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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】生体信号検出装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/11 20060101AFI20240417BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20240417BHJP
   A61B 5/16 20060101ALI20240417BHJP
   A61B 5/021 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
A61B5/11 100
A61B5/00 101R
A61B5/16 130
A61B5/16 200
A61B5/021
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019192371
(22)【出願日】2019-10-22
(65)【公開番号】P2021065391
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】594176202
【氏名又は名称】株式会社デルタツーリング
(74)【代理人】
【識別番号】100101742
【弁理士】
【氏名又は名称】麦島 隆
(72)【発明者】
【氏名】藤田 悦則
(72)【発明者】
【氏名】蔵下 隆
(72)【発明者】
【氏名】川崎 誠司
【審査官】▲高▼ 芳徳
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-026516(JP,A)
【文献】特開2013-052108(JP,A)
【文献】特開2003-169725(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109008990(CN,A)
【文献】特開2010-069021(JP,A)
【文献】特開2013-220810(JP,A)
【文献】特表2019-515708(JP,A)
【文献】特開2006-129933(JP,A)
【文献】富岡 恒憲,ドライバーの居眠りや飲酒の検知につながる新センシング技術、広島大学などが開発,日経クロステック [オンライン] ,2014年09月09日,[検索日 2020.12.16], インターネット:<URL: https://xtech.nikkei.com/dm/article/NEWS/20140909/375391/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06 - 5/22
A61B 5/00
A61B 5/02 - 5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元立体編物を有してなるベース側ネットと、前記ベース側ネットの表面側又は裏面側に配置され、音・振動情報を収集するセンサーとを備えたベースクッション部材と、
前記ベースクッション部材に積層され、人体との当接側に配置される三次元立体編物を有してなる人体当接側ネットを備えた人体当接側クッション部材と
を有し、
前記ベース側ネット及び前記ベースクッション部材、並びに、前記人体当接側ネット及び前記人体当接側クッション部材のいずれもが平面視で略円形であり、
前記ベースクッション部材は、前記ベース側ネットの周囲に配置される環状のビーズ発泡体と、前記ベース側ネット及び前記ビーズ発泡体の表面側及び裏面側をそれぞれ被覆し、それぞれ前記ビーズ発泡体に接着されて配設される2枚のエラストマーフィルムとを有すると共に、前記ビーズ発泡体及び前記2枚のエラストマーフィルムの周縁部が帯状物で被覆され、
前記センサーは、いずれかの前記エラストマーフィルムに被覆されて配設され、
前記人体当接側クッション部材は、その周縁部が圧縮されていると共に帯状物で被覆され、
前記ベースクッション部材に対し、前記人体当接側クッション部材が滑り止めを介して積層されている
人体の音・振動情報である生体信号を検出する生体信号検出装置。
【請求項2】
三次元立体編物を有してなるベース側ネットと、前記ベース側ネットの表面側又は裏面側に配置され、音・振動情報を収集するセンサーとを備えたベースクッション部材と、
前記ベースクッション部材に積層され、人体との当接側に配置される三次元立体編物を有してなる人体当接側ネットを備えた人体当接側クッション部材と
を有し、
前記ベース側ネット及び前記ベースクッション部材、並びに、前記人体当接側ネット及び前記人体当接側クッション部材のいずれもが平面視で略円形であり、
前記ベースクッション部材は、前記ベース側ネットの周囲に配置される環状のビーズ発泡体と、前記ベース側ネット及び前記ビーズ発泡体の表面側及び裏面側をそれぞれ被覆し、それぞれ前記ビーズ発泡体に接着されて配設される2枚のエラストマーフィルムとを有すると共に、前記ビーズ発泡体及び前記2枚のエラストマーフィルムの周縁部が帯状物で被覆され、
