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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】船舶動静共有航行支援システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 3/02 20060101AFI20240417BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20240417BHJP
   G16Y 20/20 20200101ALI20240417BHJP
   G16Y 40/10 20200101ALI20240417BHJP
【FI】
G08G3/02 A
G16Y10/40
G16Y20/20
G16Y40/10
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020562872
(86)(22)【出願日】2019-10-31
(86)【国際出願番号】 JP2019042808
(87)【国際公開番号】W WO2020137149
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-10-28
(31)【優先権主張番号】P 2018240894
(32)【優先日】2018-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】518458218
【氏名又は名称】アイディア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003476
【氏名又は名称】弁理士法人瑛彩知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100140899
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 如洋
(72)【発明者】
【氏名】下川部 知洋
【審査官】増子 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-076411(JP,A)
【文献】特開2008-009846(JP,A)
【文献】特開2017-182730(JP,A)
【文献】特開2016-177382(JP,A)
【文献】特開2017-078610(JP,A)
【文献】特表2010-503908(JP,A)
【文献】特開平07-129872(JP,A)
【文献】特開2006-163765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 3/02
G06F 3/0481
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の航行支援方法であって、
第1の船舶のユーザ端末から携帯電話ネットワーク経由で受信した前記第1の船舶の第1の位置情報と、第2の船舶のAIS(自動船舶識別装置)からVHF無線経由で送信されAISシステム経由で受信した前記第2の船舶の第2の位置情報と、を記憶する記憶手段を有する管理サーバから、前記第1の位置情報と前記第2の位置情報とを受信し、
海図上の前記第1の位置情報に前記第1の船舶を示すアイコンを表示し、前記海図上の前記第2の位置情報に前記第2の船舶を示すアイコンを表示し、
過去から現在までの所定の期間の前記第1の船舶の前記第1の位置情報の軌跡と前記第2の船舶の前記第2の位置情報の軌跡とを表示し、
船舶の進行方向の第1の距離を半径とし第1の中心角を有する扇型の範囲を警告エリアとし、前記第1の距離よりも短い前記進行方向の第2の距離を半径とし前記第1の中心角よりも広い第2の中心角を有する扇形の範囲を注意エリアとして設定し、
前記第1の船舶の前記注意エリア又は前記警告エリアと他の船舶の前記注意エリア又は前記警告エリアとの重なった場合に、注意通知もしくは警告通知を表示する
ことを特徴とする船舶の航行支援方法。
【請求項2】
請求項1に記載の船舶の航行支援方法であって、
過去の所定の第2の期間の前記第1の位置情報の軌跡に基づいて算出された前記第1の船舶の将来の予測移動経路を表示する
ことを特徴とする船舶の航行支援方法。
【請求項3】
請求項2に記載の船舶の航行支援方法であって、
前記第1の船舶の将来の予測移動経路は、曲線で表示される
ことを特徴とする船舶の航行支援方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の船舶の航行支援方法であって、
前記AISシステムから受信した前記第2の船舶の速度情報に基づいて算出された前記第2の船舶の将来の予測移動経路を表示する
ことを特徴とする船舶の航行支援方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の船舶の航行支援方法であって、
ユーザから海図上の位置または範囲の選択を受け付け、
当該位置または範囲を示す情報と対応付けてプロット情報を前記管理サーバに記録し、
前記管理サーバから前記位置または範囲を示す情報と前記プロット情報とを取得し、海図上の前記位置または範囲を示す情報に対応する位置に前記プロット情報を表示する
ことを特徴とする船舶の航行支援方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の船舶の航行支援方法であって、
海図上に前記第1の船舶を示すアイコンを中心とする一つ又は複数の同心円を表示し、前記第1の船舶が移動した場合には、前記第1の船舶の移動方向とは逆向きに前記海図を移動させることにより、画面の中における前記第1の船舶を示すアイコンの位置を固定して表示する
ことを特徴とする船舶の航行支援方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の船舶の航行支援方法であって、
注意エリアと注意エリアが重なった場合に注意通知を表示し、
警告エリアと警告エリアが重なった場合に警告通知を表示する
ことを特徴とする船舶の航行支援方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の船舶の航行支援方法であって、
注意エリアと警告エリアが重なった場合に注意通知を表示する
ことを特徴とする船舶の航行支援方法。
【請求項9】
船舶の航行支援システムにおける管理サーバであって、
第1の船舶のユーザ端末から携帯電話ネットワーク経由で受信した前記第1の船舶の第1の位置情報と、第2の船舶のAIS(自動船舶識別装置)からVHF無線経由で送信されAISシステム経由で受信した前記第2の船舶の第2の位置情報と、を記憶する記憶手段と、
第2のユーザ端末に表示される海図上の前記第1の位置情報に前記第1の船舶を示すアイコンを表示し、前記海図上の前記第2の位置情報に前記第2の船舶を示すアイコンを表示し、過去から現在までの所定の期間の前記第1の船舶の前記第1の位置情報の軌跡と前記第2の船舶の前記第2の位置情報の軌跡とを表示するために、前記第1の位置情報と前記第2の位置情報とを前記第2のユーザ端末に送信する送信手段と、
を有し、
船舶の進行方向の第1の距離を半径とし第1の中心角を有する扇型の範囲を警告エリアとし、前記第1の距離よりも短い前記進行方向の第2の距離を半径とし前記第1の中心角よりも広い第2の中心角を有する扇形の範囲を注意エリアとして設定し、
前記第1の船舶の前記注意エリア又は前記警告エリアと他の船舶の前記注意エリア又は前記警告エリアとの重なった場合に、注意通知もしくは警告通知を表示する衝突判定モジュールを有する
ことを特徴とする管理サーバ。
【請求項10】
請求項に記載の管理サーバであって、
前記送信手段は、過去の所定の第2の期間の前記第1の位置情報の軌跡に基づく前記第1の船舶の将来の予測移動経路を表示するための情報を、前記第2のユーザ端末に送信する
ことを特徴とする管理サーバ。
【請求項11】
請求項10に記載の管理サーバであって、
前記第1の船舶の将来の予測移動経路は、曲線で表示される
ことを特徴とする管理サーバ。
【請求項12】
請求項11のいずれか1項に記載の管理サーバであって、
前記送信手段は、前記第2の船舶の将来の予測移動経路を表示するための前記AISシステムから受信した前記第2の船舶の速度情報を、前記第2のユーザ端末に送信する
ことを特徴とする管理サーバ。
【請求項13】
請求項12のいずれか1項に記載の管理サーバであって、
ユーザから海図上の位置または範囲の選択を受け付け、当該位置または範囲を示す情報と対応付けてプロット情報を記録するプロット設定モジュールを有し、
前記送信手段は、海図上の前記位置または範囲を示す情報に対応する位置に前記プロット情報を表示するために、前記位置または範囲を示す情報と前記プロット情報とを前記第2のユーザ端末に送信する
ことを特徴とする管理サーバ。
【請求項14】
請求項13のいずれか1項に記載の管理サーバであって、
前記第2のユーザ端末に表示される海図上に前記第1の船舶を示すアイコンを中心とする一つ又は複数の同心円が表示されており、前記第1の船舶が移動した場合には、前記第1の船舶の移動方向とは逆向きに前記海図を移動させることにより、画面の中における前記第1の船舶を示すアイコンの位置を固定して表示される
ことを特徴とする管理サーバ。
【請求項15】
請求項9~14のいずれか1項に記載の管理サーバであって、
前記衝突判定モジュールは、注意エリアと注意エリアが重なった場合に注意通知を表示し、警告エリアと警告エリアが重なった場合に警告通知を表示する
ことを特徴とする管理サーバ。
【請求項16】
請求項9~15のいずれか1項に記載の管理サーバであって、
前記衝突判定モジュールは、注意エリアと警告エリアが重なった場合に注意通知を表示する
ことを特徴とする管理サーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶動静共有航行支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特開2001-211111号公報(特許文献1)がある。この公報には、「船舶1内に設置され船舶1の運行管理に必要な船内データを収集し、船内データを海事衛星通信装置22に送出できる船内情報処理装置2と、海事衛星通信装置22を介して送くられてきた船内データに所定の情報処理を施す陸上情報処理装置5とからなる。船内情報処理装置2は、サーバ機20と、機関監視盤データロガー処理装置21と、海事衛星通信装置22とからなる。処理装置21は、船舶の運行管理に必要なデータを収集し収集データを数値データにする。この数値データ化された船内データは、サーバ機20に取り込まれ、サーバ機20において情報処理され記憶されるとともに、この船内データとして海事衛星通信装置22に送出する船陸間通信システム」と記載されている(要約参照)。
