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  • 特許-タイヤ用ゴム組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 15/00 20060101AFI20240417BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20240417BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240417BHJP
   C08K 5/548 20060101ALI20240417BHJP
   C08L 57/02 20060101ALI20240417BHJP
   C08L 93/04 20060101ALI20240417BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
C08L15/00
C08L7/00
C08K3/36
C08K5/548
C08L57/02
C08L93/04
B60C1/00 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022129189
(22)【出願日】2022-08-15
(65)【公開番号】P2024025862
(43)【公開日】2024-02-28
【審査請求日】2023-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】高橋 拓志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正樹
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/031476(WO,A1)
【文献】特開2013-227375(JP,A)
【文献】特開2019-104484(JP,A)
【文献】国際公開第2016/104144(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/002506(WO,A1)
【文献】特開2022-174896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L,C08K,B60C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端変性スチレンブタジエンゴム(A)および末端変性スチレンブタジエンゴム(B)を含み、任意に天然ゴムを含むジエン系ゴム100質量部に、シリカを60~90質量部、熱可塑性樹脂を15~40質量部配合し、メルカプト構造を有するシランカップリング剤を前記シリカの質量の2~15質量%配合したゴム組成物であって、前記末端変性スチレンブタジエンゴム(A)の重量平均分子量が30万~50万、ガラス転移温度が-50℃以下、前記末端変性スチレンブタジエンゴム(B)の重量平均分子量が60万以上、前記末端変性スチレンブタジエンゴム(B)をゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したときの分子量分布曲線が単峰形を有し、かつその分子量分布(PDI)が1.7未満であり、前記末端変性スチレンブタジエンゴム(B)および天然ゴムからなる混合物の重量平均分子量が70万以上、前記ジエン系ゴムの平均ガラス転移温度が-50℃以下であり、前記ジエン系ゴム100質量%中、前記末端変性スチレンブタジエンゴム(A)が50~75質量%、前記天然ゴムが0~30質量%、前記末端変性スチレンブタジエンゴム(B)および天然ゴムの質量の合計が、前記末端変性スチレンブタジエンゴム(A)の質量の1/3以上であることを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記末端変性スチレンブタジエンゴム(B)を、前記ジエン系ゴム100質量中、10~50質量%含有することを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂がテルペン系樹脂を25質量%以上含み、該テルペン系樹脂がα-ピネン由来単位を含有するとき、該α-ピネン由来単位の含有量が60質量%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度が40℃~120℃であることを特徴とする請求項1または2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂が、テルペン、変性テルペン、ロジン、ロジンエステル、C5成分、C9成分から選ばれる少なくとも1つからなる樹脂、およびそれら樹脂の二重結合の少なくとも一部が水添された樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1つであり、そのガラス転移温度が40℃~120℃であることを特徴とする請求項1または2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
請求項1または2に記載のタイヤ用ゴム組成物からなるトレッド部を有するタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐摩耗性、ウェット性能、および低転がり抵抗性に優れたタイヤ用ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤには、耐摩耗性、ウェット性能および低転がり抵抗性を高いレベルで兼備することが求められる。また、低転がり抵抗性が改良されるのに伴い、タイヤ温度が低い状態でも低転がり抵抗性を発現すること、すなわち低転がり抵抗性の温度依存性が小さいことが要求されるようになっている。
【0003】
特許文献1は、ガラス転移温度が-50℃以下の末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴムを5~50重量%含むジエン系ゴム100重量部に対し、軟化点が100℃以上の芳香族変性テルペン樹脂を2~50重量部、特定の2種類のシリカを配合したタイヤ用ゴム組成物により、低転がり抵抗性、ウェットグリップ性能および耐摩耗性を改良することを提案する。しかし、特許文献1に記載された発明では、低転がり抵抗性およびその温度依存性を小さくするには必ずしも十分な効果が得られなかった。また、特許文献1に記載された発明では、成形加工性が低下することがあり改良が必要であった。これは、ガラス転移温度が低い末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴムが、スチレン含有量が少ない傾向があり、混練時のゴムのまとまりが悪いこと、また、重合速度と、末端変性効率を高くする観点から、末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴムの分子量を低めに設計することがあり、グリーン強度や伸びが小さくなる傾向があることから、例えば押出加工において、押出機内にゴムが残ってしまったり、押出成形品の表面凹凸が大きくなるなどの加工精度に不具合が生じることがあった。