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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/18 20060101AFI20240417BHJP
【FI】
H02K1/18 Z
H02K1/18 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020056524
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021158783
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平野 正樹
(72)【発明者】
【氏名】山際 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】中 祥司郎
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-259581(JP,A)
【文献】特開2010-081789(JP,A)
【文献】特開2013-169043(JP,A)
【文献】特開2005-354870(JP,A)
【文献】特開2004-343938(JP,A)
【文献】特開2020-039231(JP,A)
【文献】国際公開第2008/047942(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコア(13)と、前記ステータコア(13)が内側に嵌合されるケーシング(14)とを備え、
前記ステータコア(13)は、略円筒状のバックヨーク(11)及び前記バックヨークから径方向内側に延びる複数のティース(12)を有し、
前記バックヨーク(11)において、前記ティース(12)に対応した位置の径方向外側にヨーク凸部(11a)が設けられ、
前記ヨーク凸部(11a)は、前記バックヨーク(11)の周方向の両側面が前記周方向に対して傾斜していることにより、径方向外側に向かって幅が狭くなる形状を有し、
前記ケーシング(14)の内側に、前記ヨーク凸部(11a)に対応して径方向外側に向かって幅が狭くなる形状のケーシング凹部(14a)が設けられ、
前記ヨーク凸部(11a)の周方向の両側面と、前記ケーシング凹部(14a)とが接触して締結されており、
1つの前記ティース(11)と前記ケーシング(14)との間に設けられる前記ヨーク凸部(11a)は、1つまでであり、
全ての前記ヨーク凸部(11a)は、前記ティース(12)と前記ケーシング(14)とに挟まれる位置に形成され、
前記ヨーク凸部(11a)は、前記両側面の間に前記周方向に伸びる上面を備え、当該上面の部分において、前記ヨーク部(11)と前記ケーシング(14)との間に隙間を有することを特徴とするモータ。
【請求項2】
請求項1のモータにおいて、
前記ケーシング(14)は、軸方向に垂直な断面における内周面が略円形である筒体(14c)と、前記筒体(14c)の内周面に取り付けられた、前記筒体(14c)とは別部材のケーシング凸部(14b)とを備え、
前記ケーシング凹部(14a)は、前記ケーシング凸部(14b)同士の間の領域として構成されることを特徴とするモータ。
【請求項3】
請求項1又は2のモータにおいて、
前記ステータコア(13)における前記ヨーク凸部(11a)に対して径方向内側の領域に、空隙(33)を有することを特徴とするモータ。
【請求項4】
請求項3のモータにおいて、
前記空隙(33)は、径方向内側に凸の弧状の形状であることを特徴とするモータ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つのモータにおいて、
前記ステータコア(13)は、それぞれ一つの前記ティース(12)及び前記バックヨーク(11)の一部を構成するヨーク片(11c)を含む複数のステータコア片(13a)からなり、前記ヨーク片(11c)が連結されて略円筒状のバックヨーク(11)として構成されていることを特徴とするモータ。
【請求項6】
請求項5のモータにおいて、
前記ティース(12)は、径方向に延びて前記バックヨーク(11)の外周に達するスリット(12a)を有することを特徴とするモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
モータにおいて、ステータをケーシングに固定する必要がある。固定の方法として、焼嵌めがある。また、ケーシング及びステータに凹凸を設けて、嵌め合い構造とすることも行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4090565号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ステータとケーシングとの固定方法について、生産性の点では焼嵌めが優れている。しかし、焼嵌めを用いると、ステータに圧縮応力が加わるので磁気特性が悪化し、鉄損が増加する場合がある。
