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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
   D06F 33/48 20200101AFI20240417BHJP
   D06F 33/34 20200101ALI20240417BHJP
   D06F 33/54 20200101ALI20240417BHJP
   D06F 33/76 20200101ALI20240417BHJP
   D06F 37/12 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
D06F33/48
D06F33/34
D06F33/54
D06F33/76
D06F37/12 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019201830
(22)【出願日】2019-11-06
(65)【公開番号】P2021074105
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】512128645
【氏名又は名称】青島海爾洗衣机有限公司
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO HAIER WASHING MACHINE CO.,LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137486
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 雅直
(72)【発明者】
【氏名】川口 智也
(72)【発明者】
【氏名】永井 孝之
【審査官】新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-056025(JP,A)
【文献】特開2019-092708(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 33/30-33/76
D06F 37/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外槽内に配置され、パルセータが底部に配置された脱水槽と、
前記脱水槽の内周面に対して周方向に等間隔で配置されるとともに、前記底部近傍で開口し且つ上端部に循環水口が形成された3つ以上の通水管部と、
前記脱水槽の上端部に固定され、前記通水管部の上端部とそれぞれ接続された3つ以上の環状の導水樋が互いに径方向に重層されてなる受水リングユニットと、
前記外槽の上端部に固定され、各導水樋に個別に調整水を注入可能なノズルユニットと、
前記外槽の振動を検出する加速度検出手段と、
前記脱水槽の回転に応じてパルス信号を発信する位置検出装置と、
前記脱水槽内の偏芯量及び偏芯位置を検出する偏芯検出手段と、
脱水工程において、偏芯量が所定の偏芯量閾値に達したとき、偏芯位置に対応する前記通水管部に注水するように前記ノズルユニットを制御する制御手段とを備え、
前記ノズルユニットは、各導水樋の上方であり且つ各導水樋の外部に配置された3つ以上の注水ノズルを有しており、
前記制御手段は、脱水工程において、前記通水管部に注水するように前記ノズルユニットの制御を開始した後、前記偏芯検出手段により検出された前記偏芯量が所定の加速閾値以下になった場合に、前記通水管部への注水を停止するように前記ノズルユニットを制御するものであり、
前記偏芯位置が前記脱水槽の上部または高さ方向中央部にある場合の前記加速閾値は、前記偏芯位置が前記脱水槽の下部にある場合の前記加速閾値よりも小さいことを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
外槽内に配置され、パルセータが底部に配置された脱水槽と、
前記脱水槽の内周面に対して周方向に等間隔で配置されるとともに、前記底部近傍で開口し且つ上端部に循環水口が形成された3つ以上の通水管部と、
前記脱水槽の上端部に固定され、前記通水管部の上端部とそれぞれ接続された3つ以上の環状の導水樋が互いに径方向に重層されてなる受水リングユニットと、
前記外槽の上端部に固定され、各導水樋に個別に調整水を注入可能なノズルユニットと、
前記外槽の振動を検出する加速度検出手段と、
前記脱水槽の回転に応じてパルス信号を発信する位置検出装置と、
前記脱水槽内の偏芯量及び偏芯位置を検出する偏芯検出手段と、
脱水工程において、偏芯量が所定の偏芯量閾値に達したとき、偏芯位置に対応する前記通水管部に注水するように前記ノズルユニットを制御する制御手段とを備え、
前記脱水槽の回転数が共振回転数より大きい状態において、前記偏芯位置が前記脱水槽の上部または高さ方向中央部にある場合の前記偏芯量閾値は、前記偏芯位置が前記脱水槽の下部にある場合の前記偏芯量閾値よりも小さいことを特徴とする洗濯機。
【請求項3】
外槽内に配置され、パルセータが底部に配置された脱水槽と、
前記脱水槽の内周面に対して周方向に等間隔で配置されるとともに、前記底部近傍で開口し且つ上端部に循環水口が形成された3つ以上の通水管部と、
前記脱水槽の上端部に固定され、前記通水管部の上端部とそれぞれ接続された3つ以上の環状の導水樋が互いに径方向に重層されてなる受水リングユニットと、
前記外槽の上端部に固定され、各導水樋に個別に調整水を注入可能なノズルユニットと、
前記外槽の振動を検出する加速度検出手段と、
前記脱水槽の回転に応じてパルス信号を発信する位置検出装置と、
前記脱水槽内の偏芯量及び偏芯位置を検出する偏芯検出手段と、
脱水工程において、偏芯量が所定の偏芯量閾値に達したとき、偏芯位置に対応する前記通水管部に注水するように前記ノズルユニットを制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、脱水工程において、前記脱水槽の回転数が所定の注水可能上限回転数以下の場合に限り、偏芯位置に対応する前記通水管部に注水するように前記ノズルユニットを制御するものであり、
前記偏芯位置が前記脱水槽の上部または高さ方向中央部にある場合の前記注水可能上限回転数は、前記偏芯位置が前記脱水槽の下部にある場合の前記注水可能上限回転数よりも小さいことを特徴とする洗濯機。
【請求項4】
前記脱水槽の回転数に応じて前記通水管部へ注水可能な注水制限量が変化する場合において、
前記制御手段は、脱水工程において、前記通水管部への注水量が前記脱水槽の回転数に応じた前記注水制限量を超えないように、前記ノズルユニットを制御することを特徴とする請求項1~の何れかに記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱水槽の回転を継続したまま脱水槽のアンバランスを解消して、脱水時における洗濯物の偏心による振動や騒音を抑制可能な洗濯機に関する。
【0002】
一般家庭あるいはコインランドリーなどに設置される一般的な洗濯機は、脱水時に脱水槽内で洗濯物が偏って振動や騒音が発生する。また、そのときの洗濯物の偏りが大きい場合、回転時の脱水槽の振幅が大きくなり、大きな振動となるので脱水運転を開始することができない。
【0003】
そこで、特許文献1には、脱水時に洗濯槽内の衣類のアンバランス量およびアンバランス位置を検出し、アンバランスがある場合には、脱水槽の周方向に均等に複数設けられたバッフルへの注水を行うことにより脱水槽のアンバランス状態を積極的に解消しようとする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-56025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の洗濯機では、脱水槽の内周面の上端部に固定された受水リングユニットを介してバッフルへの注水が行われる。受水リングユニットは、径方向に三層重層された3つの導水樋を有し、3つの導水樋には、それぞれ、何れかのバッフルに調整水を流せる通水経路が形成される。
【0006】
脱水槽は、外槽内に配置されており、外槽の上端部には、各導水樋に個別に調整水を注入可能なノズルユニットが固定されている。ノズルユニットは、3つの導水樋の上方に配置された3本の注水ノズルを有している。各注水ノズルは各導水樋に調整水を注入可能な位置に配置されるように、洗濯機が停止された状態で位置合わせが行われている。
【0007】
脱水槽内に偏芯がない場合は、脱水槽と外槽とが同期して回転するため、各注水ノズルから各導水樋に調整水が適正に注入される。これに対して、脱水槽内に偏芯がある場合は、脱水槽と外槽とが同期して回転しなくなるため、各注水ノズルから各導水樋に調整水が適正に注入されなくなり、各注水ノズルからの調整水が誤った導水樋に対して注水される問題がある。その場合、脱水槽のアンバランス状態を解消する制御を適正に行うことができない。
【0008】
特に、脱水槽内の上部または高さ方向中央部に偏芯がある場合及び偏芯位置が脱水槽の上部と下部とに相対するように位置づけられる対向偏芯状態(上下方向について2つの偏芯位置が反対側に配置され、且つ、水平方向について2つの偏芯位置が反対方向にずれている状態)である場合に、脱水槽の上端部にある加振力により外槽の上端部の振れが大きくなり、各注水ノズルからの調整水が誤った導水樋に対して注水される問題が発生し易い。また、縦型洗濯機では、外槽の強度が比較的小さいため、脱水槽の回転数が比較的小さい回転数で回転するときに、外槽が共振して、外槽の上端部の振れが大きくなる。
【0009】
そこで、本発明は、脱水工程時において洗濯槽内に洗濯物の偏在があっても、脱水槽のアンバランス状態を解消する制御をより適正に行うことができる洗濯機を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る洗濯機は、外槽内に配置され、パルセータが底部に配置された脱水槽と、前記脱水槽の内周面に対して周方向に等間隔で配置されるとともに、前記底部近傍で開口し且つ上端部に循環水口が形成された3つ以上の通水管部と、前記脱水槽の上端部に固定され、前記通水管部の上端部とそれぞれ接続された3つ以上の環状の導水樋が互いに径方向に重層されてなる受水リングユニットと、前記外槽の上端部に固定され、各導水樋に個別に調整水を注入可能なノズルユニットと、前記外槽の振動を検出する加速度検出手段と、前記脱水槽の回転に応じてパルス信号を発信する位置検出装置と、前記脱水槽内の偏芯量及び偏芯位置を検出する偏芯検出手段と、脱水工程において、偏芯量が所定の偏芯量閾値に達したとき、偏芯位置に対応する前記通水管部に注水するように前記ノズルユニットを制御する制御手段とを備え、前記ノズルユニットは、各導水樋の上方であり且つ各導水樋の外部に配置された3つ以上の注水ノズルを有しており、前記制御手段は、脱水工程において、前記通水管部に注水するように前記ノズルユニットの制御を開始した後、前記偏芯検出手段により検出された前記偏芯量が所定の加速閾値以下になった場合に、前記通水管部への注水を停止するように前記ノズルユニットを制御するものであり、前記偏芯位置が前記脱水槽の上部または高さ方向中央部にある場合の前記加速閾値は、前記偏芯位置が前記脱水槽の下部にある場合の前記加速閾値よりも小さいことを特徴とする。
