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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/727 20060101AFI20240417BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20240417BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20240417BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
A61K31/727
A61K9/06
A61P17/16
A61P29/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023026204
(22)【出願日】2023-02-22
(62)【分割の表示】P 2019525587の分割
【原出願日】2018-06-15
(65)【公開番号】P2023054255
(43)【公開日】2023-04-13
【審査請求日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】P 2017118898
(32)【優先日】2017-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 一般社団法人日本アレルギー学会より平成29年5月15日に発行されたアレルギー 第66巻,第4・5号の第437頁に青山裕美が第66回日本アレルギー学会学術大会の予稿を掲載したことにより公開された
(73)【特許権者】
【識別番号】000113908
【氏名又は名称】マルホ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】597039984
【氏名又は名称】学校法人 川崎学園
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】青山 裕美
(72)【発明者】
【氏名】土肥 孝彰
【審査官】新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-180821(JP,A)
【文献】特開2009-96807(JP,A)
【文献】特開2013-18709(JP,A)
【文献】特開平9-286731(JP,A)
【文献】特開2011-6341(JP,A)
【文献】国際公開第2008/126638(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/092357(WO,A1)
【文献】British Journal of Dermatology,2017年05月17日,Vol.176,pp.1308-1315
【文献】「再び 中高年のスキンケアを考える」,西日本皮膚科,2015年,Vol.77, No.1,pp.80
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61P 17/00
A61P 29/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多硫酸化コンドロイチン硫酸を有効成分として含有し、不感発汗促進によりアミロイド苔癬、脂漏性皮膚炎、ビダール苔癬及び/又は尋常性湿疹を予防するための皮膚外用剤。
【請求項2】
アミロイド苔癬、脂漏性皮膚炎、ビダール苔癬及び/又は尋常性湿疹を予防するための、多硫酸化コンドロイチン硫酸を有効成分として含有する、不感発汗促進のための皮膚外用剤。
【請求項3】
温熱負荷をかけることなく発汗が促進される、請求項1又は2記載の皮膚外用剤。
【請求項4】
剤形がクリーム剤、軟膏剤、硬膏剤、貼付剤、ローション剤、ゲル剤又はフォーム剤である、請求項1~3のいずれか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項5】
クリーム剤が水中油型クリーム剤である、請求項4記載の皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
汗は、汗腺を通り汗孔から分泌される液体で、体温調節や皮膚の保湿に関与している。
【0003】
汗孔は、皮膚の皮丘及び皮溝に分布しているが、運動や入浴などによる温熱負荷による体温上昇に対する体温調節のための発汗(温熱性発汗)は、主に皮丘の汗孔から分泌される。
一方、皮膚の保湿を目的とする発汗は、室温での安静時など体温上昇が起きない状態において皮溝の汗孔から微量に分泌されており、不感発汗と呼ばれている。不感発汗は、発汗量が微量であることから、べたつき等、温熱性発汗により生じる不快感はなく、発汗していることを感じないが角層への水分供給に寄与しており、皮膚の保湿に重要である。
【0004】
不感発汗が不足すると、皮膚角層の水分量が減少し皮膚の乾燥を来し、掻破行動につながる。掻破行動は皮膚バリア機能を低下させ、炎症性皮膚疾患を引き起こす要因の一つであることが知られている。発汗障害を伴う炎症性皮膚疾患であるアミロイド苔癬や痒疹では、発汗促進による治療が報告されている(非特許文献1、2)。
【0005】
