される化合物の例は、ケトン基、又はエステル基を有する化合物を包含し、より具体的には、次式で表される化合物を包含する:
【化2】
【0039】
前記親和性向上剤の含有量は、均一な分散、及び得られるフィルムの比誘電率の高さの点から、前記無機酸化物粒子100質量部に対して、好ましくは0.01~30質量部、より好ましくは0.1~25質量部、更に好ましくは1~20質量部の範囲内であることができる。
【0040】
前記圧電フィルムは、延伸、又は無延伸の圧電フィルムであることができ、無延伸の圧電フィルムであるのが好ましい。
【0041】
残留分極量
<残留分極量の決定方法>
試料フィルムは、20mm×20mmに切り出したフィルムの中央部5mm×5mmに、アルミニウム電極(平面電極)を真空加工蒸着によりパターニングし、この平面電極に、絶縁テープを貼り付けて補強したアルミニウム箔製の2本のリード(3mm×80mm)の電極を導電性両面テープで接着することにより得られる。この試料フィルム、ファンクションジェネレーター、高圧アンプ、及びオシロスコープをソーヤータワー回路に組み込み、三角波を試料フィルムに印加(最大±10kV)し、試料フィルムの応答を、オシロスコープを用いて測定することにより、印加電界120MV/mにおける残留分極量が得られる。
【0042】
前記圧電フィルムの残留分極量は、40mC/m2以上である。
前記残留分極量の下限は、更なる圧電性の向上の点から、例えば45mC/m2、好ましくは48mC/m2、より好ましくは50mC/m2、更に好ましくは52mC/m2であることができる。
前記残留分極量の上限は、例えば、80mC/m2、75mC/m2、又は70mC/m2であることができる。
前記残留分極量は、例えば、48~80mC/m2の範囲内、50~80mC/m2の範囲内、52~80mC/m2の範囲内、又は55~80mC/m2の範囲内であることができる。
【0043】
内部ヘイズ値
<内部へイズ値の決定方法>
本明細書において、「内部ヘイズ値」(inner haze)は、ASTM D1003に準拠し、ヘイズメーター NDH7000SP CU2II(製品名、日本電色工業社)又はその同等品を使用したヘイズ(HAZE、濁度)試験において、ガラス製セルの中に水を入れて、その中にフィルムを挿入し、ヘイズ値を測定することにより得られる。
【0044】
前記圧電フィルムの内部ヘイズ値は、圧電性の点から、30%を超えるのが好ましく、35%以上であるのがより好ましく、40%以上であるのが更に好ましく、45%以上であるのがより更に好ましく、50%以上であるのが特に好ましく、50%を超えるのが特により好ましい。
前記圧電フィルムの内部ヘイズ値の下限は、更なる圧電性の向上の点から、好ましくは55%、60%、65%、又は70%であることができる。
前記圧電フィルムの内部ヘイズ値の上限は、例えば、80%、又は75%であることができる。
前記圧電フィルムの内部ヘイズ値は、例えば、50%を超えて80%以下の範囲内、55~80%の範囲内、60~80%の範囲内、65~80%の範囲内、又は70~80%の範囲内であることができる。
【0045】
内部ヘイズ値[%]/膜厚[μm]の比
前記圧電フィルムの内部ヘイズ値[%]/膜厚[μm]の比は、1.0を超えるのが好ましく、1.1以上であるのがより好ましい。
また、前記圧電フィルムの内部ヘイズ値[%]/膜厚[μm]の比は、通常、2.0以下であり、1.9以下が好ましい。
前記圧電フィルムの内部ヘイズ値[%]/膜厚[μm]の比は、例えば、1.0を超えて2.0以下の範囲内、又は1.1以上1.9以下の範囲内であることができる。
【0046】
面積
前記圧電フィルムの面積は、工業生産性の点から、9cm2以上の範囲内であるのが好ましい。この範囲は、通常、ロール・トゥ・ロール方式で製造されるフィルムの面積の範囲に対応する。
前記圧電フィルムの面積の下限は、好ましくは、10cm2、50cm2、100cm2、200cm2、300cm2、320cm2、400cm2、500cm2、600cm2、700cm2、800cm2、900cm2、1000cm2、1100cm2、1200cm2、1300cm2、1400cm2、1500cm2、又は1600cm2であることができる。
前記圧電フィルムの面積の上限は、例えば、4000m2、3500m2、3000m2、2500m2、2000m2、1500m2、1000m2、又は500m2であることができる。