【0003】
また、特開2002-157309号公報(特許文献2)がある。この公報には、「運行されている船舶の少なくとも機関部の諸元データを船舶諸情報として船内パソコン1に自動的に取り込んで収録し、その収録データを通信衛星6を経由して陸側に設置したシステム管理会社7のデータサーバ8に入力して保管し、このデータサーバ8に陸側の認証されたクライアントパソコン10からインターネット経由でアクセスして船舶諸情報を閲覧できるようにした」と記載されている(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-211111号公報
【文献】特開2002-157309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1には、船内の各種センサーから取得した船内データを衛星通信により陸上通信設備に送信する仕組みが記載されている。また、前記特許文献2には、船舶の機関部の船舶諸情報を船内パソコンに取り込み、通信衛星を経由して陸側のデータサーバに入力し、クライアントパソコンから閲覧できるようにする仕組みが記載されている。しかしながらいずれの文献でも、船舶に搭載された高価な電子設備をそのまま活用する構成しか記載されておらず、スマートフォンやタブレット端末などの安価で簡易な持ち運び可能なユーザ端末を活用する点については開示が無い。
そこで、本発明は、スマートフォンやタブレット端末などの安価で簡易な持ち運び可能なユーザ端末を活用した船舶動静共有航行支援システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、船舶の航行支援方法であって、第1の船舶のユーザ端末から携帯電話ネットワーク経由で受信した前記第1の船舶の第1の位置情報と、第2の船舶のAIS(自動船舶識別装置)からVHF無線経由で送信されAISシステム経由で受信した前記第2の船舶の第2の位置情報と、を記憶する記憶手段を有する管理サーバから、前記第1の位置情報と前記第2の位置情報とを受信し、海図上の前記第1の位置情報に前記第1の船舶を示すアイコンを表示し、前記海図上の前記第2の位置情報に前記第2の船舶を示すアイコンを表示し、過去から現在までの所定の期間の前記第1の船舶の前記第1の位置情報の軌跡と前記第2の船舶の前記第2の位置情報の軌跡とを表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
スマートフォンやタブレット端末などの安価で簡易な持ち運び可能なユーザ端末を活用した船舶動静共有航行支援システムを提供することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】全体の船舶航行支援システム1の構成図の例である。
図2】管理サーバ101のハードウェア構成の例である。
図3】ユーザ端末のハードウェア構成の例である。
図4】陸上管理端末103のハードウェア構成の例である。
図5】マスタ情報管理DB220のユーザ管理情報221の例である。
図6】マスタ情報管理DB220の船舶管理情報222の例である。
図7】ユーザ端末の出力装置に表示されるマップ表示画面700の例である。
図8】船舶情報表示画面800の例である。
図9】航海記録画面900、950の例である。
図10】ルートプラン設定・表示画面1000、1050の例である。
図11】一般プロット情報表示画面1100の例である。
図12】一般プロット情報設定画面1200~1230の例である。
図13】漁業プロット情報表示画面1300の例である。
図14】漁業プロット情報設定画面1400の例である。
図15】漁業プロット情報の設置範囲選択画面1500~1530の例である。
図16】気象情報表示画面1600~1630の例である。
図17】レーダーモード表示画面1700の例である。
図18】レーダーモード注意・警告表示画面1800、1850の例である。
図19】注意・警告の判定エリアを説明する図である。
図20】注意・警告の判定を説明する図である。
図21】停泊中船舶に対する注意・警告の判定を説明する図である。
図22】工事等プロットエリアに対する注意・警告の判定を説明する図である。
図23】陸上管理端末103の出力装置に表示されるマップ表示画面2300の例である。
図24】航海記録画面2400の例である。
図25】ルートプラン設定・表示画面2500の例である。
図26】一般プロット情報表示画面2600、2650の例である。
図27】漁業プロット情報表示画面2700、2750の例である。
図28】ユーザ端末航行情報232の例である。
図29】プロット管理情報241の例である。
図30】管理サーバ101における航行情報231蓄積フロー3000の例である。
図31】ユーザ端末における航行情報231表示フロー3100の例である。
図32】衝突に対する注意・警告処理フロー3200の例である。
図33】衝突に対する別の注意・警告処理フロー3300の例である。
図34】バーチャル無線機能表示画面3400の例である。
図35】バーチャル無線コントロールパネル3500、3550の例である。
図36】バーチャル無線機能表示画面3600の例である。
図37】バーチャル無線処理フロー3700の例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施例を図面を用いて説明する。
【0010】
従来、船舶の電子設備は高価であり、導入には申請や許可及び保守が必要であった。これらの電子設備を維持するための整備や修理は専門業者への委託が必要で費用も高額であり、操作を習得するのに訓練や講習(有料のトレーニング)が必要な場合もあった。
これらの電子設備の例としては、レーダー、GPS(Global Positioning System)プロッター、AIS(Automatic Identification System:自動船舶識別装置)、風向風速計、国際VHF(Very High Frequency:超短波)無線などがある。それぞれの電子設備を個別に購入する必要があり、統一した操作感を得ることも難しかった。
【0011】
また、AISは、国際航海する船舶や旅客船、500総トン数以上の非国際航海の船舶等で搭載義務があり、航行する船舶の識別符号、船名、位置などのデータを発信するアナログ無線機器であり、受信したデータを電子海図上やレーダー画面上に表示することができる点で便利であるが、高額かつ大型であるため、プレジャーボートなどの小型船舶には搭載されていないことが多い。
【0012】
そこで本船舶航行支援システム1では、従来の小型船舶の主要な電子設備の機能をIoTやAIを用いてクラウド上で実現するとともに、さらにインターネットを介して全ての船舶の情報や天候、周辺情報等のリアルタイムでの共有も可能にする。これらの情報をタブレットやスマートフォンで表示することにより、電子装備の導入・維持・アップデートの費用や免許取得・申請の時間的コスト、操作を習得するのための学習コストや有料トレーニングの費用等、これまで個人での電子装備保有の障壁となっていた問題を解決し、安全・快適なマリンライフを実現する。
【実施例1】
【0013】
本実施例では、ユーザ端末に表示された海図上で船舶の情報を表示する例を説明する。
図1は、全体の船舶航行支援システム1の構成図の例である。
【0014】
船舶航行支援システム1は、複数のユーザ端末102と複数の陸上管理端末103を備え、それぞれがネットワークを介して管理サーバ101に接続されている。本システムではタブレットやスマートフォンにアプリ(アプリケーション)をインストールすることにより実現するため、海上船舶上のユーザ端末からのネットワークとしては携帯電話通信(SIM(Subscriber Identity Module)カードによるデータ通信)を使用する。なお、ユーザ端末を船内のWi-Fi(登録商標)に接続し、Wi-Fi(登録商標)経由で管理サーバ101と通信を行う構成としてもよい。船内Wi-Fi(登録商標)は衛星通信等を用いて陸上のネットワークと接続されている。
陸上管理端末103と管理サーバ101の間の接続等は無線ネットワークでも有線ネットワークでもかまわない。それぞれの端末はネットワークを介して情報を送受信することができる。
【0015】
ユーザ端末102は、例えば小型船舶等に持ち込み、設置できるタブレット、スマートフォン等である。小型船舶とは、主にプレジャーボート等と呼ばれる個人がスポーツやレジャーに用いるモーターボート・ヨット・水上オートバイ等の船舶のことである。ユーザ端末102は、例えば携帯電話通信によるデータ通信を用いて、管理サーバ101や陸上管理端末103、他のユーザ端末102との間でデータを送受信する。
【0016】
陸上管理端末103は、例えば小型船舶や業務用の船舶を所有する海運会社や、工事会社、レジャー会社等の陸上会社が備えるパソコンなどの機器である。陸上会社は、船舶を使用した業務を提供しており、業務管理と合わせて陸上管理端末103により船舶の運航管理を行う。
AISシステム104は、船舶に搭載されたAIS装置から、自船の識別符号、船名、位置、針路、船速、行き先などの個別の情報がVHF電波による無線通信により送信され、付近を航行している他船や、陸地にある海上交通センターで受信される仕組みとなっている。
【0017】
なお、船舶航行支援システム1のそれぞれの端末や管理サーバ101は上記の例に限定されず、例えば、スマートフォン、タブレット、携帯電話機、携帯情報端末(PDA)などの携帯端末でもよいし、メガネ型や腕時計型、着衣型などのウェアラブル端末でもよい。また、据置型または携帯型のコンピュータや、クラウドやネットワーク上に配置されるサーバでもよい。あるいは、これらの複数の端末の組合せであってもよい。例えば、1台のスマートフォンと1台のウェアラブル端末との組合せが論理的に一つの端末として機能し得る。またこれら以外の情報処理端末であってもよい。
【0018】
船舶運航支援システム1のそれぞれの端末や管理サーバ101は、それぞれオペレーティングシステムやアプリケーション、プログラムなどを実行するプロセッサと、RAM(Random Access Memory)等の主記憶装置と、ICカードやハードディスクドライブ、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等の補助記憶装置と、ネットワークカードや無線通信モジュール、モバイル通信モジュール等の通信制御部と、タッチパネルやキーボード、マウス、音声入力、カメラ部の撮像による動き検知による入力などの入力装置と、モニタやディスプレイ等の出力装置とを備える。なお、出力装置は、外部のモニタやディスプレイ、プリンタ、機器などに、出力するための情報を送信する装置や端子であってもよい。
【0019】
