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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】無延伸PETフィルムを用いた袋容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 30/02 20060101AFI20240417BHJP
   B65D 65/02 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
B65D30/02
B65D65/02 E
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019099706
(22)【出願日】2019-05-28
(65)【公開番号】P2020193003
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】597163636
【氏名又は名称】進栄化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183461
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 芳隆
(72)【発明者】
【氏名】金根 吉崇
(72)【発明者】
【氏名】智山 浩輔
【審査官】岡崎 克彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-100807(JP,A)
【文献】特開2012-024998(JP,A)
【文献】特開2010-264740(JP,A)
【文献】特開2002-211679(JP,A)
【文献】特開2001-031047(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 30/02
B65D 65/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1枚のシートから形成される袋容器であって、
前記シートは、少なくとも基材層および接着層のいずれか一方として無延伸PETフィルム層、及び、延伸PETフィルム層を含み、
前記無延伸PETフィルム層は、非結晶のPETを含むPETフィルム層であり、
前記非結晶のPETを含むPETフィルム層は、
A-PETとイソフタル酸変性PETとを加熱溶融して型から押し出して成膜し、この成膜後のフィルムを冷却ドラムによって急冷することによって非結晶の状態で成形されるフィルム層、又は、
A-PETとイソフタル酸変性PETとグリコール変性PETとを加熱溶融して型から押し出して成膜し、この成膜後のフィルムを冷却ドラムによって急冷することによって非結晶の状態で成形されるフィルム層
であることを特徴とする袋容器。
【請求項2】
前記シートが、さらに、前記無延伸PETフィルム層同士が接合された接合部を有する、請求項1に記載の袋容器。
【請求項3】
前記無延伸PETフィルム層が少なくとも一方の面を露出し、前記接合部が前記無延伸PETフィルムの露出面同士が熱溶着加工により接合されている、請求項2に記載の袋容器。
【請求項4】
前記無延伸PETフィルム層は、一部又は全部の前記接合部において、2組以上の相対する露出面同士が前記シートのシート厚方向において接合されている、請求項3に記載の袋容器。
【請求項5】
前記無延伸PETフィルム層は、一部又は全部の前記接合部において、4組の相対する露出面同士が前記シートのシート厚方向において接合されている、請求項に記載の袋容器。
【請求項6】
対向する一対の正面部を備え、
前記正面部は、両側端に前記接合部を有する、請求項3に記載の袋容器。
【請求項7】
前記両側端の接合部は、熱溶断方式により熱溶着加工されている、請求項に記載の袋容器。
【請求項8】
前記無延伸PETフィルム層は30μm~150μmの膜厚を有する、請求項1~の何れか一項に記載の袋容器。
【請求項9】
収容物を出し入れする開口を有し、
前記開口を封止することで密閉構造が形成される、請求項1~の何れか一項に記載の袋容器。
【請求項10】
対向する一対の正面部と、各正面部の下端から連続し、前記対向する正面部の下端を繋ぐ底面部を備え、
前記底面部は前記接合部を備える、請求項3に記載の袋容器。
【請求項11】
前記各正面部の側端から連続し、前記対向する正面部の側端を繋ぐ側面部を備え、
前記側面部は、内側に折り込み可能な折り目を有する、請求項10に記載の袋容器。
【請求項12】
一枚のシートから形成され、
前記底面部の前記接合部は、折り曲げられた前記シートが重ね合わせられて接合されている、請求項10又は11に記載の袋容器。
【請求項13】
一方の前記正面部は、上端から下端に渡る前記接合部を有する、請求項1012の何れか一項に記載の袋容器。
【請求項14】
前記無延伸PETフィルム層は、一部又は全部の前記接合部において、2組以上の相対する露出面同士が前記シートのシート厚方向において接合されている、請求項1013の何れか一項に記載の袋容器。
【請求項15】
前記無延伸PETフィルム層は、一部又は全部の前記接合部において、4組の相対する露出面同士が前記シートのシート厚方向において接合されている、請求項14に記載の袋容器。
【請求項16】
前記底面部の前記接合部は超音波加熱方式により熱溶着加工されている、請求項1015の何れか一項に記載の袋容器。
【請求項17】
前記無延伸PETフィルム層は30μm~150μmの膜厚を有する、請求項1016の何れか一項に記載の袋容器。
【請求項18】
収容物を出し入れする開口を有し、
前記開口を封止することで密閉構造が形成される、請求項1017の何れか一項に記載の袋容器。
【請求項19】
少なくとも1枚のシートから形成される袋容器の製造方法であって、
前記シートは、少なくとも基材層および接着層のいずれか一方として無延伸PETフィルム層、及び、延伸PETフィルム層を含み、
前記無延伸PETフィルム層は、非結晶のPETを含むPETフィルム層であり、
前記非結晶のPETを含むPETフィルム層は、
A-PETとイソフタル酸変性PETとを加熱溶融して型から押し出して成膜し、この成膜後のフィルムを冷却ドラムによって急冷することによって非結晶の状態で成形されるフィルム層、又は、
A-PETとイソフタル酸変性PETとグリコール変性PETとを加熱溶融して型から押し出して成膜し、この成膜後のフィルムを冷却ドラムによって急冷することによって非結晶の状態で成形されるフィルム層
であることを特徴とする袋容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも無延伸PETフィルム層を有するシートを用いた軟包装容器、すなわち袋容器に関し、詳細には、袋容器の製作すなわち製袋にあたり、無延伸PETフィルムに熱溶着加工、折目加工等を適用した袋容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来よく知られるように、ポリエチレン(PE)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリ塩化ビニール(PVC)等の合成樹脂フィルムを用いた袋容器がある。このような袋容器は、柔軟性や透明性のような各フィルムの特性を利用して、種々の用途に用いられている。
【0003】
例えば、PEフィルムから製作されたPE袋、またはPPフィルムから製作されたPP袋は、一般に、ポリ袋と称され、安価で柔軟性に富んだ袋である(例えば、特許文献1を参照)。このようなPE袋またはPP袋は、例えば、食品用包装袋、ゴミ袋等に用いられる。またPVCフィルムから製作されるPVC袋は軟質と硬質の二種類があり、軟質PVC袋はストレッチフィルムとして食品トレーのラッピングに使用されたり、硬質PVC袋は雑貨や衣類などの包装に使用されている。これら合成樹脂フィルムを用いた袋容器では、使用目的に応じて透明性や柔軟性を考慮して材料が選択される。
【0004】
ところで、フィルムの柔軟性は、主にフィルムの膜厚に依存し、材料が同じであれば、当然に薄いフィルムほど柔軟になる。換言すると、フィルムを厚くすることで剛性の高い袋容器を形成することができる。しかし、フィルムを厚くすると、従来の製袋工程の適用が困難になり、また、材料の使用量が増して製袋の費用も高価になってしまう。したがって、PPフィルム、PEフィルム等の軟質プラスチックに分類されるフィルムから製作された袋容器は、柔軟性に富むが、一定以上の剛性を必要とする袋容器の製作には不向きであった。
【0005】
一方で、PPフィルム、PEフィルム等の軟質プラスチックフィルムよりも剛性が高く透明なフィルムとしてPETフィルムがあり、これを袋容器として利用しているものもあった。そのようなPETフィルムには、フィルムの膜厚制御、特に薄膜化の容易性から延伸PETが利用されている。ここで「PET」の語はポリエチレンテレフタレート(Polyethylene terephthalate)の別名を指し、以下、特に断らない限りポリエチレンテレフタレートの意において用いる。
【0006】
しかし、延伸PETは、その特性上、低温熱溶着性が悪く、袋容器を形成するため熱溶着加工が困難で、さらに、結晶が配向しているため折目加工が困難であった。したがって、延伸PETフィルム単体で袋容器は製作できず、加工性に優れた他の合成樹脂フィルムを積層した多層シートを作成し、シートとして熱溶着加工や折目加工を可能とすることにより袋容器を製作している(例えば、特許文献2および特許文献3を参照)。すなわち、延伸PETフィルムは、単体では熱溶着加工や折目加工ができないため、袋容器を製作するには不向きであった。
【0007】
ところで、PETフィルムは、延伸PETフィルムのほかに、無延伸PETフィルムがある。無延伸PETフィルムは、延伸PETフィルムとは異なり、広い温度帯で熱溶着加工が可能であり、さらに、結晶が配向していないため折目加工が可能である。しかし、従来の無延伸PETフィルムは、膜厚の制御、特に薄膜化が困難であり、膜厚を一定以下に薄くできないため、無延伸PETで容器を製作しても柔軟性が不足し、箱容器のような硬包装容器となってしまっていた。すなわち、無延伸PETフィルムにより袋容器を製作することは考えられもしなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2014-118177号公報
【文献】特開2001-55243号公報