前記圧電フィルムの面積は、例えば、10cm2~4000m2の範囲内、100cm2~2000m2の範囲内、又は600cm2~500m2の範囲内であることができる。
【0047】
前記圧電フィルムにおいて、残留分極量、内部ヘイズ値、及び面積の好適な組合せは、次のとおりである。
(a)残留分極量が45mC/m2以上であり、且つ
内部へイズ値が30%を超え、且つ、
面積が9cm2以上である組合せ、
(b)残留分極量が45mC/m2以上であり、且つ
内部ヘイズ値[%]/膜厚[μm]の比が1.0を超え、且つ、
面積が9cm2以上である組合せ、
(c)残留分極量が45mC/m2以上であり、且つ
内部ヘイズ値が30%を超え、且つ
内部ヘイズ値[%]/膜厚[μm]の比が1.0を超え、且つ、
面積が9cm2以上である組合せ、
(d)残留分極量が50mC/m2以上であり、且つ
内部へイズ値が50%を超えて80%以下の範囲内であり、且つ、
面積が9cm2以上である組合せ。
【0048】
結晶化度
<結晶化度の決定方法>
開口部が設けられたサンプルホルダにフィルム試料を直接載置し、回折角2θが10~40°である範囲にわたってX線回折測定を行ったときに得られるX線回折パターンにおいて、
10°の回折角2θにおける回折強度と、25°の回折角2θにおける回折強度とを結ぶ直線をベースラインとして設定し、及び
当該ベースラインと回折強度曲線とで囲まれる領域を、プロファイルフィッティングにより2つの対称性ピークに分離し、
このうち、回折角2θの大きい方を結晶性ピークと認定し、且つ回折角2θの小さい方を非晶性ハローピークと認定した場合に、
100×(結晶性ピークの面積)/(結晶性ピークの面積と非晶性ハローピークの面積との和)で表される値を結晶化度とする。
【0049】
前記圧電フィルムの結晶化度の下限は、圧電性の点から、好ましくは50%、又は55%であることができる。
前記結晶化度の下限は、熱による寸法安定性及び圧電性の点から、好ましくは60%、65%、又は70%であることができる。
前記結晶化度の上限は、好ましくは75%、70%、65%、又は60%であることができる。
前記結晶化度は、例えば、50~80%の範囲内、55~80%の範囲内、60~80%の範囲内、65~80%の範囲内、又は70~80%の範囲内であることができる。
【0050】
圧電定数
<圧電定数d33の決定方法>
圧電定数d33の測定は、PIEZOTEST社のピエゾメーターシステムPM300(サンプル固定治具として、先端が1.5mmφのピンをとりつける)を用いるか、又はその同等品を用いて行われる。ここで、恣意性を排除して選択したフィルム上の10点において圧電定数d33を測定し、その算術平均値を圧電定数d33とする。フィルム上で恣意性を排除して10点を選択することは、例えば、直線上で50mm間隔に10点を選択することにより行うことができる。ここで、恣意性とは、後記する変動係数が小さくなるように意図することを意味する。
圧電定数d33の実測値は、測定されるフィルムの表裏によって、プラスの値、又はマイナスの値となるが、本明細書中においては、圧電定数d33の値として、その絶対値を記載する。
【0051】
前記圧電フィルムの好ましい圧電定数d33の下限は、例えば、15pC/N、17pC/N、18pC/N、又は19pC/Nであることができる。
前記圧電フィルムの好ましい圧電定数d33の上限は、例えば、35pC/N、30pC/N、28pC/N、26pC/N、又は20pC/Nであることができる。
前記圧電フィルムの圧電定数d33は、例えば、15~35pC/Nの範囲内、17~35pC/Nの範囲内、18~35pC/Nの範囲内、又は19~35pC/Nの範囲内であることができる。
【0052】
圧電定数d
33
の変動係数
圧電フィルムの圧電定数d33の変動係数は、圧電定数d33の、算術平均に対する標準偏差の比である。
【0053】
前記変動係数の下限は、製造コストの点から、例えば、0.0001、好ましくは0.001、より好ましくは0.01、更に好ましくは0.02であることができる。
前記変動係数の上限は、面内均一性の点から、例えば、2.0、好ましくは1.0、より好ましくは0.6、更に好ましくは0.4、より更に好ましくは0.3、特に好ましくは0.15であることができる。
前記変動係数は、例えば、0.01~1.0の範囲内、0.01~0.6の範囲内、0.01~0.5の範囲内、0.01~0.4の範囲内、又は0.01~0.3の範囲内であることができる。
