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特許7473885エレベータのかごドア装置及びエレベータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】エレベータのかごドア装置及びエレベータ
(51)【国際特許分類】
   B66B 13/12 20060101AFI20240417BHJP
【FI】
B66B13/12 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023208055
(22)【出願日】2023-12-08
【審査請求日】2023-12-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114421
【弁理士】
【氏名又は名称】薬丸 誠一
(72)【発明者】
【氏名】柏倉 寛
【審査官】中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/179911(WO,A1)
【文献】特開2020-59598(JP,A)
【文献】国際公開第2010/125650(WO,A1)
【文献】国際公開第2001/046058(WO,A1)
【文献】米国特許第5005673(US,A)
【文献】特開平9-164655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 13/00-13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横方向に移動してかごの開口を開閉するかごドアと、第1状態と第2状態との間を移動可能に設けられ、かごドアの移動に際し、乗場ドアの被係合体と係合する係合体と、係合体と他の機械要素とを作動的に連結する連結バーとを備えるエレベータのかごドア装置であって、
連結バーは、バー本体を備え、バー本体として、長手方向と交差する方向に沿って形成される薄肉部を長手方向における少なくとも1箇所に備えることにより一部を折り取り可能なバー材が用いられる
エレベータのかごドア装置。
【請求項2】
薄肉部は、バー材の長手方向における複数箇所に形成される
請求項1に記載のエレベータのかごドア装置。
【請求項3】
薄肉部は、バー材の長手方向における複数箇所に等間隔で形成される
請求項2に記載のエレベータのかごドア装置。
【請求項4】
薄肉部は、バー材の厚みの50±10%の深さを有する
請求項1に記載のエレベータのかごドア装置。
【請求項5】
バー材は、バー材の長手方向に沿って形成される長孔を備え、
薄肉部は、バー材の長手方向における長孔形成領域に形成される
請求項1に記載のエレベータのかごドア装置。
【請求項6】
長孔は、バー材の長さの50%以上の長さを有する
請求項5に記載のエレベータのかごドア装置。
【請求項7】
連結バーは、バー本体の長手方向における薄肉部形成領域に添え当てられるようにしてバー本体と結合される補強バーを備える
請求項2に記載のエレベータのかごドア装置。
【請求項8】
バー本体及び補強バーは、板状の部材であり、
薄肉部は、バー本体の一面に形成され、
補強バーは、バー本体の反対面に添え当てられる
請求項7に記載のエレベータのかごドア装置。
【請求項9】
薄肉部は、バー本体の長手方向における複数箇所に等間隔で形成され、
補強バーは、補強バーの長手方向における複数箇所に等間隔で締結ポイントを備え、
補強バーの長手方向における締結ポイントのピッチは、バー本体の長手方向における薄肉部のピッチと一致し、
バー本体及び補強バーは、少なくとも2つの締結具で結合される
請求項7に記載のエレベータのかごドア装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のかごドア装置を備える
エレベータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗場ドアの被係合体と係合する係合体をかごドアに備えるエレベータのかごドア装置及びエレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のエレベータのかごドア装置として、特許文献1に記載された装置が知られている。係合体は、1対設けられ(特許文献1では、操作板部30及び把持板部50)、1対の係合体は、かごドアの外面側において、左右に所定間隔を有して平行に配置され、それぞれが第1状態と第2状態との間を移動可能に設けられる。
【0003】
1対の係合体は、乗場ドア係合装置の構成要素である。第1係合体(かごドアの内側縁に近い係合体、操作板部30)は、かごドアの開動作に際し、乗場ドアの被係合体と係合する。第2係合体(把持板部50)は、かごドアの開動作に際し、第1状態から第2状態に切り替わり、被係合体と係合し、第1係合体とで被係合体を挟持する。これにより、乗場ドアは、かごドアの開動作に伴って横振動を生じることなく開動作する。
【0004】
また、第1係合体は、かごドアのドアロック装置の構成要素でもある。第1係合体は、被係合体と係合すると、被係合体から反力を受けて第1状態から第2状態に切り替わり、ドアロック装置のロック体をロック状態からロック解除状態に切り替える。これにより、かごドアは、ロックが解除されて開動作が可能となる。
【0005】
なお、第1係合体が被係合体と係合すると、被係合体は、第1状態から第2状態に切り替わり、乗場ドアのドアロック装置のロック体をロック状態からロック解除状態に切り替える。これにより、乗場ドアは、ロックが解除されて開動作が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2021-169347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、1対の係合体は、それぞれが連結バーを介してロック体などの装置の他の機械要素と連結される。これは、既設のエレベータに対して乗場ドア係合装置やドアロック装置を新たに構築する場合(エレベータのモダニゼーション)、設置スペースの都合上、1対の係合体を下方の離れた箇所に設置する必要があるという理由に基づく。
【0008】
しかし、1対の係合体の設置箇所は、モダニゼーションの現場ごとに異なる。従来は、現場ごとに、連結バーの長さを特定し、連結バーを設計、製作する必要があった。しかも、現場調査で連結バーの長さを正確に特定することは難しく、一旦、設計、製作を行っても、実際に現場で必要とする長さが異なり、再度、連結バーを設計、製作し直す必要が生じることもあった。
【0009】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、エレベータのかごドア装置及びエレベータにおいて、係合体の多様な設置箇所に対応することができる汎用性が高い連結バーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るエレベータのかごドア装置は、
横方向に移動してかごの開口を開閉するかごドアと、第1状態と第2状態との間を移動可能に設けられ、かごドアの移動に際し、乗場ドアの被係合体と係合する係合体と、係合体と他の機械要素とを作動的に連結する連結バーとを備えるエレベータのかごドア装置であって、
