(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
F25B 7/00 20060101AFI20240417BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
F25B7/00 E
F25B1/00 396D
F25B1/00 396Z
F25B1/00 396G
(21)【出願番号】P 2023198839
(22)【出願日】2023-11-24
【審査請求日】2023-11-24
(31)【優先権主張番号】P 2022188574
(32)【優先日】2022-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】井吉 悠太
(72)【発明者】
【氏名】山野井 喜記
【審査官】西山 真二
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-220111(JP,A)
【文献】特開2013-068409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00-49/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.5MPa以上4MPa以下の範囲の吐出冷媒圧力で第1冷媒を循環させる第1圧縮機(110)と、CO2冷媒である第2冷媒を前記第1冷媒によって冷却するカスケード熱交換器(150)とを含み、前記第1冷媒による蒸気圧縮式の第1冷凍サイクルを実施する第1冷媒回路(100)と、
5MPa以上14MPa以下の範囲の吐出冷媒圧力で前記第2冷媒を循環させる第2圧縮機(210)を含み、前記第2冷媒による蒸気圧縮式の第2冷凍サイクルを実施する第2冷媒回路(200)と、
前記第1圧縮機及び前記第2圧縮機を制御するコントローラ(300)と、
を備え、
前記コントローラは、前記第1圧縮機の吐出冷媒の圧力相当飽和温度をT1℃とし、前記第2圧縮機の吸入冷媒の圧力相当飽和温度をT2℃とした場合に、前記カスケード熱交換器における前記第1冷媒の蒸発温度と前記第2冷媒の凝縮温度の中間温度が、
T2+(T1-T2)×0.1≦TV≦T2+(T1-T2)×
0.35
を満たすように、前記第1圧縮機及び前記第2圧縮機を制御する、冷凍サイクルシステム(1)。
【請求項2】
前記第1冷媒は、R32、R454C、プロパン、R1234yf、R1234zeあるいはアンモニアまたはそれらのいずれかを含む冷媒である、
請求項1に記載の冷凍サイクルシステム(1)。
【請求項3】
前記第2冷媒回路は、前記カスケード熱交換器で前記第2冷媒を凝縮させる、
請求項1または請求項2に記載の冷凍サイクルシステム(1)。
【請求項4】
前記第2冷媒回路は、室内空気と前記第2冷媒との熱交換を行わせる室内熱交換器(251,252,253)を含む、
請求項3に記載の冷凍サイクルシステム(1)。
【請求項5】
前記第1冷媒回路は、外気と前記第1冷媒との熱交換を行わせる室外熱交換器(130)を含む、
請求項4に記載の冷凍サイクルシステム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、第1冷媒回路を循環する第1冷媒と第2冷媒回路を循環するCO2冷媒である第2冷媒との熱交換を行うカスケード熱交換器を含む冷凍サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、社会全体での電力消費を抑制するため、空気調和機などについても消費電力を抑制することが求められている。例えば、特許文献1(特開2002-147819号公報)には、電力ピークカットの要請による消費電力の削減を確実に行うことのできる冷凍装置である空気調和機が開示されている。特許文献1の冷凍装置の構成は、コントローラが、検出電流値が所定の設定値を超えない範囲となるように、圧縮機ユニットの容量を制御するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1などに記載されている冷凍装置では、1種類の冷媒を循環させる際の消費電力の削減方法が提案されている。しかし、特許文献1に記載の方法は、異なる種類の冷媒を用いる複数の冷凍サイクルにより空気調和などを行う冷凍サイクルシステムにそのまま適用することは難しい。CO2冷媒とCO2以外の冷媒との熱交換を行わせるカスケード熱交換器を含み、CO2冷媒を用いた第1の冷凍サイクルとCO2以外の冷媒を用いた第2の冷凍サイクルを実施する冷凍サイクルシステムにおいて消費電力を削減するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1観点の冷凍サイクルシステムは、第1冷媒回路と第2冷媒回路とコントローラとを備える。第1冷媒回路は、0.5MPa以上4MPa以下の範囲の吐出冷媒圧力で第1冷媒を循環させる第1圧縮機と、CO2冷媒である第2冷媒を第1冷媒によって冷却するカスケード熱交換器とを含み、第1冷媒による蒸気圧縮式の第1冷凍サイクルを実施する。第2冷媒回路は、5MPa以上14MPa以下の範囲の吐出冷媒圧力で第2冷媒を循環させる第2圧縮機を含み、第2冷媒による蒸気圧縮式の第2冷凍サイクルを実施する。コントローラは、第1圧縮機及び第2圧縮機を制御する。コントローラは、第1圧縮機の吐出冷媒の圧力相当飽和温度をT1℃とし、第2圧縮機の吸入冷媒の圧力相当飽和温度をT2℃とした場合に、カスケード熱交換器における第1冷媒の蒸発温度と第2冷媒の凝縮温度の中間温度が、T2+(T1-T2)×0.1≦TV≦T2+(T1-T2)×0.4を満たすように、第1圧縮機及び第2圧縮機を制御する。
