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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】アミド化合物
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/402 20060101AFI20240417BHJP
   D06M 15/01 20060101ALI20240417BHJP
   D21H 21/14 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
D06M13/402
D06M15/01
D21H21/14 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022552043
(86)(22)【出願日】2021-09-22
(86)【国際出願番号】 JP2021034863
(87)【国際公開番号】W WO2022065384
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2022-08-15
(31)【優先権主張番号】P 2020160112
(32)【優先日】2020-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100224605
【弁理士】
【氏名又は名称】畠中 省伍
(72)【発明者】
【氏名】柴田 俊
(72)【発明者】
【氏名】上原 徹也
(72)【発明者】
【氏名】野口 太甫
(72)【発明者】
【氏名】山口 のぞみ
(72)【発明者】
【氏名】南 晋一
(72)【発明者】
【氏名】福田 晃之
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/004639(WO,A1)
【文献】特表昭60-500539(JP,A)
【文献】特開2007-131534(JP,A)
【文献】特開2018-183064(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0066073(US,A1)
【文献】特開2019-065448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 13/402
D06M 15/01
D21H 21/14
C07H 1/00
C08F 251/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維用添加剤である耐油剤であって、
バイオベース材料に炭素数7~40の長鎖炭化水素基及びアミド基を修飾したアミド化合物を含む耐油剤。
【請求項2】
前記アミド化合物が
-NHC(=O)-R
-C(=O)NH-R
-NHC(=O)O-R
-OC(=O)NH-R
-NHC(=O)NH-R
-NH-S(=O)-R、及び
-S(=O)-NH-R
[式中、各々のRは独立して炭素数7~40の長鎖炭化水素基である。]
からなる群から選択される少なくとも一種の長鎖炭化水素アミド基を含む、請求項1に記載の耐油剤。
【請求項3】
前記バイオベース材料が重量平均分子量1000以上の高分子である、請求項1又は2に記載の耐油剤。
【請求項4】
前記バイオベース材料が糖類である、請求項1~3のいずれか一項に記載の耐油剤。
【請求項5】
前記アミド化合物が前記バイオベース材料に炭素数7~40の長鎖炭化水素基を有する重合体をグラフト修飾してなるグラフト重合体である、請求項1~4のいずれか一項に記載の耐油剤。
【請求項6】
前記重合体が下記式
CH2=C(-X)-C(=O)-Y-Z(-Y-R)
[式中、Rは、それぞれ独立的に、炭素数7~40の長鎖炭化水素基であり、
は、水素原子、一価の有機基又はハロゲン原子であり
は、-O-又は-NH-であり、
は、それぞれ独立的に、直接結合、-O-、-C(=O)-、-S(=O)-又は-NH-から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される基であり、
Zは、直接結合、あるいは2価又は3価の炭素数1~5の炭化水素基であり、
nは、1又は2である。]
で表され、少なくとも1つのアミド基を有するアミド単量体(a1)
から誘導された繰り返し単位を有する、請求項5に記載の耐油剤。
【請求項7】
前記長鎖炭化水素基の炭素数が12以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載の耐油剤。
【請求項8】
前記アミド化合物のASTM D6866によるバイオベース度が40%以上である、請求項1~7のいずれか一項に記載の耐油剤。
【請求項9】
紙用添加剤である請求項1~のいずれか一項に記載の耐油剤。
【請求項10】
バイオベース材料に炭素数7~40の長鎖炭化水素基及びアミド基を修飾したアミド化合物が付着した繊維製品。
【請求項11】
紙製品である、請求項10に記載の繊維製品。
【請求項12】
前記紙が食品包装材である、請求項11に記載の繊維製品。
【請求項13】
繊維処理用である水分散体であって、
バイオベース材料に炭素数7~40の長鎖炭化水素基及びアミド基を修飾したアミド化合物を含む、水分散体。
【請求項14】
前記アミド化合物が
-NHC(=O)-R
-C(=O)NH-R
-NHC(=O)O-R
-OC(=O)NH-R
-NHC(=O)NH-R
-NH-S(=O)-R、及び
-S(=O)-NH-R
[式中、各々のRは独立して炭素数7~40の長鎖炭化水素基である。]
からなる群から選択される少なくとも一種の長鎖炭化水素アミド基を含む、請求項13に記載の水分散体。
【請求項15】
前記アミド化合物が前記バイオベース材料に炭素数7~40の長鎖炭化水素基を有する重合体をグラフト修飾してなるグラフト重合体であり、
前記重合体が下記式
CH2=C(-X)-C(=O)-Y-Z(-Y-R)
[式中、Rは、それぞれ独立的に、炭素数7~40の長鎖炭化水素基であり、
は、水素原子、一価の有機基又はハロゲン原子であり
は、-O-又は-NH-であり、
は、それぞれ独立的に、直接結合、-O-、-C(=O)-、-S(=O)-又は-NH-から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される基であり、
Zは、直接結合、あるいは2価又は3価の炭素数1~5の炭化水素基であり、
nは、1又は2である。]
で表され、少なくとも1つのアミド基を有するアミド単量体(a1)
から誘導された繰り返し単位を有する、請求項13又は14に記載の水分散体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アミド化合物、特に耐油剤において好適に利用できるアミド化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨てプラスチック容器の代替として、紙容器が期待されている。紙製の食品包装材及び食品容器は、食品の水分及び油分が染み出すことを防止することが要求され、耐油剤が紙に内添又は外添により適用されている。また、環境配慮の観点から生分解性材料やバイオベース材料のニーズも高まっている。
【0003】
特許文献1にはセルロース性材料を、その生分解性を犠牲にすることなくそのような材料に増加した疎水性及び/又は疎油性を提供する組成物で処理する調整可能な方法として、セルロース性材料上への糖脂肪酸エステルを結合する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】US2018/0066073Al
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には高温耐油性に関しては記載がない。高温耐油性は、高温における使用が意図される製品(例えば食品包装材)においては重要な特性である。本開示の目的はバイオベース材料を用いた高温耐油性を付与することができる耐油剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の好ましい態様は次のとおりである。
[項1]
バイオベース材料に炭素数7~40の長鎖炭化水素基及びアミド基を修飾したアミド化合物。
[項2]
-NHC(=O)-R
-C(=O)NH-R
-NHC(=O)O-R
-OC(=O)NH-R
-NHC(=O)NH-R
-NH-S(=O)-R、及び
-S(=O)-NH-R
[式中、各々のRは独立して炭素数7~40の長鎖炭化水素基である。]
からなる群から選択される少なくとも一種の長鎖炭化水素アミド基を含む、項1に記載のアミド化合物。
[項3]
前記バイオベース材料が高分子である、項1又は2のいずれか一項に記載のアミド化合物。
[項4]
前記バイオベース材料が糖類である、項1~3のいずれか一項に記載のアミド化合物。
[項5]
前記バイオベース材料に炭素数7~40の長鎖炭化水素基を有する重合体をグラフト修飾してなるグラフト重合体である、項1~4のいずれか一項に記載のアミド化合物。
[項6]
前記重合体が下記式
CH2=C(-X)-C(=O)-Y-Z(-Y-R)
[式中、Rは、それぞれ独立的に、炭素数7~40の長鎖炭化水素基であり、
は、水素原子、一価の有機基又はハロゲン原子であり、
は、-O-又は-NH-であり、
は、それぞれ独立的に、直接結合、-O-、-C(=O)-、-S(=O)-又は-NH-から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される基であり、
Zは、直接結合、あるいは2価又は3価の炭素数1~5の炭化水素基であり、
nは、1又は2である。]
で表され、少なくとも1つのアミド基を有するアミド単量体(a1)
から誘導された繰り返し単位を有する、項5に記載のアミド化合物。
[項7]
前記長鎖炭化水素基の炭素数が12以上である、項1~6のいずれか一項に記載のアミド化合物。
[項8]
ASTM D6866によるバイオベース度が40%以上である、1~7のいずれか一項に記載のアミド化合物。
[項9]
項1~8のいずれか一項に記載のアミド化合物を含む、耐油剤。
[項10]
紙用添加剤である項9の耐油剤。
[項11]
項1~8のいずれか一項に記載のアミド化合物が付着した繊維製品。
[項12]
紙製品である、項11に記載の繊維製品。
[項13]
前記紙が食品包装材である、項12に記載の繊維製品。
【発明の効果】
【0007】
本開示におけるアミド化合物は基材に対して優れた耐油性及び/又は耐水性を付与することができ、特に高温耐油性を付与することができる。本開示におけるアミド化合物はバイオベース材料に由来するため、環境に与える負荷が低い。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<アミド化合物>