【0054】
膜厚
<膜厚の決定方法>
本明細書中、恣意性を排除して選択したフィルム上の10点で測定した各厚さの算術平均値を、フィルムの膜厚とする。
【0055】
前記圧電フィルムの膜厚の下限は、例えば、5μm、9μm、又は10μmであることができる。
前記圧電フィルムの膜厚の上限は、例えば、3000μm、2500μm、2000μm、1500μm、1000μm、800μm、500μm、200μm、100μm、又は60μmであることができる。
前記圧電フィルムの膜厚は、例えば、5~3000μmの範囲内、5~2500μmの範囲内、5~2000μmの範囲内、5~1500μmの範囲内、5~1000μmの範囲内、5~800μmの範囲内、5~500μmの範囲内、5~200μmの範囲内、5~100μmの範囲内、5~60μmの範囲内であることができる。好ましい膜厚は、前記圧電フィルムの用途によって異なることができる。
【0056】
膜厚の変動係数
<膜厚の変動係数の決定方法>
本明細書中、フィルムの平面方向の全体に渡って1cm四方毎に10箇所において測定した値の変動係数を、厚さの変動係数とする。
【0057】
前記圧電フィルムの厚さの変動係数は、好ましくは10%以下、更に好ましくは5%以下であることができる。
【0058】
リタデーション
<リタデーションの決定方法>
本明細書中、リタデーションは、フィルムのサンプルを2cm×2cm以上の大きさに切り出して、位相差フィルム・光学材料検査装置RETS-100(製品名、大塚電子)、又はその同等品を用いた測定によって、決定される。本明細書において、リタデーションの数値としては、550nmの値を採用する。
【0059】
前記圧電フィルムのリタデーションの下限は、特に限定されないが、例えば、0.5nm、1nm、2nm、4nm、5nm、又は10nmであることができる。
前記圧電フィルムのリタデーションの上限は、例えば、5000nm、4500nm、4000nm、3500nm、3000nm、2500nm、2000nm、1500nm、1000nm、500nm、400nm、又は300nmであることができる。
前記圧電フィルムのリタデーションは、好ましくは0.5~500nmの範囲内、より好ましくは0.5~400nmの範囲内、及び更に好ましくは1~400nmの範囲内であることができる。
【0060】
リタデーション[nm]/膜厚[μm]の比
リタデーション[nm]/膜厚[μm]の比は、前記方法により決定されたリタデーションを、前記方法により決定された膜厚で除算した値である。
前記比の下限は、例えば、0.02、0.05、又は0.1であることができる。
前記比の上限は、例えば、2.5、2.0、又は1.5であることができる。
前記比は、例えば、0.02~2.5の範囲内、又は0.05~2.0の範囲内であることができる。
【0061】
用途
前記圧電フィルムは、各種用途に適用することができる。用途の具体例は、センサ(例:タッチセンサ、振動センサ、生体センサ、タイヤセンサ(タイヤ内面に設置するセンサ))、アクチュエータ、タッチパネル、ハプティックデバイス(ユーザに触覚をフィードバックする機能を有するデバイス)、振動発電装置(例:振動発電床、振動発電タイヤ)、スピーカー、及びマイクを包含する。前記圧電フィルムは、熱による寸法安定性が高いため、前記用途の中でも、製造工程が熱処理を含む圧電体に好適に使用することができる。
【0062】
製造方法
本開示の一実施態様の圧電フィルムは、例えば、
キャスティング法により無延伸かつ非分極の重合体フィルム(例、非分極のフッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体フィルム)を調製する工程A;
前記無延伸かつ非分極の重合体フィルムを分極処理する工程B;及び
必要に応じて、工程Bに対して任意の時点で、無延伸の重合体フィルムを熱処理する工程C
を含む製造方法
によって製造できる。
【0063】
工程A(フィルム調製工程)
キャスティング法による、「前記無延伸かつ非分極の重合体フィルム」の製造方法は、例えば、(1)前記フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体、並びに前記所望による成分(例:無機酸化物粒子、及び親和性向上剤)を溶媒中に溶解又は分散させて液状組成物を溶解させて、液状組成物を調製する工程;
