(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】直流配電システムおよび電圧安定化装置
(51)【国際特許分類】
H02J 1/00 20060101AFI20240417BHJP
【FI】
H02J1/00 301E
(21)【出願番号】P 2023508000
(86)(22)【出願日】2022-08-26
(86)【国際出願番号】 JP2022032153
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 融真
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 悟司
(72)【発明者】
【氏名】折川 幸司
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 宗佑
【審査官】佐藤 卓馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-204652(JP,A)
【文献】特開2003-18746(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電力を配電する直流母線と、
前記直流母線と負荷との間に接続され、前記直流母線からの直流電力を前記負荷が必要とする電力に変換する第1の電力変換器と、
前記直流母線に、前記第1の電力変換器と並列に接続される電圧安定化装置と備え、
前記電圧安定化装置は、前記直流母線から前記第1の電力変換器に入力される入力電圧の変動と、前記直流母線から前記第1の電力変換器に供給される直流電力とに応じた電力を前記直流母線に供給する、直流配電システム。
【請求項2】
前記電圧安定化装置は、
前記入力電圧の変動に応じて、前記直流母線から前記第1の電力変換器および前記電圧安定化装置に供給される直流電力を変動させるとともに、
前記第1の電力変換器および前記電圧安定化装置に供給される直流電力と、前記第1の電力変換器に供給される直流電力との偏差を補償するように動作する、請求項1に記載の直流配電システム。
【請求項3】
前記電圧安定化装置は、
バッファコンデンサと、
前記直流母線と前記バッファコンデンサとの間に接続される双方向直流/直流変換器と、
前記双方向直流/直流変換器を制御する制御回路とを含み、
前記制御回路は、前記偏差を前記電圧安定化装置が補償するように前記双方向直流/直流変換器を制御する、請求項2に記載の直流配電システム。
【請求項4】
前記制御回路は、
前記入力電圧を、定常成分および変動成分に分離し、
前記定常成分に対する前記変動成分の比率を前記第1の電力変換器に供給される直流電力に乗算することにより、前記電圧安定化装置が補償すべき補償電力を算出し、
算出された前記補償電力を前記直流母線との間で授受するように前記双方向直流/直流変換器を制御する、請求項3に記載の直流配電システム。
【請求項5】
前記制御回路は、前記補償電力を前記直流母線との間で授受するとともに、前記バッファコンデンサの端子間電圧を一定に保つように前記双方向直流/直流変換器を制御する、請求項4に記載の直流配電システム。
【請求項6】
前記制御回路は、
前記補償電力を前記入力電圧で除することにより、前記双方向直流/直流変換器から出力される補償電流の指令値である第1の補償電流指令値を生成し、
予め定められた電圧指令値に対する前記バッファコンデンサの端子間電圧の偏差を入力とする制御演算に従って第2の補償電流指令値を生成し、
前記第1の補償電流指令値および前記第2の補償電流指令値の和に従って、補償電流指令値を生成し、
前記補償電流指令値に従った前記補償電流を出力するように、前記双方向直流/直流変換器の電流制御を実行する、請求項5に記載の直流配電システム。
【請求項7】
前記バッファコンデンサの電圧制御の応答周波数は、前記双方向直流/直流変換器の前記電流制御の応答周波数よりも低い、請求項6に記載の直流配電システム。
【請求項8】
電源からの電力を所定電圧の直流電力に変換して前記直流母線に出力する第2の電力変換器と、
前記第2の電力変換器と前記第1の電力変換器との間に接続されるLCフィルタとをさらに備え、
前記制御回路は、前記入力電圧を受けて前記定常成分を出力するLPF(Low Pass Filter)を含み、
前記LPFのカットオフ周波数は、前記LCフィルタの共振周波数よりも低い、請求項4に記載の直流配電システム。
【請求項9】
前記第1の電力変換器は、前記負荷が必要とする電力を前記負荷に供給する定電力負荷として動作し、
前記第1の電力変換器および前記電圧安定化装置は、一体として定電流負荷として動作する、請求項1から8のいずれか1項に記載の直流配電システム。
【請求項10】
前記双方向直流/直流変換器は、双方向チョッパ回路を含む、請求項3に記載の直流配電システム。
【請求項11】
直流配電システムの電圧安定化装置であって、
前記直流配電システムは、
直流母線と、
前記直流母線と負荷との間に接続され、前記直流母線からの直流電力を前記負荷が必要とする電力に変換する第1の電力変換器とを含み、
前記電圧安定化装置は、前記直流母線から前記第1の電力変換器に入力される入力電圧の変動と、前記直流母線から前記第1の電力変換器に供給される直流電力とに応じた電力を前記直流母線に供給する、電圧安定化装置。