さらにシリカおよびゴムとの反応性が高いシランカップリング剤を使用するとゴム組成物の可塑性が低くなることも、押出成形品の品質低下に繋がることが懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-227375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、耐摩耗性、ウェット性能、および低転がり抵抗性を従来レベル以上に向上させ、かつ低転がり抵抗性の温度依存性を小さくすると共に、押出成形加工性にも優れたタイヤ用ゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明のタイヤ用ゴム組成物は、末端変性スチレンブタジエンゴム(A)および末端変性スチレンブタジエンゴム(B)を含み、任意に天然ゴムを含むジエン系ゴム100質量部に、シリカを60~90質量部、熱可塑性樹脂を15~40質量部配合し、メルカプト構造を有するシランカップリング剤を前記シリカの質量の2~15質量%配合したゴム組成物であって、前記末端変性スチレンブタジエンゴム(A)の重量平均分子量が30万~50万、ガラス転移温度が-50℃以下、前記末端変性スチレンブタジエンゴム(B)の重量平均分子量が60万以上、前記末端変性スチレンブタジエンゴム(B)をゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したときの分子量分布曲線が単峰形を有し、かつその分子量分布(PDI)が1.7未満であり、前記末端変性スチレンブタジエンゴム(B)および天然ゴムからなる混合物の重量平均分子量が70万以上、前記ジエン系ゴムの平均ガラス転移温度が-50℃以下であり、前記ジエン系ゴム100質量%中、前記末端変性スチレンブタジエンゴム(A)が50~75質量%、前記天然ゴムが0~30質量%、前記末端変性スチレンブタジエンゴム(B)および天然ゴムの質量の合計が、前記末端変性スチレンブタジエンゴム(A)の質量の1/3以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上述した構成により、耐摩耗性、ウェット性能、および低転がり抵抗性を従来レベル以上に向上させ、かつ低転がり抵抗性の温度依存性を小さくすると共に、押出成形加工性にも優れたものにすることができる。
【0008】
前記末端変性スチレンブタジエンゴムは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したときの分子量分布曲線が単峰形を有し、かつその分子量分布(PDI)が1.7未満であることとよい。また、前記末端変性スチレンブタジエンゴム(B)を、前記ジエン系ゴム100質量中、0~50質量%含有するとよい。
【0009】
前記熱可塑性樹脂は、テルペン系樹脂を25質量%以上含み、該テルペン系樹脂がα-ピネン由来単位を含有するとき、該α-ピネン由来単位の含有量が60質量%以下であるとよい。また、前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度が40℃~120℃であるとよい。或いは、前記熱可塑性樹脂が、テルペン、変性テルペン、ロジン、ロジンエステル、C5成分、C9成分から選ばれる少なくとも1つからなる樹脂、およびそれら樹脂の二重結合の少なくとも一部が水添された樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1つであり、そのガラス転移温度が40℃~120℃であるとよい。
【0010】
上述したタイヤ用ゴム組成物からなるトレッド部を有するタイヤは、耐摩耗性、ウェット性能、および低転がり抵抗性を従来レベル以上に向上させ、かつ低転がり抵抗性の温度依存性が小さいと共に、押出成形加工性が良好で優れた品質のタイヤを安定的に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明のタイヤ用ゴム組成物を用いて形成したタイヤの実施形態を例示するタイヤ子午線方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、タイヤのトレッド部やサイド部に好適に用いることができる。なお、タイヤは、空気入りタイヤ、非空気式タイヤのいずれでもよい。図1は、空気入りタイヤの実施形態の一例を示す断面図である。空気入りタイヤは、トレッド部1、サイド部2、ビード部3からなる。
【0013】
図1において、左右のビード部3間にタイヤ径方向に延在する補強コードをタイヤ周方向に所定の間隔で配列してゴム層に埋設した2層のカーカス層4が延設され、その両端部がビード部3に埋設したビードコア5の周りにビードフィラー6を挟み込むようにしてタイヤ軸方向内側から外側に折り返されている。カーカス層4の内側にはインナーライナー層7が配置されている。トレッド部1のカーカス層4の外周側には、タイヤ周方向に傾斜して延在する補強コードをタイヤ軸方向に所定の間隔で配列してゴム層に埋設した2層のベルト層8が配設されている。この2層のベルト層8の補強コードは層間でタイヤ周方向に対する傾斜方向、すなわちコード方向を互いに逆向きにして交差している。ベルト層8の外周側には、ベルトカバー層9が配置されている。ベルトカバー層9は、ベルト層全体を覆うフルカバータイプ、ベルト層のタイヤ幅方向端部を覆うエッジカバータイプのいずれでもよく、両タイプを組み合わせてもよい。このベルトカバー層9の外周側に、トレッド部1が配置され、トレッド部1は、キャップトレッド10aおよびアンダートレッド10bからなる。本発明のタイヤ用ゴム組成物は、トレッド部1やサイド部2に好ましく用いられ、より好ましくはキャップトレッド10aやアンダートレッド10bに用いられるとよい。
【0014】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ジエン系ゴムが末端変性スチレンブタジエンゴム(A)を含み、天然ゴムおよび/または末端変性スチレンブタジエンゴム(B)を含む。すなわち、ジエン系ゴムとして、末端変性スチレンブタジエンゴム(A)を必ず含み、天然ゴム、末端変性スチレンブタジエンゴム(B)から選ばれる少なくとも1つを含む。
【0015】
末端変性スチレンブタジエンゴム(A)は、その重量平均分子量が30万~50万、ガラス転移温度が-50℃以下である。末端変性スチレンブタジエンゴム(A)を含むことにより、転がり抵抗性を小さくし、その温度依存性も小さくすると共に、耐摩耗性を改良することができる。
【0016】
末端変性スチレンブタジエンゴム(A)のガラス転移温度(以下、「Tg」と記載することがある。)は、好ましくは-75℃~-50℃、より好ましくは-70℃~-55℃であるとよい。本明細書において、Tgは、示差走査熱量測定(DSC)により20℃/分の昇温速度条件により得られたサーモグラムから転移域の中点の温度として測定することができる。また、ジエン系ゴムが油展品であるときは、油展成分(オイル)を含まない状態におけるジエン系ゴムのTgとする。
【0017】
末端変性スチレンブタジエンゴム(A)の重量平均分子量は、好ましくは35万~50万、より好ましくは40万~50万であるとよい。末端変性スチレンブタジエンゴム(A)の重量平均分子量をこのような範囲内にすることにより、転がり抵抗をより小さくすることができる。本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって測定されるポリスチレン換算の値とすることができる。
【0018】
末端変性スチレンブタジエンゴム(A)は、そのスチレン含有量が好ましくは5~25質量%、より好ましくは10~20質量%であるとよい。スチレン含有量が5質量%以上であるとウェット性能が高くなり、スチレン含有量が25質量%以下であると転がり抵抗の温度依存性が小さくなり、好ましい。本明細書において、スチレン含有量はH-NMRにより測定する値とする。
【0019】
末端変性スチレンブタジエンゴム(A)は、そのビニル含有量が好ましくは10~45%、より好ましくは15~40%であるとよい。ビニル含有量が10質量%以上であると転がり抵抗の温度依存性が小さくなり、ビニル含有量が45質量%以下であると耐摩耗性が向上し、好ましい。本明細書において、ビニル含有量はH-NMRにより測定する値とする。
