IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユニチカ株式会社の特許一覧

特許7473946水産資材用複合モノフィラメントおよびその製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】水産資材用複合モノフィラメントおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D01F 8/12 20060101AFI20240417BHJP
   A01K 91/00 20060101ALI20240417BHJP
   D01F 8/10 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
D01F8/12 Z
A01K91/00 F
D01F8/10 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020000450
(22)【出願日】2020-01-06
(65)【公開番号】P2021070898
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2019197212
(32)【優先日】2019-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】金築 亮
(72)【発明者】
【氏名】中谷 雄俊
(72)【発明者】
【氏名】西井 義尚
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-219360(JP,A)
【文献】特開平05-304865(JP,A)
【文献】特開2001-123328(JP,A)
【文献】特開2002-371434(JP,A)
【文献】特開2005-076158(JP,A)
【文献】特開2006-161219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 91/00
D01F 8/00 - 8/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯部にフッ素系樹脂、鞘部にポリアミド系樹脂を配し、ポリアミド系樹脂の比率が40~90体積%となるように計量して、紡糸速度12~30m/分で溶融紡糸し、溶融紡糸した糸条を5~25℃の浴中で冷却した後、65~95℃の温水浴中で第一段延伸を行い、次いで、100~250℃で第二段延伸と弛緩熱処理を行い、比重が1.2~1.5である芯鞘型複合モノフィラメントを得ることを特徴とする水産資材用芯鞘型複合モノフィラメントの製造方法。
【請求項2】
温水浴中での第一段延伸の延伸倍率が3.0~4.5倍、全延伸倍率が5.0~7.0 倍であることを特徴とする請求項1記載の水産資材用芯鞘型複合モノフィラメントの製造方法。
【請求項3】
フッ素系樹脂がポリフッ化ビニリデン系樹脂であることを特徴とする請求項1または2記載の水産資材用芯鞘型複合モノフィラメントの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水産資材用複合モノフィラメントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
釣糸等の水産資材に用いられる繊維の代表的なものとして比重1.00以下(約0.92~0.94)の超高強力ポリエチレン繊維、比重約0.91~0.96のポリオレフィン繊維、比重約1.01~1.15のポリアミド繊維、比重約1.27~1.39のポリエステル繊維等が挙げられる。
【0003】
高強力ポリエチレン繊維は、一般的な合成繊維と比べて強力が高く様々な分野で使用されているが、欠点として比重が小さいという特性がある。軽いと風が吹くと容易に流され、且つ、水に浮いてしまう。釣糸として用いる場合、風が吹いていると竿~水面までの間が弛んでしまうと共に水に浮いてしまい弛むためアタリが分からなくなる。漁網として使おうとすると浮力の影響で網が浮こうとするのに加え、水流の影響で揺れが大きくなる。
また単フィラメントが2dtex以下(1.13~1.51dtex)と極めて細いフィラメントをマルチフィラメントに加工したものであるため耐摩耗性に乏しく毛羽立ち易いという欠点もある。
【0004】
ポリアミド繊維は、柔軟性に優れ、強度を有し、適度な伸びを有することから、水産資材としての基本的性能をバランスよく有するものであり、水産資材として多く用いられている。ただ、比重は、水や海水よりも若干大きいだけであることから、風や水流の影響を受けやすい。
【0005】
ポリエステル繊維は、比重も大きく風や水流の影響を受けにくく、定置網等の固定式漁網にはその特性を生かし使用されている。しかし、釣糸として使う場合は、糸が硬く滑り性が良いという長所はあるものの、巻き癖が付きやすく、且つ、摩擦によってカールしやすい傾向にあり、比重は大きいものの、水面~竿の間でのカールによってアタリが分かりにくいという問題が生じる。
