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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】光学的情報読取装置
(51)【国際特許分類】
   G06K 7/10 20060101AFI20240417BHJP
【FI】
G06K7/10 376
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020181211
(22)【出願日】2020-10-29
(65)【公開番号】P2022072020
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100095795
【弁理士】
【氏名又は名称】田下 明人
(74)【代理人】
【識別番号】100143454
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 克彦
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 晃浩
(72)【発明者】
【氏名】清水 俊晴
(72)【発明者】
【氏名】栗山 真明
【審査官】後藤 彰
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-502319(JP,A)
【文献】特開2007-57296(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0267490(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報コードに対して照明光を照射する照明光源と、
前記照明光源を制御する照明制御部と、
前記照明光を照射した前記情報コードからの反射光の受光結果に応じて前記情報コードを光学的に読み取る読取部と、
を備える光学的情報読取装置であって、
前記照明制御部は、
電源からコンデンサに充電される充電電圧を昇圧するための昇圧回路と、
前記コンデンサから前記照明光源に電力が供給される際に前記照明光源を流れる電流を一定に保つための定電流回路と、
前記照明光源の下流側であって前記定電流回路の上流側での電圧を監視電圧として監視する監視回路と、
前記照明光源の駆動直後に前記監視回路により監視される前記監視電圧が前記照明光源の駆動に必要な電圧値に応じて設定される所定値に近づくように、前記昇圧回路を制御する制御回路と、
を備えることを特徴とする光学的情報読取装置。
【請求項2】
前記照明光源は、複数の発光素子を備え、
前記照明制御部は、前記複数の発光素子の発光状態に関する指示を受けて当該複数の発光素子の発光状態を切り替える切替回路を備え、
前記制御回路は、前記切替回路によって切り替えられた前記発光状態に応じて前記所定値を変更することを特徴とする請求項1に記載の光学的情報読取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報コード等を光学的に読み取る光学的情報読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、情報コード等を光学的に読み取る光学的情報読取装置として、例えば、下記特許文献1に開示される光学情報読取装置が知られている。この光学情報読取装置には、読取対象となる2次元コードを照明する4つのLEDが設けられており、各LEDによる点灯の組み合わせを変更して照射方向を変えることで、鏡面反射領域が存在しない2次元コードの画像を得て、その画像に対して2次元コードの解読処理を行っている。これにより、鏡面反射の影響を受けずに2次元コードを読み取ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3228197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のように複数のLEDを有する読取装置では、点灯させるLEDの個数が多くなるほど照明光の照射に必要な昇圧回路などの機器(以下、単に、照明機器ともいう)の発熱が増大するという問題がある。また、遠方の情報コードを読み取るためにLEDに流す電流を大きくして照明光を強くする場合にも、照明機器の発熱が増大するという問題がある。このように照明機器の発熱が増大すると、その発熱状態等によっては、照明機器自体の製品寿命が短くなることも懸念される。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、照明機器の発熱を抑制可能な構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲の請求項1に記載の発明は、
