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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】防汚性物品
(51)【国際特許分類】
   B32B 9/00 20060101AFI20240417BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240417BHJP
   C09K 3/18 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
B32B9/00 A
B32B27/00 103
C09K3/18 104
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023000221
(22)【出願日】2023-01-04
(65)【公開番号】P2023104892
(43)【公開日】2023-07-28
【審査請求日】2023-01-04
(31)【優先権主張番号】P 2022005890
(32)【優先日】2022-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】大下 真介
(72)【発明者】
【氏名】前平 健
(72)【発明者】
【氏名】内藤 真人
(72)【発明者】
【氏名】片岡 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】三橋 尚志
(72)【発明者】
【氏名】野村 孝史
【審査官】武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-116731(JP,A)
【文献】国際公開第2012/147876(WO,A1)
【文献】特開2007-041438(JP,A)
【文献】特開2007-168218(JP,A)
【文献】特開2006-039006(JP,A)
【文献】特表2014-500163(JP,A)
【文献】特開2021-172842(JP,A)
【文献】国際公開第2020/235528(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00- 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材上に位置する、中間層と、
前記中間層上に位置する、含フッ素シラン化合物を含む表面処理剤から形成された表面処理層と
を有して成り、
前記中間層は、Ce含有層を含み、
前記Ce含有層は、さらにSiを含み、
前記中間層は、スパッタリング、イオンビームアシスト、真空蒸着、化学気相蒸着、又は原子層堆積で成膜された層である非粒子層であり、
前記中間層の厚みは、120nm以下である、
物品。
【請求項2】
前記Ce含有層は、Si及びCeを含む複合酸化物を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記Ce含有層において、SiとCeのモル比は、10:90~99.99:0.01である、請求項1に記載の物品。
【請求項4】
前記中間層は、さらにアルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項5】
前記中間層における前記アルカリ金属及びアルカリ土類金属の濃度は、0.1~30モル%である、請求項4に記載の物品。
【請求項6】
前記Ce含有層の厚みは、0.1~100nmである、請求項1に記載の物品。
【請求項7】
前記中間層は、Ce含有層からなる、請求項1に記載の物品。
【請求項8】
基材と、
前記基材上に位置する、中間層と、
前記中間層上に位置する、含フッ素シラン化合物を含む表面処理剤から形成された表面処理層と
を有して成り、
前記中間層は、前記基材上に接して位置するCe含有層と、当該Ce含有層上に接して位置するケイ素酸化物層を含み、
前記中間層は、スパッタリング、イオンビームアシスト、真空蒸着、化学気相蒸着、又は原子層堆積で成膜された層である非粒子層であり、
前記中間層の厚みは、120nm以下である、
物品。
【請求項9】
前記ケイ素酸化物層の厚みは、0.1nm~100nmである、請求項8に記載の物品。
【請求項10】
前記含フッ素シラン化合物は、下記式(1)又は(2):
【化1】
[式中:
F1は、それぞれ独立して、Rf-R-O-であり;
F2は、-Rf -R-O-であり;
Rfは、それぞれ独立して、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基であり;
Rfは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基であり;
は、それぞれ独立して、2価のフルオロポリエーテル基であり;
pは、0又は1であり;
qは、それぞれ独立して、0又は1であり;
Siは、それぞれ独立して、水酸基、加水分解可能な基、水素原子又は1価の有機基(ただし、前記加水分解可能な基を除く)が結合したSi原子を含む1価の基であり;
少なくとも1つのRSiは、水酸基又は加水分解可能な基が結合したSi原子を含む1価の基であり;
は、それぞれ独立して、単結合又は2~10価の有機基であり;
αは、1~9の整数であり;
βは、1~9の整数であり;
γは、それぞれ独立して、1~9の整数であり、
前記加水分解可能な基は、-OR、-OCOR、-O-N=CR 、-NR 、-NHR、-NCO、又はハロゲン(これら式中、Rは、置換又は非置換のC1-4アルキル基を示す)である。]
で表される少なくとも1種のフルオロポリエーテル基含有化合物である、請求項1又は8に記載の物品。
【請求項11】
は、それぞれ独立して、式:
-(OC12-(OC10-(OC-(OCFa -(OC-(OCF
[式中、RFaは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は塩素原子であり、
a、b、c、d、e及びfは、それぞれ独立して、0~200の整数であって、a、b、c、d、e及びfの和は1以上であり、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
で表される基である、請求項10に記載の物品。
【請求項12】
Rfは、それぞれ独立して、C1-16パーフルオロアルキル基であり、
Rfは、それぞれ独立して、C1-6パーフルオロアルキレン基であり、
Faは、フッ素原子である、請求項11に記載の物品。
【請求項13】
は、各出現においてそれぞれ独立して、下記式(f1)、(f2)、(f3)、(f4)、(f5)又は(f6):
-(OC-(OC- (f1)
[式中、dは、1~200の整数であり、eは、0又は1である。]、
-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f2)
[式中、c及びdは、それぞれ独立して、0~30の整数であり;
e及びfは、それぞれ独立して、1~200の整数であり;
c、d、e及びfの和は、10~200の整数であり;
添字c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。]、
-(R-R- (f3)
[式中、Rは、OCF又はOCであり;
は、OC、OC、OC、OC10及びOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から選択される2又は3つの基の組み合わせであり;
gは、2~100の整数である。]、
-(R-R-R-(R7’-R6’g’- (f4)
[式中、Rは、OCF又はOCであり、
は、OC、OC、OC、OC10及びOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、
6’は、OCF又はOCであり、
7’は、OC、OC、OC、OC10及びOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、
gは、2~100の整数であり、
g’は、2~100の整数であり、
は、
【化2】
(式中、*は、結合位置を示す。)
である。];
-(OC12-(OC10-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f5)
[式中、eは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、d及びfは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であり、また、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
-(OC12-(OC10-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f6)
[式中、fは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、d及びeは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であり、また、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
で表される基である、請求項10に記載の物品。
【請求項14】
Siは、下記式(S1)、(S2)、(S3)、(S4)又は(S5):
【化3】
[式中:
11は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
12は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり;
n1は、(SiR11 n112 3-n1)単位毎にそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
11は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合又は2価の有機基であり;
13は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり;
tは、各出現においてそれぞれ独立して、2以上の整数であり;
14は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又は-X11-SiR11 n112 3-n1であり;
15は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子、炭素数1~6のアルキレン基または炭素数1~6のアルキレンオキシ基であり;
a1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-SiR21 p122 q123 r1であり;
は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子又は2価の有機基であり;
21は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z1’-SiR21’ p1’22’ q1’23’ r1’であり;
22は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
23は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり;
p1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
q1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
r1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
p1、q1、及びr1の合計は、SiR21 p122 q123 r1単位において、3であり;
1’は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子又は2価の有機基であり;
21’は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z1”-SiR22” q1”23” r1”であり;
22’は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
23’は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり;
p1’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
q1’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
r1’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
p1’、q1’、及びr1’の合計は、SiR21’ p1’22’ q1’23’ r1’単位において、3であり;
1”は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子又は2価の有機基であり;
22”は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
23”は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり;
q1”は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
r1”は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
q1”及びr1”の合計は、SiR22” q1”23” r1”単位において、3であり;
b1は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
c1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり;
k1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
l1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
m1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
k1、l1及びm1の合計は、SiRa1 k1b1 l1c1 m1単位において、3であり;
d1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-CR31 p232 q233 r2であり;
は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基であり;
31は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z2’-CR32’ q2’33’ r2’であり;
32は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-SiR34 n235 3-n2であり;
33は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基であり;
p2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
q2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
r2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
p2、q2、及びr2の合計は、SiR31 p232 q233 r2単位において、3であり Z2’は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基であり;
32’は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-SiR34 n235 3-n2であり;
33’は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基であり;
q2’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
r2’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
q2’、及びr2’の合計は、SiR32’ q2’33’ r2’単位において、3であり;
は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基であり;
34は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
35は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり;
n2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
e1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-SiR34 n235 3-n2であり;
f1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基であり;
k2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
l2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
m2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
k2、l2及びm2の合計は、CRd1 k2e1 l2f1 m2単位において、3であり;
g1及びRh1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-SiR11 n112 3-n1、-Z-SiRa1 k1b1 l1c1 m1、-Z-CRd1 k2e1 l2f1 m2であり;
は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基であり;
前記加水分解性基は、-OR、-OCOR、-O-N=CR 、-NR 、-NHR、-NCO、又はハロゲン(これら式中、Rは、置換又は非置換のC1-4アルキル基を示す)であり、
ただし、式(S1)、(S2)、(S3)、(S4)及び(S5)中、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が少なくとも1つ存在する。]
で表される基である、請求項10に記載の物品。
【請求項15】
は、それぞれ独立して、単結合、又は2価の有機基であり、
α、β、及びγは、1である、請求項10に記載の物品。
【請求項16】
は、それぞれ独立して、3価の有機基であり、
αは1かつβは2であるか、αは2かつβは1であり、
γは2である、
請求項10に記載の物品。
【請求項17】
前記基材は、ガラス基材である、請求項1又は8に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、防汚性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
ある種の含フッ素シラン化合物は、基材の表面処理に用いると、優れた撥水性、撥油性、防汚性などを提供し得ることが知られている。含フッ素シラン化合物を含む表面処理剤から得られる層(以下、「表面処理層」とも言う)は、いわゆる機能性薄膜として、例えばガラス、プラスチック、繊維、衛生用品、建築資材など種々多様な基材上に設けられている(特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-218639号公報
【文献】特開2017-082194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1又は特許文献2に記載の含フッ素シラン化合物は、優れた機能を有する表面処理層を与えることができるが、より高い摩擦耐久性を有する表面処理層を有する物品が求められている。
【0005】
本開示は、より摩擦耐久性が高い表面処理層を有する物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の態様を含む。
[1] 基材と、
前記基材上に位置する、中間層と、
前記中間層上に位置する、含フッ素シラン化合物を含む表面処理剤から形成された表面処理層と
を有して成り、
前記中間層は、Ce含有層を含む、物品。
[2] 前記Ce含有層は、さらにSiを含む、上記[1]に記載の物品。
[3] 前記Ce含有層は、Si及びCeを含む複合酸化物を含む、上記[1]又は[2]に記載の物品。
[4] 前記Ce含有層において、SiとCeのモル比は、10:90~99.99:0.01である、上記[2]又は[3]に記載の物品。
[5] 前記中間層は、さらにアルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む、上記[1]~[4]のいずれか1項に記載の物品。
[6] 前記中間層における前記アルカリ金属及びアルカリ土類金属の濃度は、0.1~30モル%である、上記[5]に記載の物品。
[7] 前記Ce含有層の厚みは、0.1~100nmである、上記[1]~[6]のいずれか1項に記載の物品。
[8] 前記中間層は、Ce含有層からなる、上記[1]~[7]のいずれか1項に記載の物品。
[9] 前記中間層は、Ce含有層上に、さらにケイ素酸化物層を含む、上記[1]~[7]のいずれか1項に記載の物品。
[10] 前記ケイ素酸化物層の厚みは、0.1nm~100nmである、上記[9]に記載の物品。
[11] 前記含フッ素シラン化合物は、下記式(1)又は(2):
【化1】
[式中:
F1は、それぞれ独立して、Rf-R-O-であり;
F2は、-Rf -R-O-であり;
Rfは、それぞれ独立して、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基であり;