【0006】
フロロカーボンテグスは比重1.78と釣糸中で最も大きく、摩耗性にも強いといわれているが、糸が硬く糸癖が付きやすいという欠点がある。
【0007】
また近年、超高強力ポリエチレン繊維と他素材とを組み合わせることにより、比重1.25~1.40とし、風に流されにくく、水中で浮き難い事を特徴にした釣糸(一般に、高比重PEラインとよばれている)が販売されている。この釣糸は、超高強力ポリエチレン繊維の短所である軽さを解消しており、また、強力はナイロン以上ではあるものの、結節部が弱いという欠点を有し、耐摩耗性に弱く毛羽立ち易い点においては、超高強力ポリエチレン繊維と同様であり、素人には扱い難い。
【0008】
アジングや、メバリングには比重1.2~1.3くらいで浮きにくく沈みにくいものが適しているといわれている。ポリエステル繊維に代表される比重1.35~1.39のポリエチレンテレフタレート繊維は比較的沈みやすく根掛かりしやすい。根掛かりした際、ポリエステル繊維の様な伸度が低い素材であると結節部で切れやすい。比重が1.2より小さいと浮きやすくなり好ましくない。また、ポリエステル繊維の中には比重1.27の脂肪族ポリエステルであるポリ乳酸繊維もあるが、極端に硬く、巻き癖も付きやすく、結節強力も低い為、耐久性を求められる水産資材には好ましくない。
【0009】
特許文献1は、ポリフッ化ビニリデンと、比重が1.00以下の樹脂成分とを複合紡糸することによって得られた比重が1.19~1.75の芯鞘または海島構造のモノフィラメントが記されている。また、特許文献2の比較例に、海部にポリフッ化ビニリデン、島部にポリアミドを配したものが挙げられており、ポリアミドがポリフッ化ビニリデンと反応して引張強度に劣り、製糸性の評価が良くない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2003-64530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、風によって流され難く、水中で浮き難く、取り扱いが容易な水産資材用モノフィラメントを提供することを技術的な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、上記課題を達成すべく検討した。その結果、ポリアミド系樹脂とフッ素系樹脂とを特定の比率で複合し、特定の条件で紡糸・冷却・延伸を行うことにより、課題を達しうることを見出し、本発明に到達した。
【0013】
すなわち、本発明は、芯部にフッ素系樹脂、鞘部にポリアミド系樹脂を配し、ポリアミド系樹脂の比率が40~90体積%となるように計量して、紡糸速度12~30m/分で溶融紡糸し、溶融紡糸した糸条を5~25℃の浴中で冷却した後、65~95℃の温水浴中で第一段延伸を行い、次いで、100~250℃で第二段延伸と弛緩熱処理を行い、比重が1.2~1.5である芯鞘型複合モノフィラメントを得ることを特徴とする水産資材用芯鞘型複合モノフィラメントの製造方法を要旨とするものである。
【0014】
以下、本発明について、詳細に説明する。
【0015】
本発明における水産資材用モノフィラメントは、ポリアミド系樹脂とフッ素系樹脂とが芯鞘型に複合されたものであり芯部がフッ素系樹脂、鞘部がポリアミド系樹脂により構成されてなる。なお、芯鞘型において、芯部の数は、1つであっても、2~5個程度の多芯であってもよいが、1つであることが好ましい。
【0017】
本発明におけるポリアミド系樹脂は、分子内にアミド基を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えばナイロン6,ナイロン66,ナイロン69,ナイロン46,ナイロン610,ナイロン1010,ナイロン11,ナイロン12,ナイロン6T,ナイロン9T,ポリメタキシレンアジパミドやこれら各成分を共重合したものやブレンドしたもの等が挙げられる。
【0018】
また、本発明におけるフッ素系樹脂は、比重が1.7以上の熱可塑性のフッ素系樹脂であればよく、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルコキシエチレンとの共重合体などが挙げられる。なかでも、ポリフッ化ビニリデン系樹脂が最も好ましい。
【0019】
本発明において、ポリフッ化ビニリデン系樹脂とは、ポリフッ化ビニリデンホモポリマーまたはフッ化ビニリデンを主成分とするポリフッ化ビニリデンコポリマーを意味する。ポリフッ化ビニリデンコポリマーの具体例としては、フッ化ビニリデンを主成分とし、テトラフルオロエチレン、モノクロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニル、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロイソプロポキシエチレン等を共重合としたコポリマーが挙げられる。また、複合繊維の芯部または鞘部に配するポリフッ化ビニリデン系樹脂としては、異なる2種以上のポリフッ化ビニリデン系樹脂をブレンドしたブレンド体であってもよい。さらには、ポリフッ化ビニリデン系樹脂には、製糸性あるいは糸質物性、透明性等を向上させる目的で、熱安定剤、着色剤、抗酸化剤、可塑剤等を含有させてもよい。
