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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/13 20060101AFI20240417BHJP
   B60C 5/00 20060101ALI20240417BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
B60C11/13 B
B60C5/00 H
B60C11/03 Z
B60C11/03 100B
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2022572958
(86)(22)【出願日】2021-12-07
(86)【国際出願番号】 JP2021045019
(87)【国際公開番号】W WO2022145182
(87)【国際公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2020219405
(32)【優先日】2020-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021175912
(32)【優先日】2021-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【弁理士】
【氏名又は名称】赤木 啓二
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(72)【発明者】
【氏名】國中 瑞
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-012372(JP,A)
【文献】特開2020-200018(JP,A)
【文献】特開2017-024662(JP,A)
【文献】特開2012-116389(JP,A)
【文献】特開2009-040156(JP,A)
【文献】特開2014-076764(JP,A)
【文献】特開2017-030557(JP,A)
【文献】国際公開第2005/115770(WO,A1)
【文献】特開2009-090680(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0014245(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03323639(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 5/00
B60C 11/00-11/03
B60C 11/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に対する装着方向が指定されており、かつトレッド部のトレッド面に複数の周方向主溝を備えている、空気入りタイヤであって、
タイヤ平面視において、
前記周方向主溝の溝中心線が、タイヤ周方向に進むにつれてタイヤ幅方向に周期的に変位し、かつ
前記周方向主溝の車両装着内側の縁部に、面取り幅が一定である車両装着内側面取り部が形成され
複数の前記周方向主溝のうち少なくとも最も車両装着内側に配置されている前記周方向主溝の車両装着外側の縁部に、面取り幅が一定である車両装着外側面取り部が形成され、 前記車両装着内側面取り部の面取り幅をW AI とするとともに、前記車両装着外側面取り部の面取り幅をW AO としたときに、以下の式(1)を満たす、ことを特徴とする空気入りタイヤ。
AO <W AI (1)
【請求項2】
車両に対する装着方向が指定されており、かつトレッド部のトレッド面に複数の周方向主溝を備えている、空気入りタイヤであって、
タイヤ平面視において、
前記周方向主溝の溝中心線が、タイヤ周方向に進むにつれてタイヤ幅方向に周期的に変位し、かつ
前記周方向主溝の車両装着内側の縁部に、面取り幅が一定である車両装着内側面取り部が形成され
隣り合う2つの前記周方向主溝の全ての組み合わせにおいて、車両装着内側の前記周方向主溝の平均溝幅が、車両装着外側の前記周方向主溝の平均溝幅よりも大きい、ことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項3】
車両に対する装着方向が指定されており、かつトレッド部のトレッド面に複数の周方向主溝を備えている、空気入りタイヤであって、
タイヤ平面視において、
前記周方向主溝の溝中心線が、タイヤ周方向に進むにつれてタイヤ幅方向に周期的に変位し、かつ
前記周方向主溝の車両装着内側の縁部に、面取り幅が一定である車両装着内側面取り部が形成され
タイヤ子午断面視において、
複数の前記周方向主溝のうち、少なくとも最も車両装着内側に配置されている前記周方向主溝に関して、
タイヤ径方向に対する前記周方向主溝の車両装着内側溝壁の傾斜角度をθ GI とするとともに、タイヤ径方向に対する前記周方向主溝の車両装着外側溝壁の傾斜角度をθ GO としたときに、以下の式(4)を満たす、ことを特徴とする空気入りタイヤ。
θ GI <θ GO (4)
【請求項4】
タイヤ赤道面を基準とした車両装着内側の前記周方向主溝の溝総面積をSSIとするとともに、タイヤ赤道面を基準とした車両装着外側の前記周方向主溝の溝総面積をSSOとしたときに、以下の式(2)を満たす、請求項1から3のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
SO<SSI (2)
【請求項5】
隣り合う2つの前記周方向主溝のいずれか一組に関して、車両装着内側の前記周方向主溝の平均溝幅は、車両装着外側の前記周方向主溝の平均溝幅よりも大きい、請求項1から4のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
タイヤ子午断面視において、
前記周方向主溝が無いとした場合のタイヤ表面プロファイルから前記周方向主溝の溝底までのタイヤ径方向長さの最大値をdとするとともに、前記タイヤ表面プロファイルから前記車両装着内側面取り部のタイヤ径方向最内位置までのタイヤ径方向長さの最大値をdCIとしたときに、以下の式(3)を満たす、請求項1から5のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
0.05<dCI/d<0.40 (3)
【請求項7】
第1の傾斜溝、第2の傾斜溝、第3の傾斜溝、及び第4の傾斜溝を更に有しており、
前記第1の傾斜溝は、複数の前記周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている前記周方向主溝を起点として車両装着各側に延在しており、車両装着外側方向の終端部が、複数の前記周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている前記周方向主溝の車両装着外側に隣接している陸部内で終端しており、かつ車両装着内側方向の終端部が、複数の前記周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている前記周方向主溝の車両装着内側に隣接している陸部内で終端しており、
前記第2の傾斜溝は、複数の前記周方向主溝のうち最も車両装着外側に配置されている前記周方向主溝を起点として車両装着外側に延在しており、車両装着外側方向の終端部が、複数の前記周方向主溝のうち最も車両装着外側に配置されている前記周方向主溝の車両装着外側に隣接している陸部内で終端しており、かつ車両装着内側方向の終端部が、複数の前記周方向主溝のうち最も車両装着外側に配置されている前記周方向主溝に連通して終端しており、
前記第3の傾斜溝は、複数の前記周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている前記周方向主溝の車両装着内側に隣接している陸部内でその両端が終端するようにして配置されており、
前記第4の傾斜溝は、複数の前記周方向主溝のうち最も車両装着外側に配置されている前記周方向主溝の車両装着外側に隣接している陸部内でその両端が終端するようにして配置されている、
請求項1から6のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
複数の前記周方向主溝のうち最も車両装着外側に配置されている前記周方向主溝の車両装着外側に隣接している陸部内でその両端が終端するようにして配置されており、かつ前記第4の傾斜溝よりも溝の長さが短い、第5の傾斜溝を更に有している、請求項7に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
タイヤ幅方向に関して、前記第3の傾斜溝及び前記第4の傾斜溝は、接地端に跨って延在しており、かつ前記第5の傾斜溝は、前記接地端よりもタイヤ赤道面側で終端している、請求項8に記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記第2の傾斜溝、前記第3の傾斜溝、及び前記第4の傾斜溝それぞれがタイヤ幅方向とのなす鋭角の向きは、前記第1の傾斜溝がタイヤ幅方向とのなす鋭角の向きと等しく、前記第5の傾斜溝がタイヤ幅方向とのなす鋭角の向きは、前記第1の傾斜溝がタイヤ幅方向とのなす鋭角の向きと異なる、請求項8又は9に記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
前記第2の傾斜溝及び前記第4の傾斜溝それぞれがタイヤ幅方向とのなす鋭角の向きは、前記第1の傾斜溝がタイヤ幅方向とのなす鋭角の向きと等しく、前記第3の傾斜溝がタイヤ幅方向とのなす鋭角の向きは、前記第1の傾斜溝がタイヤ幅方向とのなす鋭角の向きと異なる、請求項7から9のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項12】
タイヤ周方向に関して、
前記第3の傾斜溝の車両装着外側の終端部は、互いに隣接する2つの前記第1の傾斜溝の車両装着内側の端部の間で終端しており、かつ/又は
前記第4の傾斜溝の車両装着内側の終端部は、互いに隣接する2つの前記第2の傾斜溝の車両装着外側の端部の間で終端している、
請求項7から11のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項13】
前記第1の傾斜溝は、複数の前記周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている前記周方向主溝のうち車両装着内側に凸となる部分及び車両装着外側に凹となる部分と連通するようにして、車両装着各側に延在している、請求項7から12のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項14】
前記第2の傾斜溝の車両装着内側の終端部は、複数の前記周方向主溝のうち最も車両装着外側に配置されている前記周方向主溝のうち車両装着外側に凸である部分と連通している、請求項7から13のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項15】
第1の傾斜溝のうち、複数の前記周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている前記周方向主溝から車両装着外側に延在する部分のタイヤ幅方向の長さをLIG1とし、かつ複数の前記周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている前記周方向主溝の車両装着外側に隣接している陸部のタイヤ幅方向の長さをLとしたときに、以下の式(5)を満たす、請求項7から14のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
0.20<LIG1/L<0.60 (5)
【請求項16】
前記第2の傾斜溝の車両装着外側方向の終端部は、
タイヤ周方向に関して隣り合う2つの前記第4の傾斜溝間で終端しており、かつ隣り合う2つの前記第4の傾斜溝のうちの一方から他方までのタイヤ周方向の長さをLG4G4とし、かつ隣り合う2つの前記第4の傾斜溝のうちの一方から前記第2の傾斜溝の終端部までのタイヤ周方向の長さをLG2G4としたときに、以下の式(6)を満たす、請求項7から15のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
0.40<LG2G4/LG4G4<0.60 (6)
【請求項17】
タイヤ子午断面視において、前記周方向主溝及び各傾斜溝が無いとした場合のタイヤ表面プロファイルから前記周方向主溝の溝底までのタイヤ径方向長さの最大値をdとするとともに、前記タイヤ表面プロファイルから前記第1の傾斜溝、前記第2の傾斜溝、前記第3の傾斜溝、及び前記第4の傾斜溝の溝底までのタイヤ径方向長さの最大値を、それぞれdIG1、dIG2、dIG3、及びdIG4としたときに、以下の式(7)から(10)を満たす、請求項7から16のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
0.05<dIG1/d<0.85 (7)
0.05<dIG2/d<0.85 (8)
0.05<dIG3/d<0.85 (9) 0.05<dIG4/d<0.85 (10)
【請求項18】
タイヤ子午断面視において、前記周方向主溝及び各傾斜溝が無いとした場合のタイヤ表面プロファイルから複数の前記周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている前記周方向主溝の溝底までのタイヤ径方向長さの最大値をdG1とするとともに、前記タイヤ表面プロファイルから前記第1の傾斜溝のうち複数の前記周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている前記周方向主溝を起点として車両装着外側の部分における溝底までのタイヤ径方向長さの最大値をdIG1’、前記第1の傾斜溝のうち複数の前記周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている前記周方向主溝を起点として車両装着内側の部分における溝底までのタイヤ径方向長さの最大値をdIG1’’としたときに、以下の式(11)を満たす、請求項7から17のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
IG1’<dIG1’’<dG1 (11)
【請求項19】
前記第1の傾斜溝のうち、複数の前記周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている前記周方向主溝から車両装着外側に延在する部分のタイヤ幅方向の長さをLIG1とし、かつ前記第1の傾斜溝のうち、複数の前記周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている前記周方向主溝から車両装着内側に延在する部分のタイヤ幅方向の長さをLIG2としたときに、以下の式(12)を満たす、請求項7から18のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
IG1<LIG2 (12)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ウェット操縦安定性とドライ操縦安定性を向上させた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、トレッド部のトレッド面にタイヤ周方向に沿って延在する4本の主溝を有している空気入りタイヤを、開示している。同文献において、主溝は、溝幅をタイヤ周方向で一定とされて周期的に振幅を有する波状に形成されている。
【0003】
また、特許文献1によれば、各主溝が周期的に振幅を有する波状に形成されているため、主溝が全体として拡幅されて排水性が良好となり、湿潤路面での制動性能を維持することができる。また、各主溝が溝幅をタイヤ周方向で一定とされているため、各主溝により形成される各陸部の主溝付近の剛性が均一化されるので、耐摩耗性能を向上することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-24657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1が開示するような空気入りタイヤのように、周期的に振幅を有する波状を有している主溝を有する空気入りタイヤは、排水性等のウェット操縦安定性及び耐摩耗性等のドライ操縦安定性を兼ね備えている。
【0006】
しかしながら、更に高いウェット操縦安定性及びドライ操縦安定性を兼ね備えた空気入りタイヤが求められている。
【0007】
本開示は、ウェット操縦安定性とドライ操縦安定性を両立させた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示者は、以下の手段により上記課題を達成することができることを見出した:
《態様1》
車両に対する装着方向が指定されており、かつトレッド部のトレッド面に複数の周方向主溝を備えている、空気入りタイヤであって、
タイヤ平面視において、
前記周方向主溝の溝中心線が、タイヤ周方向に進むにつれてタイヤ幅方向に周期的に変位し、かつ
前記周方向主溝の車両装着内側の縁部に、面取り幅が一定である車両装着内側面取り部が形成されている、
ことを特徴とする空気入りタイヤ。
《態様2》
複数の前記周方向主溝のうち少なくとも最も車両装着内側に配置されている前記周方向主溝の車両装着外側の縁部に、面取り幅が一定である車両装着外側面取り部が形成されている、態様1に記載の空気入りタイヤ。
《態様3》