【請求項12】
前記電圧安定化装置は、
前記入力電圧の変動に応じて、前記直流母線から前記第1の電力変換器および前記電圧安定化装置に供給される直流電力を変動させるとともに、
前記第1の電力変換器および前記電圧安定化装置に供給される直流電力と、前記第1の電力変換器に供給される直流電力との偏差を補償するように動作する、請求項11に記載の電圧安定化装置。
【請求項13】
バッファコンデンサと、
前記直流母線と前記バッファコンデンサとの間に接続される双方向直流/直流変換器と、
前記双方向直流/直流変換器を制御する制御回路とを含み、
前記制御回路は、前記偏差を前記電圧安定化装置が補償するように前記双方向直流/直流変換器を制御する、請求項12に記載の電圧安定化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、直流配電システムおよび電圧安定化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、直流母線に複数の電源および複数の電気負荷を接続し、直流母線を経由して直流電力を授受する直流配電システムが注目されている。直流配電システムは、交流電力を配電する交流配電系統と比較して、同期の問題がなく電圧制御が容易であるため、気象条件によって発電出力が変動する再生可能エネルギー電源を接続しやすいという利点がある。また、電源と電気負荷との間における直流/交流の電力変換が不要となる分、電力損失を低減することができるため、配電の効率向上を期待できる。
【0003】
その一方で、直流配電システムには、定電力負荷による不安定性の問題がある。これは、負荷の直近に配置された電力変換器が負荷への供給電力を厳密に制御するときに、当該電力変換器が定電力負荷として振る舞い、負性インピーダンス特性を持つことによる。負性インピーダンスが存在することによって、直流母線に設けられたフィルタとの相互作用によって発振を起こす可能性がある。
【0004】
定電力負荷による不安定性については、近年多くの対策が提案されている。その1つとして、非特許文献1には、定電力負荷による直流電圧制御の不安定性を抑制するために、負荷側の電力変換器の制御を変更して、定電力負荷を直流母線から見て定電流負荷のように振る舞わせる制御方法が提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】本間 宏輝、小笠原 悟司、竹本 真紹、「双方向チョッパを直流リンクに接続したインバータの直流電圧振動抑制制御」、電気学会産業応用部門 半導体電力変換/モータドライブ合同研修会、SPC15145,MD15116(2015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1によれば、定常的な負荷への電力供給は良好に行えるものの、過渡的には完全に負荷の必要とする電力を供給できないという課題がある。
【0007】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであり、本開示の目的は、直流配電システムにおいて、定電力負荷の制御特性を悪化させることなく、定電力負荷による直流電圧制御の不安定性を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のある局面によれば、直流配電システムは、直流電力を配電する直流母線と、第1の電力変換器と、電圧安定化装置とを備える。第1の電力変換器は、直流母線と負荷との間に接続され、直流母線からの直流電力を負荷が必要とする電力に変換する。電圧安定化装置は、直流母線に、第1の電力変換器と並列に接続される。電圧安定化装置は、直流母線から第1の電力変換器に入力される入力電圧の変動と、直流母線から第1の電力変換器に供給される直流電力とに応じた電力を直流母線に供給する。
【0009】
本開示の他のある局面によれば、直流配電システムの電圧安定化装置であって、直流配電システムは、直流母線と、直流母線と負荷との間に接続され、直流母線からの直流電力を負荷が必要とする電力に変換する第1の電力変換器とを含む。電圧安定化装置は、直流母線から第1の電力変換器に入力される入力電圧の変動と、直流母線から第1の電力変換器に供給される直流電力とに応じた電力を直流母線に供給する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、直流配電システムにおいて、定電力負荷の制御特性を悪化させることなく、定電力負荷による直流電圧制御の不安定性を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施の形態に係る電圧安定化装置が適用され得る直流配電システムの構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示した直流配電システムを簡単化した解析モデルを示す図である。
【
図4】電圧安定化装置の主回路構成を示す図である。
【
図5】電圧安定化装置の制御構成を示すブロック図である。
【
図6】検証に用いた実験システムの主回路構成を示す図である。
【
図7】