【0005】
第1観点の冷凍サイクルシステムでは、第2圧縮機よりも効率の良い第1圧縮機を有する第1冷媒回路での熱量の運搬を多くすることで、全体としての消費電力を抑制することができる。
【0006】
第2観点の冷凍サイクルシステムは、第1観点のシステムであって、第1冷媒は、R32、R454C、プロパン、R1234yf、R1234zeあるいはアンモニアまたはそれらのいずれかを含む冷媒である。
【0007】
第3観点の冷凍サイクルシステムは、第1観点または第2観点のシステムであって、第2冷媒回路は、カスケード熱交換器で第2冷媒を凝縮させる。
【0008】
第4観点の冷凍サイクルシステムは、第3観点のシステムであって、第2冷媒回路は、室内空気と第2冷媒との熱交換を行わせる室内熱交換器を含む。
【0009】
第5観点の冷凍サイクルシステムは、第4観点のシステムであって、第1冷媒回路は、外気と第1冷媒との熱交換を行わせる室外熱交換器を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る冷凍サイクルシステムの概略構成を示す回路図である。
【
図2】
図1に冷房運転時の冷媒の流れ方向を書き加えた冷凍サイクルシステムの回路図である。
【
図3】
図1に暖房運転時の冷媒の流れ方向を書き加えた冷凍サイクルシステムの回路図である。
【
図4】カスケード熱交換器での熱交換を説明するためのモリエル線図を用いた概念図である。
【
図5】カスケード熱交換器の中間温度と冷凍サイクルシステムの合計消費電力との関係を示すグラフである。
【
図6】カスケード熱交換器の中間温度を正規化した値と中間温度との関係を説明するための図である。
【
図7】第1圧縮機と第2圧縮機の回転速度と圧縮機効率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)全体構成
実施形態に係る冷凍サイクルシステム1は、
図1に示されている構成を有している。冷凍サイクルシステム1は、第1冷媒が循環する第1冷媒回路100と二酸化炭素冷媒(CO
2冷媒)が循環する第2冷媒回路200とを有している。冷凍サイクルシステム1は、熱搬送媒体である二酸化炭素冷媒と室内空気とを熱交換させて室内の空気調和を行う装置である。室内の空気調和には、例えば、冷房及び暖房がある。
【0012】
(1―1)第1冷媒回路100
第1冷媒回路100は、第1圧縮機110と、第1四方弁120と、室外空気熱交換器130と、カスケード熱交換器150とを有している。第1冷媒回路100で用いられる第1冷媒には、例えば、R32、R454C、プロパン、R1234yf、R1234zeまたはアンモニアを用いることができる。あるいは、R32、R454C、プロパン、R1234yf、R1234zeまたはアンモニアのいずれかを含む冷媒を第1冷媒に用いることができる。室外空気熱交換器130は、室外熱交換器の例である。
【0013】
第1圧縮機110は、ガス状の第1冷媒を圧縮する機器である。第1圧縮機110には、例えば、容積式圧縮機を用いることができる。容積式圧縮機には、例えば、ロータリ圧縮機またはスクロール圧縮機がある。第1圧縮機110は、例えばモータ115によって駆動される。モータ115は、例えば、インバータを備えており、回転速度を変更可能なモータである。モータ115の回転速度を変更することにより、第1圧縮機110は、吐出する容量を調整することができる。
【0014】
第1四方弁120は、第1冷媒回路100の第1冷媒の流れを切り換えるための機器である。具体的には、第1四方弁120は、
図1の第1四方弁120の実線で示された連通状態と、
図1の第1四方弁120の破線で示された連通状態とを切り換える。第1四方弁120は、例えば、四方弁以外の複数の弁(例えば電磁弁または三方弁)を組み合わせることによって第1冷媒放熱状態及び第1冷媒蒸発状態の切り換えを行う機能を有する他の構成で代替することができる。
【0015】
第1四方弁120が実線で示された連通状態に切り換えられると、第1冷媒回路100は、室外空気熱交換器130が第1冷媒の放熱器として機能し且つカスケード熱交換器150が第1冷媒の蒸発器として機能する第1冷媒放熱状態になる。第1冷媒放熱状態とは、外気(室外の空気)によって第1冷媒が冷却されている状態である。また、第1四方弁120が破線で示された連通状態に切り換えられると、第1冷媒回路100は、室外空気熱交換器130が第1冷媒の蒸発器として機能し且つカスケード熱交換器150が第1冷媒の放熱器として機能する第1冷媒蒸発状態になる。第1冷媒蒸発状態とは、第1冷媒が外気によって加熱されている状態である。
【0016】
第1四方弁120は、第1冷媒放熱状態において、第1圧縮機110の吐出口と室外空気熱交換器130とが連通し、且つ第1圧縮機110の吸入口とカスケード熱交換器150とが連通する。第1四方弁120は、第1冷媒蒸発状態において、第1圧縮機110の吐出口とカスケード熱交換器150とが連通し、且つ第1圧縮機110の吸入口と室外空気熱交換器130とが連通する。