【文献】特開2015-134491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のように、従来の合成樹脂フィルムには、一定以上の剛性を容易に達成できないものがあり、または熱溶着および折目等の加工が困難なものがあり、さらに、所望の膜厚に形成できないものがあった。したがって、所望の膜厚で最適な剛性(柔軟性)を備える透明性の高い袋容器は製作できなかった。
【0010】
本発明は、上記のような合成樹脂フィルムを用いた製袋の問題点を解決すべくなされたもので、熱溶着加工、折目加工等の製袋加工を容易に行い、所望の膜厚で最適な剛性(柔軟性)を備える透明性の高い袋容器、すなわち、従来の袋容器に比較して高級感を与える袋容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明は少なくとも1枚のシートから形成される袋容器であって、前記シートは、少なくとも基材層および接着層のいずれか一方として無延伸PETフィルム層を含み、かつ、前記無延伸PETフィルム層同士が接合された接合部を有し、前記無延伸PETフィルム層は、非結晶のPETを含むPETフィルム層であることを特徴とする袋容器を提供するものである。
【0012】
すなわち、前記無延伸PETフィルム層が非結晶のPETを含むPETフィルム層であるため、この袋容器では、非結晶のPETが適度な剛性(柔軟性)および高い透明性を有し、他の合成樹脂材料のフィルムでは達成できなかった袋容器の機能、すなわち、高靭性、自立、折畳、広告利用等の特徴的な機能を達成できる。
【0013】
ここで、代表的な非結晶のPETは未配向のPETであるA-PETであり、アモルファスPETとも呼ばれる。A-PETを含むPETフィルムとは、PET樹脂を加熱溶融して型から押し出して成形し、この成形後のフィルムを冷却ドラムによって急冷することによって非結晶の状態に形成されるフィルムをいう。フィルム状に成形することを成膜ともいう。
【0014】
(2)前記袋容器は、前記無延伸PETフィルムが少なくとも一方の面を露出し、前記接合部が、前記無延伸PETフィルムの露出面同士を熱溶着加工により接合されていてもよい。この袋容器によれば、熱プレス方式、インパルス方式、超音波方式等の熱溶着加工によりシートが接合されて製袋される。延伸PETフィルムでは熱溶着が困難であったが、無延伸PETフィルムに対しては低温で熱溶着が可能であり、製袋が容易になる。さらに、無延伸PETフィルム層の露出面同士が溶着されることで、接合部が強固に接合される。なお、このような熱溶着加工をヒートシールとも呼び、また、単にシールとも呼ぶ。
【0015】
(3)この袋容器は、対向する一対の正面部と、各正面部の下端から連続し、前記対向する正面部の下端を繋ぐ底面部を備え、前記底面部は前記接合部を備える。この袋容器によれば、少なくとも底面部がガゼット部として機能し、袋容器の収容空間が大幅に増大する。また、底面部が靭性の高い無延伸PETフィルム層を含むため、収容物の荷重を最も受ける袋容器の底部の変形や破壊が防止される。
【0016】
(4)この袋容器は、各正面部の側端から連続し、前記対向する正面部の側端を繋ぐ側面部を備え、前記側面部は、内側に折り込み可能な折目を有する。この袋容器によれば、側面部がガゼット部として機能し、袋容器の収容空間が大幅に増加する。一方で袋容器の不使用時には、折目に沿って側面部を内側に折り込むことにより、袋容器を折り畳むことができる。
【0017】
従来の延伸PETフィルムを用いた袋容器では、折目を設けるために、延伸PETフィルムと折目加工が可能な他のフィルムとを多層化する必要があったが、この袋容器は、単層であっても、または折目加工可能な他のフィルムと多層化しなくとも、折目を形成することが可能であり、側面部を内側にV字状に折り込み可能となるような所望の方向に延びる折目を形成できる。
【0018】
(5)前記袋容器は、一枚のシートから形成され、前記底面部の前記接合部は、折り曲げられた前記シートのシート面が重ねられて接合されていてもよい。これにより、折目加工可能な他のフィルムと多層化しなくとも折目を形成することが可能であり、無延伸PETフィルムを用いた底ガゼット袋の製作が可能になる。また、底面部が靭性の高い無延伸PETフィルム層を含むため、収容物の荷重を最も受ける袋容器の底部の変形や破壊が防止される。
【0019】
(6)一方の前記正面部は、上端から下端に渡る前記接合部を有していてもよい。この袋容器は、正面部の上端から下端に渡る接合部を有する。無延伸PETフィルム層を備えるシートは、延伸PETフィルム層を備えるシートに比較して、熱溶着加工および折目加工が容易であるため、この袋体によれば、合掌袋などを容易に製作できる。
【0020】
(7)前記無延伸PETフィルム層は、一部または全部の前記接合部において、2組以上の相対する露出面同士が前記シートのシート厚方向において接合されていてもよい。無延伸PETフィルム層は低温で露出面同士が熱溶着可能なため、厚方向に重なり合った2組以上の露出面同士をシールすることができる。これにより、例えば製袋機の備えるヒーターは2組以上の露出面同士を一度にシールすることができ、効率的な製袋加工が可能である。
【0021】
(8)前記無延伸PETフィルム層は、一部または全部の前記接合部において、4組の相対する露出面同士が前記シートのシート厚方向において接合されていてもよい。
【0022】
すなわち、4組の相対する露出面同士が接合されるときは、例えば8枚の前記シートを一箇所において多重に重ねることができ、複雑な構造や組立ての袋容器を得ることができる。このような複雑な構造や組立ての袋容器でありながら、例えば製袋機の備えるヒーターは2組以上の露出面同士を一度にシールすることができ、効率的な製袋加工が可能である。
【0023】
(9)前記無延伸PETフィルム層は、グリコール変性PETを混合して成形されるフィルム層であってもよい。グリコール変性PETはPETのエチレングリコールの一部をシクロヘキサンジメタノールに置き換えたものであり、G-PETとも呼ばれる。前記非結晶のPETがA-PETであれば、この無延伸PETフィルム層はグリコール変性PETとA-PETとを混合して成形されるフィルム層である。
【0024】
グリコール変性PETは結晶化されにくいことが知られている。そのため、非結晶のPETにグリコール変性PETを混合することにより、前記無延伸PETフィルム層は熱溶着加工によって加熱されるときでも結晶化が抑えられ、結晶化が進むことによるシール性不足を低減することができる。
【0025】
また、結晶化が抑えられることにより、前記無延伸PETフィルム層の透明性を保つことができる。これらにより、製袋加工条件の調整を容易に行い、しかも透明性を高く保つことができる。
【0026】
(10)前記非結晶のPETの一部又は全部はイソフタル酸変性PETであってもよい。イソフタル酸変性PETはPETのテレフタル酸の一部をイソフタル酸に置き換えたものである。
【0027】
前記非結晶のPETの一部がイソフタル酸変性PETであれば、この無延伸PETフィルム層はイソフタル酸変性PETと、例えばA-PETとで成形されるフィルム層である。また、イソフタル酸変性PETと、グリコール変性PET及びA-PETが混合されたPETとで成形されるフィルム層でもよい。
【0028】
イソフタル酸変性PETは結晶化されにくいことが知られている。そして、結晶化が抑えられることにより、前記無延伸PETフィルム層の透明性を向上することができる。
【0029】
(11)前記底面部の前記接合部は超音波加熱方式により熱溶着加工されていてもよい。熱溶着加工の方式としては、熱プレス方式、溶断シール方式、超音波加熱方式等がある。一般に熱プレス方式は、溶着温度の制御が容易で、溶着にかかる費用も安価である。一方、超音波加熱方式は、非加熱物の形状等の理由により熱プレス方式では加熱が困難な部位などをピンポイントで加熱することができる。
【0030】
(12)この袋容器は、対向する一対の正面部を備え、前記正面部は、両側端に前記接合部を有していてもよい。この袋容器は、いわゆるサイドシール袋であり、無延伸PETフィルムの露出した面同士が接合された接合部を袋容器のサイドに有し、容易に製袋できる。
【0031】
(13)前記両側端の接合部は、熱溶断方式により熱溶着加工されていてもよい。熱溶断方式の熱溶着加工は加熱刃を用いて熱溶着による接合と同時に、接合されたシートを切断する効率性の高い熱溶着加工である。熱溶断方式は、熱溶着が安定するときに採用することができる方式であることが知られている。
【0032】
(14)前記無延伸PETフィルム層は、グリコール変性PETを混合して成形されるフィルム層であってもよい。
【0033】
前記無延伸PETフィルム層にグリコール変性PETが混合されているため、結晶化によるシール性不足が低減され、この無延伸PETフィルム層は、安定して熱溶断を行うことができる。これによって、熱溶断方式による容易な製袋加工条件の調整が可能となる。また、結晶化が抑えられることにより透明性を保つことができる。
【0034】
(15)前記非結晶のPETの一部又は全部はイソフタル酸変性PETであってもよい。例えば、無延伸PETフィルム層はイソフタル酸変性PETとA-PETとで成形されるフィルム層であってもよい。
【0035】
このとき、イソフタル酸変性PETの結晶化が抑えられることにより、前記無延伸PETフィルム層の透明性を向上することができる。
【0036】
(16)前記無延伸PETフィルム層は30μm~150μmの膜厚を有していてもよい。無延伸PETフィルム層を30μm~150μmの膜厚とすることにより、所望の剛性を有する袋容器を製作できる。例えば、無延伸PETフィルム層を30μm~150μmとすることで、弾性変形可能な程度に所望の靱性を有しながらも一定以上の剛性を有する。これにより、袋容器100は、従来のPP袋やPE袋では達成が困難であった収容物を入れていない状態での自立性を確保できる。
【0037】
(17)本発明は、少なくとも1枚のシートから形成される袋容器であって、前記シートは基材層および接着層のいずれか一方として無延伸PETフィルム層を含み、前記無延伸PETフィルム層は、非結晶のPETを含むPETフィルム層である袋容器を提供する。
【0038】
本発明にかかる袋容器では、無延伸PETフィルム層を含む少なくとも1枚のシートが折り畳まれたり、接合されたりして袋容器が形成されている。この袋容器では、無延伸PETフィルムが基材層とされ、かつ、前記無延伸PETフィルム層が非結晶のPETを含むPETフィルム層であり、適度な剛性(柔軟性)および高い透明性を有するため、他の合成樹脂材料のフィルムでは達成できなかった袋容器の機能、すなわち、高靭性、自立、折畳、広告利用等の特徴的な機能を達成できる。