連結バーは、バー本体を備え、バー本体として、長手方向と交差する方向に沿って形成される薄肉部を長手方向における少なくとも1箇所に備えることにより一部を折り取り可能なバー材が用いられる
エレベータのかごドア装置である。
【0011】
また、本発明に係るエレベータのかごドア装置の一態様として、
薄肉部は、バー材の長手方向における複数箇所に形成される
との構成を採用することができる。
【0012】
また、本発明に係るエレベータのかごドア装置の一態様として、
薄肉部は、バー材の長手方向における複数箇所に等間隔で形成される
との構成を採用することができる。
【0013】
また、本発明に係るエレベータのかごドア装置の一態様として、
薄肉部は、バー材の厚みの50±10%の深さを有する
との構成を採用することができる。
【0014】
また、本発明に係るエレベータのかごドア装置の一態様として、
バー材は、バー材の長手方向に沿って形成される長孔を備え、
薄肉部は、バー材の長手方向における長孔形成領域に形成される
との構成を採用することができる。
【0015】
また、本発明に係るエレベータのかごドア装置の一態様として、
長孔は、バー材の長さの50%以上の長さを有する
との構成を採用することができる。
【0016】
また、本発明に係るエレベータのかごドア装置の一態様として、
連結バーは、バー本体の長手方向における薄肉部形成領域に添え当てられるようにしてバー本体と結合される補強バーを備える
との構成を採用することができる。
【0017】
また、本発明に係るエレベータのかごドア装置の一態様として、
バー本体及び補強バーは、板状の部材であり、
薄肉部は、バー本体の一面に形成され、
補強バーは、バー本体の反対面に添え当てられる
との構成を採用することができる。
【0018】
また、本発明に係るエレベータのかごドア装置の一態様として、
薄肉部は、バー本体の長手方向における複数箇所に等間隔で形成され、
補強バーは、補強バーの長手方向における複数箇所に等間隔で締結ポイントを備え、
補強バーの長手方向における締結ポイントのピッチは、バー本体の長手方向における薄肉部のピッチと一致し、
バー本体及び補強バーは、少なくとも2つの締結具で結合される
との構成を採用することができる。
【0019】
また、本発明に係るエレベータは、
上記いずれかのかごドア装置を備える
エレベータである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、必要にあれば、薄肉部にてバー材の不要な部分を折り取り、バー本体の長さを変更することができる。折取り作業は現場でできるため、現場でバー本体の長さ調整を行うことができる。このため、本発明によれば、エレベータのかごドア装置及びエレベータにおいて、係合体の多様な設置箇所に対応することができる汎用性が高い連結バーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、エレベータの斜視図である。
図2図2(a)は、かごドアが全閉した状態にあるかごを乗場側から見た正面図である。図2(b)は、かごドアが全開した状態にあるかごの正面図である。
図3図3(a)は、乗場ドアが全閉した状態にある乗場出入口を昇降路内から見た正面図である。図3(b)は、乗場ドアが全開した状態にある乗場出入口の正面図である。
図4図4(a)は、ロック状態にある乗場ドアのドアロック装置を昇降路内から見た正面図である。図4(b)は、ロック解除状態にある乗場ドアのドアロック装置の正面図である。
図5図5は、かごドアが全閉した状態にあることで非作動状態にある乗場ドア係合装置及びロック状態にあるかごドアのドアロック装置を乗場側から見た正面図である。
図6図6は、かごドアが開動作を開始することで作動状態にある乗場ドア係合装置及びロック解除状態にあるかごドアのドアロック装置を乗場側から見た正面図である。
図7図7は、乗場ドア係合装置の側面図であって、図7(a)は、連結バーの実施例1、図7(b)は、連結バーの実施例2、図7(c)は、連結バーの実施例3を示す。
図8図8は、かごドアのドアロック装置の側面図であって、図8(a)は、連結バーの実施例1、図8(b)は、連結バーの実施例2、図8(c)は、連結バーの実施例3を示す。
図9図9(a)は、連結バーのバー本体(バー材)の正面図である。図9(b)は、乗場ドア係合装置の連結バー用に所定の長さを折り取ったバー本体の正面図である。図9(c)は、かごドアのドアロック装置の連結バー用に所定の長さを折り取ったバー本体の正面図である。図9(d)は、図9(a)のA部拡大図である。図9(e)は、図9(d)の側面図である。
図10図10(a)は、連結バーの端部バーの正面図である。図10(b)は、連結バーの補強バーの正面図である。
図11図11は、乗場ドア係合装置の連結バーの組立に関する説明図である。
図12図12は、かごドアのドアロック装置の連結バーの組立に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る乗場ドア係合装置及びかごドアのドアロック装置を備えるエレベータの一実施形態について説明する。なお、以下において、「第1」、「第2」、「第3」といった表記が用いられるが、これは、互いに異なるということを表す趣旨であり、数字自体に特に意味があるものではない。
【0023】
図1に示すように、エレベータ1は、昇降路2と、かご3とを備える。昇降路2は、階層を有する建物内において上下方向に延びる。かご3は、駆動機構の駆動により、昇降路2内を昇降し、駆動機構の駆動停止により、指定された階床に停止する。
【0024】
かご3は、かごドア装置30を備える。かごドア装置30は、かごドア31と、ドア支持構造32と、ドア開閉装置35とを備える。かごドア31は、左右方向(左右の水平方向、以下、同様)に移動してかご3の前面の開口(かご出入口)を開閉して人の乗り降りを可能とする。ドア支持構造32は、かごドア31の開閉動作を可能としつつ、かごドア31を支持する構造体である。ドア開閉装置35は、かごドア31を開閉動作させるための装置である。
【0025】
これに対し、各階床の乗場20は、三方枠21と、乗場ドア装置22とを備える。三方枠21は、壁面に形成され、枠内がかご3の開口に対応した大きさの開口となる。乗場ドア装置22は、乗場ドア23と、ドア支持構造24とを備える。乗場ドア23は、左右方向に移動して三方枠21内の開口(乗場出入口)を開閉して人の乗り降りを可能とする。乗場ドア23は、通常は弾性力が付勢されて閉となっており、階床に停止したかご3のかごドア31の開動作に従動して弾性付勢に抗して開かれ、かごドア31の閉動作に伴って弾性付勢により閉じられる。ドア支持構造24は、乗場ドア23の開閉動作を可能としつつ、乗場ドア23を支持する構造体である。
【0026】