【0020】
末端変性スチレンブタジエンゴム(A)は、少なくとも1つの末端が官能基で変性されている。官能基として、例えばエポキシ基、カルボキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シリル基、アルコキシシリル基、アミド基、オキシシリル基、シラノール基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、カルボニル基、アルデヒド基等が挙げられる。また、末端変性スチレンブタジエンゴム(A)の官能基として、ポリオルガノシロキサン構造またはアミノシラン構造を有するものが好ましく挙げられる。末端変性スチレンブタジエンゴム(A)が、ポリオルガノシロキサン構造またはアミノシラン構造を有する官能基またはアルコキシ基を有することにより、シリカの分散性を良好にし、低転がり抵抗性、耐摩耗性およびウェット性能を優れたものにすることができる。
【0021】
末端変性スチレンブタジエンゴム(A)は、ジエン系ゴム100質量%中50~75質量%、好ましくは50~70質量%、より好ましくは55~70質量%である。末端変性スチレンブタジエンゴム(A)が50質量%未満であると、転がり抵抗性を小さくする効果や耐摩耗性を改良する効果が十分に得られない。また、75質量%を超えると、ウェット性能が却って低下し、押出成形加工性も悪化することがある。
【0022】
タイヤ用ゴム組成物は、末端変性スチレンブタジエンゴム(B)、天然ゴムから選ばれる少なくとも1つを含む。すなわち、タイヤ用ゴム組成物は、末端変性スチレンブタジエンゴム(B)、天然ゴムの両方を含んでもよいし、末端変性スチレンブタジエンゴム(B)、天然ゴムのいずれか一方を含んでもよい。
【0023】
末端変性スチレンブタジエンゴム(B)は、その重量平均分子量が60万以上であり、末端変性スチレンブタジエンゴム(B)および天然ゴムからなる混合物の重量平均分子量が70万以上になるように決められる。末端変性スチレンブタジエンゴム(B)を含むことにより、転がり抵抗を小さくし、その温度依存性も小さくすることができる。末端変性スチレンブタジエンゴム(B)の重量平均分子量は、好ましくは60万~150万、より好ましくは70万~130万である。末端変性スチレンブタジエンゴム(B)の重量平均分子量をこのような範囲にすることによりゴム組成物の低転がり抵抗性およびその温度依存性を優れたものにすることができる。
【0024】
末端変性スチレンブタジエンゴム(B)および天然ゴムからなる混合物の重量平均分子量は70万以上、好ましくは70万~130万、より好ましくは70万~120万である。末端変性スチレンブタジエンゴム(B)および天然ゴムからなる混合物の重量平均分子量を、このような範囲内にすることにより、押出成形加工時に押出機内にゴムが残ることや押出物表面の凹凸が大きくなることを抑制することができる。末端変性スチレンブタジエンゴム(B)および天然ゴムからなる混合物は、タイヤ用ゴム組成物と同じ配合比になるように調製されたブレンドである。その重量平均分子量は、GPCにより測定してもよいし、或いは末端変性スチレンブタジエンゴム(B)および天然ゴムのそれぞれの重量平均分子量とゴム組成物に配合された質量比とから、加重平均値として算出することもできる。
【0025】
末端変性スチレンブタジエンゴム(B)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したときの分子量分布曲線が単峰形を有するとよく、かつその分子量分布(PDI)が1.7未満であることが好ましい。末端変性スチレンブタジエンゴム(B)の分子量分布曲線が単峰形であると、分子の均一性が高くなり、ジエン系ゴム中に均質に分配、分散されシリカとの親和性をより高くすることができる。分子量分布(PDI)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定された重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)であり、分子量分布(PDI)が1.7未満であると、分子量分布曲線が単峰形であることと同様に、分子の均一性が高くなり、ジエン系ゴム中に均質に分配、分散されシリカとの親和性をより高くすることができる。分子量分布(PDI)は、より好ましくは1.0以上1.7未満、さらに好ましくは1.1~1.6であるとよい。このような末端変性スチレンブタジエンゴム(B)は、好ましくは連続式重合で得ることができる。
【0026】
本明細書において、末端変性スチレンブタジエンゴム(B)をゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、その分子量分布曲線、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定するとき、例えば以下の条件を挙げることができる。なお、末端変性スチレンブタジエンゴム(A)および天然ゴムについても同様に測定することができる。
装置:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー[GPC:東ソー社製HLC-8020]
カラム:東ソー社製GMH-HR-H(2本直列接続)
測定温度:40℃
キャリアガス:ヘリウム
流量:5mmol/L
試料:10mgを10mLのTHFに溶解
注入量:10μL
検出器:検出器:示差屈折率計(RI-8020)
【0027】
末端変性スチレンブタジエンゴム(B)は、少なくとも1つの末端が官能基で変性されている。その官能基として、上述した末端変性スチレンブタジエンゴム(A)の官能基として例示したものの中から適宜選択することができる。末端変性スチレンブタジエンゴム(B)の官能基は、末端変性スチレンブタジエンゴム(A)の官能基と同じでも相違してもよい。末端変性スチレンブタジエンゴム(B)の官能基として、例えばポリオルガノシロキサン構造またはアミノシラン構造を有する変性基、アルコキシシラン基、アミノ基、ヒドロキシル基、等が好ましく挙げられる。
【0028】
末端変性スチレンブタジエンゴム(B)のTgは、好ましくは-55℃~-15℃、より好ましくは-50℃~-20℃、さらに好ましくは-45℃~-25℃であるとよい。なお、末端変性スチレンブタジエンゴム(B)のTgは、末端変性スチレンブタジエンゴム(A)のTgより高いとよい。末端変性スチレンブタジエンゴム(B)のTgをこのような範囲にすることにより、ウェット性能を向上させることができ、好ましい。
【0029】
末端変性スチレンブタジエンゴム(B)は、そのスチレン含有量が好ましくは20~45質量%、より好ましくは25~40質量%であるとよい。スチレン含有量が20質量%以上であるとウェット性能を向上する効果がより大きくなり、スチレン含有量が45質量%以下であると耐摩耗性能への影響を抑制することができ、好ましい。
【0030】
末端変性スチレンブタジエンゴム(B)は、そのビニル含有量が好ましくは15~50%、より好ましくは20~45%であるとよい。ビニル含有量が15質量%以上であるとウェット性能が向上し、ビニル含有量が50質量%以下であると耐摩耗性能への影響を抑制することができ、好ましい。
【0031】
末端変性スチレンブタジエンゴム(B)の含有量は、末端変性スチレンブタジエンゴム(B)および天然ゴムの質量の合計が、末端変性スチレンブタジエンゴム(A)の質量の1/3以上になるように決められる。末端変性スチレンブタジエンゴム(B)および天然ゴムの質量の合計は、末端変性スチレンブタジエンゴム(A)の質量に対する比が、好ましくは1/3~1/1、より好ましくは2/5~1/1であるとよい。末端変性スチレンブタジエンゴム(B)および天然ゴムの質量の合計をこのような範囲にすることにより、押出機内にゴムが残るのを抑制すると共に、押出成形品の表面の凹凸が大きくなるのを抑制することができる。