【0011】
なお、本発明において、ノズルユニットに対して偏芯位置が脱水槽の上部または高さ方向中央部にある場合と脱水槽の下部にある場合とで異なる制御を行うとは、例えば、ノズルユニットにより注水制御を行う際に使用される種々の閾値の少なくとも1つが、偏芯位置が脱水槽の上部または高さ方向中央部にある場合と脱水槽の下部にある場合とで異なることを意味する。
【0013】
本発明に係る洗濯機は、外槽内に配置され、パルセータが底部に配置された脱水槽と、前記脱水槽の内周面に対して周方向に等間隔で配置されるとともに、前記底部近傍で開口し且つ上端部に循環水口が形成された3つ以上の通水管部と、前記脱水槽の上端部に固定され、前記通水管部の上端部とそれぞれ接続された3つ以上の環状の導水樋が互いに径方向に重層されてなる受水リングユニットと、前記外槽の上端部に固定され、各導水樋に個別に調整水を注入可能なノズルユニットと、前記外槽の振動を検出する加速度検出手段と、前記脱水槽の回転に応じてパルス信号を発信する位置検出装置と、前記脱水槽内の偏芯量及び偏芯位置を検出する偏芯検出手段と、脱水工程において、偏芯量が所定の偏芯量閾値に達したとき、偏芯位置に対応する前記通水管部に注水するように前記ノズルユニットを制御する制御手段とを備え、前記脱水槽の回転数が共振回転数より大きい状態において、前記偏芯位置が前記脱水槽の上部または高さ方向中央部にある場合の前記偏芯量閾値は、前記偏芯位置が前記脱水槽の下部にある場合の前記偏芯量閾値よりも小さいことを特徴とする。
【0014】
本発明に係る洗濯機は、外槽内に配置され、パルセータが底部に配置された脱水槽と、前記脱水槽の内周面に対して周方向に等間隔で配置されるとともに、前記底部近傍で開口し且つ上端部に循環水口が形成された3つ以上の通水管部と、前記脱水槽の上端部に固定され、前記通水管部の上端部とそれぞれ接続された3つ以上の環状の導水樋が互いに径方向に重層されてなる受水リングユニットと、前記外槽の上端部に固定され、各導水樋に個別に調整水を注入可能なノズルユニットと、前記外槽の振動を検出する加速度検出手段と、前記脱水槽の回転に応じてパルス信号を発信する位置検出装置と、前記脱水槽内の偏芯量及び偏芯位置を検出する偏芯検出手段と、脱水工程において、偏芯量が所定の偏芯量閾値に達したとき、偏芯位置に対応する前記通水管部に注水するように前記ノズルユニットを制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、脱水工程において、前記脱水槽の回転数が所定の注水可能上限回転数以下の場合に限り、偏芯位置に対応する前記通水管部に注水するように前記ノズルユニットを制御するものであり、前記偏芯位置が前記脱水槽の上部または高さ方向中央部にある場合の前記注水可能上限回転数は、前記偏芯位置が前記脱水槽の下部にある場合の前記注水可能上限回転数よりも小さいことを特徴とする。
【0015】
本発明に係る洗濯機において、前記脱水槽の回転数に応じて前記通水管部へ注水可能な注水制限量が変化する場合において、前記制御手段は、脱水工程において、前記通水管部への注水量が前記脱水槽の回転数に応じた前記注水制限量を超えないように、前記ノズルユニットを制御することが好適である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、脱水槽内の偏芯位置が脱水槽の上部または高さ方向中央部にある場合、及び、偏芯位置が脱水槽の下部にある場合のそれぞれにおいて、ノズルユニットのノズルと導水桶の位置関係が変化しやすい運転状態が考えられるが、脱水槽内の偏芯位置に応じて互いに異なる制御を行うことにより、ノズルと導水桶の位置関係が変化するのが抑制される。これにより、ノズルユニットからの調整水が誤った導水樋に注水されるのを防止して、脱水槽2のアンバランス状態を解消する制御を適正に行うことができる。
【0017】
本発明によれば、脱水工程の脱水槽の回転数が共振回転数より小さい状態において、偏芯位置が脱水槽の下部にある場合、注水量を多くしすぎると、脱水槽の回転数が上昇して共振回転数より大きくなった後、対向偏芯状態となり振動が大きくなる可能性があるが、加速閾値が比較的大きい値に設定されているため、通水管部への注水が開始された後、注水量が多くなりすぎない間に注水が早く終了するように通水管部への注水が停止される。これにより、ノズルと導水桶の位置関係が変化するのが抑制されて、ノズルユニットからの調整水が誤った導水樋に注水されるのを防止できる。
【0018】
また、脱水工程の脱水槽の回転数が共振回転数以上の状態において、偏芯位置が脱水槽の上部または高さ方向中央部にある場合、脱水槽の上端部の振動が大きく、ノズルと導水桶の位置関係が変化しやすいが、加速閾値が比較的小さい値に設定されているため、通水管部への注水が開始された後、脱水槽の振動が比較的小さくなるまで、通水管部への注水が継続される。これにより、ノズルと導水桶の位置関係が変化するのが抑制されて、ノズルユニットからの調整水が誤った導水樋に注水されるのを防止できる。
【0019】
本発明によれば、偏芯位置が脱水槽の上部または高さ方向中央部にある場合、ノズルユニットのノズルと導水桶の位置関係が変化しやすいが、偏芯量閾値が比較的小さく設定されているため、ノズルと導水桶の位置関係が変化しにくい早い段階で注水処理を開始することができる。これにより、ノズルと導水桶の位置関係が変化するのが抑制されて、ノズルユニットからの調整水が誤った導水樋に注水されるのを防止できる。
【0020】
本発明によれば、偏芯位置が脱水槽の上部または高さ方向中央部にある場合、脱水槽の回転数が高くなり外槽の共振回転数に近づいたときに、外槽が共振して大きく振動することにより、ノズルと導水桶の位置関係が変化しやすいが、注水可能上限回転数が比較的小さく設定されているため、脱水槽の回転数が外槽の共振回転数に近づかない低い段階で、通水管部への注水が停止される。これにより、ノズルと導水桶の位置関係が変化するのが抑制されて、ノズルユニットからの調整水が誤った導水樋に注水されるのを防止できる。
【0021】
本発明によれば、脱水工程において、通水管部への注水量が脱水槽の回転数に応じた注水制限量を超えないようにノズルユニットが制御されるため、ノズルユニットから調整水が注水制限量を超えて注水されて、調整水が無駄になるのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係る洗濯機1の外観を示す斜視図である。
図2図1の洗濯機1の構成を示す模式図である。
図3図1の洗濯機1の一部を上方から見た平面図である。
図4図1の洗濯機1が有する脱水槽2の横断面図である。
図5図1の洗濯機1の部分的な縦断面図である。
図6図6(a)は、図3のa-a線における断面図であり、図6(b)は、図3のa-a線における断面図であり、図6(c)は、図3のa-a線における断面図である。
図7図7(a)は、脱水槽2の内周面2a1に形成されるバッフル8を内周側から見た図であり、図7(b)は、図7(a)のa-a線における断面図である。
図8図8(a)は、水面に対して作用する重力及び遠心力の合力を示す図であり、図8(b)は、脱水槽2の回転数を種々変化させたときの水面角度の変化を示している。
図9図1の洗濯機1の電気系ブロック図である。
図10】偏芯量閾値(ma)を説明する図である。
図11】注水可能上限回転数(Na)を説明する図である。
図12】加速閾値(mc)を説明する図である。
図13図1の洗濯機1の脱水工程での制御の流れを説明するための図である。
図14】開口させる給水バルブ31a,31b,31cを示すパラメータ表である。
図15】脱水槽2内の偏芯位置を示す模式的な図である。
図16図1の洗濯機1の脱水工程での制御の流れを示すフローチャートである。
図17】偏芯位置調整処理を示すフローチャートである。
図18】加速度センサ56から得られた加速度と、近接スイッチ55から得られたパルス信号psとの関係を示したグラフである。
図19】偏芯量・偏芯位置測定の処理を示すフローチャートである。
図20】立上げ判定の処理を示すフローチャートである。
図21】脱水本工程を示すフローチャートである。
図22図1の洗濯機1の脱水工程の概要を示すグラフである。
図23】注水工程の処理を示すフローチャートである。
図24】脱水槽2内のアンバランス状態を示す模式的な図である。
図25】各アンバランス状態での振動の変化を示すデータである。
図26】本発明の実施形態に係る洗濯機1の脱水工程の変形例の手順を示すフローチャートである。
図27】本発明の実施形態に係る洗濯機1の脱水工程の変形例の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態の洗濯機1について、図に基づいて詳細に説明する。
【0024】
図1は本発明の実施形態に係る縦型の洗濯機(以下、「洗濯機」と称す。)1の外観を示す斜視図である。図2は、本実施形態の洗濯機1の構成を示す模式図である。図3は、本実施形態の洗濯機1の一部を上方から見た平面図である。図4は、洗濯機1が有する脱水槽2の横断面図である。図5は、本実施形態の洗濯機1の部分的な縦断面図である。
【0025】
本実施形態の洗濯機1は、洗濯機本体1aと、脱水槽2と、外槽3と、受水リングユニット5と、ノズルユニット30と、駆動部50と、制御手段60(図9参照)とを備える。
【0026】
図1に示す洗濯機本体1aは、略直方体形状である。洗濯機本体1aの上面には、脱水槽2に対して洗濯物を出し入れするための開口11が形成されるとともに、この開口11を開閉可能な開閉蓋11aが取り付けられる。
【0027】
外槽3は、洗濯機本体1aの内部に配置された有底筒状の部材であり、内部に洗濯水を貯留可能である。図2に示すように、外槽3の外周面3aには、左右方向、上下方向及び前後方向の3方向の加速度を検出可能な加速度センサ56が取り付けられる。
【0028】
脱水槽2は、外槽3内において外槽3と同軸に配置されるとともに、回転自在に支持される有底筒状の部材である。脱水槽2は、内部に洗濯物を収容可能で、その壁面2aに多数の通水孔を有する。
【0029】
このような脱水槽2の底部2c中央には、パルセータ(撹拌翼)4が回転自在に配置される。図2に示すように、パルセータ4は、略円盤形状のパルセータ本体4aと、パルセータ本体4aの上面に形成される複数の上羽根部4bと、パルセータ本体4aの下面に形成される複数の下羽根部4cとを有する。このようなパルセータ4は、外槽3内に貯留された洗濯水を撹拌して水流を発生させる。