前記車両装着内側面取り部の面取り幅をWAIとするとともに、前記車両装着外側面取り部の面取り幅をWAOとしたときに、以下の式(1)を満たす、態様2に記載の空気入りタイヤ。
AO<WAI (1)
《態様4》
タイヤ赤道面を基準とした車両装着内側の前記周方向主溝の溝総面積をSSIとするとともに、タイヤ赤道面を基準とした車両装着外側の前記周方向主溝の溝総面積をSSOとしたときに、以下の式(2)を満たす、態様1から3のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
SO<SSI (2)
《態様5》
隣り合う2つの前記周方向主溝に関して、車両装着内側の前記周方向主溝の平均溝幅は、車両装着外側の前記周方向主溝の平均溝幅よりも大きい、態様1から4のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
《態様6》
隣り合う2つの前記周方向主溝の全ての組み合わせにおいて、車両装着内側の前記周方向主溝の平均溝幅が、車両装着外側の前記周方向主溝の平均溝幅よりも大きい、態様1から5のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
《態様7》
タイヤ子午断面視において、
前記周方向主溝が無いとした場合のタイヤ表面プロファイルから前記周方向主溝の溝底までのタイヤ径方向長さの最大値をdとするとともに、前記タイヤ表面プロファイルから前記車両装着内側面取り部のタイヤ径方向最内位置までのタイヤ径方向長さの最大値をdCIとしたときに、以下の式(3)を満たす、態様1から6のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
0.05<dCI/d<0.40 (3)
《態様8》
タイヤ子午断面視において、
複数の前記周方向主溝のうち、少なくとも最も車両装着内側に配置されている前記周方向主溝に関して、
タイヤ径方向に対する前記周方向主溝の車両装着内側溝壁の傾斜角度をθGIとするとともに、タイヤ径方向に対する前記周方向主溝の車両装着外側溝壁の傾斜角度をθGOとしたときに、以下の式(4)を満たす、態様1から7のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
θGI<θGO (4)
《態様9》
第1の傾斜溝、第2の傾斜溝、第3の傾斜溝、及び第4の傾斜溝を更に有しており、
前記第1の傾斜溝は、複数の前記周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている前記周方向主溝を起点として車両装着各側に延在しており、車両装着外側方向の終端部が、複数の前記周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている前記周方向主溝の車両装着外側に隣接している陸部内で終端しており、かつ車両装着内側方向の終端部が、複数の前記周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている前記周方向主溝の車両装着内側に隣接している陸部内で終端しており、
前記第2の傾斜溝は、複数の前記周方向主溝のうち最も車両装着外側に配置されている前記周方向主溝を起点として車両装着外側に延在しており、車両装着外側方向の終端部が、複数の前記周方向主溝のうち最も車両装着外側に配置されている前記周方向主溝の車両装着外側に隣接している陸部内で終端しており、かつ車両装着内側方向の終端部が、複数の前記周方向主溝のうち最も車両装着外側に配置されている前記周方向主溝に連通して終端しており、
前記第3の傾斜溝は、複数の前記周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている前記周方向主溝の車両装着内側に隣接している陸部内でその両端が終端するようにして配置されており、
前記第4の傾斜溝は、複数の前記周方向主溝のうち最も車両装着外側に配置されている前記周方向主溝の車両装着外側に隣接している陸部内でその両端が終端するようにして配置されている、
態様1から8のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
《態様10》
複数の前記周方向主溝のうち最も車両装着外側に配置されている前記周方向主溝の車両装着外側に隣接している陸部内でその両端が終端するようにして配置されており、かつ前記第4の傾斜溝よりも溝の長さが短い、第5の傾斜溝を更に有している、態様9に記載の空気入りタイヤ。
《態様11》
タイヤ幅方向に関して、前記第3の傾斜溝及び前記第4の傾斜溝は、接地端に跨って延在しており、かつ前記第5の傾斜溝は、前記接地端よりもタイヤ赤道面側で終端している、
態様10に記載の空気入りタイヤ。
《態様12》
前記第2の傾斜溝、前記第3の傾斜溝、及び前記第4の傾斜溝それぞれがタイヤ幅方向とのなす鋭角の向きは、前記第1の傾斜溝がタイヤ幅方向とのなす鋭角の向きと等しく、前記第5の傾斜溝がタイヤ幅方向とのなす鋭角の向きは、前記第1の傾斜溝がタイヤ幅方向とのなす鋭角の向きと異なる、
態様10又は11に記載の空気入りタイヤ。
《態様13》
前記第2の傾斜溝及び前記第4の傾斜溝それぞれがタイヤ幅方向とのなす鋭角の向きは、前記第1の傾斜溝がタイヤ幅方向とのなす鋭角の向きと等しく、前記第3の傾斜溝がタイヤ幅方向とのなす鋭角の向きは、前記第1の傾斜溝がタイヤ幅方向とのなす鋭角の向きと異なる、
態様9から11のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
《態様14》
タイヤ周方向に関して、
前記第3の傾斜溝の車両装着外側の終端部は、互いに隣接する2つの前記第1の傾斜溝の車両装着内側の端部の間で終端しており、かつ/又は
前記第4の傾斜溝の車両装着内側の終端部は、互いに隣接する2つの前記第2の傾斜溝の車両装着外側の端部の間で終端している、
態様9から13のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
《態様15》
前記第1の傾斜溝は、複数の前記周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている前記周方向主溝のうち車両装着内側に凸となる部分及び車両装着外側に凹となる部分と連通するようにして、車両装着各側に延在している、
態様9から14のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
《態様16》
前記第2の傾斜溝の車両装着内側の終端部は、複数の前記周方向主溝のうち最も車両装着外側に配置されている前記周方向主溝のうち車両装着外側に凸である部分と連通している、
態様9から15のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
《態様17》
第1の傾斜溝のうち、複数の前記周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている前記周方向主溝から車両装着外側に延在する部分のタイヤ幅方向の長さをLIG1とし、かつ複数の前記周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている前記周方向主溝の車両装着外側に隣接している陸部のタイヤ幅方向の長さをLとしたときに、以下の式(5)を満たす、態様9から16のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
0.20<LIG1/L<0.60 (5)
《態様18》
前記第2の傾斜溝の車両装着外側方向の終端部は、
タイヤ周方向に関して隣り合う2つの前記第4の傾斜溝間で終端しており、かつ隣り合う2つの前記第4の傾斜溝のうちの一方から他方までのタイヤ周方向の長さをLG4G4とし、かつ隣り合う2つの前記第4の傾斜溝のうちの一方から前記第2の傾斜溝の終端部までのタイヤ周方向の長さをLG2G4としたときに、以下の式(6)を満たす、態様9から17のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
0.40<LG2G4/LG4G4<0.60 (6)
《態様19》
タイヤ子午断面視において、前記周方向主溝及び各傾斜溝が無いとした場合のタイヤ表面プロファイルから前記周方向主溝の溝底までのタイヤ径方向長さの最大値をdとするとともに、前記タイヤ表面プロファイルから前記第1の傾斜溝、前記第2の傾斜溝、前記第3の傾斜溝、及び前記第4の傾斜溝の溝底までのタイヤ径方向長さの最大値を、それぞれdIG1、dIG2、dIG3、及びdIG4としたときに、以下の式(7)~(10)を満たす、態様9から18のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
0.05<dIG1/d<0.85 (7)
0.05<dIG2/d<0.85 (8)
0.05<dIG3/d<0.85 (9)
0.05<dIG4/d<0.85 (10)
《態様20》
タイヤ子午断面視において、前記周方向主溝及び各傾斜溝が無いとした場合のタイヤ表面プロファイルから複数の前記周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている前記周方向主溝の溝底までのタイヤ径方向長さの最大値をdG1とするとともに、前記タイヤ表面プロファイルから前記第1の傾斜溝のうち複数の前記周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている前記周方向主溝を起点として車両装着外側の部分における溝底までのタイヤ径方向長さの最大値をdIG1’、前記第1の傾斜溝のうち複数の前記周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている前記周方向主溝を起点として車両装着内側の部分における溝底までのタイヤ径方向長さの最大値をdIG1’’としたときに、以下の式(11)を満たす、態様9から19のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
IG1’<dIG1’’<dG1 (11)
《態様21》
前記第1の傾斜溝のうち、複数の前記周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている前記周方向主溝から車両装着外側に延在する部分のタイヤ幅方向の長さをLIG1とし、かつ前記第1の傾斜溝のうち、複数の前記周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている前記周方向主溝から車両装着内側に延在する部分のタイヤ幅方向の長さをLIG2としたときに、以下の式(12)を満たす、態様9から20のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
IG1<LIG2 (12)
《態様22》
車両に対する装着方向が指定されており、かつトレッド部のトレッド面に複数の周方向主溝、第1の傾斜溝、及び第2の傾斜溝を備えている、空気入りタイヤであって、
タイヤ平面視において、
前記周方向主溝の溝中心線が、タイヤ周方向に進むにつれてタイヤ幅方向に周期的に変位し、
前記第1の傾斜溝は、複数の前記周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている前記周方向主溝を起点として車両装着各側に延在しており、
前記第2の傾斜溝は、複数の前記周方向主溝のうち最も車両装着外側に配置されている前記周方向主溝を起点として車両装着外側に延在している、
空気入りタイヤ。
《態様23》
前記第1の傾斜溝は、車両装着外側方向の終端部が、複数の前記周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている前記周方向主溝の車両装着外側に隣接している陸部内で終端しており、かつ車両装着内側方向の終端部が、複数の前記周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている前記周方向主溝の車両装着内側に隣接している陸部内で終端している、態様22に記載の空気入りタイヤ。
《態様24》
前記第2の傾斜溝は、車両装着外側方向の終端部が、複数の前記周方向主溝のうち最も車両装着外側に配置されている前記周方向主溝の車両装着外側に隣接している陸部内で終端しており、かつ車両装着内側方向の終端部が、複数の前記周方向主溝のうち最も車両装着外側に配置されている前記周方向主溝に連通して終端している、態様22又は23に記載の空気入りタイヤ。
《態様25》
前記第1の傾斜溝のうち、複数の前記周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている前記周方向主溝から車両装着外側に延在する部分のタイヤ幅方向の長さをLIG1とし、かつ前記第1の傾斜溝のうち、複数の前記周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている前記周方向主溝から車両装着内側に延在する部分のタイヤ幅方向の長さをLIG2としたときに、以下の式(13)を満たす、態様22から24のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
IG1<LIG2 (13)
《態様26》
前記第1の傾斜溝は、複数の前記周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている前記周方向主溝のうち車両装着内側に凸となる部分及び車両装着外側に凹となる部分と連通するようにして、車両装着各側に延在している、
態様22から25のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
《態様27》
前記第1の傾斜溝のうち、複数の前記周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている前記周方向主溝から車両装着外側に延在する部分のタイヤ幅方向の長さをLIG1とし、かつ複数の前記周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている前記周方向主溝の車両装着外側に隣接している陸部のタイヤ幅方向の長さをLとしたときに、以下の式(14)を満たす、態様22から26のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
0.20<LIG1/L<0.60 (14)
《態様28》
タイヤ子午断面視において、前記周方向主溝及び各傾斜溝が無いとした場合のタイヤ表面プロファイルから複数の前記周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている前記周方向主溝の溝底までのタイヤ径方向長さの最大値をdG1とするとともに、前記タイヤ表面プロファイルから前記第1の傾斜溝のうち複数の前記周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている前記周方向主溝を起点として車両装着外側の部分における溝底までのタイヤ径方向長さの最大値をdIG1’、前記第1の傾斜溝のうち複数の前記周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている前記周方向主溝を起点として車両装着内側の部分における溝底までのタイヤ径方向長さの最大値をdIG1’’としたときに、以下の式(15)を満たす、態様22から27のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
IG1’<dIG1’’<dG1 (15)
《態様29》
前記第2の傾斜溝の車両装着内側の終端部は、複数の前記周方向主溝のうち最も車両装着外側に配置されている前記周方向主溝のうち車両装着外側に凸である部分と連通している、
態様22から28のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
《態様30》
第3の傾斜溝及び第4の傾斜溝を更に有しており、
前記第3の傾斜溝は、複数の前記周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている前記周方向主溝の車両装着内側に隣接している陸部内でその両端が終端するようにして配置されており、
前記第4の傾斜溝は、複数の前記周方向主溝のうち最も車両装着外側に配置されている前記周方向主溝の車両装着外側に隣接している陸部内でその両端が終端するようにして配置されている、
態様22から29のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
《態様31》
複数の前記周方向主溝のうち最も車両装着外側に配置されている前記周方向主溝の車両装着外側に隣接している陸部内でその両端が終端するようにして配置されており、かつ前記第4の傾斜溝よりも溝の長さが短い、第5の傾斜溝を更に有している、態様30に記載の空気入りタイヤ。
《態様32》
タイヤ幅方向に関して、前記第3の傾斜溝及び前記第4の傾斜溝は、接地端に跨って延在しており、かつ前記第5の傾斜溝は、前記接地端よりもタイヤ赤道面側で終端している、
態様31に記載の空気入りタイヤ。
《態様33》
前記第2の傾斜溝、前記第3の傾斜溝、及び前記第4の傾斜溝それぞれがタイヤ幅方向とのなす鋭角の向きは、前記第1の傾斜溝がタイヤ幅方向とのなす鋭角の向きと等しく、前記第5の傾斜溝がタイヤ幅方向とのなす鋭角の向きは、前記第1の傾斜溝がタイヤ幅方向とのなす鋭角の向きと異なる、