【0032】
末端変性スチレンブタジエンゴム(B)の含有量は、ジエン系ゴム100質量%中、好ましくは0~50質量%、より好ましくは10~40質量%、さらに好ましくは20~30質量%であるとよい。
【0033】
タイヤ用ゴム組成物は、天然ゴムをジエン系ゴム100質量%中、0~30質量%、好ましくは10~25質量%、より好ましくは15~25質量%含有する。なお、上述したとおり、天然ゴムの含有量は、末端変性スチレンブタジエンゴム(B)および天然ゴムの質量の合計が、末端変性スチレンブタジエンゴム(A)の質量の1/3以上になるように決められる。天然ゴムを配合することにより、グリーン強度が向上し、押出機内にゴムが残りにくくなる。また天然ゴムを30質量%以下にすることにより、シリカの分散性が良好になり、低転がり性能およびウェット性能を向上することができる。天然ゴムの種類は、特に制限されるものではなく、タイヤ用ゴム組成物に通常用いられるものを使用することができる。
【0034】
上述したとおり、天然ゴムの重量平均分子量は、末端変性スチレンブタジエンゴム(B)および天然ゴムからなる混合物の重量平均分子量が70万以上になるように決められる。詳細は前述のとおりである。
【0035】
タイヤ用ゴム組成物は、ジエン系ゴムの平均ガラス転移温度が-50℃以下、好ましくは-65℃~-50℃、より好ましくは-60℃~-50℃である。ジエン系ゴムの平均ガラス転移温度をこのような範囲にすることにより、転がり抵抗の温度依存性とウェット性能のバランスを高いレベルで両立することが可能となる。ジエン系ゴムの平均ガラス転移温度は、ジエン系ゴムを構成する各ゴムのガラス転移温度とそれぞれの質量分率との加重平均値として算出することができる。
【0036】
タイヤ用ゴム組成物は、ジエン系ゴム100質量部にシリカを60~90質量部、好ましくは65~85質量部、より好ましくは70~80質量部配合する。シリカを配合することにより、低転がり抵抗性およびウェット性能を向上させることができる。シリカが60質量部未満であるとウェット性能を向上する効果が十分に得られない。またシリカが90質量部を超えると低転がり抵抗性が悪化する傾向がある。
【0037】
シリカとして、タイヤ用ゴム組成物に通常使用されるものを用いるとよく、例えば湿式法シリカ、乾式法シリカあるいは、カーボンブラック表面にシリカを担持させたカーボン-シリカ(デュアル・フェイズ・フィラー)、シランカップリング剤又はポリシロキサンなどシリカとゴムの両方に反応性或いは相溶性のある化合物で表面処理したシリカなどを使用することができる。これらの中でも、含水ケイ酸を主成分とする湿式法シリカが好ましい。
【0038】
また、シリカとともに、メルカプト構造を有するシランカップリング剤を配合することによりシリカの分散性を向上し、ウェット性能がさらに改善されるので好ましい。本明細書において、メルカプト構造を有するシランカップリング剤とは、メルカプト基(-SH)を有するシランカップリング剤および主鎖中に-S-C(=O)-結合を有するシランカップリング剤をいう。ここで、-S-C(=O)-結合は、高温下でメルカプト基(-SH)に乖離し易い。シランカップリング剤は、シリカの質量に対し2~15質量%、好ましくは3~12質量%、より好ましくは3~9質量%配合するとよい。シランカップリング剤がシリカ質量の2質量%未満の場合、シリカの分散性を向上する効果が十分に得られない。また、シランカップリング剤が15質量%を超えると、ジエン系ゴム成分がゲル化し易くなる傾向があるため、所望の効果を得ることができなくなる。
【0039】
メルカプト構造を有するシランカップリング剤として、下記式(1)の平均組成式で表されるシランカップリング剤、下記一般式(2)で表されるシランカップリング剤が好ましく挙げられる。
(A)(B)(C)(D)(RSiO(4-2a-b-c-d-e)/2 ・・・(1)
(式(1)中、Aはスルフィド基を含有する2価の有機基、Bは炭素数5~10の1価の炭化水素基、Cは加水分解性基、Dはメルカプト基を含有する有機基を表し、Rは炭素数1~4の1価の炭化水素基を表し、a~eは、0≦a<1、0<b<1、0<c<3、0<d<1、0≦e<2、0<2a+b+c+d+e<4の関係式を満たす。)
【化1】
(式(2)中、R~Rは、互いに独立して、炭素数1~6のアルキル基またはアルコキシ基で、このうち少なくとも1つはアルコキシ基、Rは、炭素数3~10のアルキル基を表す。)
【0040】
上記式(1)で表されるシランカップリング剤は、ポリシロキサン骨格を有することが好ましい。ポリシロキサン骨格は直鎖状、分岐状、3次元構造のいずれか又はこれらの組み合わせとすることができる。
【0041】
上記式(1)において、炭化水素基のBは、炭素数5~10の1価の炭化水素基、好ましくは炭素数6~10、より好ましくは炭素数8~10の1価の炭化水素基である。例えば、ヘキシル基、オクチル基、デシル基などが挙げられる。これによりメルカプト基を保護しムーニースコーチ時間を長くし加工性(耐スコーチ性)により優れ、低転がり抵抗性をより優れたものにすることができる。炭化水素基Bの添え字bは0より大であり、好ましくは0.10≦b≦0.89であるとよい。
【0042】
また、上記式(1)中、有機基のAはスルフィド基を含有する2価の有機基(以下、「スルフィド基含有有機基」ともいう。)を表す。スルフィド基含有有機基を有することにより、低発熱性、加工性(特にムーニースコーチ時間の維持・長期化)をより優れたものにする。このため、スルフィド基含有有機基Aの添え字aは、0より大であるとよく、より好ましくは0<a≦0.50であるとよい。スルフィド基含有有機基Aは、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子のようなヘテロ原子を有してもよい。
【0043】
なかでも、スルフィド基含有有機基Aは、下記式(3)で表される基であることが好ましい。
*-(CH-Sx-(CH-* ・・・(3)
(上記式(3)中、nは1~10の整数、xは1~6の整数を表し、*は結合位置を示す。)
上記一般式(3)で表されるスルフィド基含有有機基Aの具体例としては、例えば、*-CH-S-CH-*、*-C-S-C-*、*-C-S-C-*、*-C-S-C-*、*-CH-S-CH-*、*-C-S-C-*、*-C-S-C-*、*-C-S-C-*などが挙げられる。
【0044】
上記一般式(1)の平均組成式で表されるポリシロキサンからなるシランカップリング剤は、加水分解性基Cを有することによって、シリカとの親和性及び/又は反応性を優れたものにする。一般式(1)における加水分解性基Cの添え字cは、低発熱性、加工性(耐スコーチ性)がより優れ、シリカの分散性がより優れるというる理由から、1.2≦c≦2.0であるとよい。加水分解性基Cの具体例としては、例えば、アルコキシ基、フェノキシ基、カルボキシル基、アルケニルオキシ基などが挙げられる。加水分解性基Cとしては、シリカの分散性を良好にし、また加工性(耐スコーチ性)をより優れたものにする観点から、下記一般式(4)で表される基であることが好ましい。
*-OR ・・・(4)
上記一般式(4)中、*は、結合位置を示す。またRは炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数6~10のアラルキル基(アリールアルキル基)または炭素数2~10のアルケニル基を表し、なかでも、炭素数1~5のアルキル基であることが好ましい。