主記憶装置には、各種プログラムやアプリケーションなど(モジュール)が記憶されており、これらのプログラムやアプリケーションをプロセッサが実行することで全体システムの各機能要素が実現される。なお、これらの各モジュールは集積化する等によりハードウェアで実装してもよい。また、各モジュールはそれぞれ独立したプログラムやアプリケーションでもよいが、1つの統合プログラムやアプリケーションの中の一部のサブプログラムや関数などの形で実装されていてもよい。
本明細書では、各モジュールが、処理を行う主体(主語)として記載をしているが、実際には各種プログラムやアプリケーションなど(モジュール)を処理するプロセッサが処理を実行する。
【0020】
補助記憶装置には、各種データベース(DB)が記憶されている。「データベース」とは、プロセッサまたは外部のコンピュータからの任意のデータ操作(例えば、抽出、追加、削除、上書きなど)に対応できるようにデータ集合を記憶する機能要素(記憶部)である。データベースの実装方法は限定されず、例えばデータベース管理システムでもよいし、表計算ソフトウェアでもよいし、XMLなどのテキストファイルでもよい。
【0021】
図2は、管理サーバ101のハードウェア構成の例である。
管理サーバ101は、例えばクラウド上に配置されたサーバで構成される。
主記憶装置201には、マップ表示モジュール211、レーダー表示モジュール212、プロット設定・表示モジュール213、ルートプラン設定モジュール214、気象情報表示モジュール215、無線モジュール216、衝突判定モジュール217等のプログラムやアプリケーションが記憶されており、これらのプログラムやアプリケーションをプロセッサ203が実行することで管理サーバ101の各機能要素が実現される。
【0022】
マップ表示モジュール211は、各船舶から送られ補助記憶装置202に格納されるAIS情報233やユーザ端末航行情報232等の航行情報231を読み出し、必要な情報を処理して、ユーザ端末102や陸上管理端末103に送信し、海図上に船舶やその他の関連情報を表示する。
レーダー表示モジュール212は、各船舶から送られ補助記憶装置202に格納されるAIS情報233やユーザ端末航行情報232等の航行情報231を読み出し、必要な情報を処理して、ユーザ端末102や陸上管理端末103に送信し、レーダー装置の表示形態で船舶やその他の関連情報を表示する。
【0023】
プロット設定・表示モジュール213は、海図上の任意の位置に、ユーザがお役立ち情報や障害物の情報、漁具設置区域情報などを記録するために使用する。ユーザはタブレットやスマートフォンに表示された海図の任意の場所をタップして、情報を入力することで、これらの情報がプロット管理情報241に記憶され、船舶航行支援システム1を利用する他のユーザ端末102や、陸上管理端末103に情報を表示することが可能となる。
【0024】
ルートプラン設定モジュール214は、ユーザ又は陸上管理端末利用者が、船舶の航行計画を入力するために使用する。海図上に目的地や経由地を設定することで、目的地までの経路や距離、所要時間などを表示する。これらの入力された情報はルート管理情報242に記憶され、ルート管理情報242に従って、ナビゲーションを実行することも可能である。
気象情報表示モジュール215は、気象庁やその他気象関連機関から入手した気象管理情報243を、船舶に必要な形に整形してユーザ端末102や陸上管理端末103に表示する。風力、風向、波力等の情報は、航行計画の所要時間等の算出や、船舶の予測移動経路の算出にも用いることができる。
【0025】
無線モジュール216は、国際VHF無線の機能を、アプリケーションによりソフトウェア的(仮想的)に実現したバーチャル無線機能を提供する。VHFの無線電波ではなく、音声情報をパケット化し、携帯ネットワーク等のデータ通信により送受信することで、あたかもVHF無線機器を使用しているかのような通話機能を、スマートフォンやタブレット上で実現する。バーチャル無線に関する設定情報は無線管理情報223に記憶される。
衝突判定モジュール217は、船舶航行支援システム1を搭載するユーザ端末102を保有する船舶が衝突する可能性のある航路で進行する場合に、管理サーバ101やユーザ端末102や陸上103の画面上に注意や警告のアラートを表示する。海上にはAIS装置を搭載していない多数の小型船舶が存在しているが、これら船舶のユーザが、保有するスマートフォンやタブレットに船舶航行支援システム1のアプリをインストールすることで、互いに衝突の可能性を注意・警告アラートにより知ることができ、海難事故を防止することができる。
航行情報蓄積モジュール218は、複数のユーザ端末102から逐次送られてくる位置情報などを含むユーザ端末航行情報321をまとめて航行情報管理DB230のユーザ端末航行情報232に記憶する。また、AISシステム104から取得するAIS搭載船の位置情報などを含むAIS情報を航行情報管理DBのAIS情報233に記憶する。
【0026】
補助記憶装置202には、マスタ情報管理DB220、航行情報管理DB230、支援情報管理DB240が格納されている。マスタ情報管理DB220は、ユーザを管理するためのユーザ管理情報221や船舶を管理するための船舶管理情報222やバーチャル無線の設定情報である無線管理情報223を格納する。
航行情報管理DB230は、ユーザ端末102から受信したユーザ端末航行管理情報232や大型船舶等から受信したAIS情報233等の航行情報231を格納する。
支援情報管理DB240は、プロット情報を記憶するプロット管理情報241や、ルートプランを記憶するルート管理情報242や、気象情報を記憶する気象管理情報243を格納する。
各種モジュールは、補助記憶装置202に記憶される各種情報を分析、処理することで、船舶の位置や航行状態等を算出し、各端末や出力装置に出力・表示する。
【0027】
図3は、ユーザ端末102のハードウェア構成の例である。
ユーザ端末102は、例えばタブレット、スマートフォン等で構成される。
主記憶装置301には、マップ表示モジュール311、レーダー表示モジュール312、プロット設定・表示モジュール313、ルートプラン設定モジュール314、気象情報表示モジュール315、無線モジュール316、衝突判定モジュール317等のプログラムやアプリケーションが記憶されており、これらのプログラムやアプリケーションをプロセッサ303が実行することでユーザ端末102の各機能要素が実現される。
【0028】
マップ表示モジュール311は、管理サーバ101から送られる他船の航行情報231や自ユーザ端末102、自船から取得した情報を処理して海図上に船舶やその他の関連情報を表示する。
レーダー表示モジュール312は、管理サーバ101から送られる他船の航行情報231や自ユーザ端末102、自船から取得した情報を処理してレーダー装置の表示形態で船舶やその他の関連情報を表示する。
【0029】
プロット設定・表示モジュール313は、ユーザから海図上の任意の位置の選択を受け付け、お役立ち情報や、障害物の情報、漁具設置区域情報などを記録する。
ルートプラン設定モジュール314は、ユーザから船舶の航行計画の入力を受け付ける。海図上に目的地や経由地を設定することで、目的地までの経路や距離、所要時間などを表示する。これらの入力された情報に従って、ナビゲーションを実行することも可能である。
なお、プロット設定・表示モジュール313、ルートプラン設定モジュール314は、マップ表示モジュール311やレーダー表示モジュール312の一部であってもよく、この場合、プロット設定・表示モジュール313、ルートプラン設定モジュール314が行う処理は、マップ表示モジュール311やレーダー表示モジュール312が行う処理だと考えてよい。
気象情報表示モジュール315は、管理サーバ101から送られる気象庁やその他気象関連機関から入手した気象情報を表示する。
【0030】
無線モジュール316は、バーチャル無線機能を提供する。ユーザ端末102に入力された音声情報をパケット化し、携帯ネットワーク等のデータ通信により送受信することで、あたかもVHF無線機器を使用しているかのような通話機能を実現する。
衝突判定モジュール317は、船舶航行支援システム1を搭載するユーザ端末102を保有する船舶が衝突する可能性のある航路で進行する場合に、管理サーバ101から指示される注意や警告のアラート通知を画面上に表示する。なお、衝突する可能性の算出は、管理サーバ101ではなくユーザ端末102の衝突判定モジュールで実施する構成としてもよい。
【0031】
GPS306は、ユーザ端末102の位置情報を取得しユーザ端末航行情報321に一時的に記憶する。また電子コンパスも有しており、方位を取得することもできる。ユーザ端末航行情報321は定期的に管理サーバ101に送信されており、ユーザ端末102の位置すなわちユーザ端末102を搭載した船舶の位置情報を、管理サーバ101に送信する。
入力装置304は、タッチパネルや音声入力、カメラ部307の撮像による動き検知による入力などであり、Bluetooth(登録商標)等の無線通信や有線接続によるキーボードやマウス、マイクなどの外部入力装置であってもよい。
【0032】
出力装置305はスマートフォンやタブレットのディスプレイであるが、外部のモニタやディスプレイ、プリンタ、機器などに出力するための情報を送信する装置や端子であってもよい。
カメラ部307は、プロット情報に登録する現場の写真を撮影したり、ユーザ登録、船舶登録の際の写真を撮影したりする。
【0033】
補助記憶装置302には、ユーザ端末航行情報管理DB320が格納されており、ユーザ端末102のGPS306から取得したユーザ端末102の位置情報をユーザ端末航行管理情報321として記憶する。なお、船舶に搭載されているレーダー、GPSプロッター、AIS、風向風速計、国際VHF無線機などから取得した情報を合わせて記憶してもよい。
各種モジュールは、補助記憶装置302に記憶される各種情報を分析、処理することで、船舶の位置や航行状態等を算出し、各端末や出力装置に出力・表示する。
【0034】
図4は、陸上管理端末103のハードウェア構成の例である。
陸上管理端末103は、例えばデスクトップパソコンやノートパソコンで構成される。
主記憶装置401には、管理サーバ連携モジュール410や業務管理モジュール411等のプログラムやアプリケーションが記憶されており、これらのプログラムやアプリケーションをプロセッサ403が実行することで陸上管理端末103の各機能要素が実現される。
【0035】
管理サーバ連携モジュール410は、管理サーバ101にログインし、管理サーバ101から送られる船舶の航行情報231やプロット管理情報241、ルート管理情報242、気象管理情報243等を処理して、画面に表示する。