アミド化合物はバイオベース材料に対して炭素数7~40の長鎖炭化水素基とアミド基とを修飾した化合物である。アミド化合物は、フルオロアルキル基を有しない化合物であってよいし、フッ素を含まない化合物であってもよい。
【0009】
[長鎖炭化水素基]
長鎖炭化水素基の炭素数は、7以上、10以上、12以上、14以上、16以上、18以上、又は20以上であってよく、好ましくは10以上又は12以上である。長鎖炭化水素基の炭素数は、40以下、35以下、30以下、25以下、22以下、20以下、又は18以下であってよい。好ましくは30以下である。
【0010】
長鎖炭化水素基は好ましくは脂肪族炭化水素基であり、より好ましくは一価の脂肪族炭化水素基である。長鎖炭化水素基は直鎖状、分岐鎖状、又は環状であってもよいが、好ましくは直鎖状である。長鎖炭化水素基は、不飽和(例えば、一価不飽和、二価不飽和、三価不飽和、四価不飽和、又は多価不飽和)又は飽和であってよく、例えばアルキル基である。
【0011】
長鎖炭化水素基の具体例としては、オクチル基、ラウリル基、パルミチル基、ステアリル基、ベヘニル基、2-エチルヘキシル基、イソステアリル基等のアルキル基;オレイル基、パルミトイル基、エイコセニル基等のアルケニル基等が挙げられる。
【0012】
[アミド基]
アミド基は、アミド基の両端に炭素が結合していることを要さず、ウレタン基又はウレア基の一部のアミド基であってもよい。また、アミド基は、カルボン酸のアミドに加えて、スルホンアミドを含んでいてもよい。アミド基は、長鎖炭化水素基に隣接していることが好ましい。
【0013】
[長鎖炭化水素アミド基]
アミド化合物は長鎖炭化水素アミド基を有することが好ましい。長鎖炭化水素アミド基は、
-NHC(=O)-R
-C(=O)NH-R
-NHC(=O)O-R
-OC(=O)NH-R
-NHC(=O)NH-R
-NH-S(=O)-R、及び
-S(=O)-NH-R
[式中、各々のRは独立して炭素数7~40の長鎖炭化水素基である。]
からなる群から選択される少なくとも一種の長鎖炭化水素アミド基であってよい。
【0014】
Rは上述した長鎖炭化水素基と同様であってよい。
【0015】
[結合性基]
アミド化合物は、基材の有する官能基(例えば紙中のセルロースの有するヒドロキシ基)と化学的又は物理的に結合する結合性基を有することが好ましい。化学的結合とは例えば共有結合をいう。物理的結合とは、例えばイオン結合、水素結合等をいう。結合性基はバイオベース材料由来であってよい。結合性基を有することにより、アミド化合物がセルロースに高度に定着し、紙製品の耐油性及び/又は撥水性が良好に発現し得る。結合性基は通常、バイオベース材料由来である。
【0016】
結合性基は、特に極性基であり、特にアミド基以外の極性基である。極性基の例としては、活性水素含有基、活性水素反応性基、カチオン供与基含有基、及びアニオン供与基等が挙げられる。極性基の具体例としては、ヒドロキシ基、アミノ基、チオール基、ヒドラジド基、メラミン、アルデヒド基、エポキシ基、(ブロック)イソシアネート基、ウレア基、ウレタン基、ハロゲン基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、アンモニウム基等が挙げられる。イオンを形成する場合、これらの共役塩基又は共役酸であってもよい。
【0017】
[アミド基の量等]
アミド化合物における長鎖炭化水素基含有量は1重量%以上、3重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、20重量%以上、又は30重量%以上であってよく、好ましくは5重量%以上である。アミド化合物における長鎖炭化水素基含有量は80重量%以下、70重量%以下、60重量%以下、50重量%以下、40重量%以下、30重量%以下、又は25重量%以下であってよく、好ましくは70重量%以下である。
【0018】
アミド化合物におけるアミド基含有量は0.5重量%以上、1重量%以上、3重量%以上、5重量%以上、又は10重量%以上であってよく、好ましくは1重量%以上である。アミド化合物におけるアミド基含有量は30重量%以下、20重量%以下、10重量%以下、5重量%以下、1重量%以下、又は0.5重量%以下であってよく、好ましくは10重量%以下である。ここで、アミド化合物におけるアミド基含有量とはアミド化合物中におけるNHC(=O)部分の占める重量比率を意味する。
【0019】
アミド化合物における結合性基含有量は0.5重量%以上、1重量%以上、3重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、又は20重量%以上であってよく、好ましくは3重量%以上である。アミド化合物における結合性基含有量は70重量%以下、50重量%以下、30重量%以下、20重量%以下、10重量%以下、又は5重量%以下であってよく、好ましくは30重量%以下である。
【0020】
[バイオベース度]
アミド化合物は、ASTM D6866によるバイオベース度が40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、又は95%以上であってよく、好ましくは80%以上であり、より好ましくは95%以上である。バイオベース度が高いことは、石油等に代表される化石資源系材料の使用量が少ないことを意味する。かかる観点において、アミド化合物のバイオベース度は高いほど好ましいといえる。
【0021】
[バイオベース材料]
「バイオベース材料」とは動物、植物、微生物等の生体分子に由来した材料のことである。なお、半減期が約5,700年である炭素14(C-14)は、バイオベース材料中に存在するが、化石燃料中には存在しないことが当該技術分野において知られている。半減期が約5,700年である炭素14(C-14)は、バイオベース材料中に存在するが、化石燃料中には存在しないことが当業者において知られている。したがって、「バイオベース材料」とは、その中の炭素が化石以外の生物源に由来する有機材料を意味してもよい。
【0022】
バイオベース材料は低分子(例えば分子量1000以下、又は500以下)であってもよいし、高分子(天然高分子)であってもよい。バイオベース材料が高分子の場合、その重量平均分子量は、1000以上、3000以上、5000以上、7500以上、10000以上、30000以上、100000以上、300000以上、又は500000以上であってよい。重合体の重量平均分子量は、10000000以下、7500000以下、5000000以下、3000000以下、1000000以下、750000以下、500000以下、3000000以下、100000以下、75000以下、又は50000以下であってよい。
【0023】
バイオべース材料は極性基を通常有する。極性基の例としては、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボン酸基等である。
【0024】
バイオベース材料の例としては、糖類、アルコール類、アミノ酸又はペプチド化合物、核酸塩基又は核酸類、アルカロイド化合物、ステロイド化合物、ホルモン、ポリフェノール、ビタミン類等が挙げられる。
【0025】
糖化合物の具体例としては、グルコース、スクロース、ガラクトース、ラクトース、デキストロース、エリスリトール、マルチトール、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、イソマルトール、ラクチトール、グリセロールカルボキシアルキル多糖類、カルボキシメチルセルロース、キチン、キトサン、レバン、プルラン、カードラン、キサンタン、カラギナン、ローカストビーンガム、ペクチン、デキストリン、デンプン、グアーガム、アルギン酸、リグニン等が挙げられる。
【0026】
アルコール類の具体例としては、グリセリン、プロピレングリコール、1、3‐ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール(糖アルコール)、キシリトール(糖アルコール)等が挙げられる。
【0027】
アミノ酸又はペプチド類の具体例としては、としては、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、コラーゲン、ポリペプチド、プロテアーゼ、リパーゼ、オキシゲナーゼ、ペルオキシダーゼ等の各種酵素等が挙げられる。
【0028】
核酸塩基又は核酸類の具体例としては、ウラシル、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、ヌクレオチド類、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)等が挙げられる。
【0029】
脂肪酸又は油脂類の具体例としては、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリン酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、パクセン酸、α-リノレン酸、リノール酸、γ-リノレン酸、エレオステアリン酸、アラキジン酸、ミード酸、アラキドン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、ネルボン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、これらの脂肪酸エステル、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、木ろう、ホホバ固体ろう等の植物油脂、みつろう、ラノリン、鯨ろう等の動物油脂等が挙げられる。
【0030】
その他、バイオベース材料の具体例としては、イソフラボン、プロアントシアニジン、アントシアニン、カテキン、ルチン、ヘスペリジン、タンニン、エラグ酸、リグナン、クルクミン、クマリン、甜茶ポリフェノール、クロロゲン酸、レスベラトロール、バラポリフェノール、アスタキサンチン、ルテイン、フコキサンチン、ゼアキサンチン、ベータクリプトキサンチン等が挙げられる。
(糖類)
バイオベース材料は糖類であってよい。糖類としては、単糖類、誘導糖、オリゴ糖類、多糖類、糖アルコール、デンプン類等が挙げられる。
【0031】
単糖類とは、糖類のうちで加水分解によってそれ以上簡単な分子にならない基本物質であって、オリゴ糖類や多糖類の構成単位である。単糖類は下記一般式
n2nn
[式中、炭素数(n)が2、3、4、5、6、7、8、9及び10である(それぞれ、ジオース、トリオース、テトロース、ペントース、ヘキソース、ヘプトース、オクトース、ノノース、及びデコースと称することができる。)。]