【0045】
上記炭素数1~20のアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、オクタデシル基などが挙げられる。上記炭素数6~10のアリール基の具体例としては、例えば、フェニル基、トリル基などが挙げられる。上記炭素数6~10のアラルキル基の具体例としては、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基などが挙げられる。上記炭素数2~10のアルケニル基の具体例としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、ペンテニル基などが挙げられる。
【0046】
上記一般式(1)の平均組成式で表されるポリシロキサンからなるシランカップリング剤は、メルカプト基を含有する有機基Dを有することによって、ジエン系ゴムと相互作用及び/又は反応することができ、低発熱性を優れたものにする。メルカプト基を含有する有機基Dの添え字dは、0.1≦d≦0.8であるとよい。メルカプト基を含有する有機基Dとしては、シリカの分散性を良好にし、また加工性(耐スコーチ性)をより優れたものにする観点から、下記一般式(5)で表される基であることが好ましい。
*-(CH-SH ・・・(5)
上記一般式(5)中、mは1~10の整数を表し、なかでも、1~5の整数であることが好ましい。また式中、*は、結合位置を示す。
【0047】
上記一般式(5)で表される基の具体例としては、*-CHSH、*-CSH、*-CSH、*-CSH、*-C10SH、*-C12SH、*-C14SH、*-C16SH、*-C18SH、*-C1020SHが挙げられる。
【0048】
上記一般式(1)において、Rは炭素数1~4の1価の炭化水素基を表す。炭化水素基Rとしては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。
【0049】
一般式(2)で表されるシランカップリング剤において、R~Rは、互いに独立して、炭素数1~6のアルキル基またはアルコキシ基を表す。R~Rのうち少なくとも1つはアルコキシ基を表す。アルキル基およびアルコキシ基は、直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよい。R~Rは、互いに同じでも、異なってもよい。R~Rとして、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、等が挙げられる。
【0050】
一般式(2)において、Rは、炭素数3~10のアルキル基を表す。Rは、直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよく、例えばn-プロピル基、s-プロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、1,1-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、1,1-ジメチルブチル基、n-ヘプチル基、1,1-ジメチルペンチル基、n-オクチル基、1,1-ジメチルヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基、等が挙げられる。
【0051】
一般式(2)で表されるシランカップリング剤として、例えば3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン、3-オクタノイルチオ-1-プロピルエチルジエトキシシラン、3-ヘキサノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-デカノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-ヘキサノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-デカノイルチオプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0052】
タイヤ用ゴム組成物は、シリカ以外の他の充填剤を配合することにより、ゴム組成物の強度を高くし、タイヤ耐久性を確保することができる。他の充填剤として、例えばカーボンブラック、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、クレイ、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化チタン、硫酸カルシウム、マイカ、硫酸バリウム等の無機フィラーや、セルロース、レシチン、リグニン、デンドリマー等の有機フィラーを例示することができる。
【0053】
なかでもカーボンブラックを配合することにより、ゴム組成物の強度を優れたものにし耐摩耗性を向上することができる。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、グラファイトなどのカーボンブラックを配合してもよい。これらの中でも、ファーネスブラックが好ましく、その具体例としては、SAF、ISAF、ISAF-HS、ISAF-LS、IISAF-HS、HAF、HAF-HS、HAF-LS、FEFなどが挙げられる。これらのカーボンブラックは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのカーボンブラックを種々の酸化合物等で化学修飾を施した表面処理カーボンブラックも用いることができる。
【0054】
タイヤ用ゴム組成物は、ジエン系ゴム100質量部に熱可塑性樹脂を15~40質量部、好ましくは15~35質量部、より好ましくは17~30質量部配合する。熱可塑性樹脂を配合することにより、耐摩耗性を改良すると共に、ゴム組成物のTgが高くなりウェット性能が向上する。熱可塑性樹脂が15質量部未満であると、耐摩耗性およびウェット性能を改良する効果が十分に得られない。熱可塑性樹脂が40質量部を超えると、転がり抵抗が大きくなる。
【0055】
熱可塑性樹脂とは、タイヤ用ゴム組成物へ通常配合する樹脂であり、分子量が数百から数千くらいで、タイヤ用ゴム組成物に粘着性を付与する作用を有する。熱可塑性樹脂として、例えばテルペン、変性テルペン、ロジン、ロジンエステル、C5成分、C9成分から選ばれる少なくとも1つからなる樹脂が好ましい。例えば、テルペン系樹脂、変性テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、ロジンエステル系樹脂などの天然樹脂、C5系樹脂、C9系樹脂、C5C9系共重合樹脂等のC5成分、C9成分からなる石油系樹脂、石炭系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂などの合成樹脂が挙げられる。
【0056】
テルペン系樹脂としては、例えばα-ピネン樹脂、β-ピネン樹脂、リモネン樹脂、水添リモネン樹脂、ジペンテン樹脂、テルペンフェノール樹脂、テルペンスチレン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水素添加テルペン樹脂等が挙げられる。ロジン系樹脂としては、例えばガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン、水素添加ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、マレイン化ロジンおよびフマル化ロジン等の変性ロジン、これらのロジンのグリセリンエステル、ペンタエリスリトールエステル、メチルエステルおよびトリエチレングリコールエステルなどのエステル誘導体、並びにロジン変性フェノール樹脂等が挙げられる。