しかし、非特許文献1及び2では、外用剤の塗布部位に密封療法が行われており、温熱負荷により発汗が促進している。温熱負荷により促進される発汗は体温調節を目的とした温熱性発汗であり、皮膚の保湿を目的とした不感発汗に比べ多量の汗が分泌され不快感を伴うことがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】British Journal of Dermatology(2017)176,1308-1315
【文献】臨床皮膚科71巻5号 2017年増刊号 109-113
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、皮膚の保湿を目的とした皮溝からの発汗である不感発汗のみを促進するための皮膚外用剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討した結果、多硫酸化コンドロイチン硫酸を含有する皮膚用外用剤により上記の課題が解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
本発明としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
(1)多硫酸化コンドロイチン硫酸を有効成分として含有する、不感発汗促進のための皮膚外用剤(以下、「本発明皮膚外用剤」という)。
(2)温熱負荷をかけることなく発汗が促進される、上記(1)記載の皮膚外用剤。
(3)剤形がクリーム剤、軟膏剤、硬膏剤、貼付剤、ローション剤、ゲル剤又はフォーム剤である、上記(1)又は(2)記載の皮膚外用剤。
(4)クリーム剤が水中油型クリーム剤である、上記(3)記載の皮膚外用剤。
(5)炎症性皮膚疾患を予防するための、上記(1)~(4)のいずれかに記載の皮膚外用剤。
(6)炎症性皮膚疾患の予防が再発予防である、上記(5)記載の皮膚外用剤。
(7)炎症性皮膚疾患が、慢性痒疹、皮膚炎、アミロイド苔癬及び/又は乾癬である、上記(5)又は(6)に記載の皮膚外用剤。
(8)慢性痒疹が、結節性痒疹、多形慢性痒疹、及び/又は慢性単純性痒疹である、上記(7)記載の皮膚外用剤。
(9)皮膚炎が、アトピー性皮膚炎、皮脂欠乏性皮膚炎、接触性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、ビダール苔癬及び/又は尋常性湿疹である、上記(7)記載の皮膚外用剤。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、皮溝又は皮丘における外用剤塗布による発汗滴の面積の変化を表す。縦軸は発汗滴面積(μm)を、横軸は塗布した外用剤及び塗布量を表す。
図2図2は、外用剤塗布による角層水分量の変化を表す。縦軸は角層水分量(μS)、横軸は塗布した外用剤及び塗布量を表す。
図3図3は、皮溝又は皮丘における外用剤塗布による発汗滴数の変化を表す。縦軸は発汗滴数(個/cm)、横軸は塗布した外用剤及び塗布量を表す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る皮膚外用剤は、多硫酸化コンドロイチン硫酸を有効成分とする。
多硫酸化コンドロイチン硫酸とは、N-アセチル-D-ガラクトサミンとD-グルクロン酸からなる二糖単位あたり、硫酸エステル残基が2~4個程度、好ましくは2~3個程度含まれるポリマーである。
【0012】
多硫酸化コンドロイチン硫酸は、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸(A、C、D、E)等のコンドロイチン成分とクロロ硫酸、濃硫酸、三酸化硫黄-ピリジン錯体等の硫酸化剤を反応させる公知の方法により容易に製造できる。
【0013】
好ましい多硫酸化コンドロイチン硫酸としては、日本薬局方外医薬品規格に収載されているヘパリン類似物質が例示される。
物理化学的性質として次の値を示す。
a)硫酸基含量:25.8~37.3%
b)極限粘度:0.09~0.18
【0014】
多硫酸化コンドロイチン硫酸は、硫酸残基に由来する遊離の酸の形態で用いてもよいが、通常は、塩基塩を用いる。
【0015】
該塩基塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、カルシウム等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。
【0016】
本発明に係る皮膚外用剤は、上述した多硫酸化コンドロイチン硫酸を有効成分として含み、不感発汗を促進することで皮膚角層の水分量が増加し皮膚が正常な状態に保たれるため、炎症性皮膚疾患の予防に有効である。
炎症性皮膚疾患としては、皮膚バリア機能の低下により引き起こされる炎症を伴う皮膚疾患であれば特に限定されないが、例えば、慢性痒疹、皮膚炎、アミロイド苔癬及び乾癬を挙げることができる。
【0017】
慢性痒疹としては、例えば、結節性痒疹、多形慢性痒疹、慢性単純性痒疹を挙げることができる。
【0018】
皮膚炎としては、例えば、アトピー性皮膚炎、皮脂欠乏性皮膚炎、接触性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、ビダール苔癬、尋常性湿疹を挙げることができる。それらの中で、特にアトピー性皮膚炎及び皮脂欠乏性皮膚炎が好ましい。
【0019】
本発明皮膚外用剤中の多硫酸化コンドロイチン硫酸の濃度は、0.1~2.0重量%程度が好ましく、0.2~1.5重量%程度がより好ましく、0.3~0.9重量%が最も好ましい。多硫酸化コンドロイチン硫酸は安全性が高いため、上記濃度では副作用は殆ど生じない。