【0039】
(18)前記無延伸PETフィルム層は、グリコール変性PETを混合して成形されるPETフィルム層であってもよい。すなわち、グリコール変性PETを混合することにより、前記無延伸PETフィルム層は熱溶着加工によって加熱されるときでも結晶化が抑えられ、結晶化が進むことによる加工性不足を低減することができる。また、結晶化が抑えられることにより、前記無延伸PETフィルム層の透明性を保つことができる。これらにより、製袋加工条件の調整を容易に行い、しかも透明性を高く保つことができる。
【0040】
(19)前記非結晶のPETの一部又は全部はイソフタル酸変性PETであってもよい。イソフタル酸変性PETは結晶化されにくいことが知られている。そのため、結晶化が抑えられることにより、前記無延伸PETフィルム層の透明性を向上することができる。
【0041】
(20)前記袋容器は、収容物を出し入れする開口を有し、前記開口を封止することで密閉構造が形成されていてもよい。無延伸PETフィルム層は、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等に比較して、酸素透過度、水蒸気透過度、保香性において、優れた特性を有する。よって、袋容器が密閉構造に形成されていると、収容物が飲食物等の場合であっても、ポリエチレンフィルム・ポリプロピレンフィルム等に比較して、品質を低下することなく、収容物を長期に保存することができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明に係る袋容器は、熱溶着加工、折目加工等の製袋加工を容易に行い、所望の膜厚で最適な剛性(柔軟性)を備える透明性の高い袋容器、すなわち、従来の袋容器に比較して高級感を与える袋容器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本発明の第1の実施形態に係る袋容器(角底袋)を示す斜視図である。
図2図1に示す袋容器を底面側から示す斜視図である。
図3図1に示す袋容器を展開した展開図である。
図4図1に示す袋容器の折り畳まれた状態を示す斜視図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係る袋容器(ボックスパウチ(登録商標))を示す斜視図であり、(A)は上部側から、(B)は底部側から袋容器を示す斜視図である。
図6図5に示す袋容器を展開した展開図である。
図7図5に示す袋容器のシートの層構成を示す断面図である。
図8図5に示す袋容器の正面図及び縦断面の説明図である。
図9図5に示す袋容器のシートの変形例に係る層構成を示す断面図である。
図10】本発明の第3の実施形態に係る袋容器(スタンド袋)を示す斜視図である。
図11図10に示す袋容器(スタンド袋)の正面図及び縦断面の説明図である。
図12】本発明の第4の実施形態に係る袋容器(合掌袋)を示す斜視図である。
図13】本発明の第5の実施形態に係る袋容器(二方袋)を示す斜視図である。
図14】本発明の第6の実施形態に係る袋容器(三方袋)を示す斜視図である。
図15】本発明の第7の実施形態に係る袋容器(サイドシール袋)を示す斜視図である。
図16図15に示す袋容器(サイドシール袋)の熱溶断工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明の第1の実施形態にかかる袋容器100について、図1図4を用いて詳細に説明する。袋容器100は、側部および底部にマチ(ガゼット部)を設けた、いわゆる角底袋である。角底袋は、略直方体の収容空間を形成し、平袋等の他の袋に比較して収容容積が大きいにも拘わらず、収容物を収容しない時、すなわち不使用状態の時に折り畳み可能といった特徴を有する。また、角底袋は、使用状態で安定した自立性を有する。
【0045】
袋容器100は、図1および図2に示すように、略直方体に形成されており、直方体の正面および背面を形成する一対の正面部120と、直方体の両側部を形成する一対の側面部140と、直方体の底部を形成する底面部160とを備える。これらにより、袋容器100は、図1において上方に開放する開口を形成されている。袋容器100は、前記開口から収容物を出し入れできる。
【0046】
袋容器100の各面部は、それぞれ、アスペクト比は異なるが、長方形に形成されている。しかし、各面部は、袋容器として機能すれば、台形やその他の形状であってもよい。そのような袋容器は、例えば、正面部および底面部が長方形で側面が台形のもの、底面部が長方形で、正面部および側面が台形のもの等が考えられる。
【0047】
袋容器100は、図3に示す1枚のシートを折り曲げて形成されている。シートには、一方の正面部120を形成する第1の正面シート部120aと、一方の側面部140を形成する第1の側面シート部140aと、他方の正面部120を形成する第2の正面シート部120bと、他方の側面部140を形成する第2の側面シート部140bと、接合シート部180とが、順に、連続して並ぶように設けられている。第1および第2の正面シート部120a,120b、第1および第2の側面シート部140a,140bならびに接合シート部180は、それぞれ、アスペクト比は異なるが、長方形に形成されている。なお、本明細書において、シートの形状を特定する長方形または四角形の用語には、角の部分を丸く加工した、いわゆる角Rを角に有するものも含む。
【0048】
シートには、さらに、各正面部120および各側面部140の下方(図3の下側)に連続して、底面部160を形成する第1、第2、第3および第4の底面シート部160a,160b,160c,160dが形成されている。各底面シート部160a~160dは、それぞれ、略台形に形成されている。各底面シート部160a~160dは、後述するように、相互に重ね合わせられて底面部160を形成する。しかし、底面部160を形成できれば、他の形状であってもよい。すなわち、台形のような四角形に限らず、凸状、凹状等の形状でもよい。
【0049】
各正面シート部120a,120bは、小判型に切り抜かれた穴122a,122bを備える。各穴122a,122bは、シートから袋容器100が形成された状態で、対向する位置に設けられている。これにより、両穴122a,122bに指を通すことにより、両穴122a,122bが手提部122として機能する(図1および図2を参照)。しかし、手提部は他の構成により達成されてもよい。例えば、袋容器に所望の穴を2つ空け、該穴に一本の紐の両端を通し、各端をカシメ等で固定し、該紐で輪っかを形成することで手提部とすることもできる。
【0050】
各側面シート部140a,140bは、それぞれ、上下方向に延びる第1の折目142と、第1の折目142の下方の途中から分岐するように一の斜下方および他の斜下方に延びる第2の折目144とを有し、第1の折目142と第2の折目144とで逆Y字状の折目が形成されている。各折目には、折目加工の一種であるいわゆる罫線加工がされ、例えば、シートの断面視でV字状の溝が形成される。これにより、折目に沿ってシートを容易に折り曲げることができる。その溝は、点線状に形成されてもよいし、連続する線状に形成されてもよい。しかし、折目142,144は罫線加工されずに、折り曲げられていてもよい。
【0051】
第1の折目142は、各側面シート部140a,140bの長手方向に上端から下方に向けて、かつ側面シート部140a,140bの短手方向の中央の位置において延び、第2の折目144は、第1の折目142の途中から側面シート部140a,140bの一の下端(左下端)および他の下端(右下端)まで延びている。
【0052】
第1および第2の折目142,144に沿って側面シート部140a,140bを折り曲げることにより、側面部140はV字状に袋容器の内側に折り込み可能に形成されており、不使用状態のときに袋容器100を折り畳み可能としている(図4を参照)。シートは後述するように非結晶のPETを含む無延伸PETフィルムを基材層とする薄膜シートとして形成されており、従来のプラスチックフィルムと同様の方法で折目加工することができる。延伸PETフィルムでは、延伸により結晶が配向し、所望の方向に折目加工ができなかった。しかし、非結晶のPETを含む無延伸PETフィルムでは、延伸により結晶が配向することがないため、所望の方向に折目加工ができる。
【0053】
シートの各面シート部の境界線で、各面シート部が直角に折り曲げられることにより、シートは、図1および図2に示すように、略直方体の袋容器100とされる。各面シート部の境界線は、第1および第2の折目142,144と同様の罫線加工により折目が形成されていてもよい。
【0054】
袋容器100には、第1~第4の底面シート部160a~160dが相互に重ねられた状態で、底面部160と同一形状の補助シート100Aが入れられる(図1を参照)。第1~第4の底面シート部160a~160dに補助シート100Aが重ね合わせられた状態で、底面部160の複数箇所が接着剤等を用いて接着され複数の第1の接合部162が形成される(図2を参照)。
【0055】
また、袋容器100は、第1の正面シート部120aから成る一方の正面部120は第2の接合部182を備える。第2の接合部182は、接合シート部180が第1の正面シート部120aの側端の一部に重ねられ、重ねられた部分を接着して接合することで形成される。これにより、無延伸PETフィルム層同士が接合される。
【0056】
また、接着剤等を用いた接着のほか、インパルス方式、超音波方式等の熱溶着によりこれらの接合部162,182を形成してもよい。
【0057】
袋容器100を形成するシートは、無延伸PETフィルム層のみの単層構造である。すなわち、シートの無延伸PETフィルム層は両面が露出している。これにより、無延伸PETフィルムは単層で基材層および接着層として機能する。ここで、基材層とは1枚のシートの複数の層のうち、もっとも剛性の高い層を意味し、概ね、シートの剛性および靭性を支配する。また、接着層とは、一方の面が、他のシート等の面と接合される層を意味する。したがって、本実施の形態に係る袋容器100は、シートが基材層または接着層として機能する無延伸PETフィルム層を含み、当該無延伸PETフィルム層同士を接合した接合部を有する。
【0058】
この無延伸PETフィルム層は原料としてPET樹脂を用いる。無延伸PETフィルム層は非結晶のPETを含むPETフィルム層であり、PET樹脂を加熱溶融して型から押し出して成膜し、この成膜後のフィルムを冷却ドラムによって急冷することによって非結晶の状態に形成される。このような工程により形成される非結晶のPETの例として、未配向のPETであるA-PET(アモルファスPET)が挙げられる。