【0057】
また、本発明において、熱可塑性樹脂がテルペン系樹脂を25質量%以上含むことが好ましい。熱可塑性樹脂がテルペン系樹脂を25質量%以上含むことにより、転がり抵抗性を低く維持しつつ、ウェット性能を改善することが可能となる。また、テルペン系樹脂はα-ピネン由来単位を含んでもよく、そのα-ピネン由来単位の含有率は、テルペン系樹脂100質量%中、60質量%以下に限定するとよい。
【0058】
石油系樹脂としては、芳香族系炭化水素樹脂あるいは飽和または不飽和脂肪族系炭化水素樹脂が挙げられ、例えばC5系石油樹脂(イソプレン、1,3-ペンタジエン、シクロペンタジエン、メチルブテン、ペンテンなどの留分を重合した脂肪族系石油樹脂)、C9系石油樹脂(α-メチルスチレン、o-ビニルトルエン、m-ビニルトルエン、p-ビニルトルエンなどの留分を重合した芳香族系石油樹脂)、C5C9共重合石油樹脂などが例示される。
【0059】
熱可塑性樹脂は、そのガラス転移温度が好ましくは40℃~120℃、好ましくは45℃~115℃、より好ましくは50℃~110℃であるとよい。熱可塑性樹脂のガラス転移温度を40℃以上にすることにより、ドライグリップ性能が向上し好ましい。また。120℃以下にすることにより、耐摩耗性が向上し好ましい。熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、上述した方法で測定することができる。
【0060】
タイヤ用ゴム組成物には、上記成分以外に、常法に従って、加硫又は架橋剤、加硫促進剤、老化防止剤、加工助剤、可塑剤、熱硬化性樹脂などのタイヤ用ゴム組成物に一般的に使用される各種配合剤を配合することができる。このような配合剤は一般的な方法で混練してゴム組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの配合剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。タイヤ用ゴム組成物は、公知のゴム用混練機械、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等を使用して、上記各成分を混合することによって調製することができる。
【0061】
タイヤ用ゴム組成物は、タイヤのトレッド部やサイド部を形成するのに好適であり、とりわけタイヤのトレッド部を形成するのに好適である。これにより得られたタイヤは、耐摩耗性、ウェット性能、および低転がり抵抗性を従来レベル以上に向上させ、かつ低転がり抵抗性の温度依存性が小さいと共に、押出成形加工性が良好で優れた品質のタイヤを安定的に得ることができる。
【0062】
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例
【0063】
表5に示す共通の添加剤処方を有し、表1~4に示す配合からなる31種類のタイヤ用ゴム組成物(標準例、実施例1~16、比較例1~14)を調製するに当たり、それぞれ硫黄および加硫促進剤を除く成分を秤量し、1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練した後、そのマスターバッチをミキサー外に放出し室温冷却した。このマスターバッチを同バンバリーミキサーに供し、硫黄および加硫促進剤を加えて混合し、タイヤ用ゴム組成物を得た。表中、SBR(B)-1およびSBR(B)-2は25質量部、SBR(B)-3は20質量部の油展品であるため、下段の括弧内に油展成分抜きの配合量を記載した。また、末端変性スチレンブタジエンゴム(A)の質量に対する末端変性スチレンブタジエンゴム(B)および天然ゴムの質量合計の比を、「質量比(SBR(B)+NR)/SBR(A)」の欄に記載し、末端変性スチレンブタジエンゴム(B)および天然ゴムからなる混合物の重量平均分子量を「(SBR(B)+NR)の重量平均分子量」の欄に記載した。さらに、ジエン系ゴムの平均ガラス転移温を「ジエン系ゴムの平均Tg」の欄に記載した。なお、表5の添加剤処方は、表1~4に記載したジエン系ゴム100質量部に対する質量部で記載している。
【0064】
上記で得られたタイヤ用ゴム組成物をそれぞれ所定形状の金型中で、160℃、20分間加硫して評価用試料を作製した。得られた評価用試料を使用し、動的粘弾性(0℃、20℃および60℃の損失正接tanδ)、耐摩耗性を以下の方法で測定した。また得られたタイヤ用ゴム組成物を使用した押出加工性を以下の方法で評価した。
【0065】
動的粘弾性(0℃、20℃および60℃の損失正接tanδ)
タイヤ用ゴム組成物の評価用試料の動的粘弾性を、岩本製作所(株)製の粘弾性スペクトロメーターを用い、伸張変形歪率10±2%、振動数20Hz、温度0℃、20℃および60℃の条件にて測定した。を求めた。得られた0℃の損失正接tanδの結果は、標準例の値を100とする指数で表わし表1~4の「ウェット性能」の欄に示した。この指数が大きいほど、0℃のtanδが大きくウェット性能に優れることを意味し、本明細書では108以上のときウェット性能が良好であるものとする。得られた60℃の損失正接tanδはそれぞれの逆数を算出し、標準例の値を100とする指数で表わし表1~4の「転がり抵抗」の欄に示した。この指数が大きいほど、60℃のtanδが小さく転がり抵抗性能に優れることを意味し、本明細書では103以上のとき低転がり抵抗性能が良好であるものとする。さらに60℃の損失正接tanδを20℃の損失正接tanδで割った値を算出し、標準例の値を100とする指数で表わし表1~4の「転がり抵抗の温度依存性」の欄に示した。この指数が大きいほど、転がり抵抗性能の温度依存性が小さいことを意味し、本明細書では105以上のとき低転がり抵抗性能の温度依存性小さく優れているものとする。
【0066】
耐摩耗性
得られたタイヤ用ゴム組成物の評価用試料をJIS K6264に準拠し、ランボーン摩耗試験機(岩本製作所株式会社製)を使用して、荷重15.0kg(147.1N)、スリップ率25%の条件にて、摩耗量を測定した。得られた結果それぞれの逆数を算出し、標準例の摩耗量の逆数を100にする指数として表1~4の「耐摩耗性」の欄に記載した。この指数が大きいほど、摩耗量が少なく耐摩耗性に優れていることを意味する。
【0067】
押出加工性
得られたタイヤ用ゴム組成物を使用して、ASTM D 2230‐77に準拠して、ガーベダイを用いて押出サンプルを作成し、各押出サンプルの20cmの外観(エッジの鋭さと表面肌の平滑性)を以下の基準で目視評価し、その結果を表1~4の「押出加工性」の欄に記載した。1または2の評点であれば押出加工性に優れていると判断する。
1:エッジ切れがなく、表面も平滑である。
2:エッジ切れが1箇所以上5箇所以下で、表面も平滑である。
3:エッジ切れが6箇所以上10箇所以下で、表面に毛羽立ちや穴あきが見られない。
4:エッジ切れが11箇所以上ある、もしくは表面に毛羽立ちや穴あきがある。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】
【0071】
【表4】
【0072】
表1~4において使用した原材料の種類を下記に示す。
・SBR(A)-1:ポリオルガノシロキサン構造を有する末端変性スチレンブタジエンゴム、日本ゼオン社製Nipol NS612、ガラス転移温度が-60℃、重量平均分子量が45万、スチレン含有量が15質量%、ビニル含有量が31%、非油展品。
・SBR(A)-2:下記の重合方法により得られた、ポリオルガノシロキサン構造を有する末端変性スチレンブタジエンゴム、ガラス転移温度が-70℃、重量平均分子量が45万、スチレン含有量が18質量%、ビニル含有量が13%、非油展品。