態様31又は32に記載の空気入りタイヤ。
《態様34》
前記第2の傾斜溝及び前記第4の傾斜溝それぞれがタイヤ幅方向とのなす鋭角の向きは、前記第1の傾斜溝がタイヤ幅方向とのなす鋭角の向きと等しく、前記第3の傾斜溝がタイヤ幅方向とのなす鋭角の向きは、前記第1の傾斜溝がタイヤ幅方向とのなす鋭角の向きと異なる、
態様30から32のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
《態様35》
タイヤ周方向に関して、
前記第3の傾斜溝の車両装着外側の終端部は、互いに隣接する2つの前記第1の傾斜溝の車両装着内側の端部の間で終端しており、かつ/又は
前記第4の傾斜溝の車両装着内側の終端部は、互いに隣接する2つの前記第2の傾斜溝の車両装着外側の端部の間で終端している、
態様30から34のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
《態様36》
前記第2の傾斜溝の車両装着外側方向の終端部は、
タイヤ周方向に関して隣り合う2つの前記第4の傾斜溝間で終端しており、かつ隣り合う2つの前記第4の傾斜溝のうちの一方から他方までのタイヤ周方向の長さをLG4G4とし、かつ隣り合う2つの前記第4の傾斜溝のうちの一方から前記第2の傾斜溝の終端部までのタイヤ周方向の長さをLG2G4としたときに、以下の式(16)を満たす、態様30から35のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
0.40<LG2G4/LG4G4<0.60 (16)
《態様37》
タイヤ子午断面視において、前記周方向主溝及び各傾斜溝が無いとした場合のタイヤ表面プロファイルから前記周方向主溝の溝底までのタイヤ径方向長さの最大値をdとするとともに、前記タイヤ表面プロファイルから前記第1の傾斜溝、前記第2の傾斜溝、前記第3の傾斜溝、及び前記第4の傾斜溝の溝底までのタイヤ径方向長さの最大値を、それぞれdIG1、dIG2、dIG3、及びdIG4としたときに、以下の式(17)から(20)を満たす、態様30から36のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
0.05<dIG1/d<0.85 (17)
0.05<dIG2/d<0.85 (18)
0.05<dIG3/d<0.85 (19)
0.05<dIG4/d<0.85 (20)
《態様38》
タイヤ赤道面を基準とした車両装着内側の前記周方向主溝の溝総面積をSSIとするとともに、タイヤ赤道面を基準とした車両装着外側の前記周方向主溝の溝総面積をSSOとしたときに、以下の式(21)を満たす、態様22から37のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
SO<SSI (21)
《態様39》
隣り合う2つの前記周方向主溝のいずれか一組に関して、車両装着内側の前記周方向主溝の平均溝幅は、車両装着外側の前記周方向主溝の平均溝幅よりも大きい、態様22から38のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
《態様40》
隣り合う2つの前記周方向主溝の全ての組み合わせにおいて、車両装着内側の前記周方向主溝の平均溝幅が、車両装着外側の前記周方向主溝の平均溝幅よりも大きい、態様22から39のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
《態様41》
タイヤ子午断面視において、
複数の前記周方向主溝のうち、少なくとも最も車両装着内側に配置されている前記周方向主溝に関して、
タイヤ径方向に対する前記周方向主溝の車両装着内側溝壁の傾斜角度をθGIとするとともに、タイヤ径方向に対する前記周方向主溝の車両装着外側溝壁の傾斜角度をθGOとしたときに、以下の式(22)を満たす、態様22から40のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
θGI<θGO (22)
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、ウェット操縦安定性とドライ操縦安定性を両立させた空気入りタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本開示の基本形態に従う空気入りタイヤの一例における、トレッド部のトレッド面100の平面図である。
図2図2は、本開示の基本形態に従う空気入りタイヤの他の例における、トレッド部のトレッド面200の平面図である。
図3図3は、図1のXで示す部分の拡大図である。
図4図4は、図1における第1の周方向主溝110のA11-A12断面図である。
図5図5は、図2における第1の周方向主溝210のA21-A22断面図である。
図6図6は、図2における第2の周方向主溝220のB21-B22断面図である。
図7図7は、図2における第3の周方向主溝230のC21-C22断面図である。
図8図8は、図2における第4の傾斜溝270のD21-D22断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る空気入りタイヤの実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、これらの実施形態及び図面は、本発明を限定するものではない。また、当該実施形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。さらに、当該実施形態に含まれる各種形態は、当業者が自明の範囲内で任意に組み合わせることができる。
【0012】
本開示において、「タイヤ径方向」とは、タイヤの回転軸と直交する方向を指す。
【0013】
本開示において、「タイヤ周方向」とは、タイヤの回転軸を中心軸とする周り方向を指す。本開示において、「タイヤ幅方向」とは、タイヤの回転軸と平行な方向を指す。なお、「タイヤ赤道面」とは、タイヤの回転軸に直交するとともに、タイヤのタイヤ幅の中心を通る平面である。
【0014】
本開示において、「車両装着内側」とは、本開示の空気入りタイヤを車両に装着させた状態において、空気入りタイヤ上のある位置を基準として車両から近い側を指す。「車両装着外側」とは、本開示の空気入りタイヤを車両に装着させた状態において、空気入りタイヤ上のある位置を基準として車両から遠い側を指す。
【0015】
また、以下の説明において、正規リムとは、JATMAに規定される「適用リム」、TRAに規定される「Design Rim」、又はETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、正規内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、又はETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。さらに、規定荷重とは、JATMAで規定される「最大負荷能力」、TRAで規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、又はETRTOで規定される「LOAD CAPACITY」をいう。
【0016】
《基本形態1》
図1は、本開示の基本形態に従う空気入りタイヤの一例における、トレッド部のトレッド面100の平面図である。図1において、「W」は、タイヤ幅方向を、「C」は、タイヤ周方向を、それぞれ示している。また、「W」は、車両装着内側を、「W」は、車両装着外側を、それぞれ示している。
【0017】
図1に示すように、本開示の基本形態に従う空気入りタイヤは、車両に対する装着方向が指定されている。トレッド部のトレッド面100には、複数の周方向主溝110、120が備えられている。なお、図1では、車両装着内側Wから順に、第1の周方向主溝110及び第2の周方向主溝120が備えられている。周方向主溝110、120の溝幅は、一定であってよい。
【0018】
タイヤ平面視において、周方向主溝110、120の溝中心線は、タイヤ周方向Cに進むにつれてタイヤ幅方向Wに周期的に変位している。
【0019】
これらの周方向主溝110、120の車両装着内側の縁部には、面取り幅が一定である車両装着内側面取り部111、121が形成されている。
【0020】
ここで、溝幅が一定であるとは、溝幅の最大値に対する溝幅の最小値の比が、0.90以上であることを意味している。溝幅の最大値に対する溝幅の最小値の比は、0.90以上、0.92以上、0.95以上、又は0.99以上であってよい。なお、溝幅の最大値に対する溝幅の最小値の比は、1.00以下である。ここで、周方向主溝の「溝幅」とは、周方向主溝の、タイヤ幅方向の長さである。なお、周方向主溝の平均溝幅は、空気入りタイヤの周方向全体における周方向主溝の溝幅の平均値であり、簡易的には、例えば周方向主溝について、周方向の異なる任意の100個の地点における溝幅の算術平均として算出してよい。
【0021】
また、「溝中心線」とは、溝の幅方向の中心点をタイヤ周方向に連ねた線を意味している。また、「溝中心線が、タイヤ周方向Cに進むにつれてタイヤ幅方向に周期的に変位している」とは、溝中心線が、タイヤ周方向Cに進むにつれて、車両装着内側Wと車両装着外側Wに周期的に変位していることを意味している。この周期的な変位としては、例えばタイヤ幅方向Wに関して凹凸が交互に繰り返している形状、より具体的には、タイヤ幅方向Wに関して振幅している波形又はジグザグ形等を挙げることができる。ここで、波形は、例えば矩形波、三角波、又は正弦波等であってよいが、これらに限定されない。なお、各周方向主溝の周期的な変位の周期は、同じであることが好ましい。特に、周期的な変位が波形である場合には、各周方向主溝の波長及び/又は振幅が等しいのが好ましい。
【0022】
また、面取り幅が一定であるとは、面取り幅の最大値に対する面取り幅の最小値の比が、0.90以上であることを意味している。面取り幅の最大値に対する面取り幅の最小値の比は、0.90以上、0.92以上、0.95以上、又は0.99以上であってよい。なお、面取り幅の最大値に対する面取り幅の最小値の比は、1.00以下である。ここで、「面取り幅」とは、面取り部の、タイヤ幅方向の長さである。
【0023】
なお、図1は、本開示の基本形態に従う空気入りタイヤを限定する趣旨ではない。特に、図1において、トレッド面に形成されている周方向主溝は2本であるが、本開示の基本形態において、周方向主溝は複数であり、2本に限定されず、3本、4本、又はそれ以上であってよい。
【0024】
もっとも、タイヤのトレッド部のタイヤ幅方向の長さを考慮すると、周方向主溝は、2本以上、5本以下であることが好ましい。周方向主溝は、2本以上、3本以上、又は4本以上であってよく、5本以下、4本以下、又は3本以下であってよい。
【0025】
したがって、本開示の基本形態に従う空気入りタイヤとしては、図1に示す例の他に、例えば図2に示すような例を挙げることができる。
【0026】
図2は、本開示の基本形態に従う空気入りタイヤの他の例における、トレッド部のトレッド面200の平面図である。
【0027】
図2に示す空気入りタイヤは、車両に対する装着方向が指定されている。トレッド部のトレッド面200には、車両装着内側Wから順に、第1の周方向主溝210、第2の周方向主溝220、及び第3の周方向主溝230が備えられている。ここで、これらの3本の周方向主溝210、220、230は、それぞれ溝幅が一定であってよい。また、これらの周方向主溝210、220、230は、溝中心線が、タイヤ周方向Cに進むにつれてタイヤ幅方向Wに周期的に変位している。より具体的には、溝中心線が、タイヤ幅方向Wに関して振幅している波形になっている。更に、これら周方向主溝210、220、230の車両装着内側の縁部には、それぞれ面取り幅が一定である車両装着内側面取り部211、221、231が形成されている。
【0028】
原理によって限定されないが、本開示の基本形態に従う空気入りタイヤにおいて、ウェット操縦安定性とドライ操縦安定性を両立することができる原理は、以下のとおりである。
【0029】
本開示の基本形態に従う空気入りタイヤは、トレッド部のトレッド面に複数の周方向主溝を備えている。そして、タイヤ平面視において、当該複数の周方向主溝は、溝中心線が、タイヤ周方向に進むにつれてタイヤ幅方向に周期的に変位している。
【0030】
本開示の基本形態に従う空気入りタイヤは、このような周方向主溝の形状により、同等の溝幅を有する直線状の周方向主溝に対して溝面積を増加させることができるため、より高い排水性を得ることができる。
【0031】
また、このような周方向主溝の形状により、周方向主溝により区画形成された陸部のいわゆるエッジ部分が、タイヤ周方向成分のみならず、タイヤ幅方向成分をも含むこととなる。そのため、本実施形態の周方向主溝により区画形成された陸部が、単にタイヤ幅方向からの力のみならず、タイヤ周方向からの力に対しても優れた剛性を発揮することができ、特に過酷な負荷状況が予想されるサーキット走行において優れたドライ操縦安定性を実現することができる。
【0032】
加えて、本開示の基本形態に従う空気入りタイヤでは、周方向主溝の車両装着内側の縁部に、面取り幅が一定である車両装着内側面取り部が形成されている。そのため、周方向主溝の側壁のうち特に摩耗によってブロックの欠けが起こりやすい車両装着内側の側壁のタイヤ径方向に対する傾斜角を緩やかにすることで、この側壁を含む陸部の剛性を高めることができる。また面取り部を有することで、溝面積をさらに増大して排水性も高めることができる。従って、特に過酷な負荷状況が予想されるサーキット走行において優れたウェット操縦安定性を実現することができる。
【0033】
以上により、本開示の基本形態に従う空気入りタイヤは、上述した陸部剛性の向上と排水性の向上に起因して、ウェット操縦安定性とドライ操縦安定性を両立することができる。なお、本実施形態の空気入りタイヤは、上述のとおり、特に過酷な負荷状況が予想されるサーキット走行に適したタイヤである。
【0034】
《付加的形態1-1》
本開示の付加的形態1-1に従う空気入りタイヤは、図1及び図2に示すように、基本形態1に関して、複数の周方向主溝のうち少なくとも最も車両装着内側に配置されている周方向主溝、すなわちそれぞれの図における第1の周方向主溝110、210の車両装着外側の縁部に、面取り幅が一定である車両装着外側面取り部112、212が形成されている。
【0035】
なお、図1では、第2の周方向主溝120の車両装着外側の縁部にも、面取り幅が一定である車両装着外側面取り部122が形成されている。
【0036】
また、図2では、3本の周方向主溝210、220、230のうち第1の周方向主溝210及び第2の周方向主溝220の車両装着外側の縁部に、それぞれ面取り幅が一定である車両装着外側面取り部212、222が形成されている。また、第3の周方向主溝230の車両装着外側の縁部には、面取り部が形成されていない。
【0037】
一般に、車両装着内側においては排水性を優先的に高めるとともに、車両装着外側では剛性を優先的に高めることで、ドライ操安性とウェット操安性を効率的に向上させることが行われる。これは車両装着外側において接地圧が比較的高くなるためであり、車両装着内側では接地圧が比較的低くなる傾向にあるためである。
【0038】
本開示の付加的形態1-1に従う空気入りタイヤは、複数の周方向主溝のうち少なくとも最も車両装着内側に配置されている周方向主溝において、周方向主溝の車両装着内側の縁部に加えて車両装着外側の縁部にも面取り幅が一定である面取り部が形成されている。
【0039】
これにより、本開示の付加的形態1-1に従う空気入りタイヤは、複数の周方向主溝のうち、車両装着両側に面取り部を形成する周方向主溝を、優先的に最も車両装着内側に配置されている周方向主溝とすることで、トレッド表面全体としてみた場合に、剛性の低下を抑制しつつ排水性を効率的に向上させることができる。
【0040】
したがって、本開示の付加的形態1-1に従う空気入りタイヤは、ウェット操縦安定性を更に向上させることができる。
【0041】
《付加的形態1-2》
図3は、図1のXで示す部分の拡大図である。
本開示の付加的形態1-2に従う空気入りタイヤは、図3に示すように、付加的形態1-1に関して、車両装着内側面取り部111の面取り幅をWAIとするとともに、車両装着外側面取り部112の面取り幅をWAOとしたときに、以下の式(1)を満たす。
AO<WAI (1)
【0042】
車両の旋回時等には、周方向主溝の両側壁のうち、車両装着内側の側壁を含む陸部に対して車両装着外側の側壁を含む陸部に比較的大きな応力が加えられる。そのため、周方向主溝の両側に位置する陸部のうち、車両装着外側の陸部の剛性を車両装着内側の陸部の剛性よりも優先的に高めることが望ましい。本開示の付加的形態1-2に従う空気入りタイヤでは、車両装着外側面取り部の面取り幅を、車両装着内側面取り部の面取り幅よりも小さくすることで、周方向主溝の車両装着外側の陸部の剛性を優先的に高めている。
【0043】
したがって、本開示の付加的形態1-2に従う空気入りタイヤは、付加的形態1-1の効果を達成しつつ、効率的に陸部剛性を高め、ひいては、ウェット操縦安定性とドライ操縦安定性を更に向上させることができる。
【0044】
なお、車両装着外側面取り部の面取り幅WAOに対する車両装着内側面取り部の面取り幅WAIの比率WAI/WAOは、1.3より大きく、かつ3.0より小さいことが好ましい。WAI/WAOは、1.3超、1.5以上、1.7以上、又は1.9以上であってよく、3.0未満、2.8以下、2.6以下、又は2.4以下であってよい。
【0045】
《付加的形態1-3》