【0017】
室外空気熱交換器130は、第1冷媒と外気とを熱交換させる機器である。室外空気熱交換器130は、例えば、フィンアンドチューブ式の熱交換器である。室外空気熱交換器130は、第1四方弁120が第1冷媒放熱状態(実線の状態)に切り換えられた状態において、外気を冷却源とする第1冷媒の放熱器として機能する。第1四方弁120が第1冷媒蒸発状態(破線の状態)に切り換えられた状態において、室外空気熱交換器130は、外気を加熱源とする第1冷媒の蒸発器として機能する。室外空気熱交換器130は第1四方弁120及び第1膨張弁140と連通している。
【0018】
また、第1冷媒回路100は、第1膨張弁140を有している。第1膨張弁140は、第1冷媒を減圧する機器である。第1膨張弁140は、通過した第1冷媒の圧力を調整したり冷媒流量を調整したりするための機器である。第1膨張弁140は、例えば、電気信号に応じて開度を変更する電動膨張弁である。第1膨張弁140は、室外空気熱交換器130とカスケード熱交換器150の間に設けられている。第1膨張弁140は、室外空気熱交換器130とカスケード熱交換器150の間で流れる第1冷媒の圧力を調整する。第1膨張弁140は、第1四方弁120が第1冷媒放熱状態に切り換えられた状態において、室外空気熱交換器130で放熱した第1冷媒を減圧する。第1膨張弁140は、第1四方弁120が第1冷媒蒸発状態に切り換えられた状態において、カスケード熱交換器150で放熱した第1冷媒を減圧する。なお、第1膨張弁140は、電動膨張弁に限定されるものではない。第1膨張弁140には、例えば、電動膨張弁以外の種類の膨張弁またはキャピラリーチューブを用いてもよい。
【0019】
カスケード熱交換器150は、第1冷媒と二酸化炭素冷媒とを熱交換させる機器である。カスケード熱交換器150には、例えば、プレート式熱交換器、二重管式熱交換器、またはシェルアンドチューブ式熱交換器を用いることができる。カスケード熱交換器150は、第1四方弁120が第1冷媒放熱状態に切り換えられた状態において、二酸化炭素冷媒を加熱源とする第1冷媒の蒸発器として機能する。カスケード熱交換器150は、第1四方弁120が第1冷媒蒸発状態に切り換えられた状態において、二酸化炭素冷媒を冷却源とする第1冷媒の放熱器として機能する。カスケード熱交換器150は、第1四方弁120に連通しており、また、第1膨張弁140を介してカスケード熱交換器150に連通している。
【0020】
(1―2)第2冷媒回路200
第2冷媒回路200は、第2圧縮機210と、カスケード熱交換器150と、第2四方弁220と、複数の室内空気熱交換器251,252,253とを有している。室内空気熱交換器251,252,253は、室内熱交換器の例である。第2冷媒回路200では、熱搬送媒体として、二酸化炭素冷媒が循環する。ここでは、第2冷媒回路200に、3つの室内空気熱交換器251,252,253が含まれている場合が例に挙げられているが、室内空気熱交換器は、1つ、2つあるいは4つ以上であってもよい。カスケード熱交換器150は、第1冷媒回路100と第2冷媒回路200の2つの回路で共有されている。
【0021】
第2圧縮機210は、ガス状の二酸化炭素冷媒を圧縮する機器である。第2圧縮機210には、例えば、容積式圧縮機を用いることができる。容積式圧縮機には、例えば、ロータリ圧縮機及びスクロール圧縮機がある。第2圧縮機210は、例えばモータ215によって駆動される。モータ215は、例えば、インバータを備えており、回転速度を変更可能なモータである。モータ215の回転速度を変更することにより、第2圧縮機210は、吐出する容量を調整することができる。
【0022】
第2四方弁220は、第2冷媒回路200の二酸化炭素冷媒の流れを切り換えるための機器である。具体的には、第2四方弁220は、
図1の第2四方弁220の実線で示された連通状態と、
図1の第2四方弁220の破線で示された連通状態とを切り換える。なお、第2四方弁220は、例えば、複数の弁(例えば電磁弁または三方弁)を組み合わせることによって上記のCO
2放熱状態及びCO
2蒸発状態の切り換えを行う機能を有する他の構成で代替することができる。
【0023】
第2四方弁220が実線で示された連通状態に切り換えられると、第2冷媒回路200は、室内空気熱交換器251,252,253が二酸化炭素冷媒の蒸発器として機能し且つカスケード熱交換器150が二酸化炭素冷媒の放熱器として機能するCO2蒸発状態になる。CO2蒸発状態とは、二酸化炭素冷媒が蒸発して室内空気を冷却している状態である。また、第2四方弁220が破線で示された連通状態に切り換えられると、第2冷媒回路200は、室内空気熱交換器251,252,253が二酸化炭素冷媒の放熱器として機能し且つカスケード熱交換器150が二酸化炭素冷媒の蒸発器として機能するCO2放熱状態になる。CO2放熱状態とは、室内空気に対して二酸化炭素冷媒が放熱している状態である。
【0024】
第2四方弁220は、CO2放熱状態において、第2圧縮機210の吐出口と室内空気熱交換器251,252,253とが連通し、且つ第2圧縮機210の吸入口とカスケード熱交換器150とが連通する。第2四方弁220は、CO2蒸発状態において、第2圧縮機210の吐出口とカスケード熱交換器150とが連通し、且つ第2圧縮機210の吸入口と室内空気熱交換器251,252,253とが連通する。