情報コードに対して照明光を照射する照明光源(30)と、
前記照明光源を制御する照明制御部(40,40a)と、
前記照明光を照射した前記情報コードからの反射光の受光結果に応じて前記情報コードを光学的に読み取る読取部(21,23)と、
を備える光学的情報読取装置(10)であって、
前記照明制御部は、
電源(29)からコンデンサ(42)に充電される充電電圧(V1)を昇圧するための昇圧回路(41a)と、
前記コンデンサから前記照明光源に電力が供給される際に前記照明光源を流れる電流を一定に保つための定電流回路(41b)と、
前記照明光源の下流側であって前記定電流回路の上流側での電圧を監視電圧(V2)として監視する監視回路(50a)と、
前記照明光源の駆動直後に前記監視回路により監視される前記監視電圧が前記照明光源の駆動に必要な電圧値に応じて設定される所定値(Vm)に近づくように、前記昇圧回路を制御する制御回路(50)と、
を備えることを特徴とする。
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明では、電源からコンデンサに充電される充電電圧が昇圧回路のPWM等の制御により昇圧され、コンデンサから照明光源に電力が供給される際に照明光源を流れる電流が定電流回路により一定に保たれる。また、照明光源の下流側であって定電流回路の上流側での電圧が監視電圧として監視回路により監視される。そして、照明光源の駆動直後に監視回路により監視される監視電圧が照明光源の駆動に必要な電圧値に応じて設定される所定値に近づくように、制御回路により昇圧回路がPWM等で制御される。
【0008】
これにより、照明光源の消費電力が製造時のバラツキや周囲温度等によって変わってしまう場合でも、その変わった消費電力に応じて昇圧回路にて昇圧する目標となる昇圧電圧(以下、目標電圧ともいう)を小さくすることができる。すなわち、昇圧回路の目標電圧を必要最低限に小さくできるので、遠方の情報コードを読み取るために照明光を強くする場合でも、昇圧回路及び定電流回路などの照明機器の発熱を抑制することができる。
【0009】
請求項2の発明では、照明制御部は、照明光源が備える複数の発光素子の発光状態に関する指示(以下、切替指示ともいう)を受けて当該複数の発光素子の発光状態を切り替える切替回路を備えており、制御回路は、切替回路によって切り替えられた発光状態に応じて上記所定値を変更する。
【0010】
これにより、切替回路によって切替指示に応じて各発光素子の発光数などの発光状態が切り替えられる場合でも、その切り替えられた発光状態に応じて昇圧回路の目標電圧を必要最低限に小さくできるので、照明機器の発熱を適切に抑制することができる。特に、各発光素子の発光数が少なくなるように発光状態が切り替えられる場合には、目標電圧が下がることから昇圧動作完了までの時間が短縮されるので、照明光の照射開始時間、すなわち、読取開始時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る光学的情報読取装置を示す斜視図である。
図2図1の光学的情報読取装置を背面側から見た斜視図である。
図3図1の光学的情報読取装置の電気的構成を概略的に例示するブロック図である。
図4図3の照明部の電気的構成を概略的に例示する回路ブロック図である。
図5】第1実施形態における照明制御部での照明処理の流れを例示するフローチャートである。
図6】第1実施形態において充電電圧及び監視電圧と目標電圧との時間変化を説明する説明図である。
図7】第2実施形態に係る光学的情報読取装置における照明部の電気的構成を概略的に例示する回路ブロック図である。
図8】第2実施形態における点灯パターンを説明する説明図である。
図9図9(A)は、照明光が情報コードをデコード不能とする鏡面反射として撮像される場合を説明する説明図であり、図9(B)は、点灯するLEDを変えることで図9(A)の状態から鏡面反射の位置を変えた状態を説明する説明図である。
図10】第2実施形態における制御部での読取処理の流れを例示するフローチャートである。
図11】第2実施形態における照明制御部での照明処理の流れを例示するフローチャートである。