【0020】
本発明皮膚外用剤は、1日1~数回投与することにより、不感発汗を促進し皮膚が正常な状態に保たれ、炎症性皮膚疾患に対する予防効果を発揮する。特に、抗炎症剤等の投与による炎症性皮膚疾患治療後の再発予防に効果的である。例えば、アトピー性皮膚炎は、寛解状態の患者皮膚は見かけ上は正常皮膚と大きな違いは認められないが、皮膚表面の皮膚紋理が乱れ皮溝からの発汗である不感発汗が低下している。そのため、皮膚角層が慢性的に乾燥状態になっており、症状の悪化(再発)と治療剤による寛解が繰り返されるが、寛解状態において本発明皮膚外用剤を塗布することで不感発汗が促進され、再発を予防できる。
【0021】
本発明皮膚外用剤の投与量は、年齢、体重及び症状に応じて適宜選択されるが、通常、薬効を発揮する量として、多硫酸化コンドロイチン硫酸として1回につき100cm当たり0.2~40mgに該当する量を経皮投与すればよい。
【0022】
本発明皮膚外用剤は、当業者に自明な方法により、構成成分を適宜混合し調製することができる。
【0023】
本発明皮膚外用剤の剤形は、特に限定されないが、水中油型又は油中水型のクリーム剤、軟膏剤、硬膏剤、貼付剤、ローション剤、ゲル剤、フォーム剤等を挙げることができる。それらの中で、水中油型クリーム剤が好ましい。
【0024】
本発明に係る水中油型又は油中水型クリーム剤に配合される添加剤としては、油溶性物質、水溶性物質、保湿剤、乳化剤等が挙げられる。油溶性物質に高級炭化水素、油脂類、ロウ類、脂肪酸、高級アルコール、エステル類等を用いることができる。高級炭化水素としては、例えば、スクワラン、合成パラフィン、流動パラフィン、形質流動パラフィン、ワセリン、白色ワセリン、黄色ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられ、油脂類としては、例えば、オリーブ油、ホホバ油、ゴマ油、ダイズ油、カカオ油、ツバキ油、ラッカセイ油、牛油、豚油、鶏油、トリアセチン、硬化ヒマシ油等が挙げられ、ロウ類としては、例えば、ミツロウ、サラシミツロウ、ラノリン、セレシン等が挙げられ、脂肪酸としては、例えば、ステアリン酸、オレイン酸等が挙げられ、高級アルコールとしては、例えば、ラノリンアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、コレステロール等が挙げられ、エステル類としては、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ステアリル、中鎖脂肪酸トリグリセリド等が挙げられる。
【0025】
水溶性物質としては、水、溶剤、増粘剤、pH調節剤、保存剤等を用いることができる。溶剤としては、例えば、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等の低級アルコールが挙げられ、増粘剤としては、例えば、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロース等が挙げられ、pH調節剤としては、例えば、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、L-アルギニン、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、乳酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸、酒石酸、dl-リンゴ酸、乳酸、クエン酸、氷酢酸等が挙げられ、保存剤としては、例えば、チモール、ジブチルヒドロキシトルエン、エデト酸ナトリウム水和物、フェノキシエタノール、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル等が挙げられる。
【0026】
保湿剤としては、例えば、ワセリン、白色ワセリン、黄色ワセリン、グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等が挙げられ、乳化剤としては、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0027】
水中油型クリーム剤としては、高級炭化水素、高級アルコール、乳化剤及び水を含有する水中油型クリーム剤が好ましく、高級炭化水素、高級アルコール、脂肪酸、溶剤、pH調節剤、保存剤、保湿剤、乳化剤及び水を含有する水中油型クリーム剤がより好ましく、白色ワセリン、ラノリンアルコール、セトステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリン酸、イソプロパノール、水酸化カリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、グリセリン、セトステアリルアルコール・セトステアリル硫酸ナトリウム混合物及び水を含有する水中油型クリーム剤が特に好ましい。
【0028】
油中水型クリーム剤としては、高級炭化水素、ロウ類、保存剤、保湿剤、乳化剤及び水を含有する油中水型クリーム剤が好ましく、スクワラン、形質流動パラフィン、白色ワセリン、セレシン、サラシミツロウ、ジブチルヒドロキシトルエン、エデト酸ナトリウム水和物、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル及び水を含有する油中水型クリーム剤が特に好ましい。