(2)前記液状組成物を基材上に適用(流延又は塗布)する工程;及び
(3)前記液状組成物を適用した基材を所定の温度に暴露してフィルムを形成させる工程を含む製造方法である。これらの工程は、工業生産性の点から、ロール・トゥ・ロール方式で実施するのが好ましい。
【0064】
液状組成物の調製における溶解温度は、特に限定されないが、溶解促進及びフィルムの着色防止の点から、好ましくは室温~80℃である。
着色を防止する点から、前記溶媒の好適な例は、ケトン系溶媒(例:メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、アセトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、シクロヘキサノン)、エステル系溶媒(例:酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、乳酸エチル)、エーテル系溶媒(例:テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン)、及びアミド系溶媒(例:ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド)を包含する。これらの溶媒は、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられ得る。なお、前記溶媒中のアミド系溶媒の含有率は50質量%以下であることが望ましい。
【0065】
前記液状組成物の基材上への流延(又は塗布)は、前記液状組成物の基材上への流延(又は塗布)は、慣用の方法(例:ナイフコーティング方式、キャストコーティング方式、ロールコーティング方式、グラビアコーティング方式、ブレードコーティング方式、ロッドコーティング方式、エアドクタコーティング方式、またはスロットダイ方式)に基づき行えばよい。
なかでも、操作性が容易な点、得られるフィルム厚さのバラツキが少ない点、生産性に優れる点から、グラビアコーティング方式、又はスロットダイ方式が好ましい。
前記基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いることができる。
【0066】
前記液状組成物を適用した基材の所定の温度への暴露は、通常のフィルム形成のための熱処理(又は加熱乾燥)の方法に準じて行えばよい。当該熱処理(又は加熱乾燥)は、好ましくは、例えば、ロール・トゥ・ロール方式で、前記基材上に前記液状組成物を適用したものを高温炉(又は乾燥炉)に通すことで実施してもよい。
前記液状組成物を適用した基材の所定の温度への暴露は、2段階以上(例えば2~4段階の範囲内、好ましくは2又は3段階、より好ましくは2段階)に分けて実施することが好ましい。
前記暴露は、前記基材を第1の温度に暴露する段階、及び前記第1の温度に暴露した基材を、第1の温度よりも低い第2の温度に暴露する段階を含むことが好ましい。
第1の温度に暴露する段階は、例えば、液状組成物の溶媒を気化させる段階であることができる。第1の温度(又は乾燥温度)は、例えば、150~230℃の範囲内、好ましくは155~220℃の範囲内、より好ましくは160~210℃の範囲内、さらに好ましくは165~200℃の範囲内である。第1の温度に暴露する時間(又は乾燥時間)は、短時間が好ましく、1時間未満がより好ましく、0.8時間以下(例えば、0.3~0.8時間の範囲内)がさらに好ましい。
第2の温度に暴露する段階は、例えば、結晶化させる段階、結晶成長させる(結晶化度を上昇させる)段階であることができる。第2の温度は、第1の温度よりも低ければ特に制限されず、例えば、60℃以上150℃未満の範囲内、好ましくは80~145℃の範囲内、より好ましくは100~140℃の範囲内、さらに好ましくは110~135℃の範囲内である。第2の温度に暴露する時間は、長時間が好ましく、例えば1時間以上、好ましくは2時間以上、より好ましくは3時間以上、さらに好ましくは4時間以上、さらにより好ましくは5時間以上、特に好ましくは6時間以上である。
特に、150~200℃の範囲内で短時間(例えば1時間未満、好ましくは0.3~0.8時間)暴露し、次いで110℃以上150℃未満の範囲内で長時間(例えば5時間以上、好ましくは6時間以上)暴露することが好ましい。このような処理により、残留分極量が大きいだけでなく、内部へイズ値、結晶化度等の他の物性も満足し得る圧電フィルムを形成することができる。