図12】1つのLED点灯時の目標電圧及び2つLED点灯時の目標電圧と昇圧動作完了までの時間との関係を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1実施形態]
以下、本発明に係る光学的情報読取装置を具現化した第1実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態に係る光学的情報読取装置10は、情報コード(バーコードやQRコード(登録商標)等)や文字情報などの光学的情報を光学的に読み取る携帯型の情報処理端末である。
【0013】
図1及び図2に示すように、光学的情報読取装置10の外郭を構成する筐体11は、略薄板状に形成されており、その表面11aには、狭額縁化(狭ベゼル化)されるように大型化された表示画面25aが配置されている。また、図2に示すように、筐体11の裏面11bの長手方向一側には、照明光が照射された情報コード等からの反射光を筐体11内に取り込むための読取口12が設けられ、長手方向他側には、電池蓋13が組み付けられている。
【0014】
次に、光学的情報読取装置10の電気的構成について、図3を参照して説明する。
図3に示すように、光学的情報読取装置10は、全体制御を司る制御部21、半導体メモリ等からなる記憶部22、カメラとして構成される撮像部23、撮像部23による撮像視野に対して照明光を照射する照明部24、制御部21によって表示内容が制御されるタッチパネル25、タッチパネル25に対するタッチ操作やキー操作に信号を制御部21に出力する操作部26、上位機器等と通信するための通信部27、電源部28及びバッテリ29などを備えている。
【0015】
このように構成される光学的情報読取装置10では、情報コード等を読み取る際に操作部26に対してなされる所定の操作等に応じて制御部21にて読取処理が開始されると、読取口12を介して照明部24の照明光が照射された情報コード等からの反射光を撮像部23にて撮像(受光)することで、その撮像した情報コード等を解読するための処理がなされる。なお、上記読取処理を行う制御部21及び撮像部23等は、情報コードからの反射光の受光結果に応じて当該情報コードを光学的に読み取る「読取部」の一例に相当し得る。
【0016】
特に、本実施形態では、照明部24が備える照明光源30等の照明機器での発熱を抑制するため、照明光源30を点灯駆動する照明処理において、後述する昇圧回路41aの目標電圧を必要最低限に小さく設定するための処理を行う。
【0017】
以下、照明機器での発熱を抑制するための照明部24の特徴的構成について、図4を参照して詳述する。
図4に示すように、照明部24は、照明光源30と当該照明光源30を制御する照明制御部40とを備えるように構成されている。照明光源30は、読取対象となる情報コード等に対して読取口12を介して照明光を照射するための光源であって、複数の発光素子として、直列に接続される2つのLED31及びLED32を備えるように構成されている。
【0018】
照明制御部40は、主に、照明用のコンデンサ42と、各スイッチ素子43a,43bと、制御回路50とを備えるように構成されている。スイッチ素子43aは、コイル44及びダイオード45等とともに昇圧回路41aを構成するもので、バッテリ29からコイル44及びダイオード45を介してコンデンサ42に充電される充電電圧V1をPWM制御により昇圧するように機能する。スイッチ素子43bは、抵抗46a~46cや後述する制御回路50のオペアンプ54とともに定電流回路41bを構成するもので、コンデンサ42から照明光源30に電力が供給される際に当該照明光源30を流れる電流を一定に保つように機能する。また、照明制御部40は、照明光源30のON/OFFを切り替えるためのスイッチ素子(図示略)を備えている。
【0019】
制御回路50は、制御部21からの指示に応じて昇圧回路41aをPWM制御することで、照明光源30の各LED31,32を点灯させるための回路(MCU)である。この制御回路50は、主に、ADC51,52、Timer53、オペアンプ54や当該制御回路50の全体制御を司るCPU等を備えている。
【0020】
ADC51は、監視回路50aの一部を構成するもので、監視対象となるコンデンサ42の充電電圧V1に応じたデジタル信号をCPUに出力するように機能する。ADC52は、監視回路50aの他の一部を構成するもので、監視対象となる照明光源30とスイッチ素子43bとの間の電圧(照明光源30の下流側であって定電流回路41bの上流側での電圧)となる監視電圧V2に応じたデジタル信号をCPUに出力するように機能する。このように監視回路50aにて監視される充電電圧V1から監視電圧V2を減算した電圧値に基づいて、照明光源30のON電圧Vonを監視(予測)することができる。