【0059】
このとき、リサイクルのPET樹脂を加熱溶融して成膜してもよい。
【0060】
また、袋容器100の無延伸PETフィルム層はグリコール変性PETとA-PETとを混合して成形されるフィルム層により構成されていてもよい。結晶化がされにくいため、透明性を高く保つことができる。
【0061】
グリコール変性PETとA-PETとを混合して形成されるフィルム層は、例えば溶融押出し法により、加熱溶融したグリコール変性PET樹脂とA-PET樹脂とをT形ダイスから押し出すことにより成形して得られる。このとき、グリコール変性PET樹脂とA-PET樹脂とが、混合された状態で押出し装置に設けられたホッパーに投入されて溶融され、または、押出し装置に設けられた2基のそれぞれのホッパーに投入された上で溶融押出しの工程中に混合される。
【0062】
グリコール変性PETはPETのエチレングリコールの一部をシクロヘキサンジメタノールに置き換えたものであり、G-PETとも呼ばれる。グリコール変性PETは結晶化されにくいことが知られている。そのため、グリコール変性PETを混合することにより、無延伸PETフィルム層は例えば熱溶着加工によって加熱されるときでも結晶化が抑えられ、結晶化が進むことによるシール性不足を低減することができる。
【0063】
また、結晶化が抑えられることにより、無延伸PETフィルム層の透明性を保つことができる。これらにより、製袋加工を容易に行い、しかも透明性を高く保つことができる。
【0064】
袋容器100は、グリコール変性PETを混合する場合、前述のような結晶化を抑えることにより、熱溶着時のシール性不足を低減し、また、透明性を高く保つことができる。こうして、製袋加工を容易に行うことができ、かつ、剛性又は柔軟性及び高い透明性を有する袋容器を得ることができる。
【0065】
このとき、リサイクルのグリコール変性PET樹脂を用いてもよい。
【0066】
さらに、袋容器100の無延伸PETフィルム層は、一部又は全部がイソフタル酸変性PETを含むPETフィルム層であってもよい。すなわち、無延伸PETフィルム層がA-PETとイソフタル酸変性PETとで成形されるフィルム層や、グリコール変性PET及びA-PETが混合されたPETとイソフタル酸変性PETとで成形されるフィルム層であってもよい。
【0067】
イソフタル酸変性PETは結晶化されにくいことが知られている。そのため、結晶化が抑えられることにより、無延伸PETフィルム層の透明性を向上することができる。
【0068】
また、専用の改質助剤を用いて結晶化を抑えることもできる。
【0069】
袋容器100は、使用状態、すなわち収容物を収容する時は、図1に示す略直方体の形状で使用される。これに対して、不使用状態、すなわち収容物を収容しない時は、側面部がV字状に内側に折り込まれ、図4に示すシート状に折り畳まれる。
【0070】
各正面部120は、同一形状の四角形に形成されており、各辺が対応するように対向している。すなわち、正面部120の四角形の下端同士は対応しており、この下端を繋ぐように底面部160が形成されている。また、正面部120の四角形の側端同士は対応しており、これらの2つの側端を繋ぐように各側面部140が形成されている。
【0071】
本実施の形態において、無延伸PETフィルム層は80μmの膜厚を有する。80μmの膜厚を有する無延伸PETフィルムは、弾性変形可能な程度に所望の靱性を有しながらも一定以上の剛性を有する。これにより、袋容器100は、従来のPP袋やPE袋では達成が困難であった収容物を入れていない状態での自立性を確保している。
【0072】
しかし、無延伸PETフィルム層は、30μm~150μmの膜厚を有していてもよい。その範囲の厚さであれば、弾性変形可能な程度に靱性が維持されつつ、箱容器とならない程度の柔軟性を有する。さらに、無延伸PETフィルム層は、80μm~120μmの膜厚を有していてもよい。その範囲の厚さであれば、自立性を有する程度に靱性が維持されつつ、収容物に応じて適度に変形する程度の柔軟性を有する。これら膜厚と靭性の関係は無延伸PETフィルム層以外に合成樹脂フィルムが積層される場合は他のフィルム層の厚さにも依存するが、無延伸PET層が基材層を形成するときは、概ね無延伸PET層が靭性を支配する。
【0073】
本発明の実施の形態にかかる袋容器100は、非結晶のPETを含む無延伸PETフィルム層が基材層及び接着層として機能とする1枚のシートから形成されている。そのため、無延伸PETフィルムは、高い透明性、光沢、靭性(いわゆる、コシ)を有し、無延伸PETフィルムを基材層とするシートからなる袋容器は、従来の合成樹脂からなるシートに比較して高級感を喚起する。なお、袋容器100を構成する各面部のシートは、下述する第2の実施形態に係る袋容器200が採用するような無延伸PETフィルム200aに延伸PETフィルム層200bがラミネートされた2層構造でもよい。
【0074】
本実施の形態に係る袋容器100は、所定の大きさの四角形に切断されたシート、いわゆるカットシートが所定の形状に切り抜かれて形成される。しかし、シートは、ロール状に巻かれた長尺のシート、いわゆるロールシートが切り抜かれて形成されてもよい。
【0075】
次に、本発明の第2の実施形態に係る袋容器200について、図5図9を用いて説明する。袋容器200は、角底袋の一形態であるボックスパウチ(登録商標)である。袋容器200は、袋容器100と同様に、側部および底部にマチ(ガゼット部)を設けられている。しかし、袋容器200は、袋容器100とは異なった製造方法により形成される。
【0076】
ボックスパウチは、例えば、2つのロールシートを切断、折り曲げおよび熱溶着等して形成できる。なお、ボックスパウチは、正面部を他の形状に形成されていてもよく、例えば、キャラクターの形状に正面部を形成し、正面部の周辺を接合することで、そのキャラクターが直立したような印象を喚起する袋容器を形成できる。
【0077】
袋容器200は、図5および6に示すように、袋容器100と同様に略直方体に形成されており、一対の略四角形の正面部220、一対の略四角形の側面部240、略四角形の底面部260を備える。しかし、袋容器200は、袋容器100が1枚のシートから形成されているのに対して、複数枚のシートから形成されている。また、袋容器200は、正面部220と側面部240を接合する接合部280と、正面部220と底面部260とを接合する接合部282と、側面部240と底面部260とを接合する接合部284とを備える。
【0078】
接合部280は、正面部220の両側端および側面部240の両側端に形成されている。また、接合部282は、正面部220の下端および底面部260の前後端に設けられたている。さらに、接合部284は、側面部240の下端および底面部260の左右端に設けられている。
【0079】
袋容器200を構成する各面部のシート200Sは、図7に示すように、無延伸PETフィルム層200aに延伸PETフィルム層200bがラミネートされた2層構造とされている。延伸PETフィルム層は、装飾層として機能し、無延伸PETフィルム層は、基材層および接着層として機能する。ここで、装飾層とは、文字、図形、模様等の装飾部が形成され、他の層にラミネートされることで、シートに装飾を施す層を意味する。
【0080】
延伸PETフィルムは、従来よく知られる一軸延伸または二軸延伸による成形法により製作される。そして、延伸PETフィルム層とは延伸PETフィルムによって形成される層をいう。
【0081】
これに対して、無延伸PETフィルムは、従来よく知られるロール装置によるフィルムの成形法により製作される。(例えば、特開平11-235747号公報参照)。すなわち、本明細書において、延伸PETフィルムは意図的に延伸させ結晶配向が揃えられたものをいい、無延伸PETは意図的に延伸されていないもの、または、結晶化が困難な性質を有しないものをいう。そして、無延伸PETフィルム層は無延伸PETフィルムによって形成される層をいう。
【0082】
延伸PETフィルム層200bは、一部の不透明部分(例えば、図5の「ABC」の部分)202を有し、装飾層となっている。すなわち、シート200Sでは、不透明部分202を有する延伸PETフィルム層200bが透明な無延伸PETフィルム層200aにラミネートされ、該不透明部分が文字、図形、模様等を表示する表示機能を有する。
【0083】
不透明部分202は所望の文字、図形、模様等を延伸PETフィルムに印刷され、印刷された延伸PETフィルムが無延伸PETフィルムにラミネートされることで、所望の文字、図形、模様等が表示されたシートが製作される。無延伸PETフィルム200aと延伸PETフィルム200bとは、従来よく知られるラミネート装置によりラミネートされる。
【0084】
袋容器200では、各面部の袋の内側に位置する面において、無延伸PETフィルム層が露出している。したがって、接合部280、282、284は、無延伸PETフィルム層の露出した面同士が直接接合されている。ここで、無延伸PETフィルム層と、延伸PETフィルム層又は他の合成樹脂フィルム層とは、溶融温度の相違や分子間結合の作用のため、熱溶着加工が困難となる場合がある。したがって、無延伸PETフィルム層の露出した面同士が直接接合されていることにより、接合部は強固に接合されている。
【0085】
袋容器200の各接合部は、各面部の周辺に形成されるため、袋容器200の外側から熱プレス方式により熱溶着加工されている。そのような袋容器の製袋を可能とする装置として、例えば、特開2011-67997に記載された製袋機がある。しかし、各接合部は、他の方式により熱溶着加工されてもよい。
【0086】
袋容器200は、このように接合されることにより、袋容器200の一対の正面部220が対向し、底面部260が、両正面部220の下端から連続し、両正面部220の下端を繋ぎ、側面部240が、両正面部220の側端から連続し、両正面部220の側端を繋ぐように形成される。他の構成は第1の実施形態における構成と共通する。
【0087】
図8(a)は、このように接合されて組み立てられる袋容器200の正面図を示す。そして、図8(b)は図8(a)の正面図が示す断面A-A‘についての縦断面の説明図を示す。また、図8(c)は断面B-B’についての縦断面の説明図を示す。袋容器200の正面図の左右方向における左向きと右向きとを、それぞれ矢印L及びRによって示す。また、上下方向における上向きと下向きとを、それぞれ矢印U及びDによって示す。袋容器200の正面視における奥行き方向における正面向きと背面向きとを、それぞれ矢印F及びBによって示す。