【0067】
工程Aで調製される非分極フィルムの厚さは、得ようとする圧電フィルムに応じて設定すればよい。
【0068】
工程B(分極処理工程)
工程Bに用いられる、非分極の前記共重合体フィルム(以下、単に「非分極フィルム」と称する場合がある)は、好ましくは、延伸されていないものである。
【0069】
工程Bの分極処理は、慣用の方法によって行うことができ、好ましくはコロナ放電処理によって行われる。
コロナ放電には、負コロナ及び正コロナのいずれを用いてもよいが、非分極フィルムの分極しやすさの観点から負コロナを用いることが望ましい。
コロナ放電処理は、特に限定されないが、例えば、特開2011-181748号公報に記載のように非分極フィルムに対して線状電極を用いて印加を実施すること;非分極フィルムに対して針状電極を用いて印加を実施すること;又は非分極フィルムに対してグリッド電極を用いて印加を実施すること、によって実施できる。
コロナ放電処理の条件は、当該技術分野の常識に基づいて、適宜設定すればよい。コロナ放電処理の条件が弱すぎると、得られる圧電フィルムの圧電性が不充分になる虞があり、一方、コロナ放電処理の条件が強すぎると、得られる圧電フィルムが点状欠陥を有する虞がある。
ここで、得られる分極フィルムの圧電定数d33の面内ばらつきを抑制するためには、各針状電極、及び/又は線状電極とフィルムとの距離が一定であること、すなわち電極とフィルムとの間の距離にフィルム面内ばらつきが無いこと(又は極めて小さいこと)(具体的には、最長距離と最短距離の差が、好ましくは、6mm以内、より好ましくは4mm、更に好ましくは3mm以内であること)が望ましい。
また、例えば、ロール・トゥ・ロールで連続印加を実施する場合は、フィルムに一定の張力がかかるようにして、フィルムを適度且つ均一にロールに密着させることが、望ましい。
例えば、線状電極を用いてロール・トゥ・ロールで連続印加を実施する場合は、線状電極と非分極フィルムの間の距離、フィルム膜厚等によって異なるが、直流電界は、例えば、-15~-25kVの範囲内である。処理速度は、例えば、10~1200cm/分の範囲内である。
別法として、分極処理は、コロナ放電の他に、例えば非分極フィルムの両面から平板電極で挟み込んで印加することにより実施してもよい。具体的には、例えば、非分極フィルムの両面から平板電極で挟み込んで印加を実施する場合、0~400MV/m(好ましくは50~400MV/m)の範囲内の直流電界、及び0.1秒~60分間の範囲内の印加時間の条件を採用できる。
【0070】
工程C(熱処理工程)
工程Cは、工程Bに対して任意の時点で、必要に応じて行われる。すなわち、工程Cは、工程Bの前、工程Bと同時、又は工程Bの後に実施してもよい。工程Cを工程Bの後に行う場合、工程Cの熱処理は、工程Bで得られた分極化フィルム又は工程Bにおいて分極を完了した部分に対して行うことができる。すなわち、工程Bの分極処理を実施しながら、当該分極処理を終えた部分に対して工程Cの熱処理を実施してもよい。
熱処理の方法は、特に限定されないが、例えば、前記無延伸の重合体フィルム(以下、単に前記フィルムと称する場合がある)を2枚の金属板で挟み、当該金属板を加熱すること;前記フィルムのロールを恒温槽中で加熱すること;又はロール・トゥ・ロール方式での前記フィルムの生産において、金属ロールを加熱し、前記フィルムを、当該加熱した金属ロールに接触させること;又は前記フィルムを加熱した炉の中にロール・トゥ・ロールで通していくことにより行うことができる。ここで、工程Cを工程Bの後に行う場合、分極化フィルムは単体で熱処理してもよいし、或いは別種のフィルム又は金属箔上に重ねて積層フィルムを作成し、これを熱処理してもよい。とりわけ、高温で熱処理する場合には後者の方法のほうが、分極化フィルムにしわが入りにくいので好ましい。
前記熱処理の温度は、熱処理される分極化フィルムの種類によって異なる場合があり、好ましくは(熱処理される分極化フィルムの融点-100)℃~(熱処理される分極化フィルムの融点+40)℃の範囲内である。
前記熱処理の温度は、具体的には、好ましくは80℃以上、より好ましくは85℃以上、更に好ましくは90℃以上の範囲内である。
また、前記熱処理の温度は、好ましくは170℃以下、より好ましくは160℃以下、更に好ましくは140℃以下の範囲内である。