またアプリケーションのような形ではなく、単にWebブラウザ経由で管理サーバ101にアクセスして、管理サーバ101と連携することにより、Webブラウザの機能を用いて情報を送受信・表示するという形にしてもよい。管理サーバ連携モジュール410は、Webブラウザ自体であってもよいし、Webブラウザで実行可能なスクリプトでもよいし、Webブラウザとは独立した別のアプリケーションであってもよい。
【0036】
業務管理モジュール411は、小型船舶や業務用の船舶を所有する海運会社や、工事会社、レジャー会社等の陸上会社の業務で使用されるアプリケーション等である。
またアプリケーションのような形ではなく、単にWebブラウザ経由でクラウド上のシステムにアクセスして連携することにより、Webブラウザの機能を用いて情報を送受信・表示するという形にしてもよい。
本船舶航行支援システム1は、陸上会社の業務管理モジュール411と連携することが可能である。
補助記憶装置402には、業務管理情報421を格納する業務管理DB420が記憶されている。
【0037】
図5は、マスタ情報管理DB220のユーザ管理情報221の例である。
ユーザ管理情報221は、船舶航行支援システム1を使用するユーザを管理するためのマスタ情報である。
ユーザプロフィールID501、写真ID502、氏名503、氏名(英語)504、電話番号505、メールアドレス506、メール到達確認507、作成日時508、更新日時509を有し、ユーザを一意に特定する情報が記録されている。
また、実際に船舶を操船する場合には、このユーザプロフィールID501と関連付けて、さらに船舶に対する免許情報も登録する。小型船舶免許に対しては、免許番号、名前、生年月日、本籍、住所、免許種別、免許有効期限、免許交付日、免許登録日、免許写真等の情報が登録される。
大型船舶免許に対しては、免許区分、免状番号、免許年月日、名前、性別、生年月日、住所、本籍又は国籍、免許交付年月日、免状交付年月日、免状有効期間満了日、免状写真等の情報が登録される。
【0038】
図6は、マスタ情報管理DB220の船舶管理情報222の例である。
船舶管理情報222は、船舶航行支援システム1を使用するユーザが管理を行いたい船舶を管理するためのマスタ情報である。
船舶ID601、船種ID602、船舶明細書の船種ID603、船舶名604、船舶名英語605、船舶名かな606、船籍607、船舶港ID608、船舶番号609、船舶識別番号610、ステータス611、船舶IMO612、船舶MMSI613、コールサイン614、船舶サイズID615、作成日時616、更新日時617を有し、船舶を一意に特定する情報が記録されている。
船種には、タンカー船、貨物船、タグボート、旅客船、漁船、企業船、アプリ船、ジェットスキー、その他、等を登録できる。
ステータスは、現在その船舶の状態を示しており、「0:停止」「1:操船中」「2:メンテナンス中」がある。
【0039】
図7~10は、ユーザ端末102の出力装置に出力される表示画面700の例である。
図7は、ユーザ端末102の出力装置に表示されるマップ表示画面700の例である。
各種情報が海図の上に配置されて表示される。濃色部分が海751を示し、薄色部分が陸地752を示す。マップ表示モジュール311はユーザ端末102に記憶された海図情報751、752、メニューパネル701、方位・スピードメーター706、操船船舶名表示707、無線ボタン711、現在地ボタン712、検索ボタン713、現在地表示717等をあらかじめユーザ端末102のアプリ内に格納されている情報に基づき表示する。船舶721、731やその他のアイコン715、716等の位置情報やそれらの内容や航行情報231等は管理サーバ101から逐次受信され、マップ表示モジュール311により処理され、海図の上にアイコン等として重畳して表示される。
【0040】
なお、すべての情報をユーザ端末102内に蓄積された情報に基づいてユーザ端末102が処理して表示するクライアントサイドアプリケーションで実装してもよいし、逆にすべての情報は管理サーバ101で処理され、ユーザ端末102は単に受信した情報を表示するサーバサイドアプリケーションで実装してもよい。
【0041】
メニューパネル701は、プロット情報表示ボタン702、ルートプラン表示ボタン703、気象情報表示ボタン704、レーダーモード表示ボタン705を表示する。このメニューパネル701はいくつかの画面を遷移しても大抵は画面に表示されており、これらのボタンをタップすることにより、プロット情報表示、ルートプラン表示、気象情報表示、レーダーモード表示が切り替わる。
方位・スピードメーター706は、ユーザ端末102を搭載する自船の進行方位や進行速度を表示する。進行方位や進行速度はユーザ端末102に搭載されたGPS306により取得した位置情報の時間遷移により算出され表示される。その他、外部のGPSや方位計、速度計から取り込んだ値を表示する構成としてもよい。
【0042】
操船船舶名表示707は、ユーザが登録した操作対象である自船の船舶名を表示する欄である。
無線ボタン711は、バーチャル無線の受信を示す。バーチャル無線を受信している場合にオレンジ色に点灯し、このボタンをタップするとバーチャル無線機能に遷移する。
現在地ボタン712をタップすると、海図上に現在地表示717が表示される。
検索ボタン713をタップすると、表示したい船舶を検索するための検索画面が表示される。
船舶数表示714は、画面内に表示されている船舶の数および受信データ総数を、船舶の画面内表示数/受信データ総数の形で表示する。
貸出無線機位置表示715は、貸出無線機の位置を表示する。無線機の電源が入っている場合には緑色、入っていない場合には赤色のアイコンが表示される。
無線機貸出法人位置表示716は、無線機を貸し出している法人の位置を表示する。
現在地表示717は、自船の位置を表示する。
縮尺718は、海図のスケールを表示する。海図の拡大・縮小が可能である。
障害物723は、海上にある障害物を示すアイコンである。
【0043】
本船舶航行支援システム1では、ユーザ端末搭載船の情報と、AIS搭載船の情報を合わせて海図上に表示することができる。
船舶721、731は海上にあるユーザ端末102を搭載する船舶の位置を示すアイコンである。各船舶に搭載したユーザ端末102のGPS306により取得された位置情報等が、ユーザ端末航行情報232として管理サーバ101に蓄積されており、これらが処理され、各船舶の船種や位置情報を含む処理された航行情報231として管理サーバ101からユーザ端末102に送信される。航行情報231を受信したユーザ端末102は、各船舶の位置情報で指定された位置に、各船舶の船種に対応するアイコンを表示する。
【0044】
AIS搭載船舶741は、AIS装置を搭載した国際航海する船舶や旅客船等の比較的大型の船舶の位置を示すアイコンである。各船舶のAIS装置からVHF無線経由で送信された位置情報などを含むAIS情報はAISシステム経由で取得され、AIS情報233として管理サーバ101に蓄積されており、これらが処理され、各船舶の船種や位置情報を含む処理された航行情報231として管理サーバ101からユーザ端末102に送信される。航行情報231を受信したユーザ端末102は、各AIS搭載船舶の位置情報で指定された位置に、各AIS搭載船舶の船種に対応するアイコンを表示する。この際、船体の長さや幅の情報に基づいて、船舶の実際の大きさと合致した縦・横の縮尺で海図上にアイコンを表示することもできる。
【0045】
なお、どの船種を表示するかは、例えば、タンカー船、貨物船、タグボート、旅客船、漁船、自社船、アプリ船、水上バイク、その他、等から選択し、表示・非表示を切り替えることができる。
所定の速度(例えば2ノット)以上で動いている船舶(721、731等)は右舷灯(緑)、左舷灯(赤)を点灯表示する。停船しているもしくは低速(例えば2ノットより低速)で動いている船舶(722等)は、右舷灯、左舷灯を点灯表示しない。
【0046】
従来のAISシステム104による表示では、船舶の速度ベクトルが常に表示されている。速度ベクトルが長ければ移動中、速度ベクトルが非表示のものは停泊中であるということ理解できたが、本船舶航行支援システムのように画面サイズの小さいスマートフォンやタブレットで閲覧する場合には、画面内のすべての船舶に速度ベクトルを表示すると、非常にわかりにくいユーザインターフェースになってしまう。
そこで、本船舶航行支援システム1では、基本画面では船舶の予測移動経路や軌跡を表示しておらず、特定の船舶がタップ等により選択された場合にのみ予測移動経路や軌跡を表示する。その他の船舶は予測移動経路を表示しない代わりに移動している船舶であることを知らせるために右舷灯左舷灯を点灯表示する。
【0047】
画面に表示されている船舶731をタップ等により選択すると、船舶名、速度、自船からの距離などの船舶情報732、過去の軌跡733、将来の所定時間後(例えば5分後)の予測到達位置までの予測移動経路734を表示する。
従来のAISによる表示では、船舶の移動速度及び針路(対地針路または船首方位)に基づいて速度ベクトルを直線で表示することがなされていた。しかしながら実際には風や波の影響を受け、船舶は直線には進んでいない。
【0048】
そこで本船舶航行支援システム1ではより正確な予測移動経路を算出するために、管理サーバ101のマップ表示モジュール211が、ある一点の時刻の移動速度および針路の情報だけでなく、過去に蓄積している航行情報231を活用し、過去から現在までの船舶の移動経路情報を用いて、将来の所定時間後の予測到達位置及び予測移動経路を算出する。
例えば、5分前までの航行情報231から5分後の予測到達位置及び予測移動経路を算出する場合を考える。現在から5分前までの1分ごとの5個の位置情報を取得し、緯度をY軸、経度をX軸とする5点の座標から、これらの点の近似二次曲線をもとめ、将来の予想移動経路とする。さらに速度情報または移動距離の情報から5分後の予測移動距離を求め、予測移動経路に合わせることで、5分後の予測到達位置も算出できる。
【0049】
位置情報から算出する例を述べたが、5分前から現在までの速度ベクトルの変化を用いて、将来の速度ベクトルを算出し、5分後の予測到達位置及び予測移動経路を求めてもよい。
ユーザ端末102のGPS306の電子コンパスから取得した方位と、過去数分の航行軌跡から求めた進行方向の方位とのずれを計算することにより、旋回(Rate of turn)を検知し、回頭率を算出することができる。進行方向(方位速度ベクトル)と算出した回頭率により予測移動経路を算出することもできる。
なお、予測移動経路は、上記のような算出により曲線で表示する方が正確であるが、本船舶航行支援システム1においても、船舶の移動速度及び針路(対地針路または船首方位)から直線の速度ベクトルを表示するものとしてもよい。
【0050】
図8は、船舶情報表示画面800の例である。
画面に表示されている選択済みの船舶731や船舶情報732を、タップ等によりさらに選択すると、マップ表示モジュール311が、選択された船舶の船舶情報表示画面800を表示する。