【0088】
袋容器200は、正面部220、側面部240及び底面部260を図6のように配置した上で、それぞれの接合部280,282,284において重ね合わせ、かつ、奥行き方向に熱溶着することによって組み立てられる。図8(b)及び(c)において各接合部280,282,284は太い矢印で示される。これらの接合部280,282,284において、各面部220,240,260のシート200Sは、そのシート厚方向においてお互いに接合される。
【0089】
このとき、各面部220,240,260のシート200Sは、それぞれの無延伸PETフィルム層200aの露出側が、各接合部220,240,260を面するように配置される。
【0090】
断面A-A‘は図8(a)の上下方向の断面であり、左向きLの端縁を通過する断面である。そのため、断面A-A’は正面部220と側面部240とを接合する接合部280を奥行き方向に切断する状態を表し、側面部240と底面部260とを接合する接合部284を奥行き方向に切断する状態を表し、かつ、正面部220と底面部260とを接合する接合部282を奥行き方向に切断する状態を表す。図8(b)及び(c)は袋容器200の奥行き方向の寸法を強調して示す図であり、また、接合部280,282,284において重ね合う直前の状態を示す図である。
【0091】
断面A-A‘では図8(b)が示すように、底面部260が接合されない部分において、正面側Fから背面側Bにかけて順に正面側Fの正面部220、正面側Fの側面部240、背面側Bの側面部240及び背面側Bの正面部220が各接合部280,280を介して4重に重ね合わされる。その結果、無延伸PETフィルム層の2組の相対する露出面同士が、各接合部280,280において各面部220,220,240,240のシート厚方向において接合される。
【0092】
また、底面部260が接合される部分のうち上側Uの領域においては、正面側Fから背面側Bにかけて順に正面側Fの正面部220、最も正面向きFの正面側Fの側面部240a、これよりも背面向きBの正面側Fの側面部240b、正面側Fの底面部260、背面側Bの底面部260、最も正面向きFの背面側Bの側面部240c、これよりも背面向きBの背面側Bの側面部240d及び背面側Bの正面部220が各接合部280,280,284,284を介して8重に重ね合わされる。その結果、無延伸PETフィルム層の4組の相対する露出面同士が、各接合部280,280,284,284において各面部220,220、240a,240c,240c,240d,260,260のシート厚方向において接合される。
【0093】
さらに、底面部260が接合される部分のうち下側Dの領域においては、正面側Fから背面側Bにかけて順に正面側Fの正面部220、正面側Fの底面部260、背面側Bの底面部260及び背面側Bの正面部220が各接合部282,282を介して4重に重ね合わされる。その結果、無延伸PETフィルム層の2組の相対する露出面同士が、各接合部282,282において各面部220,220,260,260のシート厚方向において接合される。
【0094】
断面B-B‘では、図8(c)が示すように、底面部260が接合される部分において、正面側Fから背面側Bにかけて順に正面側Fの正面部220、正面側Fの底面部260、背面側Bの底面部260及び背面側Bの正面部220が各接合部282,282を介して4重に重ね合わされる。その結果、無延伸PETフィルム層の2組の相対する露出面同士が、各接合部282,282において各面部220,220,260,260のシート厚方向において接合される。
【0095】
各接合部280,282,284における熱溶着は、例えば高温のヒーターを奥行き方向に当て、袋容器200を圧着して行う。また、前述の通りこれらの接合部280,282,284において無延伸PETフィルム層の露出した面同士が直接接合されている。無延伸PETフィルム層は露出面同士が熱溶着可能なため、シート厚方向に重なり合った露出面同士をシールすることができる。これにより、例えば製袋機の備えるヒーターは複数組の露出面同士であっても一度にシールすることができ、効率的な製袋加工が可能である。
【0096】
この無延伸PETフィルム層は原料としてPET樹脂を用いる。無延伸PETフィルム層は非結晶のPETを含むPETフィルム層であり、PET樹脂を加熱溶融して型から押し出して成膜し、この成膜後のフィルムを冷却ドラムによって急冷することによって非結晶の状態に形成される。このような工程により形成される非結晶のPETの例として、未配向のPETであるA-PET(アモルファスPET)が挙げられる。
【0097】
袋容器200はこのようなA-PETを含む無延伸PETフィルム層の露出面同士が熱溶着されることにより、各接合部280,282,284が強固に接合される。
【0098】
また、A-PETを含む無延伸PETフィルムは、高い透明性、光沢、靭性(いわゆる、コシ)を有し、A-PETを含む無延伸PETフィルムを基材層とするシートからなる袋容器は、従来の合成樹脂からなるシートに比較して高級感を喚起する。
【0099】
このとき、リサイクルのPET樹脂を加熱溶融して成膜してもよい。
【0100】
ただし、ヒーターの温度、加熱時間等の製袋加工条件によっては無延伸PETフィルム層の熱履歴によって結晶化が進み、シール性が不足する。よって、シール性を向上するため、製袋加工条件の調整を必要とする。特に、2組以上の露出面同士をシールするときは、シート厚方向の全体を高温に加熱するため、シールする露出面同士の組数が多いほど過剰な加熱を起こすおそれが高い。
【0101】
しかも、底面部260が接合される部分のうち上側Uの領域においては4組の相対する露出面同士がシート厚方向において接合されるため過熱状態において溶着され、さらに、結晶化によるシール性不足の生じるおそれが高くなる。
【0102】
そのため、例えば各正面部220,220と底面部260との接合、各側面部240,240と底面部260との接合、および、各正面部220,220と各側面部240,240との接合をそれぞれ個別に行い、その上で各接合部280,280,282,282,284,284を一度に加熱するなどの複数の段階を得て熱溶着することにより、熱履歴による結晶化が進め過ぎないような対策を施す場合もある。
【0103】
ところで、袋容器200の無延伸PETフィルム層はグリコール変性PETとA-PETとを混合して成形されるフィルム層により構成されている。
【0104】
グリコール変性PETとA-PETとを混合して形成されるフィルム層は、例えば溶融押出し法により、加熱溶融したグリコール変性PET樹脂とA-PET樹脂とをT形ダイスから押し出すことにより成形して得られる。このとき、グリコール変性PET樹脂とA-PET樹脂とが、混合された状態で押出し装置に設けられたホッパーに投入されて溶融され、または、押出し装置に設けられた2基のそれぞれのホッパーに投入された上で溶融押出しの工程中に混合される。
【0105】
グリコール変性PETはPETのエチレングリコールの一部をシクロヘキサンジメタノールに置き換えたものであり、G-PETとも呼ばれる。グリコール変性PETは結晶化されにくいことが知られている。そのため、グリコール変性PETを混合することにより、無延伸PETフィルム層は熱溶着加工によって過剰に加熱されるときでも結晶化が抑えられ、結晶化が進むことによるシール性不足を低減することができる。
【0106】
また、結晶化が抑えられることにより、無延伸PETフィルム層の透明性を保つことができる。これらにより、製袋加工条件の調整を容易に行い、しかも透明性を高く保つことができる。
【0107】
このとき、リサイクルのPET樹脂やグリコール変性PET樹脂を用いてもよい。
【0108】
これらのため、たとえ2組や4組の相対する露出面同士がシート厚方向に接合されているような各接合部280,282,284を高温や長時間によるシールを行うときでも、結晶化が抑えられ、結晶化が進むことによるシート性不足を低減することができ、また、透明性を高く保つことができる。こうして、製袋加工を容易に行うことができ、かつ、剛性又は柔軟性及び高い透明性を有する袋容器を得ることができる。
【0109】
さらに、袋容器200の無延伸PETフィルム層は、一部又は全部がイソフタル酸変性PETを含むPETフィルム層であってもよい。すなわち、無延伸PETフィルム層がA-PETとイソフタル酸変性PETとで成形されるフィルム層や、グリコール変性PET及びA-PETが混合されたPETとイソフタル酸変性PETとで成形されるフィルム層であってもよい。また、袋容器200の無延伸PETフィルム層は、製袋加工条件の調整を厳密に行うことによって、グリコール変性PETを混合せずに、A-PET、または、A-PETとイソフタル酸変性PETとで成形されるフィルム層であってもよい。
【0110】
イソフタル酸変性PETは結晶化されにくいことが知られている。そのため、結晶化が抑えられることにより、無延伸PETフィルム層の透明性を向上することができる。
【0111】
また、専用の改質助剤を用いて結晶化を抑えることもできる。
【0112】
袋容器200の側面部240は、第1の実施の形態にかかる袋容器100の側面部140と同様に、上下方向延びる第1の折目242と、第1の折目242の途中から分岐するように一の斜下方および他の斜下方に延びる第2の折目244とを有し、第1の折目242と第2の折目244とで逆Y字状の折目が形成されている。また、底面部260は、第3の折目246を有する。各折目は、いわゆる罫線加工がされている。しかし、折目242、244および246は罫線加工されずに、折り曲げられていてもよい。
【0113】
これにより、折目に沿ってシートを容易に折り曲げることができる。側面部240は、第1~第3の折目242、244および246に沿って折り曲げられることにより、側面部240および底面部260がV字状に袋容器の内側に折り込み可能に形成されており、不使用状態のときに袋容器200を折り畳み可能とされている。
【0114】
シート200Sは、無延伸PETフィルム層に延伸PETフィルム層をラミネートした2層構造とされているが、無延伸PETフィルム層のみから成る単層構造であってもよいし、無延伸PETフィルム層の一方の面が露出していれば、複数層構造の他の層構成であってもよい。単層構造のシートを接合するときは、インパルス方式や超音波方式により熱溶着し、または、接着剤等を用いて接着する。
【0115】
また、袋容器200において、無延伸PETフィルムは、基材層および接着層として機能するが、少なくとも基材層および接着層のいずれか一方として機能すればよい。すなわち、基材層および接着層のいずれか一方を無延伸PETフィルム層から形成し、他の一方を他の合成樹脂フィルム層または延伸PETフィルム層から形成してもよい。