・SBR-1:スチレンブタジエンゴム、JSR社製HPR850、ガラス転移温度が-25℃、重量平均分子量が37万、スチレン含有量が27.0質量%、ビニル含有量が58.8%、非油展品。
・SBR(B)-1:ポリオルガノシロキサン構造を有する末端変性スチレンブタジエンゴム、日本ゼオン社製NS560、ガラス転移温度が-27℃、重量平均分子量が66万、GPCで測定したときの分子量分布曲線が二峰形で、その分子量分布(PDI)が1.5、スチレン含有量が43質量%、ビニル含有量が31%、25質量部の油展品。
・SBR(B)-2:アルコキシシリル基を有する末端変性スチレンブタジエンゴム、旭化成社製F3420、ガラス転移温度が-27℃、重量平均分子量が90万、GPCで測定したときの分子量分布曲線が単峰形で、その分子量分布(PDI)が2.3、スチレン含有量が36質量%、ビニル含有量が40%、25質量部の油展品。
・SBR(B)-3:下記の重合方法により得られた、アルコキシシリル基を有する末端変性スチレンブタジエンゴム、ガラス転移温度が-31℃、重量平均分子量が73万、GPCで測定したときの分子量分布曲線が単峰形で、その分子量分布(PDI)が1.3、スチレン含有量が36質量%、ビニル含有量が38%、20質量部の油展品。
・NR:天然ゴム、SIR‐20、ガラス転移温度が-62℃、重量平均分子量が120万。
・熱可塑性樹脂-1:芳香族変性テルペン樹脂、ヤスハラケミカル社製YSレジンTO-125、ガラス転移温度が78℃
・熱可塑性樹脂-2:C9系樹脂、ENEOS社製ネオポリマーS100、ガラス転移温度が58℃
・樹脂-3:α-ピネン樹脂、ガラス転移温度が81℃、軟化点が130℃、Mnが742g/mol、Mzが1538g/mol、Mwが1055g/mol、Mw/Mnが1.42。
・樹脂-4:β-ピネン樹脂、ヤスハラケミカル社製YSレジンPX-1150N、ガラス転移温度が68℃
・樹脂-5:ピネン樹脂(α-ピネン20質量%、β-ピネン80質量%)、ガラス転移温度が78℃、軟化点が130℃、Mnが790g/mol、Mzが1891g/mol、Mwが1101g/mol、Mw/Mnが1.57。
・カーボンブラック:キャボットジャパン社製ショウブラックN339、CTAB吸着比表面積が90m/g。
・シリカ:Solvay社製ZEOSIL 1165MP
・カップリング剤-1:一般式(1)の平均組成式で表されるポリシロキサンを含むシランカップリング剤、信越化学工業社製、平均組成式(-C-S-C-)0.071(-C170.571(-OC1.50(-CSH)0.286SiO0.75で表されるポリシロキサン。
・カップリング剤-2:一般式(2)において、R~Rがエトキシ基、Rがn-ヘプチル基であるシランカップリング剤、Momentive社製NXT Silane、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン。
・カップリング剤-3:シランカップリング剤、Evonik Degussa社製 Si69
・低アロマオイル:シェルルブリカンツジャパン社製エキストラクト4号S
【0073】
SBR(A)-2の重合方法
窒素置換された800mlアンプル瓶に、シクロヘキサン70.0g、およびテトラメチルエチレンジアミン0.77mmolを添加し、さらに、n-ブチルリチウム7.69mmolを添加した。次いで、イソプレン27.9g、およびスチレン2.1gをゆっくりと添加し、温度50℃としたアンプル瓶内で120分間反応させることにより、活性末端を有する重合体ブロックを得た。
攪拌機付きオートクレープに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン4000g、テトラメチルエチレンジアミン1.50mmol、1,3‐ブタジエン445g、およびスチレン155gを仕込んだ後、上記にて得られた活性末端を有する重合体ブロックを全量加え、50℃で重合を開始した。重合を開始してから10分経過後、1,3‐ブタジエン355g、およびスチレン40gを60分間かけて連続的に添加した。重合反応中の最高温度は75℃であった。連続添加終了後、さらに10分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、下記式(I)で表されるポリオルガノシロキサンを、40質量%濃度のキシレン溶液の状態にて、2.44g添加し、30分間反応させた。その後、重合停止剤として、使用したn‐ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して、共役ジエン系ゴムを含有する溶液を得た。この溶液に、老化防止剤として、イルガノックス1520L(BASF社製)を、共役ジエン系ゴム100部に対して0.15部添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の共役ジエン系ゴム[SBR(A)-2]を得た。
【化2】
上記式(I)において、mは80、kは120、X、X、R~RおよびR~Rはメチル基、Xは下記式(II)で表される基である(ここで、*は結合位置を表す)。
【化3】
【0074】
SBR(B)-3の重合方法
3器の反応器が直列で連結された連続反応器のうち第1反応器に、n‐ヘキサンにスチレンが60質量%で溶解されたスチレン溶液を6.5kg/h、n‐ヘキサンに1,3‐ブタジエンが60質量%で溶解された1,3‐ブタジエン溶液を7.7kg/h、n‐ヘキサンを47.0kg/h、n‐ヘキサンに1,2‐ブタジエンが2.0質量%で溶解された1,2‐ブタジエン溶液を40g/h、極性添加剤として、n‐ヘキサンにN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)が10質量%で溶解された溶液を50.0g/h、下記製造例1で製造された変性開始剤を400.0g/hの速度で注入した。この際、第1反応器の温度は55℃になるように維持し、重合転換率が41%となった時に、移送配管を介して、第1反応器から第2反応器へ重合物を移送した。
次に、第2反応器に、n‐ヘキサンに1,3‐ブタジエンが60質量%で溶解された1,3‐ブタジエン溶液を2.3kg/hの速度で注入した。この際、第2反応器の温度は65℃になるように維持し、重合転換率が95%以上となった時に、移送配管を介して、第2反応器から第3反応器へ重合物を移送した。
前記第2反応器から第3反応器に重合物を移送し、変性剤として、N-(3-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)プロピル)-3-(トリメトキシシリル)-N-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)プロパン-1-アミンが溶解された溶液(溶媒:n-ヘキサン)を連続的に第3反応器に投入した[変性剤:act.Li(重合開始剤)=1:1mol]。第3反応器の温度は65℃になるように維持した。
その後、第3反応器から排出された重合溶液に、酸化防止剤として、30質量%で溶解されたIR1520(BASF社製)溶液を170g/hの速度で注入して撹拌した。その結果として得られた重合物をスチームで加熱された温水に入れ、撹拌して溶媒を除去し、変性共役ジエン系重合体[変性SBR(B)-3]を製造した。
【0075】
[製造例1] 変性開始剤の製造