【0029】
本発明に係る軟膏剤に配合される添加剤としては、基剤、保湿剤、増粘剤等が挙げられる。基剤に高級炭化水素、油脂類、ロウ類、脂肪酸、高級アルコール、エステル類等を用いることができる。高級炭化水素としては、例えば、スクワラン、合成パラフィン、流動パラフィン、形質流動パラフィン、ワセリン、白色ワセリン、黄色ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられ、油脂類としては、例えば、オリーブ油、ホホバ油、ゴマ油、ダイズ油、カカオ油、ツバキ油、ラッカセイ油、牛油、豚油、鶏油、トリアセチン、硬化ヒマシ油等が挙げられ、ロウ類としては、例えば、ミツロウ、サラシミツロウ、ラノリン、セレシン等が挙げられ、脂肪酸としては、例えば、ステアリン酸、オレイン酸等が挙げられ、高級アルコールとしては、例えば、ラノリンアルコール、セトステアリルアルコール等が挙げられ、エステル類としては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ステアリル、中鎖脂肪酸トリグリセリド等が挙げられる。
【0030】
保湿剤としては、例えば、グリセリン、1,3-ブチレングリコール等が挙げられ、増粘剤としては、例えば、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。
【0031】
硬膏剤ないし貼付剤に配合される添加剤としては、増粘剤、保湿剤、充填剤、架橋剤、溶解剤、乳化剤等が挙げられる。具体的には、増粘剤としては、例えば、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム等が挙げられ、保湿剤としては、例えば、グリセリン等が挙げられ、充填剤としては、例えば、カオリン、二酸化チタン、亜鉛華等が挙げられ、架橋剤としては、例えば、アセトアルデヒド、ジメチルケトン、硫酸アルミニウム等が挙げられ、溶解剤としては、例えば、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類等が挙げられ、乳化剤としては、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等が各々例示される。
【0032】
本発明に係るローション剤に配合される添加剤としては、油溶性物質、水溶性物質、保湿剤、乳化剤等が挙げられる。油溶性物質に高級炭化水素、油脂類、ロウ類、脂肪酸、高級アルコール、エステル類等を用いることができる。高級炭化水素としては、例えば、スクワラン、合成パラフィン、流動パラフィン、形質流動パラフィン、ワセリン、白色ワセリン、黄色ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられ、油脂類としては、例えば、オリーブ油、ホホバ油、ゴマ油、ダイズ油、カカオ油、ツバキ油、ラッカセイ油、牛油、豚油、鶏油、トリアセチン、硬化ヒマシ油等が挙げられ、ロウ類としては、例えば、ミツロウ、サラシミツロウ、ラノリン、還元ラノリン、セレシン等が挙げられ、脂肪酸としては、例えば、ステアリン酸、オレイン酸等が挙げられ、高級アルコールとしては、ラノリンアルコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール等が挙げられ、エステル類としては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ステアリル等が挙げられる。
【0033】
水溶性物質としては、水、増粘剤、pH調節剤、保存剤等を用いることができる。増粘剤としては、例えば、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロース等が挙げられ、pH調節剤としては、例えば、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、L-アルギニン、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、乳酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸、酒石酸、dl-リンゴ酸、乳酸、クエン酸、氷酢酸等が挙げられ、保存剤としては、例えば、チモール、ジブチルヒドロキシトルエン、エデト酸ナトリウム水和物、フェノキシエタノール、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル等が挙げられる。
【0034】
保湿剤としては、例えば、ワセリン、白色ワセリン、黄色ワセリン、グリセリン、1,3-ブチレングリコール等が挙げられ、乳化剤としては、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0035】
ローション剤としては、高級炭化水素、ロウ類、高級アルコール、増粘剤、pH調節剤、保存剤、保湿剤、乳化剤及び水を含有するローション剤が好ましく、スクワラン、白色ワセリン、還元ラノリン、セチルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ジイソプロパノールアミン、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、グリセリン、ポリオキシエチレンセチルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル及び水を含有するローション剤が特に好ましい。