前記センサーは、いずれかの前記エラストマーフィルムに被覆されて配設され、
前記人体当接側クッション部材は、その周縁部が圧縮されていると共に帯状物で被覆され、
前記ベースクッション部材に対し、前記人体当接側クッション部材が、中心部に設けられた軸部材を介して回転可能に積層されている
人体の音・振動情報である生体信号を検出する生体信号検出装置。
【請求項3】
前記人体当接側クッション部材の直径が前記ベースクッション部材の直径以上である請求項1又は2記載の生体信号検出装置。
【請求項4】
前記センサーが、前記ベースクッション部材の中心部に一つ設けられている請求項記載の生体信号検出装置。
【請求項5】
前記センサーが、前記ベースクッション部材に、前記軸部材の外方に一つ設けられている請求項記載の生体信号検出装置。
【請求項6】
前記センサーが、前記ベースクッション部材に、同一円周上に等間隔で複数設けられている請求項1又は2記載の生体信号検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人の状態推定に用いる生体信号を検出するのに用いられる生体信号検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1においては、背部支持用クッション部材と、ベースクッション部材と、それらの間に配置されるセンシング機構部を有する生体信号検出機構が開示されている。この生体信号検出機構は、乗物用シートなどの座席構造のシートバックに取り付けて使用され、人の上体から生体信号を検出するために用いられる。検出された生体信号は、それを演算処理し、特許文献2~4に示したように、恒常性維持機能レベルの判定、入眠予兆信号の特定、疲労の推定等を行うための基礎データとして用いられている。また、本発明者らは、近年、生体信号を用いて、運転中の居眠り、疲労だけでなく、血圧推定、健康状態の推定など、健康管理への応用を目的とした研究も行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-52108号公報
【文献】特開2014-117425号公報
【文献】特開2014-223271号公報
【文献】特開2016-26516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の生体信号検出機構は、上記のようにシートバックに取り付けて使用するのに適した構造となっており、例えば、日常的な健康状態を把握するために、寝具に横たわった姿勢で生体信号を取得する場合や、背部以外の例えば臀部から生体信号を取得する場合などの使用には必ずしも適しているとは言えない場合がある。また、このような横たわった姿勢等において生体信号を取得する場合、異物感が大きいと、寝心地や座り心地を損なうおそれもある。
【0005】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、人への異物感が小さく、横たわった姿勢や臀部下等において生体信号を検出するのに適し、例えば日常的な健康状態の管理のための生体信号の検出用として適する生体信号検出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の生体信号検出装置は、
三次元立体編物を有してなるベース側ネットと、前記ベース側ネットの一面側又は他面側に配置されるセンサーとを備えたベースクッション部材と、
前記ベースクッション部材に積層され、人体との当接側に配置される三次元立体編物を有してなる人体当接側ネットを備えた人体当接側クッション部材と
を有し、
前記ベースクッション部材及び人体当接側クッション部材のいずれもが平面視で略円形であることを特徴とする。
【0007】
前記人体当接側クッション部材の周縁部が圧縮され、帯状物で被覆されていることが好ましい。
前記人体当接側クッション部材の直径が前記ベースクッション部材の直径以上であることが好ましい。
【0008】
前記ベースクッション部材に対し、前記人体当接側クッション部材が滑り止めを介して積層されていることが好ましい。
前記ベースクッション部材に対し、前記人体当接側クッション部材が、中心部に設けられた軸部材を介して積層された構成とすることも好ましい。
【0009】
前記センサーが、一つの場合には、前記ベースクッション部材の中心部に設けられていることが好ましい。
