(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/04 20060101AFI20240417BHJP
B60N 2/14 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
B60N2/04
B60N2/14
(21)【出願番号】P 2021511861
(86)(22)【出願日】2020-03-25
(86)【国際出願番号】 JP2020013303
(87)【国際公開番号】W WO2020203542
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-03-17
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沼尻 浩行
(72)【発明者】
【氏名】手塚 信之
(72)【発明者】
【氏名】小林 章人
(72)【発明者】
【氏名】宗 迪
(72)【発明者】
【氏名】三好 晃
(72)【発明者】
【氏名】栗本 智行
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-70084(JP,A)
【文献】特開平9-2111(JP,A)
【文献】特開2002-234368(JP,A)
【文献】特開2005-59771(JP,A)
【文献】特開2015-80390(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項15】
前記シート本体は、前記支持脚に結合されるシートクッションフレーム、前記シートクッションフレームに支持されたシートクッションパッド、及び前記シートクッションパッドを覆うシートクッション表皮材を含むシートクッションと、前記シートクッションフレームに結合されるシートバックフレーム、前記シートバックフレームに支持されたシートバックパッド、及び前記シートバックパッドを覆うシートバック表皮材を含むシートバックと、前記シートバックに結合されたヘッドレストとを有する請求項14に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両のフロアパネルの下方に配置されたアウタレールと、車両のフロアパネルの下方に配置され、アウタレールに対してスライド可能なインナレールと、インナレールに結合され、フロアパネルに形成された隙間を通過してフロアパネルの上方に延びるシート脚部と、シート脚部の上端に結合されたシート本体とを有する車両用シートが公知である。インナレールに沿って、シート脚部は前後に延在している。この車両用シートは、フロアパネルとシート本体との間に配置される構造体を少なくすることができ、車室の居住性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両用シートが、シート本体をフロアパネルに対して回転させるための回転装置を有する場合、車室の居住性を損なわないために、回転装置を如何に配置するかが問題となる。
【0005】
本発明は、以上の背景に鑑み、車両用シートにおいて、車室の居住性を損なうことなく、回転装置を配置することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、車両用シート(1)であって、板状をなし、車室の床面を構成すると共に、直線状に延びる長孔(7)を有するフロアパネル(3)と、前記フロアパネルの下方に設けられ、前記長孔に沿ってスライド可能なスライド装置(11)と、前記フロアパネルの下方において前記スライド装置に回転軸線(A)を中心として回転可能に設けられ、前記回転軸線が鉛直に延びる共に前記長孔と重なる回転装置(12)と、柱状をなし、前記回転軸線に沿って前記回転装置に設けられ、前記長孔を通過して前記フロアパネルの上方に延びる支持脚(13)と、前記支持脚の上端に結合され、乗員が着座可能なシート本体(14)とを有する。
【0007】
この態様によれば、スライド装置及び回転装置がフロアの下方に配置されるため、フロア上に配置される構造体が少なくなる。これにより、車両用シートにおいて、車室の居住性を損なうことなく、回転装置を配置することができる。また、支持脚が柱状であるため、長孔の幅を小さくすることができる。
【0008】
上記の態様において、前記支持脚は、略円筒形又は略円柱形に形成されているとよい。
【0009】
この態様によれば、長孔の幅を小さくすることができる。
【0010】
上記の態様において、前記支持脚の直径は、前記シート本体の前後方向における幅及び左右方向における幅のいずれよりも小さく、前記支持脚の上端には、前記シート本体に結合されるフランジ(51)と、前記支持脚から径方向外方に突出し、前記フランジに結合された複数の上リブ(52)が設けられているとよい。