本開示の付加的形態1-3に従う空気入りタイヤは、基本形態1、並びに付加的形態1-1及び1-2のいずれか一つに関して、タイヤ赤道面CLを基準とした車両装着内側の周方向主溝の溝総面積をSSIとするとともに、タイヤ赤道面を基準とした車両装着外側の周方向主溝の溝総面積をSSOとしたときに、以下の式(2)を満たす。
SO<SSI (2)
【0046】
ここで、溝総面積とは、空気入りタイヤのトレッド面の平面視において、面取り部分を含めた、所定の領域にある溝面積の総和を意味する。したがって、例えばタイヤ赤道面CLを基準とした車両装着内側の周方向主溝の溝総面積とは、タイヤ赤道面CLよりも車両装着内側に配置されている周方向主溝、及びタイヤ赤道面CLよりも車両装着内側に位置する周方向主溝、並びにこれらの周方向主溝に形成されている面取り部の面積の総和である。
【0047】
図1において、第1の周方向主溝110と第2の周方向主溝120とは、これらの間にタイヤ赤道面CLを挟むようにして配置されている。ここで、第1の周方向主溝110の溝幅は、第2の周方向主溝120の溝幅よりも大きい。
【0048】
したがって、図1において、タイヤ赤道面CLを基準とした車両装着内側の周方向主溝の溝総面積SSIは、タイヤ赤道面を基準とした車両装着外側の周方向主溝の溝総面積をSSOよりも大きい。
【0049】
また、図2において、第1の周方向主溝210と第3の周方向主溝230とは、これらの間にタイヤ赤道面CLを挟むようにして配置されている。また、第2の周方向主溝220は、赤道面CLと重なるようにして配置されている。ここで、タイヤ赤道面CLを基準とした車両装着内側の周方向主溝の溝総面積SSIは、第1の周方向主溝210の溝面積と、第2の周方向主溝220のうちタイヤ赤道面CLより車両装着内側部分の溝面積の和である。また、タイヤ赤道面CLを基準とした車両装着外側の周方向主溝の溝総面積SSOは、第3の周方向主溝230の溝面積と、第2の周方向主溝220のうちタイヤ赤道面CLより車両装着外側部分の溝面積の和である。ここで、第1の周方向主溝210の溝幅は、第3の周方向主溝230の溝幅よりも大きい。また、第2の周方向主溝220は、タイヤ赤道面CLより車両装着内側部分の溝面積とタイヤ赤道面CLより車両装着外側部分の溝面積が等しくなるように配置されている。
【0050】
したがって、図2において、タイヤ赤道面CLを基準とした車両装着内側の周方向主溝の溝総面積SSIは、タイヤ赤道面CLを基準とした車両装着外側の周方向主溝の溝総面積をSSOよりも大きい。
【0051】
上述のとおり、車両装着内側においては排水性を優先的に高めるとともに、車両装着外側では剛性を優先的に高めることで、ドライ操安性とウェット操安性を効率的に向上させることが行われる。
【0052】
本開示の付加的形態1-3に従う空気入りタイヤでは、タイヤ赤道面CLを基準とした車両装着内側の周方向主溝の溝総面積SSIを大きくして排水性を効率的に高める一方、タイヤ赤道面を基準とした車両装着外側の周方向主溝の溝総面積SSOを小さくして、陸部剛性を効率的に高めている。
【0053】
したがって、本開示の付加的形態1-3に従う空気入りタイヤは、ウェット操縦安定性とドライ操縦安定性を更に向上させることができる。
【0054】
なお、タイヤ赤道面を基準とした車両装着外側の周方向主溝の溝総面積SSOに対するタイヤ赤道面CLを基準とした車両装着内側の周方向主溝の溝総面積SSIの比率SSI/SSOは、1.1より大きく、かつ1.5より小さいことが好ましい。SSI/SSOは、1.1超、1.2以上、1.3以上、又は1.4以上であってよく、1.5未満、1.4以下、1.3以下、又は1.2以下であってよい。
【0055】
《付加的形態1-4》
本開示の付加的形態1-4に従う空気入りタイヤは、図1及び図2に示すように、基本形態1、並びに付加的形態1-1から1-3のいずれか一つにおいて、隣り合う2つの周方向主溝のいずれか一組に関して、車両装着内側の周方向主溝の平均溝幅は、車両装着外側の周方向主溝の平均溝幅よりも大きい。
【0056】
より具体的には、図1では、第1の周方向主溝110の溝幅は、第2の周方向主溝120の溝幅より大きい。また、図2では、第1から3の周方主溝210,220,230の溝幅の大きさは、第1の周方向主溝210、第2の周方向主溝220、及び第3の周方向主溝230の順に大きい。
【0057】
上述のとおり、車両装着内側においては排水性を優先的に高めるとともに、車両装着外側では剛性を優先的に高めることで、ドライ操安性とウェット操安性を効率的に向上させることが行われる。
【0058】
本開示の付加的形態1-4に従う空気入りタイヤでは、隣り合う2つの周方向主溝に関して、車両装着内側の周方向主溝の平均溝幅を大きくして、排水性を効率的に向上させている一方、車両装着方向外側の周方向主溝の平均溝幅を小さくして、その周りに区画形成された陸部の剛性を効率的に向上させている。
【0059】
したがって、本開示の付加的形態1-4に従う空気入りタイヤは、ウェット操縦安定性とドライ操縦安定性を更に向上させることができる。
【0060】
《付加的形態1-5》
本開示の付加的形態1-5に従う空気入りタイヤは、基本形態1、並びに付加的形態1-1から1-4のいずれか一つに関して、隣り合う2つの周方向主溝の全ての組み合わせにおいて、車両装着内側の周方向主溝の平均溝幅が、車両装着外側の周方向主溝の平均溝幅よりも大きい。
【0061】
すなわち、本開示の付加的形態1-5に従う空気入りタイヤは、複数の周方向主溝の平均溝幅が、車両装着内側から車両装着外側に向かうにつれて小さくなるように構成されている。
【0062】
上述のとおり、車両装着内側においては排水性を優先的に高めるとともに、車両装着外側では剛性を優先的に高めることで、ドライ操安性とウェット操安性を効率的に向上させることが行われる。
【0063】
本開示の付加的形態1-5に従う空気入りタイヤでは、車両装着内側に配置されている周方向主溝の平均溝幅を大きくして、排水性を効率的に向上させている一方、車両装着外側の周方向主溝の平均溝幅を小さくして、その周りに区画形成された陸部の剛性を効率的に向上させている。
【0064】
したがって、本開示の付加的形態1-5に従う空気入りタイヤは、ウェット操縦安定性とドライ操縦安定性を更に向上させることができる。
【0065】
《付加的形態1-6》
図4は、図1における第1の周方向主溝110のA11-A12断面図である。図4において、「W」は、タイヤ幅方向を、「R」は、タイヤ径方向を、それぞれ示している。また、タイヤ幅方向のうち、「W」は、車両装着内側を、「W」は、車両装着外側を、それぞれ示している。
【0066】
本開示の付加的形態1-6に従う空気入りタイヤは、図4に示すように、基本形態1、並びに付加的形態1-1から1-5のいずれか一つに関して、タイヤ子午断面視において、第1の周方向主溝110が無いとした場合のタイヤ表面プロファイルP(図4において点線で示され線分であって、第1の周方向主溝110の両側の陸部の表面プロファイルを延長した線分同士を滑らかに繋げた線)から第1の周方向主溝110の溝底までのタイヤ径方向Rの長さの最大値をdとするとともに、タイヤ表面プロファイルPから車両装着内側面取り部111のタイヤ径方向最内位置までのタイヤ径方向Rの長さの最大値をdCIとしたときに、以下の式(3)を満たす。
0.05<dCI/d<0.40 (3)
【0067】
本開示の付加的形態1-6に従う空気入りタイヤでは、dCI/dが0.30より小さい。そのため、周方向主溝の車両装着内側にある陸部は、体積をさらに確保することができ、したがって当該陸部についてさらに優れた剛性を実現することができる。他方、dCI/dが0.05より大きい。そのため、面取り部を小さくし過ぎることなく、確実に排水性が向上する。
【0068】
したがって、本開示の付加的形態1-6に従う空気入りタイヤは、ウェット操縦安定性とドライ操縦安定性を更に向上させることができる。
【0069】
なお、dCI/dは、0.05超、0.08以上、0.10以上、0.15以上、0.20以上、0.25以上、0.28以上、又は0.30以上であってよく、0.40未満、0.35以下、0.30以下、0.27以下、0.26以下、0.25以下、0.23以下、0.20以下、又は0.18以下であってよい。dCI/dは、0.05超かつ0.25未満であることが特に好ましい。
【0070】
また、図に示していないが、図1に示す本開示の基本形態に従う空気入りタイヤの一例は、第2の周方向主溝についても、上記式(3)を満たしている。
【0071】
《付加的形態1-7》
図5は、図2における第1の周方向主溝210のA21-A22断面図である。
【0072】
図5に示すように、本開示の付加的形態1-7に従う空気入りタイヤは、基本形態1、並びに付加的形態1-1から1-6のいずれか一つに関して、タイヤ子午断面視において、複数の周方向主溝のうち、少なくとも最も車両装着内側に配置されている周方向主溝(図5では第1の周方向主溝210)に関して、タイヤ径方向Rに対する第1の周方向主溝210の車両装着内側溝壁210aの傾斜角度をθGIとするとともに、タイヤ径方向に対する周方向主溝210の車両装着外側溝壁210bの傾斜角度をθGOとしたときに、以下の式(4)を満たす。
θGI<θGO (4)
【0073】
本開示の付加的形態1-7に従う空気入りタイヤでは、タイヤ径方向に対する第1の周方向主溝210の車両装着内側溝壁210aの傾斜角度θGIが、タイヤ径方向に対する第1の周方向主溝210の車両装着外側溝壁210bの傾斜角度θGOよりも小さい。
【0074】
ここで、第1の周方向主溝210の両側に位置する陸部表面から、溝底までのプロファイルラインを、溝210の車両装着両側において比較すると、車両装着内側Wにおいては面取り部211の表面プロファイルから溝のプロファイルに移行する際の角度変化が比較的小さく、車両装着外側Wにおいては面取り部212の表面プロファイルから溝のプロファイルに移行する際の角度変化が比較的大きい。即ち、溝210の両側に位置する陸部に同じタイヤ幅方向逆向きでかつ同程度の応力が加わったと仮定すると、両陸部の形状から、溝210に対して車両装着外側に位置する陸部の方が摩耗し難く、剛性が高いといえる。即ち、この構成は、車両装着外側において優先的に剛性を高めることが好ましいという、上記見解に合致する。
【0075】
また、第1の周方向主溝210の溝中心線を基準とすると、車両装着内側の溝体積の方が車両装着外側の溝体積よりも大きい。この構成についても、車両装着内側において優先的に排水性を高めることが好ましいという、上記見解に合致する。
【0076】
したがって、本開示の付加的形態1-7に従う空気入りタイヤは、ウェット操縦安定性とドライ操縦安定性を更に向上させることができる。
【0077】
図6は、図2における第2の周方向主溝220のB21-B22断面図である。また、図7は、図2における第3の周方向主溝230のC21-C22断面図である。また、図8は、図2における第4の傾斜溝270のD21-D22断面図である。
【0078】
図6及び図7に示すように、本開示の付加的形態1-7に従う空気入りタイヤの他の例では更に、第2の周方向主溝220及び第3の周方向主溝230においても、θGI<θGOを満たしていることができる。他方、図8に示すように、第4の傾斜溝270に関しては、溝壁の傾斜角度θ、θは同じであってよい。
【0079】
なお、図5から図7に示すように、θGI及びθGOは、それぞれ第1の周方向主溝210、第2の周方向主溝220、及び第3の周方向主溝230の順に大きいのが好ましい。これは、タイヤの車両装着外側よりも、内側において、特に排水性向上が求められるためである。
【0080】
タイヤ径方向に対する周方向主溝の車両装着内側溝壁の傾斜角度θGIに対するタイヤ径方向に対する周方向主溝の車両装着外側溝壁の傾斜角度θGOの比率θGO/θGIは、2.0より大きく、かつ5.0より小さいことが好ましい。
【0081】
θGO/θGIは、2.0超、2.5以上、3.0以上、又は3.5以上であってよく、5.0未満、4.5以下、4.0以下、又は3.5以下であってよい。
【0082】
θGIは、0°超30°以下であってよい。θGIは、0°超、1°以上、5°以上、10°以上、又は15°以上であってよく、30°以下、25°以下、20°以下、15°以下、又は10°以下であってよい。
【0083】
《付加的形態1-8》
付加的形態1-8に従う本開示の空気入りタイヤは、図1及び2に示すように、基本形態1、並びに付加的形態1-1から1-7のいずれか一つに関して、第1の傾斜溝130(図2では参照番号240)、第2の傾斜溝140(図2では参照番号250)、第3の傾斜溝150(図2では参照番号20)、第4の傾斜溝160(図2では参照番号270)、及び第5の傾斜溝170(図2では第5の傾斜溝無し)を有している。
【0084】
図1を代表に説明すると、第1の傾斜溝130は、複数の周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている周方向主溝である第1の周方向主溝110を起点として車両装着各側に延在しており、車両装着外側方向Wの終端部が、第1の周方向主溝110の車両装着外側に隣接している陸部内で終端しており、かつ車両装着内側方向Wの終端部が、第1の周方向主溝110の車両装着内側に隣接している陸部内で終端している。
【0085】
第2の傾斜溝140は、複数の周方向主溝のうち最も車両装着外側に配置されている第2の周方向主溝120を起点として車両装着外側に延在しており、車両装着外側方向Wの終端部が、第2の周方向主溝120の車両装着外側に隣接している陸部内で終端しており、かつ車両装着内側方向Wの終端部が、第2の周方向主溝120に連通して終端している。
【0086】
第3の傾斜溝150は、第1の周方向主溝110の車両装着内側に隣接している陸部内でその両端が終端するようにして配置されている。
【0087】
第4の傾斜溝160は、第2の周方向主溝120の車両装着外側に隣接している陸部内でその両端が終端するようにして配置されている。
【0088】
このように、付加的形態1-8に従う本開示の空気入りタイヤは、車両装着内側及び外側に、それぞれ2本ずつの傾斜溝を有しているため、排水性が高い。特に、第1の傾斜溝及び第2の傾斜溝は、周方向主溝に連結されているため、周方向主溝に流入した水を、それぞれ車両装着内側及び外側に排出しやすい。第1の傾斜溝及び第2の傾斜溝によって車両装着内側及び外側に排出された水は、それぞれ更に第3の傾斜溝及び第4の傾斜溝に流れ込み、これらの傾斜溝に沿ってタイヤの外側に排出されやすい。したがって、付加的形態1-8に従う本開示の空気入りタイヤは、更に高い排水性を有している。
【0089】
《付加的形態1-9》
付加的形態1-9に従う本開示の空気入りタイヤは、図1に示すように、付加的形態1-8に関して、複数の周方向主溝(図1では2本)のうち最も車両装着外側に配置されている第2の周方向主溝120の車両装着外側に隣接している陸部内でその両端が終端するようにして配置されており、かつ第4の傾斜溝160よりも溝の長さが短い、第5の傾斜溝170を有している。
【0090】
このように、付加的形態1-9に従う本開示の空気入りタイヤは、上記のような第5の傾斜溝170を有していることにより、付加的形態1-8に対して更に排水性が向上する。加えて、第5の傾斜溝170は、第4の傾斜溝160よりも溝の長さが短いため、第5の傾斜溝170を配置することによる陸部のブロック剛性の低下が少ない。
【0091】
したがって、付加的形態1-9に従う本開示の空気入りタイヤは、ブロック剛性の低下を抑制しつつ、付加的形態1-8に対して更に高い排水性を有している。
【0092】
《付加的形態1-10》
付加的形態1-10に従う本開示の空気入りタイヤは、図1に示すように、付加的形態1-9について、タイヤ幅方向Wに関して、第3の傾斜溝150及び第4の傾斜溝160は、それぞれ接地端E及びEに跨って延在しており、かつ第5の傾斜溝170は、接地端Eよりもタイヤ赤道面CL側で終端している。
【0093】
付加的形態1-10に従う本開示の空気入りタイヤは、第3の傾斜溝150及び第4の傾斜溝160が、それぞれ接地端E及びEに跨って延在していることにより、タイヤの内側方向から外側方向に、より排水しやすい。したがって、付加的形態1-9に従う本開示の空気入りタイヤに対して、更に高い排水性を有している。加えて、第5の傾斜溝170が接地端Eよりもタイヤ赤道面CL側で終端しているため、第5の傾斜溝170が配置されることによる陸部のブロック剛性の低下を更に抑制することができる。
【0094】
したがって、付加的形態1-10に従う本開示の空気入りタイヤは、ブロック剛性の低下を抑制しつつ、付加的形態1-9に対して更に高い排水性を有している。
【0095】
《付加的形態1-11》
付加的形態1-11に従う本開示の空気入りタイヤは、図1に示すように、付加的形態1-9又は1-10に関して、第2の傾斜溝140、第3の傾斜溝150、及び第4の傾斜溝160それぞれがタイヤ幅方向Wとのなす鋭角の向きは、第1の傾斜溝130がタイヤ幅方向Wとのなす鋭角の向きと等しい。また、第5の傾斜溝170がタイヤ幅方向Wとのなす鋭角の向きは、第1の傾斜溝130がタイヤ幅方向Wとのなす鋭角の向きと異なる。
【0096】
付加的形態1-11に従う本開示の空気入りタイヤは、第5の傾斜溝170がタイヤ幅方向Wとのなす鋭角の向きが、第1の傾斜溝130、第2の傾斜溝140、第3の傾斜溝150、及び第4の傾斜溝160それぞれがタイヤ幅方向Wとのなす鋭角の向きと異なるため、空気入りタイヤの一方の回転方向では第1の傾斜溝130、第2の傾斜溝140、第3の傾斜溝150、及び第4の傾斜溝160によって排水性を特に高めつつ、空気入りタイヤの他方の回転方向では長さの小さい第5の傾斜溝によって若干の排水性を高めることができる。