前記センサーが、複数の場合には、前記ベースクッション部材に、同一円周上に等間隔で設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の生体信号検出装置は、三次元立体編物からなる人体当接側クッション部材が平面視で略円形に形成されている。また、ベースクッション部材も平面視で略円形に形成されている。方形のものに着座等すると、角部付近を中心とすして端縁がめくれたり折れたりするなど変形が生じやすい。このような変形が生じると検出データに歪みが生じやすい。また、折れなどが生じると違和感になる。これに対し、略円形の場合には、このような折れなどの発生は抑制される。そのため、センサーから得られる検出信号の歪みも小さく、方形のものと比較して検出感度が高い。また、周縁部を圧縮し、さらに帯状物で被覆した構成とすることによって剛性を挙げることで、体になじみ、異物感も小さく、また、周縁部の圧縮によって体に接する部位の面剛性も上がるため、寝心地や座り心地の快適性を損なうことなく使用でき、日常の健康管理のための生体信号の測定に適している。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の第1の実施形態の生体信号検出装置の外観を示した図である。
図2図2(a)は、上記第1の実施形態の生体信号検出装置の平面図であり、図2(b)は、その中央断面図であり、図2(c)はその底面図である。
図3図3(a)は、上記第1の実施形態の生体信号検出装置で用いた人体当接側クッション部材の平面図であり、図3(b)は、ベースクッション部材の平面図である。
図4図4は、上記第1の実施形態の生体信号検出装置の分解斜視図である。
図5図5は、本発明の第2の実施形態にかかる生体信号検出装置を示した図であり、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は(a)のC-C線断面図である。
図6図6は、上記第2の実施形態のベースクッション部材の分解斜視図である。
図7図7は、本発明の第3の実施形態の生体信号検出装置の外観を示した図である。
図8図8(a)は、上記第3の実施形態の生体信号検出装置の平面図であり、図8(b)は、図8(a)のA-A線断面図であり、図8(c)は、図8(a)のB-B線断面図である。
図9図9は、上記第3の実施形態の生体信号検出装置の側面図である。
図10図10は、上記第3の実施形態の生体信号検出装置の分解斜視図である。
図11図11(a)は、第1の実施形態にかかる生体信号検出装置を座位姿勢で臀部下に敷いた際の体圧分布の例を示し、図11(b)は、第3の実施形態にかかる生体信号検出装置を仰臥位姿勢で敷いた際の体圧分布の例を示した図である。
図12図12(a)は、第1の実施形態にかかる生体信号検出装置(実施例)を臀部下に敷いて得られた生体信号のデータであり、図12(b)は、略正方形に形成された生体信号検出装置(比較例)を臀部下に敷いて得られた生体信号のデータである。
図13図13(a)~(h)は、第1の実施形態にかかる生体信号検出装置を用いて得られたデータの解析結果の一例を示したグラフである。
図14図14(a)~(h)は、第1の実施形態にかかる生体信号検出装置を用いて得られたデータの解析結果の他の例を示したグラフである。
図15図15(a)~(g)は、図13(a)~(e),(g),(h)の各解析結果のパワースペクトルを示した図である。
図16図16(a)~(g)は、図14(a)~(e),(g),(h)の各解析結果のパワースペクトルを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に示した実施形態に基づき本発明をさらに詳細に説明する。図1図4は、本発明の第1の実施形態を説明するための図であり、これらの図に示したように、本実施形態の生体信号検出装置1は、ベースクッション部材10と、人体当接側クッション部材20とを有して構成される。
【0013】
ベースクッション部材10は平面視で略円形に形成され、図4に示したように、三次元立体編物を有してなる略円形のベース側ネット11を備えている。ベース側ネット11は、1枚の三次元立体編物のみから構成されていてもよいが、複数枚の三次元立体編物が積層されたものや、三次元立体編物に二次元の布帛、合成皮革などが積層されたものを使用することも可能である。ベース側ネット11の周囲に環状の発泡ポリエチレン等からなるビーズ発泡体12が配設される。センサー30は、ベース側ネット11の裏面11b側に配置される。ベース側ネット11及びその周囲に配置される環状のビーズ発泡体12を合わせた直径を有するエラストマーフィルム13により、センサー30が被覆される。なお、エラストマーフィルム13は、環状のビーズ発泡体12に接着される。
【0014】
ベース側ネット11の表面11a側に、上記と同様に、ビーズ発泡体12の直径とほぼ同じ大きさのエラストマーフィルム14が、該ビーズ発泡体12に接着されて配設される。このようにして2枚のエラストマーフィルム13,14により、ベース側ネット11、ビーズ発泡体12及びセンサー30は挟まれていると共に、それらの周縁部が、ポリプロピレン等の合成樹脂製の帯状物15によって被覆されている。
【0015】