【0005】
本開示の目的は、生産性に優れた焼嵌めを用いながら、磁気特性の悪化を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、ステータコア(13)と、ステータコア(13)が内側に嵌合されるケーシング(14)とを備えるモータを対象とする。ステータコア(13)は、略円筒状のバックヨーク(11)及びバックヨークから径方向内側に延びる複数のティース(12)を有する。バックヨーク(11)において、ティース(12)に対応した位置の径方向外側にヨーク凸部(11a)が設けられる。ヨーク凸部(11a)は、バックヨーク(11)の周方向の両側面が周方向に対して傾斜していることにより、径方向外側に向かって幅が狭くなる形状を有する。ケーシング(14)の内側に、ヨーク凸部(11a)に対応して径方向外側に向かって幅が狭くなる形状のケーシング凹部(14a)が設けられる。ヨーク凸部(11a)の周方向両側面と、ケーシング凹部(14a)とが接触して締結されている。
【0007】
第1の様態では、ヨーク凸部(11a)の側面にて締結することにより、バックヨーク(11)全体の応力を緩和することができる。
【0008】
本開示の第2の態様は、上記第1の態様において、ケーシング(14)は、軸方向に垂直な断面における内周面が略円形である筒体(14c)と、筒体(14c)の内周面に取り付けられた、筒体(14c)とは別部材のケーシング凸部(14b)とを備え、ケーシング凹部(14a)は、ケーシング凸部(14b)同士の間の領域として構成されるものである。
【0009】
第2の態様では、筒体(14c)とは別体のケーシング凸部(14b)を用いることにより、生産性を高めることができる。
【0010】
本開示の第3の態様は、上記第1の態様において、ステータコア(13)におけるヨーク凸部(11a)に対して径方向内側の領域に、空隙(33)を有するものである。
【0011】
第3の態様では、空隙(33)を油戻りのためのスペースとして用いることができる。また、空隙(33)により、ティース(12)側への応力の伝播を抑制することができる。
【0012】
本開示の第4の態様は、上記第3の態様において、空隙(33)は、径方向内側に凸の弧状の形状であるものである。
【0013】
第4態様では、このような形状の空隙(33)とすることにより、応力の伝播をより確実に抑制することができる。
【0014】
本開示の第5の態様は、上記第1~第4のいずれかの態様において、ステータコア(13)は、それぞれ一つのティース(12)及びバックヨーク(11)の一部を構成するヨーク片(11c)を含む複数のステータコア片(13a)からなり、ヨーク片(11c)が連結されて略円筒状のバックヨーク(11)として構成されているものである。
【0015】
第5の態様では、ストレートコアをカーリング(折り曲げ)してステータコア(13)とした場合にも対応できる。
【0016】
本開示の第6の態様は、上記第5の態様において、ティース(12)は、径方向に延びてバックヨーク(11)の外周に達するスリット(12a)を有するものである。
【0017】
第6の態様では、ステータコア片(13a)同士の接続箇所(17)付近においてバックヨーク(11)に加わる応力を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本開示の実施形態1における例示的モータを模式的に示す断面図である。
図2図2は、図1の一部を拡大して示す図である。
図3図3は、比較例のステータコアにおける応力を示す図である。
図4図4は、実施形態1のステータコアにおける応力を示す図である。
図5図5は、本開示の実施形態2における例示的モータに関して示す断面図である。
図6図6は、本開示の実施形態3における例示的モータを模式的に示す断面図である。
図7図7は、図6の一部を拡大して示す図である。
図8図8は、本願の実施形態4におけるストレートコアを模式的に示す図である。
図9図9は、本開示の実施形態3における例示的モータを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
《実施形態1》
実施形態1について説明する。図1は、本実施形態のモータ(10)を模式的に示す断面図である。モータ(10)は、ステータコア(13)と、該ステータコア(13)が内側に嵌合されるケーシング(14)とを備える。ステータコア(13)は、略円筒状のバックヨーク(11)と、バックヨーク(11)から径方向内側に延びる複数のティース(12)を有する。それぞれのティース(12)について巻線が巻回され、コイル(15)が構成されている。図示は省略するが、ステータコア(13)とコイル(15)とは、インシュレータにより絶縁されている。また、ステータコア(13)の内側に、ステータコア(13)と同軸となるように、ロータ(16)が備えられている。