図2に示すように、かごドア31は、ドアパネル310と、ドアハンガ311と、連結体313とを備える。ドアパネル310は、鉛直面に沿って配置され、かご3の開口3aを開閉するかごドア31のドアとしての主体である。ドアハンガ311は、ドアパネル310の上端部に一体的に取り付けられる。ドアハンガ311は、1対のローラ312,312を備える。1対のローラ312,312は、ドアハンガ311の上端部において左右方向に間隔を有して配置される。連結体313は、ドアハンガ311の上端部であって1対のローラ312,312間に取り付けられる。連結体313は、かごドア31(のドアハンガ311)をドア開閉装置35の後述する駆動ベルト353に接続する器具である。
【0027】
ドア支持構造32は、ドアレール33と、敷居34とを備える。ドアレール33は、真っ直ぐで長い板状の部材であり、かご3の前面上部に左右方向に設けられる。ドアハンガ311のローラ312,312がドアレール33の上縁部に載置されることにより、かごドア31は、ドアレール33に沿って左右方向にスライド可能な状態で、ドアレール33に吊り下げられる。ドアレール33は、かごドア31の開閉動作を可能としつつ、かごドア31の上部を支持する構造体である。他方、敷居34は、かご3の開口3aの下縁に沿って、かつ、両端が開口3aの下縁よりも左右に広がるように、かご3の前面下部に左右方向に設けられる。敷居34は、かごドア31の開閉動作を可能としつつ、かごドア31の下部を支持する構造体である。
【0028】
ドア開閉装置35は、駆動モータ350と、駆動プーリ351と、従動プーリ352と、駆動ベルト353とを備える。駆動モータ350は、かご3の前面上部の左右いずれか一端側に設けられる。駆動プーリ351は、駆動モータ350の駆動軸と同軸かつ一体に設けられる。従動プーリ352は、かご3の前面上部の左右いずれか他端側に設けられる。駆動ベルト353は、駆動プーリ351及び従動プーリ352間に巻き掛けられる無端ベルトである。駆動ベルト353は、左右方向に設けられ、ドアレール33と平行に設けられる。
【0029】
駆動モータ350が駆動すると、駆動プーリ351が回転し、これに伴い、駆動ベルト353が循環移動する。これにより、左右2枚のかごドア31,31は、ドアレール33に沿って往復動し、開閉動作する。一方のかごドア31は、連結体313により駆動ベルト353の一辺に連結され、他方のかごドア31は、連結体313により駆動ベルト353の他辺に連結される。これにより、1対のかごドア31,31は、互いに相反する方向に移動する。すなわち、かごドア装置30及び乗場ドア装置22は、かご3の開口3aが中央から開くセンターオープンタイプである。
【0030】
かごドア装置30は、乗場ドア係合装置36と、ドアロック装置38とを備える。乗場ドア係合装置36は、かごドア31の開動作(及び閉動作)に際し、乗場ドア23の被係合体と係合することにより、かごドア31の開動作(及び閉動作)に伴って乗場ドア23を開動作(及び閉動作)させる装置である。ドアロック装置38は、全閉した状態にあるかごドア31の開動作を規制する装置である。乗場ドア係合装置36及びかごドアロック装置38の詳細については後述する。
【0031】
図3に示すように、乗場ドア23及びドア支持構造24も、かごドア31及びドア支持構造32と同様の構造である。そこで、乗場ドア23及びドア支持構造24については、かごドア31及びドア支持構造32についての上記の記載と同様であるとして、記載を省略する。
【0032】
乗場ドア装置22は、上述の被係合体27と、ドアロック装置28とを備える。被係合体27は、上述のとおり、かごドア装置30の乗場ドア係合装置36が係合する部分である。ドアロック装置28は、全閉した状態にある乗場ドア23の開動作を規制する装置である。
【0033】
図4に示すように、被係合体27は、ローラ27A,27Bの形態である。ローラ27Aは、第1ローラ及び可動ローラとして、後述する揺動アーム2830に設けられる。ローラ27Bは、第2ローラ及び固定ローラとして、揺動アーム2830でない箇所でローラ27Aの近傍に設けられる。ローラ27A,27Bは、乗場ドア23の鉛直面と直交する方向を軸として回転可能に設けられる。
【0034】
ドアロック装置28は、乗場出入口側の構成として、被ロック体280と、ドア閉検出部のスイッチ281とを備え、乗場ドア23側の構成として、ロック体282と、操作体283と、連結バー285とを備える。
【0035】
被ロック体280及びスイッチ281は、乗場出入口周辺の昇降路2の内壁面2Aに直接又は取付板、ブラケット、フレーム等を介して間接的に取り付けられる。被ロック体280及びスイッチ281は、全閉した状態にある乗場ドア23の内側縁(乗場ドア23の左右の側縁のうち、乗場出入口を閉鎖する側の側縁)の上方領域に設けられる。被ロック体280は、乗場ドア23の開閉方向と交差する方向に沿う板状の部材である。スイッチ281は、エレベータ1の駆動装置の安全回路の一部を構成するインターロックスイッチの形態である。
【0036】
ロック体282は、ドアハンガ231(の外面)に直接又は取付板等を介して間接的に取り付けられる。ロック体282は、ロック体282の第1部位(一例として、基端部)にて揺動可能に設けられる。ロック体282は、ロック体282の第2部位(一例として、先端部)の高さ位置が下がって傾きが小さくなる(一例として、水平となる)第1状態(図4(a))と、ロック体282の第2部位の高さ位置が上がって傾きが大きくなる第2状態(図4(b))との間を回転可能に設けられる。ロック体282は、乗場ドア23の鉛直面と直交する方向を軸として回転可能に設けられる。
【0037】
ロック体282は、ロック部282aを備える。ロック部282aは、ロック体282の本体から下方に突出する爪状の部分である。ロック体282の第1状態では、ロック部282aは、被ロック体280と同じ高さ位置となり、乗場ドア23の開方向において被ロック体280と係合可能となることで、全閉した状態にある乗場ドア23の開動作を規制する(ロック状態)。他方、ロック体282の第2状態では、ロック部282aは、被ロック体280よりも上方に位置し、乗場ドア23の開方向において被ロック体280と係合不可となることで、全閉した状態にある乗場ドア23の開動作を許容する(ロック解除状態)。
【0038】
ロック体282は、導体部282bを備える。導体部282bは、ロック体282の第2部位に取り付けられる。ロック体282がロック状態になると、導体部282bは、スイッチ281の1対の端子(図示しない)に接触して作用し、スイッチ281をON(又はOFF)にする。エレベータ1の制御部は、スイッチ281のON信号(又はOFF信号)に基づき、ロック体282がロック状態にあると判断する。そして、この結果として、エレベータ1の制御部は、乗場ドア23が全閉した状態にあると判断する。他方、ロック体282がロック解除状態になると、導体部282bは、スイッチ281の1対の端子から離れ、スイッチ281をOFF(又はON)にする。エレベータ1の制御部は、スイッチ281のOFF信号(又はON信号)に基づき、ロック体282がロック解除状態にあると判断する。そして、この結果として、エレベータ1の制御部は、乗場ドア23が全閉した状態にないと判断する。
【0039】
操作体283は、ロック体282よりも乗場ドア23の下方位置に配置され、連結バー285を介してロック体282のロック状態及びロック解除状態の切替操作を行う。操作体283は、ドアパネル230(の外面)に直接又は取付板284等を介して間接的に取り付けられる。