センサー30としては、マイクロフォンが用いられ、好ましくは、静電型のマイクロフォンが用いられる。センサー30は、本実施形態では1つ用いられている。生体信号検出装置1にセンサー30を1つ配置する場合には、人がいずれの方向に動いてもできるだけ生体信号を収集できるように、略円形のベース側ネット11の中心部に設けられることが好ましい。センサー30は、ベース側ネット11とエラストマーフィルム13との間に、ホルダー31を介して配設される。環状のビーズ発泡体12及びエラストマーフィルム13には、それぞれ外周付近に切り込み12a,13aが形成されており、この切り込み12a,13aを介してセンサー30のコード30aが外部に引き出される。
【0016】
人体当接側クッション部材20は平面視で略円形に形成され、三次元立体編物を有してなる略円形の人体当接側ネット21を備えている。人体当接側ネット21は、1枚の三次元立体編物のみから構成されていてもよいが、複数枚の三次元立体編物が積層されたものや、三次元立体編物に二次元の布帛、合成皮革などが積層されたものを使用することも可能である。人体当接側ネット21の周縁部は、ポリプロピレン等の合成樹脂製の帯状物22によって被覆され、図2(b)の断面図に示したように、該周縁部を厚み方向に圧縮するようにして該帯状物22を縫製により取り付けている。この帯状物22は、人体当接側ネット21を構成する三次元立体編物のほつれの防止のほか、周縁部の厚さを薄くすることで、剛性が上がり、体になじみやすく、また、この生体信号検出装置1を載置している寝具の表面、椅子の座面等との段差を小さくし、使用時の異物感の抑制を図っている。また、略円形であるため、周縁部を圧縮することで、該周縁部の内側の部位がほぼ均等に面剛性が上がり、体に当接した際の不快感が小さい。生体信号の計測時に腰痛等の痛みを感じていると、心疾患等の本来の病因の検知を妨げることもあるが、本実施形態の人体当接側クッション部材20は、上記のように当接した際の不快感が小さく、例えば、臥位で腰付近にあてた場合には、腰痛防止にもなり、生体信号の検出用として適している。
【0017】
人体当接側クッション部材20は、ベースクッション部材10上に積層されるが、両者間に滑り止め16を介在させて配設される。滑り止め16は、例えば、発泡塩化ビニール樹脂製の格子状のシートから形成され、ベース側ネット11の表面11a上に積層されたエラストマーフィルム14にラミネート加工されて取り付けられる。上記のように人体当接側ネット21は、三次元立体編物のほか合成皮革などが積層されたものでもよいが、本実施形態では、滑り止め16によって人体当接側クッション部材20の位置ずれを抑制する構造であるため、三次元立体編物の裏面に合成皮革やその他のプラスチックフィルムなどを積層したものを用いることが好ましい。
【0018】
人体当接側クッション部材20は、ベースクッション部材10に対して、相互に動かないように、縫製、接着等して固着するのではなく、上記のように滑り止め16を介在させただけで、多少の動きを許容しつつずれにくくなっている。両者が縫製等によって実質一体になっている場合、体動によって人体当接側クッション部材20が動いて歪んだりすると、ベースクッション部材10も一緒に動く。そのため、センサー30もこれらと共に大きく動いたり配置姿勢が大きく変化したりして、検出感度に影響がでる可能性がある。これに対し、滑り止め16を用いた場合には、体動に対しては、多少の動きが許容されている人体当接側クッション部材20が追従しやすい一方で、ベースクッション部材10はそれにつられて動こうとするものの大きくは動かず、縫製等により両者を強固に固着した場合よりはそのままの姿勢を保持しやすい。その一方、滑り止め16を配置しないとすれば、体動等により、人体当接側クッション部材20がベースクッション部材10から容易に離間してしまう可能性がある。このため、ベースクッション部材10に対してずれにくくしつつ多少の動きを許容する滑り止め16を介して積層することが好ましい。
【0019】
人体当接側クッション部材20は、その直径がベースクッション部材10の直径以上であることが好ましい。人体当接側クッション部材20を構成する三次元立体編物を有する人体当接側ネット21は、三次元立体編物の連結糸等の撓みなどによって人への当たり感を軽減する機能を有している。従って、人体当接側クッション部材20はベースクッション部材10の全体を、ずれが生じてもできるだけ被覆できるように上記のような大きさで形成されていることが好ましい。
【0020】
本実施形態の生体信号検出装置1は、例えば、椅子やベッド上に、ベースクッション部材10を下側にして載置される。よって、人は、人体当接側クッション部材20上に着座したり横たわったりする。これにより、人の生体信号は体表を介して人体当接側クッション部材20に伝わる。人体当接側クッション部材20は、所定のクッション性を有しているため、人の体重が分散され違和感を生じにくく、また、周縁部が上記のように圧縮されて帯状物22によって被覆されているため、椅子の座面やベッドのほかの部位との段差が小さく、体動によって体が多少ずれても異物感を感じにくい。
【0021】