で表される化合物であってよい。単糖類は、アルデヒド基を持つものをアルドース、ケトン基を持つものをケトースと分類する。n=3以上のものは、不斉炭素原子を持ち、不斉炭素の数に応じて立体異性体が多数あり得るが、天然に知られているものはその一部である。天然に存在するものは、ペントースとヘキソースが多い。本開示で使用する単糖類としては、n=5以上の鎖式多価アルコールのアルデヒドであるアルドースが、天然に多量に存在するために好ましい。このような単糖類としては、例えば、グルコース、マンノース、ガラクトース、キシロース等が挙げられるが、その中でも、グルコースとガラクトースがより好ましい。単糖類は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。また、単糖の一部を変化した誘導糖であってもよい。例えば、アルドン酸、ウロン酸、糖アルコール、アミノ糖等を挙げることができる。
【0032】
糖アルコールとは、アルドース又はケトースを還元して得られるポリヒドロキシアルカンである。本開示で使用する糖アルコールとしては、鎖式多価アルコールが好ましい。このような糖アルコールは、下記一般式
n2n+1n
[式中、nが3、4、5、6、7、8、9及び10である(トリトール、テトリトール、ペンチトール、ヘキシトール、ヘプチトール、オクチトール、ノニトール、及びデシトールと称することができる。)。]
で表される化合物であってよい。それぞれの糖アルコールには、不斉炭素原子の数に応じて立体異性体が多数存在する。本開示では、n=3~6の糖アルコールを用いることが好ましい。糖アルコールの具体例としては、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール、キシリトール、エリトリトール、グリセリン等を挙げることができる。糖アルコールは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0033】
2個以上10個ぐらいまでの単糖がグリコシド結合によって結ばれた構造をもつものをオリゴ糖(少糖)という。単糖の数によって、二糖、三糖、四糖、五糖等に分類される。具体例としては、スクロース、ラクトース、トレハロース、セロビオース、マルトース、ラフィノース、スタキオース等が挙げられる。また、これらのオリゴ糖の末端をアルコール化したもの(末端アルコール化オリゴ糖)も使用できる。
【0034】
多糖類とは、単糖類がポリグリコシル化した高分子化合物(例えば、重合度10以上)の総称であり、構成糖の種類が1種の場合をホモ多糖(ホモグリカン)、2種以上のものをヘテロ多糖(ヘテログリカン)という。多糖類は、動物・植物・微生物界に、貯蔵多糖(デンプン類等)、構造多糖(セルロース等)、機能多糖(ヘパリン等)として広く存在する。
【0035】
多糖類は、主にアルドヘキソース及びアルドペントースを構成単位とし、それらが、グリコシド結合で直鎖状、分岐状又は環状に繋がった高分子化合物である。アルドペントース及びアルドヘキソースは、C1位のアルデヒドとC5位のアルコールとの間で、分子内ヘミアセタール結合によりピラノース環と呼ばれる6員環構造を形成する。天然多糖類分子中のアルドヘキソース及びアルドペントースは、主にこのピラノース環構造をとっている。天然多糖類の構成単位であるアルドヘキソ糖の硫酸エステル、りん酸エステル、その他有機酸エステルやメチルエーテル、第一アルコール基だけをカルボキシル基に酸化したウロン酸、アルドヘキソースのC2位のヒドロキシ基がアミノ基に置換されたヘキソサミンやその誘導体としてN-アセチルヘキソサミン、C3位とC6位のヒドロキシ基間でエーテルを形成した3,6無水化アルドヘキソース等が含まれる。天然多糖類は、動植物界に広く分布し、植物中には、高等植物や海藻類の細胞壁構成成分及び細胞壁構成に関与しないもの、微生物類の細胞構成成分として存在する。高等植物や海藻類の細胞壁構成に関与しないものとしては、細胞液に含まれる粘質物やデンプン等の貯蔵物質がある。動物中では、グリコーゲン等の貯蔵物質やヘパリンやコンドロイチン硫酸等の粘液の構成成分として存在する。天然多糖類をその構成成分によって分類すると、中性多糖、酸性多糖、塩基性多糖に分類される。ある。またヘテロ多糖としては、ヘキソースのみからなるものがコンニャクやグァラン等に含まれており、ペントースのみからなるものが、キシランやアラボキシラン等に含まれている。一方、ヘキソースとペントースを含むものとしては、タマリンドやナシカズラ等が知られている。酸性多糖としては、ウロン酸のみを含むもの、ガラツロン酸と中性糖を含むものとしてトロロアオイやペクチン等が、グルクロン酸と中性糖を含むものとしてカミツレ、クサスギカズラ等があり、その他に中性糖の硫酸エステル、りん酸エステル、有機酸エステル、メチルエーテルや3,6無水物を含む酸性多糖がある。塩基性多糖としては、グルコサミンやガラクトサミンを構成単糖として含むものがある。本開示で使用する多糖類には、これら天然多糖類の他に、これらの多糖類を有機酸や無機酸、さらにはそれらの多糖類の加水分解酵素を触媒として、固相、液相又は固液混合相にて、必要に応じて熱を加えることにより、加水分解して得られたもの、天然多糖類及びそれらに前述の加水分解処理をほどこしたものに、さらに加工処理を加えたものも含まれる。デンプンの重量平均分子量は、1000~10000000、好ましくは5000~7500000以上、より好ましくは7500~5000000以下であってよい。
【0036】
デンプン類は、前記多糖類に包含されるが、本開示で使用されるデンプン類について、以下により詳細に説明する。本開示で使用するデンプン類としては、小麦デンプン、トウモロコシデンプン、モチトウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、タピオカデンプン、米デンプン、甘藷デンプン、サゴデンプン等の生デンプン(未変性デンプン)のほか、各種の加工デンプンがある。加工デンプンとしては、例えば、アルファー化デンプン、分離精製アミロース、分離精製アミロペクチン、湿熱処理デンプン等の物理的変性デンプン、加水分解デキストリン、酵素分解デキストリン、アミロース等の酵素変性デンプン、酸処理デンプン、次亜塩素酸酸化デンプン、ジアルデヒドデンプン等の化学分解変性デンプン、エステル化デンプン(酢酸エステル化デンプン、こはく酸エステル化デンプン、硝酸エステル化デンプン、りん酸エステル化デンプン、尿素りん酸エステル化デンプン、キサントゲン酸エステル化デンプン、アセト酢酸エステル化デンプン等)、エーテル化デンプン(アリルエーテル化デンプン、メチルエーテル化デンプン、カルボキシメチルエーテル化デンプン、ヒドロキシエチルエーテル化デンプン、ヒドロキシプロピルエーテル化デンプン等)、カチオン化デンプン(デンプンと2-ジエチルアミノエチルクロライドとの反応物、デンプンと2,3-エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドとの反応物等)、架橋デンプン(ホルムアルデヒド架橋デンプン、エピクロルヒドリン架橋デンプン、りん酸架橋デンプン、アクロレイン架橋デンプン等)等の化学変性デンプン、各種デンプン類にモノマーをグラフト重合したグラフト化デンプン〔モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、t-ブチルビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸エトキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシ-3-クロロプロピルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、メタクリル酸グリシジルエステル、アクリロニトリル、スチレン、無水マレイン酸、イタコン酸等がある。〕等が挙げられる。これらのデンプン類の中でも、水に可溶性の加工デンプンが好ましい。デンプン類は、含水物であってもよい。また、これらのデンプン類は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0037】
[バイオベース材料への長鎖炭化水素基及びアミド基の修飾方法]
本開示におけるアミド化合物はバイオベース材料に長鎖炭化水素基及びアミド基を修飾させた化合物である。バイオベース材料に長鎖炭化水素基及びアミド基を修飾する方法としては特に限定されない。例えば、エーテル化反応、アシル化反応(エステル化、アミド化)、エポキシ基を用いた反応、イソシアネート基を用いた反応、グラフト修飾等が挙げられる。
【0038】
アミド化合物はバイオベース材料と長鎖炭化水素基含有反応体とを反応させることで得られる化合物である。ここで、「長鎖炭化水素基含有反応体」とは、長鎖炭化水素基を有し、バイオベース材料と反応し得る化合物である。
【0039】
アミド化合物におけるアミド基はバイオベース材料と長鎖炭化水素基含有反応体との反応の際に形成されたものであってよい。例えば、アミド化合物におけるアミド基は、長鎖炭化水素基含有反応体である脂肪族アミンをバイオベース材料のカルボン酸基と脱水縮合させる反応、長鎖炭化水素基含有反応体である脂肪族イソシアネートをバイオベース材料のヒドロキシ基又はアミノ基と反応させる方法により形成されたものであってよい。又はその逆で、アミド化合物におけるアミド基は、バイオベース材料のアミノ基を長鎖炭化水素基含有反応体である長鎖炭化水素基含有カルボン酸基と脱水縮合させる反応等によって形成されてもよい。反応においては、アシル化剤、縮合剤、触媒等が適宜使用される。
【0040】
アミド化合物におけるアミド基は長鎖炭化水素基含有反応体が有するものであってよい。長鎖炭化水素基含有反応体は、例えば、長鎖炭化水素アミド基(-NHC(=O)-R、-C(=O)NH-R、-NHC(=O)O-R、-OC(=O)NH-R、-NHC(=O)NH-R、-NH-S(=O)-R、-S(=O)-NH-R[式中、各々のRは独立して炭素数7~40の長鎖炭化水素基である。])に加えて、バイオベース材料に対して反応性の基(例えば、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボン酸基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、エポキシ基等、酸無水物、酸ハライド基)を有している化合物であってよい。
【0041】
長鎖炭化水素基含有反応体の例は次のとおりである。
N-R
HO-R
HO(O=)C-R
X(O=)C-R
RC(=O)OC(=O)R
O=C=N-R
S=C=N-R
(CHOCH)CHOR