図6に示した実験システムの各構成要素のパラメータを示す図である。
【
図8】直流母線に電圧安定化装置を接続しない場合における実験結果を示す図である。
【
図9】直流母線に電圧安定化装置を接続せず、非特許文献1に記載される制御方法を降圧チョッパ回路に適用した場合における実験結果を示す図である。
【
図10】直流母線に電圧安定化装置を接続した場合における実験結果を示す図である。
【
図11】直流母線に電圧安定化装置を接続した場合における実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は原則的に繰り返さないものとする。
【0013】
(直流配電システム)
図1は、本実施の形態に係る電圧安定化装置が適用され得る直流配電システムの構成例を示すブロック図である。
【0014】
図1に示すように、直流配電システムにおいて、直流母線100には、複数の電力変換器102,104,106,108が接続されている。電力変換器102,104,106,108は、入力電圧の変化にかかわらず出力電圧を一定に保つように構成された、LRC(Line Regulation Converter)である。
【0015】
電力変換器102は、商用系統114から供給される交流電力を直流電力に変換して直流母線100に出力する。電力変換器104は、交流電源116で生成された交流電力を直流電力に変換して直流母線100に出力する。交流電源116は、蒸気タービン発電機およびガスタービン発電機等の気象条件に依存しない発電設備、ならびに、風力発電設備等の気象条件によって発電出力が変動する発電設備を含み得る。
【0016】
電力変換器106は、直流電源118で生成された直流電力を、一定電圧の直流電力に変換して直流母線100に出力する。直流電源118は、太陽光発電設備および燃料電池等の発電設備を含み得る。電力変換器108は、電力貯蔵装置120に蓄えられた直流電力を、一定電圧の直流電力に変換して直流母線100に出力する。電力貯蔵装置120は、例えば、蓄電池である。
【0017】
直流母線100には、複数の電力変換器110,112がさらに接続されている。電力変換器110,112は、負荷の直近に配置されるPOL(Point Of Load)コンバータである。電力変換器110は、直流母線100から供給される直流電力を交流電力に変換して交流負荷122に供給する。電力変換器112は、直流母線100から供給される直流電力を昇圧または降圧して直流負荷124に供給する。
【0018】
交流電源116、直流電源118および負荷122,124の各々は、直流母線100の電圧とは無関係に直流母線100との間で電力を授受する。その結果、直流配電システムの電力需給バランスが需要過多または供給過多となってしまい、直流母線100の直流電圧を変動させるおそれがある。ただし、需要過多の場合には、供給電力の不足分を商用系統114または電力貯蔵装置120が補うことにより、直流母線100の直流電圧を一定に保つことができる。また、供給過多の場合には、供給電力の余剰分を電力貯蔵装置120に蓄えることにより、直流母線100の直流電圧を一定に保つことができる。
【0019】
図1に示す直流配電システムは、直流マイクログリッドを構成する。マイクログリッドとは、太陽光発電設備や燃料電池等の小規模電源および電力貯蔵装置を一括して制御することにより、基幹系統から独立して運転可能なシステムである。直流マイクログリッドは、マイクログリッドを直流配電としたものである。直流配電システムは、交流配電系統と比較して、同期の問題がなく電圧の制御が容易であるため、気象条件によって発電出力が変動する再生可能エネルギー電源を接続しやすいという利点がある。また、太陽光発電設備、燃料電池および蓄電池といった電源は原理的に直流電力を出力し、かつ、負荷も直流電源によって動作するものが多いため、直流配電システムによれば、電源と負荷との間における直流/交流の電力変換が不要となる分、電力損失を低減することができ、配電の効率向上を期待できる。
【0020】
その一方で、直流配電システムには、定電力負荷による不安定性の問題がある。これは、POLコンバータが負荷への供給電力を厳密に制御するときに、このPOLコンバータが定電力負荷(CPL:Constant Power Load)として振る舞い、負性インピーダンス特性を持つことによる。負性インピーダンスが存在することによって、直流母線100に設けられたフィルタとの相互作用によって発振を起こす可能性がある。
【0021】
(定電力負荷による不安定性)
次に、
図1に示した直流配電システムにおける定電力負荷(CPL)による不安定性について説明する。
【0022】
図2に、
図1に示した直流配電システムを簡単化した解析モデルを示す。
図2において、左側に示される電力変換器106は、LRCであり、直流母線100の直流電圧を制御する。右側に示される電力変換器108は、POLコンバータであり、負荷に必要な電力を供給する。電力変換器108は「第1の電力変換器」の一実施例に対応する。電力変換器106は「第2の電力変換器」の一実施例に対応する。
【0023】