Rfは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基であり;
は、それぞれ独立して、2価のフルオロポリエーテル基であり;
pは、0又は1であり;
qは、それぞれ独立して、0又は1であり;
Siは、それぞれ独立して、水酸基、加水分解可能な基、水素原子又は1価の有機基が結合したSi原子を含む1価の基であり;
少なくとも1つのRSiは、水酸基又は加水分解可能な基が結合したSi原子を含む1価の基であり;
は、それぞれ独立して、単結合又は2~10価の有機基であり;
αは、1~9の整数であり;
βは、1~9の整数であり;
γは、それぞれ独立して、1~9の整数である。]
で表される少なくとも1種のフルオロポリエーテル基含有化合物である、上記[1]~[10]のいずれか1項に記載の物品。
[12] Rは、それぞれ独立して、式:
-(OC12-(OC10-(OC-(OCFa -(OC-(OCF
[式中、RFaは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は塩素原子であり、
a、b、c、d、e及びfは、それぞれ独立して、0~200の整数であって、a、b、c、d、e及びfの和は1以上であり、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
で表される基である、上記[11]に記載の物品。
[13] Rfは、それぞれ独立して、C1-16パーフルオロアルキル基であり、
Rfは、それぞれ独立して、C1-6パーフルオロアルキレン基であり、
Faは、フッ素原子である、上記[12]に記載の物品。
[14] Rは、各出現においてそれぞれ独立して、下記式(f1)、(f2)、(f3)、(f4)、(f5)又は(f6):
-(OC-(OC- (f1)
[式中、dは、1~200の整数であり、eは、0又は1である。]、
-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f2)
[式中、c及びdは、それぞれ独立して、0~30の整数であり;
e及びfは、それぞれ独立して、1~200の整数であり;
c、d、e及びfの和は、10~200の整数であり;
添字c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。]、
-(R-R- (f3)
[式中、Rは、OCF又はOCであり;
は、OC、OC、OC、OC10及びOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から選択される2又は3つの基の組み合わせであり;
gは、2~100の整数である。]、
-(R-R-R-(R7’-R6’g’- (f4)
[式中、Rは、OCF又はOCであり、
は、OC、OC、OC、OC10及びOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、
6’は、OCF又はOCであり、
7’は、OC、OC、OC、OC10及びOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、
gは、2~100の整数であり、
g’は、2~100の整数であり、
は、
【化2】
(式中、*は、結合位置を示す。)
である。];
-(OC12-(OC10-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f5)
[式中、eは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、d及びfは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であり、また、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
-(OC12-(OC10-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f6)
[式中、fは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、d及びeは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であり、また、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
で表される基である、上記[11]~[13]のいずれか1項に記載の物品。
[15] RSiは、下記式(S1)、(S2)、(S3)、(S4)又は(S5):
【化3】
[式中:
11は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
12は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり;
n1は、(SiR11 n112 3-n1)単位毎にそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
11は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合又は2価の有機基であり;
13は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり;
tは、各出現においてそれぞれ独立して、2以上の整数であり;
14は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又は-X11-SiR11 n112 3-n1であり;
15は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子、炭素数1~6のアルキレン基または炭素数1~6のアルキレンオキシ基であり;
a1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-SiR21 p122 q123 r1であり;
は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子又は2価の有機基であり;
21は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z1’-SiR21’ p1’22’ q1’23’ r1’であり;
22は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
23は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり;
p1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
q1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
r1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
p1、q1、及びr1の合計は、SiR21 p122 q123 r1単位において、3であり;
p1、q1及びr1の和は3であり;
1’は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子又は2価の有機基であり;
21’は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z1”-SiR22” q1”23” r1”であり;
22’は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
23’は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり;
p1’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
q1’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
r1’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
p1’、q1’、及びr1’の合計は、SiR21’ p1’22’ q1’23’ r1’単位において、3であり;
1”は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子又は2価の有機基であり;
22”は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
23”は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり;
q1”は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
r1”は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
q1”及びr1”の合計は、SiR22” q1”23” r1”単位において、3であり;
b1は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
c1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり;
k1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
l1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
m1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
k1、l1及びm1の合計は、SiRa1 k1b1 l1c1 m1単位において、3であり;
d1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-CR31 p232 q233 r2であり;
は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基であり;
31は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z2’-CR32’ q2’33’ r2’であり;
32は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-SiR34 n235 3-n2であり;
33は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基であり;
p2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
q2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
r2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
p2、q2、及びr2の合計は、SiR31 p232 q233 r2単位において、3であり Z2’は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基であり;
32’は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-SiR34 n235 3-n2であり;
33’は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基であり;
q2’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
r2’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
q2’、及びr2’の合計は、SiR32’ q2’33’ r2’単位において、3であり;
は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基であり;
34は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
35は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり;
n2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
e1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-SiR34 n235 3-n2であり;
f1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基であり;
k2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
l2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
m2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
k2、l2及びm2の合計は、CRd1 k2e1 l2f1 m2単位において、3であり;
g1及びRh1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-SiR11 n112 3-n1、-Z-SiRa1 k1b1 l1c1 m1、-Z-CRd1 k2e1 l2f1 m2であり;
は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基であり;
ただし、式(S1)、(S2)、(S3)、(S4)及び(S5)中、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が少なくとも1つ存在する。]
で表される基である、上記[11]~[14]のいずれか1項に記載の物品。
[16] Xは、それぞれ独立して、単結合、又は2価の有機基であり、
α、β、及びγは、1である、上記[11]~[15]のいずれか1項に記載の物品。
[17] Xは、それぞれ独立して、3価の有機基であり、
αは1かつβは2であるか、αは2かつβは1であり、
γは2である、
上記[11]~[15]のいずれか1項に記載の物品。
[18] 前記基材は、ガラス基材である、上記[1]~[17]のいずれか1項に記載の物品。
[19] ケイ素酸化物及びセリウム酸化物を含み、ケイ素原子とセリウム原子のモル比は、10:90~99.99:0.01である、成膜材料。
[20] さらに、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を、ケイ素原子、セリウム原子、並びにアルカリ金属及びアルカリ土類金属の合計量に対し、0.1~30モル%で含む、上記[19]に記載の成膜材料。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、より摩擦耐久性が高い表面処理層を有する物品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の物品は、基材と、
上記基材上に位置する、中間層と、
上記中間層上に位置する、含フッ素シラン化合物を含む表面処理剤から形成された表面処理層と
を有して成り、
上記中間層は、Ce含有層を含む。
【0009】
本開示において使用可能な基材は、例えば、ガラス、樹脂(天然又は合成樹脂、例えば一般的なプラスチック材料であってよい)、金属、セラミックス、半導体(シリコン、ゲルマニウム等)、繊維(織物、不織布等)、毛皮、皮革、木材、陶磁器、石材等、建築部材等、衛生用品、任意の適切な材料で構成され得る。
【0010】
例えば、製造すべき物品が光学部材である場合、基材の表面を構成する材料は、光学部材用材料、例えばガラス又は透明プラスチックなどであってよい。
【0011】
一の態様において、基材の表面(最外層)に、何らかの層(又は膜)、例えばハードコート層や反射防止層などが形成されていてもよい。反射防止層には、単層反射防止層及び多層反射防止層のいずれを使用してもよい。反射防止層に使用可能な無機物の例としては、SiO、SiO、ZrO、TiO、TiO、Ti、Ti、Al、Ta、Ta,Nb、HfO、Si、CeO、MgO、Y、SnO、MgF、WOなどが挙げられる。これらの無機物は、単独で、又はこれらの2種以上を組み合わせて(例えば混合物として)使用してもよい。多層反射防止層とする場合、その最外層にはSiO及び/又はSiOを用いることが好ましい。製造すべき物品が、光学部材、特にタッチパネル用の光学ガラス部品である場合、透明電極、例えば酸化インジウムスズ(ITO)や酸化インジウム亜鉛などを用いた薄膜を、基材(ガラス)の表面の一部に有していてもよい。また、基材は、その具体的仕様等に応じて、絶縁層、粘着層、保護層、装飾枠層(I-CON)、霧化膜層、ハードコーティング膜層、偏光フィルム、相位差フィルム、及び液晶表示モジュールなどを有していてもよい。
【0012】
別の態様において、基材の表面上には、上記のような任意の層を有しない。即ち、中間層は、基材上に直接接して設けられる。
【0013】
上記基材の形状は、特に限定されず、例えば、板状、フィルム、その他の形態であってよい。また、表面処理層を形成すべき基材の表面領域は、基材表面の少なくとも一部であればよく、製造すべき物品の用途及び具体的仕様等に応じて適宜決定され得る。
【0014】
一の態様において、かかる基材としては、少なくともその表面部分が、水酸基を元々有する材料から成るものであってよい。かかる材料としては、ガラスが挙げられ、また、表面に自然酸化膜又は熱酸化膜が形成される金属(特に卑金属)、セラミックス、半導体等が挙げられる。樹脂等のように、水酸基を有していても十分でない場合や、水酸基を元々有していない場合には、基材に何らかの前処理を施すことにより、基材の表面に水酸基を導入したり、増加させたりすることができる。かかる前処理の例としては、プラズマ処理(例えばコロナ放電)や、イオンビーム照射が挙げられる。プラズマ処理は、基材表面に水酸基を導入又は増加させ得ると共に、基材表面を清浄化する(異物等を除去する)ためにも好適に利用され得る。また、かかる前処理の別の例としては、炭素-炭素不飽和結合基を有する界面吸着剤をLB法(ラングミュア-ブロジェット法)や化学吸着法等によって、基材表面に予め単分子膜の形態で形成し、その後、酸素や窒素等を含む雰囲気下にて不飽和結合を開裂する方法が挙げられる。
【0015】
別の態様において、かかる基材としては、少なくともその表面部分が、別の反応性基、例えばSi-H基を1つ以上有するシリコーン化合物や、アルコキシシランを含む材料から成るものであってもよい。
【0016】
好ましい態様において、上記基材はガラスである。かかるガラスとしては、サファイアガラス、ソーダライムガラス、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、クリスタルガラス、石英ガラスが好ましく、化学強化したソーダライムガラス、化学強化したアルカリアルミノケイ酸塩ガラス、及び化学結合したホウ珪酸ガラスが特に好ましい。
【0017】
上記中間層は、上記基材上に位置する。
【0018】
上記中間層を設けることによって、表面処理層の耐久性が向上しうる。耐久性とは、耐候性、耐摩耗性等である。
【0019】
上記中間層は、上記基材に接するように形成されていてもよく、あるいは、他の層を介して基材の上に形成されていてもよい。好ましい態様において、上記中間層は、上記基材に接するように形成されている。
【0020】
上記中間層は、Ce含有層を含む。Ce含有層とは、セリウム(Ce)原子を含有する層を意味する。
【0021】
上記Ceは、好ましくは酸化物としてCe含有層に含まれる。当該酸化物は、他の金属原子との複合酸化物であってもよい。
【0022】
ここに、複合酸化物とは、複数の元素の酸化物が均一相を構成するもの、いわゆる固溶体に加え、複数の元素の酸化物が不均一相を構成しているものを包含する。上記複合酸化物は、好ましくは、均一相を構成する固溶体から構成される。
【0023】
一の態様において、上記Ce含有層は、セリウム酸化物から成る。ここに、「上記Ce含有層は、セリウム酸化物から成る」とは、Ce含有層中に、不可避な微量成分として他の成分、例えば金属原子が、単体、イオン、塩、酸化物等の任意の状態で含まれることを許容する。
【0024】
セリウム酸化物は、酸化状態が異なるものを含んでいてもよい。例えば、セリウム酸化物は、CeO(x=1~2)などの、酸化状態が異なるものを含んでいてもよい。好ましい態様において、セリウム酸化物はCeOである。
【0025】
別の態様において、上記Ce含有層は、さらに他の金属原子を含んでいてもよい。これらの金属原子は、個別の酸化物として存在してもよく、あるいは、Ceとの複合酸化物、又はCeを含まない複合酸化物として存在してもよい。
【0026】
本明細書において、金属原子とは、B、Si、Ge、Sb、As、Te等の半金属原子も包含する。
【0027】
上記他の金属原子としては、例えば、周期表の3族~11族の遷移金属、及び12~15族の典型金属元素から選択される1種又はそれ以上の原子であり得る。上記他の金属原子は、好ましくは3族~11族の遷移金属原子、より好ましくは3~7族の遷移金属原子、さらに好ましくは4~6族の遷移金属原子が挙げられる。
【0028】
一の態様において、上記他の金属原子は、Si、Y、Ru、In、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Sc、及びBiからなる群から選択される1種又は2種以上の金属原子であり得る。
【0029】
好ましい態様において、上記Ce含有層は、さらにSiを含む。
【0030】
好ましい態様において、上記CeとSiは、複合酸化物としてCe含有層に含まれる。即ち、上記Ce含有層は、Ce及びSiを含む複合酸化物を含む。
【0031】
別の態様において、上記CeとSiは、それぞれ別の酸化物としてCe含有層に含まれる。
【0032】