前記熱処理の時間は、通常、10秒間以上、好ましくは0.5分間以上、より好ましくは1分間以上、更に好ましくは2分間以上の範囲内である。
また、前記熱処理の時間の上限は限定されないが、通常、前記熱処理の時間は60分間以下の範囲内である。
前記熱処理の条件は、好ましくは90℃以上で1分間以上の範囲内である。
【0071】
熱処理後、通常、前記フィルムを所定温度まで冷却する。当該温度は、好ましくは、0℃~60℃の範囲内であり、室温であることができる。冷却速度は、徐冷であっても急冷であってもよく、急冷であることが生産性の面から好ましい。急冷は、例えば送風等の手段によって実施できる。本明細書中、このようなフィルムの熱処理をアニール処理と称する場合がある。
このようにして得られる圧電フィルムは、アニール処理後でも、さらに製造工程が熱処理を含む圧電体を製造した後でも、高い圧電性を有する。
【0072】
圧電フィルムのロール
前記圧電フィルムは、好ましくは、ロールとして保管及び出荷され得る。
本開示の一実施態様の圧電フィルムのロールは、前記圧電フィルムのみからなってもよく、前記圧電フィルムに保護フィルムなどを積層させて巻いた形態でもよく、紙管等の芯、及び当該芯に巻き付けられた前記圧電フィルムを備えてもよい。
前記圧電フィルムのロールは、好ましくは、幅50mm以上の範囲内、かつ長さ20m以上の範囲内である。
前記圧電フィルムのロールは、例えば、前記圧電フィルムを、巻き出しローラーと巻き取りローラーを用いて巻き取ることにより、調製できる。
ここで、フィルムのたわみを抑制する観点で、通常行われるように、巻き出しローラーと巻き取りローラーを平行にすることが好ましい。
ローラーとしては、フィルムの滑り性を良くするため、滑り性のよいローラー、具体的にはフッ素樹脂で被覆されたローラー、メッキされたローラー、又は離型剤を塗布したローラーを用いることが好ましい。
ここで、フィルムの厚さが不均一である場合は、いわゆるロールの耳立ち(ハイエッジ;ロールの軸方向の中心部に比べて、端部が太くなること;両端部が中心部より膜厚が低い場合に両端部が中心部に比べて凹むこと;又は一方の端部からもう一方の端部に傾斜的に厚さが変化していく場合に膜厚が薄い側の端部が凹むこと)等のロールの太さの不均一さが発生し、これはシワの発生の原因になり得る。また、これは、フィルムの捲き出しの際に、フィルムのたわみ(重力による張力以外の張力がかけられていない状態での湾曲)が発生する原因となり得る。
一般に、ロールの耳立ちを防止する目的で、ロールの端となるフィルム端をスリッター耳おとし(スリット)することが行われるが、フィルムの厚さの不均一がフィルム端から広い範囲にわたる場合、耳おとしのみでは、ロールの耳立ち及び凹みの防止が困難である。
また、一般に、フィルムの幅が広い(例:幅100mm以上)ほど、及びフィルムの長さが長い(例:50m以上)ほど、前記耳立ち、前記凹み及び前記たわみが生じやすい。 しかし、前記圧電フィルムは、厚さの均一性が高いので、そのまま、又はロールの端となるフィルム端をスリッター耳おとし(スリット)することのみで、フィルムの幅が広く(例:幅100mm以上)、かつフィルムの長さが長い(例:50m以上)場合でも、前記耳立ち、前記凹み及び前記たわみが抑制されたロールにすることができる。
スリットで除去された耳(フィルム端)は、回収して、前記圧電フィルムの原料として、リサイクルできる。
前記圧電フィルムのロールは、太さの均一性が高く、好ましくは、ロールの軸方向の中心部の太さに対する、より太いほうの端部の太さの比が70~130%の範囲内である。 これにより、前記圧電フィルムのロールは、これから巻き出されたフィルムのたわみが抑制されている。
また、前記圧電フィルム及びそのロールの製造に用いられるローラーは、少なくともその表面の材質が、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、クロムメッキ、又はステンレス鋼(SUS)であることが好ましい。
これらのことにより、フィルムのシワを抑制できる。
【0073】
圧電体
本開示の一実施態様の圧電体は、積層体であり、前記圧電フィルム、及び、前記圧電フィルムの少なくとも一方の面上に設けられた電極を備える。
前記電極の具合例は、ITO(酸化インジウム・スズ)電極、酸化スズ電極、金属ナノワイヤー、金属ナノ粒子(例:銀ナノ粒子)、及び有機導電樹脂を含む。