一般に、電圧制御する電力変換器106の出力、または、負荷に電力を供給する電力変換器108の入力には、各電力変換器にて生じるスイッチングリプルが他の電気機器の動作に影響を及ぼさないように、LCフィルタが挿入されている。図中のリアクトルLfおよびコンデンサCfは、LCフィルタを構成している。
【0024】
図3は、
図2に示した解析モデルの等価回路である。
図3に示す等価回路では、電圧制御を行う電力変換器106を直流電圧源Eで表し、負荷に電力を供給する電力変換器108を定電力負荷(CPL)で表している。CPLは、LCフィルタを備えた直流電圧源Eに接続されている。
【0025】
直流母線100にCPLが接続されていない場合、直流電圧源Eに対する入力電圧vLへの伝達関数は、次式(1)で表すことができる。
【0026】
【0027】
ここで、ω
nはLCフィルタの共振角周波数であり、ζは減衰係数であり、次式(2)で示される。すなわち、フィルタコンデンサC
fと並列に接続されたコンダクタンスG
fは、
図2に示した電圧制御を行う電力変換器106の制御安定性を表していると考えることができる。
【0028】
【0029】
一方、CPLは、入力電圧vLの変動にかかわりなく負荷に電力pLを供給する。実際に直流母線100からCPLに供給される電力pLは、入力電流iLおよび入力電圧vLの積(pL=vL・iL)であることから、次式(3)を得る。
【0030】
【0031】
ここで、∂iL/∂vLはCPLの交流コンダクタンスGLを表している。交流コンダクタンスGLは、式(3)から求めることができる。
【0032】
【0033】
式(4)に示されるように、CPLは交流的には負性コンダクタンスとなる。電力pLが大きくなるほど、負性コンダクタンスGLは大きくなることが分かる。この負性コンダクタンスGLは、コンダクタンスGfと並列に接続されていることから、Gf+GLが負になると、減衰係数ζが負となる。これにより、電力変換器106における電圧制御は、LCフィルタの共振周波数で発振し、不安定になることがわかる。
【0034】
このようなCPLによる電圧制御の不安定化を防ぐためには、入力電圧vLが変化しても入力電流iLが変化しないこと、すなわち負荷の定電流化を行えばよいことは明らかである。
【0035】
【0036】
すなわち、式(5)に示すように、CPLの交流コンダクタンスGLを零にできれば、電力変換器106における電圧制御の安定性は負荷状態によらず変化しない。これにより電圧制御系の設計を負荷とは無関係に行うことが可能になる。ここで、電力pL=vL・iLをvLで偏微分し、式(5)を代入すると、次式(6)が得られる。
【0037】
【0038】
式(6)によれば、負荷を定電流化するためには、電力pLを入力電圧vLの変動に合わせて変動させればよいことがわかる。非特許文献1は、この制御方法を双方向チョッパに接続したモータ駆動システムに適用したものである。当該制御方法では、モータ駆動用インバータへの入力電圧vLの変動に応じて電力pLを変動させることで、インバータへの入力電流iLを、入力電圧vLに対して変動しない定電流とする。双方向チョッパから見てインバータを定電流負荷のように振る舞わせることにより、双方向チョッパの電圧制御が不安定化することを防いでいる。
【0039】
(電圧安定化装置)
<動作原理>
上述した、入力電圧vLの変動に合わせて電力pLを変動させるという制御方法は、負荷の特性によっては、負荷の制御特性の悪化を引き起こすことが懸念される。詳細には、入力電圧vLが安定している定常状態においては、電力pLは、負荷が必要とする電力pL*と等しくなるため、負荷の制御特性に問題が生じない。一方、入力電圧vLが変動している過渡状態においては、電力pLが電力pL*とは異なるという事態が生じ得る。そのため、過渡特性が特に重要な負荷に上記の制御方法を適用することは、当該負荷の制御特性を悪化させるおそれがある。
【0040】
負荷の制御特性を悪化させないためには、負荷側の電力変換器がCPLとして動作し、定常状態および過渡状態にかかわらず、負荷に対して電力pL*を供給する必要がある。
【0041】
そこで、本実施の形態に係る直流配電システムでは、
図4に示すように、直流母線100に、負荷側の電力変換器(CPL)と並列に電圧安定化装置(Voltage Stabilizer)10を接続する。電圧安定化装置10は、以下に説明するように、入力電圧v
Lの変動と、直流母線100から負荷側の電力変換器に供給される電力p
L*とに応じた電力Δp
Lを直流母線100に供給するように構成される。具体的には、電圧安定化装置10は、入力電圧v
Lの変動に応じて直流母線100から負荷側の電力変換器および電圧安定化装置10に供給される電力p
Lを変動させるとともに、電力p
Lと電力p
L*との偏差に相当する電力Δp
Lを直流母線100との間で授受するように構成される。すなわち、負荷側の電力変換器および電圧安定化装置10を、全体として定電流負荷として動作させる。
【0042】
図4は、電圧安定化装置10の主回路構成を示す図である。
図4は、
図3に示した直流配電システムの等価回路において、CPLと並列に電圧安定化装置10を追加したものである。
図4に示すように、電圧安定化装置10は、バッファコンデンサCbと、双方向直流/直流変換器12とを備える。
【0043】