[式中、各々のRは独立して炭素数7~40の長鎖炭化水素基であり、XはF、Cl、Br、又はIである。]
【0042】
(ウレタン結合形成)
アミド化合物におけるウレタン結合は、ヒドロキシ基を有するバイオベース材料と、長鎖炭化水素イソシアネートを反応させることで、形成されてもよい。反応時に錫触媒やアミンを触媒として使用することができる。合成方法としては、例えば、有機溶媒中でヒドロキシ基含有バイオベース材料と長鎖炭化水素イソシアネートと一定時間反応すれば、ヒドロキシ基がイソシアネート基と反応し、ウレタン結合と長鎖炭化水素基とを含有するアミド化合物が得られる。ここで、長鎖炭化水素イソシアネートの例としては脂肪族イソシアネートの具体例としては、ヘプチルイソシアネート、オクチルイソシアネート、ノニルイソシアネート、デシルイソシアネート、ドデシルイソシアネート、オクタデシルイソシアネート等の飽和脂肪族イソシアネート;オクテニルイソシアネート、ドデセニルイソシアネート等の不飽和脂肪族イソシアネート等が挙げられる。
【0043】
(ウレア結合形成)
アミド化合物におけるウレア結合は、アミノ基を有するバイオベース材料と、長鎖炭化水素イソシアネートを反応させることで、形成されてもよい。反応時に適宜触媒を利用してもよい。合成方法としては、例えば、有機溶媒中でアミノ基含有バイオベース材料と長鎖炭化水素イソシアネートと数時間反応すれば、アミノ基がイソシアネート基と反応し、ウレア結合と長鎖炭化水素基とを含有するアミド化合物が得られる。ここで、長鎖炭化水素イソシアネートの例としては上記と同様である。
【0044】
[グラフト重合体であるアミド化合物]
アミド化合物はバイオベース材料に長鎖炭化水素基とアミド基とを有する長鎖炭化水素基含有重合体をグラフト修飾してなるグラフト重合体であってよい。グラフト重合体は、バイオベース材料由来である幹部分、及び該幹部分に結合した長鎖炭化水素基含有重合体である枝部分(延長部分、グラフト)の両方を含む。
【0045】
長鎖炭化水素基含有重合体は、炭素数7~40の長鎖炭化水素基を有する長鎖炭化水素基を有する単量体(a)から形成される繰り返し単位を有し、長鎖炭化水素基を有する単量体(a)はアミド単量体(a1)を含む。アクリル単量体(a)はさらに非アミド単量体(a2)を含んでよい。長鎖炭化水素基を有する単量体(a)は単量体(a1)のみからなってもよい。
【0046】
長鎖炭化水素基含有重合体は、親水性基を有するアクリル単量体(b)から形成される繰り返し単位を有してよい。長鎖炭化水素基含有重合体は、イオン供与基を有する単量体(c)から形成される繰り返し単位を有してよい。長鎖炭化水素基含有重合体は、単量体(a)~(c)の単量体以外の他の単量体(d)から形成される繰り返し単位を有していてもよい。
【0047】
(長鎖炭化水素基を有する単量体(a))
長鎖炭化水素基を有する単量体(a)は、炭素数7~40の長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体である。炭素数7~40の長鎖炭化水素基は、炭素数7~40の直鎖状又は分岐状の炭化水素基であることが好ましい。長鎖炭化水素基の炭素数は、10~40、例えば、12~30、特に15~30であることが好ましい。あるいは、長鎖炭化水素基の炭素数は、18~40であってよい。
【0048】
・アミド単量体(a1)
アミド単量体(a1)は長鎖炭化水素基とアミド基を有する。長鎖炭化水素基及びアミド基については上述のとおりであってよい。
【0049】
アミド単量体(a1)は、長鎖炭化水素基と、アミド基とを有し、さらに-O-、-C(=O)-、-S(=O)-、又は-NH-から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される基とを有してよい(メタ)アクリレート又は(メタ)アクリルアミドである。本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを意味する。例えば、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。アクリレートにおけるα位原子は水素原子に限定されず、その他基であってもよい。
【0050】
アミド単量体(a1)は、式:
CH2=C(-X)-C(=O)-Y-Z(-Y-R)
[式中、Rは、それぞれ独立的に、炭素数7~40の長鎖炭化水素基であり、
は、水素原子、一価の有機基又はハロゲン原子であり、
は、-O-又は-NH-であり、
は、それぞれ独立的に、直接結合、-O-、-C(=O)-、-S(=O)-又は-NH-から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される基であり、
Zは、直接結合、あるいは2価又は3価の炭素数1~5の炭化水素基であり、
nは、1又は2である。]
で表され、少なくとも1つのアミド基を有する化合物であってよい。
【0051】
は、長鎖炭化水素基であり、好ましくは脂肪族炭化水素基、特に飽和の長鎖炭化水素基、特別にアルキル基であることが好ましい。長鎖炭化水素基の炭素数は、7以上、10以上、12以上、14以上、16以上、18以上、又は20以上であってよく、好ましくは10以上又は12以上である。長鎖炭化水素基の炭素数は、40以下、35以下、30以下、25以下、22以下、20以下、又は18以下であってよい。好ましくは30以下である。
【0052】
は、水素原子、メチル基、ハロゲン(例えばF、Cl、Br、I。フッ素は除かれてよい。)、置換又は非置換のベンジル基、置換又は非置換のフェニル基であってよい。水素原子、メチル基又は塩素原子であることが好ましい。
【0053】
は、-Y’-、-Y’-Y’-、-Y’-C(=O)-、-C(=O)-Y’-、-Y’-C(=O)-Y’-、-Y’-R’-、-Y’-R’-Y’-、-Y’-R’-Y’-C(=O)-、-Y’-R’-C(=O)-Y’-、-Y’-R’-Y’-C(=O)-Y’-、又は-Y’-R’-Y’-R’-
[式中、Y’はそれぞれ独立して、直接結合、-O-、-NH-又は-S(=O)-であり、
R’は-(CH-(mは1~5の整数である)、炭素数1~5の不飽和結合を有する直鎖状の炭化水素基、炭素数1~5の枝分かれ構造を有する炭化水素基、又は-(CH-C-(CH-(lはそれぞれ独立して0~5の整数であり-C-はフェニレン基である)である。]
であってよい。
【0054】
の具体例は、直接結合、-O-、-NH-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-C(=O)-NH-、-NH-C(=O)-、-NH-S(=O)-、-S(=O)-NH-、-O-C(=O)-NH-、-NH-C(=O)-O-、-NH-C(=O)-NH-、-O-C-、-NH-C-、-O-(CHm-O-、-NH-(CHm-NH-、-O-(CHm-NH-、-NH-(CHm-O-、-O-(CHm-O-C(=O)-、-O-(CHm-C(=O)-O-、-NH-(CHm-O-C(=O)-、-NH-(CHm-C(=O)-O-、-O-(CHm-O-C(=O)-NH-、-O-(CHm-NH-C(=O)-O-、-O-(CHm-C(=O)-NH-、-O-(CHm-NH-C(=O)-、-O-(CHm-NH-C(=O)-NH-、-O-(CHm-O-C-、-NH-(CHm-O-C(=O)-NH-、-NH-(CHm-NH-C(=O)-O-、-NH-(CHm-C(=O)-NH-、-NH-(CHm-NH-C(=O)-、-NH-(CHm-NH-C(=O)-NH-、-NH-(CHm-O-C-、-NH-(CHm-NH-C
[式中、mは1~5の整数である。]
である。
【0055】
は、-O-、-NH-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-C(=O)-NH-、-NH-C(=O)-、-NH-S(=O)-、-S(=O)-NH-、-O-C(=O)-NH-、-NH-C(=O)-O-、-NH-C(=O)-NH-、-O-C-であることが好ましい。Yは、-NH-C(=O)-、-C(=O)-NH-、-O-C(=O)-NH-、-NH-C(=O)-O-又は-NH-C(=O)-NH-であることがさらに好ましい。Yは炭化水素基でないことが好ましい。
【0056】
及びYの少なくとも一方は、アミド基を有することが好ましい。すなわち、YがNH基でない場合は、Yがアミド基を有するし、Yがアミド基を有しない場合は、YがNH基であることが好ましい。
【0057】
Zは、直接結合、あるいは2価又は3価の炭素数1~5の炭化水素基であり、直鎖構造を有しても、枝分かれ構造を有していてもよい。Zの炭素数は、2~4、特に2であることが好ましい。Zの具体例は、直接結合、-CH-、-CHCH-、-CHCHCH-、-CHCHCHCH-、-CHCHCHCHCH-、枝分かれ構造を有する-CHCH=、枝分かれ構造を有する-CH(CH-)CH-、枝分かれ構造を有する-CHCHCH=、枝分かれ構造を有する-CHCHCHCHCH=、枝分かれ構造を有する-CHCH(CH-)CH-、枝分かれ構造を有する-CHCHCHCH=である。
【0058】
Zは直接結合でなくてよく、Y及びZは同時に直接結合でなくてよい。
【0059】
アミド単量体(a1)は、CH2=C(-X)-C(=O)-O-(CHm-NH-C(=O)-R、CH=C(-X)-C(=O)-O-(CH-O-C(=O)-NH-R、CH=C(-X)-C(=O)-O-(CH-NH-C(=O)-O-R、CH=C(-X)-C(=O)-O-(CH-NH-C(=O)-NH-Rであることが好ましい[ここで、R及びXは上記と同意義である。]。
アミド単量体(a1)は、CH2=C(-X)-C(=O)-O-(CHm-NH-C(=O)-Rであることが特に好ましい。
【0060】
アミド単量体(a1)は、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート又はヒドロキシ基含有(メタ)アクリルアミド(例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート又はヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド)又はアミノ基含有(メタ)アクリレート又はアミノ基含有(メタ)アクリルアミド(例えば、アミノアルキル(メタ)アクリレート又はアミノアルキル(メタ)アクリルアミド)と長鎖アルキルイソシアネートを反応させることによって製造できる。長鎖アルキルイソシアネートとしては例えば、ラウリルイソシアネート、ミリスチルイソシアネート、セチルイソシアネート、ステアリルイソシアネート、オレイルイソシアネート、ベヘニルイソシアネート等がある。
【0061】