【0030】
図4に示すように、脱水槽2の内周面2a1には、周方向に等間隔(等角度)で通水管部としてのバッフル(注水管)8が3つ設けられる。各バッフル8は、脱水槽2の底部2cから上端部に亘って上下方向に延び、脱水槽2の内周面2a1から軸線S1に向けて突出して形成される。また、各バッフル8は、中空状であり、横断面形状が円弧状に形成される。このように、バッフル8の形状が、脱水槽2の軸線S1への突出が小さく、脱水槽2の周方向に沿って広がる形状であることで、脱水槽2の収容空間が狭くなることを抑制できる。
【0031】
図2に示すように、このようなバッフル8の上端部には、横長の循環水口80が形成される。また、バッフル8の下端部には、脱水槽2の底部2c近傍、より具体的にはパルセータ本体4aよりも下方で開口する開口部81が形成される。
【0032】
そのため、排水バルブ10a(図2参照)が閉じられて外槽3内に洗濯水が貯められた状態にある洗い工程では、図2において矢印で示すように、パルセータ4の下羽根部4cで撹拌された洗濯水が開口部81より浸入してバッフル8内をかけあがり、循環水口80より吐出され、衣類がシャワー洗いされる。またこの動作が繰り返されることで、洗濯水が脱水槽2内で循環する。すなわち、バッフル8は、洗濯水の循環機能を有する。
【0033】
バッフル8内の上端近傍には、循環水口80から脱水槽2の内周面2a1の近接位置まで延びる仕切片8aが設けられる。仕切片8aは、循環水口80の上端縁から半径方向外側に向かって延びて、その後、下方に湾曲する。このような仕切片8aと脱水槽2の内周面2a1との間には隙間8b(図2参照)が形成されており、受水リングユニット5から供給される調整水は隙間8bを介して下方に流れ込む。
【0034】
受水リングユニット5は、図3及び図5に示すように、上方に向けて開放された環状の導水樋5a,5b,5cが脱水槽2の軸線S1に向けて径方向に三層重層されて構成されるもので、図2に示すように脱水槽2の内周面2a1の上端部に固定される。導水樋5a,5b,5cは、バッフル8と同数だけ設けられ、単独で何れかのバッフル8に調整水を流せるように形成される。
【0035】
導水樋5a,5b,5cの上端は、図5に示すように、略同一の高さに配置されており、導水樋5a,5b,5cの深さは互いに異なっている。すなわち、導水樋5a,5b,5cは、外周側から内周側に向かって、導水樋5aの深さn、導水樋5bの深さn、導水樋5cの深さnの順に深くなる。そのため、導水樋5a,5b,5cの底面5ta,5tb,5tcは、互いに異なる高さに配置されており、導水樋5aの底面5taが最も高い位置に配置され、外周側から内周側に向かって、導水樋5bの底面5tb、導水樋5cの底面5tcの順に低い位置に配置される。
【0036】
導水樋5a,5b,5cは、外周側から内周側に向かって、導水樋5aの幅(径方向長さ)ta1、突出部6bの幅(径方向長さ)tb1、突出部6cの幅(径方向長さ)tc1の順に短くなる。
【0037】
導水樋5a,5b,5cの上端には、図5に示すように、その外周壁から径方向内側に向かって突出する突出部6a,6b,6cをそれぞれ有している。突出部6a,6b,6cは、導水樋5a,5b,5cの全周にわたって形成される。突出部6a,6b,6cの径方向長さは、全周にわたって同一であり、外周側から内周側に向かって、突出部6aの径方向長さta2、突出部6bの径方向長さtb2、突出部6cの径方向長さtc2の順に短くなる。
【0038】
脱水槽2が回転しているときに導水樋5a,5b,5c内に調整水を注水すると、調整水は遠心力により導水樋5a,5b,5cの外周壁に貼りつくようになる。そのとき、導水樋5a,5b,5cの上端に突出部6a,6b,6cが形成されているため、調整水が導水樋5a,5b,5c内から外部に飛び散るのが防止される。
【0039】
導水樋5cの突出部6cは最も短く形成されているが、導水樋5cの深さが最も深いため、導水樋5cの突出部6cの下方において調整水は外周壁の広い範囲に薄い厚さで貼りつく。これに対して、導水樋5a、5bの突出部6a、6bは、導水樋5cの突出部6cと比べて長く形成されているが、導水樋5a、5bの深さが、導水樋5cより深くないため、導水樋5a、5bの突出部6a、6bの下方において、調整水は外周壁の小さい範囲に厚い厚さで貼りつく。その結果、導水樋5a,5b,5cのいずれにおいても略同一量の調整水が導水樋5a,5b,5cの内部に保持した状態で脱水槽2は回転可能である。
【0040】
なお、図5に示すように、導水樋5a,5b,5cの上端に突出部6a,6b,6cが形成されているため、導水樋5a,5b,5cの上端には、突出部6a,6b,6cの径方向内側にそれぞれ配置される環状の開口部35a,35b,35cが形成される。そのため、注水ノズル30a,30b,30cは、導水樋5a,5b,5cの上端に形成された開口部35a,35b,35cから、導水樋5a,5b,5cに対して調整水を注水する。本実施形態では、導水樋5a,5b,5cの上端に形成された開口部35a,35b,35cの幅(径方向長さ)は、同一に形成されている。開口部35a,35b,35cの幅は、例えば注水ノズル30a,30b,30cの径を考慮して、注水ノズル30a,30b,30cからの調整水が導水樋5a,5b,5c内に適正に注水されるように設定されている。
【0041】
導水樋5aの下端部には、図3及び図6(a)に示すように、径方向外側に向かって開口する開口5Aが形成されており、導水樋5aとバッフル8の内部とは連通している。
【0042】
また、導水樋5bの下端部には、図3及び図6(b)に示すように、径方向外側に向かって開口する開口5Bが形成されており、導水樋5aの下方を通過する通水経路5Baを介して、導水樋5bとバッフル8の内部とは連通している。通水経路5Baは、開口5Bから水平方向且つ径方向外側に向かって延びている。
【0043】
また、導水樋5cの下端部には、図3及び図6(c)に示すように、径方向外側に向かって開口する開口5Cが形成されており、導水樋5a及び導水樋5bの下方を通過する通水経路5Caを介して、導水樋5cとバッフル8の内部とは連通している。通水経路5Caは、開口5Cから水平方向且つ径方向外側に向かって延びている。
【0044】
受水リングユニット5の外周側には、環状の流体バランサ12が取り付けられている。流体バランサ12は、既知の流体バランサと同様のものである。
【0045】
図7(a)は、脱水槽2の内周面2a1に形成されるバッフル8を内周側から見た図であり、図7(b)は、図7(a)のa-a線における断面図である。
【0046】
バッフル8の内周側壁の下端近傍には、図7(b)に示すように、径方向内側に突出した突出壁部82を有している。すなわち、バッフル8の内周側壁の一部が径方向内側に向かって突出している。バッフル8の内部には、図7(a)及び図7(b)に示すように、その外周側壁から径方向内側に向かって突出する水受け板85が形成されている。水受け板85は、突出壁部82と同一高さに配置されており、水受け板85の径方向内側端部85aは、突出壁部82の内部に配置される。水受け板85の径方向内側端部85aと突出壁部82の先端内周面との間には、空隙が形成されており、貯水空間8aに供給された調整水は、その空隙を介して排水空間8bに流れ込む。
【0047】
バッフル8の内部空間は、水受け板85が配置された突出壁部82より上方に配置される貯水空間8aと、突出壁部82より下方に配置される排水空間8bとを有している。貯水空間8aは、導水樋5a,5b,5cからの調整水を貯水する空間であり、排水空間8bは、貯水空間8aから流れ出た調整水を排水する空間である。図7(a)及び図7(b)に示すように、貯水空間8aの径方向厚さと排水空間8bの径方向厚さとは略同一であるのに対し、排水空間8bの上下方向長さは貯水空間8aの上下方向長さより短く、且つ、排水空間8bの周方向長さは貯水空間8aの周方向長さより短い。そのため、貯水空間8aの体積は、排水空間8bの体積より大きい。
【0048】
バッフル8の貯水空間8aに注水された調整水は、突出壁部82内に配置された水受け板85により下方に流れないように保持され、水受け板85の上面に沿って突出壁部82内を径方向内側に向かって流れる。脱水槽2が回転した状態でバッフル8の貯水空間8aに調整水が注水されると、調整水は遠心力により導水樋5a,5b,5cの外周壁に貼りつくため、調整水は貯水空間8a内に保持される。
【0049】
図8(a)は、導水樋内の水面に対して作用する重力及び遠心力の合力を示す図である。図8において、水面の水平線に対する角度θ(水面角度θ)である場合、水面に作用する重力はmg、遠心力はmrωであり、tanθ=mrω/mgである。
【0050】
図8(b)は、脱水槽2の回転数を種々変化させたときの水面角度の変化を示している。但し、脱水槽2の半径を0.24(m)としている。例えば、脱水槽2の回転数が、100rpmの場合、その角速度ωは、10.5である。そのとき、rωの値は、26.3であり、重力加速度gを9.8m/sとすると、水面角度θは、69.58度となる。
【0051】
脱水槽2が回転しているときの貯水空間内の調整水の水面角度θは、脱水槽2の回転数に応じて変化する。すなわち、図8(b)に示すように、脱水槽2の回転数が小さい場合、遠心力が小さいため、水面角度θは比較的小さくなり、脱水槽2の回転数が大きい場合、遠心力が大きいため、水面角度θは比較的大きくなる。
【0052】
バッフル8へ注水される調整水は、脱水槽2の各回転数に応じた調整水の注水制限量(注水可能な上限量)までバッフル8内において水受け板85により維持可能であるが、その注水制限量を超えると、超えた分の調整水は、水受け板85の径方向内側端部85aと突出壁部82の先端内周面との間に形成される空隙を介して排水される。
【0053】
上述したバッフル8内において水受け板85により維持可能な調整水の注水制限量は、脱水槽2の各回転数に応じた水面角度θにより変化する。すなわち、脱水槽2の回転数が小さい場合、水面角度θは比較的小さいため調整水の注水制限量は少なくなり、脱水槽2の回転数が大きい場合、水面角度θは比較的大きいため調整水の注水制限量は多くなる。本実施形態のバッフル8では、脱水槽2の回転数に応じてバッフル8へ注水可能な注水制限量が変化する。
【0054】
本実施形態において、水受け板85の位置(上下方向高さ)及び径方向長さは、脱水槽2の回転数が共振回転数を超えるときに、水受け板85より上方に貯水される調整水の重心が、脱水槽2の高さ方向中央と略同一高さ(脱水槽2の高さ方向中央部)にあるように設定される。
【0055】