上記酸化物は、酸化状態が異なるものを含んでいてもよい。例えば、セリウム酸化物は、CeO(x=1~2)、ケイ素酸化物はSiO(y=1~2)などの、酸化状態が異なるものを含んでいてもよい。好ましい態様において、セリウム酸化物はCeOであり、ケイ素酸化物はSiOである。
【0033】
好ましい態様において、上記Ce含有層に含まれる金属原子は、実質的にSi及びCeのみである。ここに、「Ce含有層に含まれる金属原子は、実質的にSi及びCeのみである」とは、Ce含有層中に、不可避な微量成分として他の金属原子が含まれることを許容する。
【0034】
一の態様において、Ce含有層中のSiとCeのモル比は、10:90~99.99:0.01(Si:Ce)であり、好ましくは40:60~99.99:0.01であり、より好ましくは60:40~99:1、さらにより好ましくは90:10~99:1、特に好ましくは90:10~98:2であり得る。SiとCeのモル比をかかる範囲とすることにより、表面処理層の耐久性が向上する。尚、SiとCeのモル比が深さによって異なる場合には、Ce含有層におけるSiとCeのモル比は、その平均値であり得る。
【0035】
上記Ce含有層などの中間層の組成及び比率は、表面分析により決定することができる。表面分析の方法としては、X線光電子分光分析法、飛行時間型二次イオン質量分析法などを用いることができる。典型的には、X線光電子分光分析法を用いる。
【0036】
中間層の組成及び比率を測定するためのX線光電子分光分析法を行う装置としては、XPS,アルバック・ファイ社製 PHI5000VersaProbeIIを使用することができる。XPS分析の測定条件としては、X線源に単色化AlKα線を25W、光電子検出面積を1400μm×300μm,光電子検出角を、20度~90度の範囲(例えば20度、45度、90度)、パスエネルギーを23.5eVとし、スパッタイオンにはArイオンを用いることが可能である。上記装置、測定条件により、C1s、O1s、F1s、Si2p軌道、及び他の金属の適切な軌道のピーク面積を観測し、炭素、酸素、フッ素、ケイ素、及び他の金属の原子比を算出することにより積層体の組成を求めることができる。他の金属の適切な軌道としては、例えば、原子番号5(B)は1s軌道、原子番号13~14、21~31(Al~Si、Sc~Ga)は2p軌道、原子番号32~33、39~52、及び58(Ge~As、Y~Te、Ce)は3d軌道、原子番号72~83(Hf~Bi)は4f軌道が挙げられる。
【0037】
また、中間層の深さ方向の分析を実施することも可能である。XPS分析の測定条件としては、X線源に単色化AlKα線を25Wで用い、光電子検出面積を1400μm×300μm,光電子検出角を、20度~90度の範囲(例えば20度、45度、90度)、パスエネルギーを23.5eVとし、スパッタイオンにはArイオンを用いることができる。Arイオンによるスパッタリングによって中間層をSiO換算で1~100nmエッチングし、それぞれのエッチング後の深さにおいて、O1s、Si2p軌道、及び他の金属の適切な軌道のピーク面積を観測し、酸素、ケイ素、及び他の金属の原子比を算出することにより中間層内部の組成を求めることができる。他の金属の適切な軌道としては、例えば、原子番号5(B)は1s軌道、原子番号13~14、21~31(Al~Si、Sc~Ga)は2p軌道、原子番号32~33、39~52、及び58(Ge~As、Y~Te、Ce)は3d軌道、原子番号72~83(Hf~Bi)は4f軌道が挙げられる。
【0038】
上記のXPS分析の光電子検出角を調整することにより、検出深さを適宜調整することができる。例えば、20度に近い浅い角度とすることにより、検出深さを3nm程度とすることができ、一方、90度に近い深い角度にすることにより、検出深さを10数nm程度とすることができる。
【0039】
尚、XPS分析による組成分析において、基材のSi等が検出される場合には、基材中の特定の原子、例えば基材がガラスの場合、微量に含まれる金属原子(例えばAl、Na、K,B、Ca、Mg、Snなど)の検出量から検出された基材のSi量を算出し、測定結果から減ずることにより、中間層の組成を算出することができる。
【0040】
一の態様において、上記中間層は、さらにアルカリ金属、又はアルカリ土類金属を、好ましくはアルカリ金属を含み得る。中間層がアルカリ金属を含むことにより、表面処理層の摩擦耐久性、耐候性等が向上する。上記中間層に含まれるアルカリ金属及びアルカリ土類金属は、Ce含有層に含まれていてもよく、又はそれ以外の層に含まれていてもよく、あるいはこれらの両方の層に含まれていてもよい。
【0041】
中間層中でのアルカリ金属及びアルカリ土類金属は、均一に存在してもよく、あるいは、中間層の表面(表面処理層側)に偏析して存在してもよい。好ましくは、中間層中でのアルカリ金属及びアルカリ土類金属は、中間層の表面に偏析して存在する。
【0042】
上記アルカリ金属としては、Li、Na、K、Rb、Cs、及びFrが挙げられる。上記アルカリ金属は、好ましくはNa、又はKであり、より好ましくはNaである。
【0043】
上記アルカリ土類金属としては、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、及びRaが挙げられる。上記アルカリ金属は、好ましくはMg、又はCaである。
【0044】
中間層中のアルカリ金属及びアルカリ土類金属の含有量(複数種存在する場合にはその合計)は、特に限定されないが、中間層に含まれる全金属原子の合計に対して、好ましくは0.1~30モル%、より好ましくは0.1~20モル%、さらに好ましくは0.1~15モル、さらにより好ましくは0.5~15モル%、例えば、1.0~15モル%又は1.0~10モル%であり得る。中間層におけるアルカリ金属及びアルカリ土類金属の濃度を上記の範囲とすることにより、表面処理層の摩擦耐久性、耐候性等が向上する。また、中間層におけるアルカリ金属及びアルカリ土類金属の濃度を、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下、さらに好ましくは15モル%以下とすることにより、表面処理層の摩擦耐久性がより向上する。
【0045】
上記中間層は、単層であっても、多層であってもよい。なお、中間層における層の境界は、厚さ方向に明確に組成が異なる部分であり、かかる境界の上下の層は、異なる層とみなす。厚さ方向に勾配を持って徐々に組成が変化する部分は境界ではなく、この領域は一つの層とみなす。
【0046】
一の態様において、中間層は単層である。
【0047】
上記中間層が単層である場合、中間層は、Ce含有層である。
【0048】
中間層が単層である場合、Ce含有層は、好ましくは、Si及びCeを含む。かかるCe含有層において、表面処理層と接する面に、Si原子が存在することが好ましい。Ce含有層の表面処理層側の面にSi原子を存在させることにより、表面処理層の摩擦耐久性、耐候性等が向上する。
【0049】
一の態様において、上記Si及びCeを含むCe含有層において、Siの濃度勾配は、表面処理層側に向かって、徐々に高くなることが好ましい。Siの濃度勾配を表面処理層側に向かって徐々に高くすることにより、表面処理層の摩擦耐久性、耐候性等が向上する。
【0050】
別の態様において、中間層は多層である。
【0051】
上記中間層が多層である場合、中間層は、Ce含有層及びSi含有層を含む。
【0052】
一の態様において、中間層は、Ce含有層及びSi含有層からなる。
【0053】
好ましい態様において、中間層は、Ce含有層上に、さらにSi含有層を含む。即ち、中間層は、基材側に位置するCe含有層、及びCe含有層上に位置し、表面処理層に接するSi含有層を含む。Ce含有層とSi含有層を上記の順番で配置することにより、表面処理層の摩擦耐久性、耐候性等が向上する。
【0054】
好ましい態様において、中間層は、基材上に位置するCe含有層と、Ce含有層上に直接接して位置するSi含有層からなる。
【0055】
上記中間層の厚み(多層である場合、全ての層の厚みの合計)は、特に限定されないが、例えば、1.0nm以上、好ましくは2.0nm以上、より好ましくは3.0nm以上であり得る。中間層の厚みを1.0nm以上にすることにより、表面処理層の摩擦耐久性、及び耐候性向上効果をより確実に得ることができる。また、上記中間層の厚み(多層である場合、全ての層の厚みの合計)は、特に限定されないが、例えば、120nm以下、好ましくは60nm以下、より好ましくは25nm以下、さらに好ましくは15nm以下、特に好ましくは10nm以下であり得る。中間層の厚みを120nm以下にすることにより、物品の透明性をより高めることができる。上記中間層の厚み(多層である場合、全ての層の厚みの合計)は、好ましくは1.0~120nm、より好ましくは2.0~60nm、さらに好ましくは2.0~25nm、さらにより好ましくは3.0nm~10nmであり得る。
【0056】
上記Ce含有層の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.1nm以上、好ましくは1.0nm以上、より好ましくは2.0nm以上、さらに好ましくは3.0nm以上であり得る。Ce含有層の厚みを0.1nm以上にすることにより、表面処理層の摩擦耐久性、及び耐候性向上効果をより確実に得ることができる。また、上記Ce含有層の厚みは、特に限定されないが、例えば、100nm以下、好ましくは50nm以下、より好ましくは20nm以下、さらに好ましくは10nm以下、特に好ましくは5nm以下であり得る。Ce含有層の厚みを100nm以下にすることにより、物品の透明性をより高めることができる。上記Ce含有層の厚みは、好ましくは0.1~100nm、より好ましくは1.0~50nm、さらに好ましくは2.0~20nm、さらにより好ましくは3.0nm~10nmであり得る。
【0057】
存在する場合、他の金属を含有する層の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.1nm以上、好ましくは1.0nm以上、より好ましくは2.0nm以上、さらに好ましくは3.0nm以上であり得る。他の金属を含有する層の厚みを0.1nm以上にすることにより、表面処理層の摩擦耐久性、及び耐候性向上効果をより確実に得ることができる。また、上記他の金属を含有する層の厚みは、特に限定されないが、例えば、100nm以下、好ましくは50nm以下、より好ましくは20nm以下、さらに好ましくは10nm以下、特に好ましくは5nm以下であり得る。他の金属を含有する層の厚みを100nm以下にすることにより、物品の透明性をより高めることができる。上記他の金属を含有する層の厚みは、好ましくは0.1~100nm、より好ましくは1.0~50nm、さらに好ましくは2.0~20nm、さらにより好ましくは3.0nm~10nmであり得る。
【0058】
特に、存在する場合、Si含有層の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.1nm以上、好ましくは1.0nm以上、より好ましくは2.0nm以上、さらに好ましくは3.0nm以上であり得る。Si含有層の厚みを1.0nm以上にすることにより、表面処理層の摩擦耐久性、及び耐候性向上効果をより確実に得ることができる。また、上記Si含有層の厚みは、特に限定されないが、例えば、100nm以下、好ましくは50nm以下、より好ましくは20nm以下、さらに好ましくは10nm以下、特に好ましくは5nm以下であり得る。Si含有層の厚みを100nm以下にすることにより、物品の透明性をより高めることができる。上記Si含有層の厚みは、好ましくは0.1~100nm、より好ましくは1.0~50nm、さらに好ましくは2.0~20nm、さらにより好ましくは3.0nm~10nmであり得る。
【0059】
好ましい態様において、上記中間層は、基材上に位置するCe含有層と、Ce含有層上に直接接して位置するSi含有層からなり、Ce含有層の厚みは、0.1~20nm、好ましくは1.0~10nmであり、Si含有層の厚みは、0.1~20nm、好ましくは1.0~10nmである。
【0060】
各層の厚みは、XPS分析とスパッタリングを組み合わせることにより測定することができる。具体的には、上記深さ方向の分析を行い、組成が明確に変化する箇所を各層の境界として、スパッタンリングの深さを測定することにより、層の厚みを測定することができる。
【0061】
上記中間層の成膜方法は、特に限定されないが、例えばスパッタリング、イオンビームアシスト、真空蒸着(好ましくは電子線加熱方式)、CVD(化学気相蒸着)、原子層堆積等を用いることができ、好ましくは真空蒸着、又はスパッタリングが用いられる。
【0062】
上記スパッタリング法としては、DC(直流)スパッタリング方式、AC(交流)スパッタリング方式、RF(高周波)スパッタリング方式、RAS(ラジカルアシスト)スパッタリング方式等を用いるスパッタリング法を用いることができる。これらのスパッタリング方式は2極スパッタリング、マグネトロンスパッタリング法のいずれの方式であってもよい。
【0063】
スパッタリング法により成膜する場合は、不活性ガスと酸素ガスとの混合ガス雰囲気のチャンバ内に、基体を配置し、中間層形成材料として、所望の組成となるようにターゲットを選択して成膜する。この時、チャンバ内の不活性ガスのガス種は特に限定されるものではなく、アルゴン、ヘリウム等、各種不活性ガスを使用できる。
【0064】
不活性ガスと酸素ガスとの混合ガスによるチャンバ内の圧力は、特に限定されるものではないが、0.5Pa以下の範囲とすることにより、形成される膜の表面粗さを好ましい範囲とすることが容易である。これは、いかに示す理由によると考えられる。すなわち、不活性ガスと酸素ガスとの混合ガスによるチャンバ内の圧力が0.5Pa以下であると、成膜分子の平均自由行程が確保され、成膜分子がより多くのエネルギーをもって基体に到達する。そのため、成膜分子の再配置が促され、比較的密で平滑な表面の膜ができると考えられる。不活性ガスと酸素ガスとの混合ガスによるチャンバ内の圧力の下限値は、特に限定されるものではないが、例えば0.1Pa以上であることが望ましい。
【0065】
上記中間層の成膜方法においては、セリウム酸化物を含む成膜材料が用いられる。
【0066】
好ましい態様において、上記成膜材料は、ケイ素酸化物及びセリウム酸化物を含む。
【0067】
上記ケイ素酸化物及びセリウム酸化物を含む成膜材料において、ケイ素原子とセリウム原子のモル比は、好ましくは10:90~99.99:0.01(Si:Ce)であり、より好ましくは10:90~99:1であり、さらに好ましくは10:90~95:5、さらにより好ましくは20:80~90:10、特に好ましくは40:60~80:20であり得る。成膜材料中のSiとCeのモル比をかかる範囲とすることにより、表面処理層の耐久性が向上する。
【0068】
(成膜材料の調製)
成膜材料の形態の具体例としては、粉体、溶融体、焼結体、造粒体、破砕体が挙げられ、取り扱い性の観点から、溶融体、焼結体、造粒体が好ましい。
【0069】
ここで、溶融体とは、成膜材料の粉体を高温で溶融させた後、冷却固化して得られた固形物を意味する。焼結体とは、成膜材料の粉体を焼成して得られた固形物を意味し、必要に応じて、成膜材料の粉体の代わりに、粉体をプレス形成して成形体を用いてもよい。造粒体とは、成膜材料の粉体と液状媒体(たとえば、水、有機溶媒)とを混錬して粒子を得た後、粒子を乾燥させて得られた固形物を意味する。
【0070】
成膜材料は、たとえば、以下の方法で製造できる。
・酸化ケイ素の粉体と、酸化セリウムの酸化物の粉体と、を混合して、成膜材料の粉体を得る方法。
・上記成膜材料の粉体および水を混錬して粒子を得た後、粒子を乾燥させて、成膜材料の造粒体を得る方法。
・ケイ素を含む粉体(たとえば、酸化ケイ素からなる粉体、珪砂、シリカゲル)と、酸化セリウムを含む粉体(たとえば、セリウムの酸化物の粉体、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、水酸化物)と、水と、を混合した混合物を乾燥させた後、乾燥後の混合物またはこれをプレス成形した成形体を焼成して、焼結体を得る方法。
・ケイ素を含む粉体(たとえば、酸化ケイ素からなる粉体、珪砂、シリカゲル)と、セリウムを含む粉体(たとえば、セリウムの酸化物の粉体、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、水酸化物)と、を高温で溶融させた後、溶融物を冷却固化して、溶融体を得る方法。
・ケイ素を含むアルコキシドや塩化物(例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロピルシラン、テトラクロロシラン)と、セリウムを含むアルコキシド(例えばセリウムイソプロポキシド)と水とを反応させ、得られた酸化物固体を乾燥後、プレス成形した後焼成して、焼結体を得る方法。
・上記のアルコキサイドを用いる場合において、ケイ素とセリウムのどちらか一方に酸化物を用いて反応させ、得られた酸化物固体を乾燥後、プレス成形した後焼成して、焼結体を得る方法。
などが考えられる。
【0071】
好ましい態様において、上記成膜材料は、ケイ素酸化物及びセリウム酸化物に加え、さらにアルカリ金属又はアルカリ土類金属、好ましくはアルカリ金属を含む。
【0072】
上記アルカリ金属及びアルカリ土類金属は、イオン、酸化物、又は塩の形態で含まれる。
【0073】
上記アルカリ金属及びアルカリ土類金属は、ケイ素原子、セリウム原子並びにアルカリ金属及びアルカリ土類金属の合計量に対し、好ましくは0.1~30モル%、より好ましくは0.1~20モル%、さらに好ましくは0.1~15モル%、さらにより好ましくは0.5~15モル%、例えば、1.0~15モル%又は1.0~10モル%で含まれる。成膜材料におけるアルカリ金属の濃度を上記の範囲とすることにより、表面処理層の摩擦耐久性、耐候性等が向上する。
【0074】
一の態様において、上記成膜材料は、蒸着材料である。
【0075】
上記表面処理層は、上記中間層上に位置する。好ましくは、表面処理層は、中間層の直上に、即ち、中間層に接するように位置する。
【0076】
上記表面処理層は、含フッ素シラン化合物を含む表面処理剤から形成することができる。
【0077】
本明細書において用いられる場合、「1価の有機基」とは、炭素を含有する1価の基を意味する。1価の有機基としては、特に限定されないが、炭化水素基又はその誘導体であり得る。炭化水素基の誘導体とは、炭化水素基の末端又は分子鎖中に、1つ又はそれ以上のN、O、S、Si、アミド、スルホニル、シロキサン、カルボニル、カルボニルオキシ等を有している基を意味する。尚、単に「有機基」と示す場合、1価の有機基を意味する。また、「2~10価の有機基」とは、炭素を含有する2~10価の基を意味する。かかる2~10価の有機基としては、特に限定されないが、有機基からさらに1~9個の水素原子を脱離させた2~10価の基が挙げられる。例えば、2価の有機基としては、特に限定されるものではないが、有機基からさらに1個の水素原子を脱離させた2価の基が挙げられる。
【0078】
本明細書において用いられる場合、「炭化水素基」とは、炭素及び水素を含む基であって、炭化水素から1個の水素原子を脱離させた基を意味する。かかる炭化水素基としては、特に限定されるものではないが、1つ又はそれ以上の置換基により置換されていてもよい、C1-20炭化水素基、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。上記「脂肪族炭化水素基」は、直鎖状、分枝鎖状又は環状のいずれであってもよく、飽和又は不飽和のいずれであってもよい。また、炭化水素基は、1つ又はそれ以上の環構造を含んでいてもよい。
【0079】
本明細書において用いられる場合、「炭化水素基」の置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子、1個又はそれ以上のハロゲン原子により置換されていてもよい、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、C3-10不飽和シクロアルキル基、5~10員のヘテロシクリル基、5~10員の不飽和ヘテロシクリル基、C6-10アリール基及び5~10員のヘテロアリール基から選択される1個又はそれ以上の基が挙げられる。
【0080】
本明細書において用いられる場合、「加水分解性基」とは、加水分解反応を受け得る基を意味し、すなわち、加水分解反応により、化合物の主骨格から脱離し得る基を意味する。加水分解性基の例としては、-OR、-OCOR、-O-N=CR 、-NR 、-NHR、-NCO、ハロゲン(これら式中、Rは、置換又は非置換のC1-4アルキル基を示す)などが挙げられる。
【0081】
上記含フッ素シラン化合物は、上記含フッ素シラン化合物は、下記式(1)又は(2):
【化4】
[式中:
F1は、各出現においてそれぞれ独立して、Rf-R-O-であり;
F2は、-Rf -R-O-であり;
Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基であり;
Rfは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基であり;
は、各出現においてそれぞれ独立して、2価のフルオロポリエーテル基であり;
pは、0又は1であり;
qは、各出現においてそれぞれ独立して、0又は1であり;
Siは、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基、加水分解性基、水素原子又は1価の有機基が結合したSi原子を含む1価の基であり;
少なくとも1つのRSiは、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子を含む1価の基であり;
は、それぞれ独立して、単結合又は2~10価の有機基であり;
αは、1~9の整数であり;
βは、1~9の整数であり;
γは、それぞれ独立して、1~9の整数である。]
で表される少なくとも1種の含フッ素シラン化合物である。
【0082】
上記式(1)において、RF1は、各出現においてそれぞれ独立して、Rf-R-O-である。
【0083】
上記式(2)において、RF2は、-Rf -R-O-である。
【0084】
上記式において、Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基である。
