(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】未加硫の帯状ゴム部材の引伸ばし装置および方法
(51)【国際特許分類】
B29D 30/30 20060101AFI20240417BHJP
【FI】
B29D30/30
(21)【出願番号】P 2020109447
(22)【出願日】2020-06-25
【審査請求日】2023-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】善養寺 千裕
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-9586(JP,A)
【文献】特開2000-272026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/00-30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定長さで切断された未加硫の帯状ゴム部材の長手方向両端部の少なくとも一方の対象端部を保持する対象端部保持部と、前記対象端部の前記対象端部保持部に保持された保持位置よりも前記対象端部の長手方向端面側を把持する把持部と、前記対象端部保持部および前記把持部を長手方向に移動させる移動機構と、前記帯状ゴム部材の目標長さが入力されて、前記対象端部保持部、前記把持部および前記移動機構を制御する制御部とを有する未加硫の帯状ゴム部材の引伸ばし装置において、
前記把持部が、少なくとも一方が上下移動する上側把持板と下側把持板とを有し、前記対象端部が前記対象端部保持部によって保持されるとともに、前記上側把持板と前記下側把持板とによって上下に挟持されて宙に浮いた状態になり、前記上側把持板を前記対象端部の長手方向端面側に向かって下方に傾斜して延在させて前記対象端部に食い込ませる設定にして、前記目標長さに基づいて前記制御部により前記移動機構を制御して前記対象端部を保持している前記対象端部保持部および前記対象端部を把持している前記把持部を長手方向に移動させることにより、宙に浮いた状態の前記対象端部を長手方向に引伸ばして前記帯状ゴム部材を目標形状にして、前記対象端部に対する把持を解除した時に前記対象端部を未加硫ゴムの粘着性によって前記上側把持板に貼り付けた状態にさせる設定にしたことを特徴にした未加硫の帯状ゴム部材の引伸ばし装置。
【請求項2】
前記対象端部保持部が、前記対象端部の上面を吸着する吸着パッドを有する請求項1に記載の未加硫の帯状ゴム部材の引伸ばし装置。
【請求項3】
前記対象端部を上下に挟持した時に前記上側把持板を弾性変形させる設定にした請求項1または2に記載の未加硫の帯状ゴム部材の引伸ばし装置。
【請求項4】
前記上側把持板の先端部は先端に向かって薄肉になっている請求項1~3のいずれかに記載の未加硫の帯状ゴム部材の引伸ばし装置。
【請求項5】
前記対象端部保持部、前記把持部および前記移動機構が組になって、複数の前記組が前記対象端部の幅方向に並列されていて、それぞれの前記組が個別に前記制御部により制御される請求項1~4のいずれかに記載の未加硫の帯状ゴム部材の引伸ばし装置。
【請求項6】
所定長さで切断された未加硫の帯状ゴム部材の長手方向両端部の少なくとも一方の対象端部を対象端部保持部により保持し、前記対象端部の前記対象端部保持部に把持された保持位置よりも長手方向端面側を把持部により把持して、前記対象端部保持部および前記把持部を長手方向に移動させることで、前記対象端部を長手方向に引伸ばして前記帯状ゴム部材を目標形状にする未加硫の帯状ゴム部材の引伸ばし方法において、
前記把持部を、少なくとも一方が上下移動する上側把持板と下側把持板とを有する構成にして、前記対象端部を前記対象端部保持部により保持するとともに前記上側把持板と前記下側把持板とによって上下に挟持することで宙に浮いた状態にして、前記上側把持板は前記対象端部の長手方向端面側に向かって下方に傾斜して延在させておいて前記対象端部に食い込ませ、宙に浮いた状態の前記対象端部を保持している前記対象端部保持部および前記対象端部を把持している把持部を長手方向に移動させて、浮いた状態の前記対象端部を長手方向に引伸ばし、その後、前記対象端部に対する把持を解除した時に前記上側把持板に前記対象端部を未加硫ゴムの粘着性によって貼り付けた状態にして、前記対象端部を前記上側把持板によって所定位置に押圧して前記上側把持板から引き離して前記所定位置に配置することを特徴にした未加硫の帯状ゴム部材の引伸ばし方法。
【請求項7】