例えば、図7(b)には、共振回転数である200rpmの場合の水面を示しており、そのときにバッフル8の水受け板85より上方に貯水される調整水の重心が、脱水槽2の高さ方向中央の近傍にあるように設定される。なお、図7(b)では、バッフル8の水受け板85より上方に貯水される調整水の水量を導出する際、調整水は貯水空間8aよりも径方向内側には貯水されないため、その水量は差し引かれる。
【0056】
ノズルユニット30は、このような導水樋5a,5b,5cに個別に調整水を注水するものである。ノズルユニット30は、導水樋5a,5b,5cの上方に配置された3本の注水ノズル30a,30b,30cと、これらの注水ノズル30a,30b,30cにそれぞれ接続される給水バルブ31a,31b,31cとを有する。注水ノズル30a,30b,30cは、導水樋5a,5b,5cと同数だけ設けられ、それぞれ別々の導水樋5a,5b,5cに注水可能な位置に、外槽3の上端部に取り付けられる。なお、本実施形態では調整水として水道水が用いられる。また、給水バルブ31a,31b,31cとしては、方向切換給水バルブを採用することも可能である。
【0057】
このような構成であると、排水バルブ10aが開かれて外槽3内の洗濯水が排水口10より排出される脱水工程では、ノズルユニット30の何れかの注水ノズル30a,30b,30cから受水リングユニット5の導水樋5a,5b,5c内に注入された調整水は、バッフル8内に流れ込む。
【0058】
例えば、注水ノズル30aから調整水が注入される場合には、図6(a)に矢印で示すように、導水樋5aから開口5Aを介してバッフル8aに調整水が流れ込む。同様に、注水ノズル30bから調整水が注入される場合には、図6(b)に矢印で示すように、導水樋5bから通水経路5Ba及び開口5Bを介してバッフル8bに調整水が流れ込む。注水ノズル30cから調整水が注入される場合には、図6(c)に矢印で示すように、導水樋5cから通水経路5Ca及び開口5Cを介してバッフル8cに調整水が流れ込む。
【0059】
バッフル8内に流れ込んだ調整水は、脱水槽2が高速回転状態にあると、遠心力により脱水槽2の内周面2a1にはりついて滞留する。これにより、バッフル8の重量が増加し、脱水槽2のバランスが変化する。このようにバッフル8は、遠心力により調整水を貯めることが可能なポケットバッフル構造である。そして、脱水工程が終了に近づいて脱水槽2の回転速度が低下すると、バッフル8内の遠心力が次第に減衰し、調整水が重力によって開口部81から流れ出て、排水管10を介して外槽3外へ排水される。このとき、調整水は開口部81を介してパルセータ本体4aの下方に流れ込む。そのため、調整水は、パルセータ本体4aよりも上方にある衣類を濡らすことなく排水される。
【0060】
図2に示す駆動部50は、モータ51によりプーリー52およびベルト53を回転させるとともに、脱水槽2の底部2cに向けて延出する駆動軸54を回転させて、脱水槽2やパルセータ4に駆動力を与え、脱水槽2やパルセータ4を回転させる。洗濯機1は、洗い工程では主としてパルセータ4のみを回転させ、脱水工程では脱水槽2とパルセータ4とを一体的に高速で回転させる。また、一方のプーリー53の近傍には、プーリー52に形成されたマーク52aの通過を検出できる近接スイッチ55が設けられる。
【0061】
図9は、本実施形態の洗濯機1の電気的構成を示すブロック図である。洗濯機1の動作は、マイクロコンピュータを含む制御手段60によって制御される。制御手段60は、システム全体の制御を司る中央制御部(CPU)61を備え、この制御手段60にメモリ62を接続する。制御手段60により、メモリ62に格納されたプログラムをマイクロコンピュータが実行することにより、予め定められた運転動作が行われるとともに、メモリ62には、上記プログラムを実行する際に用いられるデータ等が一時的に記憶される。
【0062】
また、メモリ62には、それぞれ以下に詳述する値である、脱水槽2の共振点(共振回転数)CPよりも低い所定回転数(N1)、偏芯量閾値(ma)としての第1偏芯量閾値(ma)、第2偏芯量閾値(ma)及び第3偏芯量閾値(ma)、注水可能上限回転数(Na)としての第1注水可能上限回転数(Na)及び第2注水可能上限回転数(Na)、加速閾値(mc)としての第1加速閾値(mc)、第2加速閾値(mc)及び第3加速閾値(mc)、脱水定常回転数などが格納される。なお、本実施形態において、脱水槽2の共振点(共振回転数)CPは、外槽3自身の共振回転数より低く設定されている。
【0063】
(偏芯量閾値)
偏芯量閾値(ma)は、注水ノズル30a,30b,30cから導水樋5a,5b,5cに調整水の注水処理を開始するか否かを判定するための脱水槽2内の偏芯量の閾値である。そのため、脱水槽2内の偏芯量が偏芯量閾値(ma)を上回っている場合に、注入処理を実施する。
【0064】
偏芯量閾値(ma)として、図10に示すように、脱水槽2の回転数が共振回転数より小さい状態においては、脱水槽2内の偏芯位置にかかわらず、第1偏芯量閾値(ma)が設定される。また、脱水槽2の回転数が共振回転数より大きい状態において、脱水槽2内の偏芯位置が、脱水槽2の下部にある場合に第2偏芯量閾値(ma)が設定され、脱水槽2の上部にある場合及び脱水槽2の高さ方向中央部にある場合第3偏芯量閾値(ma)が設定される。第3偏芯量閾値(ma)は、第2偏芯量閾値(ma)より小さい値である。
【0065】
すなわち、脱水槽2の回転数が共振回転数より大きい状態において、脱水槽2内の上部または高さ方向中央部に偏芯がある場合に、脱水槽2内の下部に偏芯がある場合と比べて、脱水槽2の上端部にある加振力により外槽3の上端部の振れが大きくなり、ノズルユニット30の注水ノズル30a,30b,30cと導水桶5a,5b,5cの位置関係が変化しやすいため、注水ノズル30a,30b,30cと導水桶5a,5b,5cの位置関係が変化しにくい早い段階で注水処理を開始するように、第3偏芯量閾値(ma)は、第2偏芯量閾値(ma)より小さい値に設定される。
【0066】
(注水可能上限回転数)
注水可能上限回転数(Na)は、注水ノズル30a,30b,30cから導水樋5a,5b,5cに調整水の注入処理を実施可能な脱水槽2の回転数の上限値である。そのため、脱水槽2の回転数が注水可能上限回転数(Na)以下である場合、脱水槽2の偏芯量の大きさに応じて注水処理を実施するが、脱水槽2の回転数が注水可能上限回転数(Na)より大きい場合、脱水槽2の偏芯量の大きさにかかわらず、注水処理を実施しない。
【0067】
注水可能上限回転数(Na)として、図11に示すように、脱水槽2内の偏芯位置が、脱水槽2の下部にある場合、第1注水可能上限回転数(Na)が設定され、脱水槽2の上部にある場合及び脱水槽2の高さ方向中央部にある場合、第2注水可能上限回転数(Na)が設定される。第2注水可能上限回転数(Na)は、第1注水可能上限回転数(Na)より小さい値である。
【0068】
すなわち、脱水槽2内の上部または高さ方向中央部に偏芯がある場合、脱水槽2の回転数が高くなり外槽3の共振回転数に近づいたときに、外槽3が共振して大きく振動することにより、注水ノズル30a,30b,30cと導水桶5a,5b,5cの位置関係が変化しやすいため、脱水槽2の回転数が外槽3の共振回転数に近づかない低い段階で、バッフル8への注水を停止するように、第2注水可能上限回転数(Na)は、第1注水可能上限回転数(Na)より小さい値に設定される。
【0069】
(加速閾値)
加速閾値(mc)は、注水ノズル30a,30b,30cから導水樋5a,5b,5cに調整水の注水処理を開始した後、注水処理を終了するときの脱水槽2内の偏芯量の閾値である。そのため、注水処理を開始した後、脱水槽2内の偏芯量が所定の加速閾値(mc)以下になった場合に、注水処理を終了する。
【0070】
加速閾値(mc)として、図12に示すように、脱水槽2の回転数が共振回転数より小さい状態において、脱水槽2内の偏芯位置が、脱水槽2の下部にある場合に第1加速閾値(mc)が設定され、脱水槽2の上部にある場合及び脱水槽2の高さ方向中央部にある場合に第2加速閾値(mc)が設定される。
第1加速閾値(mc)は、第2加速閾値(mc)より大きい値である。
【0071】
すなわち、脱水槽2の回転数の上昇によって、バッフル8に注水された水の重心位置が変化する(高くなる)ため、脱水槽2内の偏芯位置が脱水槽2の下部にある場合は、水を入れ過ぎると回転数の上昇によって対向偏芯状態になるため、低い回転数で水を入れ過ぎないで注水が早く終了するように、第1加速閾値(mc)は、第2加速閾値(mc)より大きい値に設定される。
【0072】
また、脱水槽2の回転数が共振回転数より大きい状態においては、脱水槽2内の偏芯位置にかかわらず、第3加速閾値(mc)が設定される。
【0073】
中央制御部61は、回転速度制御部63へ制御信号を出力し、さらにその制御信号をモータ制御部(モータ制御回路)64へ出力してモータ51の回転制御を行う。なお、回転速度制御部63は、モータ制御部64からモータ51の回転速度を示す信号を実時間で入力し、制御要素となるようにしている。
【0074】
アンバランス量検出部65には、加速度センサ56が接続される。アンバランス位置検出部66には、加速度センサ56及び近接スイッチ55が接続される。本実施形態では、アンバランス量検出部65とアンバランス位置検出部66とによって偏芯検出手段を構成する。
【0075】
これにより、近接スイッチ55がマーカー52a(図2参照)を検知すると、加速度センサ56から得られた左右方向、上下方向及び前後方向の加速度の大きさから、アンバランス量検出部65において脱水槽2の偏芯量(M)が算出され、この偏芯量(M)がアンバランス量判定部67へ出力される。
【0076】
アンバランス位置検出部66は、近接スイッチ55から入力されたマーカー52aの位置を示す信号からアンバランス方向の角度を算出し、偏芯位置(N)であるアンバランス位置信号を注水制御部68へ出力する。ここで、アンバランス方向の角度とは、軸線S1の周方向におけるバッフル8に対する相対角度である。本実施形態では図16に示すようにその一例として、軸線S1を中心として等角度間隔で配される3つのバッフル8(A),8(B),8(C)と偏芯位置との相対角度を示すべくバッフル8(B),8(C)との中間位置を0°に設定している。
【0077】
注水制御部68は、アンバランス量判定部67及びアンバランス位置検出部66からの偏芯量(M)と偏芯位置(N)を示す信号が入力されると、予め格納される制御プログラムに基づいて給水すべきバッフル8及びその給水量を判断する。そして、注水制御部68は、選定した給水バルブ31a,31b,31cを開き、調整水Wの注入を開始する。注水制御部68は、脱水槽2に予め定める基準以上の偏芯量(M)が生じたときは、偏芯量(M)の算出に基づいて選定された注水ノズル30aから受水リングユニット5の導水樋5a,5b,5cの少なくとも1つに調整水Wの注入を開始し、偏芯量(M)が予め定める基準以下となったとき、調整水Wの注入を停止する。