【0025】
室内空気熱交換器251,252,253は、それぞれ、例えば対応する部屋の室内空気と二酸化炭素冷媒とを熱交換させる機器である。室内空気熱交換器251,252,253は、例えば、フィンアンドチューブ式の熱交換器である。室内空気熱交換器251,252,253は、第2四方弁220がCO2放熱状態に切り換えられた状態において、室内空気を加熱するため、二酸化炭素冷媒の放熱器として機能する。言い換えると、室内空気熱交換器251,252,253は、CO2放熱状態において、室内空気を冷却源とする二酸化炭素冷媒の放熱器として機能する。第2四方弁220がCO2蒸発状態に切り換えられた状態において、室内空気熱交換器251,252,253は、室内空気を冷却するため、二酸化炭素冷媒の蒸発器として機能する。言い換えると、室内空気熱交換器251,252,253は、CO2蒸発状態において、室内空気を加熱源とする二酸化炭素冷媒の蒸発器として機能する。CO2蒸発状態において、室内空気熱交換器251,252,253は、第2四方弁220を介して第2圧縮機210の吸入口に連通するとともに、それぞれ、対応する第2膨張弁261,262,263及び第3膨張弁230を介してカスケード熱交換器150に連通している。
【0026】
第2冷媒回路200は、第2膨張弁261,262,263及び第3膨張弁230を有している。第2膨張弁261,262,263及び第3膨張弁230は、通過した二酸化炭素冷媒の圧力を調整したり二酸化炭素冷媒の流量を調整したりするための機器である。第2膨張弁261,262,263及び第3膨張弁230は、例えば、電気信号に応じて開度を変更する電動膨張弁である。第3膨張弁230は、カスケード熱交換器150に接続されている。第3膨張弁230は、全ての第2膨張弁261,262,263に接続されている。第2膨張弁261,262,263は、それぞれ、対応する室内空気熱交換器251,252,253に接続されている。
【0027】
第2膨張弁261,262,263は、対応する室内空気熱交換器251,252,253とカスケード熱交換器150の間に設けられている。第2膨張弁261,262,263は、対応する室内空気熱交換器251,252,253を流れる二酸化炭素冷媒の圧力を調整する。第2膨張弁261,262,263は、第2四方弁220がCO2放熱状態に切り換えられた状態において、室内空気熱交換器251,252,253で放熱した二酸化炭素冷媒を減圧する。第2膨張弁261,262,263は、第2四方弁220がCO2蒸発状態に切り換えられた状態において、室内空気熱交換器251,252,253に送られる二酸化炭素冷媒を減圧する。
【0028】
第3膨張弁230は、全ての室内空気熱交換器251,252,253とカスケード熱交換器150の間に設けられている。第3膨張弁230は、室内空気熱交換器251,252,253からカスケード熱交換器150に流れる二酸化炭素冷媒の圧力を調整する。第3膨張弁230は、第2四方弁220がCO2蒸発状態に切り換えられた状態では、全開状態にされてカスケード熱交換器150において放熱した二酸化炭素冷媒を極力減圧しないようにする。第3膨張弁230は、第2四方弁220がCO2放熱状態に切り換えられた状態において、室内空気熱交換器251,252,253において放熱した二酸化炭素冷媒を減圧する。なお、第3膨張弁230は、電動膨張弁に限定されるものではない。第3膨張弁230には、例えば、電動膨張弁以外の種類の膨張弁またはキャピラリーチューブを用いてもよい。
【0029】
カスケード熱交換器150は、第1四方弁120が第1冷媒放熱状態(実線の状態)に切り換えられ、且つ第2四方弁220がCO2蒸発状態(実線の状態)に切り換えられた状態において、第1冷媒を冷却源とする二酸化炭素冷媒の放熱器として機能する。また、カスケード熱交換器150は、第1四方弁120が第1冷媒蒸発状態(破線の状態)に切り換えられ、且つ第2四方弁220がCO2放熱状態(破線の状態)に切り換えられた状態において、第1冷媒を加熱源とする二酸化炭素冷媒の蒸発器として機能する。カスケード熱交換器150は、二酸化炭素冷媒を流すために、第2四方弁220に連通するとともに、第3膨張弁230及び第2膨張弁261,262,263を介して室内空気熱交換器251,252,253に連通している。
【0030】
上記の第1冷媒回路100及び第2冷媒回路200の構成機器は、熱搬送ユニット2と、複数の利用ユニット5a、5b、5cとに設けられている。利用ユニット5a、5b、5cはそれぞれ、室内空気熱交換器251,252,253に対応して設けられている。
【0031】
熱搬送ユニット2は、室外に配置されている。カスケード熱交換器150、第2圧縮機210、第3膨張弁230及び第2四方弁220が、熱搬送ユニット2に設けられている。また、熱搬送ユニット2には、室外空気熱交換器130に外気を供給する室外ファン160が設けられている。室外ファン160は、例えば、回転速度を変更できるモータ165により駆動される。室外ファン160は、例えばプロペラファンである。室外ファン160は、モータ165の回転速度を変更することにより、室外空気熱交換器130を通過する風量を変更することができる。