船舶画像801には、ユーザ又は船舶管理会社がアップロードした当該船舶の画像を表示する。
船舶詳細情報802には、管理サーバ101の船舶管理情報222に記憶されている船舶の管理情報や、航行情報231から取得した現在や所定の時刻の速力、針路などの航行情報を表示する。
【0051】
図9は、航海記録画面900、950の例である。
ユーザ端末102のマップ表示モジュール311は、管理サーバ101からユーザ端末航行情報232に記憶されている図28の航行記録情報2800を取得することで、航海記録リスト950を表示する。航海記録リスト950には、過去の航海の情報901の航海の日時902、航行距離903、操船時間904が表示されている。このうちの1つ905の選択を受け付けると、管理サーバ101からユーザ端末航行情報232に記憶されている図28の船舶位置情報2820を取得することで、航海記録情報900を表示する。
航海記録情報900には、選択された船舶911の軌跡912が表示されており、スライダバー(シークバー)913を操作することにより、所定の時刻914での船舶の位置を表示することができる。
【0052】
図10は、ルートプラン設定・表示画面1000、1050の例である。
ルートプラン表示ボタン1001がタップされると、ユーザ端末102のルートプラン設定モジュール314は、ユーザ端末102に記憶された海図情報、計測メニュー表示ボタン1002、戻るボタン1003、進むボタン1004、ライン削除ボタン1005等をあらかじめユーザ端末102のアプリ内に格納されている情報に基づき表示する。船舶やその他のアイコンはマップ表示モジュール311と同様に海図の上にアイコン等として重畳して表示する。
計測メニュー表示ボタン1002は、ルートプランとしてポイント1012や1013に表示する項目を選択したり、計測時のスピード設定を入力したりするためのメニューを表示する。
【0053】
ユーザは海図上の所定の位置をタップすることにより選択し、経由したいポイントを追加する。本例では出発点1011を選択し、1つ目のポイント1012と2つ目のポイント1013を選択した状態を示す。
ポイント選択を失敗した場合には、戻るボタン1003をタップすることで、一つ前の状態に戻る。また進むボタン1004をタップすることで、一つ先の状態に進む。ライン削除ボタン1005をタップすると選択されているルートが削除され、リフレッシュされる。
【0054】
距離表示画面1000では、各ポイントでのポイント情報1021、1022を表示する。例えば、出発点1011から各ポイント1012、1013までの距離をポイント情報1021、1022に表示する。
この他の表示内容は計測メニュー表示ボタンタップ後に表示されるメニューにより選択することができ、ポイント間の距離、所要時間、到達予定日時、針路、緯度・経度、等の情報をポイント情報1021、1022に表示可能である。
【0055】
なお、登録されたルートプランは管理サーバ101の支援情報管理DB240のルート管理情報242に記憶される。なお、ユーザ端末102の航行情報管理DB320に記憶してもよい。これらルートプランはナビゲーション1050のように利用することも可能である。自船表示1031には、ルート上の現在位置を表示する。この現在位置から次のポイント1032までの所要時間をポイント情報1041に表示する。また最終目的地2032までの所要時間をポイント情報1042に表示する。
所要時間は、メニューにより入力される計測時スピード設定(例えば初期値10ノット)と距離から算出する。ナビゲーションモードでは、移動中の現在速度に基づいて算出しなおして、より正確な時間を表示するようにしてもよい。
【0056】
図11は、一般プロット情報表示画面1100の例である。
ユーザ端末102のプロット設定・表示モジュール313は、管理サーバ101の支援情報管理DB240のプロット管理情報241に格納されているプロット情報を取得、処理することで、海図上にプロット情報1101、1102等を表示する。プロット管理情報241には、図29の様にプロット情報2920、プロット詳細情報2920、プロット位置情報2940が格納されている。
特定のプロット情報1101をタップ等により選択すると、プロット情報の詳細1103が表示される。
【0057】
図12は、一般プロット情報設定画面1200~1230の例である。
ユーザが、海図上の所定の位置をタップ等により選択すると、プロット設定・表示モジュール313はプロット情報を追加するためのカテゴリ選択画面1200を表示する。お役立ち情報、障害物、警告、地図の問題、漁具設置区域等のカテゴリ情報を選択することができる。ここで例えばお役立ち情報1201を選択すると、プロット選択・表示モジュールはサブカテゴリ選択画面1210を表示する。
【0058】
例えばユーザが、レジャースポット1211を選択した場合、プロット選択・表示モジュールはプロット情報入力画面1220を表示し、タイトル1221、コメント1222、画像1223に対する情報の入力を受け付ける。画像1223には、画像撮影1224、画像選択1225により、撮影又は選択された画像が表示される。
その後、プレビュー画面1230を表示し、完了1231ボタンがタップされると、プロット選択・表示モジュールは、プロット情報と選択された位置情報とを管理サーバ101に送付する。管理サーバ101は送付された情報を位置情報と共にプロット管理情報241に記憶する。
【0059】
図13は、漁業プロット情報表示画面1300の例である。
ユーザ端末102のプロット設定・表示モジュール313は、管理サーバ101の支援情報管理DB240のプロット管理情報241に格納されているプロット情報を取得、処理することで、海図上に漁業向けのプロット情報1301等を表示する。一般プロット情報との差異は、プロットが一点の位置情報ではなく複数の位置情報からなる範囲として表示されている点である。
プロット情報1301をタップ等により選択すると、プロット情報の詳細1302が表示される。
【0060】
図14は、漁業プロット情報設定画面1410、1420の例である。
ユーザが、海図上の所定の位置をタップ等により選択すると、プロット設定・表示モジュール313は図12のようなプロット情報を追加するためのカテゴリ選択画面1200を表示する。漁具設置区域1202を選択すると、プロット選択・表示モジュールは漁具設置情報入力画面1410を表示し、漁具名1401、設置者名、連絡先などの連絡先情報1402、設置期間1403、コメント1404、画像1405に対する情報の入力を受け付ける。
その後、プレビュー画面1420を表示し、完了1421ボタンがタップされると、プロット選択・表示モジュールは、設置範囲選択画面1500を表示する。
【0061】
図15は、漁業プロット情報の設置範囲選択画面1500~1530の例である。
ユーザは、海図をタップしたあとドラッグし(1501)範囲を設定する(1500)。プロット選択・表示モジュール313は、描画している線の始点と終点がつながったら描画を終了し(1510)、線で囲われた範囲1511をプロットエリア(設置範囲)とする。線の上がプレス(長押し)されるとアンカーポイント1522を表示し(1520)、範囲1521を編集することができる。アンカーポイント1522をドラッグすると海図上の位置を変えることができる。
【0062】
プロットエリアが確定すると、確認表示1531を表示し、漁業プロットの設定を終了する。プロット選択・表示モジュールは、プロット情報と選択されたプロットエリア情報(複数の位置情報の集合)とを管理サーバ101に送付する。管理サーバ101は送付された情報を位置情報と共にプロット管理情報241に記憶する。
【0063】
図16は、気象情報表示画面1600~1630の例である。
気象情報表示ボタン1601がタップされると、ユーザ端末102の気象情報表示モジュール315は、ユーザ端末102に記憶された地図/海図情報、メニュー表示ボタン1605、無線ボタン1602、現在地ボタン1603、検索ボタン1604を表示し、管理サーバ101から送信される気象管理情報243を地図/海図上に重畳表示する。なお、地図/海図情報も併せて管理サーバ101から送信される構成としてもよい。また、気象情報は、管理サーバからではなく、他の気象サーバから取得する構成としてもよい。
【0064】
メニューボタンをタップすることにより、表示画面を風情報表示1610、波情報表示1620、風浪情報表示1630を切り替えることができる。
マップ上をタップまたは地点を検索すると、その地点の風の情報1611や波の情報1621や風浪の情報1631が表示される。
【0065】
図17は、レーダーモード表示画面1700の例である。
レーダー機器は、自ら電波を発し、その反射波をとらえることで対象物までの距離を測定し、レーダー上に対象物を表示するものであるが、本レーダーモードは高価なレーダー機器の表示と似た表示をユーザ端末により提供する。
本船舶航行支援システム1のレーダーモード表示では、管理サーバ101から送信される航行情報231に基づいて、ユーザ端末102のレーダー表示モジュール312が、レーダーモード表示上の各船舶や障害物等の位置に各船舶等のアイコンを描画する。
【0066】
レーダー表示モジュール312は、自船1701を画面の中心に表示する。つまり自船が移動すると自船1701の位置は変えず海図を自船の移動方向とは逆の方向に移動させる。
自船の速度ベクトル1702は、自船の航行速度を示す。レーダー表示モジュール312は、航行速度の変化に応じて矢印の長さを変えて表示する。矢印の先端は所定時間後(例えば5分後)の自船の予測到達位置を示す。
進行方向1703は、自船の進行方向を直線で示す。
【0067】
自船の周りの同心円1704は、自船からの距離を示し、円の間隔1706に各同心円の間の距離を表示する。また、縮尺1705に海図の縮尺を表示する。
無線ボタン1707は、バーチャル無線の受信を示す。バーチャル無線を受信している場合にオレンジ色に点灯し、このボタンをタップするとバーチャル無線機能に遷移する。
レーダー表示モジュール312は、管理サーバ101から受信した他船の航行情報231に基づいて、他船の位置に他船のアイコン1711や1712を表示する。
【0068】
レーダー表示モジュール312は、他船が外側の円の内側に入ってきた場合に、他船の将来の所定時間後(例えば5分後)の予測到達位置及び予測移動経路1713を算出して、表示する。この算出は、ユーザ端末102のレーダー表示モジュール312で算出するものとして説明するが、管理サーバ101のレーダー表示モジュール212が算出を行って、位置情報や曲線情報をユーザ端末102に送付して、ユーザ端末102で描画を行うという構成としてもよい。
なお、マップ表示画面700と同様、レーダー表示画面1700においても、ユーザ端末搭載船1711、1712だけでなく、AIS装置搭載船1714、1715の情報も併せて表示することができる。