【0036】
ゲル剤に配合される添加剤としては、基剤、増粘剤、pH調節剤、保存剤等を用いることができる。基剤には、例えば、水、イソプロパノール、プロピレングリコール等が挙げられ、増粘剤としては、例えば、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロース等が挙げられ、pH調節剤としては、例えば、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、L-アルギニン、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、乳酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸、酒石酸、dl-リンゴ酸、乳酸、クエン酸、氷酢酸等が挙げられ、保存剤としては、例えば、チモール、ジブチルヒドロキシトルエン、エデト酸ナトリウム水和物、フェノキシエタノール、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル等が挙げられる。
【0037】
フォーム剤に配合される添加剤としては、基剤、起泡剤、pH調節剤、保存剤等を用いることができる。基剤には、例えば水、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、D-ソルビトール、ポリエチレングリコール、トリアセチン、2-エチルヘキサンジオール、イソステアリルアルコール、オレイン酸オレイル、ミリスチン酸イソプロピル、オクチルドデカノール、ミリスチン酸オクチルドデシル、ヘキシルデカノール、イソステアリン酸、トリイソオクタン酸グリセリン、ヒマシ油、オリーブ油、中鎖脂肪酸トリグリセリド、オレイルアルコール、オレイン酸、2-エチルヘキサン酸セチル、イソステアリルパルミテート、2-エチルヘキサン酸セチル、スクワラン、軽質流動パラフィン、流動パラフィン、スクワレン、白色ワセリン、ゲル化炭化水素等が挙げられ、起泡剤としては、例えば、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ステアリン酸グリセリル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、トリオレイン酸デカグリセリル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、ショ糖ステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンソルビットミツロウ、モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンベへニルエーテル、ラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ショ糖ラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、ステアリン酸アルギニン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、セチル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウロイルサルコシンナトリウム、N-ステアロイル-N-メチルタウリンナトリウム、N-ミリストイル-N-メチルタウリンナトリウム、モノステアリルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸ナトリウム、ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、N-ラウロイルグルタミン酸モノナトリウム、N-ステアロイル-L-グルタミン酸ナトリウム、N-ステアロイル-L-グルタミン酸アルギニン、N-ステアロイルグルタミン酸ナトリウム、N-ミリストイル-L-グルタミン酸ナトリウム等が挙げられ、pH調節剤としては、例えば、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、L-アルギニン、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、乳酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸、酒石酸、dl-リンゴ酸、乳酸、クエン酸、氷酢酸リン酸二水素カリウム、エデト酸ナトリウム等が挙げられ、保存剤としては、例えば、チモール、ジブチルヒドロキシトルエン、エデト酸ナトリウム水和物、フェノキシエタノール、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル等が挙げられる。
【0038】
本発明において上記の各製剤で使用できる陽イオン性界面活性剤の具体例としては、例えば、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロリド等が挙げられる。
【0039】