【0020】
尚、本願において「略円筒状」とは、概略として円筒形と認識される形状を言うものであり、数学的に厳密な「円筒」であることは必須としない。以下に説明するとおり、バックヨーク(11)についても、ヨーク凸部(11a)のような構成を含めて「略円筒状」である。また、例えば加工の精度、加工方法の都合等によって生じる、又は、技術常識として問題ないことが理解される範囲の凹凸、変形等はあっても良い。これは、「円筒状」とだけ表現する場合も同様である。同様に、「略円形」についても、数学的な「円」であることは必須としない。
【0021】
次に、図2は、ステータコア(13)について更に説明する図であり、図1におけるIIの部分を拡大して示す。
【0022】
バックヨーク(11)において、ティース(12)に対応した位置の径方向外側に、ヨーク凸部(11a)が設けられている。ヨーク凸部(11a)は、2個以上のティースに対応した位置に設けてあれば良い。ヨーク凸部(11a)は、バックヨーク(11)の周方向の両側面が、周方向に対して傾斜していることにより、径方向外側に向かって幅が狭くなる形状を有する。ケーシングの内側に、ヨーク凸部(11a)に対応して径方向外側に向かって幅が狭くなる形状のケーシング凹部(14a)が設けられている。ヨーク凸部(11a)の周方向の両側面と、ケーシング凹部(14a)とが接触して締結されている。
【0023】
図2には、バックヨーク(11)とケーシング(14)とが、締結面(21)において接触し、締結されていることを示している。その他の領域、つまり符号(22)及び符号(23)の部分、つまり、ヨーク凸部の周方向両側面以外のバックヨーク(11)の外周面は、ケーシング(14)とは接触しておらず、隙間が空いている。
【0024】
本実施形態では、ヨーク凸部(11a)は、等脚台形に似た断面形状を有する。但し、その「上底」に対応する面(符号(22)の領域)、「下底」に対応する面(破線にて示す)は、いずれも円弧状の断面形状である(便宜上、径方向外側を「上」と考える)。等脚台形の「脚」である他の2辺は、ヨーク凸部(11a)の側面(締結面(21)の部分)に対応し、断面において同じ寸法であり且つ周方向に対して同じ大きさの傾きを有する。
【0025】
ケーシング凹部(14a)は、上記のようなヨーク凸部(11a)に対応する形状を有する。従って、ケーシング凹部(14a)についても等脚台形に似た断面形状であり、径方向外側に向かって幅が狭くなっている。
【0026】
符号(22)の領域において、ヨーク凸部(11a)側の寸法は、ケーシング凹部(14a)側の寸法よりも大きい。この結果、ヨーク凸部(11a)とケーシング凹部(14a)との間に隙間が生じる。
また、符号(23)の領域は、周方向について、ヨーク凸部(11a)同士の間の領域であり、また、ケーシング凹部(14a)同士の間の領域である。ヨーク凸部(11a)間の寸法は、ケーシング凹部(14a)間の寸法よりも小さい。この結果、符号(23)の領域においても、バックヨーク(11)とケーシング(14)との間に隙間が生じる
以上のように、ヨーク凸部(11a)の側面(締結面(21)の部分)だけがケーシング(14)の内面と接触して締結され、他の領域では接触を避けることにより、ヨーク凸部(11a)の側面付近に応力を集中させて、他の領域における応力を緩和することができる。
【0027】
これを図3及び図4により説明する。図3及び図4は、比較例及び本実施形態のステータコア及びケーシングについて、締結された際の応力の分布を示している。ここで、色が濃い領域ほど応力は大きい。
【0028】
図3の比較例では、ヨーク凸部(11a)は設けられていない。比較例のバックヨーク(55)において、ケーシング(56)との接触領域(32)と非接触領域(31)とが周方向に交互に設けられている。図3に示す締結状体では、接触領域(32)付近、特にその両端部分で応力が大きくなり、バックヨーク(55)の広い範囲に伝播している。
【0029】
これに対し、図4の本実施形態の場合、ヨーク凸部(11a)の側面に対応する締結面(21)付近において応力が大きくなっている。しかし、応力はこれらの箇所に特に集中しており、バックヨーク(11)の他の領域には伝播が少なく、バックヨーク(11)の多くの領域では応力は小さくなっている。特に、ティース(12)が接続されている箇所に近い領域、周方向について隣り合うティース(12)の間の領域等における応力が小さい。
【0030】
モータを動作させる際、主磁束が通過するのはこのような応力の小さい領域である。従って、締結面(21)の近傍において応力が大きくなったとしても、ステータコア(13)において主磁束が通過する領域の磁気特性の劣化は生じにくい。