あるいは、アミド単量体(a1)は、側鎖にイソシアネート基を有する(メタ)アクリレート、例えば、2-メタクリロイルオキシエチルメタクリレートと長鎖アルキルアミン又は長鎖アルキルアルコールを反応させることでも製造できる。長鎖アルキルアミンとしては例えば、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、セチルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、ベヘニルアミン等がある。長鎖アルキルアルコールとしては例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール等がある。
【0062】
アミド単量体(a1)として、以下の構造を例示するこができる。












[上記式中、nは7~40の数であり、mは1~5の数である。]
上記の化学式の化合物は、α位が水素原子であるアクリル化合物であるが、具体例は、α位がメチル基であるメタクル化合物及びα位が塩素原子であるαクロロアクリル化合物であってよい。
アミド単量体(a)の具体例としては、ステアリル(メタ)アクリルアミド、イコシル(メタ)アクリルアミド、ベヘニル(メタ)アクリルアミド等のアルキルアクリルアミド;パルミチン酸アミドエチル(メタ)アクリレート、ステアリン酸アミドエチル(メタ)アクリレート、ベヘニン酸アミドエチル(メタ)アクリレート、ミリスチン酸アミドエチル(メタ)アクリレート、ラウリン酸アミドエチル(メタ)アクリレート、イソステアリン酸エチルアミド(メタ)アクリレート、オレイン酸エチルアミド(メタ)アクリレート、ターシャリーブチルシクロヘキシルカプロン酸アミドエチル(メタ)アクリレート、アダマンタンカルボン酸エチルアミド(メタ)アクリレート、ナフタレンカルボン酸アミドエチル(メタ)アクリレート、アントラセンカルボン酸アミドエチル(メタ)アクリレート、パルミチン酸アミドプロピル(メタ)アクリレート、ステアリン酸アミドプロピル(メタ)アクリレート等のカルボン酸アミドアルキル(メタ)アクリレート;又はこれらの混合物が挙げられる。アミド単量体(a)は、ステアリン酸アミドエチル(メタ)アクリレートであることが好ましい。アミド単量体(a)は、カルボン酸アミドアルキル(メタ)アクリレートであることがよく、中でもステアリン酸アミドエチル(メタ)アクリレートを含む混合物であってよい。ステアリン酸アミドエチル(メタ)アクリレートを含む混合物において、ステアリン酸アミドエチル(メタ)アクリレートの量は、アミド単量体(a)全体の重量に対して、例えば55~99重量%、好ましくは60~85重量%、更に好ましくは65~80重量%であってよく、残りの単量体は、例えば、パルミチン酸アミドエチル(メタ)アクリレートであってよい。
【0063】
長鎖炭化水素基を有するアミド単量体(a1)の融点は10℃以上であることが好ましく、25℃以上であることがより好ましい。
【0064】
・非アミド単量体(a2)
非アミド単量体(a2)は、長鎖炭化水素基を有し、アミド基を有しない単量体(a1)から誘導された繰り返し単位を有する。長鎖炭化水素基については上述のとおりであってよい。
【0065】
非アミド単量体(a2)は、式:
CH2=C(-X)-C(=O)-Y-R
[式中、Rは、炭素数7~40の炭化水素基であり、
は、水素原子、一価の有機基又はハロゲン原子であり、
は、-O-である。]
で示される化合物である。
【0066】
非アミド単量体(a2)は、Yが-O-である長鎖アクリレートエステル単量体であってよい。
【0067】
は、長鎖炭化水素基、好ましくは脂肪族炭化水素基、特に飽和の脂肪族炭化水素基、特別にアルキル基であることが好ましい。長鎖炭化水素基の炭素数は、7以上、10以上、12以上、14以上、16以上、18以上、又は20以上であってよく、好ましくは10以上又は12以上である。長鎖炭化水素基の炭素数は、40以下、35以下、30以下、25以下、22以下、20以下、又は18以下であってよい。好ましくは30以下である。
【0068】
は、水素原子、メチル基、ハロゲン(例えばF、Cl、Br、I。フッ素は除かれてよい。)、置換又は非置換のベンジル基、置換又は非置換のフェニル基であってよい。水素原子、メチル基又は塩素原子であることが好ましい。
【0069】
非アミド単量体(a2)の好ましい具体例は、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イコシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、ステアリルαクロロアクリレート、イコシルαクロロアクリレート、ベヘニルαクロロアクリレート等である。
【0070】
(親水性基単量体(b))
親水性単量体(b)は、親水性基を有するアクリル単量体である。親水性基単量体(b)は、アミド単量体(a)以外の単量体であって、親水性基は、オキシアルキレン基(アルキレン基の炭素数は2~6である。)であることが好ましい。特に、親水性基単量体(b)は、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート及び/又はポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、又はヒドロキシエチルアクリルアミドであることが好ましい。
【0071】
(イオン供与基を有する単量体(c))
イオン供与基を有する単量体(c)は、オレフィン性炭素―炭素二重結合及びイオン供与基を有する単量体であることが好ましい。イオン供与基は、アニオン供与基及び/又はカチオン供与基である。
【0072】
アニオン供与基を有する単量体としては、カルボキシル基、スルホン酸基又はリン酸基を有する単量体が挙げられる。アニオン供与基を有する単量体の具体例は、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、リン酸(メタ)アクリレート、ビニルベンゼンスルホン酸、アクリルアミドターシャリーブチルスルホン酸等、又はそれらの塩である。
【0073】
アニオン供与基の塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、又はアンモニウム塩、例えばメチルアンモニウム塩、エタノールアンモニウム塩、トリエタノールアンモニウム塩等が挙げられる。
【0074】
カチオン供与基を有する単量体において、カチオン供与基の例は、アミノ基、好ましくは、三級アミノ基及び四級アミノ基である。三級アミノ基において、窒素原子に結合する2つの基は、同じか又は異なって、炭素数1~5の脂肪族基(特にアルキル基)、炭素数6~20の芳香族基(アリール基)又は炭素数7~25の芳香脂肪族基(特にアラルキル基、例えばベンジル基(C -CH -))であることが好ましい。四級アミノ基において、窒素原子に結合する3つの基は、同じか又は異なって、炭素数1~5の脂肪族基(特にアルキル基)、炭素数6~20の芳香族基(アリール基)又は炭素数7~25の芳香脂肪族基(特にアラルキル基、例えばベンジル基(C-CH-))であることが好ましい。三級アミノ基及び四級アミノ基において、窒素原子に結合する残りの1つの基が、炭素―炭素二重結合を有していてよい。カチオン供与基は塩の形でもよい。
【0075】
塩であるカチオン供与基は、酸(有機酸又は無機酸)との塩である。有機酸、例えば炭素数1~20のカルボン酸(特に、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ステアリン酸等のモノカルボン酸)が好ましい。ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びそれらの塩が好ましい。
【0076】
(他の単量体(d))
他の単量体(d)は、単量体(a)、(b)及び(c)以外の単量体である。そのような他の単量体としては、エチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、フッ化ビニル、ハロゲン化ビニルスチン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ポリオキシアルキレンモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、メチロール化(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、アルキルビニルエーテル、ハロゲン化アルキルビニルエーテル、アルキルビニルケトン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、グリシジル(メタ)アクリレート、アジリジニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、短鎖アルキル(メタ)アクリレート、無水マレイン酸、ポリジメチルシロキサン基を有する(メタ)アクリレート、N-ビニルカルバゾールが挙げられる。
【0077】
上述した単量体(a)~(d)は、炭素数1以上、3以上、6以上、又は8以上のフルオロアルキル基(特にパーフルオロアルキル基)を有しなくてよい。上述した単量体(a)~(d)はフッ素原子を有しなくてもよい。
【0078】
(グラフト重合体であるアミド化合物の組成等)
【0079】
幹部分(バイオベース材料)と枝部分(脂肪族炭化水素基含有重合体)との合計に対する枝部分の重量比は、1重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、30重量%以上、50重量%以上、70重量%以上、又は90重量%以上であってよい。幹部分(バイオベース材料)と枝部分(脂肪族炭化水素基含有重合体)との合計に対する枝部分の重量比は、95重量%以下、85重量%以下、75重量%以下、65重量%以下、45重量%以下、35重量%以下、25重量%以下、又は15重量%以下であってよい。
【0080】
単量体(a)から形成される繰り返し単位(繰り返し単位(a))の量は、重合体に対して(又は繰り返し単位(a)~(d)の合計に対して)、20重量%以上、30重量%以上、40重量%以上、45重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、又は75重量%以上であってよい。単量体(a)から形成される繰り返し単位(繰り返し単位(a))の量は、重合体に対して(又は繰り返し単位(a)~(d)の合計に対して)、95重量%以下、75重量%以下、60重量%以下、又は50重量%以下であってよい。
【0081】