【0116】
袋容器200は、全て同一の層構成のシートから形成されているが、各シートが異なる層構成であってもよい。例えば、無延伸PETフィルム層および延伸PETフィルム層の2層構造のシートから正面部220を形成し、無延伸PETフィルム層のみの単層構造のシートから側面部240および底面部260を形成するようにしてもよい。
【0117】
袋容器200のシート200Sの変形例として、例えば図9に示す、シート200Tがある。シート200Tは、シート200Sが2層構造であるのに対して、3層構造とされている。シート200Tは、基材層として機能する例えばPEフィルム層200cと、接着層として機能する無延伸PETフィルム層200dと、装飾層として機能する延伸PETフィルム層200eとを備える。
【0118】
このようなシート200Tであっても、無延伸PETフィルム層200dの一方の面が露出しているため、当該面を袋容器200の内側に配置するように製袋すれば、無延伸PETフィルム層同士を接合することができる。
【0119】
次に第3~第7の実施形態に係る袋容器300,400,500,600,700について、図10図16を用いて説明する。これら袋容器は、従来よく知られる製袋方法により製袋することができる。
【0120】
図10に示す第3の実施形態に係る袋容器300は、スタンド袋と称され、一対の略四角形の正面部320と、略円形の底面部360とを備える。袋容器300は、複数枚のシートから形成されている。例えば、スタンド袋は、2つのロール状に巻かれたシートが折り曲げ、切断および熱溶着等されて形成できる。なお、スタンド袋は、正面部を他の形状に形成されていてもよく、例えば、キャラクターの形状に正面部を形成し、正面部の周辺を接合することで、そのキャラクターが直立したような印象を喚起する袋容器を形成できる。
【0121】
正面部320を形成するシートは、シート200Sと同様に、無延伸PETフィルム層と延伸PETフィルム層から成る2層構造とされている。また、無延伸PETフィルム層は基材層および接着層として機能し、延伸PETフィルム層は装飾層として機能する。これにより、袋容器300の正面部320は、袋容器200と同様に、不透明部分302として「ABC」文字を表示される。
【0122】
また、第2の実施形態と同様に、シートは無延伸PETフィルム層のみから成る単層構造であってもよい。
【0123】
袋容器300を形成する各シートは、無延伸PETフィルム層の少なくとも一方の面が露出していれば、他の層構成であってもよい。また、袋容器300を形成する各シートが2層以上の場合に、無延伸PETフィルム層は、少なくとも基材層または接着層として機能すればよい。
【0124】
袋容器300は、各面部が熱溶着加工により接合されている。すなわち、正面部320は両側辺が相互に熱溶着加工により接合された接合部380を備え、正面部320と底面部360とは、それぞれの周辺が重ね合わされ、熱溶着加工により接合された接合部382とを備える。接合部380は、無延伸PETフィルム層の露出した面同士が直接接合されている。袋容器300の各接合部は、各面部の周辺に形成されるため、袋容器300の外側から熱プレス方式により熱溶着加工されている。しかし、各接合部は、他の方式により熱溶着加工されてもよい。
【0125】
ただし、前述の単層構造のシートを接合するときは、インパルス方式や超音波方式により熱溶着し、または、接着剤等を用いて接着する。
【0126】
袋容器300は、このように接合されることにより、袋容器300の一対の正面部320が対向し、底面部360が、両正面部320の下端から連続し、両正面部320の下端を繋ぐように形成される。
【0127】
袋容器300の底面部360は底部のマチ(ガゼット部)を形成する。また、底面部360には一方向に延びる折目362が形成されている。折目362は、いわゆる罫線加工がされ、例えば、シートの厚さ方向にV字状の溝が形成される。これにより、折目に沿ってシートを容易に折り曲げることができる。折目362に沿って底面部を折り曲げることにより、V字状に袋容器の内側に折り込み可能に形成されており、不使用状態のときに袋容器300を折り畳み可能としている。しかし、折目362は罫線加工されずに、折り曲げられていてもよい。他の構成は第2の実施形態における構成と共通する。
【0128】
図11(a)は、このように接合され、折り曲げられて組み立てられる袋容器300の正面図を示す。そして、図11(b)は図11(a)の正面図が示す断面A-A‘についての縦断面の説明図を示す。また、図11(c)は断面B-B’についての縦断面の説明図を示す。袋容器300の正面図の左右方向における左向きと右向きとを、それぞれ矢印L及びRによって示す。また、上下方向における上向きと下向きとを、それぞれ矢印U及びDによって示す。袋容器300の正面視における奥行き方向における正面向きと背面向きとを、それぞれ矢印F及びBによって示す。
【0129】
袋容器300は、正面部320及び底面部360を畳んだ状態で、それぞれの接合部380,382において重ね合わせ、かつ、奥行き方向に熱溶着することによって組み立てられる。図11(b)及び(c)において各接合部380,382は太い矢印で示される。これらの接合部380,382において、各面部320,360のシートは、そのシート厚方向においてお互いに接合される。
【0130】
このとき、各面部320,360のシートは、それぞれの無延伸PETフィルム層の露出側が、各接合部380,382を面するように配置される。
【0131】
断面A-A‘は図11(a)の上下方向の断面であり、左向きLの端縁を通過する断面である。そのため、断面A-A’は相対する正面部320,320同士を接合する接合部380を奥行き方向に切断する状態を表し、かつ、正面部320と底面部360とを接合する接合部382を奥行き方向に切断する状態を表す。図11(b)及び(c)は袋容器300の奥行き方向の寸法を強調して示す図であり、また、接合部380,382において重ね合う直前の状態を示す図である。
【0132】
そのため、図11(b)(c)において底面部360の折り曲げ箇所の断面が逆U字状に表されているが、袋容器300を折り畳む際には、折目362に沿って鋭角に折り曲げられる。
【0133】
断面A-A‘では図11(b)が示すように、底面部360が接合されない部分において、正面側Fから背面側Bにかけて順に正面側Fの正面部320及び背面側Bの正面部320が接合部380を介して重ね合わされる。その結果、無延伸PETフィルム層の1組の相対する露出面同士が、接合部380において各面部320,320のシート厚方向において接合される。
【0134】
また、底面部360が接合される部分においては、正面側Fから背面側Bにかけて順に正面側Fの正面部320、正面側Fの底面部360、背面側Bの底面部360及び背面側Bの正面部320が各接合部382,382を介して4重に重ね合わされる。その結果、無延伸PETフィルム層の2組の相対する露出面同士が、各接合部382,382において各面部320,320、360,360のシート厚方向において接合される。
【0135】
ただし、図のS1で示す切欠き領域においては正面側Fの底面部360と背面側Bの底面部360とにおいて、それぞれの左側L端と右側R端とが左向きL及び右向きRに開く半円状を描くように切り欠けている。そのため、切欠き領域S1においては正面側Fの正面部320と背面側Bの正面部320とのそれぞれの無延伸PETフィルム層の露出面同士が直に接合部380aを介して重ね合わされ溶着する。
【0136】
この切欠き領域S1において直に接合されることにより、袋容器300は各正面部320が接地して立ち、かつ、底部のマチ(ガゼット部)を形成することができる。
【0137】
断面B-B‘では、図11(c)が示すように、底面部360が接合される部分である図のS2で示すシール領域において、正面側Fから背面側Bにかけて順に正面側Fの正面部320、正面側Fの底面部360、背面側Bの底面部360及び背面側Bの正面部320が各接合部382,382を介して4重に重ね合わされる。その結果、無延伸PETフィルム層の2組の相対する露出面同士が、各接合部382,382において各面部320,320,360,360のシート厚方向において接合される。
【0138】
各接合部380,382における熱溶着は、例えば高温のヒーターを奥行き方向に当て、袋容器300を圧着して行う。また、前述の通りこれらの接合部380,382において無延伸PETフィルム層の露出した面同士が直接接合されている。無延伸PETフィルム層は露出面同士が熱溶着可能なため、シート厚方向に重なり合った露出面同士をシールすることができる。これにより、例えば製袋機の備えるヒーターは複数組の露出面同士であっても一度にシールすることができ、効率的な製袋加工が可能である。
【0139】
また、この無延伸PETフィルム層はA-PETを含むPETフィルム層である。そのため、無延伸PETフィルム層の露出面同士が熱溶着されることにより、各接合部380,382が強固に接合される。
【0140】
ただし、ヒーターの温度、加熱時間等の製袋加工条件によっては無延伸PETフィルム層の熱履歴によって結晶化が進み、シール性が不足する。特に、袋容器300のような2組又はそれ以上の組数の露出面同士をシールするときは、シート厚方向の全体を高温に加熱するため、シールする露出面同士の組数が多いほど過剰な加熱を起こすおそれが高い。
【0141】
ところで、袋容器300の無延伸PETフィルム層は袋容器200と同様にグリコール変性PETとA-PETとを混合して成形されるフィルム層により構成されている。
【0142】
このため、たとえ2組の相対する露出面同士がシート厚方向に接合されているような各接合部380,382を高温や長時間によるシールを行うときでも、結晶化が抑えられ、結晶化が進むことによるシート性不足を低減することができ、また、透明性を高く保つことができる。こうして、製袋加工条件の調整を容易に行うことができ、かつ、剛性又は柔軟性及び高い透明性を有する袋容器を得ることができる。
【0143】
このとき、リサイクルのPET樹脂やグリコール変性PET樹脂を用いてもよい。
【0144】