【0085】
上記1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基における「C1-16アルキル基」は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖又は分枝鎖のC1-6アルキル基、特にC1-3アルキル基であり、より好ましくは直鎖のC1-6アルキル基、特にC1-3アルキル基である。
【0086】
上記Rfは、好ましくは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されているC1-16アルキル基であり、より好ましくはCFH-C1-15パーフルオロアルキレン基であり、さらに好ましくはC1-16パーフルオロアルキル基である。
【0087】
上記C1-16パーフルオロアルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖又は分枝鎖のC1-6パーフルオロアルキル基、特にC1-3パーフルオロアルキル基であり、より好ましくは直鎖のC1-6パーフルオロアルキル基、特にC1-3パーフルオロアルキル基、具体的には-CF、-CFCF、又は-CFCFCFである。
【0088】
上記式において、Rfは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基である。
【0089】
上記1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基における「C1-6アルキレン基」は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖又は分枝鎖のC1-3アルキレン基であり、より好ましくは直鎖のC1-3アルキレン基である。
【0090】
上記Rfは、好ましくは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されているC1-6アルキレン基であり、より好ましくはC1-6パーフルオロアルキレン基であり、さらに好ましくはC1-3パーフルオロアルキレン基である。
【0091】
上記C1-6パーフルオロアルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖又は分枝鎖のC1-3パーフルオロアルキレン基であり、より好ましくは直鎖のC1-3パーフルオロアルキレン基、具体的には-CF-、-CFCF-、又は-CFCFCF-である。
【0092】
上記式において、pは、0又は1である。一の態様において、pは0である。別の態様においてpは1である。
【0093】
上記式において、qは、各出現においてそれぞれ独立して、0又は1である。一の態様において、qは0である。別の態様においてqは1である。
【0094】
上記式(1)及び(2)において、Rは、各出現においてそれぞれ独立して、2価のフルオロポリエーテル基である。
【0095】
は、好ましくは、下記:
-(OCh1Fa 2h1h3-(OCh2Fa 2h2-2h4
[式中:
Faは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は塩素原子であり、
h1は、1~6の整数であり、
h2は、4~8の整数であり、
h3は、0以上の整数であり、
h4は、0以上の整数であり、
だたし、h3とh4の合成は、1以上、好ましくは2以上、より好ましくは5以上であり、h3及びh4を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。]
で表される基を含み得る。
【0096】
一の態様において、Rは、直鎖状、又は分枝鎖状であり得る。Rは、好ましくは、式:
-(OC12-(OC10-(OC-(OCFa -(OC-(OCF
[式中:
Faは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は塩素原子であり、
a、b、c、d、e及びfは、それぞれ独立して、0~200の整数であって、a、b、c、d、e及びfの和は1以上である。a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。ただし、すべてのRFaが水素原子又は塩素原子である場合、a、b、c、e及びfの少なくとも1つは、1以上である。]
で表される基である。
【0097】
Faは、好ましくは、水素原子又はフッ素原子であり、より好ましくは、フッ素原子である。ただし、すべてのRFaが水素原子又は塩素原子である場合、a、b、c、e及びfの少なくとも1つは、1以上である。
【0098】
a、b、c、d、e及びfは、好ましくは、それぞれ独立して、0~100の整数であってもよい。
【0099】
a、b、c、d、e及びfの和は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上であり、例えば15以上又は20以上であってもよい。a、b、c、d、e及びfの和は、好ましくは200以下、より好ましくは100以下、さらに好ましくは60以下であり、例えば50以下又は30以下であってもよい。
【0100】
これら繰り返し単位は、直鎖状であっても、分枝鎖状であってもよい。例えば、-(OC12)-は、-(OCFCFCFCFCFCF)-、-(OCF(CF)CFCFCFCF)-、-(OCFCF(CF)CFCFCF)-、-(OCFCFCF(CF)CFCF)-、-(OCFCFCFCF(CF)CF)-、-(OCFCFCFCFCF(CF))-等であってもよい。-(OC10)-は、-(OCFCFCFCFCF)-、-(OCF(CF)CFCFCF)-、-(OCFCF(CF)CFCF)-、-(OCFCFCF(CF)CF)-、-(OCFCFCFCF(CF))-等であってもよい。-(OC)-は、-(OCFCFCFCF)-、-(OCF(CF)CFCF)-、-(OCFCF(CF)CF)-、-(OCFCFCF(CF))-、-(OC(CFCF)-、-(OCFC(CF)-、-(OCF(CF)CF(CF))-、-(OCF(C)CF)-及び-(OCFCF(C))-のいずれであってもよい。-(OC)-(即ち、上記式中、RFaはフッ素原子である)は、-(OCFCFCF)-、-(OCF(CF)CF)-及び-(OCFCF(CF))-のいずれであってもよい。-(OC)-は、-(OCFCF)-及び-(OCF(CF))-のいずれであってもよい。
【0101】
一の態様において、上記繰り返し単位は直鎖状である。上記繰り返し単位を直鎖状とすることにより、表面処理層の表面滑り性、摩耗耐久性等を向上させることができる。
【0102】
一の態様において、上記繰り返し単位は分枝鎖状である。上記繰り返し単位を分枝鎖状とすることにより、表面処理層の動摩擦係数を大きくすることができる。
【0103】
一の態様において、Rは、環構造を含み得る。
【0104】
上記環構造は、下記三員環、四員環、五員環、又は六員環であり得る。
【化5】
[式中、*は、結合位置を示す。]
【0105】
上記環構造は、好ましくは四員環、五員環、又は六員環、より好ましくは四員環、又は六員環であり得る。
【0106】
環構造を有する繰り返し単位は、好ましくは、下記の単位であり得る。
【化6】
[式中、*は、結合位置を示す。]
【0107】
一の態様において、Rは、各出現においてそれぞれ独立して、下記式(f1)~(f6)のいずれかで表される基である。
-(OC-(OC- (f1)
[式中、dは、1~200の整数であり、eは0又は1である。];
-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f2)
[式中、c及びdは、それぞれ独立して0以上30以下の整数であり、e及びfは、それぞれ独立して1以上200以下の整数であり、
c、d、e及びfの和は2以上であり、
添字c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。];
-(R-R- (f3)
[式中、Rは、OCF又はOCであり、
は、OC、OC、OC、OC10及びOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、
gは、2~100の整数である。];
-(R-R-R-(R7’-R6’g’- (f4)
[式中、Rは、OCF又はOCであり、
は、OC、OC、OC、OC10及びOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、
6’は、OCF又はOCであり、
7’は、OC、OC、OC、OC10及びOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、
gは、2~100の整数であり、
g’は、2~100の整数であり、
は、
【化7】
(式中、*は、結合位置を示す。)
である。];
-(OC12-(OC10-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f5)
[式中、eは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、d及びfは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、また、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
-(OC12-(OC10-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f6)
[式中、fは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、d及びeは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、また、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
【0108】
上記式(f1)において、dは、好ましくは5~200、より好ましくは10~100、さらに好ましくは15~50、例えば25~35の整数である。上記式(f1)におけるOCは、好ましくは、(OCFCFCF)、(OCF(CF)CF)または(OCFCF(CF))であり、より好ましくは、(OCFCFCF)である。一の態様において、eは0である。別の態様において、eは1である。上記式(f1)における(OC)は、好ましくは、(OCFCF)または(OCF(CF))であり、より好ましくは、(OCFCF)である。
【0109】
上記式(f2)において、e及びfは、それぞれ独立して、好ましくは5~200、より好ましくは10~200の整数である。また、c、d、e及びfの和は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上であり、例えば15以上又は20以上であってもよい。一の態様において、上記式(f2)は、好ましくは、-(OCFCFCFCF-(OCFCFCF-(OCFCF-(OCF-で表される基である。別の態様において、式(f2)は、-(OC-(OCF-で表される基であってもよい。
【0110】
上記式(f3)において、Rは、好ましくは、OCである。上記(f3)において、Rは、好ましくは、OC、OC及びOCから選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、より好ましくは、OC及びOCから選択される基である。OC、OC及びOCから独立して選択される2又は3つの基の組み合わせとしては、特に限定されないが、例えば-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、及び-OCOCOC-等が挙げられる。上記式(f3)において、gは、好ましくは3以上、より好ましくは5以上の整数である。上記gは、好ましくは50以下の整数である。上記式(f3)において、OC、OC、OC、OC10及びOC12は、直鎖又は分枝鎖のいずれであってもよく、好ましくは直鎖である。この態様において、上記式(f3)は、好ましくは、-(OC-OC-又は-(OC-OC-である。
【0111】
上記式(f4)において、R、R及びgは、上記式(f3)の記載と同意義であり、同様の態様を有する。R6’、R7’及びg’は、それぞれ、上記式(f3)に記載のR、R及びgと同意義であり、同様の態様を有する。Rは、好ましくは、
【化8】
[式中、*は、結合位置を示す。]
であり、より好ましくは
【化9】
[式中、*は、結合位置を示す。]
である。
【0112】
上記式(f5)において、eは、好ましくは、1以上100以下、より好ましくは5以上100以下の整数である。a、b、c、d、e及びfの和は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上、例えば10以上100以下である。
【0113】
上記式(f6)において、fは、好ましくは、1以上100以下、より好ましくは5以上100以下の整数である。a、b、c、d、e及びfの和は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上、例えば10以上100以下である。
【0114】
一の態様において、上記Rは、上記式(f1)で表される基である。
【0115】
一の態様において、上記Rは、上記式(f2)で表される基である。
【0116】
一の態様において、上記Rは、上記式(f3)又は(f4)で表される基である。
【0117】
一の態様において、上記Rは、上記式(f3)で表される基である。
【0118】
一の態様において、上記Rは、上記式(f4)で表される基である。
【0119】
一の態様において、上記Rは、上記式(f5)で表される基である。
【0120】
一の態様において、上記Rは、上記式(f6)で表される基である。
【0121】
上記Rにおいて、fに対するeの比(以下、「e/f比」という)は、0.1~10であり、好ましくは0.2~5であり、より好ましくは0.2~2であり、さらに好ましくは0.2~1.5であり、さらにより好ましくは0.2~0.85である。e/f比を10以下にすることにより、この化合物から得られる表面処理層の滑り性、摩耗耐久性及び耐ケミカル性(例えば、人工汗に対する耐久性)がより向上する。e/f比がより小さいほど、表面処理層の滑り性及び摩耗耐久性はより向上する。一方、e/f比を0.1以上にすることにより、化合物の安定性をより高めることができる。e/f比がより大きいほど、化合物の安定性はより向上する。
【0122】
上記含フッ素シラン化合物において、RF1及びRF2部分の数平均分子量は、特に限定されるものではないが、例えば500~30,000、好ましくは1,500~30,000、より好ましくは2,000~10,000である。本明細書において、RF1及びRF2の数平均分子量は、19F-NMRにより測定される値とする。
【0123】
別の態様において、RF1及びRF2部分の数平均分子量は、500~30,000、好ましくは1,000~20,000、より好ましくは2,000~15,000、さらにより好ましくは2,000~10,000、例えば3,000~6,000であり得る。
【0124】
別の態様において、RF1及びRF2部分の数平均分子量は、4,000~30,000、好ましくは5,000~10,000、より好ましくは6,000~10,000であり得る。
【0125】
上記式(1)及び(2)において、RSiは、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基、加水分解性基、水素原子又は1価の有機基が結合したSi原子を含む1価の基であり、少なくとも1つのRSiは、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子を含む1価の基である。
【0126】
ここに、「加水分解性基」とは、加水分解反応を受け得る基を意味し、すなわち、加水分解反応により、化合物の主骨格から脱離し得る基を意味する。加水分解性基の例としては、-OR、-OCOR、-O-N=CR 、-NR 、-NHR、-NCO、ハロゲン(これら式中、Rは、置換又は非置換のC1-4アルキル基を示す)などが挙げられる。
【0127】
好ましい態様において、RSiは、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子を含む1価の基である。
【0128】
好ましい態様において、RSiは、下記式(S1)、(S2)、(S3)、(S4)、又は(S5):
【化10】
で表される基である。
【0129】
上記式中、R11は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基である。
【0130】
11は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、加水分解性基である。
【0131】
11は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、-OR、-OCOR、-O-N=CR 、-NR 、-NHR、-NCO、又はハロゲン(これら式中、Rは、置換又は非置換のC1-4アルキル基を示す)であり、より好ましくは-OR(即ち、アルコキシ基)である。Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。一の態様において、Rは、メチル基であり、別の態様において、Rは、エチル基である。
【0132】
上記式中、R12は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0133】
12において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0134】
上記式中、n1は、(SiR11 n112 3-n1)単位毎にそれぞれ独立して、0~3の整数である。ただし、RSiが式(S1)又は(S2)で表される基である場合、式(1)及び式(2)の末端のRSi部分(以下、単に式(1)及び式(2)の「末端部分」ともいう)において、n1が1~3である(SiR11 n112 3-n1)単位が少なくとも1つ存在する。即ち、かかる末端部分において、すべてのn1が同時に0になることはない。換言すれば、式(1)及び式(2)の末端部分において、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が少なくとも1つ存在する。
【0135】
n1は、(SiR11 n112 3-n1)単位毎にそれぞれ独立して、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは2~3、さらに好ましくは3である。
【0136】
上記式中、X11は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合又は2価の有機基である。かかる2価の有機基は、好ましくは-R28-O-R29-(式中、R28及びR29は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合又はC1-20アルキレン基であり、xは0又は1である。)である。かかるC1-20アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。かかるC1-20アルキレン基は、好ましくはC1-10アルキレン基、より好ましくはC1-6アルキレン基、さらに好ましくはC1-3アルキレン基である。
【0137】
一の態様において、X11は、各出現においてそれぞれ独立して、-C1-6アルキレン-O-C1-6アルキレン-又は-O-C1-6アルキレン-である。
【0138】
好ましい態様において、X11は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合又は直鎖のC1-6アルキレン基であり、好ましくは単結合又は直鎖のC1-3アルキレン基、より好ましくは単結合又は直鎖のC1-2アルキレン基であり、さらに好ましくは直鎖のC1-2アルキレン基である。
【0139】
上記式中、R13は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基である。かかるC1-20アルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。
【0140】
好ましい態様において、R13は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は直鎖のC1-6アルキル基であり、好ましくは水素原子又は直鎖のC1-3アルキル基、好ましくは水素原子又はメチル基である。
【0141】
上記式中、tは、各出現においてそれぞれ独立して、2以上の整数である。
【0142】
好ましい態様において、tは、各出現においてそれぞれ独立して、2~10の整数、好ましくは2~6の整数である。
【0143】
上記式中、R14は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又は-X11-SiR11 n112 3-n1である。かかるハロゲン原子は、好ましくはヨウ素原子、塩素原子又はフッ素原子であり、より好ましくはフッ素原子である。好ましい態様において、R14は、水素原子である。
【0144】
上記式中、R15は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子、炭素数1~6のアルキレン基又は炭素数1~6のアルキレンオキシ基である。
【0145】
一の態様において、R15は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子、炭素数1~6のアルキレン基又は炭素数1~6のアルキレンオキシ基である。
【0146】
好ましい態様において、R15は、単結合である。
【0147】
一の態様において、式(S1)は、下記式(S1-a)である。
【化11】
[式中、
11、R12、R13、X11、及びn1は、上記式(S1)の記載と同意義であり;
t1及びt2は、各出現においてそれぞれ独立して、1以上の整数、好ましくは1~10の整数、より好ましくは2~10の整数、例えば1~5の整数又は2~5の整数であり;