【0040】
操作体283は、上述のローラ27Aと、揺動アーム2830とを備える。揺動アーム2830は、揺動アーム2830の第1部位(一例として、基端部)にて揺動可能に設けられる。揺動アーム2830は、ロック体282の第1状態(ロック状態)に対応する第1状態(図4(a))と、ロック体282の第2状態(ロック解除状態)に対応する第2状態(図4(b))との間を回転可能に設けられる。ローラ27Aは、揺動アーム2830の第2部位(一例として、先端部)に設けられる。ローラ27A及び揺動アーム2830は、乗場ドア23の鉛直面と直交する方向を軸として回転可能に設けられる。
【0041】
連結バー285は、ロック体282と操作体283とを連結する。連結バー285は、真っ直ぐで長い板状の部材である。連結バー285は、ロック体282が上方、操作体283が下方に配置されることで、ロック体282及び操作体283間を上下方向(鉛直方向に対してある程度傾斜する方向を含む概念)に沿って配置される。連結バー285は、連結バー285の第1部位(一例として、一端部(上端部))にてロック体282の第3部位(一例として、中間部)に回転可能に接続され、連結バー285の第2部位(一例として、他端部(下端部))にて揺動アーム2830の第3部位(一例として、中間部から側方に突出する突片の先端部)に回転可能に接続される。これにより、連結バー285は、ロック体282及び操作体283間のリンクを構成する。
【0042】
図5及び図6に示すように、乗場ドア係合装置36は、かご出入口側の構成として、当接体360を備え、かごドア31側の構成として、第1カム361及び第2カム363と、操作体369と、連結バー370とを備える。
【0043】
当接体360は、かご出入口周辺のかご3の前面に直接又は取付板、ブラケット、フレーム等を介して間接的に取り付けられる。当接体360は、全閉した状態にあるかごドア31の内側縁(かごドア31の左右の側縁のうち、かご出入口を閉鎖する側の側縁)の上方領域に設けられる。当接体360は、かごドア31の開閉方向に対して傾斜するカム部360aを有する部材である。当接体360は、先端部側が屈曲された長い板状の部材であり、屈曲部分がカム部360aとなる。
【0044】
第1カム361及び第2カム363は、乗場ドア装置22の被係合体27と係合する係合体の一形態である。第1カム361及び第2カム363は、ドアパネル310(の外面)に直接又は取付板365等を介して間接的に取り付けられる。第1カム361及び第2カム363は、上下方向に沿って長く、左右方向に所定間隔を有して平行に配置される部材である。第1カム361及び第2カム363は、かごドア31の鉛直面に沿う長い板状の部分と、かごドア31の鉛直面と直交する長い板状の部分(カム部)とを有するアングル材である。第1カム361及び第2カム363は、たとえば、鉄、鋼、ステンレス又はアルミニウムを素材とする金属製の部材である。
【0045】
第1カム361は、第1状態(図5)と、第1状態よりもかごドア31の内側縁に近づく第2状態(図6)との間を移動可能に設けられる。第2カム363は、第1状態(図5)と、第1状態よりもかごドア31の内側縁及び第1カム361に近づいて第1カム361との間隔(幅)が狭くなる第2状態(図6)との間を移動可能に設けられる。このため、第1カム361及び第2カム363は、ムーバブルカムとも呼ばれる。
【0046】
第1カム361は、平行クランク機構ないし平行リンク機構の1つのリンクを構成し、1対の平行リンク362,362により平行移動可能に設けられる。第2カム363は、平行クランク機構ないし平行リンク機構の1つのリンクを構成し、1対の平行リンク364,364により平行移動可能に設けられる。機構の各ジョイントは、かごドア31の鉛直面と直交する方向を軸として回転可能に設けられる。これにより、第1カム361及び第2カム363は、それぞれが独立して、かごドア31の鉛直面に沿って平行移動可能に設けられる。
【0047】
第1カム361は、1対の平行リンク362,362が斜めに傾く第1状態(図5)と、傾きが(僅かに)大きくなる第2状態(図6)との間で揺動して機構が状態変化することにより、第1状態と第2状態とに切り替わる。第2カム363は、1対の平行リンク364,364が斜めに傾く第1状態(図5)と、傾きが小さくなる(一例として、水平となる)第2状態(図6)との間で揺動して機構が状態変化することにより、第1状態と第2状態とに切り替わる。揺動角度は、平行リンク362よりも平行リンク364の方が大きい。このため、平行移動のストロークは、第1カム361よりも第2カム363の方が大きい。
【0048】
第1カム361は、乗場ドア係合装置36の非作動時(かごドア31の全閉時)において、自重により第1状態にあり、乗場ドア係合装置36の作動時(かごドア31の開動作時)において、斜め上方に向かうようにして第1状態から第2状態に切り替わる。第2カム363は、乗場ドア係合装置36の非作動時において、第1状態にあり、乗場ドア係合装置36の作動時において、自重により斜め下方に向かうようにして第1状態から第2状態に切り替わる。
【0049】
なお、第1カム361の第1状態は、ストッパ366により規定され、第1カム361の第2状態は、ストッパ367により規定される。第2カム363の第2状態は、ストッパ368により規定される。各ストッパ366~368は、位置調整可能(突出長さ調整可能)であり、第1カム361の第1状態及び第2状態の位置、そして、第2カム363の第2状態の位置は、調整可能である。
【0050】
操作体369は、第2カム363よりもかごドア31の上方位置に配置され、連結バー370を介して第2カム363の第1状態及び第2状態の切替操作を行う。操作体369は、ドアハンガ311(の外面)に直接又は取付板等を介して間接的に取り付けられる。
【0051】
操作体369は、ローラ3690と、揺動アーム3691とを備える。ローラ3690は、かごドア31の開動作に伴い、当接体360のカム部360aから離れ、他方、かごドア31の閉動作に伴い、カム部360aに接触し、カム部360a上を移動する。揺動アーム3691は、揺動アーム3691の第1部位(一例として、中間部)にて揺動可能に設けられる。揺動アーム3691は、第2カム363の第1状態に対応する第1状態(図5)と、第2カム363の第2状態に対応する第2状態(図6)との間を回転可能に設けられる。ローラ3690は、揺動アーム3691の第2部位(一例として、一端部)に設けられる。ローラ3690及び揺動アーム3691は、かごドア31の鉛直面と直交する方向を軸として回転可能に設けられる。
【0052】
連結バー370は、第2カム363と操作体369とを連結する。連結バー370は、真っ直ぐで長い板状の部材である。連結バー370は、第2カム363が下方、操作体369が上方に配置されることで、第2カム363及び操作体369間を上下方向(鉛直方向に対してある程度傾斜する方向を含む概念)に沿って配置される。連結バー370は、連結バー370の第1部位(一例として、一端部(下端部))にて第2カム363の第1部位(一例として、一端部(上端部))に回転可能に接続され、連結バー370の第2部位(一例として、他端部(上端部))にて揺動アーム3691の第3部位(一例として、他端部)に回転可能に接続される。これにより、連結バー370は、第2カム363及び操作体369間のリンクを構成する。