人体当接側クッション部材20は、三次元立体編物を有する人体当接側ネット21を有しているため、音・振動情報として伝わる生体信号はそれを構成するグランド編地や連結糸に伝播され、ベース側ネット11のエラストマーフィルム13,14によって挟まれていると共に、周囲がビーズ発泡体12で取り囲まれた三次元立体編物を有するベース側ネット11内に伝わる。この音・振動情報がセンサー30によって収集され、上記従来の技術の項で説明したように、眠気、疲労、血圧推定、健康状態などを推定するスマートフォン、ノートパソコンその他の情報処理機器による分析データとして利用される。よって、病院等の専門施設でなく、職場、家庭内においても本実施形態の生体信号検出装置1により簡易に測定でき、スマートフォンなどに専用のソフトウェアをインストールしておけば、日常の健康管理を気軽に行うことができる。
【0022】
本実施形態によれば、ベースクッション部材10及び人体当接側クッション部材20のいずれもが平面視で略円形である。方形その他の多角形に形成されたもののように、着座等によって体重がかかった際に周縁部がめくれ上がったり、折れたりすることが少ない。そのため、方形等に形成したものと比較して、センサー30の検出信号は歪みの少ないものとなり、生体信号の検出精度が高くなる。
【0023】
なお、ベース側ネット11及び人体当接側ネット21で用いられる三次元立体編物は、例えば、特開2002-331603号公報に開示されているように、互いに離間して配置された一対のグランド編地と、該一対のグランド編地間を往復して両者を結合する多数の連結糸とを有する立体的な三次元構造となった編地である。一方のグランド編地は、例えば、単繊維を撚った糸から、ウェール方向及びコース方向のいずれの方向にも連続したフラットな編地組織(細目)によって形成され、他方のグランド編地は、例えば、短繊維を撚った糸から、ハニカム状(六角形)のメッシュを有する編み目構造に形成されている。もちろん、この編地組織は任意であり、細目組織やハニカム状以外の編地組織を採用することもできるし、両者とも細目組織を採用するなど、その組み合わせも任意である。連結糸は、一方のグランド編地と他方のグランド編地とが所定の間隔を保持するように、2つのグランド編地間に編み込んだものである。グランド編地の編目密度、グランド糸の太さや素材、連結糸の配設密度、連結糸の太さや素材などを調整することにより、人を支持した際のクッション性、音・振動情報である生体信号の伝達性を調整することができる。
【0024】
図5及び図6は、本発明の第2の実施形態に係る生体信号検出装置1Aを示した図である。本実施形態では、ベースクッション部材10に、3つのセンサー30A,30B,30Cを配設している。3つのセンサー30A,30B,30Cは上記と同様、いずれもマイクロフォンから構成される。また、3つのセンサー30A,30B,30Cは、ベースクッション部材10の同一円周上、等間隔で配設されている。3つのセンサー30A,30B,30Cを同一円周上に等間隔で、すなわち、3つのセンサー30A,30B,30Cの中心同士を結ぶと平面視で正三角形となるように配置するため、ベース側ネット11の裏面11b側に、同一円周上に等間隔で3箇所のセンサー支持部140a,140b,140cを有するセンサーセット用プレート140を配設している。すなわち、このセンサーセット用プレート140の各センサー支持部140a,140b,140cにセンサー30A,30B,30Cをそれぞれ配置すれば、容易に同一円周上に等間隔で配置できる。その他の構成は、上記第1の実施形態とほぼ同様であり、同一の部材については同じ符号で示している。
【0025】
これにより、人体当接側クッション部材20が体動により動いても、いずれかのセンサー30A,30B,30Cが生体信号を検出することができる。また、複数のセンサー30A,30B,30Cから生体信号が得られたならば、そのうち感度の高いデータを利用したり、複数の生体信号を組み合わせて利用したり、データ分析手法が広がる。なお、センサーとしては、3つに限らず、2つ、あるいは、4つ以上用いることも可能であるが、その場合でも、本実施形態のように同一円周上に等間隔で配置することが好ましいことは上記のとおりである。
【0026】
図7図10は、本発明の第3の実施形態にかかる生体信号検出装置1Bを示した図である。本実施形態では、ベースクッション部材10及び人体当接側クッション部材20の中心部の対向面間に軸部材40が設けられている。軸部材40は、ベースクッション部材10側に設けられる円形のプレート部材41とその中心に位置する軸部42と、人体当接側クッション部材20の裏面側に設けられ、軸部42が嵌合する軸受け部43とを有している。これにより、人体当接側クッション部材20は、ベースクッション部材10に対して軸部42を中心として回転可能となっている。
【0027】