t1及びt2を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
【0148】
好ましい態様において、式(S1)は、下記式(S1-b)である。
【化12】
[式中、R11、R12、R13、X11、n1及びtは、上記式(S1)の記載と同意義である]
【0149】
上記式中、Ra1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-SiR21 p122 q123 r1である。
【0150】
上記Zは、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子又は2価の有機基である。尚、以下Zとして記載する構造は、右側が(SiR21 p122 q123 r1)に結合する。
【0151】
好ましい態様において、Zは、2価の有機基である。
【0152】
好ましい態様において、Zは、Zが結合しているSi原子とシロキサン結合を形成するものを含まない。好ましくは、式(S3)において、(Si-Z-Si)は、シロキサン結合を含まない。
【0153】
上記Zは、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CHz1-O-(CHz2-(式中、z1は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z2は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CHz3-フェニレン-(CHz4-(式中、z3は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z4は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0154】
好ましい態様において、Zは、C1-6アルキレン基又は-(CHz3-フェニレン-(CHz4-、好ましくは-フェニレン-(CHz4-である。Zがかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0155】
別の好ましい態様において、上記Zは、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Zは、-CHCHCH-であり得る。別の態様において、Zは、-CHCH-であり得る。
【0156】
上記R21は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z1’-SiR21’ p1’22’ q1’23’ r1’である。
【0157】
上記Z1’は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子又は2価の有機基である。尚、以下Z1’として記載する構造は、右側が(SiR21’ p1’22’ q1’23’ r1’)に結合する。
【0158】
好ましい態様において、Z1’は、2価の有機基である。
【0159】
好ましい態様において、Z1’は、Z1’が結合しているSi原子とシロキサン結合を形成するものを含まない。好ましくは、式(S3)において、(Si-Z1’-Si)は、シロキサン結合を含まない。
【0160】
上記Z1’は、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CHz1’-O-(CHz2’-(式中、z1’は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z2’は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CHz3’-フェニレン-(CHz4’-(式中、z3’は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z4’は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0161】
好ましい態様において、Z1’は、C1-6アルキレン基又は-(CHz3’-フェニレン-(CHz4’-、好ましくは-フェニレン-(CHz4’-である。Z1’がかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0162】
別の好ましい態様において、上記Z1’は、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Z1’は、-CHCHCH-であり得る。別の態様において、Z1’は、-CHCH-であり得る。
【0163】
上記R21’は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z1”-SiR22” q1”23” r1”である。
【0164】
上記Z1”は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子又は2価の有機基である。尚、以下Z1”として記載する構造は、右側が(SiR22” q1”23” r1”)に結合する。
【0165】
好ましい態様において、Z1”は、2価の有機基である。
【0166】
好ましい態様において、Z1”は、Z1”が結合しているSi原子とシロキサン結合を形成するものを含まない。好ましくは、式(S3)において、(Si-Z1”-Si)は、シロキサン結合を含まない。
【0167】
上記Z1”は、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CHz1”-O-(CHz2”-(式中、z1”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z2”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CHz3”-フェニレン-(CHz4”-(式中、z3”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z4”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0168】
好ましい態様において、Z1”は、C1-6アルキレン基又は-(CHz3”-フェニレン-(CHz4”-、好ましくは-フェニレン-(CHz4”-である。Z1”がかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0169】
別の好ましい態様において、上記Z1”は、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Z1”は、-CHCHCH-であり得る。別の態様において、Z1”は、-CHCH-であり得る。
【0170】
上記R22”は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基である。
【0171】
上記R22”は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、加水分解性基である。
【0172】
上記R22”は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、-OR、-OCOR、-O-N=CR 、-NR 、-NHR、-NCO、又はハロゲン(これら式中、Rは、置換又は非置換のC1-4アルキル基を示す)であり、より好ましくは-OR(即ち、アルコキシ基)である。Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。一の態様において、Rは、メチル基であり、別の態様において、Rは、エチル基である。
【0173】
上記R23”は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0174】
上記R23”において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0175】
上記q1”は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、上記r1”は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。尚、q1”とr1”の合計は、(SiR22” q1”23” r1”)単位において、3である。
【0176】
上記q1”は、(SiR22” q1”23” r1”)単位毎にそれぞれ独立して、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは2~3、さらに好ましくは3である。
【0177】
上記R22’は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基である。
【0178】
22’は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、加水分解性基である。
【0179】
22’は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、-OR、-OCOR、-O-N=CR 、-NR 、-NHR、-NCO、又はハロゲン(これら式中、Rは、置換又は非置換のC1-4アルキル基を示す)であり、より好ましくは-OR(即ち、アルコキシ基)である。Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。一の態様において、Rは、メチル基であり、別の態様において、Rは、エチル基である。
【0180】
上記R23’は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0181】
23’において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0182】
上記p1’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、q1’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、r1’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。尚、p’、q1’とr1’の合計は、(SiR21’ p1’22’ q1’23’ r1’)単位において、3である。
【0183】
一の態様において、p1’は、0である。
【0184】
一の態様において、p1’は、(SiR21’ p1’22’ q1’23’ r1’)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数、2~3の整数、又は3であってもよい。好ましい態様において、p1’は、3である。
【0185】
一の態様において、q1’は、(SiR21’ p1’22’ q1’23’ r1’)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2~3の整数、より好ましくは3である。
【0186】
一の態様において、p1’は0であり、q1’は、(SiR21’ p1’22’ q1’23’ r1’)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2~3の整数、さらに好ましくは3である。
【0187】
上記R22は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基である。
【0188】
22は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、加水分解性基である。
【0189】
22は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、-OR、-OCOR、-O-N=CR 、-NR 、-NHR、-NCO、又はハロゲン(これら式中、Rは、置換又は非置換のC1-4アルキル基を示す)であり、より好ましくは-OR(即ち、アルコキシ基)である。Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。一の態様において、Rは、メチル基であり、別の態様において、Rは、エチル基である。
【0190】
上記R23は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0191】
23において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0192】
上記p1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、q1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、r1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。尚、p1、q1とr1の合計は、(SiR21 p122 q123 r1)単位において、3である。
【0193】
一の態様において、p1は、0である。
【0194】
一の態様において、p1は、(SiR21 p122 q123 r1)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数、2~3の整数、又は3であってもよい。好ましい態様において、p1は、3である。
【0195】
一の態様において、q1は、(SiR21 p122 q123 r1)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2~3の整数、より好ましくは3である。
【0196】
一の態様において、p1は0であり、q1は、(SiR21 p122 q123 r1)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2~3の整数、さらに好ましくは3である。
【0197】
上記式中、Rb1は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基である。
【0198】
上記Rb1は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、加水分解性基である。
【0199】
上記Rb1は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、-OR、-OCOR、-O-N=CR 、-NR 、-NHR、-NCO、又はハロゲン(これら式中、Rは、置換又は非置換のC1-4アルキル基を示す)であり、より好ましくは-OR(即ち、アルコキシ基)である。Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。一の態様において、Rは、メチル基であり、別の態様において、Rは、エチル基である。
【0200】
上記式中、Rc1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0201】
上記Rc1において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0202】
上記k1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、l1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、m1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。尚、k1、l1とm1の合計は、(SiRa1 k1b1 l1c1 m1)単位において、3である。
【0203】
一の態様において、k1は、(SiRa1 k1b1 l1c1 m1)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。好ましい態様において、k1は、3である。
【0204】
上記式(1)及び(2)において、RSiが式(S3)で表される基である場合、好ましくは、式(1)及び式(2)の末端部分において、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が少なくとも2つ存在する。
【0205】
好ましい態様において、式(S3)で表される基は、-Z-SiR22 q123 r1(式中、q1は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3であり、r1は、0~2の整数である。)、-Z1’-SiR22’ q1’23’ r1’(式中、q1’は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3であり、r1’は、0~2の整数である。)、又は-Z1”-SiR22” q1”23” r1”(式中、q1”は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3であり、r1”は、0~2の整数である。)のいずれか1つを有する。Z、Z1’、Z1”、R22、R23、R22’、R23’、R22”、及びR23”は、上記と同意義である。
【0206】
好ましい態様において、式(S3)において、R21’が存在する場合、少なくとも1つの、好ましくは全てのR21’において、q1”は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。
【0207】
好ましい態様において、式(S3)において、R21が存在する場合、少なくとも1つの、好ましくは全てのR21において、p1’は、0であり、q1’は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。
【0208】
好ましい態様において、式(S3)において、Ra1が存在する場合、少なくとも1つの、好ましくは全てのRa1において、p1は、0であり、q1は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。
【0209】
好ましい態様において、式(S3)において、k1は2又は3、好ましくは3であり、p1は0であり、q1は2又は3、好ましくは3である。
【0210】
d1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-CR31 p232 q233 r2である。
【0211】
は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基である。尚、以下Zとして記載する構造は、右側が(CR31 p232 q233 r2)に結合する。
【0212】
好ましい態様において、Zは、2価の有機基である。
【0213】
上記Zは、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CHz5-O-(CHz6-(式中、z5は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z6は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CHz7-フェニレン-(CHz8-(式中、z7は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z8は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0214】
好ましい態様において、Zは、C1-6アルキレン基又は-(CHz7-フェニレン-(CHz8-、好ましくは-フェニレン-(CHz8-である。Zがかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0215】
別の好ましい態様において、上記Zは、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Zは、-CHCHCH-であり得る。別の態様において、Zは、-CHCH-であり得る。
【0216】
31は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z2’-CR32’ q2’33’ r2’である。
【0217】
2’は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基である。尚、以下Z2’として記載する構造は、右側が(CR32’ q2’33’ r2’)に結合する。
【0218】
上記Z2’は、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CHz5’-O-(CHz6’-(式中、z5’は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z6’は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CHz7’-フェニレン-(CHz8’-(式中、z7’は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z8’は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0219】
好ましい態様において、Z2’は、C1-6アルキレン基又は-(CHz7’-フェニレン-(CHz8’-、好ましくは-フェニレン-(CHz8’-である。Z2’がかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0220】
別の好ましい態様において、上記Z2’は、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Z2’は、-CHCHCH-であり得る。別の態様において、Z2’は、-CHCH-であり得る。
【0221】
上記R32’は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-SiR34 n235 3-n2である。
【0222】