【0078】
なお、本実施形態のバッフル8では、上述したように、脱水槽2の回転数に応じてバッフル8へ注水可能な注水制限量が変化するため、注水制御部68は、バッフル8への注水量を計測可能であり、脱水工程において、バッフル8への注水量が脱水槽2の回転数に応じた注水制限量を超えないように、ノズルユニット30を制御する。
【0079】
注水制御部68は、例えば図13に示すように、偏芯の要因となっている洗濯物の塊D(X)が脱水槽2のバッフル8(B)とバッフル8(C)の間にある場合は、バッフル8(A)に調整水Wを供給するように、ノズルユニット30とを制御する。また、洗濯物の塊D(Y)がバッフル8(A)の近傍にある場合は、バッフル8(B)とバッフル8(C)の両方に調整水Wを供給するようにノズルユニット30を制御する。
【0080】
中央制御部61は、図14のパラメータ表に記載された通り、給水バルブX、給水バルブZを開口させている。本実施形態では、偏芯位置(N)の特定を、図15に示すように、脱水槽2を周方向に関して6等分することにより、注水すべきバッフル8を1つに特定する偏芯位置(N)と、注水すべきバッフル8を2つに特定する偏芯位置(N)とに場合分けされる。
【0081】
注水すべきバッフル8を1つに特定する偏芯位置(N)の領域Yとは、領域(P(A)),(P(B))及び(P(C))である。また、偏芯の解消に要する偏芯位置(N)の領域Yとは、領域(P(AB)),(P(BC))及び(P(CA))である。また領域(P(A))、(P(B))及び(P(C))の軸心S1を中心とした角度は20°、領域(P(AB)),(P(BC))及び(P(CA))の軸心S1を中心とした角度は100°に設定されている。
【0082】
(脱水前工程)
脱水工程のうちの前半部分に係る脱水前工程について、図16に基づいて説明する。図16は、脱水工程のうちの前半部分に係る脱水前工程を示すフローチャートである。
【0083】
本実施形態では、中央制御部61が、図示しない脱水ボタンからの入力信号あるいは洗濯コース運転中に脱水工程を開始すべき旨の信号を受信すると、ステップSP1に進み、脱水前工程を開始する。
【0084】
<ステップSP1>
【0085】
ステップSP1では、中央制御部61は、脱水槽2をほぐし反転させた後、脱水槽2の回転を脱水槽2の共振点CPよりも低い所定回転数(N1)まで上昇させる。脱水槽2の回転数が所定回転数(N1)まで到達したときステップSP2に移行する。本実施形態では、所定回転数(N1)を、脱水槽2の共振点CPである約200rpmよりも低い150rpmに設定している。
【0086】
<ステップSP2>
【0087】
ステップSP2では、中央制御部61は、加速度センサ56から与えられた加速度信号に基づいて、偏芯検出手段に偏芯量(M)及び偏芯位置θ1を算出させる制御を実行する。具体的に説明すると、中央制御部61は、例えば加速度センサ56から得られた左右方向、上下方向及び前後方向に係る加速度信号を基に、各方向についてそれぞれ偏芯量(M)を算出させる。
【0088】
<ステップSP3>
【0089】
中央制御部61は、算出された偏芯量(M)と、メモリ62に格納された偏芯量閾値(ma)とを比較し、M<maが成り立つか否か判断して、立上げ判定を行う。中央制御部61は、M<maが成り立つと判断するとステップSP4に進み、M<maが成り立たないと判断するとステップSP5に進む。ここで、ステップSP3では、偏芯量閾値(ma)として、第1偏芯量閾値(ma)が使用され、バッフル8に調整水Wを供給しても、脱水定常回転数まで脱水槽2の回転数を上昇可能な程度まで偏芯量(M)を低減することが困難なほどに洗濯物の偏りが大きい場合を想定した閾値である。すなわち、ステップSP5に進む場合、バッフル8に調整水Wを供給しても脱水工程を完遂することが難しい程度に偏芯量(M)が大きいことを意味する。
【0090】
偏芯量閾値(ma)について更に説明する。本実施形態では、加速度センサ56は、左右方向、上下方向及び前後方向の加速度をそれぞれ検出し得るものが適用されている。そして、左右方向、上下方向及び前後方向の加速度信号ごとに、異なる偏芯量閾値(ma-x,ma-z,ma-y)が設定されている。
【0091】
<ステップSP4>
【0092】
ステップSP4では、中央制御部61は、ステップSP2において算出された偏芯量(M)が、偏芯量閾値(ma)よりも小さいとき、脱水槽2の回転数を上昇させる。また中央制御部61は、脱水槽2の回転数を上昇させながら、継続的に、偏芯量・偏芯位置測定の制御を実行している。ここで、「継続的に」とは、必ずしも絶え間なく連続的に行う態様に限られるものではない。脱水定常回転数に至るまでの任意の複数の回転数にまで脱水槽2の回転数が上昇したときに、間欠的に偏芯量・偏芯位置測定の制御を実行する態様としてもよいことは勿論である。
【0093】
ステップSP5では、中央制御部61は、アンバランス修正処理の制御を行う。
【0094】
ステップSP5に示すアンバランス修正処理の制御について、図17に基づいて説明する。図17は、アンバランス修正処理の手順を示すフローチャートである。
【0095】
まず、ステップSP3により偏芯量(M)が、低減が難しい程度にまで大きいと判断されると、脱水槽2の回転を停止する(ステップSP51)。その後、脱水槽2内に給水し、パルセータ4を駆動して、脱水槽2内の洗濯物を攪拌し、洗濯物の片寄りをなくす(ステップSP52)。その後、ステップSP1に戻る。
【0096】
(偏芯量・偏芯位置の算出)
ステップSP2に示す偏芯位置θ1の算出手順について、図18図19に基づいて説明する。
【0097】
本実施形態では、脱水工程において、加速度センサ56から発信される脱水槽2の少なくとも1周期t2を示す加速度に係る信号における任意の時点と近接スイッチ55からパルス信号psが発信されるタイミングとの時間差t1を演算し、時間差t1と脱水槽2の回転数との関係から脱水槽2内の周方向における偏芯位置θ1を算出し、算出された偏芯位置θ1に基づいて偏芯量(M)を低減させる制御を行うとともに、加速度センサ56からの信号のうち、何れかの信号を偏芯位置θ1の算出に利用する。
【0098】
図18は、加速度に基づいて算出された加速度の時間変化を示す情報と、近接スイッチ55から得られたパルス信号psとの関係を示したグラフである。図18では便宜上、加速度センサ56から得られた上下方向の加速度の極大値(Ymax)とパルス信号psとの時間差t1から、偏芯位置θ1を算出する。なお、図18に示す本実施形態では一例として、加速度の極大値(Ymax)及び極小値(Ymin)から偏芯位置θ1を算出する態様を示したが、本発明の他の実施例として加速度ゼロ点、加速度の極大値(Ymax)、極小値(Ymin)何れか1つ又は複数から偏芯位置θ1を算出するようにしてもよい。
【0099】
図19は、偏芯量・偏芯位置測定の処理手順を示すフローチャートである。
【0100】
<ステップSP21>
【0101】
ステップSP21では、中央制御部61は、加速度センサ56から、左右方向、上下方向及び前後方向に係る加速度データ(MX,MY,MZ)を検出する。
【0102】
<ステップSP22>
【0103】
ステップSP22では、中央制御部61は、加速度センサ56から得られた加速度データ(MX,MY,MZ)及び近接スイッチ55からの割り込み信号であるパルス信号psから、加速度データ(MX,MY,MZ)の極大値(Xmax,Ymax,Zmax)・極小値(Xmin,Ymin,Zmin)を決定する計算処理を行う。
【0104】
<ステップSP23>
【0105】
ステップSP23では、中央制御部61は、近接スイッチ55からの割り込み信号である複数のパルス信号ps間の間隔から、脱水槽2が1回転する時間である1周期t2の値を算出して決定する。
【0106】
<ステップSP24>
【0107】
ステップSP24では、中央制御部61は、近接スイッチ55からの割り込み信号である複数のパルス信号ps及びステップSP22から得られた加速度データ(MX,MY,MZ)の極大値(Xmax,Ymax,Zmax)から、その時間差t1を算出して決定する。中央制御部61は、ステップSP24において、図18に図示した上下方向に係る時間差t1である時間差t1Y以外に、左右方向、前後方向に係る時間差t1X,t1Zも併せて算出している。
【0108】
<ステップSP25>
【0109】
ステップSP25では、中央制御部61は、ステップSP22から得られた加速度データ(MX,MY,MZ)の極大値(Xmax,Ymax,Zmax)・極小値(Xmin,Ymin,Zmin)から、偏芯量(M)である左右方向、上下方向及び前後方向それぞれに係る偏芯量Mx,My,Mzを算出して決定する。本実施形態では、偏芯量Mx,My,Mzは、極大値(Xmax,Ymax,Zmax)及び極小値(Xmin,Ymin,Zmin)の差から求められる。
【0110】
<ステップSP26>
【0111】
ステップSP26では、中央制御部61は、ステップSP23から得られた1周期t2、ステップSP24から得られた時間差t1から、左右方向、上下方向及び前後方向それぞれに係る偏芯位置θX1,θY1,θZ1を以下の式により算出して決定する。
θX1=t1X×360÷t2
θY1=t1Y×360÷t2
θZ1=t1Z×360÷t2
【0112】
(立上げ判定)
ステップSP3に示す立上げ判定について、図20に基づいて説明する。図20は、立上げ判定の手順を示すフローチャートである。
【0113】
<ステップSP31>
【0114】
ステップSP31では、中央制御部61は、ステップSP25により決定された左右方向の偏芯量Mxと前後方向の偏芯量Mzとのうち、大きい値を示す偏芯量(M)を選択する。本実施形態では説明の便宜上、選択された偏芯量(M)を偏芯量Mxzと記す。
【0115】
<ステップSP32>
【0116】
ステップSP32では、中央制御部61は、偏芯量Mxzが偏芯量閾値(ma)である閾値mxzを上回っているか否かを判定する。中央制御部61は、偏芯量Mxzが閾値mxzを下回っていればステップSP33へ移行する。中央制御部61は、偏芯量Mxzが閾値mxzを上回っていれば、立上げ不可と判定しステップSP5に移行して偏芯量調整処理を行う。
【0117】
<ステップSP33>
【0118】
ステップSP33では、中央制御部61は、上下方向の偏芯量Myが偏芯量閾値(ma)である閾値myを上回っているか否かを判定する。中央制御部61は、偏芯量Myが閾値myを下回っていれば立上げ可能と判定する。この場合脱水槽2の回転数を上昇させる。中央制御部61は、偏芯量Myが閾値myを上回っていれば、立上げ不可と判定し、ステップSP5に移行して偏芯量調整処理を行う。
【0119】
(脱水本工程)
以下、ステップSP4以降の脱水本工程に係る制御について、図21に基づいて説明する。図21は、脱水本工程の手順を示すフローチャートである。