【0097】
概して、車両が前進する際には、車両の進行速度が大きいため、空気入りタイヤに特に高い排水性が求められる。一方で、車両が後進する際には、車両の進行速度は通常は大きくないため、空気入りタイヤに求められる排水性は、車両が前進する場合よりも小さい。
【0098】
付加的形態1-11に従う本開示の空気入りタイヤは、車両の進行方向に対するタイヤの装着向きにもよるが、例えば車両が前進する際には第1の傾斜溝130、第2の傾斜溝140、第3の傾斜溝150、及び第4の傾斜溝160によって排水性を向上しつつ、タイヤの回転方向が逆になったとき、すなわち例えば車両が後進するときにおいても、第5の傾斜溝170によって排水性を向上させることができる。更には、第5の傾斜溝170は、第4の傾斜溝160よりも溝の長さが短いため、第4の傾斜溝160と比較して排水性が小さいが、第5の傾斜溝170を設けることによる陸部のブロック剛性の低下の程度が小さい。したがって、車両の前進及び後進における排水性及びブロック剛性を両立することができる。
【0099】
《付加的形態1-12》
付加的形態1-12に従う本開示の空気入りタイヤは、図2に示すように、付加的形態1-8から1-10のいずれか一つに関して、第2の傾斜溝250及び第4の傾斜溝270それぞれがタイヤ幅方向Wとのなす鋭角の向きは、第1の傾斜溝240がタイヤ幅方向Wとのなす鋭角の向きと等しく、第3の傾斜溝260がタイヤ幅方向Wとのなす鋭角の向きは、第1の傾斜溝240がタイヤ幅方向Wとのなす鋭角の向きと異なる。
【0100】
付加的形態1-12に従う本開示の空気入りタイヤは、車両の進行方向に対するタイヤの装着向きにもよるが、例えば車両が前進する際には第1の傾斜溝240、第2の傾斜溝250、及び第4の傾斜溝270によって排水性を向上しつつ、タイヤの回転方向が逆になったとき、すなわち例えば車両が後進するときにおいても、第3の傾斜溝260によって排水性を向上させることができる。第3の傾斜溝260は、車両装着内側に配置されているため、特に後進時における車両装着内側の排水性を特に向上させることができる。
【0101】
タイヤを車両に装着させた状態において、タイヤの赤道方向が地面に垂直な方向から車両内側方向に傾斜している場合、タイヤの接地面積は、車両装着外側よりも車両装着内側の方が若干大きい。したがって、このような場合において、付加的形態1-12に従う本開示の空気入りタイヤを適用することにより、例えば後進時におけるウェット操安性を特に向上させることができる。
【0102】
《付加的形態1-13》
付加的形態1-13に従う本開示の空気入りタイヤは、図1に示すように、付加的形態1-8から1-12のいずれか一つについて、タイヤ周方向に関して、第3の傾斜溝150の車両装着外側の終端部は、互いに隣接する2つの第1の傾斜溝130の車両装着内側の端部の間で終端しており、かつ/又は第4の傾斜溝160の車両装着内側の終端部は、互いに隣接する2つの第2の傾斜溝140の車両装着外側の端部の間で終端している。
【0103】
付加的形態1-13に従う本開示の空気入りタイヤは、上記のような構成によって、第1の周方向主溝110及び第2の周方向主溝120からそれぞれ第1の傾斜溝130及び第2の傾斜溝140に流入した水を、それぞれ第3の傾斜溝150及び第4の傾斜溝160が効率よく回収し、タイヤの外側に排出しやすい。このような観点から、タイヤ幅方向Wに関して、第3の傾斜溝150の車両装着外側の終端部は、互いに隣接する2つの第1の傾斜溝130の車両装着内側の終端部の間で終端していることが、更に好ましい。同様に、タイヤ幅方向Wに関して、第4の傾斜溝160の車両装着内側の終端部は、互いに隣接する2つの第2の傾斜溝140の車両装着外側の終端部の間で終端していることが、更に好ましい。
【0104】
《付加的形態1-14》
付加的形態1-14に従う本開示の空気入りタイヤは、図1に示すように、付加的形態1-8から1-13のいずれか一つに関して、第1の傾斜溝130が、複数の周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている第1の周方向主溝110のうち車両装着内側に凸となる部分及び車両装着外側に凹となる部分を連通するようにして、車両装着各側に延在している。
【0105】
付加的形態1-14に従う本開示の空気入りタイヤでは、第1の傾斜溝130が、第1の周方向主溝110のうち車両装着内側に凸となる部分から延びている。したがって、第1の傾斜溝130のうち第1の周方向主溝110に関して車両装着内側の部分の溝の長さを、車両装着内側に凹となる部分から延びている場合と比較して短くすることができる。これにより、第1の周方向主溝110に関して車両装着内側の部分において、第1の傾斜溝130による排水性を向上させつつ、第1の周方向主溝110に関して車両装着内側の部分における陸部のブロック剛性の低下を抑制することができる。他方、第1の傾斜溝130が、第1の周方向主溝110のうち車両装着外側に凹となる部分から延びているため、第1の傾斜溝130のうち第1の周方向主溝110に関して車両装着外側の部分は、車両装着外側に凹となる部分から延びている場合と比較して、傾斜溝の長さを大きく取りつつ終端部をタイヤ赤道面CLからより遠ざけることができる。これにより、タイヤ赤道面CL付近における陸部のブロック剛性の低下を抑制しつつ、排水性を向上させることができる。なお、車両装着内側に凸となる部分とは、凸の頂点であることを要さないが、凸の頂点であることが特に好ましい。同様に、車両装着内側に凹となる部分とは、凹の底点であることを要さないが、凹の底点であることが特に好ましい。
【0106】
《付加的形態1-15》
付加的形態1-15に従う本開示の空気入りタイヤは、図1に示すように、付加的形態1-8から1-14のいずれか一つに関して、第2の傾斜溝140の車両装着内側の終端部は、複数の周方向主溝のうち最も車両装着外側に配置されている第2の周方向主溝120のうち車両装着外側に凸である部分と連通している。
【0107】
付加的形態1-15に従う本開示の空気入りタイヤは、上記の構成により、第2の傾斜溝140のうち第2の周方向主溝120に関して車両装着外側の部分の溝の長さを、車両装着内側に凹となる部分から延びている場合と比較して短くすることができる。更には、第2の周方向主溝120のうち車両装着外側に凸である部分から第2の傾斜溝140が伸びていることにより、第2の周方向主溝120を流れる水が、第2の傾斜溝140に流れ込みやすい。これにより、第2の周方向主溝120に関して車両装着外側の部分において、第2の傾斜溝140による排水性を向上させつつ、第2の周方向主溝120に関して車両装着外側の部分における陸部のブロック剛性の低下を抑制することができる。なお、車両装着外側に凸となる部分とは、凸の頂点であることを要さないが、凸の頂点であることが特に好ましい。
【0108】
《付加的形態1-16》
付加的形態1-16に従う本開示の空気入りタイヤは、図1に示すように、付加的形態1-8から1-15のいずれか一つに関して、第1の傾斜溝130のうち、複数の周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている第1の周方向主溝110から車両装着外側に延在する部分のタイヤ幅方向Wの長さをLIG1とし、かつ複数の周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている第1の周方向主溝110の車両装着外側に隣接している陸部のタイヤ幅方向Wの長さをLとしたときに、以下の式(5)を満たす:
0.20<LIG1/L<0.60 (5)
【0109】
IG1/Lが0.20より大きいと、第1の周方向主溝110の車両装着外側に隣接している陸部、すなわちタイヤ赤道面CL付近の陸部における排水性を特に向上させることができる。他方、LIG1/Lが0.60より小さいと、タイヤ赤道面CL付近における陸部のブロック剛性の低下を特に抑制させることができる。すなわち、付加的形態1-16に従う本開示の空気入りタイヤは、上記式(5)を満たすことにより、タイヤ赤道面CL付近における排水性及びブロック剛性を特に両立させることができる。
【0110】
ここで、LIG1/Lは、0.20超、0.25以上、又は0.30以上であってよく、0.60未満、0.55以下、0.50以下、0.45以下、0.40以下、0.35以下、又は0.30以下であってよい。
【0111】
《付加的形態1-17》
付加的形態1-17に従う本開示の空気入りタイヤは、図1に示すように、付加的形態1-8から1-16のいずれか一つに関して、第2の傾斜溝140の車両装着外側方向Wの終端部は、タイヤ周方向に関して隣り合う2つの第4の傾斜溝160間で終端している。ここで、隣り合う2つの第4の傾斜溝160のうちの一方から他方までのタイヤ周方向の長さをLG4G4とし、かつ隣り合う2つの第4の傾斜溝160のうちの一方から第2の傾斜溝140の終端部までのタイヤ周方向の長さをLG2G4としたときに、以下の式(6)を満たすことが好ましい:
【0112】
0.40<LG2G4/LG4G4<0.60 (6)
【0113】
上記式(6)を満たす場合、第2の傾斜溝140の車両装着外側方向Wの終端部は、タイヤ周方向に関して隣り合う2つの第4の傾斜溝160の中央付近で終端する。これにより、第2の傾斜溝140と第4の傾斜溝160との間での水の受け渡しがより効率的に行われる。
【0114】
ここで、LG2G4/LG4G4は、0.40超、0.43以上、又は0.45以上であってよく、0.60未満、0.58以下、又は0.55以下であってよい。
【0115】
《付加的形態1-18》
付加的形態1-18に従う本開示の空気入りタイヤは、付加的形態1-8から1-17のいずれか一つに関して、タイヤ子午断面視において、周方向主溝及び各傾斜溝が無いとした場合のタイヤ表面プロファイルから第1及び第2の周方向主溝110及び120の溝底までのタイヤ径方向長さの最大値をdとするとともに、タイヤ表面プロファイルから第1の傾斜溝130、第2の傾斜溝140、第3の傾斜溝150、及び第4の傾斜溝160の溝底までのタイヤ径方向長さの最大値を、それぞれdIG1、dIG2、dIG3、及びdIG4としたときに、以下の式(7)から(10)を満たす:
0.05<dIG1/d<0.85 (7)
0.05<dIG2/d<0.85 (8)
0.05<dIG3/d<0.85 (9)
0.05<dIG4/d<0.85 (10)
【0116】
付加的形態1-18に従う本開示の空気入りタイヤは、タイヤ表面プロファイルから第1の傾斜溝130、第2の傾斜溝140、第3の傾斜溝150、及び第4の傾斜溝160の溝底までのタイヤ径方向長さの最大値(dIG1、dIG2、dIG3、及びdIG4)が、タイヤ表面プロファイルから第1及び第2の周方向主溝110及び120の溝底までのタイヤ径方向長さの最大値dよりも小さい。そのため、各傾斜溝130、140、150及び160によるタイヤのブロック剛性の低下を抑制しつつ、排水性を向上させることができる。ここで、0.05<dIG1(又はdIG2、dIG3、dIG4)/dであると、第1の傾斜溝130、第2の傾斜溝140、第3の傾斜溝150、及び第4の傾斜溝160の深さが十分に大きいため、特に排水性が向上する。他方、dIG1(又はdIG2、dIG3、dIG4)/d<0.85であると、第1の傾斜溝130、第2の傾斜溝140、第3の傾斜溝150、及び第4の傾斜溝160の深さが大きすぎず、特にブロック剛性の低下を抑制することができる。
【0117】
ここで、dIG1(又はdIG2、dIG3、dIG4)/dは、0.05超、0.1以上、0.2以上、又は0.3以上であってよく、0.85未満、0.80以下、0.70以下、又は0.60以下であってよい。
【0118】
《付加的形態1-19》
付加的形態1-19に従う本開示の空気入りタイヤは、付加的形態1-8から1-18のいずれか一つに関して、タイヤ子午断面視において、周方向主溝及び各傾斜溝が無いとした場合のタイヤ表面プロファイルから複数の周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている第1の周方向主溝110の溝底までのタイヤ径方向長さの最大値をdG1とするとともに、タイヤ表面プロファイルから第1の傾斜溝130のうち複数の周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている第1の周方向主溝110を起点として車両装着外側方向Wの部分における溝底までのタイヤ径方向長さの最大値をdIG1’、第1の傾斜溝130のうち複数の周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている第1の周方向主溝110を起点として車両装着内側方向Wの部分における溝底までのタイヤ径方向長さの最大値をdIG1’’としたときに、以下の式(11)を満たす:
IG1’<dIG1’’<dG1 (11)
【0119】
付加的形態1-19に従う本開示の空気入りタイヤは、dIG1’<dIG1’’とすることにより、第1の傾斜溝130による排水性を向上させつつ、タイヤ赤道面CL付近における陸部では傾斜溝を浅くすることで、タイヤ赤道面付近CLにおける陸部のブロック剛性の低下を特に抑制することができる。
【0120】
《付加的形態1-20》
付加的形態1-20に従う本開示の空気入りタイヤは、図1(及び図2)に示すように、付加的形態1-8から1-19のいずれか一つに関して、第1の傾斜溝130(図2では240)のうち、複数の周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている周方向主溝110(図2では210)から車両装着外側に延在する部分のタイヤ幅方向の長さをLIG1とし、かつ第1の傾斜溝130(図2では240)のうち、複数の周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている周方向主溝110(図2では210)から車両装着内側に延在する部分のタイヤ幅方向の長さをLIG2としたときに、以下の式(12)を満たす。
IG1<LIG2 (12)
【0121】
図1で説明すると、付加的形態1-20に従う本開示の空気入りタイヤは、第1の傾斜溝130が、LIG1<LIG2の関係を満たすため、第1の傾斜溝を介した周方向主溝110から同周方向主溝のタイヤ幅方向両側への排水性を、タイヤ装着内側方向WI、すなわちタイヤの幅方向外側に向かう方向に優位とすることができる。これにより、タイヤ全体として見たときに、周方向主溝110からタイヤ幅方向外側への排水性を特に向上させることができ、他方、タイヤ幅方向内側における剛性を高めることができる。
【0122】
ここで、LIG1/LIG2は、0.20以上0.40以下であることが特に好ましい。LIG1/LIG2は、0.20以上、0.25以上、又は0.30以上であってよく、0.40以下、0.35以下、又は0.30以下であってよい。
【0123】
《基本形態2》
基本形態2に従う本開示の空気入りタイヤは、図1(及び図2)に示すように、車両に対する装着方向が指定されており、かつトレッド部のトレッド面に複数の周方向主溝110及び120(図2では210、220、及び230)、第1の傾斜溝130(図2では240)、及び第2の傾斜溝140(図2では250)を備えている、空気入りタイヤである。
【0124】
また、タイヤ平面視において、周方向主溝110及び120(図2では210、220、及び230)の溝中心線は、タイヤ周方向に進むにつれてタイヤ幅方向に周期的に変位している。また、第1の傾斜溝130(図2では240)は、複数の周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている周方向主溝110(図2では210)を起点として車両装着各側に延在しており、第2の傾斜溝140(図2では250)は、複数の周方向主溝のうち最も車両装着外側に配置されている周方向主溝120(図2では230)を起点として車両装着外側に延在している。
【0125】
図1で説明すると、基本形態2に従う本開示の空気入りタイヤは、第1の傾斜溝130が周方向主溝110を起点として車両装着各側に延在しているため、周方向主溝110に関してタイヤ幅方向両側で隣接する陸部に傾斜溝が存在する。これにより、車両装着内側において高い排水性を有する。他方、第2の傾斜溝140が周方向主溝120を起点として車両装着外側に延在しているため、周方向主溝120に関して車両装着外側で隣接する陸部に傾斜溝が存在する。これにより、周方向主溝120に隣接するタイヤ幅方向内側の陸部の剛性が高い。そのため、基本形態2に従う本開示の空気入りタイヤは、タイヤ幅方向内側において高い排水性を有しつつ、タイヤ幅方向外側では高い剛性を有するため、高い排水性を確保しつつ、タイヤの剛性を向上させることができる。図2においても同様である。
【0126】
基本形態2に従う本開示の空気入りタイヤは、上記の基本形態1及びその付加的形態に従う本開示の空気入りタイヤとは異なり、周方向主溝の面取りは必須の構成ではない。もっとも、上記の基本形態1及びその付加的形態に従う本開示の空気入りタイヤが有するような面取りを有していることは、基本形態2に従う本開示の空気入りタイヤのウェット操縦安定性とドライ操縦安定性の更なる向上をもたらす。
【0127】
《付加的形態2-1》