【0021】
Timer53は、CPUにより制御されて、スイッチ素子43aをPWM制御(スイッチング制御)するように機能する。オペアンプ54は、照明光源30を流れる電流を一定に保つための定電流回路41bの一部として機能するもので、CPUからの指定値Vrefが+入力端子に入力されることで、照明光源30を流れる電流値が上記指定値Vrefに応じた値に保たれる。
【0022】
次に、このように構成される照明制御部40の制御回路50を利用して照明光源30から照明光を照射する照明処理について、図5及び図6を参照して説明する。
制御部21による上記読取処理の開始に応じて、制御回路50にて照明処理が開始されると、図5のステップS101に示す初期設定処理がなされ、選択操作等された照明光源30の明るさ(照明光源30に流すべき電流)に応じて、昇圧回路41aにて昇圧する目標となる目標電圧Vtが設定されるとともに、照明光源30の駆動に最低限必要な電圧値(定電流回路41bの動作に最低限必要な電圧値)に応じた所定値としてMIN動作電圧Vmが設定される。目標電圧Vt及びMIN動作電圧Vmは、照明光源30により点灯状態となるLEDの個数に応じて設定される。
【0023】
続いて、ステップS103に示す昇圧処理がなされて、スイッチ素子43aを利用したPWM制御が実施されることで、コンデンサ42に充電される充電電圧V1が増加する(図6の時刻t1参照)。このように増加する充電電圧V1がADC51を利用して監視され(S105)、充電電圧V1が目標電圧Vtを超えない場合には(S107でNo)、上記昇圧処理が継続される。このとき、図6からわかるように、ADC52を利用して監視される監視電圧V2も、充電電圧V1と同じように増加する。また、充電電圧V1から監視電圧V2を減算することで、照明光源30のON電圧Vonが監視(予測)される。
【0024】
そして、充電電圧V1が目標電圧Vtを超えると(S107でYes)、その充電電圧V1が目標電圧Vtに維持される(S109:図6の時刻t2参照)。また、監視電圧V2も増減することなく維持される。
【0025】
このように、充電電圧V1が目標電圧Vtに維持されている状態で、制御部21から点灯指示を受けると(S111でYes:図6の時刻t3参照)、ステップS113に示す点灯処理がなされ、コンデンサ42から照明光源30に対して所定時間電力が供給される。これにより、照明光源30の両LED31,32から照明光が照射されて、読取口12を介した情報コードからの反射光を受光可能(撮像可能)な状態になる。この受光結果に応じて情報コードが読み取られることで上記読取処理が終了すると、本照明処理も終了する(S115でYes)。
【0026】
上記読取処理が継続されることから本照明処理も継続する場合には(S115でNo)、ADC52を利用して上記監視電圧V2が監視される(S117)。上述のようにコンデンサ42から電力が照明光源30にて消費されているため、充電電圧V1及び監視電圧V2が減少しており、このように減少する監視電圧V2が監視される。
【0027】
続いて、ステップS119の判定処理にて、監視電圧V2が上述のように設定されたMIN動作電圧Vmを超えているか否かについて判定される。ここで、監視電圧V2がMIN動作電圧Vmを超えていると(S119でYes:図6の時刻t4参照)、ステップS121に示すVt減少設定処理がなされ、目標電圧Vtが所定の減少用電圧値(例えば、0.1V)だけ小さくなるように再設定される。続いて、このように減少するように再設定された目標電圧Vtに充電電圧V1が近づくように昇圧処理がなされる(S103)。
【0028】
そして、点灯処理後に監視される監視電圧V2がMIN動作電圧Vm以下となるまで、上記Vt減少設定処理がなされて目標電圧Vtが徐々に小さくなり、この小さくなった目標電圧Vtに合わせて上記昇圧処理がなされる。
【0029】
その後、点灯処理後に監視される監視電圧V2がMIN動作電圧Vm以下になると(S119でNo)、ステップS123の判定処理にて、監視電圧V2がMIN動作電圧Vmから閾値ΔV(例えば、0.1V)を減算した値未満であるか否かについて判定される。ここで、監視電圧V2がMIN動作電圧Vmから上記閾値ΔVを減算した値未満であると(S123でYes:図6の時刻t5参照)、ステップS125示すVt増加設定処理がなされ、目標電圧Vtが所定の増加用電圧値(例えば、0.1V)だけ大きくなるように再設定される。続いて、このように増加するように再設定された目標電圧Vtに充電電圧V1が近づくように昇圧処理がなされる(S103)。