バッファコンデンサCbは、電圧安定化装置10と直流母線100との間で過渡的な電力を授受するためのエネルギー蓄積要素として機能する。なお、電圧安定化装置10は、定常的な電力を取り扱わないため、バッファコンデンサCbは、小容量のコンデンサで対応可能である。また、応答性も重要であることから、バッファコンデンサCbの端子間電圧Vbは、CPLの入力電圧vLよりも高く設定する。
【0044】
双方向直流/直流変換器12は、直流母線100とバッファコンデンサCbとの間で電力を授受することが可能に構成されている。双方向直流/直流変換器12から直流母線100に流れる電流(以下、補償電流iCとも称する)を制御することにより、直流母線100とバッファコンデンサCbとの間で電力ΔpLの授受を実現する。
【0045】
具体的には、双方向直流/直流変換器12は、直流母線100からバッファコンデンサCbへ電力を供給する場合には、入力電圧vLを所望の直流電圧に昇圧してバッファコンデンサCbに与える。また、バッファコンデンサCbから直流母線100へ電力を供給する場合には、バッファコンデンサCbの端子間電圧vbを所望の直流電圧に降圧して直流母線100に与える。
【0046】
図4の例では、双方向直流/直流変換器12は、双方向チョッパ回路であって、スイッチング素子Q1,Q2、ダイオードD1,D2、およびリアクトルL
Cを含んで構成される。スイッチング素子Q1,Q2は、バッファコンデンサCbの正極および負極間に直列接続される。スイッチング素子Q1,Q2は、例えば、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の自己消弧型の半導体スイッチング素子である。ダイオードD1,D2は、FWD(Freewheeling Diode)であり、それぞれスイッチング素子Q1,Q2に逆並列に接続される。
【0047】
リアクトルLCは、スイッチング素子Q1,Q2間のノードと直流母線100の直流正母線100pとの間に接続される。バッファコンデンサCbの負極は、直流母線100の直流負母線100nに接続される。
【0048】
直流母線100からバッファコンデンサCbへ電力を供給する場合は、スイッチング素子Q2が所定の周期でオン/オフされ、スイッチング素子Q1はオフされる。スイッチング素子Q2がオンされると、直流正母線100p、リアクトルLC、スイッチング素子Q2、および直流負母線100nの経路で電流が流れ、リアクトルLCに電磁エネルギーが蓄えられる。
【0049】
スイッチング素子Q2がオフされると、直流正母線100pからリアクトルLC、ダイオードD1を介してバッファコンデンサCbに電流が流れ、バッファコンデンサCbが充電される。バッファコンデンサCbの端子間電圧Vbは、リアクトルLCに発生する電圧分だけ入力電圧vLよりも高くなる。各周期におけるスイッチング素子Q2のオン時間とオフ時間との比(デューティ比)を調整することにより、端子間電圧Vbを調整することが可能となっている。
【0050】
バッファコンデンサCbから直流母線100に電力を供給する場合には、スイッチング素子Q1が所定の周期でオン/オフされ、スイッチング素子Q2はオフされる。スイッチング素子Q1がオンされると、バッファコンデンサCbからスイッチング素子Q1、リアクトルLCを介して直流正母線100pに電流が流れるとともに、リアクトルLCに電磁エネルギーが蓄えられる。
【0051】
スイッチング素子Q1がオフされると、リアクトルLC、直流正母線100p、直流負母線100nおよびダイオードD2の経路で電流が流れ、直流母線100に電力が供給される。入力電圧vLは、バッファコンデンサCbの端子間電圧Vbよりも低くなる。各周期におけるスイッチング素子Q1のオン時間とオフ時間との比(デューティ比)を調整することにより、入力電圧vLを調整することが可能となっている。
【0052】
なお、双方向直流/直流変換器12は、双方向チョッパ回路に限定されるものではなく、絶縁型DC/DCコンバータ等を適用することも可能である。
【0053】
<制御構成>
次に、
図4に示した電圧安定化装置10の制御構成について説明する。
【0054】
図5は、電圧安定化装置10の制御構成を示すブロック図である。
図5に示すように、直流配電システムは、電圧検出器6,8、電流検出器7、および制御回路20をさらに備える。
【0055】
電圧検出器6は、バッファコンデンサCbの端子間電圧vbの瞬時値を検出し、その検出値を示す信号を制御回路20に与える。電圧検出器8は、CPLの入力電圧vLの瞬時値を検出し、その検出値を示す信号を制御回路20に与える。
【0056】
電流検出器7は、双方向直流/直流変換器12のインダクタLCと直流正母線100pとの間に流れる補償電流iCを検出し、その検出値を示す信号を制御回路20に与える。
【0057】
制御回路20は、電圧検出器6,8および電流検出器7からの信号に基づいて、双方向直流/直流変換器12を制御する。図示は省略するが、制御回路20は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、および入出力回路を含んで構成される。CPUがメモリに格納されたプログラムを実行することで、後述する制御ブロックを実現することができる。あるいは、制御回路20の少なくとも一部については、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの回路を用いて構成することが可能である。また、制御回路20の少なくとも一部について、アナログ回路によって構成することも可能である。