【0053】
ドアロック装置38は、かご出入口側の構成として、被ロック体380と、ドア閉検出部のスイッチ381とを備え、かごドア31側の構成として、ロック体382と、上述の第1カム361と、連結バー390とを備える。
【0054】
被ロック体380及びスイッチ381は、かご出入口周辺のかご3の前面に直接又は取付板、ブラケット、フレーム等を介して間接的に取り付けられる。被ロック体380及びスイッチ381は、全閉した状態にあるかごドア31の内側縁の上方領域に設けられる。被ロック体380は、かごドア31の開閉方向と交差する方向に沿う板状の部材である。スイッチ381は、エレベータ1の駆動装置の安全回路の一部を構成するインターロックスイッチの形態である。
【0055】
ロック体382は、ドアハンガ311(の外面)に直接又は取付板等を介して間接的に取り付けられる。ロック体382は、ロック体382の第1部位(一例として、基端部)にて揺動可能に設けられる。ロック体382は、ロック体382の第2部位(一例として、先端部)の高さ位置が下がって傾きが小さくなる(一例として、水平となる)第1状態(図5)と、ロック体382の第2部位の高さ位置が上がって傾きが大きくなる第2状態(図6)との間を回転可能に設けられる。ロック体382は、かごドア31の鉛直面と直交する方向を軸として回転可能に設けられる。
【0056】
ロック体382は、ロック部382aを備える。ロック部382aは、ロック体382の本体から下方に突出する爪状の部分である。ロック体382の第1状態では、ロック部382aは、被ロック体380と同じ高さ位置となり、かごドア31の開方向において被ロック体380と係合可能となることで、全閉した状態にあるかごドア31の開動作を規制する(ロック状態)。他方、ロック体382の第2状態では、ロック部382aは、被ロック体380よりも上方に位置し、かごドア31の開方向において被ロック体380と係合不可となることで、全閉した状態にあるかごドア31の開動作を許容する(ロック解除状態)。
【0057】
ロック体382は、導体部382bを備える。導体部382bは、ロック体382の第2部位に取り付けられる。ロック体382がロック状態になると、導体部382bは、スイッチ381の1対の端子に接触して作用し、スイッチ381をON(又はOFF)にする。エレベータ1の制御部は、スイッチ381のON信号(又はOFF信号)に基づき、ロック体382がロック状態にあると判断する。そして、この結果として、エレベータ1の制御部は、かごドア31が全閉した状態にあると判断する。他方、ロック体382がロック解除状態になると、導体部382bは、スイッチ381の1対の端子から離れ、スイッチ381をOFF(又はON)にする。エレベータ1の制御部は、スイッチ381のOFF信号(又はON信号)に基づき、ロック体382がロック解除状態にあると判断する。そして、この結果として、エレベータ1の制御部は、かごドア31が全閉した状態にないと判断する。
【0058】
第1カム361は、操作体の一形態である。第1カム361は、ロック体382よりもかごドア31の下方位置に配置され、連結バー390を介してロック体382のロック状態及びロック解除状態の切替操作を行う。
【0059】
連結バー390は、ロック体382と第1カム361とを連結する。連結バー390は、真っ直ぐで長い板状の部材である。連結バー390は、ロック体382が上方、第1カム361が下方に配置されることで、ロック体382及び第1カム361間を上下方向(鉛直方向に対してある程度傾斜する方向を含む概念)に沿って配置される。連結バー390は、連結バー390の第1部位(一例として、一端部(上端部))にてロック体382の第3部位(一例として、中間部)に回転可能に接続され、連結バー390の第2部位(一例として、他端部(下端部))にて第1カム361の第1部位(一例として、一端部(上端部))に回転可能に接続される。これにより、連結バー390は、ロック体382及び第1カム361間のリンクを構成する。
【0060】
図7及び図8に示すように、連結バー370,390は、複数のパーツで構成される。具体的には、
図7(a)に示す連結バー370の実施例1において、連結バー370は、バー本体400、端部バー401及び適宜の数の締結具404(ボルトのほか、必要に応じてワッシャやスプリングワッシャも、以下、同様)で構成される。
図7(b)に示す連結バー370の実施例2において、連結バー370は、バー本体400、端部バー401、適宜の数の締結具404及び複数枚のシム405で構成される。
図7(c)に示す連結バー370の実施例3において、連結バー370は、バー本体400、端部バー401,402及び適宜の数の締結具404で構成される。
図8(a)に示す連結バー390の実施例1において、連結バー390は、バー本体400、端部バー401、補強バー403及び適宜の数の締結具404で構成される。
図8(b)に示す連結バー390の実施例2において、連結バー390は、バー本体400、端部バー401、補強バー403、適宜の数の締結具404及び複数枚のシム405で構成される。
図8(c)に示す連結バー390の実施例3において、連結バー390は、バー本体400、端部バー401,402、補強バー403及び適宜の数の締結具404で構成される。
【0061】
図9に示すように、バー本体400として、バー材が用いられる。図9(a)に示すように、バー材は、真っ直ぐで長い板状で、偏平なバー(フラットバー)である。バー材は、長手方向において一端部(図では、下端部)及び他端部(図では、上端部)を備える。バー材は、たとえば、200mm以上800mm以下の程度の長さ(全長)(一例として、500mm)を有する。しかし、第1カム361及び第2カム363の高さ位置が、かごドア31のドアハンガ311付近であったり、かごドア31の高さ方向中央付近にある場合は、相応の長さに対応する必要があり、100mm程度になることや1500mm程度になることもある。バー材は、たとえば、10mm以上30mm以下の程度の幅(全幅)(一例として、20mm)を有する。バー材は、たとえば、1.5mm以上5mm以下の程度の厚み(一例として、3mm)を有する。バー材は、たとえば、鉄、鋼、ステンレス又はアルミニウムを素材とする金属製の部材である。あるいは、バー材は、硬質樹脂製の部材であってもよい。
【0062】
他端部は、接続ポイント400aを備え、他の機械要素と回転可能に接続される。接続ポイント400aは、たとえば、他端部に形成される貫通孔に装着されるブッシュである。ブッシュには、回転軸としてのピンが挿入される。
【0063】
バー材(そして、これを用いるバー本体400、以下、同様)は、薄肉部400bを備える。薄肉部400bは、バー材の長手方向と交差する方向(一例として、直交方向)に沿って形成される。薄肉部400bは、バー材の長手方向における少なくとも1箇所に形成される。これにより、図9(b)及び(c)に示すように、バー材は、薄肉部400bの箇所にて、一部を折り取り可能である。なお、折り取るとは、折ってその箇所を疲労破壊し、一部を本体部から分離することをいう。破断ともいう。