【0030】
上述のように、目標電圧Vtが増減調整されて、点灯処理後に監視される監視電圧V2がMIN動作電圧Vmにほぼ等しくなることから、当該監視電圧V2が、MIN動作電圧Vm以下かつMIN動作電圧Vmから上記閾値ΔVを減算した値以上になると(S119でNo,S123でNo)、目標電圧Vtが再設定されることなく、その目標電圧Vtに充電電圧V1が近づくように昇圧処理がなされる(S103)。
【0031】
以上説明したように、本実施形態に係る光学的情報読取装置10では、バッテリ29からコンデンサ42に充電される充電電圧V1が昇圧回路41aのPWM制御により昇圧され、コンデンサ42から照明光源30に電力が供給される際に照明光源30を流れる電流が定電流回路41bにより一定に保たれる。また、照明光源30の下流側であって定電流回路41bの上流側での電圧が監視電圧V2として監視回路50aにより監視される。そして、照明光源30の駆動直後に監視回路50aにより監視される監視電圧V2がMIN動作電圧Vm(照明光源30の駆動に必要な電圧値に応じて設定される所定値)に近づくように、制御回路50により昇圧回路41aがPWM制御される。
【0032】
これにより、照明光源30の消費電力が製造時のバラツキや周囲温度等によって変わってしまう場合でも、その変わった消費電力に応じて昇圧回路41aにて昇圧する目標となる目標電圧Vtを小さくすることができる。すなわち、昇圧回路41aの目標電圧Vtを必要最低限に小さくできるので、遠方の情報コードを読み取るために照明光を強くする場合でも、昇圧回路41a及び定電流回路41bなどの照明機器の発熱を抑制することができる。
【0033】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る光学的情報読取装置について、図面を参照して説明する。
本第2実施形態では、照明光源30の発光状態(LED31,32の点灯/消灯)を制御部21からの切替指示に応じて切り替える点が主に上記第1実施形態と異なる。このため、第1実施形態と実質的に同様の構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0034】
暗い場所で情報コードを読み取る読取処理を行う場合には、照明光源30からの照明光を明るくするために、点灯状態となるLEDの数を増やす必要がある。その一方で、明るい場所など強い照明光が不要な場所で情報コードを読み取る読取処理を行う場合には、照明機器等の発熱の抑制や消費電力の軽減のために、全てのLEDを消灯状態にするか点灯状態となるLEDの数を減らす必要がある。また、読取処理の読取結果等によっては、撮像画像における鏡面反射の位置を変えるために、点灯状態にするLEDの位置と消灯状態にするLEDの位置とを切り替える場合がある。
【0035】
そこで、本実施形態における照明制御部40aでは、制御部21からの切替指示に応じて照明光源30の発光状態、具体的には、各LED31,32の点灯/消灯を切り替えるため、図7に示すように、上記第1実施形態における照明制御部40に対して、スイッチ素子47a,47bが設けられ、制御回路50には、GPIO55a,55bが設けられる。
【0036】
スイッチ素子47aは、OFF状態となる場合に、コンデンサ42からの電力をLED31に供給するように機能し、スイッチ素子47bは、OFF状態となる場合に、コンデンサ42からの電力をLED32に供給するように機能する。
【0037】
GPIO55aは、LED31の点灯/消灯を切り替えるための汎用入出力ポートであり、LED31を消灯状態とする場合に、スイッチ素子47aをON状態とするための信号が出力されるように構成されている。GPIO55bは、LED32の点灯/消灯を切り替えるための汎用入出力ポートであり、LED32を消灯状態とする場合に、スイッチ素子47bをON状態とするための信号が出力されるように構成されている。このように構成されるスイッチ素子47a,47b及びGPIO55a,55b等は、LED31,32の発光状態を切り替える切替回路50bとして機能する。
【0038】