【0011】
この態様によれば、上リブによって支持脚とフランジとの結合部の剛性が向上する。
【0012】
上記の態様において、前記支持脚の下端には、径方向外方に突出し、前記回転装置に結合する複数の下リブ(53)が設けられているとよい。
【0013】
この態様によれば、下リブによって支持脚と回転装置との結合部の剛性が向上する。
【0014】
上記の態様において、前記支持脚の直径は、前記シート本体の前後方向における幅及び左右方向における幅のいずれよりも小さく、前記支持脚の下端には、径方向外方に突出し、前記回転装置に結合する複数の下リブが設けられているとよい。
【0015】
この態様によれば、支持脚の幅を小さくして、長孔の幅を小さくすることができる。
【0016】
上記の態様において、前記回転装置は、前記スライド装置に結合する下メンバ(21)と、前記下メンバに前記回転軸線を中心として回転可能に支持された上メンバ(22)と、前記下メンバに対して前記上メンバを回転させる回転駆動機構(23)とを有し、前記支持脚の下端及び前記下リブが前記上メンバの上面に結合され、前記回転駆動機構が駆動力を発生する駆動ユニット(42)を有し、前記駆動ユニットが前記上メンバの上面において隣り合う2つの前記下リブの間に取り付けられているとよい。
【0017】
この態様によれば、下リブ間の空間を利用して駆動ユニットを配置することができる。
【0018】
上記の態様において、前記下メンバ及び前記上メンバの一方は、前記回転軸線に沿って延びる支持軸(31)を有し、前記下メンバ及び前記上メンバの他方は、前記支持軸を回転可能に受容する軸受孔(32)を有するとよい。
【0019】
この態様によれば、下メンバ及び上メンバの結合部が簡素な構成になる。
【0020】
上記の態様において、前記回転駆動機構は、前記下メンバの上面に前記回転軸線と同軸に結合された環状の外歯歯車(43)と、前記上メンバの下面に回転可能に支持され、前記外歯歯車に噛み合うピニオン(44)とを有し、前記ピニオンは前記駆動ユニットの駆動力を受けて回転するとよい。
【0021】
この態様によれば、駆動装置が簡素かつ小型な構成になる。
【0022】
上記の態様において、複数の前記下リブは、前記支持脚から放射状に延び、上方から見て前記上メンバと重なる位置に配置されているとよい。
【0023】
この態様によれば、下リブによって支持脚及び上メンバの結合部の剛性を高めることができる。
【0024】
上記の態様において、前記スライド装置は、前記長孔と平行に延びる一対のロアレール(16)と、前記ロアレールのそれぞれに支持された一対のアッパレール(17)とを有し、前記下メンバは、一対の前記アッパレールのそれぞれに結合され、上方から見て、前記外歯歯車は、一対の前記ロアレールの間に配置されているとよい。
【0025】
この態様によれば、スライド装置は回転装置を安定性良く支持することができる。
【0026】
上記の態様において、前記スライド装置は、前記長孔と平行に延びる一対のロアレール(17)と、前記ロアレールのそれぞれに支持された一対のアッパレール(17)とを有し、前記回転装置は、一対の前記アッパレールのそれぞれに結合する下メンバ(21)と、前記下メンバに前記回転軸線を中心として回転可能に支持された上メンバ(22)とを有し、上方から見て、前記支持脚は、一対の前記ロアレールの間に配置されているとよい。
【0027】
この態様によれば、スライド装置は支持脚を安定性良く支持することができる。
【0028】
上記の態様において、前記下メンバの下面には、前記下メンバの下面に沿って前記ロアレールと平行に延びる複数の第1補強メンバ(26)と、前記下メンバの下面に沿って前記ロアレールと直交する方向に延び、複数の前記第1補強メンバを連結する複数の第2補強メンバ(27)とが設けられているとよい。
【0029】
この態様によれば、第1補強メンバ及び第2補強メンバによって、下メンバの変形を抑制することができる。
【0030】
上記の態様において、複数の前記第1補強メンバは、一対の前記アッパレールの間に配置されているとよい。
【0031】
この態様によれば、下メンバの一対のアッパレールの間に位置する部分の変形を抑制することができる。
【0032】
上記の態様において、一対の前記アッパレールを連結すると共に、前記アッパレールのそれぞれに前記ロアレールに対する駆動力を発生させるスライド駆動ユニット(18B)を更に有し、前記スライド駆動機構は、前記第1補強メンバ及び前記第2補強メンバよりも下方に配置されているとよい。
【0033】
この態様によれば、ロアレールに対してアッパレールが移動するときに、スライド駆動ユニットが第1補強メンバ及び第2補強メンバに干渉することを避けることができる。