【0120】
<ステップSP51>
【0121】
ステップSP51では、中央制御部61は、脱水槽2の回転数が400rpmに至るまで回転数を毎秒20rpmずつ上昇させる。中央制御部61は、ステップSP51を行いながら平行してステップSP6を実行する。
<ステップSP52>
【0122】
ステップSP52では、中央制御部61は、脱水槽2の回転数が400rpmにまで到達したか否かを判定する。中央制御部61は、回転数が400rpmに到達していなければステップSP51へ移行する。中央制御部61は、回転数が400rpmに到達していればステップSP63へ移行する。
<ステップSP53>
【0123】
ステップSP53では、中央制御部61は、脱水槽2の回転数が600rpmに至るまで回転数を毎秒5rpmずつ上昇させる。中央制御部61は、ステップSP53を行いながら並行してステップSP6を実行する。
【0124】
<ステップSP54>
【0125】
ステップSP54では、中央制御部61は、脱水槽2の回転数が600rpmにまで到達したか否かを判定する。中央制御部61は、回転数が600rpmに到達していなければステップSP53へ移行する。中央制御部61は、回転数が600rpmに到達していればステップSP55へ移行する。ここで、脱水槽2の回転数が400~600rpmまで上昇する際の加速度が他の回転域に比べ低いのは、洗濯物から脱水される水の量が当該回転域では他の回転域より多く、脱水される水による不要な騒音を低減させるためである。
<ステップSP55>
【0126】
ステップSP55では、中央制御部61は、脱水槽2の回転数が800rpmに至るまで回転数を毎秒20rpmずつ上昇させる。中央制御部61は、ステップSP55を行いながら平行してステップSP6を実行する。
<ステップSP56>
【0127】
ステップSP56では、中央制御部61は、脱水槽2の回転数が800rpmにまで到達したか否かを判定する。中央制御部61は、回転数が800rpmに到達していなければステップSP55へ移行する。中央制御部61は、回転数が800rpmに到達していればステップSP57へ移行する。
【0128】
<ステップSP57>
【0129】
ステップSP57では、中央制御部61は、脱水槽2の回転数が脱水定常回転数であるに800rpmまで到達すると、そのまま脱水工程を継続し、予め定められた時間が経過したことを確認した後に洗濯を終了する。換言すれば中央制御部61は、通常の洗濯における脱水工程同様、脱水槽2を脱水定常回転数で所定時間回転させ、脱水処理を行う。その後、脱水処理は終了される。そして、脱水が終了して脱水槽2の減速が始まり、遠心力が重力加速度を下回ると、バッフル8内の調整水Wが流れ出し、排水される。
【0130】
図22は、本実施形態の洗濯機1の脱水工程の概要を示すグラフである。図22において、縦軸は脱水槽2の回転数を示し、横軸は時間を示す。図22では、バッフル8へ注水することなく脱水槽2の回転数が脱水定常回転数にまで到達したときの回転数の挙動を実線にて示している。また、図22では、1度だけバッフル8へ注水した後、回転数が脱水定常回転数にまで到達したときの回転数の挙動を上側の想像線にて示し、ステップSP5に係る脱水槽2の回転数の挙動を下側の想像線で示す。
【0131】
(注水工程)
ステップSP6に示す注水工程について、図23に基づいて説明する。図23は、注水工程の概要を示すフローチャートである。
【0132】
ステップSP6では、中央制御部61は、図19に示したステップSP2にて算出された偏芯量(M)が、予め設定された偏芯量閾値(ma)よりも大きいか否かの判定を行う。中央制御部61は、偏芯量(M)が偏芯量閾値(ma)よりも低いときはバッフル8への注水を行うことなく、図21の脱水本工程へ移行する。中央制御部61は、偏芯量(M)が偏芯量閾値(ma)よりも大きい場合、偏芯位置(N)が脱水槽2の高さ方向について何れの位置にあるかを判定する(偏芯位置高さ判定)。中央制御部61は、偏芯位置の高さに基づいて、加速閾値(mc)、注水可能上限回転数(Na)及び偏芯量閾値(ma)を決定する。その後、中央制御部61は、注水工程においてバッフル8への注水を行って、偏芯量(M)が加速閾値(mc)よりも低くなった後に、バッフル8への注水を終了して、図21の脱水本工程へ移行する。
【0133】
本実施形態の注水工程では、上述したように脱水槽2の回転数が150rpmに到達して以降継続して行われている偏芯量・偏芯位置測定の処理のもと、ステップSP602である偏芯位置高さ判定処理と、ステップSP612である注水処理とが主に行われている。
【0134】
<ステップSP601>
【0135】
ステップSP601では、中央制御部61は、ステップSP2で算出された偏芯量(M)が偏芯量閾値(ma)を上回っているか否かを判定する。偏芯量(M)が偏芯量閾値(ma)を上回っている場合、ステップSP602へ移行する。偏芯量(M)が偏芯量閾値(ma)を下回っている場合、注水工程を終了する。ステップSP601では、偏芯量閾値(ma)として、第1偏芯量閾値(ma)が使用される。
【0136】
<ステップSP602>
【0137】
ステップSP602では、中央制御部61は、偏芯位置(N)が脱水槽2の高さ方向について何れの位置にあるかを判定する(偏芯位置高さ判定)。具体的には、中央制御部61は、偏芯位置(N)が脱水槽2の上部、脱水槽2の高さ方向中央部、脱水槽2の下部の何れにあるかを判定する。偏芯位置高さの判定方法は、後で説明する。
【0138】
<ステップSP603>
【0139】
ステップSP603では、中央制御部61は、脱水槽2の回転数が共振回転数より小さいか否かを判定する。脱水槽2の回転数が共振回転数より小さい場合、ステップSP604へ移行する。脱水槽2の回転数が共振回転数より大きい場合、ステップSP605へ移行する。
【0140】
<ステップSP604>
【0141】
ステップSP604では、中央制御部61は、ステップSP602で判定された偏芯位置高さに基づいて、加速閾値(mc)を決定する。具体的には、中央制御部61は、偏芯位置が脱水槽2の下部にある場合、加速閾値(mc)を第1加速閾値(mc)に決定し、偏芯位置が脱水槽2の上部または高さ方向中央部にある場合、加速閾値(mc)を第2加速閾値(mc)に決定する。その後、ステップSP612へ移行する。
【0142】
<ステップSP605>
【0143】
ステップSP605では、中央制御部61は、ステップSP602で判定された偏芯位置高さに基づいて、注水可能上限回転数(Na)を決定する。具体的には、中央制御部61は、偏芯位置が脱水槽2の下部にある場合、注水可能上限回転数(Na)を第1注水可能上限回転数(Na)に決定し、偏芯位置が脱水槽2の上部または高さ方向中央部にある場合、注水可能上限回転数(Na)を第2注水可能上限回転数(Na)に決定する。
【0144】
<ステップSP606>
【0145】
ステップSP606では、中央制御部61は、ステップSP602で判定された偏芯位置高さに基づいて、偏芯量閾値(ma)を決定する。具体的には、中央制御部61は、偏芯位置が脱水槽2の下部にある場合、偏芯量閾値(ma)を第2偏芯量閾値(ma)に決定し、偏芯位置が脱水槽2の上部または高さ方向中央部にある場合、偏芯量閾値(ma)を第3偏芯量閾値(ma)に決定する。その後、ステップSP607へ移行する。
【0146】
<ステップSP607>
【0147】
ステップSP607では、中央制御部61は、加速閾値(mc)を第3加速閾値(mc)に決定する。その後、ステップSP608へ移行する。
【0148】
<ステップSP608>
【0149】
ステップSP608では、中央制御部61は、脱水槽2の回転数が、ステップSP605で決定された第1注水可能上限回転数(Na)以下であるか否かを判定する。脱水槽2の回転数が第1注水可能上限回転数(Na)以下である場合、注水を実施可能であり、ステップSP609に移行する。脱水槽2の回転数が第1注水可能上限回転数(Na)を上回っていれば、注水を実施不可能であり、注水工程を終了する。
【0150】
<ステップSP609>
【0151】
ステップSP609では、中央制御部61は、ステップSP2で算出された偏芯量(M)が偏芯量閾値(ma)を上回っているか否かを判定する。偏芯量(M)が偏芯量閾値(ma)を上回っている場合、ステップSP610へ移行する。偏芯量(M)が偏芯量閾値(ma)を下回っている場合、注水工程を終了する。ステップSP609では、偏芯量閾値(ma)として、偏芯位置が脱水槽2の下部にある場合、第2偏芯量閾値(ma)が使用され、偏芯位置が脱水槽2の上部または高さ方向中央部にある場合、第3偏芯量閾値(ma)が使用される。
【0152】
<ステップSP610>
【0153】
ステップSP610では、中央制御部61は、脱水槽2の回転数を上昇させずに維持させた状態で、注水処理を行う。その後、ステップSP611へ移行する。
【0154】
<ステップSP611>
【0155】
ステップSP611では、中央制御部61は、偏芯量(M)が加速閾値(mc)を上回っているか否かを判定する。偏芯量(M)が加速閾値(mc)を上回っている場合、ステップSP610へ移行して、注水工程を継続する。偏芯量(M)が加速閾値(mc)を下回っている場合、注水工程を終了する。
【0156】
ステップSP611では、脱水槽2の回転数が共振回転数より小さい状態において、加速閾値(mc)として、偏芯位置が脱水槽2の下部にある場合、第1加速閾値(mc)が使用され、偏芯位置が脱水槽2の上部または高さ方向中央部にある場合、第2加速閾値(mc)が使用される。脱水槽2の回転数が共振回転数より大きい場合、第3加速閾値(mc)が使用される。
【0157】
(偏芯位置高さ判定)
ステップSP602に示す偏芯位置高さの判定方法について、図24図25に基づいて説明する。
【0158】
脱水槽2のアンバランス状態として、図24に示すように、3種類のアンバランス状態が考えられる。図24(a)~図24(c)は、3種類のアンバランス状態における円周方向についての偏芯位置と、高さ方向(上下方向)についての偏芯位置とを示している。
【0159】
アンバランス状態aは、偏芯位置が脱水槽2の上部にある状態であり、アンバランス状態bは、偏芯位置が脱水槽2の高さ方向中央部にある状態であり、アンバランス状態cは、偏芯位置が脱水槽2の下部にある状態である。
【0160】
なお、脱水槽2の上部とは、脱水槽2の上端から脱水槽2の高さの1/3までの範囲であり、脱水槽2の高さ方向中央部とは、脱水槽2の上端から脱水槽2の高さの1/3-2/3までの範囲であり、脱水槽2の下部とは、脱水槽2の上端から脱水槽2の高さの2/3より下方の範囲(脱水槽2の下端から脱水槽2の高さの1/3までの範囲)である。すなわち、脱水槽2の上端から下端までを3つの同一高さの範囲に分割した場合、脱水槽2の上端から、脱水槽2の上部、脱水槽2の高さ方向中央部、脱水槽2の下部の3つの範囲に分割される。