前記対象端部が前記帯状ゴム部材の後端部であり、前記帯状ゴム部材を前端部から成形ドラムに巻き付けて、前記前端部の上方近傍で前記後端部を前記対象端部保持部および前記把持部によって宙に浮いた状態にして、この状態の前記後端部を長手方向に引伸ばした後、前記後端部を前記上側把持板により、前記所定位置に配置されている前記前端部に押圧して前記前端部に接合する請求項6に記載の未加硫の帯状ゴム部材の引伸ばし方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未加硫の帯状ゴム部材の引伸ばし装置および方法に関し、さらに詳しくは、未加硫の帯状ゴム部材の長手方向端部を、所望どおりに精度よく引き伸ばして目標形状の未加硫のゴム部材を製造することができる引伸ばし装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤ等のゴム製品を製造する際には、未加硫の帯状ゴム部材が使用される。この帯状ゴム部材は経時的に収縮するので、この収縮を是正するための装置が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1で提案されている装置では、未加硫の帯状ゴム部材の前端部の最も大きく収縮する収縮部が、引き伸ばし装置によって引き伸ばされた後に成形ドラムの外周面に貼付けられる(段落0022~0024等参照)。この引き伸ばし装置は、押さえ部材と支持台との間に収縮部を挟んで保持することで収縮部の収縮を止め、この状態で押え部材を旋回させることで収縮部を引き伸ばす。支持台上の帯状ゴム部材を押圧している押え部材を、押圧状態のまま移動させて収縮部を引き伸ばすので、収縮部には押圧力および押え部材との摩擦力に加えて、支持台との摩擦力も作用する。このように収縮部には様々な方向の様々な力が作用するため、収縮部の変形具合を詳細に制御することが難しい。それ故、未加硫の帯状ゴム部材を所望どおりに精度よく引き伸ばして目標形状にするには改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、未加硫の帯状ゴム部材の長手方向端部を、所望どおりに精度よく引き伸ばして目標形状の未加硫のゴム部材を製造できる引伸ばし装置および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明の未加硫の帯状ゴム部材の引伸ばし装置は、所定長さで切断された未加硫の帯状ゴム部材の長手方向両端部の少なくとも一方の対象端部を保持する対象端部保持部と、前記対象端部の前記対象端部保持部に保持された保持位置よりも前記対象端部の長手方向端面側を把持する把持部と、前記対象端部保持部および前記把持部を長手方向に移動させる移動機構と、前記帯状ゴム部材の目標長さが入力されて、前記対象端部保持部、前記把持部および前記移動機構を制御する制御部とを有する未加硫の帯状ゴム部材の引伸ばし装置において、前記把持部が、少なくとも一方が上下移動する上側把持板と下側把持板とを有し、前記対象端部が前記対象端部保持部によって保持されるとともに、前記上側把持板と前記下側把持板とによって上下に挟持されて宙に浮いた状態になり、前記上側把持板を前記対象端部の長手方向端面側に向かって下方に傾斜して延在させて前記対象端部に食い込ませる設定にして、前記目標長さに基づいて前記制御部により前記移動機構を制御して前記対象端部を保持している前記対象端部保持部および前記対象端部を把持している前記把持部を長手方向に移動させることにより、宙に浮いた状態の前記対象端部を長手方向に引伸ばして前記帯状ゴム部材を目標形状にして、前記対象端部に対する把持を解除した時に前記対象端部を未加硫ゴムの粘着性によって前記上側把持板に貼り付けた状態にさせる設定にしたことを特徴とする。
【0007】
本発明の未加硫の帯状ゴム部材の引伸ばし方法は、所定長さで切断された未加硫の帯状ゴム部材の長手方向両端部の少なくとも一方の対象端部を対象端部保持部により保持し、前記対象端部の前記対象端部保持部に把持された保持位置よりも長手方向端面側を把持部により把持して、前記対象端部保持部および前記把持部を長手方向に移動させることで、前記対象端部を長手方向に引伸ばして前記帯状ゴム部材を目標形状にする未加硫の帯状ゴム部材の引伸ばし方法において、前記把持部を、少なくとも一方が上下移動する上側把持板と下側把持板とを有する構成にして、前記対象端部を前記対象端部保持部により保持するとともに前記上側把持板と前記下側把持板とによって上下に挟持することで宙に浮いた状態にして、前記上側把持板は前記対象端部の長手方向端面側に向かって下方に傾斜して延在させておいて前記対象端部に食い込ませ、宙に浮いた状態の前記対象端部を保持している前記対象端部保持部および前記対象端部を把持している把持部を長手方向に移動させて、浮いた状態の前記対象端部を長手方向に引伸ばし、その後、前記対象端部に対する把持を解除した時に前記上側把持板に前記対象端部を未加硫ゴムの粘着性によって貼り付けた状態にして、前記対象端部を前記上側把持板によって所定位置に押圧して前記上側把持板から引き離して前記所定位置に配置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、所定長さで切断された未加硫の帯状ゴム部材の長手方向の対象端部を対象端部保持部によって保持するとともに、把持部を構成する上側把持板と下側把持板の少なくとも一方を上下移動させて対象端部を上下に挟持することで対象端部を宙に浮いた状態にする。上側把持板は対象端部の長手方向端面側に向かって下方に傾斜して延在させて対象端部に食い込ませることで、把持部によって対象端部を強固に把持できる。そして、対象端部が宙に浮いた状態で対象端部保持部をおよび把持部を長手方向に移動させることで、帯状ゴム部材を精度よく引伸ばして目標形状にすることが可能になっている。次いで、対象端部に対する把持を解除した時に上側把持板に対象端部を未加硫ゴムの粘着性によって貼り付けた状態にして、対象端部を上側把持板により所定位置に押圧して上側把持板から引き離すことで、帯状ゴム部材を目標形状に維持したまま所定位置に配置できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の未加硫の帯状ゴム部材の引伸ばし装置を側面視で例示する説明図である。