【0032】
利用ユニット5a、5b、5cは、室内に配置されている。第2冷媒回路200の室内空気熱交換器251,252,253が、利用ユニット5a、5b、5cの中に収容されている。また、第2冷媒回路200の第2膨張弁261,262,263も、利用ユニット5a、5b、5cの中に収容されている。また、利用ユニット5a、5b、5cには、室内空気熱交換器251,252,253に室内空気を供給する室内ファン271,272,273が収容されている。室内ファン271,272,273は、例えば、遠心ファンまたは多翼ファンである。室内ファン271,272,273は、それぞれモータ276,277,278で駆動される。モータ276,277,278は、例えば、インバータを備えており、回転速度を変更可能なモータである。モータ276,277,278の回転速度を変更することにより、室内ファン271,272,273は、室内空気熱交換器251,252,253を通過する風量を変更することができる。
【0033】
熱搬送ユニット2と利用ユニット5a、5b、5cとは、第2冷媒回路200の一部を構成する連絡管6、7によって接続されている。連絡管6は、カスケード熱交換器150と第2膨張弁261,262,263の一端とを連通させるための配管である。連絡管7は、第2四方弁220と室内空気熱交換器251,252,253とを連通させるための配管である。
【0034】
熱搬送ユニット2及び利用ユニット5a、5b、5cの構成機器は、コントローラ300によって制御されるようになっている。コントローラ300は、例えば熱搬送ユニット2及び利用ユニット5a、5b、5cに設けられた制御基板(図示せず)が通信接続されることによって構成される。なお、
図1においては、便宜上、熱搬送ユニット2及び利用ユニット5a、5b、5cから離れた位置にコントローラ300を図示している。コントローラ300は、冷凍サイクルシステム1(ここでは、熱搬送ユニット2及び利用ユニット5a、5b、5c)の構成機器の制御を行う。言い換えると、コントローラ300は、冷凍サイクルシステム1全体の運転制御を行うようになっている。
【0035】
コントローラ300はコンピュータにより実現されるものである。コントローラ300は、制御演算装置と記憶装置とを備える。制御演算装置には、CPU又はGPUといったプロセッサを使用できる。制御演算装置は、記憶装置に記憶されているプログラムを読み出し、このプログラムに従って所定の画像処理や演算処理を行う。さらに、制御演算装置は、プログラムに従って、演算結果を記憶装置に書き込んだり、記憶装置に記憶されている情報を読み出したりすることができる。
【0036】
冷凍サイクルシステム1は、熱搬送ユニット2と、互いが並列に接続される複数の利用ユニット5a、5b、5cと、熱搬送ユニット2と利用ユニット5a、5b、5cとを接続する連絡管6、7と、熱搬送ユニット2及び利用ユニット5a、5b、5cの構成機器を制御するコントローラ300を有している。
【0037】
(2)冷凍サイクルシステム1の動作
次に、冷凍サイクルシステム1の動作について、
図1~
図3を用いて説明する。ここで、
図2には、冷凍サイクルシステム1の冷房運転における動作(第1冷媒及び二酸化炭素冷媒の流れ)が示されている。
図3には、暖房運転における動作が示されている。冷凍サイクルシステム1は、室内の空気調和のために、室内空気を冷却する冷房運転及び室内空気を加熱する暖房運転を行うことが可能である。冷房運転及び暖房運転において、冷凍サイクルシステム1の動作は、コントローラ300によって制御される。
【0038】
(2―1)冷房運転
冷房運転の際、例えば、利用ユニット5a、5b、5cのすべてが冷房運転を行うとすると、第1四方弁120が第1冷媒放熱状態(第1四方弁120が実線の状態)に切り換えられ、且つ第2四方弁220がCO2蒸発状態(第2四方弁220が実線の状態)に切り換えられる。
【0039】
第1冷媒回路100では、第1圧縮機110から吐出された第1冷媒は、第1四方弁120を通じて室外空気熱交換器130に送られる。室外空気熱交換器130に送られた第1冷媒は、室外ファン160によって供給される外気と熱交換を行って冷却されることによって凝縮する。室外空気熱交換器130において放熱した第1冷媒は、第1膨張弁140によって減圧された後に、カスケード熱交換器150に送られる。カスケード熱交換器150に送られた第1冷媒は、第1冷媒の蒸発器として機能するカスケード熱交換器150において、二酸化炭素冷媒と熱交換を行って加熱されて蒸発する。カスケード熱交換器150において蒸発した第1冷媒は、第1四方弁120を通じて第1圧縮機110に吸入されて、再び、第1圧縮機110から吐出される。
【0040】