【0161】
図25(a)~図25(c)は、それぞれ、アンバランス状態a、アンバランス状態b及びアンバランス状態cの何れかの状態において、脱水槽2の回転数を種々変化させた場合の脱水槽2の上端部の振動の変化を示している。脱水槽2の上端部の振動としては、外槽3の外周面3aに取り付けられた加速度センサ56により検出された左右方向、上下方向及び前後方向に係る加速度データ(MX,MY,MZ)を使用している。
【0162】
図25(a)~図25(c)に示すように、アンバランス状態a、アンバランス状態b及びアンバランス状態cの何れにおいても、脱水槽2の上端部の左右方向及び前後方向の振動の変化は、略同一であるのに対して、脱水槽2の上端部の上下方向の振動は、左右方向及び前後方向の振動より小さい値で変化する。
【0163】
アンバランス状態cでは、脱水槽2の上端部の上下方向の振動の大きさが、左右方向及び前後方向の振動の大きさと比べて大幅に小さいのに対して、アンバランス状態a及びアンバランス状態bでは、脱水槽2の上端部の上下方向の振動の大きさが、左右方向及び前後方向の振動の大きさに比較的近い。
【0164】
すなわち、図25から、ステップSP22から得られた加速度データである左右方向の加速度MXと前後方向の加速度MZの平均値をMXZave、上下方向の加速度MYとして、(式1)により係数Aを計算する。
A=MXZave/MY (式1)
【0165】
よって、係数Aが2より大きい場合(A>2)に、アンバランス状態cであると判定し、係数Aが2より小さい場合(A<2)に、アンバランス状態aまたはアンバランス状態bであると判定することができる。
【0166】
脱水槽2内に偏芯がない場合は、脱水槽2と外槽3とが同期して回転するため、各注水ノズル30a,30b,30cから各導水樋5a,5b,5cに調整水が適正に注入される。これに対して、脱水槽2内に偏芯がある場合は、脱水槽2と外槽3とが同期して回転しなくなるため、各注水ノズル30a,30b,30cから各導水樋5a,5b,5cに調整水が適正に注入されなくなり、各注水ノズル30a,30b,30cからの調整水が誤った導水樋5a,5b,5cに対して注水される問題がある。その場合、脱水槽2のアンバランス状態を解消する制御を適正に行うことができない。
【0167】
特に、脱水槽2内の偏芯位置が脱水槽2の上部または高さ方向中央部にある場合に、脱水槽2の上端部にある加振力により外槽3の上端部の振れが大きくなり、ノズルユニット30の注水ノズル30a,30b,30cと導水桶5a,5b,5cの位置関係が変化しやすいため、各注水ノズル30a,30b,30cからの調整水が誤った導水樋5a,5b,5cに対して注水される問題が発生し易い。
【0168】
図25(a)~図25(c)に示すように、脱水槽2内の偏芯位置が高さ方向に異なると、脱水槽2の振動状態が異なる。そのため、本実施形態では、ノズルユニット30の制御方法は、脱水槽2の振動状態、すなわち脱水槽2のアンバランス状態を考慮して実施される。
【0169】
本実施形態では、加速度センサ56が、左右方向、上下方向及び前後方向の加速度を検出し得る3軸のセンサとなっている。これにより、図25(a)~図25(c)に示すように脱水槽2内の偏芯位置が高さ方向に異なる状態であっても、偏芯量(M)及び偏芯位置(N)を正確に検出することができる。
【0170】
本実施形態の洗濯機1は、外槽3内に配置され、パルセータ4が底部2cに配置された脱水槽2と、脱水槽2の内周面2aに対して周方向に等間隔で配置されるとともに、底部2c近傍で開口し且つ上端部に循環水口80が形成された3つの通水管部であるバッフル8と、バッフル8の上端部とそれぞれ接続された3つの環状の導水樋5a,5b,5cが互いに径方向に重層されてなる受水リングユニット5と、脱水槽2の上端部に固定され、各導水樋5a,5b,5cに個別に調整水を注入可能なノズルユニット30と、外槽3の振動を検出する加速度検出手段である加速度センサ56と、脱水槽2の回転に応じてパルス信号を発信する位置検出装置である近接スイッチ55と、脱水槽2内の偏芯量及び偏芯位置を検出する偏芯検出手段であるアンバランス量検出部65及びアンバランス位置検出部66と、脱水工程において、偏芯量が所定の偏芯量閾値(ma)に達したとき、偏芯位置に対応するバッフル8に注水するようにノズルユニット30を制御する制御手段である制御部60とを備え、制御部60は、ノズルユニット30に対して、アンバランス量検出部65及びアンバランス位置検出部66により検出された偏芯位置が脱水槽2の上部または高さ方向中央部にある場合と脱水槽2の下部にある場合とで異なる制御を行う。
【0171】
本実施形態の洗濯機1によれば、脱水槽2内の偏芯位置が脱水槽2の上部または高さ方向中央部にある場合、及び、偏芯位置が脱水槽2の下部にある場合のそれぞれにおいて、ノズルユニット30のノズル30a,30b,30cと導水桶5a,5b,5cの位置関係が変化しやすい運転状態が考えられるが、脱水槽2内の偏芯位置に応じて互いに異なる制御を行うことにより、ノズル30a,30b,30cと導水桶5a,5b,5cの位置関係が変化するのが抑制される。これにより、ノズルユニット30からの調整水が誤った導水樋5a,5b,5cに注水されるのを防止して、脱水槽2のアンバランス状態を解消する制御を適正に行うことができる。
【0172】
本実施形態の洗濯機1において、制御手段である制御部60は、脱水工程において、通水管部であるバッフル8に注水するようにノズルユニット30の制御を開始した後、偏芯検出手段であるアンバランス量検出部65及びアンバランス位置検出部66により検出された偏芯量が所定の加速閾値(mc)以下になった場合に、バッフル8への注水を停止するようにノズルユニット30を制御するものであり、偏芯位置が脱水槽2の上部または高さ方向中央部にある場合の第2加速閾値(mc)は、偏芯位置が脱水槽2の下部にある場合の第1加速閾値(mc)よりも小さい。
【0173】
本実施形態の洗濯機1によれば、脱水工程の脱水槽2の回転数が共振回転数より小さい状態において、偏芯位置が脱水槽2の下部にある場合、注水量を多くしすぎると、脱水槽2の回転数が上昇して共振回転数より大きくなった後、対向偏芯状態となり振動が大きくなる可能性があるが、第1加速閾値(mc)が比較的大きい値に設定されているため、バッフル8への注水が開始された後、注水量が多くなりすぎない間に注水が早く終了するようにバッフル8への注水が停止される。これにより、ノズル30a,30b,30cと導水桶5a,5b,5cの位置関係が変化するのが抑制されて、ノズルユニット30からの調整水が誤った導水樋5a,5b,5cに注水されるのを防止できる。
【0174】
本実施形態の洗濯機1において、脱水槽2の回転数が共振回転数より大きい状態において、偏芯位置が脱水槽の上部または高さ方向中央部にある場合の第3偏芯量閾値(ma)は、偏芯位置が脱水槽2の下部にある場合の第2偏芯量閾値(ma)よりも小さい。
【0175】
本実施形態の洗濯機1によれば、偏芯位置が脱水槽2の上部または高さ方向中央部にある場合、ノズルユニット30のノズル30a,30b,30cと導水桶5a,5b,5cの位置関係が変化しやすいが、第3偏芯量閾値(ma)が比較的小さく設定されているため、ノズル30a,30b,30cと導水桶5a,5b,5cの位置関係が変化しにくい早い段階で注水処理を開始することができる。これにより、ノズル30a,30b,30cと導水桶5a,5b,5cの位置関係が変化するのが抑制されて、ノズルユニットからの調整水が誤った導水樋5a,5b,5cに注水されるのを防止できる。
【0176】
本実施形態の洗濯機1において、制御手段である制御部60は、脱水工程において、脱水槽2の回転数が所定の注水可能上限回転数(Na)以下の場合に限り、偏芯位置に対応する通水管部であるバッフル8に注水するようにノズルユニット30を制御するものであり、偏芯位置が脱水槽2の上部または高さ方向中央部にある場合の第2注水可能上限回転数(Na)は、偏芯位置が脱水槽2の下部にある場合の第1注水可能上限回転数(Na)よりも小さい。
【0177】
本実施形態の洗濯機1によれば、偏芯位置が脱水槽2の上部または高さ方向中央部にある場合、脱水槽2の回転数が高くなり外槽3の共振回転数に近づいたときに、外槽3が共振して大きく振動することにより、ノズル30a,30b,30cと導水桶5a,5b,5cの位置関係が変化しやすいが、注水可能上限回転数が比較的小さく設定されているため、脱水槽2の回転数が外槽3の共振回転数に近づかない低い段階で、バッフル8への注水が停止される。これにより、ノズル30a,30b,30cと導水桶5a,5b,5cの位置関係が変化するのが抑制されて、ノズルユニット30からの調整水が誤った導水樋5a,5b,5cに注水されるのを防止できる。
【0178】
本実施形態の洗濯機1において、脱水槽2の回転数に応じて通水管部であるバッフル8へ注水可能な注水制限量が変化する場合において、制御手段である制御部60は、脱水工程において、バッフル8への注水量が脱水槽2の回転数に応じた注水制限量を超えないように、ノズルユニット30を制御する。
【0179】
本実施形態の洗濯機1によれば、脱水工程において、バッフル8への注水量が脱水槽2の回転数に応じた注水制限量を超えないようにノズルユニット30が制御されるため、ノズルユニット30から調整水が注水制限量を超えて注水されて、調整水が無駄になるのを防止できる。
【0180】
(脱水工程)
以下、本実施形態の洗濯機1の脱水工程の制御についての変形例を、図26及び図27に基づいて説明する。図26及び図27は、脱水工程の変形例の手順を示すフローチャートである。
【0181】
<ステップSP101>
【0182】
ステップSP101では、中央制御部61は、脱水槽2の回転数を上昇させて、脱水工程を起動する。
【0183】
<ステップSP102>
【0184】
ステップSP102では、中央制御部61は、脱水槽2の回転数が150rpm以上か否かを判定する。中央制御部61は、回転数が150rpm以上である場合、ステップSP103へ移行する。
【0185】
<ステップSP103>
【0186】
ステップSP103では、中央制御部61は、脱水槽2の偏芯量(M)と偏芯位置(N)を計測する。その後、ステップSP104へ移行する。
【0187】
<ステップSP104>
【0188】
ステップSP104では、中央制御部61は、偏芯量(M)が偏芯量閾値(ma)以上であるか否かを判定する。偏芯量(M)が偏芯量閾値(ma)を上回っている場合、ステップSP105へ移行する。偏芯量(M)が偏芯量閾値(ma)を下回っている場合、ステップSP115へ移行する。ステップSP104では、偏芯量閾値(ma)として、第1偏芯量閾値(ma)が使用される。
【0189】