【0058】
制御回路20は、双方向直流/直流変換器12を用いて補償電流iCを制御することにより、電圧安定化装置10および直流母線100間の電力ΔpLの授受を実現する。具体的には、制御回路20は、LPF(Low Pass Filter)21、減算器22,27、除算器23,25,29、乗算器24、加算器26、およびPI制御器28,31を含んで構成される。
【0059】
LPF21、減算器22、除算器23および乗算器24は、電圧安定化装置10が補償すべき電力ΔpL(以下、補償電力ΔpLとも称する)を演算するための演算回路を構成する。この演算回路において、式(7)に示すように、入力電圧vLは、定常成分VLと変動成分ΔvLとに分離される。なお、定常成分VLは、入力電圧vLをLPF21に入力することによって得ることができる。LPF21のカットオフ周波数は、LCフィルタの共振周波数よりも十分低い。
【0060】
【0061】
実際に直流母線100からCPLおよび電圧安定化装置10に供給される電力pLは、式(7)を用いて、次式(8)のように表すことができる。pL*は直流母線100からCPLに供給される電力であり、負荷が必要とする電力である。
【0062】
【0063】
式(8)から、補償電力ΔpLは次式(9)で与えられる。
【0064】
【0065】
電圧安定化装置10が直流母線100との間で補償電力ΔpLを授受することにより、CPLおよび電圧安定化装置10の組み合わせは、全体として定電流負荷として振る舞うことができる。これにより、CPLがいかなる負荷を吸収しても、直流配電システムにおける直流電圧制御には何ら影響を与えることは無くなるものと考えられる。
【0066】
図5に示す演算回路では、減算器22にて入力電圧v
Lから定常成分V
Lを減算することにより、変動成分Δv
Lが求められる。そして、除算器23および乗算器24により、定常成分V
Lに対する変動成分Δv
Lの比(Δv
L/V
L)を電力p
L*に乗じて、電圧安定化装置10の補償電力Δp
Lが求められる。
【0067】
この補償電力ΔpLを除算器25にて入力電圧vLで除することにより、次式(10)に示すように、補償電流iCpが求められる。なお、本実施の形態において、補償電流iCpは、電圧安定化装置10から直流母線100に電力(電流)が流入する方向を正として定義される。そのため、式(10)では、ΔpL/vLを-1倍している。
【0068】
【0069】
これによれば、電圧安定化装置10が補償電流iCpを直流母線100に注入すればよいことは明らかである。補償電力ΔpLの平均値は理論的には零であるため、バッファコンデンサCbの端子間電圧vbは定常的に変化しないはずである。
【0070】
しかしながら、実際には、双方向直流/直流変換器12にて生じる電力損失等に起因して、バッファコンデンサCbの端子間電圧vbが変動する。そのため、電圧安定化装置10が補償電流iCpに従って電流制御を継続した場合に、端子間電圧vbが過度に上昇する、または、端子間電圧vbが入力電圧vLまで低下することによって、電流制御が実行できなくなる可能性が懸念される。したがって、補償電力ΔpLに従った電流制御と並行して、バッファコンデンサCbの端子間電圧vbを一定に保つための制御(以下、バッファ電圧制御とも称する)が必要となる。
【0071】
図5に示す制御回路20において、減算器30およびPI制御器31は、バッファ電圧制御系を構成する。具体的には、減算器30は、予め定められた端子間電圧指令値V
b*から端子間電圧v
bを減算する。PI制御器31は、減算器30によって算出された、端子間電圧指令値V
b*と端子間電圧v
bとの偏差Δv
bに対して、比例演算および積分演算を行う。なお、PI制御器31に代えて、さらに微分演算を行うPID制御器としてもよいし、他の構成のフィードバック演算器を用いてもよい。PI制御器31は、演算結果を補償電流i
Cvとして出力する。補償電流i
Cvはバッファ電圧制御のための補償電流に相当する。
【0072】
加算器26は、本来の補償電流iCpを-1倍したものに、補償電流iCvを-1倍したものを加算することにより、補償電流指令値iC*を生成する。
【0073】
減算器27は、補償電流指令値iC*から補償電流iCを減算する。PI制御器28は、減算器27によって算出された、補償電流指令値iC*と補償電流iCとの偏差ΔiCに対して、比例演算および積分演算を行う。なお、PI制御器28に代えて、さらに微分演算を行うPID制御器としてもよいし、他の構成のフィードバック演算器を用いてもよい。PI制御器28は、演算結果を、入力電圧vLの指令値である入力電圧指令値vL*として出力する。
【0074】
除算器29は、入力電圧指令値vL*をバッファコンデンサCbの端子間電圧vbで除することにより、双方向直流/直流変換器12のデューティ比Dを求める。制御回路20は、求められたデューティ比Dに従って、双方向直流/直流変換器12におけるスイッチング素子Q1,Q2のオン/オフを制御する。