ベースクッション部材10及び人体当接側クッション部材20間に軸部材40を配設したため、人体当接側クッション部材20に、中心からやや外方に寄った部位(上記の円形のプレート部材41の外縁付近に相当する部位)を円周方向に縫製し、人体当接側ネット21を圧縮する円周上縫製ライン211を形成している。円周上縫製ライン211が形成されていることにより、該円周上縫製ライン211に取り囲まれた範囲の三次元立体編物の張力が、該円周上縫製ライン211を形成しない状態よりも高まる。それにより、軸部材40の異物感を感じさせないようにしている。
【0028】
一方、センサー30Dは、中心部に軸部材40を配設したため、平面視で、円周上縫製ライン211よりもやや外方に相当する位置にホルダー31Dを介して配設される。上記第1の実施形態のように、センサーを一つだけ設ける場合には、ベースクッション部材10の中心部に設けることが好ましいが、このような軸部材40を配設した場合には、それを逃げた範囲に設ける。但し、この場合も、上記第2の実施形態のように、複数のセンサーを設けることで、好ましくは同一円周上に等間隔で複数設けることで、検出精度を上げることが可能である。また、本実施形態では、ベース側ネット11と、その表面11a上に積層されるエラストマーフィルム14との間にセンサー30Dを配置している。その他の構成は、上記第1及び第2の実施形態とほぼ同様であり、同一の部材については同じ符号で示している。
【0029】
本実施形態によれば、人体当接側クッション部材20が、ベースクッション部材10に対して面方向にスライドする方向へずれにくい。そのため、人体当接側クッション部材20がベースクッション部材10から大きく位置ずれすることがない。その一方、軸部材40が設けられているため、体動が生じた場合には、軸部42を中心として人体当接側クッション部材20が回転方向に動く。このため、体動への追従性を損なうことがなく、使用者に与える違和感も抑制される。
【0030】
ここで、図11(a)は、図1図4の第1の実施形態にかかる生体信号検出装置1を座位姿勢で臀部下に敷いた際の体圧分布を示す。図中、円で囲った部分が生体信号検出装置1の位置である。この図に示したように、座骨結節下付近において圧力が若干高まっており、臀部下に敷くことで生体信号が検出できることがわかる。また、図11(b)は、図7図10の第3の実施形態にかかる生体信号検出装置1Bを仰臥位姿勢で敷いた際の体圧分布を示す。生体信号検出装置1Bを配置した円で囲った部分を見ると、腰部付近では体圧が小さくなっており、仰臥位姿勢で敷いても腰痛への影響が小さいこと、その反面、臀部寄りの圧力が若干高くなっており、その位置を中心として生体信号が検出できることがわかる。
【0031】
また、図12(a)は、図1図4の第1の実施形態にかかる生体信号検出装置1(実施例)を臀部下に敷いて得られた生体信号のデータである。一方、図12(b)は、第1の実施形態にかかる生体信号検出装置1とほぼ同面積であるが、略正方形に形成された生体信号検出装置(比較例)ものを同じ被験者が臀部下で敷いて得られたデータである。2つのデータを比較すると、比較例のデータにはノイズが多く含まれていることがわかる。よって、本発明のように、平面視で略円形の構造とすることが、微弱な生体信号をより精度よく捉えるのに適している。
【0032】
図13及び図14は、同じ被験者が、図1図4の第1の実施形態にかかる生体信号検出装置1を仰臥位姿勢で臀部付近(図13)と腰部付近(図14)にそれぞれ敷いて測定して得られた生体信号のデータ、そのデータを用いた解析例を示した図である。図13(a)~(h)及び図14(a)~(h)のうち、(a)は同時に測定した心電図のデータであり、(b)も同時に測定した指尖容積脈波のデータである。(c)が生体信号検出装置1から得られたデータ、(d)が(c)のデータをフィルタイリング処理した波形、(e)が(d)を処理して求めた1Hz近傍の心部揺動波(APW)、(f)が心拍数、(g)が心尖拍動搬送波、(h)が心尖拍動を示す。
【0033】
図15及び図16は、それぞれ図13及び図14のデータのうち心拍数以外について求めたパワースペクトルである。図15(a)~(g)及び図16(a)~(g)のうち、(a)は心電図、(b)は指尖容積脈波、(c)は生体信号検出装置1から得られたデータ、(d)が(c)のデータをフィルタイリング処理した波形、(e)が(d)を処理して求めた1Hz近傍の心部揺動波(APW)、(f)が心尖拍動搬送波、(g)が心尖拍動の各パワースペクトルを示す。
【0034】
図13図16に示したように、上記実施形態にかかる生体信号検出装置1から得られるデータによって、人の生体状態を解析できることがわかる。
【符号の説明】
【0035】
1,1A,1B 生体信号検出装置
10 ベースクッション部材
11 ベース側ネット
12 ビーズ発泡体
13,14 エラストマーフィルム
16 滑り止め
20 人体当接側クッション部材
21 人体当接側ネット
211 円周上縫製ライン
22 帯状物
30,30A,30B,30C,30D センサー
40 軸部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16