付加的形態2-1に従う本開示の空気入りタイヤは、図1(及び図2)に示すように、基本形態2に関して、第1の傾斜溝130(図2では240)の車両装着外側方向Wの終端部が、複数の周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている周方向主溝110(図2では210)の車両装着外側に隣接している陸部内で終端しており、かつ第1の傾斜溝130(図2では240)の車両装着内側方向Wの終端部が、複数の周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている周方向主溝110(図2では210)の車両装着内側に隣接している陸部内で終端している。
【0128】
図1で説明すると、付加的形態2-1に従う本開示の空気入りタイヤは、第1の傾斜溝130が、周方向主溝110のタイヤ方向両側に隣接する陸部で終端しているため、排水性を維持しつつ、陸部の剛性を向上させることができる。図2においても同様である。
【0129】
《付加的形態2-2》
付加的形態2-2に従う本開示の空気入りタイヤは、図1(及び図2)に示すように、基本形態2及び付加的形態2-に関して、第2の傾斜溝140(図2では250)の車両装着外側方向の終端部が、複数の周方向主溝のうち最も車両装着外側に配置されている周方向主溝120(図2では230)の車両装着外側に隣接している陸部内で終端しており、かつ第2の傾斜溝140(図2では250)の車両装着内側方向の終端部が、複数の周方向主溝のうち最も車両装着外側に配置されている周方向主溝120(図2では230)に連通して終端している。なお、連通して終端しているとは、第2の傾斜溝140(図2では250)の端部が周方向主溝120(図2では230)に合流して終端し、周方向主溝120(図2では230)の反対側の陸部に延在していないことを意味する。
【0130】
図1で説明すると、付加的形態2-2に従う本開示の空気入りタイヤは、第2の傾斜溝140が、一方の端部において周方向主溝120の車両装着外側に隣接する陸部内で終端すると共に、他方の端部において周方向主溝120と連通して終端しているため、排水性を維持しつつ、陸部の剛性を向上させることができる。図2においても同様である。
【0131】
《付加的形態2-3》
付加的形態2-3に従う本開示の空気入りタイヤは、図1(及び図2)に示すように、基本形態2、並びに付加的形態2-1及び2-2のいずれか一つに関して、第1の傾斜溝130(図2では240)のうち、複数の周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている周方向主溝110(図2では210)から車両装着外側に延在する部分のタイヤ幅方向の長さをLIG1とし、かつ第1の傾斜溝130(図2では240)のうち、複数の周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている周方向主溝110(図2では210)から車両装着内側に延在する部分のタイヤ幅方向の長さをLIG2としたときに、以下の式(13)を満たす。
IG1<LIG2 (13)
【0132】
図1で説明すると、付加的形態2-3に従う本開示の空気入りタイヤは、第1の傾斜溝130が、LIG1<LIG2の関係を満たすため、第1の傾斜溝を介した周方向主溝110から同周方向主溝のタイヤ幅方向両側への排水性を、車両装着内側方向WI、すなわちタイヤの幅方向外側に向かう方向に優位とすることができる。これにより、タイヤ全体として見たときに、周方向主溝110からタイヤ幅方向外側への排水性を特に向上させることができ、他方、タイヤ幅方向内側における剛性を高めることができる。
【0133】
ここで、LIG1/LIG2は、0.20以上0.40以下であることが特に好ましい。LIG1/LIG2は、0.20以上、0.25以上、又は0.30以上であってよく、0.40以下、0.35以下、又は0.30以下であってよい。
【0134】
《付加的形態2-4》
付加的形態2-4に従う本開示の空気入りタイヤは、図1(及び図2)に示すように、基本形態2及び付加的形態2-1から2-3のいずれか一つに関して、第1の傾斜溝130(図2では240)が、複数の周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている第1の周方向主溝110(図2では210)のうち車両装着内側に凸となる部分及び車両装着外側に凹となる部分を連通するようにして、車両装着各側に延在している。
【0135】
図1で説明すると、付加的形態2-4に従う本開示の空気入りタイヤでは、第1の傾斜溝130が、第1の周方向主溝110のうち車両装着内側に凸となる部分から延びている。したがって、第1の傾斜溝130のうち第1の周方向主溝110に関して車両装着内側の部分の溝の長さを、車両装着内側に凹となる部分から延びている場合と比較して短くすることができる。これにより、第1の周方向主溝120に関して車両装着内側の部分において、第1の傾斜溝130による排水性を向上させつつ、第1の周方向主溝120に関して車両装着内側の部分における陸部のブロック剛性の低下を抑制することができる。他方、第1の傾斜溝130が、第1の周方向主溝120のうち車両装着外側に凹となる部分から延びているため、第1の傾斜溝120のうち第1の周方向主溝110に関して車両装着外側の部分は、車両装着外側に凹となる部分から延びている場合と比較して、傾斜溝の長さを大きく取りつつ終端部をタイヤ赤道面CLからより遠ざけることができる。これにより、タイヤ赤道面CL付近における陸部のブロック剛性の低下を抑制しつつ、排水性を向上させることができる。図2においても同様である。なお、車両装着内側に凸となる部分とは、凸の頂点であることを要さないが、凸の頂点であることが特に好ましい。同様に、車両装着内側に凹となる部分とは、凹の底点であることを要さないが、凹の底点であることが特に好ましい。
【0136】
《付加的形態2-5》
付加的形態2-5に従う本開示の空気入りタイヤは、図1(及び図2)に示すように、基本形態2及び付加的形態2-1~2-4のいずれか一つに関して、第1の傾斜溝130(図2では240)のうち、複数の周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている第1の周方向主溝110(図2では210)から車両装着外側に延在する部分のタイヤ幅方向Wの長さをLIG1とし、かつ複数の周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている第1の周方向主溝110(図2では210)の車両装着外側に隣接している陸部のタイヤ幅方向Wの長さをLとしたときに、以下の式(14)を満たす:
0.20<LIG1/L<0.60 (14)
【0137】
図1で説明すると、LIG1/Lが0.20より大きいと、第1の周方向主溝110の車両装着外側に隣接している陸部、すなわちタイヤ赤道面CL付近の陸部における排水性を特に向上させることができる。他方、LIG1/Lが0.60より小さいと、タイヤ赤道面CL付近における陸部のブロック剛性の低下を特に抑制させることができる。すなわち、付加的形態2-5に従う本開示の空気入りタイヤは、上記式(13)を満たすことにより、タイヤ赤道面CL付近における排水性及びブロック剛性を特に両立させることができる。図2においても同様である。
【0138】
ここで、LIG1/Lは、0.20超、0.25以上、又は0.30以上であってよく、0.60未満、0.55以下、0.50以下、0.45以下、0.40以下、0.35以下、又は0.30以下であってよい。
【0139】
《付加的形態2-6》
付加的形態2-6に従う本開示の空気入りタイヤは、図1(及び図2)に示すように、基本形態2及び付加的形態2-1から2-5のいずれか一つに関して、タイヤ子午断面視において、周方向主溝110、120(図2では210、220、及び230)及び各傾斜溝130、140、150、160、及び170(図2では240、250、260、及び270)が無いとした場合のタイヤ表面プロファイルから複数の周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている第1の周方向主溝110(図2では210)の溝底までのタイヤ径方向長さの最大値をdG1とするとともに、タイヤ表面プロファイルから第1の傾斜溝130(図2では240)のうち複数の周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている第1の周方向主溝110(図2では210)を起点として車両装着外側方向Wの部分における溝底までのタイヤ径方向長さの最大値をdIG1’、第1の傾斜溝130(図2では240)のうち複数の周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている第1の周方向主溝110(図2では210)を起点として車両装着内側方向Wの部分における溝底までのタイヤ径方向長さの最大値をdIG1’’としたときに、以下の式(15)を満たす:
IG1’<dIG1’’<dG1 (15)
【0140】
図1で説明すると、付加的形態2-6に従う本開示の空気入りタイヤは、dIG1’<dIG1’’とすることにより、第1の傾斜溝130による排水性を向上させつつ、タイヤ赤道面CL付近における陸部では傾斜溝を浅くすることで、タイヤ赤道面CL付近における陸部のブロック剛性の低下を特に抑制することができる。図2においても同様である。
【0141】
《付加的形態2-7》
付加的形態2-7に従う本開示の空気入りタイヤは、図1(及び図2)に示すように、基本形態2及び付加的形態2-1から2-6のいずれか一つに関して、第2の傾斜溝140(図2では250)の車両装着内側の終端部は、複数の周方向主溝のうち最も車両装着外側に配置されている第2の周方向主溝120(図2では220)のうち車両装着外側に凸である部分と連通している。
【0142】
図1で説明すると、付加的形態2-7に従う本開示の空気入りタイヤは、上記の構成により、第2の傾斜溝140のうち第2の周方向主溝120に関して車両装着外側の部分の溝の長さを、車両装着内側に凹となる部分から延びている場合と比較して短くすることができる。更には、第2の周方向主溝120のうち車両装着外側に凸である部分から第2の傾斜溝140が伸びていることにより、第2の周方向主溝120を流れる水が、第2の傾斜溝140に流れ込みやすい。これにより、第2の周方向主溝120に関して車両装着外側の部分において、第2の傾斜溝140による排水性を向上させつつ、第2の周方向主溝120に関して車両装着外側の部分における陸部のブロック剛性の低下を抑制することができる。図2においても同様である。なお、車両装着内側に凸となる部分とは、凸の頂点であることを要さないが、凸の頂点であることが特に好ましい。
【0143】
《付加的形態2-8》
付加的形態2-8に従う本開示の空気入りタイヤは、図1(及び図2)に示すように、基本形態2及び付加的形態2-1から2-7のいずれか一つに関して、第1の傾斜溝130(図2では参照番号240)、第2の傾斜溝140(図2では参照番号250)、第3の傾斜溝150(図2では参照番号260)、第4の傾斜溝160(図2では参照番号270)、及び第5の傾斜溝170(図2では第5の傾斜溝は無し)を有している。
【0144】
図1で説明すると、第1の傾斜溝130は、複数の周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている周方向主溝である第1の周方向主溝110を起点として車両装着各側に延在しており、車両装着外側方向Wの終端部が、第1の周方向主溝110の車両装着外側に隣接している陸部内で終端しており、かつ車両装着内側方向Wの終端部が、第1の周方向主溝110の車両装着内側に隣接している陸部内で終端している。
【0145】
第2の傾斜溝140は、複数の周方向主溝のうち最も車両装着外側に配置されている第2の周方向主溝120を起点として車両装着外側に延在しており、車両装着外側方向Wの終端部が、第2の周方向主溝120の車両装着外側に隣接している陸部内で終端しており、かつ車両装着内側方向Wの終端部が、第2の周方向主溝120に連通して終端している。
【0146】
第3の傾斜溝150は、第1の周方向主溝110の車両装着内側に隣接している陸部内でその両端が終端するようにして配置されている。
【0147】
第4の傾斜溝160は、第2の周方向主溝120の車両装着外側に隣接している陸部内でその両端が終端するようにして配置されている。
【0148】
このように、付加的形態2-8に従う本開示の空気入りタイヤは、車両装着内側及び外側に、それぞれ2本ずつの傾斜溝を有しているため、排水性が高い。特に、第1の傾斜溝及び第2の傾斜溝は、周方向主溝に連結されているため、周方向主溝に流入した水を、それぞれ車両装着内側及び外側に排出しやすい。第1の傾斜溝及び第2の傾斜溝によって車両装着内側及び外側に排出された水は、それぞれ更に第3の傾斜溝及び第4の傾斜溝に流れ込み、これらの傾斜溝に沿ってタイヤの外側に排出されやすい。したがって、付加的形態2-8に従う本開示の空気入りタイヤは、更に高い排水性を有している。
【0149】
《付加的形態2-9》
付加的形態2-9に従う本開示の空気入りタイヤは、図1に示すように、付加的形態2-8に関して、複数の周方向主溝(図1では2本)のうち最も車両装着外側に配置されている第2の周方向主溝120の車両装着外側に隣接している陸部内でその両端が終端するようにして配置されており、かつ第4の傾斜溝160よりも溝の長さが短い、第5の傾斜溝170を有している。
【0150】
このように、付加的形態2-9に従う本開示の空気入りタイヤは、上記のような第5の傾斜溝170を有していることにより、付加的形態2-8に対して更に排水性が向上する。加えて、第5の傾斜溝170は、第4の傾斜溝160よりも溝の長さが短いため、第5の傾斜溝170を配置することによる陸部のブロック剛性の低下が少ない。
【0151】
したがって、付加的形態2-9に従う本開示の空気入りタイヤは、ブロック剛性の低下を抑制しつつ、付加的形態2-8に対して更に高い排水性を有している。
【0152】
《付加的形態2-10》
付加的形態2-10に従う本開示の空気入りタイヤは、図1に示すように、付加的形態2-9について、タイヤ幅方向Wに関して、第3の傾斜溝150及び第4の傾斜溝160は、それぞれ接地端E及びEに跨って延在しており、かつ第5の傾斜溝170は、接地端Eよりもタイヤ赤道面CL側で終端している。
【0153】
付加的形態2-10に従う本開示の空気入りタイヤは、第3の傾斜溝150及び第4の傾斜溝160が、それぞれ接地端E及びEに跨って延在していることにより、タイヤの内側方向から外側方向に、より排水しやすい。したがって、付加的形態2-9に従う本開示の空気入りタイヤに対して、更に高い排水性を有している。加えて、第5の傾斜溝170が接地端Eよりもタイヤ赤道面CL側で終端しているため、第5の傾斜溝170が配置されることによる陸部のブロック剛性の低下を更に抑制することができる。
【0154】
したがって、付加的形態2-10に従う本開示の空気入りタイヤは、ブロック剛性の低下を抑制しつつ、付加的形態2-9に対して更に高い排水性を有している。
【0155】
《付加的形態2-11》
付加的形態2-11に従う本開示の空気入りタイヤは、図1に示すように、付加的形態2-9又は2-10に関して、第2の傾斜溝140、第3の傾斜溝150、及び第4の傾斜溝160それぞれがタイヤ幅方向Wとのなす鋭角の向きは、第1の傾斜溝130がタイヤ幅方向Wとのなす鋭角の向きと等しい。また、第5の傾斜溝170がタイヤ幅方向Wとのなす鋭角の向きは、第1の傾斜溝130がタイヤ幅方向Wとのなす鋭角の向きと異なる。
【0156】
付加的形態2-11に従う本開示の空気入りタイヤは、第5の傾斜溝170がタイヤ幅方向Wとのなす鋭角の向きが、第1の傾斜溝130、第2の傾斜溝140、第3の傾斜溝150、及び第4の傾斜溝160それぞれがタイヤ幅方向Wとのなす鋭角の向きと異なるため、空気入りタイヤの一方の回転方向では第1の傾斜溝130、第2の傾斜溝140、第3の傾斜溝150、及び第4の傾斜溝160によって排水性を特に高めつつ、空気入りタイヤの他方の回転方向では長さの小さい第5の傾斜溝によって若干の排水性を高めることができる。
【0157】
概して、車両が前進する際には、車両の進行速度が大きいため、空気入りタイヤに特に高い排水性が求められる。一方で、車両が後進する際には、車両の進行速度は通常は大きくないため、空気入りタイヤに求められる排水性は、車両が前進する場合よりも小さい。
【0158】
付加的形態2-11に従う本開示の空気入りタイヤは、車両の進行方向に対するタイヤの装着向きにもよるが、例えば車両が前進する際には第1の傾斜溝130、第2の傾斜溝140、第3の傾斜溝150、及び第4の傾斜溝160によって排水性を向上しつつ、タイヤの回転方向が逆になったとき、すなわち例えば車両が後進するときにおいても、第5の傾斜溝170によって排水性を向上させることができる。更には、第5の傾斜溝170は、第4の傾斜溝160よりも溝の長さが短いため、第4の傾斜溝160と比較して排水性が小さいが、第5の傾斜溝170を設けることによる陸部のブロック剛性の低下の程度が小さい。したがって、車両の前進及び後進における排水性及びブロック剛性を両立することができる。
【0159】
《付加的形態2-12》
付加的形態2-12に従う本開示の空気入りタイヤは、図2に示すように、付加的形態2-8から2-10のいずれか一つに関して、第2の傾斜溝140及び第4の傾斜溝160それぞれがタイヤ幅方向Wとのなす鋭角の向きは、第1の傾斜溝130がタイヤ幅方向Wとのなす鋭角の向きと等しく、第3の傾斜溝150がタイヤ幅方向Wとのなす鋭角の向きは、第1の傾斜溝130がタイヤ幅方向Wとのなす鋭角の向きと異なる。
【0160】