【
図2】
図1の引伸ばし装置を平面視で例示する説明図である。
【
図3】
図2の引伸ばし装置の左半分を平面視で例示する説明図である。
【
図4】
図3の対象端部保持部および把持部を側面視で例示する説明図である。
【
図5】
図4の対象端部保持部および把持部を一部省略して平面視で例示する説明図である。
【
図6】帯状ゴム部材の前端部、後端部をそれぞれ、前端部保持部、対象端部保持部により保持する工程を側面視で例示する説明図である。
【
図7】
図6の対象端部保持部の周辺を拡大した説明図である。
【
図8】帯状ゴム部材の前端部を成形ドラムの外周面上まで移動させる工程を側面視で例示する説明図である。
【
図9】帯状ゴム部材の前端部を成形ドラムの外周面上に配置する工程を側面視で例示する説明図である。
【
図10】帯状ゴム部材を成形ドラムの外周面上に巻き付けて、帯状ゴム部材の後端部を前端部の上方に位置決めした状態を側面視で例示する説明図である。
【
図11】
図10の下側把持板を下方移動させた状態を拡大して例示する説明図である。
【
図12】
図11の下側把持板を前方移動させた状態を例示する説明図である。
【
図13】
図12の下側把持板を上方移動させて上側把持板とで帯状ゴム部材の後端部を上下に挟持した状態を例示する説明図である。
【
図14】
図13の上側把持板の状態を拡大して例示する説明図である。
【
図15】
図13の対象端部保持部および上側把持板と下側把持板の配置を平面視で例示する説明図である。
【
図16】
図13の帯状ゴム部材の後端部を引き伸ばしている工程を側面視で例示する説明図である。
【
図17】
図16の対象端部保持部および上側把持板と下側把持板の配置を平面視で例示する説明図である。
【
図18】
図16の下側把持板を下方移動させて帯状ゴム部材の後端部に対する把持を解除した状態を例示する説明図である。
【
図19】
図18の下側把持板を後方移動させた後、上方移動させた状態を例示する説明図である。
【
図20】
図19の対象端部保持部および上側把持板を下方移動させて、帯状ゴム部材の後端部を前端部に接合させる工程を例示する説明図である。
【
図21】
図20の帯状ゴム部材の前端部と後端部とを押圧ローラによってさらに圧着する工程を例示する説明図である。
【
図22】対象端部保持部の変形例を正面視で示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の未加硫の帯状ゴム部材の引伸ばし装置および方法を、図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0011】
図1~
図5に例示する本発明の未加硫の帯状ゴム部材の引伸ばし装置1(以下、引伸ばし装置1という)は、未加硫の帯状ゴム部材Rの長手方向両端部(前端部Raおよび後端部Rb)の少なくとも一方の対象端部を引伸ばすことで、目標形状にした帯状ゴム部材Rを製造する。この実施形態では、後端部Rbを対象端部として引伸ばして目標形状の帯状ゴム部材Rを製造する。さらにこの帯状ゴム部材Rを用いて環状ゴム部材RCを製造することもできる。帯状ゴム部材Rとしては、未加硫ゴムによって形成されているタイヤのトレッドゴムやサイドゴム等のタイヤ構成部材を例示できる。
【0012】
製造装置1は、所定長さで切断された帯状ゴム部材Rの対象端部(この実施形態では後端部Rb)を把持する把持部7と、後端部Rbを保持する対象端部保持部10と、把持部7と対象端部保持部10の帯状ゴム部材Rの長手方向間隔を変化させる移動機構13と、制御部15とを備えている。制御部15には帯状ゴム部材Rの目標長さGが入力され、制御部15は、把持部7、対象端部保持部10および移動機構13の動きを制御する。
【0013】
この実施形態の引伸ばし装置1は、さらに、搬送コンベヤ2と、前端部Raを保持して成形ドラム17の外周面17a上に配置する前端部配置機構4と、押圧ローラ14と、位置センサ16とを備えている。搬送コンベヤ2、前端部配置機構4および押圧ローラ14の動きは制御部15により制御される。位置センサ16の検知データは制御部15に入力される。
【0014】
搬送コンベヤ2は、載置された帯状ゴム部材Rを、前方に配置されている成形ドラム17に向かって搬送する。搬送コンベヤ2は、前後のプーリの間に張設されたコンベヤベルト2aを有していて、コンベヤベルト2aはサーボモータ等の駆動源によって回転駆動される。