【0034】
上記の態様において、前記シート本体は、前記支持脚に結合されるシートクッションフレーム(55)、前記シートクッションフレームに支持されたシートクッションパッド(56)、及び前記シートクッションパッドを覆うシートクッション表皮材(57)を含むシートクッション(58)と、前記シートクッションフレームに結合されるシートバックフレーム(61)、前記シートバックフレームに支持されたシートバックパッド(62)、及び前記シートバックパッドを覆うシートバック表皮材(63)を含むシートバック(64)と、前記シートバックに結合されたヘッドレスト(66)とを有するとよい。
【発明の効果】
【0035】
本発明の一態様は、車両用シート(1)であって、板状をなし、車室の床面を構成すると共に、直線状に延びる長孔(7)を有するフロアパネル(3)と、前記フロアパネルの下方に設けられ、前記長孔に沿ってスライド可能なスライド装置(11)と、前記フロアパネルの下方において前記スライド装置に回転軸線(A)を中心として回転可能に設けられ、前記回転軸線が鉛直に延びる共に前記長孔と重なる回転装置(12)と、柱状をなし、前記回転軸線に沿って前記回転装置に設けられ、前記長孔を通過して前記フロアパネルの上方に延びる支持脚(13)と、前記支持脚の上端に結合され、乗員が着座可能なシート本体(14)とを有する。この態様によれば、スライド装置及び回転装置がフロアの下方に配置されるため、フロア上に配置される構造体が少なくなる。これにより、車両用シートにおいて、車室の居住性を損なうことなく、回転装置を配置することができる。また、支持脚が柱状であるため、長孔の幅を小さくすることができる。
【0036】
上記の態様において、前記支持脚は、略円筒形又は略円柱形に形成されているとよい。この態様によれば、長孔の幅を小さくすることができる。
【0037】
上記の態様において、前記支持脚の直径は、前記シート本体の前後方向における幅及び左右方向における幅のいずれよりも小さく、前記支持脚の上端には、前記シート本体に結合されるフランジ(51)と、前記支持脚から径方向外方に突出し、前記フランジに結合された複数の上リブ(52)が設けられているとよい。この態様によれば、上リブによって支持脚とフランジとの結合部の剛性が向上する。
【0038】
上記の態様において、前記支持脚の下端には、径方向外方に突出し、前記回転装置に結合する複数の下リブ(53)が設けられているとよい。この態様によれば、下リブによって支持脚と回転装置との結合部の剛性が向上する。
【0039】
上記の態様において、前記支持脚の直径は、前記シート本体の前後方向における幅及び左右方向における幅のいずれよりも小さく、前記支持脚の下端には、径方向外方に突出し、前記回転装置に結合する複数の下リブが設けられているとよい。この態様によれば、支持脚の幅を小さくして、長孔の幅を小さくすることができる。
【0040】
上記の態様において、前記回転装置は、前記スライド装置に結合する下メンバ(21)と、前記下メンバに前記回転軸線を中心として回転可能に支持された上メンバ(22)と、前記下メンバに対して前記上メンバを回転させる回転駆動機構(23)とを有し、前記支持脚の下端及び前記下リブが前記上メンバの上面に結合され、前記回転駆動機構が駆動力を発生する駆動ユニット(42)を有し、前記駆動ユニットが前記上メンバの上面において隣り合う2つの前記下リブの間に取り付けられているとよい。この態様によれば、下リブ間の空間を利用して駆動ユニットを配置することができる。
【0041】
上記の態様において、前記下メンバ及び前記上メンバの一方は、前記回転軸線に沿って延びる支持軸(31)を有し、前記下メンバ及び前記上メンバの他方は、前記支持軸を回転可能に受容する軸受孔(32)を有するとよい。この態様によれば、下メンバ及び上メンバの結合部が簡素な構成になる。
【0042】
上記の態様において、前記回転駆動機構は、前記下メンバの上面に前記回転軸線と同軸に結合された環状の外歯歯車(43)と、前記上メンバの下面に回転可能に支持され、前記外歯歯車に噛み合うピニオン(44)とを有し、前記ピニオンは前記駆動ユニットの駆動力を受けて回転するとよい。この態様によれば、駆動装置が簡素かつ小型な構成になる。
【0043】
上記の態様において、複数の前記下リブは、前記支持脚から放射状に延び、上方から見て前記上メンバと重なる位置に配置されているとよい。この態様によれば、下リブによって支持脚及び上メンバの結合部の剛性を高めることができる。
【0044】