【0064】
薄肉部400bは、バー材の長手方向における複数箇所に形成される。より詳しくは、薄肉部400bは、バー材の長手方向における複数箇所に等間隔で形成される。薄肉部400bは、20mm以上50mm以下の程度のピッチP(一例として、30mm)で形成される。薄肉部400bは、5箇所以上15箇所以下の程度の箇所(一例として、11箇所)に形成される。
【0065】
薄肉部400bは、バー材の一面(一例として、表面)に形成される。薄肉部400bは、バー材の厚みの50±10%の程度の深さD(一例として、47%)を有する。薄肉部400bは、バー材の全幅に亘って形成される。薄肉部400bは、溝である。より詳しくは、薄肉部400bは、断面V字状の溝である。溝は、40度以上70度以下の程度の角度(一例として、53度)で形成される。
【0066】
バー材は、長孔400cを備える。長孔400cは、バー材の長手方向に沿って形成される。長孔400cは、バー材の長手方向に沿って真っ直ぐで長い孔である。長孔400cは、バー材の表面及び裏面を貫通して開口する孔である。このため、バー材は、バー材の長手方向における長孔形成領域において、平行な一対の分割部を備える。
【0067】
長孔400cは、バー材の長さ(全長)の50%以上90%以下の程度の長さ(全長)L(一例として、70%)を有する。長孔400cは、長孔400cの長手方向における一端部がバー材の一端部に近接するようにして、バー材の一端部寄りに形成される。このため、バー材の一端部は、長孔400cがバー材の端縁に到達しない閉鎖端部400dとなる。しかし、バー材の一部が折り取られると、バー材の一端部は、長孔400cがバー材の端縁に到達する開放端部400eとなる。バー材の他端部を含むバー材の長手方向における所定領域は、長孔非形成領域となっている。
【0068】
薄肉部400bは、バー材の長手方向における長孔形成領域に形成される。このため、薄肉部400bは、平行な一対の分割部に形成される。薄肉部400bは、長孔非形成領域には形成されない。しかし、これは必須ではない。
【0069】
長孔400cは、バー材の幅(全幅)の25%以上60%以下の程度の幅(全幅)W(一例として、30%)を有する。長孔400cは、長孔400cの幅方向における中心線がバー材の幅方向における中心線と一致するように形成される。
【0070】
図10(a)に示すように、端部バー401は、真っ直ぐで長い板状で、偏平なバー(フラットバー)である。端部バー401は、長手方向において一端部(図では、下端部)及び他端部(図では、上端部)を備える。端部バー401は、バー本体400の幅(全幅)と同じ幅(全幅)を有する。端部バー401は、たとえば、鉄、鋼、ステンレス又はアルミニウムを素材とする金属製の部材である。あるいは、端部バー401は、硬質樹脂製の部材であってもよい。
【0071】
一端部は、接続ポイント401aを備え、他の機械要素と回転可能に接続される。接続ポイント401aは、たとえば、一端部に形成される貫通孔に装着されるブッシュである。ブッシュには、回転軸としてのピンが挿入される。
【0072】
端部バー401は、締結ポイント401bを備える。締結ポイント401bは、端部バー401の長手方向における少なくとも2箇所に設けられる。締結ポイント401bは、たとえば、締結具404のボルトが螺合する雌ネジである。この場合、端部バー401は、プレートナットである。
【0073】
なお、図示しないが、端部バー402も、端部バー401と同様の構成である。ただし、図7(c)及び図8(c)に示すように、端部バー402は、途中の箇所が適宜屈曲されて、一端部が他端部に対してオフセットされる形状である。このオフセット形状は、端部バー401に対しても適用可能である。
【0074】
図11及び図12に示すように、バー本体400及び端部バー401は、少なくとも2つの締結具404で結合される。締結具404は、バー本体400の長孔400c内を通る箇所でバー本体400及び端部バー401を締結する。端部バー401の締結ポイント401bが雌ネジの場合、締結具404のボルトが長孔400c内を通って雌ネジに螺合する。なお、必要に応じて、バー本体400と端部バー401との間に、調整用として複数枚のシム405が挿入されることもある。
【0075】
図10(b)に示すように、補強バー403は、真っ直ぐで長い板状で、偏平なバー(フラットバー)である。補強バー403は、長手方向において一端部(図では、下端部)及び他端部(図では、上端部)を備える。補強バー403は、バー本体400の幅(全幅)と同じ幅(全幅)を有する。補強バー403は、バー本体400の厚みの60%以上の程度の厚み(一例として、94%)を有する。補強バー403は、たとえば、鉄、鋼、ステンレス又はアルミニウムを素材とする金属製の部材である。あるいは、補強バー403は、硬質樹脂製の部材であってもよい。
【0076】
補強バー403は、締結ポイント403aを備える。締結ポイント403aは、補強バー403の長手方向における複数箇所に設けられる。より詳しくは、締結ポイント403aは、補強バー403の長手方向における複数箇所に等間隔で設けられる。締結ポイント403aは、20mm以上100mm以下の程度のピッチp(一例として、30mm)で設けられる。補強バー403の長手方向における締結ポイント403aのピッチpは、バー本体400の長手方向における薄肉部400bのピッチPと一致する。締結ポイント403aは、3箇所以上8箇所以下の程度の箇所(一例として、6箇所)に設けられる。締結ポイント403aは、たとえば、締結具404のボルトが螺合する雌ネジである。この場合、補強バー403は、プレートナットである。
【0077】
図12に示すように、補強バー403は、バー本体400の薄肉部形成領域(のうち、端部バー401から突出する部分)に添え当てられるようにしてバー本体400と結合される。補強バー403は、バー本体400の2つの対向面のうち、薄肉部400bが形成される一面とは反対面(一例として、裏面)に添え当てられる。補強バー403は、補強バー403の幅方向における両側縁がバー本体400の幅方向における両側縁と一致するようにしてバー本体400に添え当てられる。なお、添え当てられるとは、長手方向における一定の範囲が当接することをいう。
【0078】
バー本体400及び補強バー403は、少なくとも2つの締結具404で結合される。締結具404は、バー本体400の長孔400c内を通る箇所でバー本体400及び補強バー403を締結する。補強バー403の締結ポイント403aが雌ネジの場合、締結具404のボルトが長孔400c内を通って雌ネジに螺合する。このとき、バー本体400の薄肉部400bの箇所と補強バー403の締結ポイント403aの箇所が重なるようにしておくのが好ましい。この場合、締結具404は、薄肉部400bの箇所でバー本体400を締結することになり、締結具404のボルトの頭部(又は、ワッシャがある場合はワッシャ)が薄肉部400bの上に添え当てられる。
【0079】