上記Zは、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基である。尚、以下Zとして記載する構造は、右側が(SiR34 n235 3-n2)に結合する。
【0223】
一の態様において、Zは酸素原子である。
【0224】
一の態様において、Zは2価の有機基である。
【0225】
上記Zは、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CHz5”-O-(CHz6”-(式中、z5”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z6”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CHz7”-フェニレン-(CHz8”-(式中、z7”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z8”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0226】
好ましい態様において、Zは、C1-6アルキレン基又は-(CHz7”-フェニレン-(CHz8”-、好ましくは-フェニレン-(CHz8”-である。Zがかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0227】
別の好ましい態様において、上記Zは、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Zは、-CHCHCH-であり得る。別の態様において、Zは、-CHCH-であり得る。
【0228】
上記R34は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基である。
【0229】
34は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、加水分解性基である。
【0230】
34は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、-OR、-OCOR、-O-N=CR 、-NR 、-NHR、-NCO、又はハロゲン(これら式中、Rは、置換又は非置換のC1-4アルキル基を示す)であり、より好ましくは-OR(即ち、アルコキシ基)である。Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。一の態様において、Rは、メチル基であり、別の態様において、Rは、エチル基である。
【0231】
上記R35は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0232】
上記R35において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0233】
上記式中、n2は、(SiR34 n235 3-n2)単位毎にそれぞれ独立して、0~3の整数である。ただし、RSiが式(S4)で表される基である場合、式(1)及び式(2)の末端部分において、n2が1~3である(SiR34 n235 3-n2)単位が少なくとも1つ存在する。即ち、かかる末端部分において、すべてのn2が同時に0になることはない。換言すれば、式(1)及び式(2)の末端部分において、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が少なくとも1つ存在する。
【0234】
n2は、(SiR34 n235 3-n2)単位毎にそれぞれ独立して、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは2~3、さらに好ましくは3である。
【0235】
上記R33’は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0236】
上記R33’において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基又は-(C2st1-(O-C2st2(式中、sは、1~6の整数、好ましくは2~4の整数であり、t1は1又は0、好ましくは0であり、t2は、1~20の整数、好ましくは2~10の整数、より好ましくは2~6の整数である。)であり、より好ましくはC1-20アルキル基、さらに好ましくはC1-6アルキル基、特に好ましくはメチル基である。
【0237】
一の態様において、R33’は、水酸基である。
【0238】
別の態様において、R33’は、1価の有機基、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基である。
【0239】
上記q2’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、上記r2’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。尚、q2’とr2’の合計は、(CR32’ q2’33’ r2’)単位において、3である。
【0240】
q2’は、(CR32’ q2’33’ r2’)単位毎にそれぞれ独立して、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは2~3、さらに好ましくは3である。
【0241】
32は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-SiR34 n235 3-n2である。かかる-Z-SiR34 n235 3-n2は、上記R32’における記載と同意義である。
【0242】
上記R33は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0243】
上記R33において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基又は-(C2st1-(O-C2st2(式中、sは、1~6の整数、好ましくは2~4の整数であり、t1は1又は0、好ましくは0であり、t2は、1~20の整数、好ましくは2~10の整数、より好ましくは2~6の整数である。)であり、より好ましくはC1-20アルキル基、さらに好ましくはC1-6アルキル基、特に好ましくはメチル基である。
【0244】
一の態様において、R33は、水酸基である。
【0245】
別の態様において、R33は、1価の有機基、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基である。
【0246】
上記p2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、q2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、r2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。尚、p2、q2及びr2の合計は、(CR31 p232 q233 r2)単位において、3である。
【0247】
一の態様において、p2は、0である。
【0248】
一の態様において、p2は、(CR31 p232 q233 r2)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数、2~3の整数、又は3であってもよい。好ましい態様において、p2は、3である。
【0249】
一の態様において、q2は、(CR31 p232 q233 r2)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2~3の整数、より好ましくは3である。
【0250】
一の態様において、p2は0であり、q2は、(CR31 p232 q233 r2)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2~3の整数、さらに好ましくは3である。
【0251】
上記Re1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-SiR34 n235 3-n2である。かかる-Z-SiR34 n235 3-n2は、上記R32’における記載と同意義である。
【0252】
上記Rf1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0253】
上記Rf1において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基又は-(C2st1-(O-C2st2(式中、sは、1~6の整数、好ましくは2~4の整数であり、t1は1又は0、好ましくは0であり、t2は、1~20の整数、好ましくは2~10の整数、より好ましくは2~6の整数である。)であり、より好ましくはC1-20アルキル基、さらに好ましくはC1-6アルキル基、特に好ましくはメチル基である。
【0254】
一の態様において、Rf1は、水酸基である。
【0255】
別の態様において、Rf1は、1価の有機基、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基である。
【0256】
上記k2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、l2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、m2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。尚、k2、l2及びm2の合計は、(CRd1 k2e1 l2f1 m2)単位において、3である。
【0257】
上記式(1)及び(2)において、RSiが式(S4)で表される基である場合、好ましくは、式(1)及び式(2)の末端部分において、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が少なくとも2つ存在する。
【0258】
一の態様において、RSiが式(S4)で表される基である場合、n2が1~3、好ましくは2又は3、より好ましくは3である(SiR34 n235 3-n2)単位は、式(1)及び式(2)の各末端部分において、2個以上、例えば2~27個、好ましくは2~9個、より好ましくは2~6個、さらに好ましくは2~3個、特に好ましくは3個存在する。
【0259】
好ましい態様において、式(S4)において、R32’が存在する場合、少なくとも1つの、好ましくは全てのR32’において、n2は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。
【0260】
好ましい態様において、式(S4)において、R32が存在する場合、少なくとも1つの、好ましくは全てのR32において、n2は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。
【0261】
好ましい態様において、式(S4)において、Re1が存在する場合、少なくとも1つの、好ましくは全てのRa1において、n2は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。
【0262】
好ましい態様において、式(S4)において、k2は0であり、l2は2又は3、好ましくは3であり、n2は、2又は3、好ましくは3である。
【0263】
上記Rg1及びRh1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-SiR11 n112 3-n1、-Z-SiRa1 k1b1 l1c1 m1、-Z-CRd1 k2e1 l2f1 m2である。ここに、R11、R12、Ra1、Rb2、Rc1、Rd1、Re1、Rf1、n1、k1、l1、m1、k2、l2、及びm2は、上記と同意義である。
【0264】
好ましい態様において、Rg1及びRh1は、それぞれ独立して、-Z-SiR11 n112 3-n1である。
【0265】
上記Zは、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基である。尚、以下Zとして記載する構造は、右側が(SiR11 n112 3-n1)に結合する。
【0266】
一の態様において、Zは酸素原子である。
【0267】
一の態様において、Zは2価の有機基である。
【0268】
上記Zは、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CHz5”-O-(CHz6”-(式中、z5”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z6”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CHz7”-フェニレン-(CHz8”-(式中、z7”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z8”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0269】
好ましい態様において、Zは、C1-6アルキレン基又は-(CHz7”-フェニレン-(CHz8”-、好ましくは-フェニレン-(CHz8”-である。Zがかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0270】
別の好ましい態様において、上記Zは、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Zは、-CHCHCH-であり得る。別の態様において、Zは、-CHCH-であり得る。
【0271】
一の態様において、RSiは、式(S2)、(S3)、(S4)又は(S5)で表される基である。これらの化合物は、高い表面滑り性を有する表面処理層を形成することができる。
【0272】
一の態様において、RSiは、式(S3)、(S4)又は(S5)で表される基である。これらの化合物は、一の末端に複数の加水分解性基を有することから、基材に強く密着し、高い摩耗耐久性を有する表面処理層を形成することができる。
【0273】
一の態様において、RSiは、式(S3)又は(S4)で表される基である。これらの化合物は、一の末端に、一のSi原子又はC原子から分岐した複数の加水分解性基を有し得ることから、さらに高い摩耗耐久性を有する表面処理層を形成することができる。
【0274】
一の態様において、RSiは、式(S1)で表される基である。
【0275】
一の態様において、RSiは、式(S2)で表される基である。
【0276】
一の態様において、RSiは、式(S3)で表される基である。
【0277】
一の態様において、RSiは、式(S4)で表される基である。
【0278】
一の態様において、RSiは、式(S5)で表される基である。
【0279】
上記式(1)及び(2)において、Xは、主に撥水性及び表面滑り性等を提供するフルオロポリエーテル部(RF1及びRF2)と基材との結合能を提供する部(RSi)とを連結するリンカーと解される。従って、当該Xは、式(1)及び(2)で表される化合物が安定に存在し得るものであれば、単結合であってもよく、いずれの基であってもよい。
【0280】
上記式(1)において、αは1~9の整数であり、βは1~9の整数である。これらα及びβは、Xの価数に応じて変化し得る。α及びβの和は、Xの価数と同じである。例えば、Xが10価の有機基である場合、α及びβの和は10であり、例えばαが9かつβが1、αが5かつβが5、又はαが1かつβが9となり得る。また、Xが2価の有機基である場合、α及びβは1である。
【0281】
上記式(2)において、γは1~9の整数である。γは、Xの価数に応じて変化し得る。即ち、γは、Xの価数から1を引いた値である。
【0282】
は、それぞれ独立して、単結合又は2~10価の有機基であり;
【0283】
上記Xにおける2~10価の有機基は、好ましくは2~8価の有機基である。一の態様において、かかる2~10価の有機基は、好ましくは2~4価の有機基であり、より好ましくは2価の有機基である。別の態様において、かかる2~10価の有機基は、好ましくは3~8価の有機基、より好ましくは3~6価の有機基である。
【0284】
一の態様において、Xは、単結合又は2価の有機基であり、αは1であり、βは1である。
【0285】
一の態様において、Xは、単結合又は2価の有機基であり、γは1である。
【0286】
一の態様において、Xは3~6価の有機基であり、αは1であり、βは2~5である。
【0287】
一の態様において、Xは3~6価の有機基であり、γは2~5である。
【0288】
一の態様において、Xは、3価の有機基であり、αは1であり、βは2である。
【0289】
一の態様において、Xは、3価の有機基であり、γは2である。
【0290】
が、単結合又は2価の有機基である場合、式(1)及び(2)は、下記式(1’)及び(2’)で表される。
【化13】
【0291】
一の態様において、Xは単結合である。
【0292】
別の態様において、Xは2価の有機基である。
【0293】
一の態様において、Xとしては、例えば、単結合又は下記式:
-(R51p5-(X51q5
[式中:
51は、単結合、-(CHs5-又はo-、m-もしくはp-フェニレン基を表し、好ましくは-(CHs5-であり、
s5は、1~20の整数、好ましくは1~6の整数、より好ましくは1~3の整数、さらにより好ましくは1又は2であり、
51は、-(X52l5-を表し、
52は、各出現においてそれぞれ独立して、-O-、-S-、o-、m-もしくはp-フェニレン基、-C(O)O-、-Si(R53-、-(Si(R53O)m5-Si(R53-、-CONR54-、-O-CONR54-、-NR54-及び-(CHn5-からなる群から選択される基を表し、
53は、各出現においてそれぞれ独立して、フェニル基、C1-6アルキル基又はC1-6アルコキシ基を表し、好ましくはフェニル基又はC1-6アルキル基であり、より好ましくはメチル基であり、
54は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基又はC1-6アルキル基(好ましくはメチル基)を表し、
m5は、各出現において、それぞれ独立して、1~100の整数、好ましくは1~20の整数であり、
n5は、各出現において、それぞれ独立して、1~20の整数、好ましくは1~6の整数、より好ましくは1~3の整数であり、
l5は、1~10の整数、好ましくは1~5の整数、より好ましくは1~3の整数であり、
p5は、0又は1であり、
q5は、0又は1であり、
ここに、p5及びq5の少なくとも一方は1であり、p5又はq5を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は任意である]
で表される2価の有機基が挙げられる。ここに、X(典型的にはXの水素原子)は、フッ素原子、C1-3アルキル基及びC1-3フルオロアルキル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよい。好ましい態様において、Xは、これらの基により置換されていない。
【0294】
好ましい態様において、上記Xは、それぞれ独立して、-(R51p5-(X51q5-R52-である。R52は、単結合、-(CHt5-又はo-、m-もしくはp-フェニレン基を表し、好ましくは-(CHt5-である。t5は、1~20の整数、好ましくは2~6の整数、より好ましくは2~3の整数である。ここに、R52(典型的にはR52の水素原子)は、フッ素原子、C1-3アルキル基及びC1-3フルオロアルキル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよい。好ましい態様において、R56は、これらの基により置換されていない。
【0295】
好ましくは、上記Xは、それぞれ独立して、
単結合、
1-20アルキレン基、
-R51-X53-R52-、又は
-X54-R
[式中、R51及びR52は、上記と同意義であり、
53は、
-O-、
-S-、
-C(O)O-、
-CONR54-、
-O-CONR54-、
-Si(R53-、
-(Si(R53O)m5-Si(R53-、
-O-(CHu5-(Si(R53O)m5-Si(R53-、
-O-(CHu5-Si(R53-O-Si(R53-CHCH-Si(R53-O-Si(R53-、
-O-(CHu5-Si(OCHOSi(OCH-、
-CONR54-(CHu5-(Si(R53O)m5-Si(R53-、
-CONR54-(CHu5-N(R54)-、又は
-CONR54-(o-、m-又はp-フェニレン)-Si(R53
(式中、R53、R54及びm5は、上記と同意義であり、
u5は1~20の整数、好ましくは2~6の整数、より好ましくは2~3の整数である。)を表し、
54は、
-S-、
-C(O)O-、
-CONR54-、
-O-CONR54-、
-CONR54-(CHu5-(Si(R54O)m5-Si(R54-、
-CONR54-(CHu5-N(R54)-、又は
-CONR54-(o-、m-又はp-フェニレン)-Si(R54
(式中、各記号は、上記と同意義である。)
を表す。]
であり得る。
【0296】
より好ましくは、上記Xは、それぞれ独立して、
単結合、
1-20アルキレン基、
-(CHs5-X53-、
-(CHs5-X53-(CHt5
-X54-、又は
-X54-(CHt5
[式中、X53、X54、s5及びt5は、上記と同意義である。]
である。
【0297】
より好ましくは、上記Xは、それぞれ独立して、
単結合、
1-20アルキレン基、
-(CHs5-X53-(CHt5-、又は
-X54-(CHt5
[式中、各記号は、上記と同意義である。]
であり得る。
【0298】
好ましい態様において、上記Xは、それぞれ独立して、
単結合
1-20アルキレン基、
-(CHs5-X53-、又は
-(CHs5-X53-(CHt5
[式中、
53は、-O-、-CONR54-、又は-O-CONR54-であり、
54は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基又はC1-6アルキル基を表し、
s5は、1~20の整数であり、
t5は、1~20の整数である。]
であり得る。
【0299】