上記の態様において、前記スライド装置は、前記長孔と平行に延びる一対のロアレール(16)と、前記ロアレールのそれぞれに支持された一対のアッパレール(17)とを有し、前記下メンバは、一対の前記アッパレールのそれぞれに結合され、上方から見て、前記外歯歯車は、一対の前記ロアレールの間に配置されているとよい。この態様によれば、スライド装置は回転装置を安定性良く支持することができる。
【0045】
上記の態様において、前記スライド装置は、前記長孔と平行に延びる一対のロアレール(17)と、前記ロアレールのそれぞれに支持された一対のアッパレール(17)とを有し、前記回転装置は、一対の前記アッパレールのそれぞれに結合する下メンバ(21)と、前記下メンバに前記回転軸線を中心として回転可能に支持された上メンバ(22)とを有し、上方から見て、前記支持脚は、一対の前記ロアレールの間に配置されているとよい。この態様によれば、スライド装置は支持脚を安定性良く支持することができる。
【0046】
上記の態様において、前記下メンバの下面には、前記下メンバの下面に沿って前記ロアレールと平行に延びる複数の第1補強メンバ(26)と、前記下メンバの下面に沿って前記ロアレールと直交する方向に延び、複数の前記第1補強メンバを連結する複数の第2補強メンバ(27)とが設けられているとよい。この態様によれば、第1補強メンバ及び第2補強メンバによって、下メンバの変形を抑制することができる。
【0047】
上記の態様において、複数の前記第1補強メンバは、一対の前記アッパレールの間に配置されているとよい。この態様によれば、下メンバの一対のアッパレールの間に位置する部分の変形を抑制することができる。
【0048】
上記の態様において、一対の前記アッパレールを連結すると共に、前記アッパレールのそれぞれに前記ロアレールに対する駆動力を発生させるスライド駆動ユニット(18B)を更に有し、前記スライド駆動機構は、前記第1補強メンバ及び前記第2補強メンバよりも下方に配置されているとよい。この態様によれば、ロアレールに対してアッパレールが移動するときに、スライド駆動ユニットが第1補強メンバ及び第2補強メンバに干渉することを避けることができる。
【0049】
上記の態様において、前記シート本体は、前記支持脚に結合されるシートクッションフレーム(55)、前記シートクッションフレームに支持されたシートクッションパッド(56)、及び前記シートクッションパッドを覆うシートクッション表皮材(57)を含むシートクッション(58)と、前記シートクッションフレームに結合されるシートバックフレーム(61)、前記シートバックフレームに支持されたシートバックパッド(62)、及び前記シートバックパッドを覆うシートバック表皮材(63)を含むシートバック(64)と、前記シートバックに結合されたヘッドレスト(66)とを有するとよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図2】シートのフレームを示す側面図シートの下部を示す斜視図
【
図7】シート本体及び支持脚の上半部を下方から見た図
【
図8】シート配置を示す図であって、(A)初期配置、(B)乗降配置、(C)コミュニケート配置を示す
【
図9】シート配置を示す図であって、(D)ソフトコミュニケート配置、(E)プライベート配置を示す
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。車両用シートは、乗り物の車室に配置される。以下、自動車の車室に配置される車両シートについて説明する。
【0052】
図1に示すように、車両用のシート1は、自動車の車室2に設けられる。自動車の車室2の床面は、フロアパネル3によって構成されている。フロアパネル3は、自動車の骨格をなす車体フレーム4に支持されている。車体フレーム4は、自動車の前後方向に延びる複数の縦メンバと、自動車の左右方向に延び、複数の縦メンバを互いに連結するクロスメンバとを含む。車体フレーム4は、フロアパネル3の下方に、フロアパネル3に対して隙間をおいて配置されたロアメンバ5を含む。ロアメンバ5は、縦メンバ又はクロスメンバの一部として構成されてもよい。ロアメンバ5は、面が上下を向く板状に形成され、フロアパネル3との間に空間を形成するとよい。
【0053】
図2に示すように、フロアパネル3は、面が上下を向く板状に形成されている。フロアパネル3は、直線状に延びる長孔7を有する。長孔7は、フロアパネル3を上下に貫通し、フロアパネル3の面に沿って延びている。本実施形態では、長孔7は自動車の前後方向に延びている。他の実施形態では、長孔7は自動車の左右方向に延びていてもよく、前後方向に対して傾斜した斜め方向にのびていてもよい。
【0054】