【0031】
以上のように、生産性に優れる焼嵌めを利用する場合にも、バックヨーク(11)における応力を抑制することができ、磁気特性の悪化、鉄損の増加を抑制できる。
【0032】
《実施形態2》
次に、実施形態2について説明する。本実施形態のモータについても、基本的な構成は実施形態1のモータ(10)(図1)と同様であり、ステータコア(13)(バックヨーク(11)及びティースを有する)、ケーシング(14)、コイル(15)、ロータ(16)等を備える。但し、図5に示すように、ステータコア(13)におけるヨーク凸部(11a)に対して径方向内側の領域に、空隙(33)を有する。空隙は、径方向について、ヨーク凸部(11a)とティース(12)との間に位置している。
【0033】
このように、バックヨーク(11)に空隙(33)を設けることにより、この空隙(33)を流体の通路として利用することができる。
【0034】
例えば圧縮機にモータを使用する場合、流体の通路が必要である。ここで、図3の比較例の場合、バックヨーク(55)とケーシング(56)とが接触しない非接触領域(31)に、流体の通路として機能する大きさの空隙を設けることができる。これに対し、本実施形態の場合、符号(22)及び符号(23)の領域に隙間は存在するが、流体の通路として機能するほど大きな隙間ではない。そこで、ステータコア(13)に空隙(33)を設けて、流体の通路として機能させている。
【0035】
また、空隙(33)が存在することにより、ヨーク凸部(11a)側からティース(12)側への応力の伝播を抑制することができる。ここで、空隙(33)の断面形状を図5のように径方向外側に凸の弧状とすることにより、前記応力の伝播を更に確実に抑制することができる。但し、空隙(33)の断面形状は、他の形状であっても良く、特に限定はされない。、
《実施形態3》
次に、実施形態3について説明する。図6及び図7は、本実施形態のモータについて模式的に示す断面図であり、実施形態1の図1及び図2に対応する。
【0036】
本実施形態において、ステータコア(13)、ケーシング(14)、コイル(15)、ロータ(16)等を備えるモータである点は実施形態1と同様である。更に、ステータコア(13)に関しては、実施形態1と同様であって、バックヨーク(11)及びティース(12)を備え、更に、ティース(12)に対して径方向外側にヨーク凸部(11a)を備えている。
【0037】
但し、ケーシングは、実施形態1とは異なる構成を有する。実施形態1の場合、ケーシング(14)は、内面に凹凸を有することでケーシング凹部(14a)が備えられた略円筒の構成である。これに対し、本実施形態のケーシング(14)は、軸方向に垂直な断面における内周面が略円形である筒体(14c)と、筒体(14c)の内周面に取り付けられた、筒体(14c)とは別部材のケーシング凸部(14b)とを備える。ケーシング凹部(14a)は、ケーシング凸部(14b)の間の領域として構成されている。
【0038】
ケーシング(14)について、筒体(14c)と、ケーシング凸部(14b)とは固定されている。固定には、接着剤、溶接等の手段を用いても良いし、ネジ止め等の機械的な手段を用いても良い。
【0039】
本実施形態においても、ヨーク凸部(11a)の周方向の両側面がケーシング(14)と接して締結面(21)において締結されることにより、バックヨーク(11)とケーシング(14)とが固定される。従って、実施形態1と同様に、応力は締結面(21)の付近に集中し、ステータコア(13)の他の領域の応力は抑制されるので、磁気特性の悪化、鉄損の増加を抑制できる。
【0040】
また、ケーシング凸部(14b)を筒体(14c)とは別部材とすることで、生産性が向上する。ケーシング(14)は、例えば金属製の板材を円筒状に丸める方法で製造される。ここで、実施形態1の場合、板材に対してケーシング凹部(14a)に相当する凹部を切削加工等して形成する必要がある。これは、費用、工数等を増大させる。また、圧縮機にモータを使用する場合、ケーシングには圧力が加わるので、応力集中による強度の低下を避けるためにも切削加工はさけることが望まれる。
【0041】
これに対し、ケーシング凸部(14b)を別部材とすることには、生産性の向上、筒体(14c)の強度低下の回避等の利点がある。
【0042】
更に、ケーシング凸部(14b)について、筒体(14c)とは異なる材料とすることができる。例えば、金属製の筒体(14c)に対して、非磁性の材料によりケーシング凸部(14b)を形成することができる。これは、モータの特性向上のために有利である。
【0043】
《実施形態4》
次に、実施形態4について説明する。本実施形態では、ステータコア(13)の構成として、図8に示すストレートコア(13b)を用いてステータコア(13)を構成する例を説明する。
【0044】