好ましい態様において、上記Xは、それぞれ独立して、
-(CHs5-O-(CHt5
-CONR54-(CHt5
[式中、
54は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基又はC1-6アルキル基を表し、
s5は、1~20の整数であり、
t5は、1~20の整数である。]
であり得る。
【0300】
一の態様において、上記Xは、それぞれ独立して、
単結合、
1-20アルキレン基、
-(CHs5-O-(CHt5-、
-(CHs5-(Si(R53O)m5-Si(R53-(CHt5-、
-(CHs5-O-(CHu5-(Si(R53O)m5-Si(R53-(CHt5-、又は
-(CHs5-O-(CHt5-Si(R53-(CHu5-Si(R53-(Cv2v)-
[式中、R53、m5、s5、t5及びu5は、上記と同意義であり、v5は1~20の整数、好ましくは2~6の整数、より好ましくは2~3の整数である。]
である。
【0301】
上記式中、-(Cv2v)-は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、例えば、-CHCH-、-CHCHCH-、-CH(CH)-、-CH(CH)CH-であり得る。
【0302】
上記Xは、それぞれ独立して、フッ素原子、C1-3アルキル基及びC1-3フルオロアルキル基(好ましくは、C1-3パーフルオロアルキル基)から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよい。一の態様において、Xは、非置換である。
【0303】
尚、上記Xは、各式の左側がRF1又はRF2に結合し、右側がRSiに結合する。
【0304】
一の態様において、Xは、それぞれ独立して、-O-C1-6アルキレン基以外であり得る。
【0305】
別の態様において、Xとしては、例えば下記の基が挙げられる:
【化14】
【化15】
[式中、R41は、それぞれ独立して、水素原子、フェニル基、炭素数1~6のアルキル基、又はC1-6アルコキシ基、好ましくはメチル基であり;
Dは、
-CHO(CH-、
-CHO(CH-、
-CFO(CH-、
-(CH-、
-(CH-、
-(CH4-、
-CONH-(CH-、
-CON(CH)-(CH-、
-CON(Ph)-(CH-(式中、Phはフェニルを意味する)、及び
【化16】
(式中、R42は、それぞれ独立して、水素原子、C1-6のアルキル基又はC1-6のアルコキシ基、好ましくはメチル基又はメトキシ基、より好ましくはメチル基を表す。)
から選択される基であり、
Eは、-(CH-(nは2~6の整数)であり、
Dは、分子主鎖のRF1又はRF2に結合し、Eは、RSiに結合する。]
【0306】
上記Xの具体的な例としては、例えば:
単結合、
-CHOCH-、
-CHO(CH-、
-CHO(CH-、
-CHO(CH-、
-CHO(CH-、
-CHO(CH-、
-CHO(CHSi(CHOSi(CH(CH-、
-CHO(CHSi(CHOSi(CHOSi(CH(CH-、
-CHO(CHSi(CHO(Si(CHO)Si(CH(CH-、
-CHO(CHSi(CHO(Si(CHO)Si(CH(CH-、
-CHO(CHSi(CHO(Si(CHO)10Si(CH(CH-、
-CHO(CHSi(CHO(Si(CHO)20Si(CH(CH-、
-CHOCFCHFOCF-、
-CHOCFCHFOCFCF-、
-CHOCFCHFOCFCFCF-、
-CHOCHCFCFOCF-、
-CHOCHCFCFOCFCF-、
-CHOCHCFCFOCFCFCF-、
-CHOCHCFCFOCF(CF)CFOCF-、
-CHOCHCFCFOCF(CF)CFOCFCF-、
-CHOCHCFCFOCF(CF)CFOCFCFCF-、
-CHOCHCHFCFOCF-、
-CHOCHCHFCFOCFCF-、
-CHOCHCHFCFOCFCFCF-、
-CHOCHCHFCFOCF(CF)CFOCF-、
-CHOCHCHFCFOCF(CF)CFOCFCF-、
-CHOCHCHFCFOCF(CF)CFOCFCFCF-、
-CHOCFCHFOCFCFCF-C(O)NH-CH-、
-CHOCH(CHCHSi(OCHOSi(OCH(CHSi(OCHOSi(OCH(CH-、
-CHOCHCHCHSi(OCHOSi(OCH(CH-、
-CHOCHCHCHSi(OCHCHOSi(OCHCH(CH-、
-CHOCHCHCHSi(OCHOSi(OCH(CH-、
-CHOCHCHCHSi(OCHCHOSi(OCHCH(CH-、
-(CH-Si(CH-(CH-、
-CH-、
-(CH-、
-(CH-、
-(CH-、
-(CH-、
-(CH-、
-CO-、
-CONH-、
-CONH-CH-、
-CONH-(CH-、
-CONH-(CH-、
-CONH-(CH-、
-CONH-(CH-、
-CONH-(CH-、
-CON(CH)-CH-、
-CON(CH)-(CH-、
-CON(CH)-(CH-、
-CON(CH)-(CH-、
-CON(CH)-(CH-、
-CON(CH)-(CH-、
-CON(Ph)-CH-(式中、Phはフェニルを意味する)、
-CON(Ph)-(CH-(式中、Phはフェニルを意味する)、
-CON(Ph)-(CH-(式中、Phはフェニルを意味する)、
-CON(Ph)-(CH-(式中、Phはフェニルを意味する)、
-CON(Ph)-(CH-(式中、Phはフェニルを意味する)、
-CON(Ph)-(CH-(式中、Phはフェニルを意味する)、
-CONH-(CHNH(CH-、
-CONH-(CHNH(CH-、
-CHO-CONH-(CH-、
-CHO-CONH-(CH-、
-S-(CH-、
-(CHS(CH-、
-CONH-(CHSi(CHOSi(CH(CH-、
-CONH-(CHSi(CHOSi(CHOSi(CH(CH-、
-CONH-(CHSi(CHO(Si(CHO)Si(CH(CH-、
-CONH-(CHSi(CHO(Si(CHO)Si(CH(CH-、
-CONH-(CHSi(CHO(Si(CHO)10Si(CH(CH-、
-CONH-(CHSi(CHO(Si(CHO)20Si(CH(CH-、
-C(O)O-(CH-、
-C(O)O-(CH-、
-CH-O-(CH-Si(CH-(CH-Si(CH-(CH-、
-CH-O-(CH-Si(CH-(CH-Si(CH-CH(CH)-、
-CH-O-(CH-Si(CH-(CH-Si(CH-(CH-、
-CH-O-(CH-Si(CH-(CH-Si(CH-CH(CH)-CH-、
-OCH-、
-O(CH-、
-OCFHCF-、
【化17】

などが挙げられる。
【0307】
さらに別の態様において、Xは、それぞれ独立して、式:-(R16x1-(CFR17y1-(CHz1-で表される基である。式中、x1、y1及びz1は、それぞれ独立して、0~10の整数であり、x1、y1及びz1の和は1以上であり、括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。
【0308】
上記式中、R16は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子、フェニレン、カルバゾリレン、-NR18-(式中、R18は、水素原子又は有機基を表す)又は2価の有機基である。好ましくは、R18は、酸素原子又は2価の極性基である。
【0309】
上記「2価の極性基」としては、特に限定されないが、-C(O)-、-C(=NR19)-、及び-C(O)NR19-(これらの式中、R19は、水素原子又は低級アルキル基を表す)が挙げられる。当該「低級アルキル基」は、例えば、炭素数1~6のアルキル基、例えばメチル、エチル、n-プロピルであり、これらは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい。
【0310】
上記式中、R17は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は低級フルオロアルキル基であり、好ましくはフッ素原子である。当該「低級フルオロアルキル基」は、例えば、炭素数1~6、好ましくは炭素数1~3のフルオロアルキル基、好ましくは炭素数1~3のパーフルオロアルキル基、より好ましくはトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、さらに好ましくはトリフルオロメチル基である。
【0311】
さらに別の態様において、Xの例として、下記の基が挙げられる:
【化18】
[式中、
41は、それぞれ独立して、水素原子、フェニル基、炭素数1~6のアルキル基、又はC1-6アルコキシ基好ましくはメチル基であり;
各X基において、Tのうち任意のいくつかは、分子主鎖のRF1又はRF2に結合する以下の基:
-CHO(CH-、
-CHO(CH-、
-CFO(CH-、
-(CH-、
-(CH-、
-(CH4-、
-CONH-(CH-、
-CON(CH)-(CH-、
-CON(Ph)-(CH-(式中、Phはフェニルを意味する)、又は
【化19】
[式中、R42は、それぞれ独立して、水素原子、C1-6のアルキル基又はC1-6のアルコキシ基、好ましくはメチル基又はメトキシ基、より好ましくはメチル基を表す。]
であり、別のTのいくつかは、分子主鎖のRSiに結合し、存在する場合、残りのTは、それぞれ独立して、メチル基、フェニル基、C1-6アルコキシ基又はラジカル捕捉基又は紫外線吸収基である。
【0312】
ラジカル捕捉基は、光照射で生じるラジカルを捕捉できるものであれば特に限定されないが、例えばベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、安息香酸エステル類、サリチル酸フェニル類、クロトン酸類、マロン酸エステル類、オルガノアクリレート類、ヒンダードアミン類、ヒンダードフェノール類、又はトリアジン類の残基が挙げられる。
【0313】
紫外線吸収基は、紫外線を吸収できるものであれば特に限定されないが、例えばベンゾトリアゾール類、ヒドロキシベンゾフェノン類、置換及び未置換安息香酸もしくはサリチル酸化合物のエステル類、アクリレート又はアルコキシシンナメート類、オキサミド類、オキサニリド類、ベンゾキサジノン類、ベンゾキサゾール類の残基が挙げられる。
【0314】
好ましい態様において、好ましいラジカル捕捉基又は紫外線吸収基としては、
【化20】
が挙げられる。
【0315】
この態様において、Xは、それぞれ独立して、3~10価の有機基であり得る。
【0316】
さらに別の態様において、Xの例として、下記の基が挙げられる:
【化21】
[式中、R25、R26及びR27は、それぞれ独立して2~6価の有機基であり、
25は、少なくとも1つのRF1に結合し、R26及びR27は、それぞれ、少なくとも1つのRSiに結合する。]
【0317】
一の態様において、上記R25は、単結合、C1-20アルキレン基、C3-20シクロアルキレン基、C5-20アリーレン基、-R57-X58-R59-、-X58-R59-、又は-R57-X58-である。上記、R57及びR59は、それぞれ独立して、単結合、C1-20アルキレン基、C3-20シクロアルキレン基、又はC5-20アリーレン基である。上記X58は、-O-、-S-、-CO-、-O-CO-又は-COO-である。
【0318】
一の態様において、上記R26及びR27は、それぞれ独立して、炭化水素、又は炭化水素の端又は主鎖中にN、O及びSから選択される少なくとも1つの原子を有する基であり、好ましくは、C1-6アルキル基、-R36-R37-R36-、-R36-CHR38 -などが挙げられる。ここに、R36は、それぞれ独立して、単結合又は炭素数1~6のアルキル基、好ましくは炭素数1~6のアルキル基である。R37は、N、O又はSであり、好ましくはN又はOである。R38は、-R45-R46-R45-、-R46-R45-又は-R45-R46-である。ここに、R45は、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルキル基である。R46は、N、O又はSであり、好ましくはOである。
【0319】
この態様において、Xは、それぞれ独立して、3~10価の有機基であり得る。
【0320】
さらに別の態様において、Xの例として、下記:
【化22】
[式中、Xは、単結合または2価の有機基である。]
で表される基が挙げられる
【0321】
上記Xは、イソシアヌル環に直接結合する単結合または二価の連結基である。Xとしては、単結合、アルキレン基、または、エーテル結合、エステル結合、アミド結合及びスルフィド結合からなる群より選択される少なくとも1種の結合を含む二価の基が好ましく、単結合、炭素数1~10のアルキレン基、または、エーテル結合、エステル結合、アミド結合及びスルフィド結合からなる群より選択される少なくとも1種の結合を含む炭素数1~10の二価の炭化水素基がより好ましい。
【0322】
としては、下記式:
-(CX121122x1-(Xa1y1-(CX123124z1
(式中、X121~X124は、それぞれ独立して、H、F、OH、または、-OSi(OR121(式中、3つのR121は、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキル基である。)であり、
上記Xa1は、-C(=O)NH-、-NHC(=O)-、-O-、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-OC(=O)O-、または、-NHC(=O)NH-であり(各結合の左側がCX121122に結合する。)、
x1は0~10の整数であり、y1は0または1であり、z1は1~10の整数である。)
で表される基が更に好ましい。
【0323】
上記Xa1としては、-O-または-C(=O)O-が好ましい。
【0324】
上記Xとしては、下記式:
-(CFm11-(CHm12-O-(CHm13
(式中、m11は1~3の整数であり、m12は1~3の整数であり、m13は1~3の整数である。)
で表される基、
-(CFm14-(CHm15-O-CHCH(OH)-(CHm16
(式中、m14は1~3の整数であり、m15は1~3の整数であり、m16は1~3の整数である。)
で表される基、
-(CFm17-(CHm18
(式中、m17は1~3の整数であり、m18は1~3の整数である。)
で表される基、
-(CFm19-(CHm20-O-CHCH(OSi(OCH)-(CHm21
(式中、m19は1~3の整数であり、m20は1~3の整数であり、m21は1~3の整数である。)
で表される基、または、
-(CHm22
(式中、m22は1~3の整数である。)
で表される基が特に好ましい。
【0325】
上記Xとして、特に限定されないが、具体的には、
-CH-、-C-、-C-、-C-、-C-O-CH-、-CO-O-CH-CH(OH)-CH-、-(CFn5-(n5は0~4の整数である。)、-(CFn5-(CHm5-(n5およびm5は、それぞれ独立して、0~4の整数である。)、-CFCFCHOCHCH(OH)CH-、-CFCFCHOCHCH(OSi(OCH)CH
等が挙げられる。
【0326】
この態様において、Xは、それぞれ独立して、2又は3価の有機基であり得る。
【0327】
上記式(1)又は式(2)で表される含フッ素シラン化合物は、特に限定されるものではないが、5×10~1×10の平均分子量を有し得る。かかる範囲のなかでも、2,000~32,000、より好ましくは2,500~12,000の平均分子量を有することが、摩耗耐久性の観点から好ましい。なお、かかる「平均分子量」は、数平均分子量を言い、「平均分子量」は、19F-NMRにより測定される値とする。
【0328】
一の態様において、本開示の表面処理剤中、含フッ素シラン化合物は、式(1)で表される化合物である。
【0329】
別の態様において、本開示の表面処理剤中、含フッ素シラン化合物は、式(2)で表される化合物である。
【0330】
別の態様において、本開示の表面処理剤中、含フッ素シラン化合物は、式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物である。
【0331】
本開示の表面処理剤中、式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物との合計に対して、式(2)で表される化合物が、好ましくは0.1モル%以上35モル%以下である。式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物との合計に対する式(2)で表される化合物の含有量の下限は、好ましくは0.1モル%、より好ましくは0.2モル%、さらに好ましくは0.5モル%、さらにより好ましくは1モル%、特に好ましくは2モル%、特別には5モル%であり得る。式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物との合計に対する式(2)で表される化合物の含有量の上限は、好ましくは35モル%、より好ましくは30モル%、さらに好ましくは20モル%、さらにより好ましくは15モル%又は10モル%であり得る。式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物との合計に対する式(2)で表される化合物は、好ましくは0.1モル%以上30モル%以下、より好ましくは0.1モル%以上20モル%以下、さらに好ましくは0.2モル%以上10モル%以下、さらにより好ましくは0.5モル%以上10モル%以下、特に好ましくは1モル%以上10モル%以下、例えば2モル%以上10モル%以下又は5モル%以上10モル%以下である。式(2)で表される化合物をかかる範囲とすることにより、より摩耗耐久性を向上させることができる。
【0332】
一の態様において、本開示の表面処理剤は、2種以上の式(1)又は(2)で表される含フッ素シラン化合物を含む。複数の含フッ素シラン化合物を含むことにより、摩擦耐久性がより向上し得る。
【0333】
一の態様において、本開示の表面処理剤は、RSiが、式(S1)、(S2)、(S3)、(S4)及び(S5)から選択される基であって、互いに異なる基である、2種以上の式(1)又は(2)で表される含フッ素シラン化合物を含む。異なるRSiを有する含フッ素シラン化合物を含むことにより、摩擦耐久性がより向上し得る。
【0334】
一の態様において、本開示の表面処理剤は、RSiが式(S1)で表される基である、式(1)又は(2)で表される含フッ素シラン化合物、及びRSiが式(S3)、(S4)及び(S5)から選択される基である、式(1)又は(2)で表される含フッ素シラン化合物を含む。RSiが式(S1)で表される基である、式(1)又は(2)で表される含フッ素シラン化合物と、RSiが式(S3)、(S4)及び(S5)から選択される基である、式(1)又は(2)で表される含フッ素シラン化合物を併用することにより、摩擦耐久性がより向上し得る。
【0335】
一の態様において、本開示の表面処理剤は、RSiが式(S1)で表される基である、式(1)又は(2)で表される含フッ素シラン化合物、及びRSiが式(S3)及び(S4)から選択される基である、式(1)又は(2)で表される含フッ素シラン化合物を含む。RSiが式(S1)で表される基である、式(1)又は(2)で表される含フッ素シラン化合物と、RSiが式(S3)及び(S4)から選択される基である、式(1)又は(2)で表される含フッ素シラン化合物を併用することにより、摩擦耐久性がより向上し得る。
【0336】
一の態様において、本開示の表面処理剤は、RSiが式(S1)で表される基である、式(1)又は(2)で表される含フッ素シラン化合物、及びRSiが式(S3)で表される基である、式(1)又は(2)で表される含フッ素シラン化合物を含む。RSiが式(S1)で表される基である式(1)又は(2)で表される含フッ素シラン化合物と、RSiが式(S3)で表される基である式(1)又は(2)で表される含フッ素シラン化合物を併用することにより、摩擦耐久性がより向上し得る。
【0337】
一の態様において、本開示の表面処理剤は、RSiが式(S1)で表される基である、式(1)又は(2)で表される含フッ素シラン化合物、及びRSiが式(S4)で表される基である、式(1)又は(2)で表される含フッ素シラン化合物を含む。RSiが式(S1)で表される基である式(1)又は(2)で表される含フッ素シラン化合物と、RSiが式(S4)で表される基である式(1)又は(2)で表される含フッ素シラン化合物を併用することにより、摩擦耐久性がより向上し得る。
【0338】
上記の式(1)又は(2)で表される化合物は、例えば、自体公知の方法、例えば国際公開第97/07155号、特表2008-534696号、特開2014-218639号、特開2017-82194号等に記載の方法により得ることができる。
【0339】
上記の式(1)又は(2)で表される化合物の含有量は、表面処理剤全体に対して、好ましくは0.01~50.0質量%、より好ましくは0.1~30.0質量%、さらに好ましくは1.0~25.0質量%、特に好ましくは5.0~20.0質量%であり得る。上記含フッ素シラン化合物の含有量を上記の範囲にすることにより、より高い撥水撥油性を得ることができる。
【0340】
本開示の表面処理剤は、溶媒、含フッ素オイルとして理解され得る(非反応性の)フルオロポリエーテル化合物、好ましくはパーフルオロ(ポリ)エーテル化合物(以下、まとめて「含フッ素オイル」と言う)、シリコーンオイルとして理解され得る(非反応性の)シリコーン化合物(以下、「シリコーンオイル」と言う)、アルコール類、相溶化剤、触媒、界面活性剤、重合禁止剤、増感剤等を含み得る。
【0341】