【0015】
図面中の矢印Lの方向は、帯状ゴム部材Rの長手方向(即ち、帯状ゴム部材Rおよび搬送コンベヤ2の前後方向)を示している。また、矢印Wの方向は、搬送コンベヤ2に載置された帯状ゴム部材Rの幅方向(即ち、搬送コンベヤ2および成形ドラム17の幅方向)を示している。
図2、
図3中の一点鎖線CLは、成形ドラム17の幅方向中心位置を示している。
【0016】
この実施形態では、ドラム幅方向中心線CLを挟んで対称位置に搬送コンベア2が1台ずつ配置されている。それぞれの搬送コンベヤ2の間には、長手方向Lに延在するフレーム3が設置されている。このフレーム3に対して、それぞれのコンベヤベルト2aの上方に配置される前端部配置機構4、把持部7、対象端部保持部10および移動機構13、押圧ローラ14が長手方向Lに移動可能に取付けられている。また、フレーム3に対して、それぞれのコンベヤベルト2aの後端部の上方に配置される位置センサ16が取り付けられている。
【0017】
ドラム幅方向中心線CLを挟んで対称位置に配置されているそれぞれの機器(搬送コンベヤ2、前端部配置機構4、把持部7、対象端部保持部10、移動機構13、押圧ローラ14、位置センサ16など)は同じ構成であり同じ動作をするので、以下では、ドラム幅方向中心線CLを挟んで一方側に配置された機器について説明する。尚、ドラム幅方向中心線CLを挟んで対称位置に配置されている(幅方向Wに2列に配列されている)これらの機器が、1列に配置された構成にすることもできる。
【0018】
前端部配置機構4は、前端部保持部5と前端部押圧部6とを有している。この実施形態では前端部保持部5として吸着パッドが採用されている。前端部保持部5はシリンダ等によって上下移動されて、コンベヤベルト2aの載置面に対して近接および離反移動する。複数の前端部保持部5が幅方向Wに並列されている。
【0019】
前端部押圧部6としては、幅方向Wに延在する1本の棒状体が採用されている。前端部押圧部6は、幅方向Wに分割して複数並列された構成にすることもできる。前端部押圧部6はシリンダ等によって上下移動されて、コンベヤベルト2aの載置面に近接離反移動する。前端部配置機構4(前端部保持部5および前端部押圧部6)は、フレーム3に設置された前後進シリンダ3aのロッドの進退によって長手方向Lに移動して、成形ドラム17に対して近接および離反移動する。
【0020】
フレーム3に対して長手方向Lに移動可能にスライド体3bが設置されている。把持部7、対象端部保持部10、移動機構13、押圧ローラ14は、このスライド体3bによって一体的に長手方向Lに移動して、成形ドラム17に対して近接および離反移動する。スライド体3bの動きは制御部15によって制御される。
【0021】
把持部7は、上側把持板7aと下側把持板7bとを有している。上側把持板7aおよび下側把持板7bは板状材により形成されている。上側把持板7aおよび下側把持板7bはそれぞれ、個別の上下移動用シリンダ8a、8bのロッドに接続されていて、これらのロッドが進退することで上下移動する。上側把持板7aおよび下側把持板7bの少なくとも一方が上下移動して互いの上下間隔が可変であればよい(上下間隔が縮小および増加できればよい)。
【0022】
一方の上下移動用シリンダ8aは後述するブロックベース11に取付けられていて、他方の上下移動用シリンダ8bには前後移動用シリンダ9が接続されている。この前後移動用シリンダ9のロッドは一方の上下移動用シリンダ8aに接続されている。したがって、他方の上下移動用シリンダ8bおよび前後移動用シリンダ9は、一方の上下移動用シリンダ8を介してブロックベース11に取り付けられている。前後移動用シリンダ9のロッドが進退することで、上側把持板7aと下側把持板7bとの長手方向L間隔が可変になっている(長手方向L間隔が縮小および増加する)。上下移動用シリンダ8a、8b、前後移動用シリンダ9には油圧シリンダなどの流体シリンダが用いられる。
【0023】
後述するように後端部Rbは、互いの上下間隔を縮小させた上側把持板7aと下側把持板7bとによって上下に挟持される。上側把持板7aは挟持される後端部Rbの長手方向端面Eに向かって下方に傾斜して延在している。帯状ゴム部材Rの延在方向(長手方向L)に対する上面把持板7aの傾斜角度Aは例えば15°以上75°以下に設定され、より好ましくは30°以上60°以下、さらに好ましくは40°以上50°以下(45°程度)に設定される。
【0024】
上側把持板7aは均一な板厚(例えば1mm以上2mm以下)にすることもできるが、その先端部は先端に向かって薄肉にすることが好ましい。例えば上側把持板7aの先端部は先端に向かって徐々に薄肉にして先端の板厚は0.2mm以上0.5mm以下程度にする。この実施形態では
図5に例示するように、上側把持板7aの平面視形状は先端に向かって突出した2つ爪部を有する形状になっているが、この平面視形状に限定されず、その他の形状(例えば単純な矩形状)を採用することもできる。
【0025】
下側把持板7bは例えば上面を水平な平坦面にする。下側把持板7bは均一な板厚(例えば1mm以上2mm以下)にすればよい。