シート1は、スライド装置11と、回転装置12と、支持脚13と、シート本体14とを有する。スライド装置11は、フロアパネル3の下方に設けられ、長孔7に沿ってスライド可能である。回転装置12は、フロアパネル3の下方においてスライド装置11に回転軸線Aを中心として回転可能に設けられている。回転装置12は、その回転軸線Aが鉛直に延びる共に長孔7と重なるように配置されている。支持脚13は、柱状をなし、回転軸線Aに沿って回転装置12に設けられ、長孔7を通過してフロアパネル3の上方に延びる。シート本体14は、支持脚13の上端に結合され、乗員が着座可能である。
【0055】
スライド装置11は、一対のロアレール16と、ロアレール16のそれぞれに支持された一対のアッパレール17とを有する。各ロアレール16は、ロアメンバ5に取り付けられ、フロアパネル3の下方に配置されている。各ロアレール16は、長孔7と平行に直線状に延びている。本実施形態では、各ロアレール16は前後に延びている。上方から見て、一対のロアレール16の間に長孔7が配置されている。長孔7と各ロアレール16との距離は、互いに等しいとよい。
【0056】
図2~
図4に示すように、各アッパレール17は、左右において対応するロアレール16に受容されたアッパレール下部17Aと、ロアレール16から上方に突出したアッパレール上部17Bとを有する。アッパレール下部17Aは、ロアレール16の長手方向にスライド可能にロアレール16に支持されている。
【0057】
スライド装置11は、ロアレール16に対してアッパレール17をスライド移動させるスライド駆動機構18を有する。スライド駆動機構18は、ロアレール16とアッパレール17との間に設けられたギヤ機構18Aと、ギヤ機構18Aを駆動するスライド駆動ユニット18Bとを有する。スライド駆動ユニット18Bは、回転駆動ユニット42と、回転駆動ユニット42の駆動力をギヤ機構18Aに伝達する駆動力伝達機構と、回転駆動ユニット42及び駆動力伝達機構を支持する支持体とを含む。ギヤ機構18Aは、例えばロアレール16内に配置されたねじ軸と、ねじ軸に螺合すると共に、アッパレール17に回転可能に支持されたナットとを有する。スライド駆動ユニット18Bは、回転駆動ユニット42の回転力をナットに伝達し、ナットをねじ軸に対して回転させる。スライド駆動ユニット18Bの支持体は、左右に延び、左右のアッパレール上部17Bを接続している。スライド駆動ユニット18Bの回転駆動ユニット42は、左右のアッパレール上部17Bの間に配置されている。スライド駆動ユニット18Bの回転駆動ユニット42が回転すると、駆動力伝達機構によって左右のアッパレール17に支持されたナットが同時に回転し、ナットがねじ軸に対して移動する。これにより、各ロアレール16に対して各アッパレール17が長手方向に移動する。
【0058】
各アッパレール上部17Bの上端部には、平断面構造を有し、ロアレール16の延在方向と平行に延びる筒形部17Cが設けられている。筒形部17Cは、その上端に面が上下を向く上壁17Dを有する。
【0059】
回転装置12は、スライド装置11に結合する下メンバ21と、下メンバ21に回転軸線Aを中心として回転可能に支持された上メンバ22と、下メンバ21に対して上メンバ22を回転させる回転駆動機構23とを有する。下メンバ21は、面が上下を向く板状に形成されている。下メンバ21の左端部は、左側のアッパメンバの上壁17D上に載置され、上部に結合されている。同様に、下メンバ21の右端部は、右側のアッパメンバの上壁17D上に載置され、上部に結合されている。本実施形態では、下メンバ21の左端部及び右端部のそれぞれは、その前部及び後部の2か所の締結部24において上壁17Dに締結されている。
【0060】
図4~
図5に示すように、下メンバ21の下面には、下メンバ21の下面に沿ってロアレール16と平行に延びる複数の第1補強メンバ26と、下メンバ21の下面に沿ってロアレール16と直交する方向に延び、複数の第1補強メンバ26を連結する複数の第2補強メンバ27とが設けられている。各第1補強メンバ26は、一対のアッパレール17の間に配置されている。
【0061】
本実施形態では、第1補強メンバ26は、左右一対設けられ、それぞれ、アッパメンバの筒形部17Cに沿って前後に延びている。各第1補強メンバ26は、下メンバ21の下面に沿って前後に延びる板状の横片部26Aと、横片部26Aの側縁から垂下すると共に前後に延びる縦片部26Bとを有する。横片部26Aと縦片部26Bとは、互いに垂直に配置され、L字形をなす。横片部26Aは下メンバ21の下面に結合され、縦片部26Bは左右において対応するアッパレール17の筒形部17Cに結合されている。
【0062】