第2冷媒回路200では、第2圧縮機210から吐出された二酸化炭素冷媒は、第2四方弁220を通じてカスケード熱交換器150に送られる。カスケード熱交換器150に送られた二酸化炭素冷媒は、二酸化炭素冷媒の放熱器として機能するカスケード熱交換器150において、第1冷媒と熱交換を行って冷却される。カスケード熱交換器150において放熱した二酸化炭素冷媒は、全開状態の第3膨張弁230を通過した後に連絡管6に送られて分岐する。連絡管6で分岐した二酸化炭素冷媒は、第2膨張弁261,262,263によって減圧された後に、室内空気熱交換器251,252,253に送られる。室内空気熱交換器251,252,253に送られた二酸化炭素冷媒は、室内ファン271,272,273によって供給される室内空気と熱交換を行って加熱されることによって蒸発する。各利用ユニット5a、5b、5cでは、室内空気を冷却する冷房運転が行われる。室内空気熱交換器251,252,253において蒸発した二酸化炭素冷媒は、連絡管7で合流する。連絡管7で合流した二酸化炭素冷媒は、第2四方弁220を通じて第2圧縮機210に吸入されて、再び、第2圧縮機210から吐出される。
【0041】
冷房運転において、第1冷媒回路100では、第1冷媒による蒸気圧縮式の第1冷凍サイクルが実施される。また、冷房運転において、第2冷媒回路200では、第2冷媒である二酸化炭素冷媒による蒸気圧縮式の第2冷凍サイクルが実施される。
【0042】
(2―1-1)冷房運転での制御
第1圧縮機110は、第1冷媒回路100において、0.5[MPa]以上4[MPa]以下の範囲の吐出冷媒圧力で第1冷媒を循環させる。第2圧縮機210は、5[MPa]以上14[MPa]以下の範囲の吐出冷媒圧力で二酸化炭素冷媒を循環させる。冷房運転において、二酸化炭素冷媒がカスケード熱交換器150で凝縮されるように、第2冷媒回路200が動作する。
【0043】
図4には、第1冷媒回路100のモリエル線
図M100と、第2冷媒回路200のモリエル線
図M200とが、縦軸が異なるグラフを重ねて示されている。
図4では、カスケード熱交換器150での熱交換を説明するためにイメージが示され、従って詳細に描かれた図ではない。第1圧縮機110が吐出する第1冷媒の圧力(凝縮圧力PH1)が、0.5[MPa]≦PH1≦4[MPa]の条件を満たすように、第1冷媒回路100は動作する。また、第2圧縮機210が吐出する二酸化炭素冷媒の圧力(蒸発圧力PL1)が、5[MPa]≦PH2≦14[MPa]の条件を満たすように、第2冷媒回路200は動作する。そして、
図4の四角形の枠線で囲まれた部分は、カスケード熱交換器150において、高温高圧のガス状態の二酸化炭素冷媒と、低温低圧の液状態または気液二相状態の第1冷媒との熱交換が行われる箇所を示している。
【0044】
コントローラ300は、第1圧縮機110の吐出冷媒の圧力相当飽和温度をT1[℃]とし、第2圧縮機210の吸入冷媒の圧力相当飽和温度をT2[℃]とした場合に、カスケード熱交換器150における第1冷媒の蒸発温度Teと二酸化炭素冷媒の凝縮温度Tcの中間温度Tmの目標値TV[℃]が、次式(1)を満たすように、第1圧縮機110及び第2圧縮機210を制御する。
T2+(T1-T2)×0.1≦TV≦T2+(T1-T2)×0.4 ・・・(1)
【0045】
中間温度Tm[℃]を目標値TV[℃]に一致させるために、コントローラ300は、例えば、第1圧縮機110及び第2圧縮機210の回転速度を調整する。中間温度Tmは第1冷媒の蒸発温度Teと二酸化炭素冷媒の凝縮温度Tcの中間にある温度である。中間温度Tmは、例えば、第1冷媒の目標蒸発温度Teと二酸化炭素冷媒の凝縮温度Tcから、Tm=(Te+Tc)/2の式で与えられる。例えば、目標値TVを{T2+(T1-T2)×0.5}に設定する場合に比べて、{T2+(T1-T2)×0.3}に設定する方が、他の条件が同じであれば第1圧縮機110の回転速度が大きくなる。言い換えると、TV=T2+(T1-T2)×0.5の場合に比べて、TV=T2+(T1-T2)×0.3とする方が、第1圧縮機110の負担が大きくなり第2圧縮機210の負担が小さくなる。
【0046】
ここでは、コントローラ300は、中間温度Tmが目標値TVに一致するように制御する場合について説明している。しかし、中間温度Tmが目標値TVになるように第1圧縮機110及び第2圧縮機210を制御する方法は、このような方法には限られない。例えば、目標値TVの所定範囲(例えば{T2+(T1-T2)×0.1}以上{T2+(T1-T2)×0.4}以下の範囲)から中間温度Tmが外れないように、コントローラ300が第1圧縮機110及び第2圧縮機210を制御するように構成することもできる。また、例えば、目標値TVを複数準備しておき、状況(例えば外気温度)に応じて切り換えるようにしてもよい。
【0047】
冷凍サイクルシステム1では、カスケード熱交換器150における中間温度Tmが目標値TVになるように第1圧縮機110及び第2圧縮機210を制御すること以外の制御に関して、コントローラ300は、従来と同様の制御を行う。
【0048】
図5では、第1圧縮機110の吐出冷媒の圧力相当飽和温度T1が45[℃]で、第2圧縮機210の吸入冷媒の圧力相当飽和温度T2が8[℃]の場合の中間温度Tmが横軸に目盛られている。また、中間温度Tmと冷凍サイクルシステム1の合計消費電力との関係が
図5に示されている。ここで、冷凍サイクルシステム1の合計消費電力[kW]は、冷凍サイクルシステム1の消費電力であって、第1冷媒回路100の消費電力[kW]と第2冷媒回路の消費電力[kW]とを合わせたものである。
図5において、縦軸には、カスケード熱交換器150において所定の能力を得るのに必要な消費電力が目盛られている。
図5から、第1冷媒回路100の中間温度Tmと冷凍サイクルシステム1の合計消費電力の関係を示すグラフが下に凸の形状になっていることが見て取れ、消費電力を抑制できる範囲が存在することが分かる。