このように照明制御部40aが構成されることで、図8に示すように、制御部21により切替指示として全点灯指示がなされると、GPIO55aによってスイッチ素子47aがOFF状態に制御されるとともにGPIO55bによってスイッチ素子47bがOFF状態に制御されることで、LED31及びLED32の双方が点灯状態に制御される。また、制御部21により切替指示として第1点灯指示がなされると、GPIO55aによってスイッチ素子47aがOFF状態に制御されるとともにGPIO55bによってスイッチ素子47bがON状態に制御されることで、LED31のみが点灯状態に制御される。また、制御部21により切替指示として第2点灯指示がなされると、GPIO55aによってスイッチ素子47aがON状態に制御されるとともにGPIO55bによってスイッチ素子47bがOFF状態に制御されることで、LED32のみが点灯状態に制御される。また、制御部21により切替指示として全消灯指示がなされる場合には、昇圧回路41aがOFF状態になるため、スイッチ素子47a,47bがともにOFF状態であっても、LED31及びLED32の双方が消灯状態に制御される。
【0039】
上述のような第1点灯指示及び第2点灯指示の切り替えによって、鏡面反射に起因するデコード失敗を抑制することができる。具体的には、図9(A)に示すように、第1点灯指示に応じてLED31から照射された照明光Lf1が情報コードCをデコード不能とする鏡面反射として撮像される場合を想定する。このような場合でも、第1点灯指示から第2点灯指示に切り替えることで、図9(B)に示すように、撮像視野に対して位置を変えたLED32からの照明光Lf2によって情報コードCをデコード可能に撮像することができる。
【0040】
特に、本実施形態では、制御部21からの切替指示に応じて照明光源30の発光状態を切り替える際に、その切替指示に応じた目標電圧Vt及びMIN動作電圧Vmを再設定することで、さらに照明機器等の発熱の抑制を図る。
【0041】
以下、制御部21にて実施される読取処理において照明制御部40aに対してなされる切替指示と、この切替指示を受けて照明制御部40aにてなされる処理について、図10及び図11を参照して説明する。なお、読取処理の開始時点では、デフォルト設定として照明制御部40aに対して第1点灯指示がなされ、LED31のみが点灯状態に制御されるものとする。
【0042】
制御部21にて読取処理が開始されると、撮像部23を利用して情報コードが撮像され(図10のS201)、この撮像画像に対して情報コードをデコードするデコード処理がなされる(S203)。照明光源30からの照明光が適切に照射された状態で情報コードが撮像されていることで、その情報コードのデコードが成功すると(S205でYes)、本読取処理が終了する。
【0043】
一方、デコードが失敗した場合に(S205でNo)、その失敗の原因が撮像画像の低コントラストであり(S207でYes)、その撮像画像において照度不足が生じていない場合には(S211でNo)、ステップS213にて全点灯状態であるか否かについて判定される。ここで、全点灯指示と異なる切替指示が照明制御部40aに対してなされている場合には(S213でNo)、現時点よりも暗く情報コードを撮像するため、照明制御部40aに対して全消灯指示がなされる(S215)。その一方で、全点灯指示が照明制御部40aに対してなされている場合には(S213でYes)、1段階照度を下げるため、照明制御部40aに対して第2点灯指示がなされる(S217)。
【0044】
また、デコード失敗の原因が撮像画像の低コントラストであり(S207でYes)、その撮像画像において照度不足が生じている場合には(S211でYes)、ステップS219にて全点灯状態であるか否かについて判定される。ここで、全点灯指示と異なる切替指示が照明制御部40aに対してなされている場合には(S219でNo)、現時点よりも明るく情報コードを撮像するため、照明制御部40aに対して全点灯指示がなされる(S221)。その一方で、全点灯指示が照明制御部40aに対してなされている場合には(S213でYes)、その指示が切り替えられることなく、全点灯状態が維持される。
【0045】
また、デコード失敗の原因が撮像画像の低コントラストではなく(S207でNo)、鏡面反射である場合には(S209でNo)、ステップS223にて全点灯状態であるか否かについて判定される。ここで、全点灯指示が照明制御部40aに対してなされている場合には(S223でYes)、点灯位置を切り替えることで撮像画像における鏡面反射の位置を変えるため、照明制御部40aに対して第2点灯指示がなされる(S217)。また、第1点灯指示が照明制御部40aに対してなされている場合にも(S223でNo,S225でNo)、照明制御部40aに対して第2点灯指示がなされる(S217)。その一方で、第2点灯指示が照明制御部40aに対してなされている場合には(S223でNo,S225でYes)、点灯位置を切り替えることで撮像画像における鏡面反射の位置を変えるため、照明制御部40aに対して第1点灯指示がなされる(S227)。