【0026】
このような仕様の上側把持部7aを用いるとともに、把持部7の把持力を適切に調整することで、後端部Rbを挟持した時に上側把持板7aは、後端部Rbの上面に食い込んだ状態になるように設定されている。また、後端部Rbに対する把持を解除した時に後端部Rbを、未加硫ゴムの粘着性によって上側把持板7aに貼り付けた状態にさせるように設定されている。尚、食い込んだ状態とは上側把持板7aが後端部Rbを上下に貫通するのではなく、後端部Rbの上面から例えば1mm以下の範囲で沈む状態である。
【0027】
この実施形態では、複数の把持部7が幅方向Wに並列されていて、それぞれの把持部7が個別に独立して可動する。把持部7は単数の場合もあるが、帯状ゴム部材Rの幅寸法や形状に応じて例えば2個~6個程度が幅方向Wに並列される。
【0028】
対象端部保持部10は、ブロックベース11と、ブロックベース11に取り付けられた吸着パッド12とを有している。上下移動用シリンダ10aがスライド体3bに吊設されていて、上下移動用シリンダ10aのロッドの先端にブロックベース11が取り付けられている。上下移動用シリンダ10aには油圧シリンダなどの流体シリンダが用いられる。
【0029】
吸着パッド12は、ブロックベース11の下面から下方に1mm~2mm程度突出している。吸着パッド12は幅方向Wおよび長手方向Lに首振り可能になっている。この実施形態では、1つのブロックベース11に2つの吸着パッド12が前後に2個配置されているが、1つのブロックベース11に配置される吸着パッド12は1個にすることも、前後に3個以上の吸着パッド12を配置することもできる。
【0030】
対象端部保持部10は、後端部Rbを宙に浮いた状態で保持する。後端部Rbの対象端部保持部10により保持された保持位置よりも後端部Rbの長手方向Lの端面E側が把持部7により把持される。そして、後端部Rbは、対象端部保持部10により保持されるとともに把持部7(上側把持板7aおよび下側把持板7b)によって上下に挟持されて宙に浮いた状態になる。この実施形態のように、対象端部保持部10が、後端部Rbの上面を吸着して保持する吸着パッド12を有する構成にすると、後端部Rbに不要な変形を与えずに保持するには有利になる。
【0031】
対象端部が前端部Raの場合は、前端部Raの対象端部保持部10により保持された保持位置よりも前端部Raの長手方向Lの端面側が把持部7により把持される。そして、前端部Raは、対象端部保持部10により保持されるとともに把持部7(上側把持板7aおよび下側把持板7b)によって上下に挟持されて宙に浮いた状態になる。
【0032】
移動機構13は、ブラケットなどを介して上下移動用シリンダ10aのロッドに固定されていて、ブロックベース11に接続されている。移動機構13としては電動シリンダが採用されているが流体シリンダを用いることもできる。移動機構13のロッドが進退することでブロックベース11とともに吸着パッド12が長手方向Lに移動する。また、ブロックベース11には間接的に把持部7が取り付けられているので、移動機構13のロッドが進退することでブロックベース11とともに把持部7も長手方向Lに移送する。即ち、移動機構13によって移動する吸着パッド12と、上側把持板7a、下側把持板7b、上下移動用シリンダ8a、8bおよび前後移動用シリンダ9は、一体的に同量だけ長手方向Lに移動する。そして、上下移動用シリンダ10aのロッドが進退することで、ブロックベース11、吸着パッド12、移動機構13、上側把持板7a、下側把持板7b、上下移動用シリンダ8a、8bおよび前後移動用シリンダ9は、一体的に同量だけ上下移動してコンベヤベルト2aの載置面に対して近接および離反移動する。
【0033】
この実施形態では、対象端部保持部10および移動機構13の組が複数、幅方向Wに並列されていて、対象端部保持部10および移動機構13の1組毎が個別に独立して可動する。この組は単数の場合もあるが、帯状ゴム部材Rの幅寸法や形状に応じて、把持部7と同数の例えば2組~8組程度が幅方向Wに並列される。この実施形態では、長手方向Lに隣接配置された1つの把持部7と、1つの対象端部保持部10と、1つの移動機構13とが1組になっている。したがって、この実施形態では、把持部7、対象端部保持部10および移動機構13により構成される組が複数組、幅方向Wに配列されている。尚、1つの把持部7に対して、対象端部保持部10および移動機構13の複数組を幅方向Wに配置した構成にすることもできる。
【0034】
幅方向Wに並列されたすべての対象端部保持部10が、長手方向Lに移動できる構成になっているが、一部の対象端部保持部10だけを、長手方向Lに移動できる構成にすることもできる。例えば、幅方向Wに隣り合う2個または3個の対象端部保持部10だけを、長手方向Lに移動できる構成にしてもよい。この実施形態では、それぞれの対象端部保持部10の幅方向Wの大きさが同じになっているが、幅方向Wの大きさが異なる対象端部保持部10を混在させることもできる。
【0035】