さらに、袋容器300の無延伸PETフィルム層は、一部又は全部がイソフタル酸変性PETを含むPETフィルム層であってもよい。すなわち、無延伸PETフィルム層がA-PETとイソフタル酸変性PETとで成形されるフィルム層や、グリコール変性PET及びA-PETが混合されたPETとイソフタル酸変性PETとで成形されるフィルム層であってもよい。また、袋容器300の無延伸PETフィルム層は、製袋加工条件の調整を厳密に行うことによって、グリコール変性PETを混合せずに、A-PET、または、A-PETとイソフタル酸変性PETとで成形されるフィルム層であってもよい。
【0145】
イソフタル酸変性PETは結晶化されにくいことが知られている。そのため、結晶化が抑えられることにより、無延伸PETフィルム層の透明性を向上することができる。
【0146】
また、専用の改質助剤を用いて結晶化を抑えることもできる。
【0147】
本実施の形態において、スタンド袋である袋容器300は四角形に形成された正面部320を備えるが、正面部を他の形状に形成されていてもよい。例えば、キャラクターの形状に正面部を形成し、正面部の周辺を接合することで、そのキャラクターが直立したような印象を喚起する袋容器を形成できる。また、袋容器300を1枚のシートから形成してもよい。このとき、例えば、正面側Fの正面部320、底面部360及び背面側Bの正面部320は袋容器300の底において連続し、図11(b)(c)の縦断面においてあたかもW字状を描くような構成であってもよい。
【0148】
図12に示す第4の実施形態に係る袋容器400は、合掌袋と称され、一対の略四角形の正面部420を備える。袋容器400は、いわゆる平袋であるが、ガゼット部を設けられたガゼット袋として形成されてもよい。袋容器400は1枚のシートから形成されている。すなわち、1枚の四角形のシートが左右両方の略1/4の位置で折り曲げられ、該シートの両端が重ね合わされて接合されている。
【0149】
袋容器400は無延伸PETフィルム層が露出する2層構造のシートから形成される。また、無延伸PETフィルム層は少なくとも基材層または接着層として機能する。例えば、袋容器400のシートが、シート200Sと同様に無延伸PETフィルム層を基材層および接着層とし、延伸PETフィルム層を装飾層とする2層構造とされていれば、袋容器200と同様に、不透明部分として文字、図形、模様等を表示することができる。
【0150】
袋容器400は、一方の正面部420の左右方向の中央に上端から下端に渡る接合部480と底部に左右方向に延びる接合部482とを備える。すなわち、一方の正面部420は前記した1枚の四角形のシートの両端が重ね合わされて熱溶着加工により接合された接合部480を備え、また、両正面部420は、その底辺に、熱溶着加工により接合された接合部482を備える。接合部480、482は、無延伸PETフィルム層の露出した面同士が直接接合されている。袋容器400の各接合部は、袋容器400の外側から熱プレス方式により熱溶着加工されている。しかし、各接合部は、他の方式により熱溶着加工されてもよい。他の構成は第3の実施形態における構成と共通する。
【0151】
上端から下端に渡る接合部480が左右の何れかの正面部420側に倒れる状態で、下端に近い領域においては、この接合部480と、底部に左右方向に延びる接合部482の中央に近い領域とがシート厚方向において重なり合う。この重なり領域においては、図の上側から下側にかけて順に4枚のシートが接合部480,482を介して4重に重ね合わされる。その結果、無延伸PETフィルム層の2組の相対する露出面同士が、各接合部480,482において正面部420のシート厚方向において接合される。
【0152】
各接合部480,482における熱溶着は、例えば高温のヒーターを奥行き方向に当て、袋容器400を圧着して行う。また、これらの接合部480,482において無延伸PETフィルム層の露出した面同士が直接接合されている。無延伸PETフィルム層は露出面同士が熱溶着可能なため、シート厚方向に重なり合った露出面同士をシールすることができる。これにより、例えば製袋機の備えるヒーターは前述のような重なり領域における複数組の露出面同士であっても一度にシールすることができ、効率的な製袋加工が可能である。
【0153】
このとき、各接合部480,482について、例えば接合部480と接合部482との順に個別に溶着し、その上で重なり領域を加熱することができる。
【0154】
また、袋容器200のような側部のガゼット部を設けるときは、各正面部420,420と図示しない側面部とを接合することにより、図8(b)が示す接合部280,280のように無延伸PETフィルム層の2組の露出面同士がシート厚方向において接合され熱溶着される場合もある。
【0155】
これらの無延伸PETフィルム層はA-PETを含むPETフィルム層である。そのため、無延伸PETフィルム層の露出面同士が熱溶着されることにより、各接合部480,482が強固に接合される。
【0156】
しかも、袋容器400の無延伸PETフィルム層はグリコール変性PETとA-PETとを混合して成形されるフィルム層により構成されているため、たとえ2組の相対する露出面同士がシート厚方向に接合されているような接合部を高温や長時間によるシールを行うときでも、結晶化が抑えられ、結晶化が進むことによるシート性不足を低減することができ、また、透明性を高く保つことができる。こうして、製袋加工条件の調整を容易に行うことができ、かつ、剛性又は柔軟性及び高い透明性を有する袋容器を得ることができる。
【0157】
さらに、袋容器400の無延伸PETフィルム層は、一部又は全部がイソフタル酸変性PETを含むPETフィルム層であってもよい。すなわち、無延伸PETフィルム層がA-PETとイソフタル酸変性PETとで成形されるフィルム層や、グリコール変性PET及びA-PETが混合されたPETとイソフタル酸変性PETとで成形されるフィルム層であってもよい。また、袋容器400の無延伸PETフィルム層は、製袋加工条件の調整を厳密に行うことによって、グリコール変性PETを混合せずに、A-PET、または、A-PETとイソフタル酸変性PETとで成形されるフィルム層であってもよい。
【0158】
イソフタル酸変性PETは結晶化されにくいことが知られている。そのため、結晶化が抑えられることにより、無延伸PETフィルム層の透明性を向上することができる。
【0159】
また、専用の改質助剤を用いて結晶化を抑えることもできる。
【0160】
袋容器400は、前記した1枚の四角形のシートが左右の1/4の2カ所で折り曲げられることで接合部480が正面部420の略中央に設けられるが、折り曲げ位置を変更することにより、接合部480は所望の位置に設けることができる。
【0161】
本実施の形態において、合掌袋である袋容器400は四角形に形成された正面部420を備えるが、正面部を他の形状に形成されていてもよい。例えば、キャラクターの形状に正面部を形成することで、そのキャラクター形状の袋容器を形成できる。
【0162】
図13に示す第5の実施形態に係る袋容器500は、二方袋と称され、一対の略四角形の正面部520を備える。袋容器500は、1枚のシートから形成されている。すなわち、袋容器500の両正面部520は、一枚の矩形のシートを中央で折り曲げて重ね合わせることで形成されている。袋容器500の折目は、袋容器の底として機能し第1および第2の折目142,144と同様の罫線加工により折目が形成されていてもよい。
【0163】
袋容器500は無延伸PETフィルム層が露出する2層構造のシートから形成される。また、無延伸PETフィルム層は少なくとも基材層または接着層として機能する。例えば、袋容器500のシートが、シート200Sと同様に無延伸PETフィルム層を基材層および接着層とし、延伸PETフィルム層を装飾層とする2層構造とされていれば、袋容器200と同様に、不透明部分として文字、図形、模様等を表示することができる。
【0164】
また、袋容器500は、重ね合わされた正面部520の両側が相互に熱溶着加工により接合された接合部580を有する。接合部580は、無延伸PETフィルム層同士の露出した面同士が直接接合されている。袋容器500の各接合部580は、各面部の周辺に形成されるため、袋容器500の外側から熱プレス方式により熱溶着加工されている。しかし、各接合部580は、他の方式により熱溶着加工されてもよい。他の構成は第3の実施形態における構成と共通する。
【0165】
接合部580における熱溶着は、例えば高温のヒーターを奥行き方向に当て、袋容器500を圧着して行う。また、これらの接合部580において無延伸PETフィルム層の露出した面同士が直接接合されている。無延伸PETフィルム層は露出面同士が熱溶着可能なため、シート厚方向に重なり合った露出面同士をシールすることができる。
【0166】
また、この無延伸PETフィルム層はA-PETを含むPETフィルム層である。そのため、無延伸PETフィルム層の露出面同士が熱溶着されることにより、接合部580が強固に接合される。
【0167】
なお、袋容器500の無延伸PETフィルム層はグリコール変性PETとA-PETとを混合して成形されるフィルム層により構成されていてもよい。このとき、接合部580を高温や長時間によるシールを行うときでも、結晶化が抑えられ、結晶化が進むことによるシート性不足を低減することができ、また、透明性を高く保つことができる。こうして、製袋加工条件の調整を容易に行うことができ、かつ、剛性又は柔軟性及び高い透明性を有する袋容器を得ることができる。
【0168】
さらに、袋容器500の無延伸PETフィルム層は、一部又は全部がイソフタル酸変性PETを含むPETフィルム層であってもよい。すなわち、無延伸PETフィルム層がA-PETとイソフタル酸変性PETとで成形されるフィルム層や、グリコール変性PET及びA-PETが混合されたPETとイソフタル酸変性PETとで成形されるフィルム層であってもよい。
【0169】
イソフタル酸変性PETは結晶化されにくいことが知られている。そのため、結晶化が抑えられることにより、無延伸PETフィルム層の透明性を向上することができる。
【0170】
また、専用の改質助剤を用いて結晶化を抑えることもできる。
【0171】
本実施の形態において、二方袋である袋容器500は一対の略四角形の正面部520を備えるが、正面部を他の形状に形成されていてもよい。例えば、キャラクターの形状に一対の正面部を形成し、両正面部の共通の一辺を折り返して、正面部の他の周辺を、開口となる一部を除いて接合することで、そのキャラクター形状の袋容器を形成できる。
【0172】
図14に示す第6の実施形態に係る袋容器600は、三方袋と称され、一対の略四角形の正面部620を備える。袋容器600は、同一形状の2枚のシートから形成されている。
【0173】