図5から、合計消費電力が9.5[kW]以下になる範囲に、中間温度Tmの目標値TVを設定するのが好ましいことが分かる。さらには、
図5のような場合では、合計消費電力が9.4[kW]以下になる範囲に、中間温度Tmの目標値TVを設定するのが、より好ましい。
図5に示された傾向は、0.5MPa以上4MPa以下の範囲の吐出冷媒圧力で第1冷媒を循環させる第1圧縮機と5MPa以上14MPa以下の範囲の吐出冷媒圧力で第2冷媒を循環させる第2圧縮機を用いる場合に生じる。
【0049】
図6には、中間温度Tmを正規化した値と中間温度との関係が示されている。第2圧縮機210の吸入冷媒の圧力相当飽和温度8[℃]を「0」とし、第1圧縮機110の吐出冷媒の圧力相当飽和温度45[℃]を「1」とした場合の中間温度について正規化した値が
図6に示されている。この正規化した値が0.1以上0.4以下である範囲(目標値の範囲)を
図5に矢印で示している。
図5において、矢印で示された範囲の合計消費電力が低い値を示していることが分かる。言い換えると、0.5MPa以上4MPa以下の範囲の吐出冷媒圧力で第1冷媒を循環させる第1圧縮機110と、5MPa以上14MPa以下の範囲の吐出冷媒圧力で第2冷媒を循環させる第2圧縮機210を用いる場合、目標値TVがT2+(T1-T2)×0.1≦TV≦T2+(T1-T2)×0.4を満たすことで、合計消費電力が低い値を示す。この正規化した値が、TV=T2+(T1-T2)×aと表したときの定数aの適切な範囲になる。合計消費電力が9.4[kW]以下になる中間温度Tmの範囲で目標値TVに対応する正規化した値を設定する場合、正規化した値は、0.15以上0.35以下とするのが好ましい。言い換えると、前述のような第1圧縮機110と第2圧縮機210を用いている場合にさらに合計消費電力の低減を図りたいときには、目標値TVが、T2+(T1-T2)×0.15≦TV≦T2+(T1-T2)×0.35を満たすことが好ましい。
【0050】
また、コントローラ300は、カスケード熱交換器150における中間温度Tmが次式(2)を満たすように、第1圧縮機110及び第2圧縮機210を制御してもよい。
T2+(T1-T2)×0.1≦Tm≦T2+(T1-T2)×0.4 ・・・(2)
【0051】
中間温度Tmが上記式(2)を満たすように、第1圧縮機110及び第2圧縮機210を制御する方法としては、例えば、カスケード熱交換器150における第1冷媒の蒸発温度Teと、二酸化炭素冷媒の凝縮温度Tcとを制御する方法がある。
具体的には、カスケード熱交換器150における第1冷媒の蒸発温度Teの目標蒸発温度Tmeを設定し、目標蒸発温度Tmeとなるように第1圧縮機110を制御するとともに、二酸化炭素冷媒の凝縮温度Tcの目標凝縮温度Tmcを設定し、目標凝縮温度Tmcとなるように第2圧縮機210を制御する。
目標凝縮温度Tmcと目標蒸発温度Tmeは、第1圧縮機110及び第2圧縮機210の運転中の冷凍サイクルシステム1の合計消費電力に基づいて、中間温度Tmが上記式(2)を満たす範囲の値に設定される。
【0052】
図7には、第1圧縮機110と第2圧縮機210のそれぞれの回転速度と圧縮機効率との関係が示されている。
図7に示される例では、第1圧縮機110と第2圧縮機210のいずれも回転速度がR付近において圧縮機効率が最高である。Rは、下限値Rminと上限値Rmaxの間の値である。第1圧縮機110と第2圧縮機210のいずれにおいても回転速度がR付近よりも小さくなるに従って圧縮機効率が次第に低下し、回転速度の下限値Rminでは最低となる。第1圧縮機110と第2圧縮機210のいずれにおいても回転速度がR付近よりも大きくなるに従って圧縮機効率が低下し、回転速度の上限値Rmaxでの圧縮機効率は回転速度R付近の圧縮機効率を下回る。そして、第1圧縮機110と第2圧縮機210の圧縮機効率を比較すると、冷凍サイクルシステム1で使用される回転速度の下限値Rminから回転速度の上限値Rmaxまでの全範囲において、第1圧縮機110よりも第2圧縮機210の圧縮機効率の方が数%程度低くなる。このような傾向になるのは、第2圧縮機210の吐出圧力が第1圧縮機110よりも高いことに起因する。
【0053】
コントローラ300が中間温度Tmを制御するために、冷凍サイクルシステム1は、第1圧縮機110の吐出冷媒の圧力相当飽和温度T1を検出するための高圧の圧力センサ410を第1圧縮機110の吐出側に備えている。冷凍サイクルシステム1は、第2圧縮機210の吸入冷媒の圧力相当飽和温度T2を検出するための低圧の圧力センサ420を第2圧縮機210の吸入側に備えている。また、カスケード熱交換器150の蒸発温度Teを検出するための低圧の圧力センサ430を、第1圧縮機110の吸入側に備えている。さらに、カスケード熱交換器150の凝縮温度Tcを検出するための高圧の圧力センサ440を、第2圧縮機210の吐出側に備えている。なお、冷凍サイクルシステム1のコントローラ300は、圧力センサ410,420、430,440以外の種々のセンサの検知結果を用いるが、従来と同様のセンサを用いればよいので、ここでは圧力センサ410,420、430,440以外のセンサの記載は省略する。
【0054】
(2―2)暖房運転