押圧ローラ14は、上下移動用シリンダ10bのロッドの先端に回転可能に取り付けられている。上下移動用シリンダ10bは、別の上下移動用シリンダ10aよりも前方の位置でスライド体3bに吊設されている。上下移動用シリンダ10bのロッドが進退することで、押圧ローラ14が上下移動してコンベヤベルト2aの載置面に対して近接および離反移動する。上下移動用シリンダ10bには油圧シリンダなどの流体シリンダが用いられる。
【0036】
位置センサ16は、搬送コンベヤ2に載置されて搬送される帯状ゴム部材Rの前端および後端を幅方向Wの全長に渡って検知する。即ち、帯状ゴム部材Rの幅方向Wでの長さの分布データが検知される。位置センサ16による検知データは制御部15に逐次、入力される。位置センサ16としては、非接触型センサ(光センサ、レーザセンサ、超音波センサ等)を用いるとよい。成形ドラム17の動きも制御部15により制御され、成形ドラム17の回転速度、周方向位置データ等も制御部15に逐次入力される。
【0037】
制御部15には、その他に、外周面17a上における円周長さLcのデータ、許容接合しろSのデータ等が入力される。円周長さLcとは、帯状ゴム部材Rを巻き付ける外周面の円周長さであり、帯状ゴム部材Rを成形ドラム17に直接巻き付ける場合は、成形ドラム17の外周面17aの円周長さになる。成形ドラム17に既に巻き付けられている部材の外周面に帯状ゴム部材Rを巻き付ける場合は、既に巻き付けられている部材の外周面の円周長さが、この円周長さLcになる。許容接合しろSは予め設定されていて、前端部Raと後端部Rbとを接合する際の長手方向Lの適切なオーバラップ量である。前端部Raと後端部Rbとの接合しろが過小であると両者を強固に接合することができず、過大であるとタイヤのユニフォミティ等に悪影響が生じる。
【0038】
次に、引伸ばし装置1を用いて目的形状の帯状ゴム部材Rを製造する手順の一例を説明する。
【0039】
図1に例示するように、帯状ゴム部材Rが載置されたコンベヤベルト2aを回転駆動することにより、帯状ゴム部材Rが成形ドラム17に向かって搬送される。帯状ゴム部材Rは、拘束されていない状態では経時的に収縮する。位置センサ16は、下方を通過する帯状ゴム部材Rの前端および後端を幅方向Wに渡って検知し、検知データは逐次、制御部15に入力される。この検知データと搬送コンベヤ2による搬送速度とに基づいて、制御部15は、帯状ゴム部材Rの幅方向Wでの長さの分布データを算出、取得する。
【0040】
前端部Raがコンベヤベルト2aの前方に位置するまで帯状ゴム部材Rを搬送した後、コンベヤベルト2aを停止させる。次いで、
図6に例示するように、前端部保持部5を下方移動させて前端部Raの上面に当接させて空気を吸引することで吸着させる。この工程では、前端部押圧部6は前端部Raに接触しない上方位置にある。
【0041】
また、
図7に例示するように、上下移動用シリンダ10aのロッドを前進させて吸着パッド12を下方移動させて後端部Rbの上面に当接させて空気を吸引することで吸着させる。この時、上側把持板7aは後端部Rbの表面に当接する程度の位置に下方移動する。この工程では、押圧ローラ14は後端部Rbに接触しない上方位置にある。
【0042】
帯状ゴム部材Rの厚みは幅方向Wで一定ではなく、変化している場合が多い。即ち、帯状ゴム部材Rは、単純な断面四角形ではなく特有の横断面形状(プロファイル)を有していることが多いので、それぞれの吸着パッド12が吸着する位置での帯状ゴム部材Rの厚み(重さ)は同一ではない。そこで、それぞれの吸着パッド12による吸着力は同一に設定することに限らず、それぞれの吸着パッド12が吸着する位置での帯状ゴム部材Rの厚みに応じて、異なる設定にすることもできる。例えば、帯状ゴム部材Rの厚みがより大きい位置で吸着する吸着パッド12は、吸引力をより強くする。前端部保持部5の吸着パッドについても同様に、幅方向Wの位置によって吸引力が異なる設定にすることもできる。
【0043】
次いで、
図8に例示するように、コンベヤベルト2aを回転駆動させて帯状ゴム部材Rを成形ドラム17に向かって搬送する。この時、前後進シリンダ3aによって前端部配置機構4を、搬送される帯状ゴム部材Rに同期させて同速度で前進移動させる。また、スライド体3bを移動させて、対象端部保持部10、移動機構13、押圧ローラ14および把持部7を、搬送される帯状ゴム部材Rに同期させて同速度でフレーム3に沿って前進移動させる。
【0044】
これにより、帯状ゴム部材Rは、前端部Ra、後端部Rbをそれぞれ、前端部保持部5、対象端部保持部10により保持されながら、成形ドラム17に向かって搬送される。前端部保持部5と対象端部保持部10とは、搬送される帯状ゴム部材Rに同期して前進移動するので、互いの長手方向Lの間隔は一定に維持される。そのため、帯状ゴム部材Rは、伸びも収縮も抑制された拘束状態で搬送される。前端部Raを、前端部保持部5によって保持された状態で、成形ドラム17の外周面17a上まで移動させた後、搬送コンベヤ2の搬送および前端部配置機構4、対象端部保持部10の前進移動を停止する。
【0045】
次いで、