本実施形態では、第2補強メンバ27は、前後一対設けられ、それぞれ左右に延びている。第2補強メンバ27の左右の端部は、対応する第1補強メンバ26に結合されている。前側の第2補強メンバ27は、前後方向において、アッパレール17と下メンバ21の前側の締結部24と同じ位置に配置されている。後側の第2補強メンバ27は、前後方向において、アッパレール17と下メンバ21の後側の締結部24と同じ位置に配置されている。各第2補強メンバ27は、面が前後を向く板状に形成され、その上縁において下メンバ21の下面に結合されている。前後の第2補強メンバ27は、前後に延びる複数の第3補強メンバ28によって互いに連結されてもよい。前後の第2補強メンバ27及び複数の第3補強メンバ28は、協働してラダー構造を形成するとよい。複数の第3補強メンバ28は、それぞれ下メンバ21の下面に結合されているとよい。スライド駆動機構18は、第1補強メンバ26及び第2補強メンバ27よりも下方に配置されている。
【0063】
下メンバ21及び上メンバ22の一方は、回転軸線Aに沿って延びる支持軸31を有し、下メンバ21及び上メンバ22の他方は、支持軸31を回転可能に受容する軸受孔32を有する。
図6に示すように、本実施形態では、下メンバ21が軸受孔32を有し、上メンバ22が支持軸31を有する。
【0064】
下メンバ21の上面の中央部には、上方に突出する円筒部33が設けられている。円筒部33の内側には、上方に開口した軸受孔32が形成されている。上メンバ22の下面の中央には、下方に向けて突出する支持軸31が設けられている。支持軸31は、軸受孔32に挿入され、軸受孔32に回転可能に支持される。軸受孔32及び支持軸31の軸線は、上下に延び、回転装置12の回転軸線Aをなす。支持軸31は軸受孔32にラジアル軸受35を介して支持されているとよい。ラジアル軸受35は、例えば、公知のアンギュラ玉軸受や深溝玉軸受であってよい。支持軸31は、中空の円筒であってもよい。円筒部33の上端と上メンバ22の下面との間にはスラスト軸受が設けられるとよい。
【0065】
軸受孔32の下端は、下メンバ21を貫通して下方に開口してもよい。円筒部33は、下メンバ21を貫通して下メンバ21の下方に延びてもよい。円筒部33の内部に形成される軸受孔32及び支持軸31を長くすることによって、円筒部33に対する支持軸31の傾きを抑制することができる。円筒部33及び支持軸31の間には、軸受孔32に対する支持軸31の抜け出しを防止するための抜け出し防止機構(不図示)が設けられている。抜け出し防止機構は、公知の機構であってよく、例えば、スナップリング等であってよい。また、支持軸31の下端が軸受孔32の下方に突出し、支持軸31の下端に軸受孔32の直径よりも大きい抜け止め部材が結合されてもよい。
【0066】
図4及び
図5に示すように、回転駆動機構23は、下メンバ21及び上メンバ22を接続する歯車機構41と、歯車機構41を駆動する回転駆動ユニット42とを有する。回転駆動ユニット42は、電動モータと、電動モータの回転を減速して伝達する駆動伝達機構とを含む。歯車機構41は、回転駆動ユニット42から駆動力を受けて、下メンバ21に対して上メンバ22を回転軸線A回りに回転させる。歯車機構41は、下メンバ21及び上メンバ22の一方に回転軸線Aと同軸に結合された外歯歯車43と、下メンバ21及び上メンバ22の他方に回転可能に支持され、外歯歯車43に噛み合うピニオン44とを有する。ピニオン44は回転駆動ユニット42の駆動力を受けて回転する。回転駆動ユニット42が回転することによってピニオン44が回転し、ピニオン44が外歯歯車43の周方向に移動する。これにより、下メンバ21に対して上メンバ22が回転軸線A回りに回転する。
【0067】
本実施形態では、外歯歯車43は下メンバ21に設けられ、ピニオン44は上メンバ22に設けられている。外歯歯車43は、下メンバ21の上面に設けられている。また、外歯歯車43は、円筒部33の外周面に設けられ、下端面において下メンバ21の上面に結合されているとよい。上方から見て、外歯歯車43は、一対のロアレール16の間に配置されている。ピニオン44は、回転軸線Aと平行に、上メンバ22の下面に設けられている。ピニオン44の軸部は、上メンバ22を貫通し、上メンバ22の上方に延びている。回転駆動ユニット42は、上メンバ22の上面に設けれ、ピニオン44の軸部と接続されている。
【0068】
下メンバ21の上面及び上メンバ22の下面には、それぞれストッパ46が結合されている。ストッパ46は、回転軸線Aの周方向において互いに当接し、下メンバ21に対する上メンバ22の回転可能範囲を規定する。
【0069】
上メンバ22の上面には、支持脚13の下端が結合されている。支持脚13は、略円筒形又は略円柱形に形成されている。支持脚13は、回転軸線Aと同軸に配置され、上下に延びている。支持脚13の上端には、板状のフランジ51が設けられている。フランジ51は、支持脚13と直交し、上メンバ22と間隔をおいて平行に配置されている。フランジ51は、例えば、四角形に形成されているとよい。支持脚13は、フランジ51の中央に結合されている。フランジ51は、シート本体14の底部に結合される。支持脚13の直径は、フランジ51の前後方向における幅及び左右方向における幅のいずれよりも小さく設定されている。