【0046】
次に、このようにデコード失敗の原因に応じて制御部21から受けた切替指示に応じて照明制御部40aにてなされる照明処理について、図11のフローチャートを参照して説明する。
本実施形態における照明制御部40aでは、上記第1実施形態と同様に、照明光源30の駆動直後に監視回路50aにより監視される監視電圧V2がMIN動作電圧Vmに近づくように、制御回路50により昇圧回路41aがPWM制御される。
【0047】
そして、制御部21から上述のように切替指示を受けると(図11のS127でYes)、ステップS129に示す再設定処理がなされる。この処理では、点灯処理時でのスイッチ素子47aのON/OFF状態、スイッチ素子47bのON/OFF状態が上記切替指示に応じて切り替えられるとともに、そのLEDの点灯数に応じて目標電圧Vt及びMIN動作電圧Vmが再設定される。具体的には、LED31及びLED32のいずれか一方のみを点灯する状態では、LED31及びLED32の双方を点灯する状態に対して、目標電圧Vt及びMIN動作電圧Vmが半分程度に小さくなるように設定される。
【0048】
このように点灯数が少なくなるために目標電圧Vtが小さく設定されることで、図12に示すように、昇圧動作完了までの時間が短縮されるので、照明光の照射開始時間、すなわち、読取開始時間を短縮することができる。なお、図12では、LED31及びLED32のいずれか一方のみを点灯する場合の目標電圧をVt1、この目標電圧Vt1までの昇圧動作完了時間をta1として図示し、LED31及びLED32の双方を点灯する場合の目標電圧をVt2、この目標電圧Vt2までの昇圧動作完了時間をta2として図示している。
【0049】
以上説明したように、本実施形態に係る光学的情報読取装置10では、照明制御部40aは、照明光源30が備える2つのLED31,32の発光状態に関する切替指示を受けて両LED31,32の発光状態を切り替える切替回路50bを備えており、制御回路50は、切替回路50bによって切り替えられた発光状態に応じてMIN動作電圧Vm及び目標電圧Vtを変更する。
【0050】
これにより、切替回路50bによって切替指示に応じて両LED31,32の発光数などの発光状態が切り替えられる場合でも、その切り替えられた発光状態に応じて昇圧回路41aの目標電圧Vtを必要最低限に小さくできるので、照明機器の発熱を適切に抑制することができる。
【0051】
なお、本発明は上記各実施形態等に限定されるものではなく、例えば、以下のように具体化してもよい。
(1)本発明は、情報コードや文字情報などの光学的情報を光学的に読み取る携帯型の光学的情報読取装置10に採用されることに限らず、例えば、情報コードのみを読み取る携帯型の光学的情報読取装置に採用されてもよいし、他の機能を兼備する光学的情報読取装置に採用されてもよい。また、本発明は、据え置き型の光学的情報読取装置に採用されてもよいし、照射される照明光による照度の切り替えを要する装置等に採用されてもよい。
【0052】
(2)照明光源30は、複数の発光素子として、2つのLED31,32を備えるように構成されることに限らず、LEDなどの発光素子を3つ以上備えるように構成されてもよい。その際、上記第2実施形態では、制御部21からの切替指示(発光状態に関する指示)を受けて、発光数や発光位置(点灯数や点灯位置)などの発光状態が切り替えられて、その切替指示に応じた目標電圧Vt及びMIN動作電圧Vmが再設定されてもよい。
【符号の説明】
【0053】
10…光学的情報読取装置
21…制御部(読取部)
23…撮像部(読取部)
24…照明部
29…バッテリ(電源)
30…照明光源
31,32…LED(発光素子)
40,40a…照明制御部
41a…昇圧回路
41b…定電流回路
42…コンデンサ
50…制御回路
50a…監視回路
50b…切替回路
51,52…ADC(監視部)
Lf1,Lf2…照明光
V1…充電電圧
V2…監視電圧
Vt…目標電圧
Vm…MIN動作電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12