上記溶媒としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、ミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、ソルベントナフサ等の芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸セロソルブ、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、酢酸カルビトール、ジエチルオキサレート、ピルビン酸エチル、エチル-2-ヒドロキシブチレート、エチルアセトアセテート、酢酸アミル、乳酸メチル、乳酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、2-ヒドロキシイソ酪酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2-ヘキサノン、シクロヘキサノン、メチルアミノケトン、2-ヘプタノン等のケトン類;エチルセルソルブ、メチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノアルキルエーテル等のグリコールエーテル類;メタノール、エタノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、sec-ブタノール、3-ペンタノール、オクチルアルコール、3-メチル-3-メトキシブタノール、tert-アミルアルコール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン等の環状エーテル類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類;メチルセロソルブ、セロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテルアルコール類;ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート;1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン、1,2-ジクロロ-1,1,2,2-テトラフルオロエタン、ジメチルスルホキシド、1,1-ジクロロ-1,2,2,3,3-ペンタフルオロプロパン(HCFC225)、ゼオローラH、HFE7100、HFE7200、HFE7300等のフッ素含有溶媒等が挙げられる。あるいはこれらの2種以上の混合溶媒等が挙げられる。
【0342】
含フッ素オイルとしては、特に限定されるものではないが、例えば、以下の一般式(3)で表される化合物(パーフルオロ(ポリ)エーテル化合物)が挙げられる。
Rf-(OCa’-(OCb’-(OCc’-(OCFd’-Rf ・・・(3)
式中、Rfは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1~16アルキル基(好ましくは、C1―16のパーフルオロアルキル基)を表し、Rfは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1~16アルキル基(好ましくは、C1-16パーフルオロアルキル基)、フッ素原子又は水素原子を表し、Rf及びRfは、より好ましくは、それぞれ独立して、C1-3パーフルオロアルキル基である。
a’、b’、c’及びd’は、ポリマーの主骨格を構成するパーフルオロ(ポリ)エーテルの4種の繰り返し単位数をそれぞれ表し、互いに独立して0以上300以下の整数であって、a’、b’、c’及びd’の和は少なくとも1、好ましくは1~300、より好ましくは20~300である。添字a’、b’、c’又はd’を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。これら繰り返し単位のうち、-(OC)-は、-(OCFCFCFCF)-、-(OCF(CF)CFCF)-、-(OCFCF(CF)CF)-、-(OCFCFCF(CF))-、-(OC(CFCF)-、-(OCFC(CF)-、-(OCF(CF)CF(CF))-、-(OCF(C)CF)-及び(OCFCF(C))-のいずれであってもよいが、好ましくは-(OCFCFCFCF)-である。-(OC)-は、-(OCFCFCF)-、-(OCF(CF)CF)-及び(OCFCF(CF))-のいずれであってもよく、好ましくは-(OCFCFCF)-である。-(OC)-は、-(OCFCF)-及び(OCF(CF))-のいずれであってもよいが、好ましくは-(OCFCF)-である。
【0343】
上記一般式(3)で表されるパーフルオロ(ポリ)エーテル化合物の例として、以下の一般式(3a)及び(3b)のいずれかで示される化合物(1種又は2種以上の混合物であってよい)が挙げられる。
Rf-(OCFCFCFb”-Rf ・・・(3a)
Rf-(OCFCFCFCFa”-(OCFCFCFb”-(OCFCFc”-(OCFd”-Rf ・・・(3b)
これら式中、Rf及びRfは上記の通りであり;式(3a)において、b”は1以上100以下の整数であり;式(3b)において、a”及びb”は、それぞれ独立して0以上30以下の整数であり、c”及びd”はそれぞれ独立して1以上300以下の整数である。添字a”、b”、c”、d”を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。
【0344】
また、別の観点から、含フッ素オイルは、一般式Rf-F(式中、RfはC5-16パーフルオロアルキル基である。)で表される化合物であってよい。また、クロロトリフルオロエチレンオリゴマーであってもよい。
【0345】
上記含フッ素オイルは、500~10000の平均分子量を有していてよい。含フッ素オイルの分子量は、GPCを用いて測定し得る。
【0346】
含フッ素オイルは、本開示の表面処理剤に対して、例えば0.01~50質量%、好ましくは0.1~30質量%、例えば、1~15質量%含まれ得る。
【0347】
一の態様において、本開示の表面処理剤は、含フッ素オイルを実質的に含まない。含フッ素オイルを実質的に含まないとは、含フッ素オイルを全く含まない、又は極微量の含フッ素オイルを含んでいてもよいことを意味する。
【0348】
一の態様において、含フッ素シラン化合物の平均分子量よりも、含フッ素オイルの平均分子量を大きくしてもよい。このような平均分子量とすることにより、特に真空蒸着法により表面処理層を形成する場合において、より優れた摩耗耐久性と表面滑り性を得ることができる。
【0349】
一の態様において、含フッ素シラン化合物の平均分子量よりも、含フッ素オイルの平均分子量を小さくしてもよい。このような平均分子量とすることにより、かかる化合物から得られる表面処理層の透明性の低下を抑制しつつ、高い摩耗耐久性及び高い表面滑り性を有する硬化物を形成できる。
【0350】
含フッ素オイルは、本開示の表面処理剤によって形成された層の表面滑り性を向上させるのに寄与する。
【0351】
上記シリコーンオイルとしては、例えばシロキサン結合が2,000以下の直鎖状又は環状のシリコーンオイルを用い得る。直鎖状のシリコーンオイルは、いわゆるストレートシリコーンオイル及び変性シリコーンオイルであってよい。ストレートシリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルが挙げられる。変性シリコーンオイルとしては、ストレートシリコーンオイルを、アルキル、アラルキル、ポリエーテル、高級脂肪酸エステル、フルオロアルキル、アミノ、エポキシ、カルボキシル、アルコールなどにより変性したものが挙げられる。環状のシリコーンオイルは、例えば環状ジメチルシロキサンオイルなどが挙げられる。
【0352】
本開示の表面処理剤中、かかるシリコーンオイルは、上記本開示の含フッ素シラン化合物の合計100質量部(2種以上の場合にはこれらの合計、以下も同様)に対して、例えば0~300質量部、好ましくは50~200質量部で含まれ得る。
【0353】
シリコーンオイルは、表面処理層の表面滑り性を向上させるのに寄与する。
【0354】
上記アルコール類としては、例えば炭素数1~6の非フッ素アルコール、例えば、メタノール、エタノール、iso-プロパノール、tert-ブタノール等が挙げられる。これらのアルコール類を表面処理剤に添加することにより、表面処理剤の安定性を向上させ、また、パー含フッ素シラン化合物と溶媒の相溶性を改善させる。
【0355】
上記相溶化剤としては、2,2,2-トリフルオロエタノール、2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-プロパノール又は2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロ-1-ペンタノール等のフッ素置換アルコール、好ましくは末端がCFHであるフッ素置換アルコール、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン等のフッ素置換アリール、好ましくはフッ素置換ベンゼン等が挙げられる。
【0356】
上記触媒としては、酸(例えば酢酸、トリフルオロ酢酸等)、塩基(例えばアンモニア、トリエチルアミン、ジエチルアミン等)、遷移金属(例えばTi、Ni、Sn等)等が挙げられる。
【0357】
触媒は、本開示の含フッ素シラン化合物の加水分解及び脱水縮合を促進し、本開示の表面処理剤により形成される層の形成を促進する。
【0358】
他の成分としては、上記以外に、例えば、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン等も挙げられる。
【0359】
本開示の表面処理剤は、多孔質物質、例えば多孔質のセラミック材料、金属繊維、例えばスチールウールを綿状に固めたものに含浸させて、ペレットとすることができる。当該ペレットは、例えば、真空蒸着に用いることができる。
【0360】
本開示の表面処理剤は、上記した成分に加え、不純物として、例えばPt、Rh、Ru、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン、トリフェニルホスフィン、NaCl、KCl、シランの縮合物などを微量含み得る。
【0361】
上記表面処理層の厚さは、特に限定されない。光学部材の場合、上記層の厚さは、1~50nm、1~30nm、好ましくは1~15nmの範囲であることが、光学性能、表面滑り性、摩擦耐久性及び防汚性の点から好ましい。
【0362】
上記表面処理層は、例えば、上記中間層上に、上記表面処理剤の層を形成し、この層を必要に応じて後処理することにより形成することができる。
【0363】
上記の表面処理剤の層形成は、上記の表面処理剤を中間層の表面に対して、該表面を被覆するように適用することによって実施できる。被覆方法は、特に限定されない。例えば、湿潤被覆法及び乾燥被覆法を使用できる。
【0364】
湿潤被覆法の例としては、浸漬コーティング、スピンコーティング、フローコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング及び類似の方法が挙げられる。
【0365】
乾燥被覆法の例としては、蒸着(通常、真空蒸着)、スパッタリング、CVD及び類似の方法が挙げられる。蒸着法(通常、真空蒸着法)の具体例としては、抵抗加熱、電子ビーム、マイクロ波等を用いた高周波加熱、イオンビーム及び類似の方法が挙げられる。CVD方法の具体例としては、プラズマ-CVD、光学CVD、熱CVD及び類似の方法が挙げられる。
【0366】
更に、常圧プラズマ法による被覆も可能である。
【0367】
湿潤被覆法を使用する場合、上記表面処理剤は、溶媒で希釈されてから中間層に適用され得る。上記表面処理剤の安定性及び溶媒の揮発性の観点から、次の溶媒が好ましく使用される:炭素数5~12のパーフルオロ脂肪族炭化水素(例えば、パーフルオロヘキサン、パーフルオロメチルシクロヘキサン及びパーフルオロ-1,3-ジメチルシクロヘキサン);ポリフルオロ芳香族炭化水素(例えば、ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン);ポリフルオロ脂肪族炭化水素(例えば、C13CHCH(例えば、旭硝子株式会社製のアサヒクリン(登録商標)AC-6000)、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン(例えば、日本ゼオン株式会社製のゼオローラ(登録商標)H);ヒドロフルオロエーテル(HFE)(例えば、パーフルオロプロピルメチルエーテル(COCH)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7000)、パーフルオロブチルメチルエーテル(COCH)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7100)、パーフルオロブチルエチルエーテル(COC)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7200)、パーフルオロヘキシルメチルエーテル(CCF(OCH)C)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7300)などのアルキルパーフルオロアルキルエーテル(パーフルオロアルキル基及びアルキル基は直鎖又は分枝状であってよい)、あるいはCFCHOCFCHF(例えば、旭硝子株式会社製のアサヒクリン(登録商標)AE-3000))など。これらの溶媒は、単独で、又は、2種以上の混合物として用いることができる。なかでも、ヒドロフルオロエーテルが好ましく、パーフルオロブチルメチルエーテル(COCH)及び/又はパーフルオロブチルエチルエーテル(COC)が特に好ましい。
【0368】
乾燥被覆法を使用する場合、上記表面処理剤は、そのまま乾燥被覆法に付してもよく、又は、上記した溶媒で希釈してから乾燥被覆法に付してもよい。
【0369】
上記表面処理剤の層形成は、層中で表面処理剤が加水分解及び脱水縮合のための触媒と共に存在するように実施することが好ましい。簡便には、湿潤被覆法による場合、上記表面処理剤を溶媒で希釈した後、中間層の表面に適用する直前に、上記表面処理剤の希釈液に触媒を添加してよい。乾燥被覆法による場合には、触媒添加した上記表面処理剤をそのまま蒸着(通常、真空蒸着)処理するか、あるいは鉄や銅などの金属多孔体に、触媒添加した上記表面処理剤を含浸させたペレット状物質を用いて蒸着(通常、真空蒸着)処理をしてもよい。
【0370】
触媒には、任意の適切な酸又は塩基を使用できる。酸触媒としては、例えば、酢酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸などを使用できる。また、塩基触媒としては、例えばアンモニア、有機アミン類などを使用できる。
【0371】
上記のようにして、中間層の表面に、上記表面処理剤に由来する層が形成され、本開示の物品が製造される。これにより得られる上記表面処理層は、高い摩擦耐久性を有する。また、上記層は、高い摩擦耐久性に加えて、使用する表面処理剤の組成にもよるが、撥水性、撥油性、防汚性(例えば指紋等の汚れの付着を防止する)、防水性(電子部品等への水の浸入を防止する)、表面滑り性(又は潤滑性、例えば指紋等の汚れの拭き取り性や、指に対する優れた触感)などを有し得、機能性薄膜として好適に利用され得る。
【0372】
本開示の物品は、さらに、上記表面処理層を最外層に有する光学材料であり得る。
【0373】
本開示の物品は、特に限定されるものではないが、光学部材であり得る。光学部材の例には、次のものが挙げられる:眼鏡などのレンズ;PDP、LCDなどのディスプレイの前面保護板、反射防止板、偏光板、アンチグレア板;携帯電話、携帯情報端末などの機器のタッチパネルシート;ブルーレイ(Blu-ray(登録商標))ディスク、DVDディスク、CD-R、MOなどの光ディスクのディスク面;光ファイバー;時計の表示面など。
【0374】
また、本開示の物品は、医療機器又は医療材料であってもよい。
【0375】
本開示の物品は、基材上に、Ce含有層を含む中間層、その上に含フッ素シラン化合物を含む表面処理剤から形成された表面処理層を有することにより、高い摩擦耐久性、高い耐候性を有する。
【0376】
以上、本開示の物品について詳述した。なお、本開示の物品及び物品の製造方法などは、上記で例示したものに限定されない。
【実施例
【0377】
以下、本開示の物品について、実施例において説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。なお、本実施例において、以下に示される化学式はすべて平均組成を示し、フルオロポリエーテルを構成する繰り返し単位((CFCFCFO)、(CF(CF)CFO)、(CFCFO)、(CFO)等)の存在順序は任意である。
【0378】
ガラス基体としては厚さ0.8mm、66.0mm×142.0mmの化学強化、表面研磨を実施してあるゴリラガラス5(コーニング社製)を用いた。ガラス基体上に中間層の形成を行ったのち、該中間層上に表面処理層の形成を行い、表面処理層付きのガラス基体を得た。詳細は下記の通りである。
【0379】
(蒸着材料)
SiO及びTaの単独組成の蒸着材料に関しては、キャノンオプトロン社製の蒸着材料を、CeOに関しては三和研磨工業社製の蒸着材料を購入し使用した。また、別途、SiとCeのモル比が、95:5、及び90:10である蒸着材料を調製し、使用した。SiとCeのモル比は、蛍光X線(XRF)分析により測定した。
【0380】
(中間層の形成)
中間層を、電子ビーム蒸着(実施例1~7、比較例1、3、及び4)又はスパッタ法(比較例2)により成膜した。
【0381】
電子ビーム蒸着は、下記のように行った。
真空蒸着装置内にSiO単独、CeO単独、Ta単独、又はSiOとCeOの両方を設置し、真空蒸着装置内を圧力3.0×10-3Pa以下に排気した。次いで、ゴリラガラス5(コーニング社製)上に、実施例毎に条件を設定して、下記表1に示す成膜材料1の単層を成膜するか、もしくは成膜材料1と成膜材料2の層を積層することにより、中間層を成膜した。
【0382】
スパッタ法は、下記のように行った。
DCスパッタ装置内に、シリコンターゲットとタンタルターゲットを設置し、アルゴンと酸素の混合ガスをチャンバ内に導入しながら、成膜レート比(Si/Ta)を9/1に設定し、厚さ40nmのケイ素およびタンタルの複合酸化物からなる中間層を成膜した。
【0383】
【表1】
【0384】
(表面処理剤の調製)
下記のフルオロポリエーテル基含有化合物(A)又は(B)を、20質量%となるようにHFE7200を用いて希釈した。実施例1~4、6及び7、並びに比較例1~3においては、フルオロポリエーテル基含有化合物(A)を用い、実施例5及び比較例4においては、フルオロポリエーテル基含有化合物(B)を用いた。
【0385】
・フルオロポリエーテル基含有化合物(A)
CFCFCFO(CFCFCFO)23CFCFCONHCHC(CHCHCHSi(OCH

・フルオロポリエーテル基含有化合物(B)
【化23】
【0386】
(表面処理層の形成)
表面処理層の形成は、抵抗加熱蒸着を実施できる装置を用いて行った。具体的には、表面処理剤0.09gを真空蒸着装置内の抵抗加熱ボートに充填し、真空蒸着装置内を圧力3.0×10-3Pa以下に排気した。ついで、抵抗加熱ボートを昇温することで、上記中間層を形成したガラス上に、蒸着膜を成膜した。次に、蒸着膜付きガラスを温度150℃の雰囲気下で30分静置し、その後室温まで放冷させ、ガラス上に表面処理層を形成して、実施例1~7、比較例1~4の表面処理層付きガラス基体を得た。
【0387】
(摩擦試験)
(摩擦試験A)
ラビングテスター(新東科学社製)を用いて、実施例1~9および比較例1~4のガラス基体の表面に対して下記条件で2500回擦る毎に水の静的接触角(°)を測定した。水の静的接触角の測定値100°未満となった時点、もしくは摩耗回数が20000回を変えた時点で試験を中止した。試験環境条件は25℃、湿度40%RHであった。尚、水の静的接触角の測定は、下記に示す方法で実施した。結果を下記表1に示す。
【0388】
消しゴム:Raber Eraser(Minoan社製)
接地面積:6mmφ
移動距離(片道):30mm
移動速度:2,400mm/分
荷重:1kg/6mmφ
【0389】
(摩擦試験B)
実施例1~9および比較例1~4のガラス基体を水平配置し、下記の摩擦子を表面処理層の表面に接触(接触面は直径1cmの円)させ、その上に5Nの荷重を付与し、その後、荷重を加えた状態で摩擦子を40mm/秒の速度で往復させた。摩擦回数1000回毎に水の静的接触角(°)を測定した。水の静的接触角の測定値90°未満となった時点で試験を中止した。尚、水の静的接触角の測定は、下記に示す方法で実施した。
【0390】
・摩擦子
下記に示すシリコーンゴム加工品の表面(直径1cm)を、下記に示す組成の人口汗に浸漬したコットンで覆ったものを摩擦子として用いた。
人口汗の組成:
無水リン酸水素二ナトリウム:2g
塩化ナトリウム:20g
85%乳酸:2g
ヒスチジン塩酸塩:5g
蒸留水:1Kg
シリコーンゴム加工品:
タイガースポリマー製、シリコーンゴム栓SR-51を、直径1cm、厚さ1cmの円柱状に加工したもの。
【0391】
(促進耐候性試験評価)
実施例5及び比較例4のガラス基体について、キセノンランプ照射により、促進耐候性試験を行った。キセノン照射は、キセノンランプ(スガ試験機社製、300~400nmにおいて放射照度180W/m)を用い、ガラス基体を載せている板の温度は63℃で行った。キセノン照射は連続的に行うが、水の静的接触角の測定時には、ガラス基体をいったん取り出し、表面処理層をキムワイプ(商品名、十條キンバリー社製)に純水を十分に染み込ませて5往復拭いた後、さらに別のキムワイプにエタノールを十分に染み込ませて5往復拭き、乾燥させた。その後すぐに水の静的接触角を測定した。
【0392】
まず、初期評価として、表面処理層形成後のガラス基体についてキセノン照射前に水の静的接触角を測定した(照射時間0時間)。その後、所定の時間をキセノン照射した後の表面処理層について、水の静的接触角をそれぞれ測定した。評価は、キセノン照射開始から水の静的接触角が90度を下回るまで、あるいは累積照射時間1858時間まで行った。結果を表2に示す。
【0393】
(静的接触角測定)
摩擦試験A及びBともに、水の静的接触角は、2μLの純水の水滴を着滴させ、接触角計(協和界面化学社製:自動接触角計 DropMaster701)を用いて、それぞれ5点の水に対する接触角を測定し、その平均値として記載した。
【0394】
【表2】
【0395】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0396】
本開示の物品は、種々多様な用途、例えば光学部材として好適に利用され得る。