【0070】
図4に示すように、支持脚13の上端には、径方向外方に突出し、フランジ51の下面に結合する複数の上リブ52が設けられている。支持脚13の下端には、径方向外方に突出し、回転装置12の上メンバ22の上面に結合する複数の下リブ53が設けられている。各上リブ52及び各下リブ53は、板片によって形成され、回転軸線Aを中心として放射状に延びている。上リブ52は支持脚13とフランジ51との結合部の剛性を増加させる。すなわち、上リブ52は支持脚13に対するフランジ51の傾きを抑制する。下リブ53は支持脚13と上メンバ22との結合部の剛性を増加させる。すなわち、上リブ52は支持脚13に対するフランジ51の傾きを抑制する。
【0071】
各上リブ52は、例えば支持脚13の周方向に45度間隔又は90度間隔で配置されているとよい。同様に、各下リブ53は、例えば支持脚13の周方向に45度間隔又は90度間隔で配置されているとよい。各上リブ52及び各下リブ53は、例えば三角形に形成されているとよい。各上リブ52は、上方から見てフランジ51と重なる位置に配置されている。各下リブ53は、上方から見て上メンバ22と重なる位置に配置されている。各上リブ52の下端は、各下リブ53の上端よりも上方に配置されている。
【0072】
図3及び
図4に示すように、回転駆動ユニット42は、上メンバ22の上面において隣り合う2つの下リブ53の間に取り付けられている。すなわち、回転駆動ユニット42は隣り合う2つの下リブ53の間に形成される空間に配置されている。
【0073】
図2に示すように、支持脚13はフロアパネル3の長孔7を通過して上下に延びている。上メンバ22、回転駆動ユニット42及び複数の下リブ53はフロアパネル3の下方に配置されている。上リブ52及びフランジ51はフロアパネル3の上方に配置されている。
【0074】
シート本体14は、支持脚13に結合されるシートクッションフレーム55、シートクッションフレーム55に支持されたシートクッションパッド56、及びシートクッションパッド56を覆うシートクッション表皮材57を含むシートクッション58と、シートクッションフレーム55に結合されるシートバックフレーム61、シートバックフレーム61に支持されたシートバックパッド62、及びシートバックパッド62を覆うシートバック表皮材63を含むシートバック64と、シートバック64に結合されたヘッドレスト66とを有する。また、シート本体14は、シートクッション58の前端に変位可能に設けられたオットマン67と、シートバック64に回動可能に設けられたアームレスト68とを有してもよい。
【0075】
図2及び
図7に示すように、シートクッションフレーム55は、フランジ51の上面に締結されるボトムプレート71と、ボトムプレート71の上面に結合され、前後に延びる左右のクッションサイドメンバ72と、左右に延び、左右の端部において各サイドメンバの前端に結合された前クロスメンバ73と、左右に延び、左右の端部において各サイドメンバの後端に結合された後クロスメンバ74とを有する。シートクッションフレーム55は、左右のクッションサイドメンバ72に昇降機構76を介して支持されたサブフレーム77を有してもよい。ボトムプレート71は、ボルト及びナットによる複数の締結部78においてフランジ51に締結されているとよい。ボトムプレート71とフランジ51との締結部78は、例えば、四角形のフランジ51の角に対応した位置に配置されているとよい。
【0076】
シートバックフレーム61は、上下に延びる左右のバックサイドメンバ81と、左右に延び、左右の端部において各バックサイドメンバ81の上端に結合された上クロスメンバ82と、上クロスメンバ82の下方を左右に延び、左右の端部において各バックサイドメンバ81の下部に結合された下クロスメンバ83とを有する。左右のバックサイドメンバ81の下端は、リクライニング装置84を介して左右において対応するクッションサイドメンバ72の後端に回動可能に支持されている。
【0077】
支持脚13の直径は、シート本体14の前後方向における幅及び左右方向における幅のいずれよりも小さく設定されている。
【0078】
シート1では、スライド装置11及び回転装置12がフロアパネル3の下方に配置され、支持脚13が長孔7を通過し、シート本体14がフロアパネル3の上方に配置される。そのため、シート1は、フロアパネル3上に配置される構造体を少なくして、車室2の居住性を損なうことなく、回転装置12を備えることができる。
【0079】