【0069】
図18は、レーダーモード注意・警告表示画面1800、1850の例である。
他船の接近具合に応じて、注意画面1800と警告画面1850を表示する。
レーダー表示モジュール312は、他船1811の予測移動経路1812と自船1814の進行方向1813とが交差すると判定した場合に、黄色の注意通知1801を表示する。他船1811及び他船の速度ベクトル1812は色を黄色に変えて表示する。また自船1814の速度ベクトル1823も色を黄色に変えて表示する。
レーダー表示モジュール312は、他船の予測移動経路1812と自船の進行方向1813が交差するまでの時刻1821を算出し、表示する当該時刻における自船の予測到達位置1822を速度ベクトル1823上に表示する。
【0070】
レーダー表示モジュール312は、さらに3分以内に他船1861の予測移動経路1862と自船の進行方向が交差すると判定した場合に、赤色の警告通知1851を表示する。この他船1861や他船の速度ベクトル1862は色を赤色に変えて表示する。また、当該他船1861の周囲に赤色同心円のアニメーションによる警告1864を表示する。また、自船の速度ベクトル1873も色を赤色に変えて表示する。
【0071】
レーダー表示モジュール312は、他船1861の予測移動経路1862と自船の進行方向が交差するまでの時刻1871を算出し、表示する当該時刻における自船の予測到達位置1872を速度ベクトル1873上に表示する。
船舶アイコン1712や1815等をタップすると、マップ表示で説明したものと同様に船舶の詳細情報を表示し、また、船舶名、速力、自船からの距離、速度ベクトル、軌跡等を表示する。
【0072】
図19図22は、注意・警告の別の判定方法を示す。
図19は、注意・警告の判定エリアを説明する図である。
自船と他船(もしくは他船同士)が衝突する可能性があるかどうかの判定に使用する。
警告エリア1912は、半径1911、中心角1913とする扇形の範囲であり、注意エリア1902は、半径1901、中心角1903とする扇形である。
【0073】
図で濃色で示されている警告エリア1912は、海上衝突予防法における追越し船の範囲に基づいて決定される範囲である。矢印1911は、進行方向を向いており、矢印1911の先端は例えば3分後の到達予測位置であり、矢印1911の長さは現在位置から3分後の到達予測位置までの移動距離を示す。中心角1913は、追越し船の角度に基づいており、船舶の真横から後ろに22.5度の角度である。すなわち中心角は225度であり、進行方向から左右にそれぞれ112.5度の角度である。
したがって、警告エリア1912は、3分後の直線到達予測距離から左右に112.5度の角度の扇形の範囲である。
【0074】
図で薄色で示されている注意エリア1902は、海上衝突予防法における行き合い船の範囲に基づいて決定される範囲である。矢印1901は船舶の進行方向を向いており、矢印1901の先端は例えば5分後の到達予測位置であり、矢印1901の長さは現在位置から5分後の到達予測位置までの移動距離を示す。中心角1913は、過去の海難審判事件に基づいて10~30度程度の角度であれば有効である。本システムでは進行方向から左右にそれぞれ5度の角度とする。
したがって、注意エリア1902は、5分後の直線到達予測距離から左右に5度の角度の扇形の範囲である。
【0075】
なお、注意エリア1902と警告エリア1912が重複する領域(半径1911で中心角1903の領域)では警告エリアの方が優先し、警告エリアであるとみなす。
当然、注意エリア1902の到達予測距離1901は警告エリア1912の到達予測距離1911よりも長く、また注意エリア1902の中心角1903は警告エリア1912の中心角1913よりも狭い。
本船舶航行支援システム1では、船舶同士の注意エリア1902と警告エリア1912が重なったかどうかによって注意通知や警告通知を表示する。
【0076】
なお、矢印1901、1911の進行方向について、これは実際の船舶の進行方向である方位速度ベクトルを用いるが、船首の方向である船首方向ベクトルであってもよい。また、注意エリアの扇型は船舶の方位速度ベクトルから左右に5度とし、矢印1901は船首方向ベクトルとしてもよい。この場合には、注意エリアはGPS等から得られた過去からの推移による、船舶の実際の進行の可能のある範囲が示される一方で、現在の船舶の向いている方向が矢印1901により表されることとなる。警告エリアについても同様に、警告エリアの表示は方位速度ベクトルを用い、矢印1911は船首方向ベクトルを用いて表示することとしてもよい。
図18のレーダーモードや、図7のマップモードにおいて、図19のような注意・警告エリアを表示するようにしてもよい。
なお、細い扇形1902を注意エリア、広い扇型1912を警告エリアとしたが、逆に細い扇形1902を警告エリア、広い扇形1912を注意エリアとする実装であってもよい。
【0077】
図20は、注意・警告の判定を説明する図である。
(a)は、注意通知を表示する場合である。
レーダー表示モジュール312やマップ表示モジュール311は、各船舶の注意エリア2001と2002のみが互いに重なっている場合に、注意通知を表示する。
(b)は、注意通知を表示する場合である。
レーダー表示モジュール312やマップ表示モジュール311は、第1の船舶の注意エリア2003と第2の船舶の警告エリア2004が重なっている場合に、注意通知を表示する。
(c)は、警告通知を表示する場合である。
レーダー表示モジュール312やマップ表示モジュール311は、各船舶の警告エリア2005と2006が互いに重なっている場合に、警告通知を表示する。
【0078】
なお、警告の方が注意よりも重要度、緊急度の高い通知である。
注意通知は、例えば図18の1801の領域に黄色などの目立つ色で表示する。警告通知は、例えば図18の1851の領域に赤色などの目立つ色で表示する。
また、図20の様にエリアが重なるかどうかに基づく判定を基本として、衝突の可能性が低いと判断される一定の場合には注意・警告表示を行わないこととしてもよい。例えば二つの船舶が互いに同じ方向((C)の一番右の状態)に進んでいる場合には、たとえエリアが重なっても注意・警告を表示しないこととする。互いに同じ方向に進む場合に先を行く船舶の速度の方が後ろを行く船舶の速度よりも速い場合には注意・警告を表示しないこととする。前方の船舶が(港等に)停船中の場合には注意・警告を表示しない。等の変更が可能である。このような注意・警告表示を行わない場合でも、注意・警告エリアに入ってきた他船の情報のみは表示する、注意・警告エリアに入ってきた他船の注意エリアや警告エリアは海図上に表示する、当該他船の色を変える、等の表示の変更を行ってもよい。
なお、細い扇形1902を警告エリア、広い扇形1912を注意エリアとする実装の場合には、(a)の場合に警告エリア同士が重なっているため、警告通知を表示する。また(b)の場合には警告エリアと注意エリアが重なっているため、注意通知を表示する。また(c)の場合には注意エリア同士が重なっているため、注意通知を表示する。
【0079】
図21は、停泊中船舶に対する注意・警告の判定を説明する図である。
(a)一方の船舶が停泊中または低速(例えば0.3ノット以下)の場合は、船舶から所定の範囲2101(例えば300m)以内に他船の注意エリア2102が重なった場合には、双方の船舶に対して注意通知を表示する。
(b)船舶から所定の範囲2103以内に他船の警告エリア2104が重なった場合には、双方の船舶に対して警告通知を表示する。
【0080】
図22は、工事等プロットエリアに対する注意・警告の判定を説明する図である。
漁業プロットと同様の処理により、プロットエリアとして工事エリア2201が設定されている場合に、レーダー表示モジュール312やマップ表示モジュール311は、管理サーバ101からプロット管理情報241を取得することで、工事エリアのプロット領域を把握することができる。レーダー表示モジュール312やマップ表示モジュール311は、工事エリア2201の中に船舶の注意エリア2211が重なった場合には、侵入しようとする船舶2212及び、領域を警戒している警戒船2202や2203に、注意通知を表示する。例えば図18の1801の領域に黄色などの目立つ色で「4:02後に工事エリアに侵入します」のように表示する。
【0081】
工事エリア2201の中に船舶の警告エリア2221が重なった場合には、侵入しようとする船舶2222及び、領域を警戒している警戒船2202や2203に、警告通知を表示する。例えば図18の1851の領域に赤色などの目立つ色で「1:08後に工事エリアに侵入します」のように表示する。
なお、警戒船2202、2203や自船2212、2222だけでなく、当該工事エリアから所定の範囲(例えば300m以内)にいる船舶2232にも合わせて注意通知や警告通知を表示するようにしてもよい。
【0082】
また、本船舶航行支援システム1では、ユーザ端末搭載船とAIS搭載船の両方を合わせてマップ表示やレーダーモード表示上に表示することができるが、AIS情報233とユーザ端末航行情報232を取得することで、AISを搭載しないユーザ端末搭載船と、AIS搭載船の両方に対して、衝突判定を行うことができ、ユーザ端末に対して注意・警告通知を表示することが可能である。
さらに、AISシステム104と連携することにより、AIS端末搭載船に対してもVHF無線により、注意・警告のメッセージや通知を送信して、AIS上に表示することも可能である。
【0083】
図23~27は、陸上管理端末103などの出力装置に出力される表示画面の例である。
これらの画面の出力は、処理の大半をクライアント側で実施するクライアントサイドの処理で実現してもよいし、陸上管理端末103は単に画像を受信して表示するのみで、処理の大半をサーバ側で実施するサーバサイドの処理で実現してもよい。
【0084】
図23は、陸上管理端末103の出力装置に表示されるマップ表示画面2300の例である。
陸上管理端末103の管理サーバ連携モジュール410は、海図上に各船舶を表示する。陸上管理端末103は、通常特定の陸上会社が使用しており、この陸上会社が管理する複数の船舶の情報をまとめて管理する。
船舶リスト2301には、現在陸上会社が管理している船舶の一覧が表示されている。このうちの1つを選択すると、その船舶の情報はリストから消え、代わりに詳細情報が画面右の船舶詳細表示領域2310に表示される。船舶詳細表示領域2310には船舶の画像2312及び詳細情報2311が表示される。これらの情報は管理サーバ101の船舶管理情報222や航行情報231から取得・表示することができる。
海図上には選択された船舶2321及びこの船舶の過去の軌跡2322、将来の所定時間後(例えば5分後)の予測到達位置までの予測移動経路2323を表示する。