前記圧電体は、前記圧電フィルム、前記圧電フィルムの一方の面上に設けられた正電極層(又は上部電極層)、及び前記圧電フィルムの他方の面に設けられた負電極層(又は下部電極層)を備えた積層体であってもよい。
前記圧電体は、電極層の圧電フィルムが積層されていない面に、絶縁層を有していてもよい。また、前記圧電体は、電極層の圧電フィルムが積層されていない面(又は最表面)にカバー(例:電磁シールド層)を有していてもよい。
圧電体の製造方法は、例えば、
前記圧電フィルムを準備する工程;及び
前記圧電フィルムの少なくとも一方の面上に電極を設ける工程
を含んでいる。
前記電極を設ける工程において、電極を形成する方法は、通常、熱処理を含んでおり、及びその具体例は、電極材料を物理的気相成長法(例:真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング)又は化学的気相成長法(例:プラズマCVD)により成膜する方法、及び電極材料を基板に塗布する方法を包含する。
前記熱処理の温度の下限は、例えば25℃、好ましくは40℃、より好ましくは50℃である。
前記熱処理の温度の上限は、(熱処理される分極化フィルムの融点-3)℃、例えば220℃、好ましくは180℃、より好ましくは150℃、更に好ましくは130℃である。
前記熱処理の温度は、例えば25~220℃の範囲内、好ましくは40~130℃の範囲内であることができる。このような熱処理温度で熱処理を行っても、圧電性の低下を著しく抑制することができる。
前記熱処理の時間は、通常、10秒間以上、好ましくは1分間以上、より好ましくは10分間以上、更に好ましくは15分間以上の範囲内である。
【実施例】
【0074】
以下、実施例によって本開示の一実施態様を更に詳細に説明するが、本開示はこれに限定されるものではない。
【0075】
後記の実施例及び比較例においては、次の電極を使用した。
<使用電極>
(1)20mm幅(10mm厚、500mm長)の真鍮棒の中心線上に10mm間隔で電極用針(針状電極)(R=0.06mm;森田製針所製)を1列に並べた針状電極棒
(2)(1)と同様に、15mm間隔で電極用針(R=0.06mm;森田製針所製)を1列に並べた針状電極棒
(3)直径0.1mmの金鍍金したタングステン製の線状電極(500mm長)
【0076】
後記の圧電フィルムにおいては、次の方法で、残留分極量、内部ヘイズ値、結晶化度、厚さの変動係数、圧電定数d33、及びリタデーションを測定した。
<残留分極量>
20mm×20mmに切り出した試料フィルムの中央部5mm×5mmにアルミニウム電極(平面電極)を真空加工蒸着によりパターニングした。この平面電極に、絶縁テープを貼り付けて補強したアルミニウム箔製の2本のリード(3mm×80mm)の電極を、導電性両面テープで平面電極に接着した。この試料フィルム、ファンクションジェネレーター、高圧アンプ、およびオシロスコープをソーヤータワー回路に組み込み、三角波を試料フィルムに印加(最大±10kV)した。試料フィルムの応答を、オシロスコープを用いて測定することにより、印加電界120MV/mにおける残留分極量を求めた。
<内部ヘイズ値>
石英製セルの中に水を入れ、その中にフィルムを挿入し、NDH7000SP CU2II(製品名、日本電色工業)を使用し、ASTM D1003に準拠し測定した。
<結晶化度>
開口部が設けられたサンプルホルダにフィルム試料を直接載置し、回折角2θが10~40°である範囲にわたってX線回折測定を行った。得られたX線回折パターンにおいて、10°の回折角2θにおける回折強度と、25°の回折角2θにおける回折強度とを結ぶ直線をベースラインとして設定し、及び当該ベースラインと回折強度曲線とで囲まれる領域を、プロファイルフィッティングにより2つの対称性ピークに分離し、このうち、回折角2θの大きい方を結晶性ピークと認定し、且つ回折角2θの小さい方を非晶性ハローピークと認定した。
結晶化度は、100×(結晶性ピークの面積)/(結晶性ピークの面積と非晶性ハローピークの面積との和)により算出した。
<厚さの変動係数>
フィルムの平面方向の全体に渡って1cm四方毎に10箇所において厚さを測定し、フィルムの厚さの変動係数を算出した。
測定した10点の平均値を平均厚さとし、下記計算式で厚さの変動係数を算出した。厚さの変動係数(%)=±[(厚さの最大値-厚みの平均値)+(厚さの平均値-厚みの最小値)]÷厚さの平均値÷2×100
<圧電定数d33>