単量体(a1)から形成される繰り返し単位(繰り返し単位(a1))の量は、重合体に対して(又は繰り返し単位(a)~(d)の合計に対して)、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、30重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、又は60重量%以上であってよい。単量体(a1)から形成される繰り返し単位(繰り返し単位(a1))の量は、重合体に対して(又は繰り返し単位(a)~(d)の合計に対して)、95重量%以下、75重量%以下、60重量%以下、50重量%以下、40重量%以下、又は30重量%以下であってよい。
【0082】
単量体(b)から形成される繰り返し単位(繰り返し単位(b))の量は、重合体に対して(又は繰り返し単位(a)~(d)の合計に対して)、0.1重量%以上、1重量%以上、3重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、20重量%以上、又は30重量%以上であってよい。単量体(b)から形成される繰り返し単位(繰り返し単位(b))の量は、重合体に対して(又は繰り返し単位(a)~(d)の合計に対して)、75重量%以下、60重量%以下、50重量%以下、40重量%以下、30重量%以下、20重量%以下、10重量%以下、又は5重量%以下であってよい。
【0083】
単量体(c)から形成される繰り返し単位(繰り返し単位(c))の量は、重合体に対して(又は繰り返し単位(a)~(d)の合計に対して)、0.1重量%以上、1重量%以上、3重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、20重量%以上、又は30重量%以上であってよい。単量体(c)から形成される繰り返し単位(繰り返し単位(c))の量は、重合体に対して(又は繰り返し単位(a)~(d)の合計に対して)、75重量%以下、60重量%以下、50重量%以下、40重量%以下、30重量%以下、20重量%以下、10重量%以下、又は5重量%以下であってよい。
【0084】
単量体(d)から形成される繰り返し単位(繰り返し単位(d))の量は、重合体に対して(又は繰り返し単位(a)~(d)の合計に対して)、0.1重量%以上、1重量%以上、3重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、20重量%以上、又は30重量%以上であってよい。単量体(d)から形成される繰り返し単位(繰り返し単位(d))の量は、重合体に対して(又は繰り返し単位(a)~(d)の合計に対して)、50重量%以下、40重量%以下、30重量%以下、20重量%以下、10重量%以下、又は5重量%以下であってよい。
【0085】
グラフト重合体の枝部分(長鎖炭化水素基含有重合体)の重量平均分子量は、1000以上、3000以上、5000以上、7500以上、10000以上、又は30000以上であってよい。重合体の重量平均分子量は、10000000以下、5000000以下、1000000以下、500000以下、300000以下、又は100000以下であってよい。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによりポリスチレン換算で求めた値である。グラフト重合については、教科書「重合の原理」(G.G.Odian、Wiley Interscience、1991年、第3版、715-725ページ)等を参考にできる。
【0086】
[重合体の製造方法]
本開示におけるアミド化合物の製造方法としては、バイオベース材料に長鎖炭化水素基とアミド基とを有する重合体をグラフト修飾する工程を含んでもよい。例えば、当業者周知のGrafting-to法、Grafting-from法等を用いることができる。グラフト修飾、グラフト重合については、教科書「重合の原理」(G.G.Odian、Wiley Interscience、1991年、第三版、715-725ページ)等を参考にできる。
【0087】
例えば、枝部分である長鎖炭化水素基含有重合体が先に重合され、得られた重合体が幹部分であるバイオベース材料に対して、化学的に結合させるグラフト修飾手法によって、グラフト重合体であるアミド化合物を得てもよい。化学的に結合させる方法は、特に限定されないが、エーテル化反応、アシル化反応(エステル化、アミド化)、エポキシ基を用いた反応、イソシアネート基を用いた反応を用いることができる。この場合、バイオベース材料と長鎖炭化水素基含有重合体が互いに結合できるように反応性基を有している必要がある。例えば、バイオベース材料のヒドロキシ基と、長鎖炭化水素基含有重合体の有するカルボン酸基とを反応させてもよい。反応を進行させるために、反応触媒等が適宜使用されてよい。
【0088】
例えば、幹部分における官能基を重合開始基として、その重合開始基から幹部分であるグラフト鎖を成長させてもよい。この方法ではバイオベース材料存在下、単量体を重合させることにより、グラフト重合体であるアミド化合物を得てもよい。この方法においては、バイオベース材料側鎖に活性部位(特に遊離基)を形成し、及び次いでその活性部位から単量体(a)~(d)の重合を進行することができる。活性部位の形成は単量体の重合過程における連鎖移動反応により引きおこされてもよい。重合体のラジカル反応末端と活性部位が結合されることにより、グラフト重合体を得てもよい。この方法はヒドロキシ基(例えば、第二級アルコール)を含んでいるバイオベース材料用いる場合において用いられてもよい。
【0089】
長鎖炭化水素基含有重合体を得るために、溶液重合、乳化重合、放射線重合等の種々重合方法を選択できる。例えば水又は有機溶剤を用いた溶液重合や、有機溶剤と水を併用する懸濁重合、界面活性剤を用いる又は自己分散型の乳化重合であってよい。グラフト修飾は、バイオベース材料存在下で行われ、バイオベース材料が分散(好ましくは溶解)する条件下で行われることが好ましい。
【0090】
本開示における長鎖炭化水素基含有重合体の製造方法は、バイオべース材料の存在下、上述した単量体を重合させる工程を含むことが好ましい。本製造方法により、長鎖炭化水素基含有重合体;長鎖炭化水素基含有重合体とバイオベース材料とのクラスタ;及び/又は長鎖炭化水素基含有重合体とバイオ-ス材料との混合物を含んでなる、重合体含有組成物が得られる。本製造方法により得られる重合体又は重合体含有組成物は優れた耐油性能を有し得る。
【0091】
重合開始剤の例として、水溶性重合開始剤、例えば、2,2’-アゾビスイソブチルアミジン2塩酸塩、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオナミジン)塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]硫酸塩水和物、2,2’-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]塩酸塩、過硫酸カリウム、過硫酸バリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、ならびに 油溶性重合開始剤、例えば、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2、4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2、4-ジメチル4-メトキシバレロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(2-イソブチロニトリル)、ベンゾイルパーオキシド、ジ-第三級-ブチルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t-ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、過ピバル酸t-ブチル 等が用いられる。開始剤は酸化剤開始剤、還元剤開始剤、又はレドックス開始剤であってよく、例えば過酸化物と還元剤の組合せ、無機の還元剤と酸化剤の組合せあるいは無機-有機のレドックス対を含んでいてよい。開始剤としてCe4+、V5+、Cr6+及びMn3+から選択された多価のイオンを使用してもよい。開始剤は単量体100重量部に対して、10重量部以下、0.01~5重量部の範囲で用いられてよい。
【0092】
また、分子量調節を目的として、連鎖移動剤、例えば、メルカプト基含有化合物を使用してもよく、その具体例として2-メルカプトエタノール、チオプロピオン酸、アルキルメルカプタン等が挙げられる。連鎖移動剤は単量体100重量部に対して、10重量部以下、0.01~5重量部の範囲で用いられてよい。
【0093】
<耐油剤>
耐油剤は、上述したアミド化合物を含む耐油剤である。耐油剤は、耐油性を有し、さらに耐水性、撥水性、撥油性を有してよい。耐油剤はアミド化合物に加えて、液状媒体(水、有機溶媒又はこれらの混合溶液)を含んでよい。耐油剤は、さらに、界面活性剤、及びその他添加剤等から選択される少なくとも一種を含んでいてよい。
【0094】
アミド化合物の量は、耐油剤に対して0.1重量%以上、1重量%以上、3重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、20重量%以上、又は50重量%以上であってよい。アミド化合物の量は、耐油剤に対して100重量%以下、75重量%以下、50重量%以下、又は25重量%以下であってよい。
【0095】
耐油剤は、水性媒体を含有してよい。液状媒体は水の単独、有機溶媒の単独、又は水と有機溶媒の混合物であり、好ましくは水の単独又は水と有機溶媒の混合物である。
【0096】
液状媒体の量は、耐油剤に対して30重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、75重量%以上、又は90重量%以上であってよい。液状媒体の量は、耐油剤に対して95重量%以下、75重量%以下、又は50重量%以下であってよい。
【0097】
液状媒体が水と有機溶媒の混合物の場合、有機溶媒の量は、液状媒体に対して、3重量%以上、10重量%以上、30重量%以上、50重量%以上、又は75重量%以上であってよい。有機溶媒の量は、液状媒体に対して、90重量%以下、50重量%以下、30重量%以下、又は10重量%以下であってよい。
【0098】
[界面活性剤又は分散剤]
耐油剤は、界面活性剤(乳化剤)又は分散剤を含有しなくてもよいし、あるいは含有していてもよい。一般に、重合中の粒子の安定化、重合後の水分散体の安定化のために、重合時に界面活性剤又は分散剤を少量(例えば、アミド化合物100重量部に対して0.01~45重量部、0.01~30重量部、又は0.01~15重量部)で添加してよく、又は、重合後に界面活性剤又は分散剤を添加してよい。
【0099】