【0085】
図24は、航海記録画面2400の例である。
陸上管理端末103の管理サーバ連携モジュール410は、船舶リスト2401に示される船舶の航海海図上に各船舶の航海記録情報を表示する。
船舶リスト2401の一つの船舶の選択を受け付けると、この船舶2402の過去の軌跡を表示する。スライダバー2403を操作することにより、所定の時刻での船舶の位置を表示することができる。また再生ボタン2404を操作することにより、2倍速、4倍速、8倍速などで航海記録情報の再生を行うことができる。
【0086】
図25は、ルートプラン設定・表示画面2500の例である。
ユーザ端末102と同様、陸上管理端末103からもルートプランを設定可能である。
計測ツールメニュー2501から表示内容を選択すると、管理サーバ連携モジュール410は、各ルート2502や2503のポイントの対応する情報2504を表示する。例えば画面2500の例では、各ポイントまでの出発点からの距離を表示している。
陸上管理端末103では、陸上会社が管理する複数の船舶のルートを設定したり管理したりすることができ管理効率や生産性が上がる。
【0087】
図26は、一般プロット情報表示画面2600、2650の例である。
複数のプロット2601や2602が表示されており、そのうちの1つを選択すると、詳細情報2651が表示され、設定、編集が可能である。
ユーザ端末102と同様、新たなプロット情報を登録することが可能であるが、陸上管理端末103では、陸上会社が管理する複数の工事の情報等をプロットしたり管理したりすることができ管理効率や生産性が上がる。
【0088】
図27は、漁業プロット情報表示画面2700、2750の例である。
ユーザ端末102と同様、新たなプロットエリア情報2701を登録することが可能であり、詳細情報2751を設定、編集できる。陸上管理端末103では、陸上会社が管理する複数の漁具設置情報等をプロットしたり管理したりすることができ管理効率や生産性が上がる。
【0089】
図28は、ユーザ端末航行情報232の例である。
管理サーバ101は複数のユーザ端末102から送信されるユーザ端末航行情報321を、統合して管理サーバ101のユーザ端末航行情報232に格納する。
ユーザ端末航行情報232は、航行記録情報2800と船舶位置情報2820とからなる。
航行記録情報は、ユーザ端末102に登録された船舶が航行した履歴を記録しており、操船履歴ID2801、ユーザID2802、船舶ID2803、法人ID2804、プロジェクトID2805、ステータス2806、操船開始時刻2807、操船終了時刻2808、操船目的2809、合計操舵距離2810、最大操舵速度2811、作成日時2812、更新日時2813などが記録される。
【0090】
操船履歴ID2801は、航行記録毎にユニークなIDが自動で付与され、船舶位置情報2820から参照されるキー情報になっている。ユーザID2802はユーザ端末102ごとに割り振られたIDであり、ユーザ端末102を特定するための情報である。ユーザ管理情報221のユーザプロフィールID501を参照する。船舶ID2803は、ユーザ端末102が搭載される船舶を特定するIDである。船舶管理情報222の船舶ID601を参照する。ステータス2806は、「0:停止」「1:操船中」「2:メンテナンス中」を示す。
【0091】
船舶位置情報2820は、各航行記録の中での移動軌跡を1秒ごとに記憶しており、船舶位置ID2821、操船履歴ID2822、緯度2823、経度2824、向き2825、距離(メートル)2826、速度(時速キロ)2827、作成日時2828、更新日時2829などが記録される。複数の船舶にそれぞれ搭載されている各ユーザ端末102のGPS306が取得した位置情報をそれぞれのユーザ端末102が管理サーバ101に送信することにより、ユーザ端末102毎の船舶位置情報2820を蓄積することができる。
操船位置ID2822は、シーケンスに自動で発行されるIDである。操船履歴ID2822は、航行記録情報2800の操船履歴ID2801を参照し、どの航行記録の船舶位置情報なのかを特定する。
各カラムは作成日時2828に指定されるように1秒ごとに生成・記憶され、その時点での緯度、経度、船舶の向き、前回記憶地点からの移動距離、速度、を記憶する。
このユーザ端末航行情報232を取得することで、どの時点でどこに船舶が位置しているのかを時系列に確認することが可能である。
【0092】
なお、VHF無線を活用したAISシステム104におけるAIS情報233では、動的情報として、位置情報、世界標準時刻情報、対地針路、対地速度、船首方位、航海の状態、回頭率が取得でき、また静的情報として、IMO番号、呼出符号と船名、船の長さと幅、船の種類、測位アンテナの位置が取得でき、また航海関連情報として、船の喫水、危険貨物(種類)、目的地、到着予定時刻、航行の安全に関する情報を取得することができる。これらのAIS情報233を管理サーバ101の航行情報管理DB230に格納し、また表示することができる。
AIS情報233の位置情報等を用いることで、大型船舶や大型旅客船等に関する船舶の位置についても海図上に表示することが可能である。
【0093】
図29は、プロット管理情報241の例である。
プロット管理情報241は、プロット情報2900、プロット詳細情報2920、プロット位置情報2940とからなる。プロット情報2900は、作成されたプロットの基本的な情報を記録し、プロットID2901、アカウントID2902、プロットカテゴリID2903、タイトル2904、プロットタイプフラグ2905、プロット詳細ID2906、作成日時2907、更新日時2908を有する。
プロットID2901は、プロット作成毎に自動的に生成されるシーケンスなIDである。タイトル2904は、プロットの概要を示す。プロット詳細ID2906は、プロット詳細情報2920のプロット詳細ID2921を参照する。
【0094】
プロットカテゴリID2903には、プロットの種類が登録され、例えば親カテゴリとして、工事区域、航行制限区域、標識、お役立ち情報、障害物、注意、緊急、地図の問題、漁具設置区域、等が設定でき、子カテゴリとして、お役立ち情報の中では給油所、マリーナ、標識、レジャースポット等が、障害物の中では部位、浮遊物、浅瀬、網等が、注意の中では波浪注意、取締船、工事中、危険区域等が、緊急の中では救助中、事故等の情報を設定することができる。
プロット詳細情報2920は、プロットに関する詳細な情報を記憶し、プロット詳細ID2921、写真ID2922、事業者名2923、連絡先2924、工事開始日2925、工事終了日2926、コメント2927、作成日時2928、更新日時2929を有する。ユーザがプロット情報を登録すると、詳細情報がプロット詳細情報2920に記憶される。写真ID2922には、プロット情報として登録される写真を特定するIDが記憶される。コメント2927には、ユーザが登録したコメントが記憶される。
【0095】
プロット位置情報2940は、各プロットの位置情報が記憶されており、プロットポイントID2941、プロットID2942、緯度2943、経度2944、順序2945、作成日時2946、更新情報2947を有する。
プロットポイントID2941はプロット位置毎に自動的に生成されるシーケンシャルなIDである。プロットID2942はプロット情報2900のプロットID2901を参照している。漁業プロットなど、一点ではなく範囲をプロットエリアとして登録する場合には、複数のプロット位置情報が1つのプロットID2942に対して生成され、この複数のプロット位置に囲まれた領域がプロットエリアとなる。順序2945はプロットエリアについて複数のプロット位置情報の並び順を示す。
ユーザ端末102や陸上管理端末103は、プロット設定に際し、これらの情報をプロット管理情報241として記録することで、プロット情報を登録し、他のユーザはこれらの情報を読み出すことで、海図上にプロット情報を表示することができる。
【0096】
図30は、管理サーバ101における航行情報231蓄積フロー3000の例である。
管理サーバ101の航行情報蓄積モジュール218は、AISシステム104からAIS情報を取得する(3010)。
航行情報蓄積モジュール218は、複数のユーザ端末102から、ユーザ端末航行情報を取得する(3020)。
これらのAIS情報とユーザ端末航行情報とは、フォーマットが異なっているが、航行情報蓄積モジュール218は、本船舶航行支援システム1のマップ表示やレーダーモード表示で使用する例えば、位置情報、船舶名、速度情報、船首方向情報などユーザ端末で使用できる航行情報231のフォーマットに整形して、航行情報管理DB230に記憶する。
【0097】
航行情報蓄積モジュール218は、航行情報231であるAIS情報233とユーザ端末航行情報232とを、常にリアルタイムで取得し続ける。
ユーザ端末102のリクエストに応じて、マップ表示モジュール211は、整形された航行情報231を航行情報管理DB230から読み出し、ユーザ端末102に送信する。
【0098】
図31は、ユーザ端末102における航行情報231表示フロー3100の例である。
ユーザ端末102のマップ表示モジュール311またはレーダー表示モジュール312は、管理サーバ101や外部地図サーバから海図情報を取得する(3110)。なお、あらかじめ補助記憶装置に地図・海図情報をダウンロードし、蓄積しておいて、これを読み出す構成としてもよい。
マップ表示モジュール311またはレーダー表示モジュール312は、管理サーバ101から整形された航行情報231を受信する(3120)。
【0099】
航行情報231の中に格納されている位置情報で示される海図上の位置に、対応する船舶のアイコンを表示する。なお、航行情報231の中には、複数のユーザ端末102がそれぞれのGPS306から取得した位置情報が含まれており、これらをまとめて管理サーバ101で管理することで、ユーザ端末102が搭載された複数の船舶の位置情報を表示することが可能となる。
また、航行情報231には、AIS情報233も併せて記憶されているため、AIS装置を搭載した船舶の位置にも船舶のアイコンを表示することが可能であり、この場合に、ユーザ端末102が搭載された船舶とは異なるアイコンで、AIS搭載船舶であることを明示するようしてもよい。
【0100】
また、AIS搭載船舶の情報のみを表示したり、逆にユーザ端末搭載船舶の情報のみを表示するようにしたりすることもできる。
また、ユーザ端末102のマップ表示モジュール311またはレーダー表示モジュール312が海図上に船舶をマッピング描画する構成としたが、管理サーバ101のマップ表示モジュール211やレーダー表示モジュール212側で船舶情報をマッピングし、マッピング済みの画像情報を送信し、ユーザ端末102側で表示する構成にしてもよい。
【0101】
図32は、図18の衝突に対する注意・警告を表示するための処理フロー3200の例である。