真空乾燥させた、4Lのステンレス鋼製の圧力容器を2つ準備した。第1の圧力容器に、シクロヘキサン6,922g、下記化学式(i)で表される化合物85g、およびテトラメチルエチレンジアミン60gを投入し、第1反応溶液を製造した。これと同時に、第2の圧力容器に、液状の2.0Mのn-ブチルリチウム180gおよびシクロヘキサン6,926gを投入し、第2反応溶液を製造した。この際、化学式(i)で表される化合物、n-ブチルリチウム、およびテトラメチルエチレンジアミンのモル比は1:1:1であった。各圧力容器の圧力を7barに維持させた状態で、質量流量計を用いて、連続式反応器内に、第1連続式チャンネルを介して第1反応溶液を1.0g/minの注入速度で、第2連続式チャンネルを介して第2反応溶液を1.0g/minの注入速度でそれぞれ注入した。この際、連続式反応器の温度は-10℃に維持し、内部圧力は背圧レギュレータ(backpressure regulator)を用いて3barに維持し、反応器内での滞留時間は10分以内となるように調節した。反応を終了し、変性開始剤を得た。
【化4】
【0076】
【表5】
【0077】
表5において使用した原材料の種類を下記に示す。
・亜鉛華:正同化学工業社製社製酸化亜鉛3種
・ステアリン酸:NOFコーポレーション社製ステアリン酸YR
・老化防止剤:Solutia Europe社製Santoflex6PPD
・加硫促進剤-1:大内新興化学社製ノクセラーCZ-G
・加硫促進剤-2:住友化学社製ソクシノールD-G
・硫黄:鶴見化学工業社製金華印油入微粉硫黄
【0078】
表3~4から明らかなように、実施例1~16のタイヤ用ゴム組成物は、耐摩耗性、ウェット性能、および低転がり抵抗性を従来レベル以上に向上させ、かつ低転がり抵抗性の温度依存性を小さくすると共に、押出成形加工性にも優れたものにすることができる。
【0079】
表1から明らかなように、比較例1のタイヤ用ゴム組成物は、熱可塑性樹脂を配合しないのでウェット性能が低く、また、末端変性スチレンブタジエンゴム(B)および天然ゴムからなる混合物の重量平均分子量が70万未満なので、押出成形加工性が劣る。
比較例2のタイヤ用ゴム組成物は、熱可塑性樹脂を配合したが、末端変性スチレンブタジエンゴム(B)および天然ゴムからなる混合物の重量平均分子量が70万未満なので、押出成形加工性が劣る。また、低転がり抵抗性を改良することもできない。
比較例3のタイヤ用ゴム組成物は、末端変性スチレンブタジエンゴム(B)および天然ゴムの質量の合計が、前記末端変性スチレンブタジエンゴム(A)の質量の1/3未満なので、押出成形加工性が劣る。
比較例4のタイヤ用ゴム組成物は、末端変性スチレンブタジエンゴム(A)が50質量%未満なので、転がり抵抗性が劣る。
比較例5のタイヤ用ゴム組成物は、天然ゴムが30質量%を超えるので、ウェット性能および転がり抵抗が劣る。
比較例6のタイヤ用ゴム組成物は、末端変性スチレンブタジエンゴム(A)が75質量%を超え、末端変性スチレンブタジエンゴム(B)および天然ゴムの質量の合計が、前記末端変性スチレンブタジエンゴム(A)の質量の1/3未満なので、ウェット性能および押出成形加工性が劣る。
比較例7のタイヤ用ゴム組成物は、末端変性スチレンブタジエンゴム(A)が75質量%を超え、末端変性スチレンブタジエンゴム(B)および天然ゴムの質量の合計が、前記末端変性スチレンブタジエンゴム(A)の質量の1/3未満なので、押出成形加工性が劣る。
【0080】
表5から明らかなように、比較例8のタイヤ用ゴム組成物は、末端変性スチレンブタジエンゴム(B)および天然ゴムの質量の合計が、前記末端変性スチレンブタジエンゴム(A)の質量の1/3未満なので、押出成形加工性が劣る。
比較例9のタイヤ用ゴム組成物は、シランカップリング剤がメルカプト構造を有しないので、ウェット性能および転がり抵抗が劣る。
比較例10のタイヤ用ゴム組成物は、末端変性スチレンブタジエンゴム(A)を含有しないので、転がり抵抗や転がり抵抗の温度依存性が大きく、耐摩耗性も低下する。
比較例11のタイヤ用ゴム組成物は、熱可塑性樹脂が15質量部未満なので、ウェット性能および押出成形加工性が劣る。
比較例12のタイヤ用ゴム組成物は、熱可塑性樹脂が40質量部を超えるので、転がり抵抗が大きく、また転がり抵抗の温度依存性も大きい。
比較例13のタイヤ用ゴム組成物は、シリカが60質量部未満なので、ウェット性能が劣り、また耐摩耗性も改良されない。
比較例14のタイヤ用ゴム組成物は、シリカが90質量部を超えるので、転がり抵抗が却って大きくなり、また耐摩耗性も低下する。
【0081】
本開示は、以下の発明を包含する。
発明[1] 末端変性スチレンブタジエンゴム(A)を含み、天然ゴムおよび/または末端変性スチレンブタジエンゴム(B)を含むジエン系ゴム100質量部に、シリカを60~90質量部、熱可塑性樹脂を15~40質量部配合し、メルカプト構造を有するシランカップリング剤を前記シリカの質量の2~15質量%配合したゴム組成物であって、前記末端変性スチレンブタジエンゴム(A)の重量平均分子量が30万~50万、ガラス転移温度が-50℃以下、前記末端変性スチレンブタジエンゴム(B)の重量平均分子量が60万以上、前記末端変性スチレンブタジエンゴム(B)および天然ゴムからなる混合物の重量平均分子量が70万以上、前記ジエン系ゴムの平均ガラス転移温度が-50℃以下であり、前記ジエン系ゴム100質量%中、前記末端変性スチレンブタジエンゴム(A)が50~75質量%、前記天然ゴムが0~30質量%、前記末端変性スチレンブタジエンゴム(B)および天然ゴムの質量の合計が、前記末端変性スチレンブタジエンゴム(A)の質量の1/3以上であることを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
発明[2] 前記末端変性スチレンブタジエンゴム(B)をゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したときの分子量分布曲線が単峰形を有し、かつその分子量分布(PDI)が1.7未満であることを特徴とする発明[1]に記載のタイヤ用ゴム組成物。
発明[3] 前記末端変性スチレンブタジエンゴム(B)を、前記ジエン系ゴム100質量中、0~50質量%含有することを特徴とする発明[1]または[2]に記載のタイヤ用ゴム組成物。
発明[4] 前記熱可塑性樹脂がテルペン系樹脂を25質量%以上含み、該テルペン系樹脂がα-ピネン由来単位を含有するとき、該α-ピネン由来単位の含有量が60質量%以下であることを特徴とする発明[1]~[3]のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
発明[5] 前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度が40℃~120℃であることを特徴とする発明[1]~[4]のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
発明[6] 前記熱可塑性樹脂が、テルペン、変性テルペン、ロジン、ロジンエステル、C5成分、C9成分から選ばれる少なくとも1つからなる樹脂、およびそれら樹脂の二重結合の少なくとも一部が水添された樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1つであり、そのガラス転移温度が40℃~120℃であることを特徴とする発明[1]~[4]のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
発明[7] 発明[1]~[6]のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物からなるトレッド部を有するタイヤ。
【符号の説明】
【0082】
1 トレッド部
2 サイド部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 インナーライナー層
8 ベルト層
9 ベルトカバー層
10a キャップトレッド
10b アンダートレッド
図1