図9に例示するように、前端部保持部5を下方移動させ、保持を解除した前端部Raを成形ドラム17の外周面17a上に配置する。ここで、前端部押圧部6を下方移動して、前端部Raを外周面17aにしっかりと付着させる。前端部Raを、成形ドラム17の外周面17a上に配置する位置は、ドラム周方向で言えば、成形ドラム17の頂部にするよい。これにより、前端部Raをより安定して外周面17aに位置決めして付着させ易くなる。
【0046】
次いで、
図10に例示するように、成形ドラム17を回転させるとともに、この回転に同期させてコンベヤベルト2aを回転駆動させて帯状ゴム部材Rを成形ドラム17に向かって搬送し、かつ、スライド体3bを移動させて対象端部保持部10を、搬送される帯状ゴム部材Rに同期させてフレーム3に沿って前進移動させる。外周面17a上での周速度と、搬送コンベヤ2による搬送速度と、対象端部保持部10の移動速度とは同じ速度にするとよい。この時、前端部配置機構4は、前後進シリンダ3aによってさらに前方に移動されていて帯状ゴム部材Rに接触しない位置にある。
【0047】
このようにして、帯状ゴム部材Rの大部分を成形ドラム17の外周面17a上に巻き付けた後、成形ドラム17の回転および対象端部保持部10の前進移動を停止する。即ち、後端部Rbおよびその周辺部分を除いて、帯状ゴム部材Rを外周面17a上に巻き付けた状態にする。この時、後端部Rbは、幅方向Wに並列された複数の対象端部保持部10により保持されていて、それぞれの対象端部保持部10および把持部7は、それぞれの対象端部保持部10に対応する移動機構13(同じ組の移動機構13)によって、個別に長手方向Lに移動できる状態になっている。
【0048】
次いで、
図11に例示するように、上下移動用シリンダ8bのロッドを前進させて下側把持板7bを下方移動させて上側把持板7aよりも下方に位置させる。この時、上側把持板7aは、後端部Rbの上面に当接する位置にある。
【0049】
次いで、
図12に例示するように、前後移動用シリンダ9のロッドを前進させて下側把持板7bを上側把持板7aの先端(下端)よりも前方に移動させる。これにより、後端部Rbの後端近傍が、上側把持板7aと下側把持板7bとの上下間に位置する状態にする。
【0050】
次いで、
図13~
図15に例示するように、上下移動用シリンダ8bのロッドを後退させて下側把持板7bを上方移動させる。後端部Rbの後端近傍は、上側把持板7aと下側把持板7bとにより上下に挟持されて、上側把持板7aを後端部Rbの上面に食い込ませた状態にする。これにより、後端部Rbは、対象端部保持部10により保持されるとともに上側把持板7aと下側把持板7bとによって上下に挟持されて宙に浮いた状態になる。
【0051】
後端部Rbの後端近傍を、上側把持板7aと下側把持板7bとにより上下に挟持した時には、
図14に例示するように、上側把持板7aを弾性変形させるように設定することで、上側把持板7aを後端部Rbの上面に過不足なく適度に食い込ませた状態にし易くなる。また、この実施形態のように、上側把持板7aの先端部が先端に向かって薄肉になっていると、上側把持板7aを後端部Rbの上面に過不足なく適度に食い込ませた状態にし易くなる。
【0052】
次いで、
図16、
図17に例示するように、後端部Rbを前端部Raに接合する前に、帯状ゴム部材Rの幅方向Wでの長さの分布データと目標長さGを用いて、制御部15により並列されたそれぞれの対象端部保持部10(吸着パッド12)の長手方向Lの移動量が制御される。例えば、外周面17a上における円周長さLcと許容接合しろSとの合計値を目標長さGにして、検知された帯状ゴム部材Rの長さを目標長さGから差し引いた不足長さが、それぞれの対象端部保持部10の長手方向Lの移動量として決定される。そして、それぞれの対象端部保持部10(吸着パッド12)が決定された移動量だけ移動するように、制御部15はそれぞれの移動機構13を制御する。
【0053】
即ち、宙に浮いた状態の後端部Rbを保持している吸着パッド12および後端部Rbを把持している把持部7を長手方向Lに同量だけ移動させて、浮いた状態の後端部Rbを長手方向Lに引伸ばして所定形状の帯状ゴム部材Rを製造する。例えば、帯状ゴム部材Rの長手方向Lの収縮がより大きい幅方向位置にある対象端部保持部10では、長手方向Lの移動量がより大きくされる。この実施形態では、
図17中の上側3個の対象端部保持部10が上側に位置する程、移動量がより大きくなっていて、
図17中の下側3個の対象端部保持部10の移動量はゼロになっている。このような移動量の制御の結果、帯状ゴム部材Rは、前端部Raと後端部Rbとを許容接合しろSで接合できる目標長さGに調整されて所定形状の帯状ゴム部材Rが製造される。
【0054】
吸着パッド12を長手方向Lに移動させると、後端部Rbの上面では、後端部Rbの長手方向端面E側に向かって下方に傾斜して延在する上側把持板7aが食い込んだ状態で後端部Rbは引伸ばされる。そして、後端部Rbには、食い込んだ状態の上側把持板7aによって長手方向Lに延在する痕が形成されことがあるが、形成される痕は、後端部Rbを上下に貫通するような穴ではないので、帯状ゴム部材Rを加硫した時に加硫故障を発生させることもない。