陰イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ヤシアルコールエトキシ硫酸ナトリウム、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム、乳化セトステアリルアルコール(セトステアリルアルコール・セトステアリル硫酸ナトリウム混合物)等が挙げられる。
【0040】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ステアリン酸ポリオキシル、グリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル等が例示できる。
【0041】
両イオン性界面活性剤としては、例えば、N-アルキル-N,N-ジメチルアンモニウムベタイン、イミダゾリン型両性界面活性剤等が挙げられる。
【0042】
上記界面活性剤は、単独又は組み合わせて使用することができる。
【0043】
本発明皮膚外用剤を皮膚に適用する場合、温熱性発汗は不要であり、密封療法や足浴等の温熱負荷は必要ない。不感発汗のみが促進されるため、発汗による不快感なく必要な水分を角層に供給し皮膚が保湿され、皮膚を正常な状態に保つことができ、炎症性皮膚疾患の再発予防や寛解状態の維持にも有効である。
【実施例
【0044】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0045】
[実施例]
健康成人8名の前腕を対象に4か所の外用塗布部位を設定した。試験製剤は、多硫酸化コンドロイチン硫酸を含む水中油型クリーム(ヒルドイド(登録商標)クリーム0.3%;以下、単にヒルドイドクリームと称する)、白色ワセリン(保湿剤)、ステロイド外用剤(アンテベート(登録商標)軟膏0.05%、有効成分:ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル)とし、ヒルドイドクリームの1回塗布量は外用剤の塗布量の目安とされる2mg/cm又はその3倍量の6mg/cm、白色ワセリンとステロイド外用剤の1回塗布量は外用剤の塗布量の目安とされる2mg/cmとした。上記の規定塗布量を1日2回(午前、夜入浴後)、7日間繰り返し塗布した。試験製剤塗布前及び塗布7日目の翌日(塗布8日目の午前の塗布前)に、Clin Auto Res(2002)12:20-23記載の試験法(impression mold technique(以下、IMT)により、皮膚からの微量発汗を観察した。また、同時に角層水分量を皮表角層水分測定装置(SKICON-200EX)を用いて電気伝導度を指標に測定した。なお、発汗測定及び角層水分量測定時は、いずれも実施30分以上前に、22-23℃、40-50%RHの環境下にて馴化させ、温熱性発汗が生じない条件下にて実施した。
【0046】
ヒルドイドクリームは、製剤1g中に、有効成分として多硫酸化コンドロイチン硫酸(ヘパリン類似物質)を3.0mg含む。その他の添加物は、グリセリン、ステアリン酸、水酸化カリウム、白色ワセリン、ラノリンアルコール、セトステアリルアルコール、セトステアリルアルコール・セトステアリル硫酸ナトリウム混合物、ミリスチルアルコール、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、イソプロパノール及び水である。
【0047】
ステロイド外用剤(アンテベート(登録商標)軟膏0.05%)は、製剤1g中に、有効成分としてベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステルを0.5mg含む。その他の添加物は、スクワラン、ゲル化炭化水素、パラフィン及び白色ワセリンである。
【0048】
[試験例1]発汗滴面積
試験製剤塗布前(無塗布)及び塗布7日後の1cm当たりの皮溝又は皮丘からの発汗滴の面積を測定した。結果を表1に示す。不感発汗部位である皮溝では、ヒルドイドクリームの塗布により発汗滴の面積に有意な増加が認められた。一方、温熱性発汗部位である皮丘では、試験製剤塗布による発汗滴の面積の増加は僅かであった。発汗滴の面積は発汗量を反映しており、発汗を感じない皮溝からの発汗量に比べても皮丘からの発汗量は微量で体温調節といった生理的な効果もなく、ヒルドイドクリームの塗布により皮膚保湿を目的とする不感発汗は促進されるが、温熱負荷がなければ温熱性発汗は実質的に促進されない。
【0049】
【表1】
【0050】
[試験例2]角層水分量
試験製剤塗布前(無塗布)及び塗布7日後の1cm当たりの角層水分量を測定した。結果を表2に示す。表1の皮溝からの発汗量に応じ角層水分量が変化しており、ヒルドイドクリームの塗布による不感発汗の促進が、皮膚の保湿を意味する角層水分量の増加に効果的である。
【0051】
【表2】
【0052】
[試験例3]発汗滴数
試験製剤塗布前(無塗布)及び塗布7日後の1cm当たりの皮溝又は皮丘からの発汗滴数を測定した。結果を表3に示す。表1で示された発汗量の増加に比例し発汗滴数も増加しており、特定の汗孔から多量の汗が発汗されているわけではなく、多くの汗孔から均一に発汗されていることが分かる。局所的な発汗量の増加は、皮膚全体の保湿に有効ではないが、ヒルドイドクリームの塗布による不感発汗の促進では皮膚全体が保湿されている。
【0053】
【表3】
【0054】
なお、この臨床研究期間中、ヒルドイドクリームを含めすべての外用剤において塗布による副作用は観察されなかった。
図1
図2
図3