【0075】
以上説明したように、制御回路20は、電圧安定化装置10および直流母線100間で補償電力ΔpLを授受するように補償電流iCを制御する電流制御系と、バッファコンデンサCbの端子間電圧vbを一定に保つためのバッファ電圧制御系とを含んで構成されている。電流制御系は、過渡特性が重要であるため、十分な過渡応答特性が得られるように、電流制御系を設計する必要がある。これに対して、バッファ電圧制御系は、実際のバッファコンデンサCbの端子間電圧vbが平均的に端子間電圧指令値Vb*と等しくなれば十分であるので、バッファ電圧制御系の応答周波数は、補償電力ΔpLの変動周波数に対して十分低く設定すれば十分である。このようにすると、電流制御とバッファ電圧制御との干渉を防ぐことができる。
【0076】
(実験検証)
次に、直流配電システムにおける電圧安定化装置10の動作を検証した結果について説明する。
【0077】
<実験システム>
図6は、検証に用いた実験システムの主回路構成を示す図である。
図7には、
図6に示した実験システムの各構成要素のパラメータが示される。
【0078】
図6に示す実験システムでは、CPLとして降圧チョッパ回路が使用される。降圧チョッパ回路は、ハーフブリッジ回路およびリアクトルL
Lを含み、入力電圧v
Lを降圧して負荷抵抗R
Lに供給するように構成される。
【0079】
電圧安定化装置10は、バッファコンデンサCbと、双方向直流/直流変換器12とを含む。実験システムでは、双方向直流/直流変換器12に含まれるハーフブリッジ回路と、降圧チョッパ回路に含まれるハーフブリッジ回路とは同じものであり、何れもヒートシンクに実装されている。
【0080】
実験システムにおいては、CPLへの入力電圧vL、すなわちLCフィルタの出力電圧の制御は行っていないため、比較的小電力でも不安定になる条件で実験を行った。また、負荷抵抗RLの抵抗値および定格電力の都合により、直流母線の電圧Eを50Vに設定した。このため、バッファコンデンサCbの端子間電圧指令値Vb*は、電圧制御性を考慮して直流母線の電圧Eの2倍の100Vに設定した。
【0081】
降圧チョッパ回路の電流制御および電圧安定化装置10の電流制御の応答周波数は、LCフィルタの共振周波数(600Hz)よりも高く設定している。バッファコンデンサCbの電圧制御の応答周波数は、LCフィルタの共振周波数よりも低く設定している。
【0082】
実験では、直流母線に電圧安定化装置10を接続しない場合、および、直流母線に電圧安定化装置10を接続した場合の各々について、電力pLを20Wから40Wに急変させたときの、CPLへの入力電圧vL、入力電流iL、および負荷抵抗RLに流れる電流iR(以下、負荷電流iRとも称する)の時間的変化を測定した。
【0083】
<実験結果>
図8は、直流母線に電圧安定化装置10を接続しない場合における実験結果を示す図である。
図8(A)は入力電圧v
Lの波形を示し、
図8(B)は入力電流i
Lの波形を示し、
図8(C)は負荷電流i
Rの波形を示している。
【0084】
t=10msにおいて電力pLが20Wから40Wに急変すると、入力電圧vLおよび入力電流iLに振動が発生し、この振動は時間とともに徐々に増大している。なお、最終的に過電流に対する保護機能が動作することにより、実験システムが停止してしまった。これに対して、負荷電流iRは降圧チョッパ回路による電流制御によって一定電流に保たれている。すなわち、降圧チョッパ回路は、電力pLが変化しても定電力負荷として動作し続けている。
【0085】
このように電圧安定化装置10が接続されない場合には、実験システムは、電力pLが40W以上で不安定になることが確認された。
【0086】
図9は、直流母線に電圧安定化装置10を接続せず、非特許文献1に記載される制御方法を降圧チョッパ回路に適用した場合における実験結果を示す図である。非特許文献1に記載される制御方法は、入力電圧v
Lの変動に応じて電力p
Lを変動させるように降圧チョッパ回路を制御することで負荷を定電流化するものである。
【0087】
図9(A)は入力電圧vLの波形を示し、
図9(B)は入力電流i
Lの波形を示し、
図9(C)は負荷電流i
Rの波形を示している。
図9においても、
図8と同様に、t=10msにて電力p
Lが20Wから40Wに急変している。
【0088】
電力pLが急変したことに応じて入力電圧vLおよび入力電流iLには振動が発生するものの、時間とともに振動が徐々に減衰し、電圧安定化に成功している。しかしながら、当該制御方法では、入力電圧vLの変動に対応して電力pLを変化させているため、電力pLが急変した直後において負荷電流iRの立ち上がりに遅れが生じている。また、電力pLが急変した後の負荷電流iRには、入力電圧vLの変動に伴う脈動が発生している。したがって、負荷が必要としている電力を完全には供給できていないことがわかる。
【0089】
図10は、直流母線に電圧安定化装置10を接続した場合における実験結果を示す図である。
図10(A)は入力電圧v
Lの波形を示し、
図10(B)は入力電流i
Lの波形を示し、
図10(C)は負荷電流i
Rの波形を示している。
図10(D)は補償電流i
Cの波形を示し、
図10(E)はバッファコンデンサC