本実施形態に係るエレベータ1の構成は、以上のとおりである。次に、乗場ドア係合装置36、かごドア31のドアロック装置38及び乗場ドア23のドアロック装置28の作動については、従来と同様であるので、簡単に説明しておく。
【0080】
図5及び図6に示すように、第1係合体としての第1カム361は、かごドア31の開動作に際し、第1被係合体としての第1ローラ27Aと係合する。第2係合体としての第2カム363は、かごドア31の開動作に際し、第1状態(図5)から第2状態(図6)に切り替わり、第2被係合体としての第2ローラ27Bと係合し、第1カム361とでローラ27A,27Bを挟持する。これにより、乗場ドア23は、かごドア31の開動作に伴って横振動を生じることなく開動作する。
【0081】
また、第1カム361は、第1ローラ27Aと係合すると、第1ローラ27Aから反力を受けて第1状態(図5)から第2状態(図6)に切り替わり、ロック体382をロック状態(図5)からロック解除状態(図6)に切り替える。これにより、かごドア31は、ロックが解除されて開動作が可能となる。
【0082】
また、第1カム361が第1ローラ27Aと係合すると、図4に示すように、第1ローラ27Aは、第1状態(図4(a))から第2状態(図4(b))に切り替わり、ロック体282をロック状態(図4(a))からロック解除状態(図4(b))に切り替える。これにより、乗場ドア23は、ロックが解除されて開動作が可能となる。
【0083】
以上のとおり、本実施形態に係る連結バー370,390によれば、薄肉部400bにてバー材の不要な部分を折り取り、バー本体400の長さを変更することができる。折取り作業は現場でできるため、現場でバー本体400の長さ調整を行うことができる。このため、本実施形態に係る連結バー370,390によれば、第1カム361及び第2カム363の多様な設置箇所に対応することができる汎用性が高い連結バーを提供することができる。
【0084】
また、本実施形態に係る連結バー370,390によれば、薄肉部400bは、バー材の長手方向における複数箇所に形成される。このため、本実施形態に係る連結バー370,390によれば、細かい長さ調整が可能となる。
【0085】
また、本実施形態に係る連結バー370,390によれば、薄肉部400bは、バー材の厚みの50±10%の深さを有する。深さが深すぎると、バー本体400の強度が低下し、連結バー370,390としての機能が損なわれるおそれがある。しかし、深さが浅すぎると、バー材をきれいに折り取ることができなくなったり、折り取るのに大きな力が必要になる。本実施形態に係る連結バー370,390によれば、両方のバランスを考慮して、好適なバー本体400を得ることができる。
【0086】
また、本実施形態に係る連結バー370,390によれば、バー材は、バー材の長手方向に沿って形成される長孔400cを備え、薄肉部400bは、バー材の長手方向における長孔形成領域に形成される。長孔400cがある分、折取り長さは短くなる。しかも、バー材の一対の分割部が長孔400cの両側に存在することで、バー本体400の強度は損なわれない。このため、本実施形態に係る連結バー370,390によれば、バー本体400の強度を維持しつつ、長孔がない場合に比べて比較的小さい力で折り取ることができ、長さ調整を楽に行うことができる。
【0087】
また、本実施形態に係る連結バー390によれば、バー本体400は、補強バー403に補強されて、強度が向上する。かごドア31のドアロック装置38が作動して、ロック解除状態にするとき、連結バー390には圧縮荷重が作用する。そうすると、連結バー390は、薄肉部400bがあることで、座屈や折損のおそれが生じる。しかし、補強バー403が付加されることで、バー本体400は、補強される。このため、本実施形態に係る連結バー390によれば、座屈や折損のおそれを無くすことができる。なお、連結バー370については、圧縮荷重ではなく、引張荷重が作用する。このため、補強バー403は敢えて必要でない。しかし、補強バー403が連結バー370に対しても適用可能であることは言うまでもない。
【0088】
また、補強バー403が用意されていると、現場でバー材を誤って短くしてしまったり、折り取った後に第1カム361及び第2カム363の位置を変更する必要が生じた場合などに、補強バー403を利用して再接続して連結バー390の長さを長くすることができる。このため、部品の再手配が不要となるという効果もある。
【0089】
また、本実施形態に係る連結バー390によれば、補強バー403は、バー本体400の2つの対向面のうち、薄肉部400bが形成される一面とは反対面に添え当てられる。バー本体400は、一面に薄肉部400bを備えることで、必然的に一面側に座屈しやすくなっている。補強バー403は、これに対する抵抗となる。このため、本実施形態に係る連結バー390によれば、座屈や折損のおそれを無くすことができる。
【0090】
また、本実施形態に係る連結バー390によれば、補強バー403は、バー材の一部が折り取られて短くなった薄肉部形成領域の範囲以上の長さを有する。このため、本実施形態に係る連結バー390によれば、強度が弱い部分を網羅的に補強することができる。
【0091】
また、本実施形態に係る連結バー390によれば、補強バー403の長手方向における締結ポイント403aのピッチpは、バー本体400の長手方向における薄肉部400bのピッチPと一致する。このため、本実施形態に係る連結バー390によれば、バー本体400の薄肉部400bの箇所と補強バー403の締結ポイント403aの箇所が重なるようにし、締結具404が薄肉部400bの箇所でバー本体400を締結するようにすることで、特に座屈に弱い薄肉部400bを補強することができる。
【0092】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0093】
上記実施形態においては、係合体としての第1カム361及び第2カム363は、それぞれが独立して、平行移動可能に設けられ、それぞれに連結バー390,370が適用される。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。いずれか一方の係合体は固定であり、この係合体に対して連結バーが適用されない構造であってもよい。たとえば、かごドア31のドアロック装置38を設けない場合、第1カム361は固定となり、連結バー390は不要となる。乗場ドア係合装置36に挟持機能を設けない場合、第2カム363は固定となり、連結バー370は不要となる。
【0094】
また、上記実施形態においては、本発明に係る新規な連結バーの構造は、乗場ドア係合装置36の連結バー370及びかごドア31のドアロック装置38の連結バー390に適用される。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。本発明に係る新規な連結バーの構造は、乗場ドアのドアロック装置の連結バーに適用されるものであってもよい。
【0095】
また、上記実施形態においては、連結バー370は、第2カム363に直接接続され、連結バー390は、第1カム361に直接接続される。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。連結バーは、平行リンクに接続されるものであってもよい。