被処理物が繊維製品である場合において特に、耐油剤において、界面活性剤又は分散剤は、ノニオン性界面活性剤を含むことが好ましい。さらに、界面活性剤は、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤から選択された一種以上の界面活性剤を含むことが好ましい。ノニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤の組み合わせを用いることが好ましい。
【0100】
ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤のそれぞれが一種又は二以上の組み合わせであってよい。
【0101】
界面活性剤又は分散剤の量は、アミド化合物量の合計100重量部に対して15重量部以下、10重量部以下、7.5重量部以下、5重量部以下、2.5重量部以下であってよい。界面活性剤又は分散剤の量は、アミド化合物量100重量部に対して0.1重量部以上、1重量部以上、3重量部以上、5重量部以上、7.5重量部以上、又は10重量部以上であってよい。一般に界面活性剤又は分散剤を添加すると、水分散体の安定性や繊維製品への浸透性は向上する。
【0102】
[ブロックイソシアネート化合物]
耐油剤は、ブロックイソシアネート化合物を含有しなくてもよいし、あるいは含有していてもよい。ブロックイソシアネート化合物は重合前に添加されてもよいし、重合後(例えば、重合後キュアリング工程前)に添加されてもよい。
【0103】
ブロックイソシアネート化合物は、イソシアネート(A(NCO)[式中、Aは、イソシアネート化合物からイソシアネート基が除去された後に残る基であり、mは2~8の整数である。]で表される化合物であってよい)をブロック剤(RH[式中、Rは、窒素原子又は酸素原子のようなヘテロ原子によって置換されていてよい炭化水素基であってよく、Hは水素原子である]で表される化合物であってよい)と反応させることによって、製造することができる。
【0104】
A(NCO)は、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等である。R基を形成するブロック剤の例は、オキシム、フェノール、アルコール、メルカプタン、アミド、イミド、イミダゾール、尿素、アミン、イミン、ピラゾール及び活性メチレン化合物等である。
【0105】
ブロックイソシアネート化合物としては、オキシムブロックドトルエンジイソシアネート、ブロックドヘキサメチレンジイソシアネート、ブロックドジフェニルメタンジイソシアネート等のブロックドイソシアネートが好ましい。
【0106】
ブロックイソシアネート化合物の量は、単量体の合計100重量部(又はアミド化合物の合計100重量部)に対して15重量部以下、10重量部以下、7.5重量部以下、5重量部以下、又は2.5重量部以下であってよい。
【0107】
[その他添加剤]
耐油剤は、その他添加剤を含有してもよい。その他添加剤の例は、バインダー樹脂、分散剤、耐水剤、耐油剤、撥水剤、撥油剤、乾燥速度調整剤、架橋剤、造膜助剤、相溶化剤、凍結防止剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、pH調整剤、消泡剤、風合い調整剤、すべり性調整剤、帯電防止剤、親水化剤、抗菌剤、防腐剤、防虫剤、芳香剤、難燃剤、サイズ剤、紙力増強剤等である。その他添加剤の量は、単量体の合計100重量部(又はアミド化合物の合計100重量部)に対して、0.1~20重量部、例えば0.1~10重量部であってよい。
【0108】
[アミド化合物の用途等]
アミド化合物は、耐油剤、耐水剤、撥水剤、撥油剤、防汚剤、汚れ脱離剤、剥離剤又は離型剤等の各種剤又はその成分として使用できる。アミド化合物は、外的処理剤(表面処理剤)又は内的処理剤又はその成分として使用できる。
【0109】
基材がアミド化合物により処理されることで、アミド化合物が基材表面に表面コーティング構造を形成し得る。
【0110】
処理された被処理物(基材)は、撥液性を発現させるために、乾燥され、好ましくは、例えば、共重合体のTg以上の温度、例えば100℃~200℃で加熱されることが好ましい。共重合体のTg以上の温度で処理することにより、基材表面が共重合体に被覆され、さらに側鎖の配列が誘起される。これにより、疎水性に優れた表面コーティング構造が形成され得る。
【0111】
表面コーティング構造は、アミド化合物を従来既知の方法により被処理物(基材)に適用することで、基材表面に共重合体を付着させることで、形成することができる。通常、アミド化合物を有機溶媒又は水に分散して希釈して、浸漬塗布、スプレー塗布、泡塗布等のような既知の方法により、被処理物の表面に付着させ、乾燥する方法が採られる。また、必要ならば、適当な架橋剤(例えば、ブロックイソシアネート化合物)と共に適用し、キュアリングを行ってもよい。さらに、アミド化合物に、防虫剤、柔軟剤、抗菌剤、難燃剤、帯電防止剤、塗料定着剤、防シワ剤、サイズ剤、紙力増強剤等を添加して併用することも可能である。
【0112】
アミド化合物を含む剤で処理される被処理物としては、繊維製品、石材、フィルター(例えば、静電フィルター)、防塵マスク、燃料電池の部品(例えば、ガス拡散電極及びガス拡散支持体)、ガラス、木、皮革、毛皮、石綿、レンガ、セメント、金属及び酸化物、窯業製品、プラスチック、塗面、及びプラスター等を挙げることができる。
【0113】
繊維製品としては、繊維製品としては種々の例を挙げることができるが、例えば布製品や紙製品が挙げられる。
【0114】
布製品の例としては、綿、麻、羊毛、絹等の動植物性天然繊維、ポリアミド、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン等の合成繊維、レーヨン、アセテート等の半合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維、アスベスト繊維等の無機繊維、あるいはこれらの混合繊維が挙げられる。布製品には、織物、編物及び不織布、衣料品形態の布及びカーペットが含まれるが、布とする前の状態の繊維、糸、中間繊維製品(例えば、スライバー又は粗糸等)に対して、処理がなされてもよい。
【0115】
紙製品の例としては、クラフトパルプあるいはサルファイトパルプ等の晒あるいは未晒化学パルプ、砕木パルプ、機械パルプあるいはサーモメカニカルパルプ等の晒あるいは未晒高収率パルプ、新聞古紙、雑誌古紙、段ボール古紙あるいは脱墨古紙等の古紙パルプ等からなる紙、紙でできた容器、紙でできた成形体等が挙げられる。紙製品の具体例としては、食品用包装用紙、石膏ボード原紙、コート原紙、中質紙、一般ライナー及び中芯、中性純白ロール紙、中性ライナー、防錆ライナー及び金属合紙、クラフト紙、中性印刷筆記用紙、中性コート原紙、中性PPC用紙、中性感熱用紙、中性感圧原紙、中性インクジェット用紙及び中性情報用紙、モールド紙(モールド容器)等である。本開示のアミド化合物は高温耐油性に優れるため、高温における耐油性が求められる用途、特に食品包装材に好適に用いられる。
【0116】
アミド化合物は、繊維製品を液体で処理するために知られている方法のいずれかによって繊維状基材(例えば、繊維製品等)に適用することができる。繊維製品が布であるときには、布を溶液に浸してよく、あるいは、布に溶液を付着又は噴霧してよい。処理は外添処理であっても、内添処理であってもよい。繊維製品が紙であるときには、紙に塗工してよく、あるいは、紙に溶液を付着又は噴霧してよく、あるいは、抄造前のパルプスラリーと混合して処理してもよい。処理は外添処理であっても、内添処理であってもよい。
【0117】
アミド化合物を、予め形成した繊維製品(特に紙、布等)に適用してよく、又は、製紙の様々な段階で、例えば、紙の乾燥期間中に適用してもよい。アミド化合物はクリーニング法によって繊維製品に適用してよく、例えば、洗濯適用又はドライクリーニング法等において繊維製品に適用してよい。
【0118】
あるいは、繊維状基材は皮革であってよい。共重合体を、皮革を疎水性及び疎油性にするために、皮革加工の様々な段階で、例えば、皮革の湿潤加工の期間中に、又は、皮革の仕上げの期間中に、水溶液又は水性乳化物から皮革に適用してよい。
【0119】
アミド化合物は外部離型剤としても使用できる。例えば、基材の表面を、他の表面(該基材における他の表面、あるいは他の基材における表面)から容易に剥離することができる。
【0120】
「処理」とは、処理剤を、浸漬、噴霧、塗布等により被処理物に適用することを意味する。処理により、処理剤の有効成分である共重合体が被処理物の内部に浸透する及び/又は被処理物の表面に付着する。
【0121】
<紙用添加剤>
アミド化合物は紙用添加剤に好適に用いることができる。アミド化合物を含む紙用添加剤は耐水剤、耐油剤、撥水剤、撥油剤、として用いることができる。紙用添加剤は、溶液、エマルション又はエアゾールの形態であることが好ましい。紙用添加剤は、アミド化合物及び媒体(例えば、有機溶媒及び水等の液状媒体)を含んでなる。紙用添加剤は、アミド化合物の水分散体であることが好ましい。紙用添加剤において、アミド化合物の濃度は、例えば、0.01~50重量%であってよい。紙用添加剤は、界面活性剤を含まなくてよい。
【0122】
紙用添加剤に含まれる液状媒体(例えば、有機溶媒又は水)の除去は、重合体溶液を(好ましくは減圧下)(例えば、30℃以上、例えば50~120℃に)加熱することによって行える。
【0123】
紙用添加剤の量は、内添においては、アミド化合物の固形分量がパルプ100重量部に対して、0.1重量部以上、0.5%重量部以上、1重量部以上、5重量部以上、10重量部以上、20重量部以上、又は30重量部以上となる量であってよい。紙用添加剤の量は、アミド化合物の固形分量がパルプ100重量部に対して、80重量部以下、60重量部以下、40重量部以下、20重量部以下、又は10重量部以下となる量であってよい。外添においては、耐油層に含まれるアミド化合物の量が0.01g/m以上、0.03g/m以上、0.05g/m以上、0.10g/m以上、0.30g/m以上、又は0.50g以上であってよい。耐油層に含まれるアミド化合物の量は5g/m以下、3g/m以下、2g/m以下、1.5g/m以下、0.30g/m以下、又は0.50g/m以下であってよい。
【0124】
紙用添加剤は、紙基材を処理(例えば、表面処理)するために使用することができる。紙用添加剤は、従来既知の方法により被処理物に適用することができる。通常、紙用添加剤を有機溶剤又は水に分散して希釈して、浸漬塗布、スプレー塗布、泡塗布等のような既知の方法により、被処理物の表面に付着させ、乾燥する方法が採られる(表面処理)。被処理物の紙基材としては、紙、紙でできた容器、紙でできた成形体(例えばパルプモールド)等が挙げられる。本開示のアミド化合物は、紙基材に良好に付着する。ここで付着とは物理的結合又は化学的結合のことをいう。