付加的形態2-12に従う本開示の空気入りタイヤは、車両の進行方向に対するタイヤの装着向きにもよるが、例えば車両が前進する際には第1の傾斜溝130、第2の傾斜溝140、及び第4の傾斜溝160によって排水性を向上しつつ、タイヤの回転方向が逆になったとき、すなわち例えば車両が後進するときにおいても、第3の傾斜溝150によって排水性を向上させることができる。第3の傾斜溝150は、車両装着内側に配置されているため、特に後進時における車両装着内側の排水性を特に向上させることができる。
【0161】
タイヤを車両に装着させた状態において、タイヤの赤道方向が地面に垂直な方向から車両内側方向に傾斜している場合、タイヤの接地面積は、車両装着外側よりも車両装着内側の方が若干大きい。したがって、このような場合において、付加的形態2-12に従う本開示の空気入りタイヤを適用することにより、例えば後進時におけるウェット操安性を特に向上させることができる
【0162】
《付加的形態2-13》
付加的形態2-13に従う本開示の空気入りタイヤは、図1(及び図2)に示すように、付加的形態2-8から2-12のいずれか一つについて、タイヤ周方向に関して、第3の傾斜溝150(図2では260)の車両装着外側の終端部は、互いに隣接する2つの第1の傾斜溝130(図2では240)の車両装着内側の端部の間で終端しており、かつ/又は第4の傾斜溝160(図2では270)の車両装着内側の終端部は、互いに隣接する2つの第2の傾斜溝140(図2では250)の車両装着外側の端部の間で終端している。
【0163】
図1で説明すると、付加的形態2-13に従う本開示の空気入りタイヤは、上記のような構成によって、第1の周方向主溝110及び第2の周方向主溝120からそれぞれ第1の傾斜溝130及び第2の傾斜溝120に流入した水を、それぞれ第3の傾斜溝150及び第4の傾斜溝160が効率よく回収し、タイヤの外側に排出しやすい。このような観点から、タイヤ幅方向Wに関して、第3の傾斜溝150の車両装着外側の終端部は、互いに隣接する2つの第1の傾斜溝130の車両装着内側の終端部の間で終端していることが、更に好ましい。同様に、タイヤ幅方向Wに関して、第4の傾斜溝160の車両装着内側の終端部は、互いに隣接する2つの第2の傾斜溝140の車両装着外側の終端部の間で終端していることが、更に好ましい。
【0164】
《付加的形態2-14》
付加的形態2-14に従う本開示の空気入りタイヤは、図1に示すように、付加的形態2-8から2-13のいずれか一つに関して、第2の傾斜溝140の車両装着外側方向Wの終端部は、タイヤ周方向に関して隣り合う2つの第4の傾斜溝160間で終端している。ここで、隣り合う2つの第4の傾斜溝160のうちの一方から他方までのタイヤ周方向の長さをLG4G4とし、かつ隣り合う2つの第4の傾斜溝160のうちの一方から第2の傾斜溝140の終端部までのタイヤ周方向の長さをLG2G4としたときに、以下の式(16)を満たす:
0.40<LG2G4/LG4G4<0.60 (16)
【0165】
上記式(15)を満たす場合、第2の傾斜溝140の車両装着外側方向Wの終端部は、タイヤ周方向に関して隣り合う2つの第4の傾斜溝160の中央付近で終端する。これにより、第2の傾斜溝140と第4の傾斜溝160との間での水の受け渡しがより効率的に行われる。なお、図2ではLG4G4及びLG2G4を示していないが、同様である。
【0166】
ここで、LG2G4/LG4G4は、0.40超、0.43以上、又は0.45以上であってよく、0.60未満、0.58以下、又は0.55以下であってよい。
【0167】
《付加的形態2-15》
付加的形態2-15に従う本開示の空気入りタイヤは、付加的形態2-8から2-14のいずれか一つに関して、タイヤ子午断面視において、周方向主溝及び各傾斜溝が無いとした場合のタイヤ表面プロファイルから第1及び第2の周方向主溝110及び120の溝底までのタイヤ径方向長さの最大値をdとするとともに、タイヤ表面プロファイルから第1の傾斜溝130、第2の傾斜溝140、第3の傾斜溝150、及び第4の傾斜溝160の溝底までのタイヤ径方向長さの最大値を、それぞれdIG1、dIG2、dIG3、及びdIG4としたときに、以下の式(17)から(20)を満たす:
0.05<dIG1/d<0.85 (17)
0.05<dIG2/d<0.85 (18)
0.05<dIG3/d<0.85 (19)
0.05<dIG4/d<0.85 (20)
【0168】
付加的形態2-15に従う本開示の空気入りタイヤは、タイヤ表面プロファイルから第1の傾斜溝130、第2の傾斜溝140、第3の傾斜溝150、及び第4の傾斜溝160の溝底までのタイヤ径方向長さの最大値(dIG1、dIG2、dIG3、及びdIG4)が、タイヤ表面プロファイルから第1及び第2の周方向主溝110及び120の溝底までのタイヤ径方向長さの最大値dよりも小さい。そのため、各傾斜溝130、140、150及び160によるタイヤのブロック剛性の低下を抑制しつつ、排水性を向上させることができる。ここで、0.05<dIG1(又はdIG2、dIG3、dIG4)/dであると、第1の傾斜溝130、第2の傾斜溝140、第3の傾斜溝150、及び第4の傾斜溝160の深さが十分に大きいため、特に排水性が向上する。他方、dIG1(又はdIG2、dIG3、dIG4)/d<0.85であると、第1の傾斜溝130、第2の傾斜溝140、第3の傾斜溝150、及び第4の傾斜溝160の深さが大きすぎず、特にブロック剛性の低下を抑制することができる。
【0169】
ここで、dIG1(又はdIG2、dIG3、dIG4)/dは、0.05超、0.1以上、0.2以上、又は0.3以上であってよく、0.85未満、0.80以下、0.70以下、又は0.60以下であってよい。
【0170】
《付加的形態2-16》
本開示の付加的形態2-16に従う空気入りタイヤは、基本形態2、並びに付加的形態2-1から2-15のいずれか一つに関して、タイヤ赤道面CLを基準とした車両装着内側の周方向主溝の溝総面積をSSIとするとともに、タイヤ赤道面を基準とした車両装着外側の周方向主溝の溝総面積をSSOとしたときに、以下の式(21)を満たす。
SO<SSI (21)
【0171】
ここで、溝総面積とは、空気入りタイヤのトレッド面の平面視において、面取り部分を含めた、所定の領域にある溝面積の総和を意味する。したがって、例えばタイヤ赤道面CLを基準とした車両装着内側の周方向主溝の溝総面積とは、タイヤ赤道面CLよりも車両装着内側に配置されている周方向主溝、及びタイヤ赤道面CLよりも車両装着内側に位置する周方向主溝、並びにこれらの周方向主溝に形成されている面取り部の面積の総和である。
【0172】
図1において、第1の周方向主溝110と第2の周方向主溝120とは、これらの間にタイヤ赤道面CLを挟むようにして配置されている。ここで、第1の周方向主溝110の溝幅は、第2の周方向主溝120の溝幅よりも大きい。
【0173】
したがって、図1において、タイヤ赤道面CLを基準とした車両装着内側の周方向主溝の溝総面積SSIは、タイヤ赤道面を基準とした車両装着外側の周方向主溝の溝総面積をSSOよりも大きい。
【0174】
また、図2において、第1の周方向主溝210と第3の周方向主溝230とは、これらの間にタイヤ赤道面CLを挟むようにして配置されている。また、第2の周方向主溝220は、赤道面CLと重なるようにして配置されている。ここで、タイヤ赤道面CLを基準とした車両装着内側の周方向主溝の溝総面積SSIは、第1の周方向主溝210の溝面積と、第2の周方向主溝220のうちタイヤ赤道面CLより車両装着内側部分の溝面積の和である。また、タイヤ赤道面CLを基準とした車両装着外側の周方向主溝の溝総面積SSOは、第3の周方向主溝230の溝面積と、第2の周方向主溝220のうちタイヤ赤道面CLより車両装着外側部分の溝面積の和である。ここで、第1の周方向主溝210の溝幅は、第3の周方向主溝230の溝幅よりも大きい。また、第2の周方向主溝220は、タイヤ赤道面CLより車両装着内側部分の溝面積とタイヤ赤道面CLより車両装着外側部分の溝面積が等しくなるように配置されている。
【0175】
したがって、図2において、タイヤ赤道面CLを基準とした車両装着内側の周方向主溝の溝総面積SSIは、タイヤ赤道面CLを基準とした車両装着外側の周方向主溝の溝総面積をSSOよりも大きい。
【0176】
上述のとおり、車両装着内側においては排水性を優先的に高めるとともに、車両装着外側では剛性を優先的に高めることで、ドライ操安性とウェット操安性を効率的に向上させることが行われる。
【0177】
本開示の付加的形態2-16に従う空気入りタイヤでは、タイヤ赤道面CLを基準とした車両装着内側の周方向主溝の溝総面積SSIを大きくして排水性を効率的に高める一方、タイヤ赤道面を基準とした車両装着外側の周方向主溝の溝総面積SSOを小さくして、陸部剛性を効率的に高めている。
【0178】
したがって、本開示の付加的形態2-16に従う空気入りタイヤは、ウェット操縦安定性とドライ操縦安定性を更に向上させることができる。
【0179】
なお、タイヤ赤道面を基準とした車両装着外側の周方向主溝の溝総面積SSOに対するタイヤ赤道面CLを基準とした車両装着内側の周方向主溝の溝総面積SSIの比率SSI/SSOは、1.1より大きく、かつ1.5より小さいことが好ましい。SSI/SSOは、1.1超、1.2以上、1.3以上、又は1.4以上であってよく、1.5未満、1.4以下、1.3以下、又は1.2以下であってよい。
【0180】
《付加的形態2-17》
本開示の付加的形態2-17に従う空気入りタイヤは、図1及び図2に示すように、基本形態2、並びに付加的形態2-1から2-16のいずれか一つにおいて、隣り合う2つの周方向主溝のいずれか一組に関して、車両装着内側の周方向主溝の平均溝幅は、車両装着外側の周方向主溝の平均溝幅よりも大きい。
【0181】
より具体的には、図1では、第1の周方向主溝110の溝幅は、第2の周方向主溝120の溝幅より大きい。また、図2では、第1から3の周方主溝210,220,230の溝幅の大きさは、第1の周方向主溝210、第2の周方向主溝220、及び第3の周方向主溝230の順に大きい。
【0182】
上述のとおり、車両装着内側においては排水性を優先的に高めるとともに、車両装着外側では剛性を優先的に高めることで、ドライ操安性とウェット操安性を効率的に向上させることが行われる。
【0183】
本開示の付加的形態2-17に従う空気入りタイヤでは、隣り合う2つの周方向主溝に関して、車両装着内側の周方向主溝の平均溝幅を大きくして、排水性を効率的に向上させている一方、車両装着方向外側の周方向主溝の平均溝幅を小さくして、その周りに区画形成された陸部の剛性を効率的に向上させている。
【0184】
したがって、本開示の付加的形態2-17に従う空気入りタイヤは、ウェット操縦安定性とドライ操縦安定性を更に向上させることができる。
【0185】
《付加的形態2-18》
本開示の付加的形態2-18に従う空気入りタイヤは、基本形態2、並びに付加的形態2-1から2-17のいずれか一つに関して、隣り合う2つの周方向主溝の全ての組み合わせにおいて、車両装着内側の周方向主溝の平均溝幅が、車両装着外側の周方向主溝の平均溝幅よりも大きい。
【0186】
すなわち、本開示の付加的形態2-18に従う空気入りタイヤは、複数の周方向主溝の平均溝幅が、車両装着内側から車両装着外側に向かうにつれて小さくなるように構成されている。
【0187】
上述のとおり、車両装着内側においては排水性を優先的に高めるとともに、車両装着外側では剛性を優先的に高めることで、ドライ操安性とウェット操安性を効率的に向上させることが行われる。
【0188】
本開示の付加的形態2-18に従う空気入りタイヤでは、車両装着内側に配置されている周方向主溝の平均溝幅を大きくして、排水性を効率的に向上させている一方、車両装着外側の周方向主溝の平均溝幅を小さくして、その周りに区画形成された陸部の剛性を効率的に向上させている。
【0189】
したがって、本開示の付加的形態2-18に従う空気入りタイヤは、ウェット操縦安定性とドライ操縦安定性を更に向上させることができる。
【0190】
《付加的形態2-19》
図5は、図2における第1の周方向主溝210のA21-A22断面図である。
【0191】
図5に示すように、本開示の付加的形態2-19に従う空気入りタイヤは、基本形態2、並びに付加的形態2-1から2-18のいずれか一つに関して、タイヤ子午断面視において、複数の周方向主溝のうち、少なくとも最も車両装着内側に配置されている周方向主溝(図5では第1の周方向主溝210)に関して、タイヤ径方向Rに対する第1の周方向主溝210の車両装着内側溝壁210aの傾斜角度をθGIとするとともに、タイヤ径方向に対する周方向主溝210の車両装着外側溝壁210bの傾斜角度をθGOとしたときに、以下の式(22)を満たす。
θGI<θGO (22)
【0192】
本開示の付加的形態2-19に従う空気入りタイヤでは、タイヤ径方向に対する第1の周方向主溝210の車両装着内側溝壁210aの傾斜角度θGIが、タイヤ径方向に対する第1の周方向主溝210の車両装着外側溝壁210bの傾斜角度θGOよりも小さい。
【0193】
ここで、第1の周方向主溝210の両側に位置する陸部表面から、溝底までのプロファイルラインを、溝210の車両装着両側において比較すると、車両装着内側Wにおいては面取り部211の表面プロファイルから溝のプロファイルに移行する際の角度変化が比較的小さく、車両装着外側Wにおいては面取り部212の表面プロファイルから溝のプロファイルに移行する際の角度変化が比較的大きい。即ち、溝210の両側に位置する陸部に同じタイヤ幅方向逆向きでかつ同程度の応力が加わったと仮定すると、両陸部の形状から、溝210に対して車両装着外側に位置する陸部の方が摩耗し難く、剛性が高いといえる。即ち、この構成は、車両装着外側において優先的に剛性を高めることが好ましいという、上記見解に合致する。
【0194】
また、第1の周方向主溝210の溝中心線を基準とすると、車両装着内側の溝体積の方が車両装着外側の溝体積よりも大きい。この構成についても、車両装着内側において優先的に排水性を高めることが好ましいという、上記見解に合致する。
【0195】
したがって、本開示の付加的形態2-19に従う空気入りタイヤは、ウェット操縦安定性とドライ操縦安定性を更に向上させることができる。
【0196】
図6は、図2における第2の周方向主溝220のB21-B22断面図である。また、図7は、図2における第3の周方向主溝230のC21-C22断面図である。また、図8は、図2における第4の傾斜溝270のD21-D22断面図である。
【0197】
図6及び図7に示すように、本開示の付加的形態2-19に従う空気入りタイヤは更に、第2の周方向主溝220及び第3の周方向主溝230においても、θGI<θGOを満たしていることができる。他方、図8に示すように、第4の傾斜溝270に関しては、溝壁の傾斜角度θ、θは同じであってよい。
【0198】
なお、図5から図7に示すように、θGI及びθGOは、それぞれ第1の周方向主溝210、第2の周方向主溝220、及び第3の周方向主溝230の順に大きいのが好ましい。これは、タイヤの車両装着外側よりも、内側において、特に排水性向上が求められるためである。
【0199】
タイヤ径方向に対する周方向主溝の車両装着内側溝壁の傾斜角度θGIに対するタイヤ径方向に対する周方向主溝の車両装着外側溝壁の傾斜角度θGOの比率θGO/θGIは、2.0より大きく、かつ5.0より小さいことが好ましい。
【0200】
θGO/θGIは、2.0超、2.5以上、3.0以上、又は3.5以上であってよく、5.0未満、4.5以下、4.0以下、又は3.5以下であってよい。
【0201】
θGIは、0°超30°以下であってよい。θGIは、0°超、1°以上、5°以上、10°以上、又は15°以上であってよく、30°以下、25°以下、20°以下、15°以下、又は10°以下であってよい。
【実施例
【0202】
(発明例1から6及び従来例1の空気入りタイヤ)
発明例1から6及び従来例1の空気入りタイヤを、以下の表1に示す「条件」のとおりに製造した。なお、各例の空気入りタイヤのタイヤサイズは255/35R19(JATMAにて規定)であった。
【0203】
表1において、「周方向主溝の形状」が「波形」であるとは、周方向主溝の溝中心線が、タイヤ周方向に進むにつれてタイヤ幅方向に振幅している波形であることを意味している。
【0204】
表1において、「車両装着内側面取り部」は、周方向主溝の車両装着内側の縁部に設けられる面取りである。ある例において「車両装着内側面取り部」が「有り」とは、当該例における全ての周方向主溝について、「車両装着内側面取り部」が有ることを意味している。また、ある例において「車両装着内側面取り部」が「無し」とは、当該例における全ての周方向主溝について、「車両装着内側面取り部」が無いことを意味している。
【0205】
表1において、「車両装着外側面取り部」は、周方向主溝の車両装着外側の縁部に設けられる面取りである。ある例において「車両装着外側面取り部」が「有り」とは、当該例における全ての周方向主溝について、「車両装着外側面取り部」が有ることを意味している。また、ある例において「車両装着外側面取り部」が「無し」とは、当該例における全ての周方向主溝について、「車両装着外側面取り部」が無いことを意味している。
【0206】
表1において、「WAI」は、車両装着内側面取り部の面取り幅であり、「WAO」は、車両装着外側面取り部の面取り幅である。また、「SSI」は、タイヤ赤道面を基準とした車両装着内側の周方向主溝の溝総面積であり、「SSO」は、タイヤ赤道面を基準とした車両装着外側の周方向主溝の溝総面積である。また、「dCI」は、タイヤ表面プロファイルから車両装着内側面取り部のタイヤ径方向最内位置までのタイヤ径方向長さの最大値であり、「d」は、周方向主溝が無いとした場合のタイヤ表面プロファイルから周方向主溝の溝底までのタイヤ径方向長さの最大値である。また、「θGI」は、タイヤ径方向に対する周方向主溝の車両装着内側溝壁の傾斜角度であり、「θGO」は、タイヤ径方向に対する周方向主溝の車両装着外側溝壁の傾斜角度である。