シート本体14は、スライド装置11によって、フロアパネル3に対してロアレール16の延在方向に移動することができる。このとき、支持脚13は長孔7内を長孔7の延在方向に移動する。また、シート本体14は、回転装置12によって、フロアパネル3に対して回転軸線A回りに回転することができる。このとき、支持脚13は長孔7内において回転軸線A回りに回転する。このように、シート本体14がスライド移動又は回転するときに、支持脚13は長孔7の内部において変位するため、支持脚13がフロアパネル3と干渉することがない。また、支持脚13が柱状であるため、長孔7の幅を小さくすることができる。
【0080】
スライド装置11及び回転装置12がフロアパネル3の下方に配置されるため、フロアパネル3の上に配置される構造体が少なくなる。これにより、シート1において、車室2の居住性を損なうことなく、回転装置12を配置することができる。
【0081】
以上のように構成したシート1は、自動車の車室2に複数設けられるとよい。以下に、車室2に右前シート91、左前シート92、右後シート93及び左後シート94を設けた例について説明する。各シート91~94は、上述したシート1と同じ構成を有する。車室2の底部を構成するフロアパネル3は、略長方形に形成され、前後に延びている。フロアパネル3の前部右側に右前シート91が設けられ、フロアパネル3の前部左側に左前シート92が設けられ、フロアパネル3の後部右側に右後シート93が設けられ、フロアパネル3の後部左側に左後シート94が設けられている。
【0082】
各シート91~94において、長孔7及びロアレール16は、車両の前後の方向に延びている。これにより、各シート91~94のシート本体14は、車両の前後方向にスライド移動することができると共に、前後に移動可能な回転軸線Aを中心として回転することができる。他の実施形態では、各シート91~94において、長孔7及びロアレール16は、任意の方向に延びてもよく、互いに相違する方向に延びていてもよい。
【0083】
各シート91~94の配置は、例えば、各シート本体14が前方を向く初期配置(
図8(A)参照)、各シート本体14が前方かつ左右方向において車外側に傾斜した乗降配置(
図8(B)参照)、各シート本体14が車室2の中央を向くコミュニケート配置(
図8(C)参照)、各シート91~94が前方かつ左右方向において車内側に傾斜したソフトコミュニケート配置(
図9(D)参照)、各シート本体14が前方かつ左右方向において車外側に傾斜すると共に、前後方向に互いにオフセットしたプライベート配置(
図9(E)参照)等を含む。また、各シート91~94の配置は、これらの配置を部分的に組み合わせてもよい。
【0084】
各シート91~94は、制御装置96によって位置及び向きが制御されるとよい。制御装置96は、各シート91~94のスライド装置11のスライド駆動ユニット18Bと、回転装置12の回転駆動ユニット42と、乗員が操作する操作スイッチ97とに接続されている。制御装置96は、操作スイッチ97からの信号に基づいて、各シート91~94のスライド駆動ユニット18B及び回転駆動ユニット42を制御し、各シート本体14の位置及び向きを変更するとよい。また、制御装置96は、操作スイッチ97からの信号に基づいて、シート毎にスライド駆動ユニット18B及び回転駆動ユニット42を制御し、特定のシート本体14の位置及び向きを個別に変更してもよい。
【0085】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、フランジ51とボトムプレート71とは、一体に形成されてもよい。すなわち、ボトムプレート71が省略され、フランジ51がシート本体14の底部を構成してもよい。この場合、クッションサイドメンバ72がフランジ51に結合されるとよい。
【符号の説明】
【0086】
1 :シート
2 :車室
3 :フロアパネル
4 :車体フレーム
5 :ロアメンバ
7 :長孔
11 :スライド装置
12 :回転装置
13 :支持脚
14 :シート本体
16 :ロアレール
17 :アッパレール
18 :スライド駆動機構
18B :スライド駆動ユニット
21 :下メンバ
22 :上メンバ
23 :回転駆動機構
24 :締結部
26 :第1補強メンバ
27 :第2補強メンバ
28 :第3補強メンバ
41 :歯車機構
42 :回転駆動ユニット
43 :外歯歯車
44 :ピニオン
51 :フランジ
52 :上リブ
53 :下リブ
55 :シートクッションフレーム
56 :シートクッションパッド
57 :シートクッション表皮材
58 :シートクッション
61 :シートバックフレーム
62 :シートバックパッド
63 :シートバック表皮材
64 :シートバック
66 :ヘッドレスト
78 :締結部
A :回転軸線