<ステップSP105>
【0190】
ステップSP105では、中央制御部61は、偏芯位置(N)が脱水槽2の中上部にあるかを判定する(偏芯位置高さ判定)。具体的には、中央制御部61は、偏芯位置(N)が脱水槽2の上部または高さ方向中央部にあるか、または、脱水槽2の下部の何れにあるかを判定する。偏芯位置高さの判定方法は、上述と同様である。偏芯位置(N)が脱水槽2の中上部にある場合、ステップSP106へ移行する。偏芯位置(N)が脱水槽2の下部にある場合、ステップSP107へ移行する。
【0191】
<ステップSP106>
【0192】
ステップSP106では、中央制御部61は、加速閾値(mc)を第2加速閾値(mc)に決定する。その後、ステップSP108へ移行する。
【0193】
<ステップSP107>
【0194】
ステップSP107では、中央制御部61は、加速閾値(mc)を第1加速閾値(mc)に決定する。その後、ステップSP108へ移行する。
【0195】
<ステップSP108>
【0196】
ステップSP108では、中央制御部61は、注水処理を開始する。その後、ステップSP109へ移行する。
【0197】
<ステップSP109>
【0198】
ステップSP109では、中央制御部61は、脱水槽2の回転数ごとに注水制限量を決定する。
【0199】
<ステップSP110>
【0200】
ステップSP110では、中央制御部61は、偏芯量(M)が加速閾値(mc)を上回っているか否かを判定する。偏芯量(M)が加速閾値(mc)を上回っている場合、ステップSP111へ移行する。偏芯量(M)が加速閾値(mc)を下回っている場合、ステップSP115へ移行する。ステップSP110では、加速閾値(mc)として、偏芯位置(N)が脱水槽2の中上部にある場合、第2加速閾値(mc)が使用され、偏芯位置(N)が脱水槽2の下部にある場合、第1加速閾値(mc)が使用される。
【0201】
<ステップSP111>
【0202】
ステップSP111では、中央制御部61は、注水量が注水制限量以下かを判定する。注水量が注水制限量以下である場合、ステップSP112へ移行する。注水量が注水制限量以下でない場合、ステップSP113へ移行する。
【0203】
<ステップSP112>
【0204】
ステップSP112では、中央制御部61は、注水処理を継続して、ステップSP109へ移行する。
【0205】
<ステップSP113>
【0206】
ステップSP113では、中央制御部61は、偏芯量(M)が加速閾値(mc)を上回っているか否かを判定する。偏芯量(M)が加速閾値(mc)を上回っている場合、ステップSP114へ移行する。偏芯量(M)が加速閾値(mc)を下回っている場合、ステップSP115へ移行する。ステップSP113では、加速閾値(mc)として、偏芯位置(N)が脱水槽2の中上部にある場合、第2加速閾値(mc)より大きい第5加速閾値(mc=mc+α)が使用され、偏芯位置(N)が脱水槽2の下部にある場合、第1加速閾値(mc=mc+α)が使用される。なお、α及びαは、適宜設定される正の数である。
【0207】
<ステップSP114>
【0208】
ステップSP114では、中央制御部61は、脱水槽2の回転を停止して、脱水工程を終了する。その後、ステップSP115へ移行する。
【0209】
<ステップSP115>
【0210】
ステップSP115では、中央制御部61は、脱水槽2の回転を上昇させて、ステップSP116へ移行する。
【0211】
<ステップSP116>
【0212】
ステップSP116では、中央制御部61は、脱水槽2の回転数が300rpm以上であるか否かを判定する。中央制御部61は、脱水槽2の回転数が300rpm以上である場合、ステップSP117へ移行する。脱水槽2の回転数が300rpm以上でない場合、ステップSP104へ移行する。
【0213】
<ステップSP117>
【0214】
ステップSP117では、中央制御部61は、加速閾値(mc)を第3加速閾値(mc)に決定する。その後、ステップSP118へ移行する。
【0215】
<ステップSP118>
【0216】
ステップSP118では、中央制御部61は、脱水槽2の回転を上昇させて、ステップSP119へ移行する。
【0217】
<ステップSP119>
【0218】
ステップSP119では、中央制御部61は、偏芯位置(N)が脱水槽2の中上部にあるかを判定する(偏芯位置高さ判定)。偏芯位置(N)が脱水槽2の中上部にある場合、ステップSP120へ移行する。偏芯位置(N)が脱水槽2の下部にある場合、ステップSP122へ移行する。
【0219】
<ステップSP120>
【0220】
ステップSP120では、中央制御部61は、注水可能上限回転数(Na)を第2注水可能上限回転数(Na)に決定して、ステップSP121へ移行する。
【0221】
<ステップSP121>
【0222】
ステップSP121では、中央制御部61は、偏芯量閾値(ma)を第3偏芯量閾値(ma)に決定して、ステップSP124へ移行する。
【0223】
<ステップSP122>
【0224】
ステップSP122では、中央制御部61は、注水可能上限回転数(Na)を第1注水可能上限回転数(Na)に決定して、ステップSP123へ移行する。
【0225】
<ステップSP123>
【0226】
ステップSP123では、中央制御部61は、偏芯量閾値(ma)を第2偏芯量閾値(ma)に決定して、ステップSP124へ移行する。
【0227】
<ステップSP124>
【0228】
ステップSP124では、中央制御部61は、脱水槽2の回転数が、注水可能上限回転数(Na)以下であるか否かを判定する。脱水槽2の回転数が注水可能上限回転数(Na)以下である場合、注水を実施可能であり、ステップSP125に移行する。脱水槽2の回転数が注水可能上限回転数(Na)を上回っていれば、注水を実施不可能であり、注水工程を終了する。ステップSP124では、注水可能上限回転数(Na)として、偏芯位置(N)が脱水槽2の中上部にある場合、第2注水可能上限回転数(Na)が使用され、偏芯位置(N)が脱水槽2の下部にある場合、第1注水可能上限回転数(Na)が使用される。
【0229】
<ステップSP125>
【0230】
ステップSP125では、中央制御部61は、偏芯量閾値(ma)を上回っているか否かを判定する。偏芯量(M)が偏芯量閾値(ma)を上回っている場合、ステップSP126へ移行する。偏芯量(M)が偏芯量閾値(ma)を下回っている場合、注水工程を終了する。ステップSP125では、偏芯量閾値(ma)として、偏芯位置(N)が脱水槽2の中上部にある場合、第3偏芯量閾値(ma)が使用され、偏芯位置(N)が脱水槽2の下部にある場合、第2偏芯量閾値(ma)が使用される。
【0231】
<ステップSP126>
【0232】
ステップSP126では、中央制御部61は、脱水槽2の回転数を上昇させずに維持させた状態で、注水処理を行う。その後、ステップSP127へ移行する。
【0233】
<ステップSP127>
【0234】
ステップSP127では、中央制御部61は、偏芯量(M)が加速閾値(mc)を上回っているか否かを判定する。偏芯量(M)が加速閾値(mc)を上回っている場合、ステップSP126へ移行して、注水工程を継続する。偏芯量(M)が加速閾値(mc)を下回っている場合、注水工程を終了する。ステップSP127では、加速閾値(mc)として、第3加速閾値(mc)が使用される。
【0235】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本実施形態の構成は上述したものに限定されず、種々の変形が可能である。
【0236】
例えば、上記実施形態では受水リングユニット5が3つの導水樋5a、5b、5cで構成され、それに対応して3つのバッフル8が設けられるが、これに限らず、バッフル8が3個以上設けられ、かつ導水樋がバッフル8と同数設けられる構成であればよい。
【0237】
上記実施形態では、脱水槽2の回転数が共振回転数より大きい状態において、脱水槽2内の偏芯位置にかかわらず、同一の加速閾値が設定されるが、脱水槽2の回転数が共振回転数より大きい状態において、偏芯位置が脱水槽2の上部または高さ方向中央部にある場合と、偏芯位置が脱水槽2の下部にある場合とで、異なる加速閾値に設定されてよい。
【0238】
上記本実施形態では、脱水槽2の回転数が共振回転数より小さい状態において、脱水槽2内の偏芯位置にかかわらず、同一の偏芯量閾値が設定されるが、脱水槽2の回転数が共振回転数より小さい状態において、脱水槽2の上部または高さ方向中央部にある場合と、偏芯位置が脱水槽2の下部にある場合とで、異なる偏芯量閾値に設定されてよい。
【0239】
上記実施形態では、脱水槽2の回転数が共振回転数より小さい状態において、脱水槽2内の偏芯位置が、脱水槽2の上部にある場合の加速閾値と、脱水槽2の高さ方向中央部にある場合の加速閾値が同一であるが、それらは異なってもよい。
【0240】
上記実施形態では、脱水槽2の回転数が共振回転数より大きい状態において、脱水槽2内の偏芯位置が、脱水槽2の上部にある場合の偏芯量閾値と、脱水槽2の高さ方向中央部にある場合の偏芯量閾値が同一であるが、それらは異なってもよい。
【0241】
上記実施形態では、脱水槽2内の偏芯位置が、脱水槽2の上部にある場合の注水可能上限回転数と、脱水槽2の高さ方向中央部にある場合の注水可能上限回転数が同一であるが、それらは異なってもよい。
【0242】
上記実施形態では、バッフル8内に水受け板85が配置されており、水受け板85の長さ及び位置により注水制限量が制限されるが、それに限られない。バッフル8は、その注水制限量が制限されないものでもよい。
【0243】
上記実施形態では、脱水槽2内の偏芯位置が、脱水槽2の上部または高さ方向中央部にある場合と脱水槽2の下部にある場合とで、加速閾値、注水可能上限回転数及び偏芯量閾値が異なるが、加速閾値、注水可能上限回転数及び偏芯量閾値の少なくとも1つが異なってよい。また、ノズルユニットにより注水制御を行う際に使用される加速閾値、注水可能上限回転数及び偏芯量閾値以外の閾値が、偏芯位置が脱水槽の上部または高さ方向中央部にある場合と脱水槽の下部にある場合とで異なってよい。
【0244】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0245】
1 洗濯機
2 脱水槽
2c 脱水槽の底部
3 外槽
4 パルセータ
5 受水リングユニット
5a,5b,5c 導水樋
8 バッフル(通水管部)
30 ノズルユニット
55 近接スイッチ(位置検出装置)
56 加速度センサ(加速度検出手段)
60 制御部(制御手段)
65 アンバランス量検出部(偏芯検出手段)
66 アンバランス位置検出部(偏芯検出手段)
80 循環水口
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