暖房運転の際、例えば、利用ユニット5a、5b、5cのすべてが暖房運転を行うとすると、第1四方弁120が第1冷媒(第1四方弁120が破線の状態)に切り換えられ、且つ第2四方弁220がCO2放熱状態(第2四方弁220が破線の状態)に切り換えられる。
【0055】
第1冷媒回路100では、第1圧縮機110から吐出された第1冷媒は、第1四方弁120を通じてカスケード熱交換器150に送られる。カスケード熱交換器150に送られた第1冷媒は、二酸化炭素冷媒と熱交換を行って冷却されることによって凝縮する。カスケード熱交換器150において放熱した第1冷媒は、第1膨張弁140によって減圧された後に、室外空気熱交換器130に送られる。室外空気熱交換器130に送られた第1冷媒は、室外空気熱交換器130において、室外ファン160によって供給される外気と熱交換を行って加熱されて蒸発する。室外空気熱交換器130において蒸発した第1冷媒は、第1四方弁120を通じて第1圧縮機110に吸入されて、再び、第1圧縮機110から吐出される。
【0056】
第2冷媒回路200では、第2圧縮機210から吐出された二酸化炭素冷媒は、第2四方弁220を通過した後に連絡管7で分岐する。連絡管7で分岐した二酸化炭素冷媒は、室内空気熱交換器251,252,253に送られる。室内空気熱交換器251,252,253に送られた二酸化炭素冷媒は、室内ファン271,272,273によって供給される室内空気と熱交換を行って冷却される。各利用ユニット5a、5b、5cでは、室内空気を加熱する暖房運転が行われる。室内空気熱交換器251,252,253において放熱した二酸化炭素冷媒は、第2膨張弁261,262,263によって減圧された後に、連絡管で合流する。連絡管6で合流した二酸化炭素冷媒は、第3膨張弁230によってさらに減圧された後に、カスケード熱交換器150に送られる。カスケード熱交換器150に送られた二酸化炭素冷媒は、第1冷媒と熱交換を行って加熱される。カスケード熱交換器150を通過した二酸化炭素冷媒は、第2四方弁220を通じて第2圧縮機210に吸入されて、再び、第2圧縮機210から吐出される。
【0057】
暖房運転において、第1冷媒回路100では、第1冷媒による蒸気圧縮式の第1冷凍サイクルが実施される。また、暖房冷房運転において、第2冷媒回路200では、第2冷媒である二酸化炭素冷媒による蒸気圧縮式の第2冷凍サイクルが実施される。
【0058】
(3)特徴
上記実施形態の冷凍サイクルシステム1では、コントローラ300は、カスケード熱交換器150における中間温度Tmが、T2+(T1-T2)×0.1≦TV≦T2+(T1-T2)×0.4を満たす目標値TVになるように、第1圧縮機110を制御する。ただし、上式において、T1[℃]が第1圧縮機110の吐出冷媒の圧力相当飽和温度であり、T2[℃]が第2圧縮機210の吸入冷媒の圧力相当飽和温度である。さらに消費電力を抑制するには、中間温度Tmが、T2+(T1-T2)×0.15≦TV≦T2+(T1-T2)×0.35を満たすように、第1圧縮機110及び第2圧縮機210を制御するのが好ましい。
【0059】
このような制御をコントローラ300が行うことで、効率の良い第1圧縮機110を有する第1冷媒回路100での熱量の運搬を多くすることができ、冷凍サイクルシステム1全体としての消費電力を抑制することができる。
【0060】
(4)変形例
(4-1)A
上記実施形態では、圧力相当飽和温度、蒸発温度及び凝縮温度を検出するのに、圧力センサ410~440を用いる場合について説明したが、これらを検知するのに用いる検知装置は圧力センサには限られない。圧力センサ以外の検知装置としては、例えば、温度センサがある。
【0061】
(4-2)B
上記実施形態では、第1冷媒回路100及び第2冷媒回路200の構成機器が、熱搬送ユニット2と、複数の利用ユニット5a、5b、5cとに設けられている場合について説明した。しかし、カスケード熱交換器150および第2冷媒回路200の第2圧縮機210は、熱搬送ユニットおよび利用ユニットではなく、別体のカスケードユニットに設けられてもよい。
【0062】
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0063】
1 冷凍サイクルシステム
100 第1冷媒回路
110 第1圧縮機
130 室外空気熱交換器 (室外熱交換器の例)
150 カスケード熱交換器
200 第2冷媒回路
210 第2圧縮機
251,252,253 室内空気熱交換器 (室内熱交換器の例)
300 コントローラ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0064】
【要約】
【課題】CO
2冷媒とCO
2以外の冷媒との熱交換を行わせるカスケード熱交換器を含み、CO
2冷媒を用いた第1の冷凍サイクルとCO
2以外の冷媒を用いた第2の冷凍サイクルを実施する冷凍サイクルシステムにおいて消費電力を削減する。
【解決手段】コントローラは、第1圧縮機の吐出冷媒の圧力相当飽和温度をT1℃とし、第2圧縮機の吸入冷媒の圧力相当飽和温度をT2℃とした場合に、カスケード熱交換器150における第1冷媒の蒸発温度と第2冷媒の凝縮温度の中間温度TmがT2+(T1-T2)×0.1≦TV≦T2+(T1-T2)×0.4を満たすように、第1圧縮機及び第2圧縮機を制御する。
【選択図】
図4