袋容器600は無延伸PETフィルム層が露出する2層構造のシートから形成される。また、無延伸PETフィルム層は少なくとも基材層または接着層として機能する。例えば、袋容器600のシートが、シート200Sと同様に無延伸PETフィルム層を基材層および接着層とし、延伸PETフィルム層を装飾層とする2層構造とされていれば、袋容器200と同様に、不透明部分として文字、図形、模様等を表示することができる。
【0174】
袋容器600は、重ね合わされた正面部620の両側辺および底辺が相互に熱溶着加工により接合された接合部680,682を有する。接合部680、682は、無延伸PETフィルム層の露出した面同士が直接接合されている。袋容器600の各接合部680,682は、正面部620の周辺に形成されるため、袋容器600の外側から熱プレス方式により熱溶着加工されている。しかし、各接合部は、他の方式により熱溶着加工されてもよい。他の構成は第3の実施形態における構成と共通する。
【0175】
各接合部680,682における熱溶着は、例えば高温のヒーターを奥行き方向に当て、袋容器600を圧着して行う。また、これらの接合部680,682において無延伸PETフィルム層の露出した面同士が直接接合されている。無延伸PETフィルム層は露出面同士が熱溶着可能なため、シート厚方向に重なり合った露出面同士をシールすることができる。
【0176】
また、この無延伸PETフィルム層はA-PETを含むPETフィルム層である。そのため、無延伸PETフィルム層の露出面同士が熱溶着されることにより、各接合部680,682が強固に接合される。
【0177】
なお、袋容器600の無延伸PETフィルム層はグリコール変性PETとA-PETとを混合して成形されるフィルム層により構成されていてもよい。このとき、各接合部680,682を高温や長時間によるシールを行うときでも、結晶化が抑えられ、結晶化が進むことによるシート性不足を低減することができ、また、透明性を高く保つことができる。こうして、製袋加工条件の調整を容易に行うことができ、かつ、剛性又は柔軟性及び高い透明性を有する袋容器を得ることができる。
【0178】
さらに、袋容器600の無延伸PETフィルム層は、一部又は全部がイソフタル酸変性PETを含むPETフィルム層であってもよい。すなわち、無延伸PETフィルム層がA-PETとイソフタル酸変性PETとで成形されるフィルム層や、グリコール変性PET及びA-PETが混合されたPETとイソフタル酸変性PETとで成形されるフィルム層であってもよい。
【0179】
イソフタル酸変性PETは結晶化されにくいことが知られている。そのため、結晶化が抑えられることにより、無延伸PETフィルム層の透明性を向上することができる。
【0180】
また、専用の改質助剤を用いて結晶化を抑えることもできる。
【0181】
本実施の形態において、三方袋である袋容器600は一対の略四角形の正面部620を備えるが、正面部を他の形状に形成されていてもよい。例えば、キャラクターの形状に一対の正面部を形成し、両正面部を重ね合わせた状態で正面部の周辺を、開口となる一部を除いて接合することで、そのキャラクター形状の袋容器を形成できる。
【0182】
図15に示す第7の実施形態に係る袋容器700は、サイドシール袋と称され、一対の略四角形の正面部720を備える。袋容器700は、1枚のシートから形成されている。すなわち、袋容器700の両正面部720は、1枚の矩形のシートを中央で折り曲げて重ね合わせることで形成されている。この折目は、罫線加工がされていてもよい。
【0183】
また、袋容器700は、重ね合わされた正面部720の側辺が相互に熱溶着加工により接合された接合部780を有する。接合部780は、無延伸PETフィルム層同士が直接接合されている。袋容器700の各接合部780は袋容器700の外側から熱溶断方式により熱溶着加工されている。加熱刃を用いる熱溶断方式によれば、熱溶着と同時にシートが切断できるため、所望の接合部を容易に形成できる。
【0184】
熱溶断は加熱刃を用いる熱プレス方式により行うことができる。しかし、例えばインパルス方式、超音波方式等の他の方式による熱溶断を採用してもよい。
【0185】
袋容器700を形成するシートは、無延伸PETフィルム層のみからなる単層構造とされている。しかし、無延伸PETフィルム層の少なくとも一方の面が露出していれば、他の層構成であってもよい。したがって、例えば、無延伸PETフィルム層および延伸PETフィルム層の2層構造のシートから袋容器700を形成するようにしてもよい。他の構成は第3の実施形態における構成と共通する。
【0186】
図16は2つの袋容器700(i),700(ii)を形成するため、例えば熱プレス方式の熱溶断のための加熱刃Kが、重ね合わせたシートを熱溶断する状態を示す。高温の加熱刃Kは、各袋容器700(i),700(ii)のそれぞれの両正面部720,720,720,720となる2枚の重ね合わされたシートに対して当接するよう図の下向きの矢印Wdが示す下降向きに移動する。そして、熱溶断を行った後に、下降向きWdと反対の上昇向きWuに戻る。
【0187】
このとき、下降向きWdに移動しつつ加熱刃Kの先端Ktがシート厚方向に相対するシート同士を加熱して熱溶着する。そして、先端Ktの下降が仮想線が示すように進むにつれ、加熱刃Kは図の上段のシートと下段のシートとを溶断し、図の左側の袋容器700(i)と右側の袋容器700(ii)とを別体のものとするように切断する。
【0188】
また、加熱刃Kが当接した付近の領域において、左側の袋容器700(i)の接合部780(i)及び右側の袋容器700(ii)の接合部780(ii)が形成される。
【0189】
袋容器700(i),700(ii)を形成するシートが2層構造のシートのときは、図の上段のシートの下側に無延伸PETフィルム層が配置され、かつ、図の下段のシートの上側に無延伸PETフィルム層が配置される。その結果、各接合部780(i),780(ii)において無延伸PETフィルム層の露出した面同士が直接接合されている。無延伸PETフィルム層は露出面同士が熱溶着可能なため、シート厚方向に重なり合った露出面同士をシールすることができる。
【0190】
また、この無延伸PETフィルム層はA-PETを含むPETフィルム層である。そのため、無延伸PETフィルム層の露出面同士が熱溶着されることにより、各接合部780(i),780(ii)が強固に接合される。また、加熱刃Kによって形成される各接合部780(i),780(ii)が狭い範囲の領域にしか形成されない場合や、溶断を同時に行うために短時間の加工が行われる場合でも、十分に強い接合が可能となる。
【0191】
なお、袋容器700の無延伸PETフィルム層はグリコール変性PETとA-PETとを混合して成形されるフィルム層により構成されていてもよい。加熱刃Kによって袋容器700の溶断をも同時にされるため、各接合部780(i),780(ii)に対して例えば短時間に高温な加工を行うときでも、結晶化が抑えられ、結晶化が進むことによるシール性不足を低減することができ、また、透明性を高く保つことができる。こうして、製袋加工を容易に行うことができ、かつ、剛性又は柔軟性及び高い透明性を有する袋容器を得ることができる。
【0192】
さらに、袋容器700の無延伸PETフィルム層は、一部又は全部がイソフタル酸変性PETを含むPETフィルム層であってもよい。すなわち、無延伸PETフィルム層がA-PETとイソフタル酸変性PETとで成形されるフィルム層や、グリコール変性PET及びA-PETが混合されたPETとイソフタル酸変性PETとで成形されるフィルム層であってもよい。
【0193】
イソフタル酸変性PETは結晶化されにくいことが知られている。そのため、結晶化が抑えられることにより、無延伸PETフィルム層の透明性を向上することができる。
【0194】
また、専用の改質助剤を用いて結晶化を抑えることもできる。
【0195】
ところで、袋容器700を形成する各シートが2層以上の場合に、無延伸PETフィルム層は、少なくとも基材層または接着層として機能すればよい。例えば、袋容器700のシートが、シート200Sと同様に無延伸PETフィルム層を基材層および接着層とし、延伸PETフィルム層を装飾層とする2層構造とされていれば、袋容器200と同様に、不透明部分として文字、図形、模様等を表示することができる。
【0196】
本実施の形態において、サイドシールである袋容器700は一対の略四角形の正面部720を備えるが、正面部を他の形状に形成されていてもよい。例えば、キャラクターの形状に一対の正面部を形成し、両正面部を重ね合わせた状態で正面部の周辺を、開口となる一部を除いて接合することで、そのキャラクター形状の袋容器を形成できる。
【0197】
なお、これらの各実施形態に係る袋容器において、収容物を出し入れする開口は、チャックや、熱溶着により封止可能とされていてもよい。これにより、袋容器は密閉構造に形成される。ここで、本発明の実施の形態に係る袋容器に用いられる無延伸PETフィルム層は、従来のポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等に比較して、酸素透過度、水蒸気透過度、保香性において、優れた特性を有する。
【0198】
したがって、これらの各実施形態に係る袋容器が密閉構造に形成されていると、収容物が飲食物等の場合であっても、ポリエチレンフィルム・ポリプロピレンフィルム等に比較して、品質を低下することなく、収容物を長期に保存することができる。
【0199】
本発明の実施の形態に係る袋容器は、製袋機によらず、手作業により作成されてもよい。本発明の実施の形態に係る袋容器は、無延伸PETフィルム層が少なくとも基材層および接着層のいずれか一方に用いられることを一つの特徴とする。これにより、無延伸PETフィルムの物性を利用した袋容器を提供できる。
【0200】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
【産業上の利用可能性】
【0201】
本発明は、合成樹脂製の袋容器の製袋に利用できる。
【符号の説明】
【0202】
100,200,300,400,500,600,700 袋容器
200S シート
200a 無延伸PETフィルム層
200b 延伸PETフィルム層
120,220,320,420,520,620,720 正面部
140,240, 側面部
142,144,242,244,246,342,442,562,762 折目
160,260,360 底面部
162,182,280,282,284,380,382,480,482,580,680,682,780 接合部
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