【0125】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【0126】
[実施例]
次に、実施例を挙げて本開示を具体的に説明する。ただし、これらの説明は本開示を限定するものでない。以下において、部、%又は比は、特記しない限り、重量部、重量%又は重量比を表す。
【0127】
以下において使用した試験方法は次のとおりである。
(耐油性(KIT))
耐油性(KIT法)は、TAPPI T-559cm-02に従って測定した。KIT試験液はひまし油、トルエン、ヘプタンを表1の比率で混合した試験液である。表1に示す試験液1滴を紙の上におき、15秒後に油の浸透状態を観察した。浸透を示さないKIT試験液が与える耐油度の最高点を耐油性とした。KIT試験液の番号が高いほど耐油性が高い。
【0128】
[表1]
【0129】
(耐油性(実用油試験1))
得られた紙皿又は処理紙に市販のオリーブオイルを約1g(処理紙は約0.1g)たらし、室温(20℃)で15分放置した後に、紙皿又は処理紙の裏側の染込み具合を観察した。裏側の染込みの程度により、以下のように評価数値を設定した。
5:0-5%
4:6-20%
3:21-50%
2:51-75%
1:76-100%
【0130】
(耐油性(実用油試験2))
容器状に成形したパルプモールド製品に80℃の評価液(コーン油)を100ml注ぎ入れ、30分間静置した後に評価液を廃棄して、パルプモールド製品(容器)への評価液の染み具合を下記の基準に従い目視で評価した。
4:パルプモールド容器底の内側に油染みがほぼ見られない
3:パルプモールド容器底の外側に油染みが見られない
2:パルプモールド容器底の外側の面積の5%未満に油染みが見られる
1:パルプモールド容器底の外側の面積の5%以上50%未満に油染みが見られる
0:パルプモールド容器底の外側の面積の50%以上に油染みが見られる
【0131】
(耐水性(実用水試験))
容器状に成形したパルプモールド製品に80℃の評価液(水道水)を100ml注ぎ入れ、30分間静置した後に評価液を廃棄して、パルプモールド製品(容器)への評価液の染み具合を下記の基準に従い目視で評価した。
4:パルプモールド容器底の内側に水の染みがほぼ見られない
3:パルプモールド容器底の外側に水の染みが見られない
2:パルプモールド容器底の外側の面積の5%未満に水の染みが見られる
1:パルプモールド容器底の外側の面積の5%以上50%未満に水の染みが見られる
0:パルプモールド容器底の外側の面積の50%以上に水の染みが見られる
【0132】
(合成例1)
撹拌機及び加熱器を備えた反応装置で、加工タピオカ澱粉(商品名:TSK-13、日本食品化工株式会社製品)60部を撹拌下のもと水700部中で懸濁させ、90℃まで昇温、糊化させた。ステアリン酸アミドエチルアクリレート(C18AmEA、融点:70℃)15.0部、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド11.9部を80℃で溶解し、上記の糊化した澱粉溶液中で超音波により乳化し、液滴の平均粒子径が500nm以下となるように微分散した。次いで、開始剤の硝酸2アンモニウムセリウム1.32部を加え、この混合物を窒素雰囲気下、60℃、5時間混合撹拌してグラフト重合させた。得られた澱粉グラフト重合体含有溶液の固形分は10重量%であった。
【0133】
(合成例2)
グルコン酸 32.7部をステアリン酸モノエタノールアミド24.6部とドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA)2.5部の水溶液300部に添加し、75℃で10時間攪拌した。反応溶液は、白色に濁ったエマルジョンとなった。10時間経過後、NaHCO3を加えて反応を停止した。粗生成物を酢酸エチルで抽出し、食塩水で洗浄してNa2SO4上で乾燥させた後、脱溶剤して、反応生成物を得た。反応生成物に水100部に分散させ、固形分10重量%に調整した。
【0134】
(合成例3)
撹拌機及び加熱器を備えた反応装置で、スクロース60部を撹拌下のもと水700部中で懸濁させ、90℃まで昇温、糊化させた。ステアリン酸アミドエチルアクリレート(C18AmEA、融点:70℃)15.0部、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド11.9部を80℃で溶解し、上記の糊化した澱粉溶液中で超音波により乳化し、液滴の平均粒子径が500nm以下となるように微分散した。次いで、開始剤の硝酸2アンモニウムセリウム1.32部を加え、この混合物を窒素雰囲気下、60℃、5時間混合撹拌してグラフト重合させた。得られた澱粉グラフト重合体含有溶液の固形分は10重量%であった。
【0135】
(比較合成例1)
グルコン酸 32.7部をステアリルアルコール24.6部とドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA、2.5部)の水溶液300部に添加し、75℃で10時間攪拌した。反応溶液は、白色に濁ったエマルジョンとなった。10時間経過後、NaHCO3を加えて反応を停止した。粗生成物を酢酸エチルで抽出し、食塩水で洗浄してNa2SO4上で乾燥させた後、脱溶剤して、反応生成物を得た。反応生成物に水100部を加え、固形分10重量%に調整した。
【0136】
(比較合成例2)
撹拌機及び加熱器を備えた反応装置で、溶媒のメチルエチルケトン(MEK)を100部添加し、撹拌下、ステアリルアクリレート(StA、融点:30℃)を100部の単量体、および開始剤のパーブチルPV1.2部をこの順に添加した。この混合物を65-75℃の窒素雰囲気下で12時間混合撹拌して共重合を行った。得られた共重合体含有溶液の固形分濃度は50重量%であった。
後処理として、得られた共重合体溶液の50gに0.4%の酢酸水溶液142gを添加し、分散させた後、エバポレーターを用いて加熱、減圧下でMEKを留去し、淡褐色の共重合水分散液(揮発性有機溶媒の含有量は1重量%以下)を得た。この水分散液にさらにイオン交換水を加えて固形分濃度15重量%である水分散液を得た。
【0137】
(実施例1)
[外添法での評価]
木材パルプとして、LBKP(広葉樹漂白クラフトパルプ)とNBKP(針葉樹漂白クラフトパルプ)の重量比率が、60重量%と40重量%で、かつ、パルプのろ水度が400ml(Canadian Standard Freeness)のパルプスラリーを調製し、このパルプスラリーに湿潤紙力増強剤、サイズ剤を添加して長網抄紙機により、紙密度が0.58g/cmの坪量45g/m の紙を外添処理(サイズプレス処理)の原紙として使用した。この原紙の耐油性(KIT値)は0であった。
【0138】
合成例1で得られたアミド化合物の水分散液を耐油剤として用い、以下の処方により、耐油紙(加工紙)を得た。処理液は、合成例1で得られたアミド化合物の水分散液を固形分濃度が2.4重量%、かつ、ヒドロキシエチル化デンプン(商品名:Penford290、Penford社製品)の固形分濃度が7%となるように調製し、サイズプレス機で処理した後、ドラムドライヤーで乾燥し、耐油紙(加工紙)を得た。得られた耐油紙のデンプンとアミド化合物の固形分の塗工量は1.3g/m(共重合体の塗工量は0.33g/m)であった。得られた原紙を試験紙として用い、試験を行った。結果を表1に示す(KIT値、実用油試験1)。
【0139】
[内添法での評価]
ろ水度が550cc(カナディアンフリーネス)に、叩解した70部の広葉樹漂白クラフトパルプと30部の針葉樹漂白クラフトパルプとの混合物の0.5重量%の水分散液2400gをかき混ぜながら添加し、次いでアルキルケテンダイマー(AKD)(Solenis製Hercon(登録商標)79)の5%固形分水溶液を0.18g添加して1分間撹拌し続け、次いで合成例1のアミド化合物の水分散液を水で固形分10%に希釈したもの36gを添加して撹拌を1分間続けた。
【0140】
上記パルプスラリーを、金属製の槽の中に入れた。その槽の下部には、多数の吸引孔を設けた金属製のパルプモールド成形型を、その上に網状体を配置した状態で存在させた。パルプモールド成形型の網状体が配置された側と反対側から、真空ポンプにより、パルプ含有水性組成物をパルプモールド成形型および網状体を介して吸引・脱水して、パルプ含有水性組成物に含まれる固形分(パルプ等)を網状体の上に堆積させて、パルプモールド中間体を得た。次に、得られたパルプモールド中間体を、60~200℃に加温された金属製のオスメス成形型で上下から加圧して乾燥させた。これにより、容器の形状に成形されたパルプモールド製品を製造した。得られたパルプモールド製品におけるパルプに対する各成分の含有割合および高温耐油性能(実用耐油試験2)、高温耐水性能(実用水試験)を評価した結果を表1に示す。
【0141】
(実施例2)
実施例1における合成例1のアミド化合物の水分散液に代えて、合成例2のアミド化合物の水分散液を用いる他は、実施例1と同様に実験を行った。
得られた耐油紙のデンプンとアミド化合物の固形分の塗工量は0.9g/m (共重合体の塗工量は0.23g/m)であった。試験を行った結果を表1に示す。
さらに、得られたパルプモールド製品における評価した結果を表1に示す。
【0142】
(実施例3)
実施例1における合成例1のアミド化合物の水分散液に代えて、合成例3のアミド化合物の水分散液を用いる他は、実施例1と同様に実験を行った。
得られた耐油紙のデンプンとアミド化合物の固形分の塗工量は1.0g/m (共重合体の塗工量は0.26g/m)であった。試験を行った結果を表1に示す。
さらに、得られたパルプモールド製品における評価した結果を表1に示す。
【0143】
(比較例1)
実施例1における合成例1のアミド化合物の水分散液に代えて、比較合成例2のエステル化合物の水分散液を用いる他は、実施例1と同様に実験を行った。
得られた耐油紙のデンプンとエステル化合物の固形分の塗工量は0.8g/m (共重合体の塗工量は0.20g/m )であった。試験を行った結果を表1に示す。
さらに、得られたパルプモールド製品における評価した結果を表1に示す。
【0144】
(比較例2)
実施例1における合成例1のアミド化合物の水分散液に代えて、比較合成例3のエステル化合物の水分散液を用いる他は、実施例1と同様に実験を行った。
得られた耐油紙のデンプンとエステル化合物の固形分の塗工量は1.1g/m (共重合体の塗工量は0.28g/m )であった。試験を行った結果を表1に示す。
さらに、得られたパルプモールド製品における評価した結果を表1に示す。
[表1]