管理サーバ101の衝突判定モジュール217は、他船の予測移動経路1812と自船の予測移動経路とを算出し、それぞれが交差するか判定する(3210)。なお、予測移動経路は例えば5分後の予測到達位置までの予測移動経路である。
交差する場合には、衝突判定モジュール217は、交差までの時間を算出する(3220)。交差までの時間が3分以内である場合には、警告表示1850のような警告通知を表示するようレーダー表示モジュール312に指示を出す。レーダー表示モジュール312は、警告通知1851を表示する。他船1861は色を赤色に変えて表示する。また、当該他船1861の周囲に赤色同心円のアニメーションによる警告1864を表示する。また、自船の速度ベクトル1873も色を赤色に変えて表示する。
【0102】
さらに、レーダー表示モジュール312は、他船1861の予測移動経路1862と自船の進行方向1813が交差するまでの時刻1871を表示し、当該時刻における自船の予測到達位置1872を速度ベクトル1873上に表示する(3240)。
【0103】
交差までの時間が3分を超える場合には、注意表示1800のような注意通知を表示するようレーダー表示モジュール312に指示を出す。レーダー表示モジュール312は、注意通知1801を表示する。他船1811は色を黄色に変えて表示する。また自船の速度ベクトル1823も色を黄色に変えて表示する。
レーダー表示モジュール312は、他船の予測移動経路1812と自船の進行方向1813が交差するまでの時刻1821を算出し、表示する当該時刻における自船の予測到達位置1822を速度ベクトル1823上に表示する。
【0104】
表示終了の指示を受け付けるまで、レーダー表示モジュール312及び衝突判定モジュール217は、注意・警告処理フローを実行し続ける(3260)。他船と自船が離れ、再び他船の予測移動距離と自船の予測移動距離が交差しなくなると、注意・警告通知の表示をリセットし、フローを繰り返す(3270)。
【0105】
図33は、図19図22の衝突に対する別の注意・警告処理フロー3300の例である。
管理サーバ101の衝突判定モジュール217は、自船の注意又は警告エリアが他船の注意又は警告エリアと重なったかどうかを判定する(3310)。
重なった場合には、自船の警告エリアが他船の警告エリアと重なったかを判定する(3320)。重なっている場合には、警告通知を表示する(3330)。
重なっていない場合には、自船の注意エリアが他船の注意エリアと重なったかを判定する(3340)。重なっている場合には、注意通知を表示する(3350)。
重なっていない場合には、つまり自船の注意エリアが他船の警告エリアと重なっている場合か、自船の警告エリアが他船の注意エリアと重なっている場合であり、この場合は、注意通知を表示する(3360)。
【0106】
なお、本フローでは注意通知と警告通知があり、警告の方が重要度や緊急度が高いこととしている。2段階の通知であるため、3360のように注意と警告のエリアがそれぞれ重なっている場合は注意通知を表示することとしているが、より安全に配慮してこのような場合に警告を表示することとしてもよい。
また、2段階で無く3段階の表示とする場合には、例えば3360のように注意と警告のエリアがそれぞれ重なっている場合に、真ん中のレベルである「重注意」のような通知を行うこととしてもよい。
なお、衝突判定は衝突判定モジュール217により行われるが、実際の注意・警告表示は、ユーザ端末102のマップ表示モジュール311や、レーダー表示モジュール312に表示指示を出すことにより、ユーザ端末102が注意・警告通知を表示する。
【0107】
表示終了の指示を受け付けるまで、衝突判定モジュール217および表示モジュールは、注意・警告処理フローを実行し続ける(3370)。他船と自船が離れ、再び他船と自船の注意・警告エリアが重ならなくなると、注意・警告通知の表示をリセットし、フローを繰り返す(3380)。
【実施例2】
【0108】
本実施例では、船舶航行支援システム1において使用されるバーチャル無線システムの詳細について説明する。
図34は、バーチャル無線機能表示画面3400の例である。
バーチャル無線は、VHFの無線ではなく、携帯電話ネットワークのデータ通信を用いて、仮想的にVHF無線機と似たインターフェースで通信ができるようにしたものである。バーチャル無線には、バーチャルVHF無線とグループ無線の機能を実装する。
無線ボタン3401は、バーチャル無線の受信を示す。バーチャルVHF無線を受信している場合にオレンジ色に点灯し、このボタンをタップするとバーチャルVHF無線機能に遷移する。バーチャルVHF無線を送信している船舶上にボタンと同系列のオレンジ色の送信アイコン3402を表示する。
無線ボタン3401は、グループ無線を受信すると緑色に点灯し、このボタンをタップするとグループ無線機能に遷移する。グループ無線を送信してる船舶上にボタンと同系列の緑色の送信アイコン3402を表示する。
【0109】
図35は、バーチャル無線コントロールパネル3500、3550の例である。
バーチャルVHF無線コントロールパネル3500では、セグメントコントロール3501、3511でバーチャルVHF無線機能とグループ無線機能とを切り替えられる。
チャンネルを選択するとリアルタイムでチャンネル番号3502が変更される。16チャンネルは呼出周波数であり、このチャンネルで相手局を呼び出し、その後種別に従ったチャンネルに移動する。
実際のVHF無線では、各チャンネルに別々の周波数が割り当てられており、この周波数を切り替えて通信を行う。一方、バーチャルVHF無線では、携帯ネットワークのデータ通信によるIPプロトコル等での通信を行い、例えば、それぞれの通信に疑似的にチャンネル番号を割り当てて、同一のチャンネル番号が設定されたデータしか、お互い送受信できないように設定している。
【0110】
受信状況表示ボタン3503、3513は、無線受信時は緑色、送信時は赤色、で点滅表示する。
Hi/Low表示3504、3514は、疑似的な電波強度のHi/Lowの状態をラベル表示する。
PTT(Push to talk)ボタン3505、3515は、タップされると発話ができるようになり、送信中は赤色で表示され、送信状態が分かりやすくなっている。
【0111】
グループ無線コントロールパネル3550では、設定されたグループ間でしか通信できない無線通信を、疑似的に携帯電話ネットワークにおけるデータ通信により実現する。
グループ名3512には、グループ無線を使用する団体名を表示。グループに割り当てられたグループチャンネルのみ使用可であり、あらかじめ通信が限定されているので、チャンネル選択はできない(ボタンも非表示)。
【0112】
図36は、陸上管理端末103等でのバーチャル無線機能表示画面3600の例である。
緑色のグループ無線送受信エリア3601には、グループ無線の現在のグループ設定状態が表示されており、固定で現在使用中のグループ無線名が表示される。
オレンジ色のバーチャルVHF送受信エリア3602は、バーチャルVHF無線の現在使用中のチャンネル情報が表示されており、1~88までのチャンネル番号が表示される。
送信/受信表示ランプ3603は、送受信状況を示す。受信中は緑色、送信中は赤色で点滅表示する。チャンネルを選択してPTT(Push to talk)ボタン3604を押している間は無線を送信できる。送信中はマイクアイコン3604が赤く点灯する。
グループ無線を送信中(話しかけてきている)の船舶には緑色の吹き出し3605を表示し、バーチャルVHFを送信中(話しかけてきている)の船舶にはオレンジ色の吹き出し3606を表示する。
【0113】
レンジボタン3652をクリックするとアイコンが青色に変わり、マップ上に無線の送受信可能エリア3651が表示され、Hi・Loボタン3653、3654の使用が有効になる。再度クリックすると送受信可能エリアは非表示となり、Hi・Loボタンの使用は無効になる。
VHF無線では、VHF電波の届く範囲に限界があり、おのずと電波の届く範囲が無線通信のできる範囲となる。電波強度を上げる・下げる(Hi・Loにする)ことにより、電波の届く範囲が増減し、通信できる範囲が増減する。
一方バーチャル無線機能では、携帯電話ネットワークによるデータ通信で、疑似的にVHF無線のインターフェースを再現しているが、実際にはIPによる通信であるため、ネットワークにつながっている限りどこまででも通信ができてしまう。そこで、バーチャル無線機能では、あえて通信できる範囲を、無線を貸し出している法人3611の位置(会社の場所)から例えば半径30kmの範囲に制限する。
Hiボタン3653がクリックされると、無線モジュール216は送受信可能エリア3651を例えば半径50kmの範囲に拡大する。Loボタン3654がクリックされると、例えば半径10kmの範囲に縮小する。
このように、疑似的に送信範囲を拡大・縮小することで、VHF無線のようなインターフェースを作り出し、従来からのVHS無線の利用者にも違和感なく使用ができるようにした。
【0114】
図37は、バーチャル無線処理フロー3700の例である。
管理サーバ101の無線モジュール216は、無線管理情報223から無線を貸し出している法人3611の位置情報を取得し(3710)、ユーザ端末航行情報232に含まれるユーザ端末102の位置情報を取得する(3720)。
無線モジュール216は、Hiボタン3653が押されたか判断し(3730)、押された場合には、法人3611から半径50kmのユーザ端末102に無線機能を提供する(3740)。
無線モジュール216は、Loボタン3654が押されたか判断し(3750)、押された場合には、法人3611から半径10kmのユーザ端末102に無線機能を提供する(3760)。
いずれのボタンも押されていない場合には、通常の範囲である範囲30kmの範囲のユーザ端末102に無線機能を提供する(3770)。
無線モジュール216は無線機能の停止、もしくはマップ表示やレーダーモード表示を終了する指示を受けるまで、ユーザ端末102の位置情報を取得し続け、フローを繰り返す(3780)。
【0115】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0116】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0117】
101…管理サーバ、102…ユーザ端末、103…陸上管理端末、221…ユーザ管理情報、222…船舶管理情報、700…マップ表示画面、900…航海記録画面、1000…ルートプラン設定画面、1100…プロット情報表示画面、1300…漁業プロット情報表示画面、1600…気象情報表示画面、1700…レーダーモード表示画面
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