ストレートコア(13b)は、複数のステータコア片(13a)からなる。ステータコア片(13a)は、バックヨーク(11)の一部を構成するヨーク片(11c)と、ティース(12)とをそれぞれ1つ含む。
【0045】
ストレートコア(13b)において、ヨーク片(11c)同士はほぼ直線状に連結された状態である。ステータコア片(13a)同士(ヨーク片(11c)同士)の接続箇所(17)において、ティース(12)側から例えば三角形状の切り欠き18を有することで幅が狭くなっており、ティース(12)側を内側にして折り曲げることができる。これを利用して、ストレートコア(13b)をカーリングすることにより、バックヨーク(11)が円筒状になったステータコア(13)(図1等に示す)が構成される。尚、図8では示していないが、カーリングは、ストレートコア(13b)に対してコイル(15)等を配置した後に行う。
【0046】
このようなカーリングして構成されたステータコア(13)では、隣り合うヨーク片(11c)の端部同士が接触して力を及ぼし合い、バックヨーク(11)を円筒状に保持している。従って、接続箇所(17)付近では応力が集中して大きくなり、磁気特性が劣化する可能性がある。
【0047】
このような接続箇所(17)付近の応力を緩和するために、ティース(12)にスリットを形成してもよい。これを図9に示す。図9の構成では、ティース(12)に対し、径方向に延びるスリット(12a)が設けられている。スリット(12a)は、ティース(12)の周方向の中央部に、バックヨーク(11)(ヨーク凸部(11a))の外周に届くように形成される。スリット(12a)は、ティース(12)の先端(径方向内側の端部)には達していない。従って、個々のステータコア片(13a)は、スリット(12a)により、ティース(12)の先端部を残してほぼ2つに分割されている。
【0048】
本実施形態のステータコア(13)も、図2等と同様にヨーク凸部(11a)の側面の部分(締結面(21))においてケーシング(14)と接触する。焼嵌めを行うと、ヨーク凸部(11a)に対し、ケーシング(14)から矢印(50)のように締結の力が印加される。この力は、ティース(12)を周方向の両側から内向きに押し縮めるように加わっている。従って、ティース(12)は、スリット(12a)が狭くなるように変形する。この変形により、接続箇所(17)においてヨーク片(11c)同士の隙間を広げる力が作用する(矢印(51)により示す)。この結果、接続箇所(17)付近において、応力が緩和され、磁気特性の劣化は抑制される。
【0049】
《その他の実施形態》
以上では、締結面(21)においてステータコア(13)とケーシング(14)とが接触しており、他の領域(符号(22)及び符号(23)の領域)には非接触であって、隙間が生じていると説明した。これは、締結面(21)において確実な締結を行い、ステータコア(13)とケーシング(14)とを固定する目的から望ましい。
【0050】
しかし、符号(22)及び符号(23)の領域の全体について隙間が生じていることは必須では無。つまり、符号(22)及び符号(23)の領域において、部分的に接触する箇所があっても良い。例えば、これらの領域において、ステータコア(13)の外周面、ケーシング(14)の外周面に突起があり、その箇所でステータコア(13)とケーシング(14)とが接していても良い。
【0051】
そのような接触箇所は、締結面(21)よりも面積として狭いことが好ましい。また、締結の力は主に締結面(21)において作用している(他の接触箇所に作用する力が、締結面(21)において作用する力よりも小さい)ことが好ましい。
【0052】
また、実施形態1~4について、組み合わせても良い。例えば、実施形態2のようにステータコア(13)に空隙(33)を設けると共に、実施形態3のように筒体(14c)及びケーシング凸部(14b)からなるケーシング(14)を用いても良い。
【0053】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態および変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上説明したように、本開示は、モータとして有用である。
【符号の説明】
【0055】
10 モータ
11 バックヨーク
11 ヨーク
11a ヨーク凸部
11c ヨーク片
12 ティース
12a スリット
13 ステータコア
13a ステータコア片
13b ストレートコア
14 ケーシング
14a ケーシング凹部
14b ケーシング凸部
14c 筒
15 コイル
16 ロータ
17 接続箇所
21 締結面
22 符号
23 符号
31 非接触領域
32 接触領域
33 空隙
50 矢印
51 矢印
55 バックヨーク
56 ケーシング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9