【0207】
(発明例7から12及び従来例2の空気入りタイヤ)
発明例7から12及び従来例2の空気入りタイヤを、以下の表2に示す「条件」のとおりに製造した。なお、各例の空気入りタイヤのタイヤサイズは255/35R19(JATMAにて規定)であった。
【0208】
表2において、「車両装着外側面取り部」が「有り」とは、3本の周方向主溝のうち車両装着最外側の周方向主溝を除いた周方向主溝、すなわち車両装着内側の2本の周方向主溝についてのみ、「車両装着外側面取り部」が有ることを意味している。また、ある例において「車両装着外側面取り部」が「無し」とは、当該例における全ての周方向主溝について、「車両装着外側面取り部」が無いことを意味している。
条件の定義に関して、その余は表1と同様である。
【0209】
(ドライ操安性についての評価)
各例のタイヤをリムサイズ19×9.0JのJATMA標準リムのリムホイールにリム組みして、空気圧を240kPaに調整し、試験車両としての2.0Lエンジン搭載のFR車の総輪に装着した。
【0210】
そして、平坦な周回路を有するドライ路面のテストコースを、試験車両によって10km/hから180km/hで走行し、テストドライバーがレーンチェンジ時及びコーナリング時における操舵性、及び直進時における安定性についての官能評価を行った。ドライ操安性は、従来例を100とする評点で表示され、その数値が大きいほど優れていることを示す。その結果を表1及び表2に併記する。
【0211】
(ウェット操安性についての評価)
各例のタイヤをリムサイズ19×9.0JのJATMA標準リムのリムホイールにリム組みして、空気圧を240kPaに調整し、試験車両としての2.0Lエンジン搭載のFR車の総輪に装着した。
【0212】
そして、平坦な周回路を有するウェット路面のテストコースを、試験車両によって180km/hから停止するまで減速走行し、走行距離の逆数を算出した。ウェット操安性は、従来例を100とする評点で表示され、その数値が大きいほど優れていることを示す。その結果を表1及び表2に併記する。
【0213】
【表1】
【0214】
【表2】
【0215】
表1及び表2によれば、本発明の技術的範囲に属する発明例1から発明例12の空気入りタイヤについては、いずれも、本発明の技術的範囲に属さない、従来例1及び2の空気入りタイヤに比べて、ドライ操安性及びウェット操安性の改善がバランス良く実現されていることが判る。
【0216】
(発明例1-1、1-2、7-1、及び7-2の空気入りタイヤ)
発明例1に関して、第1の周方向主溝110の平均溝幅が第2の周方向主溝120の平均溝幅と等しいものを発明例1-1として製造し、第1の周方向主溝110の平均溝幅が第2の周方向主溝120の平均溝幅よりも大きいものを発明例1-2として製造した。なお、各例の空気入りタイヤのタイヤサイズは255/35R19(JATMAにて規定)であった。
【0217】
また、発明例7に関して、第1の周方向主溝210、第2の周方向主溝220、及び第3の周方向主溝230の平均溝幅が等しいものを発明例7-1として製造し、第3の周方向主溝230、第2の周方向主溝220、及び第1の周方向主溝210の順に平均溝幅が大きくなるものを発明例7-2として製造した。なお、各例の空気入りタイヤのタイヤサイズは255/35R19(JATMAにて規定)であった。
【0218】
発明例1-1、1-2、7-1、及び7-2の空気入りタイヤに対して、上記の「ドライ操安性についての評価」及び「ウェット操安性についての評価」を行った。なお、これらの発明例では、ウェット操安性については車両の前進時及び後進時の両方について評価した。
【0219】
発明例1-1におけるドライ操安性及びウェット操安性の評価をそれぞれ100としたときの、発明例1-2におけるドライ操安性及びウェット操安性の評価は、それぞれ99及び101であった。また、発明例7-1におけるドライ操安性及びウェット操安性の評価をそれぞれ100としたときの、発明例7-2におけるドライ操安性及びウェット操安性の評価は、それぞれ99及び101であった。
【0220】
(発明例13から29の空気入りタイヤ)
発明例13から21の空気入りタイヤを、図1に示す溝の形状をベースとして、以下の表3に示す「条件」のとおりに製造した。また、発明例22から30の空気入りタイヤを、図2に示す溝の形状をベースとして、以下の表4に示す「条件」のとおりに製造した。なお、各例の空気入りタイヤのタイヤサイズは255/35R19(JATMAにて規定)であった。なお、発明例13から21の空気入りタイヤは、いずれも発明例1の構成に加えて、表3に示す条件を有している。また、発明例22から30の空気入りタイヤは、いずれも発明例7の構成に加えて、表4に示す条件を有している。
【0221】
図1を用いて説明すると、表3において、「LIG1」は、第1の傾斜溝130のうち、第1の周方向主溝110から車両装着外側に延在する部分のタイヤ幅方向Wの長さであり、「L」は、第1の周方向主溝110の車両装着外側に隣接している陸部のタイヤ幅方向の長さである。また、「LG4G4」は、タイヤ周方向に関して隣り合う2つの第4の傾斜溝160のうちの一方から他方までのタイヤ周方向の長さであり、「LG2G4」は、隣り合う2つの第4の傾斜溝のうちの一方から第2の傾斜溝の終端部までのタイヤ周方向の長さである。また、「d」は、タイヤ子午断面視において、周方向主溝110、120及び各傾斜溝130から170が無いとした場合のタイヤ表面プロファイル(以下、単に「タイヤ表面プロファイル」という)から周方向主溝110、120の溝底までのタイヤ径方向長さの最大値であり、「dIG1」、「dIG2」、「dIG3」、及び「dIG4」は、それぞれ、タイヤ表面プロファイルから第1の傾斜溝130、第2の傾斜溝140、第3の傾斜溝150、及び第4の傾斜溝160の溝底までのタイヤ径方向長さの最大値である。最後に、「dG1」は、タイヤ表面プロファイルから第1の周方向主溝110の溝底までのタイヤ径方向長さの最大値であり、「dIG1’」は、タイヤ表面プロファイルから第1の傾斜溝130のうち第1の周方向主溝110を起点として車両装着外側の部分における溝底までのタイヤ径方向長さの最大値であり、「dIG1’’」は、タイヤ表面プロファイルから第1の傾斜溝130のうち第1の周方向主溝110を起点として車両装着内側の部分における溝底までのタイヤ径方向長さの最大値である。
【0222】
また、第1の傾斜溝130の形状に関して、「起点」とは、第1の傾斜溝130が第1の周方向溝110から始まる起点であり、「内側の起点」とは、第1の周方向溝110に関してタイヤ幅方向内側、すなわち第1の周方向溝110から見てタイヤ赤道線CL側の起点である。他方、「外側の起点」とは、第1の周方向溝110に関してタイヤ幅方向外側の起点、すなわち第1の周方向溝110から見てタイヤ赤道線CL側と反対側の起点である。同様に、第2の傾斜溝140の形状に関して、「起点」とは、第2の傾斜溝140が第2の周方向溝120から始まる起点であり、「外側の起点」とは、第2の周方向溝120に関してタイヤ幅方向外側の起点、すなわち第2の周方向溝120から見てタイヤ赤道線CL側と反対側の起点である。そして、起点が「凹」であるとは、傾斜溝の起点が周方向主溝の凹となる部分にあることを意味しており、逆に、起点が「凸」であるとは、傾斜溝の起点が周方向主溝の凸となる部分にあることを意味している。表4に関しても、図2を用いて同様に理解される。
【0223】
なお、第1の傾斜溝130(図2では240)は、複数の周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている周方向主溝110(図2では210)を起点として車両装着各側に延在している溝である。また、第2の傾斜溝140(図2では250)は、複数の周方向主溝のうち最も車両装着外側に配置されている周方向主溝120(図2では230)を起点として車両装着外側に延在している溝である。第3の傾斜溝150(図2では260)は、第1の周方向主溝110(図2では210)の車両装着内側に隣接している陸部内でその両端が終端するようにして配置されている溝である。また、第4の傾斜溝160(図2では270)は、第2の周方向主溝120(図2では250)の車両装着外側に隣接している陸部内でその両端が終端するようにして配置されている溝である。また、第5の傾斜溝170は、複数の周方向主溝(図1では2本)のうち最も車両装着外側に配置されている第2の周方向主溝120の車両装着外側に隣接している陸部内でその両端が終端するようにして配置されており、かつ第4の傾斜溝160よりも溝の長さが短い溝である。
【0224】
発明例13から29の空気入りタイヤに対して、上記の「ドライ操安性についての評価」及び「ウェット操安性についての評価」を行った。なお、これらの発明例では、ウェット操安性については車両の前進時及び後進時の両方について評価した。
【0225】
結果を表3及び4に示す。
【0226】
【表3】
【0227】
【表4】
【0228】
表3及び表4によれば、本発明の技術的範囲に属する発明例13から発明例29の空気入りタイヤについては、いずれも、ドライ操安性及びウェット操安性の改善がバランス良く実現されていることが判る。なお、表3及び表4において、数値範囲を表す「~」は、端点を含まない。すなわち、「0.2~0.6」は、0.2超0.6未満を意味する。同様に、「0.4~0.6」は、0.4超0.6未満を意味する。
【0229】
(発明例30及び31の空気入りタイヤ)
発明例30及び31の空気入りタイヤを、第1の傾斜溝110に関する構成について、発明例30ではLIG1=LIG2とし、発明例31ではLIG1<LIG2としたことを除いて、図1に示す溝の形状をベースとして製造した。なお、各例の空気入りタイヤのタイヤサイズは255/35R19(JATMAにて規定)であった。
【0230】
発明例30及び31の空気入りタイヤに対して、上記の「ドライ操安性についての評価」及び「ウェット操安性についての評価」を行った。なお、これらの発明例では、ウェット操安性については車両の前進時及び後進時の両方について評価した。
【0231】
発明例30におけるドライ操安性及びウェット操安性の評価をそれぞれ100としたときの、発明例31におけるドライ操安性及びウェット操安性の評価は、それぞれ101及び101であった。
【0232】
(発明例32から63の空気入りタイヤ)
発明例32から48の空気入りタイヤを、図1に示す溝の形状をベースとして、面取りを設けずに、かつ第1及び第2の周方向主溝110、120の条件、並びに第1~第5の傾斜溝130~170の有無及び条件を異ならせて、以下の表5に示す「条件」のとおりに製造した。また、発明例49から63の空気入りタイヤを、図2に示す溝の形状をベースとして、面取りを設けずに、かつ第1及び第3の周方向主溝210、230の条件、並びに第1~第4の傾斜溝240~270の有無及び条件を異ならせて、以下の表6に示す「条件」のとおりに製造した。なお、各例の空気入りタイヤのタイヤサイズは255/35R19(JATMAにて規定)であった。
【0233】
図1を用いて説明すると、表5において、「LIG1」は、第1の傾斜溝130のうち、第1の周方向主溝110から車両装着外側に延在する部分のタイヤ幅方向Wの長さであり、「LIG2」は、第1の周方向主溝110から車両装着内側に延在する部分のタイヤ幅方向Wの長さであり、「L」は、第1の周方向主溝110の車両装着外側に隣接している陸部のタイヤ幅方向の長さである。また、「LG4G4」は、タイヤ周方向に関して隣り合う2つの第4の傾斜溝160のうちの一方から他方までのタイヤ周方向の長さであり、「LG2G4」は、隣り合う2つの第4の傾斜溝のうちの一方から第2の傾斜溝の終端部までのタイヤ周方向の長さである。また、「d」は、タイヤ子午断面視において、周方向主溝110、120及び各傾斜溝130から170が無いとした場合のタイヤ表面プロファイル(以下、単に「タイヤ表面プロファイル」という)から周方向主溝110、120の溝底までのタイヤ径方向長さの最大値であり、「dIG1」、「dIG2」、「dIG3」、及び「dIG4」は、それぞれ、タイヤ表面プロファイルから第1の傾斜溝130、第2の傾斜溝140、第3の傾斜溝150、及び第4の傾斜溝160の溝底までのタイヤ径方向長さの最大値である。最後に、「dG1」は、タイヤ表面プロファイルから第1の周方向主溝110の溝底までのタイヤ径方向長さの最大値であり、「dIG1’」は、タイヤ表面プロファイルから第1の傾斜溝130のうち第1の周方向主溝110を起点として車両装着外側の部分における溝底までのタイヤ径方向長さの最大値であり、「dIG1’’」は、タイヤ表面プロファイルから第1の傾斜溝130のうち第1の周方向主溝110を起点として車両装着内側の部分における溝底までのタイヤ径方向長さの最大値である。
【0234】
また、第1の傾斜溝130の形状に関して、「起点」とは、第1の傾斜溝130が第1の周方向溝110から始まる起点であり、「内側の起点」とは、第1の周方向溝110に関してタイヤ幅方向内側、すなわち第1の周方向溝110から見てタイヤ赤道線CL側の起点である。他方、「外側の起点」とは、第1の周方向溝110に関してタイヤ幅方向外側の起点、すなわち第1の周方向溝110から見てタイヤ赤道線CL側と反対側の起点である。同様に、第2の傾斜溝140の形状に関して、「起点」とは、第2の傾斜溝140が第2の周方向溝120から始まる起点であり、「外側の起点」とは、第2の周方向溝120に関してタイヤ幅方向外側の起点、すなわち第2の周方向溝120から見てタイヤ赤道線CL側と反対側の起点である。そして、起点が「凹」であるとは、傾斜溝の起点が周方向主溝の凹となる部分にあることを意味しており、逆に、起点が「凸」であるとは、傾斜溝の起点が周方向主溝の凸となる部分にあることを意味している。表4に関しても、図2を用いて同様に理解される。
【0235】
なお、第1の傾斜溝130(図2では240)は、複数の周方向主溝のうち最も車両装着内側に配置されている周方向主溝110(図2では210)を起点として車両装着各側に延在している溝である。また、第2の傾斜溝140(図2では250)は、複数の周方向主溝のうち最も車両装着外側に配置されている周方向主溝120(図2では230)を起点として車両装着外側に延在している溝である。第3の傾斜溝150(図2では260)は、第1の周方向主溝110(図2では210)の車両装着内側に隣接している陸部内でその両端が終端するようにして配置されている溝である。また、第4の傾斜溝160(図2では270)は、第2の周方向主溝120(図2では250)の車両装着外側に隣接している陸部内でその両端が終端するようにして配置されている溝である。また、第5の傾斜溝170は、複数の周方向主溝(図1では2本)のうち最も車両装着外側に配置されている第2の周方向主溝120の車両装着外側に隣接している陸部内でその両端が終端するようにして配置されており、かつ第4の傾斜溝160よりも溝の長さが短い溝である。
【0236】
【表5-1】
【表5-2】
【0237】
【表6-1】
【表6-2】
【0238】
表5及び表6によれば、本発明の技術的範囲に属する発明例32から発明例63の空気入りタイヤについては、いずれも、ドライ操安性及びウェット操安性の改善がバランス良く実現されていることが判る。
【0239】
(発明例32-1、32-2、49-1、及び49-2の空気入りタイヤ)
発明例32に関して、第1の周方向主溝110の平均溝幅が第2の周方向主溝120の平均溝幅と等しいものを発明例32-1として製造し、第1の周方向主溝110の平均溝幅が第2の周方向主溝120の平均溝幅よりも大きいものを発明例32-2として製造した。なお、各例の空気入りタイヤのタイヤサイズは255/35R19(JATMAにて規定)であった。
【0240】
また、発明例49に関して、第1の周方向主溝210、第2の周方向主溝220、及び第3の周方向主溝230の平均溝幅が等しいものを発明例49-1として製造し、第3の周方向主溝230、第2の周方向主溝220、及び第1の周方向主溝210の順に平均溝幅が大きくなるものを発明例49-2として製造した。
【0241】
発明例32-1、32-2、49-1、及び49-2の空気入りタイヤに対して、上記の「ドライ操安性についての評価」及び「ウェット操安性についての評価」を行った。なお、これらの発明例では、ウェット操安性については車両の前進時及び後進時の両方について評価した。
【0242】
発明例32-1におけるドライ操安性及びウェット操安性の評価をそれぞれ100としたときの、発明例32-2におけるドライ操安性及びウェット操安性の評価は、それぞれ99及び101であった。また、発明例49-1におけるドライ操安性及びウェット操安性の評価をそれぞれ100としたときの、発明例49-2におけるドライ操安性及びウェット操安性の評価は、それぞれ99及び101であった。
【符号の説明】
【0243】
100及び200 トレッド面
110及び210 第1の周方向主溝
111、211、221、及び231 車両装着内側面取り部
112、212、及び222 車両装着外側面取り部
120及び220 第2の周方向主溝
210a、220a、及び230a 車両装着内側溝壁
210b、220b、230b及び 車両装着外側溝壁
230 第3の周方向主溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8