【0096】
また、上記実施形態においては、連結バー370,390は、バー材の一部を折り取ったものをバー本体400として用いる。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。連結バーは、バー材の一部を折り取らずにそのままのバー材(図9(a))をバー本体として用いるものであってもよい。
【0097】
また、上記実施形態においては、バー本体400(バー材)は、偏平な部材である。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。バー本体(バー材)は、偏平でない部材、たとえば、断面が円形又は楕円形の部材(丸棒又は楕円棒)であってもよい。
【0098】
また、上記実施形態においては、薄肉部400bは、断面V字状の溝である。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。溝は、断面U字状等、断面V字状以外の形状の溝であってもよい。また、薄肉部は、溝でなくてもよい。たとえば、複数の凹部が間隔を有してライン状に配置されるものであってもよい。
【0099】
また、上記実施形態においては、薄肉部400bは、バー本体400(バー材)の一面に形成される。しかし、薄肉部は、バー本体(バー材)の反対面にも(すなわち両面に)形成されるものであってもよい。
【0100】
また、上記実施形態においては、薄肉部400bは、バー本体400(バー材)の長手方向と直交する方向に沿って形成される。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。薄肉部は、バー本体(バー材)の長手方向と直交する方向に対して斜めに傾斜する方向に沿って形成されるものであってもよい。
【0101】
また、上記実施形態においては、薄肉部400bは、バー本体400(バー材)の全幅に亘って形成される。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。薄肉部は、たとえば、バー本体(バー材)の側縁に到達せず、バー本体(バー材)の側縁部は、薄肉部非形成部となるものであってもよい。また、薄肉部は、たとえば、長孔の側縁に到達せず、長孔の側縁部は、薄肉部非形成部となるものであってもよい。
【0102】
また、上記実施形態においては、補強バー403は、バー本体400の2つの対向面のうち、薄肉部400bが形成される一面とは反対面に添え当てられる。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。補強バーは、薄肉部が形成される一面に添え当てられるものであってもよい。あるいは、補強バーは、2つ用いられ、バー本体を挟み込むようにして両面に添え当てられるようにしてもよい。
【0103】
また、上記実施形態においては、バー本体400及び端部バー401,402の締結手段、バー本体400及び補強バー403の締結手段は、ボルトと雌ネジの組み合わせである。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。たとえば、端部バーや補強バーに雌ネジでなく、貫通孔が設けられ、ボルトとナットの組み合わせの締結手段が用いられるものであってもよい。あるいは、リベット等、公知となっている別の締結手段であってもよい。
【0104】
また、上記実施形態においては、ドア装置30,22は、左右各1枚のドアによるセンターオープンタイプ(2CO)である。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。本発明は、2枚のドアによるサイドオープンタイプ(2S)のドア装置、左右各2枚のドアによるセンターオープンタイプ(4CO)のドア装置、1枚のドアによるサイドオープンタイプ(1S)のドア装置にも適用できることはいうまでもない。
【0105】
また、物理的に干渉するものでない限り、以上に記載した技術要素を他の実施形態ないし例に適用すること、以上に記載した技術要素を他の実施形態ないし例に係る技術要素と置換すること、以上に記載した技術要素同士を組み合わせること等は、当然に可能であり、これは、本発明が当然に意図するところである。
【符号の説明】
【0106】
1…エレベータ、
2…昇降路、2A…内壁面、20…乗場、21…三方枠、21a…開口、
22…乗場ドア装置、
23…乗場ドア、230…ドアパネル、231…ドアハンガ、232…ローラ、
24…ドア支持構造、25…ドアレール、26…敷居、
27…被係合体、27A…ローラ(被係合体、操作体)、27B…ローラ(被係合体)、
28…ドアロック装置、
280…被ロック体、281…スイッチ、
282…ロック体、282a…ロック部、282b…導体部、
283…操作体、2830…揺動アーム、
284…取付板、
285…連結バー、
3…かご、3a…開口、
30…かごドア装置、
31…かごドア、310…ドアパネル、311…ドアハンガ、312…ローラ、313…連結体、
32…ドア支持構造、33…ドアレール、34…敷居、
35…ドア開閉装置、350…駆動モータ、351…駆動プーリ、352…従動プーリ、353…駆動ベルト、
36…乗場ドア係合装置、
360…当接体、360a…カム部、
361…第1カム(係合体、操作体)、362…平行リンク、363…第2カム(係合体)、364…平行リンク、
365…取付板、
366~368…ストッパ、
369…操作体、3690…ローラ、3691…揺動アーム、
370…連結バー、
38…ドアロック装置、
380…被ロック体、381…スイッチ、
382…ロック体、382a…ロック部、382b…導体部、
390…連結バー、
400…バー本体、400a…接続ポイント(ブッシュ)、400b…薄肉部(溝)、400c…長孔、400d…閉鎖端部、400e…開放端部、
401…端部バー、401a…接続ポイント(ブッシュ)、401b…締結ポイント(雌ネジ)、
402…端部バー、
403…補強バー、403a…締結ポイント(雌ネジ)、
404…締結具、405…シム、
D…薄肉部400bの深さ、P…薄肉部400bのピッチ、L…長孔400cの長さ(全長)、W…長孔400cの幅(全幅)、p…締結ポイント403aのピッチ
【要約】
【課題】エレベータのかごドア装置及びエレベータにおいて、係合体の多様な設置箇所に対応することができる汎用性が高い連結バーを提供する。
【解決手段】連結バーは、バー本体400を備え、バー本体400として、長手方向と交差する方向に沿って形成される薄肉部400bを長手方向における少なくとも1箇所に備えることにより一部を折り取り可能なバー材が用いられる。必要であれば、薄肉部400bにてバー材の不要な部分を折り取り、バー本体400の長さを変更することができる。折取り作業は現場でできるため、現場でバー本体400の長さ調整を行うことができる。
【選択図】図9
図1
図2
図3
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図8
図9
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図12