圧電定数d33の測定は、PIEZOTEST社のピエゾメーターシステムPM300を用いて測定した。当該測定では、1Nでサンプルをクリップし、0.25N、110Hzの力を加えた際の発生電荷を読み取った。
<リタデーション>
リタデーションは、フィルムのサンプルを2cm×2cm以上の大きさに切り出して、位相差フィルム・光学材料検査装置 RETS-100(製品名、大塚電子)を用いた測定によって、決定した。リタデーションの数値としては、550nmの値を採用した。
【0077】
(1)圧電フィルムの製造
<圧電フィルム1>
膜厚40μm及び面積50m2の圧電フィルム1は、ロール・トゥ・ロール方式で作製した。具体的には、圧電フィルム1は、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体24wt%(モル比80:20)のメチルエチルケトン溶液を、ロールから送り出されたPET基材フィルム上に流延し、190℃で0.5時間処理して溶媒を気化させた後、120℃まで降温後6時間保持し、その後室温まで冷却し、後記の分極処理を行うことにより得た。
<圧電フィルム2>
膜厚40μm及び面積50m2の圧電フィルム1は、ロール・トゥ・ロール方式で作製した。具体的には、圧電フィルム1は、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体24wt%(モル比80:20)のメチルエチルケトン溶液を、ロールから送り出されたPET基材フィルム上に流延し、190℃で0.5時間処理して溶媒を気化させた後、120℃まで降温後1秒保持し、その後室温まで冷却し、後記の分極処理を行うことにより得た。
<圧電フィルム3>
膜厚40μm及び面積50m2の圧電フィルム1は、ロール・トゥ・ロール方式で作製した。具体的には、圧電フィルム1は、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体24wt%(モル比80:20)のメチルエチルケトン溶液を、ロールから送り出されたPET基材フィルム上に流延し、190℃で0.5時間処理して溶媒を気化させた後、120℃まで降温後5時間保持し、その後室温まで冷却し、後記の分極処理を行うことにより得た。
【0078】
分極処理
ISOクラス7のクリーンルーム(湿度60%)の中で、
図1にその概要を示したように、アースされたローラー1(直径200mm、幅800mm)であるSUS製のグランド電極上に、抱き角200°で当該ローラー1に沿って移動するように、幅550mm、長さ200m、及び表1に示す各膜厚(20~40μm)を有するフッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体フィルム2(以下、単にフィルム2と称する場合がある。)を設置した。第1電極E1として、針状電極を、当該針状電極の並びがローラー1の表面に対して垂直(すなわち、ローラー1の動径方向)になり、かつ、フィルム2から針状電極(第1電極E1)の先端が10mm上空に離れた位置になるように設置した。第1電極E1は、第1高圧電源V1が接続されている。さらに、前記針状電極(第1電極E1)から、フィルム2の長さにして100mm離れた位置、及び150mm離れた位置に、それぞれ、第2電極E2として、直径0.1mmの金鍍金したタングステン製の線状電極(550mm長)1本を、フィルム2から20mm上空に離れた位置になるように設置した。各第2電極E2は、それぞれ、第2高圧電源V2が接続されている。
針状電極(第1電極E1)には-10kVの電圧を、線状電極(第2電極E2)には-10~-15kVの電圧を印加した後、96cm/分の速さでフィルム2を
図3の矢印方向に移動させて、針状電極(第1電極)の先端と、それに続く線状電極(第2電極)から発生するコロナ放電の下を通過させ、更に、アースされた金属ロール3(直径70mm)に接触させてフィルム2を除電した。その後、スリッターを用いて、フィルム2の両端をそれぞれ0.5cm幅除去し、PETフィルムを間に挟みながら、直径6インチの円筒状の芯に、得られた分極化フィルムを巻き取った。分極化フィルムを作製した
。
ここで、針状電極(第1電極E1)とフィルム2との距離、及び線状電極(第2電極E2)とフィルム2との距離がともに一定(電極とフィルムとの間の最長距離と最短距離の差が、0mm)になるように調
整した。
【0079】
(2)圧電フィルムの評価
圧電フィルム1
~3の評価結果を、以下の表1に示す。
【表1】