【0055】
並列されたそれぞれの対象端部保持部10の長手方向Lの移動速度は異ならせることもできるが、同じ速度に設定することが好ましい。それぞれの移動速度を同じ速度に設定することで、それぞれ対象端部保持部10の長手方向Lの移動量が異なる場合でも、伸長させる未加硫ゴム(後端部Rb)に対して、無理な外力を作用させずに損傷する等の不具合の発生を防止するには有利になる。
【0056】
帯状部材Rを目標長さGに引伸ばした後は、
図18に例示するように、上下移動用シリンダ8bのロッドを前進させて下側把持板7bを下方移動させて、後端部Rbの下面から引き離して、把持部7による後端部Rbに対する把持を解除する。この時、上側把持板7aに後端部Rbを未加硫ゴムの粘着性によって貼り付けた状態にする。上側把持板7aは、後端部Rbの長手方向端面E側に向かって下方に傾斜して延在していて、後端部Rbに食い込ませる設定にされているので、下側把持板7bが後端部Rbから離れても、後端部Rbをより確実に上側把持板7aに貼り付けた状態にすることができる。
【0057】
その後、
図19に例示するように、前後移動用シリンダ9のロッドを後退させて下側把持板7bを後方移動させた後、上下移動用シリンダ8bのロッドを後退させて下側把持板7bを待機位置まで上方移動させる。
【0058】
次いで、
図20に例示するように上下移動用シリンダ10aのロッドを前進させることにより、対象端部保持部10および上側把持板7aを下方移動させて、保持している後端部Rbを、外周面17a上に巻き付けられている前端部Raに当接させる。そして、後端部Rbを上側把持板7aによって所定位置に配置されている前端部Raに押圧して前端部Raと後端部Rbとを接合する。
【0059】
次いで、
図21に例示するように、吸着パッド12による吸引を停止し、上下移動用シリンダ10aのロッドを後退させて吸着パッド12を上方移動させて対象端部保持部10による後端部Rbに対する保持を解除する。また、上下移動用シリンダ8aのロッドを後退させて上側把持板7aを上方移動させて後端部Rbから引き離す。その後、上下移動用シリンダ10bのロッドを前進させて押圧ローラ14を下方移動させて環状ゴム部材RCの外周面に当接させ、成形ドラム17を回転させる。これにより、後端部Rbと前端部Raとの接合部分を押圧ローラ14によってさらに圧着して、口開きを確実に防止する。
【0060】
上述したように、上側把持板7aを後端部Rbの長手方向端面E側に向かって下方に傾斜して延在させて、挟持した時に後端部Rbに食い込ませることで、把持部7によって後端部Rbを強固に把持できる。そして、後端部Rbを宙に浮いた状態にして長手方向Lに引伸ばすので、後端部Rbに作用する力が単純化されて、帯状ゴム部材Rを精度よく引伸ばして目標形状にするには有利になっている。
【0061】
さらに、後端部Rbに対する把持を解除した時に上側把持板7aに後端部Rbを未加硫ゴムの粘着性によって貼り付けた状態にすることで、引伸ばした帯状ゴム部材Rの目標形状を維持することができ、そのまま後端部Rbを上側把持板7aにより所定位置に押圧して、目標形状に維持した帯状ゴム部材Rを所定位置に配置できる。
【0062】
この実施形態では、前端部Raと後端部Rbを幅方向W全体に渡って過不足ない許容接合しろSで、確実に接合した環状ゴム部材RCを製造することができる。経時的な収縮が大きい帯状ゴム部材Rであっても、前端部Raと後端部Rbとを許容接合しろSで確実に接合することが可能になる。
【0063】
本発明は、後端部Rbを長手方向Lに引伸ばして所定形状の帯状ゴム部材Rを製造した後、後端部Rbを上側把持板7aによってコンベヤベルト2aなどの平坦面の所定位置に押圧して上側把持板7aから引き離してその所定位置に配置することもできる。このようにして製造した所定形状の帯状ゴム部材Rは、必要な別工程に搬送されて使用される。
【0064】
図22に例示するように、特有の横断面形状(プロファイル)を有している帯状ゴム部材Rに対しては、ブロックベース11に対して、シムなどの高さ調整部材を介在させて吸着パッド12を取り付けた構造にするとよい。即ち、帯状ゴム部材Rの横断面形状(プロファイル)に応じて、高さ調整部材を介在させることで、並列されているそれぞれの吸着パッド12の上下位置を適切に設定する。これにより、それぞれの吸着パッド12によって後端部Rbの変形を抑えつつ、強固に吸着保持するには有利になる。
【符号の説明】
【0065】
1 引伸ばし装置
2 搬送コンベヤ
2a コンベヤベルト
3 フレーム
3a 前後進シリンダ
3b スライド体
4 前端部配置機構
5 前端部保持部
6 前端部押圧部
7 把持部
7a 上側把持板
7b 下側把持板
8a、8b 上下移動用シリンダ
9 前後移動用シリンダ
10 対象端部保持部
10a、10b 上下移動用シリンダ
11 ブロックベース
12 吸着パッド
13 移動機構(流体シリンダ)
14 押圧ローラ
15 制御部
16 位置センサ
17 成形ドラム
17a 外周面
R 帯状ゴム部材
Ra 前端部
Rb 後端部
RC 環状ゴム部材