bの端子間電圧v
bの波形を示している。
図10においても、
図8および
図9と同様に、t=10msにて電力p
Lが20Wから40Wに急変している。
【0090】
電力pLが急変したことに応じて、入力電圧vLおよび入力電流iLには振動が発生している。電圧安定化装置10は、電力pL*と入力電圧vLの定常成分VLおよび変動成分ΔvLとに基づいて補償電力ΔpLを算出し、算出された補償電力ΔpLを直流母線との間で授受するように双方向直流/直流変換器12の電流制御を実行する。そのため、補償電流iCには、電力pLが急変した直後において振動が生じている。補償電流iCの振動は入力電圧vLの安定化に応じて徐々に減衰している。なお、補償電流iCは、入力電流iLの1/10以下である。
【0091】
図10においても、
図9と同様に、電力p
Lの急変後、入力電圧v
Lおよび入力電流i
Lの振動が徐々に減衰しており、電圧安定化に成功している。ただし、
図10では、電圧安定化に成功しているだけでなく、
図9に見られた負荷電流i
Rの立ち上がりの遅れや電力p
Lの脈動を抑制できており、本来負荷が必要としている電力を供給できていることが確認された。
【0092】
また、小容量のバッファコンデンサCbを適用しただけにもかかわらず、入力電流iLの1/10以下の補償電流iCと、数%の端子間電圧vbの脈動が短時間発生するだけで、入力電圧vLの不安定の問題を解消できていることがわかる。
【0093】
図11は、直流母線に電圧安定化装置10を接続した場合において、電力p
Lを120Wから150Wに更に大きくしたときの実験結果を示す図である。
図11(A)は入力電圧v
Lの波形を示し、
図11(B)は入力電流i
Lの波形を示し、
図11(C)は負荷電流i
Rの波形を示している。
図11(D)は補償電流i
Cの波形を示し、
図11(E)はバッファコンデンサC
bの端子間電圧v
bの波形を示している。
【0094】
図11では、t=10msにて電力p
Lが120Wから150Wに急変している。理論的には定電力負荷の電力が大きくなるに従って、入力電圧v
Lの不安定化が拡大すると考えられる。しかしながら、
図11に示すように、電力p
Lが急変した後の入力電圧v
Lの減衰特性は、
図10の場合とほとんど変化がないことがわかる。これは、電圧安定化装置10が定電力負荷を定電流負荷のように見えるように動作できており、結果的に直流母線の電圧制御に影響を与えていないためである。
【0095】
ただし、定電力負荷の電力が大きくなるにつれて、補償電流iCおよびバッファコンデンサCbの端子間電圧vbの脈動幅は増大している。
【0096】
(作用効果)
以上説明したように、本実施の形態に係る直流配電システムは、直流母線に定電力負荷(CPL)と並列に電圧安定化装置10を接続し、定電力負荷に供給する電力pL*と定電流負荷となるための電力pLとの差分の電力ΔpLを電圧安定化装置10に補償させる。これにより、電圧安定化装置10および定電流負荷を全体として定電流負荷として動作させる。
【0097】
本実施の形態によれば、電圧安定化装置10による電力補償によって、定電力負荷に起因する、直流母線の電圧制御の不安定性を改善することができる。また、定電力負荷の制御を変更することで当該定電力負荷を定電流化する、非特許文献1に記載の従来技術と比較して、定電力負荷に供給される電力が変化した場合における過渡特性の悪化を抑制することが可能となる。
【0098】
さらに、電圧安定化装置10および定電力負荷を全体として定電流負荷として動作させることができるため、負荷条件が変化しても、直流配電システムにおける直流電圧の制御性に影響を与えることがない。よって、本実施の形態に係る電圧安定化装置10は、不特定多数の負荷が接続される直流配電システムの電圧安定化に寄与することが期待できる。
【0099】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0100】
6,8 電圧検出器、7 電流検出器、10 電圧安定化装置、12 双方向直流/直流変換器、20 制御回路、21 LPF、22,27,30 減算器、23,25,29 除算器、24 乗算器、26 加算器、28,31 PI制御器、100 直流母線、100p 直流正母線、100n 直流負母線、102~112 電力変換器、114 商用系統、116 交流電源、118 直流電源、120 電力貯蔵装置、122 交流負荷、124 直流負荷、CPL 定電力負荷、Q1,Q2 スイッチング素子、D1,D2 ダイオード、Cb バッファコンデンサ、Lc リアクトル。
【要約】
直流配電システムは、直流電力を配電する直流母線(100)と、第1の電力変換器(CPL)と、電圧安定化装置(10)とを備える。第1の電力変換器(CPL)は、直流母線(100)と負荷との間に接続され、直流母線(100)からの直流電力を負荷が必要とする電力に変換する。電圧安定化装置(10)は、直流母線(100)に、第1の電力変換器(CPL)と並列に接続される。電圧安定化装置(10)は、直流母線(100)から第1の電力変換器(CPL)に入力される入力電圧の変動と、直流母線(100)から第1の電力変換器(CPL)に供給される直流電力とに応じた電力を直流母線(100)に供給する。