【0020】
また、本発明の目的を達成しうる範囲であれば、複合モノフィラメントを構成する樹脂に、必要に応じて、例えば結晶核剤、艶消し剤、顔料、耐光剤、耐候剤、酸化防止剤、抗菌剤、香料、熱安定剤、可塑剤、染料、界面活性剤、表面改質剤、各種無機電解質及び有機電解質、微粉体、難燃剤等の各種添加剤を添加することができる。また、得られるモノフィラメントの結節強度を向上させるために、脂肪酸アミド類、例えばメタキシリレンビスステアリルアミド、メタキシリレンビスオレイルアミド、キシレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリルアミド、エチレンビスステアリン酸アミド等を添加してもよい。
【0021】
本発明における複合モノフィラメントの比重は、比重1.2~1.5である。モノフィラメン トの比重が1.2~1.5であることにより、モノフィラメントを構成するポリアミド樹脂とフッ素系樹脂とを芯鞘型形態として複合し、かつ両ポリマーが保有する能力を最大限に発揮することができる。比重が1.2より低いと、ポリアミド繊維と近似する比重であるため、本発明が目的とするものではない。比重が1.5より大きいと、本発明において、実用強度を有する水産資材用モノフィラメントが得られにくい傾向となるため好ましくない。
【0022】
本発明においては、複合モノフィラメントにおいて、ポリアミド系樹脂とフッ素系樹脂とを上の比重の範囲となるように複合するものであり、複合モノフィラメントにおいてポリアミド系樹脂が占める割合は40~90体積%である。複合モノフィラメントにおいて、ポリアミド系樹脂が占める割合が40体積%以上とすることにより、水産資材用モノフィラメントとして実用以上の強度を発揮し、かつ優れた結節強度を有するものとなる。一方、ポリアミド系樹脂が占める割合が90体積%以下とすることにより、風に流されにくく、水中で浮き難い水産資材用モノフィラメントを得ることができる。
【0023】
本発明における複合モノフィラメントは、ポリアミド系樹脂が占める割合が40~90体積%であることにより、下に記載する結節強力を達成しうるものとなる。すなわち、モノフィラメントの糸径が0.19mmのものは、結節強力550N/mm以上である。糸径が0.20~0.39mmのものは、結節強力500N/mm以上である。糸径が0.40~0.49mmのものは、結節強力400N/mm以上である。糸径が0.50~0.79mmのものは、結節強力300N/mm以上である。糸径が0.80mm以上のものは、結節強力250N/mm以上である。なお、結節強力の測定方法は、JIS L 1013 結節強さに準じて測定したものである。また、本発明の水産資材用複合モノフィラメントの糸径は0.1mm~2.0mm程度がよい。
【0024】
本発明における水産資材用芯鞘型複合モノフィラメントは、以下のように製造することによって得られる。まず、芯鞘型複合ノズルを用い芯部にフッ素系樹脂、鞘部にポリアミド系樹脂を配し、ポリアミド系樹脂の比率が40~90体積%となるように計量して溶融紡糸する。
【0025】
溶融紡糸の際の紡糸速度は、12~30m/分とする。紡糸速度が30m/分を超えると、粘性の高いフッ素系樹脂は、紡糸速度が高過ぎて、その紡糸速度での塑性変形に追随できず均一に変形できなくなって、延伸方向に太細の斑が生じ、糸径斑および延伸切れの原因となってしまう。一方、紡糸速度が12m/分未満であると、ポリアミド系樹脂に対して紡糸速度が遅すぎることから、ポリアミド系樹脂において延伸斑(太細)が発生し、糸径斑および延伸切れの原因となる。
【0026】
フッ素系樹脂によってモノフィラメントを構成する場合の製造方法は、溶融紡糸時の紡糸速度は、数m/分から10m/分程度に設定することが一般的である。これは、フッ素系樹脂の溶融粘性が高いことから、紡糸時に延伸斑が生じないようにするために、低い速度で紡糸することが必要とされるためである。しかしながら、本発明においては、紡糸速度を上記特定の範囲とすることにより、フッ素系樹脂とポリアミド系樹脂とを複合したモノフィラメントにおいて、水産資材用として必要な性能を具備させることができたのである。
【0027】
次いで、溶融紡糸した糸条は、5~25℃の浴中で冷却した後、65~95℃の温水浴中で第一段延伸を行う。溶融紡糸した糸条を冷却は、上記した温度の水浴であっても、エチレングリコール浴であってよいが、取り扱い性が良好であることから水浴が好ましい。
【0028】
一般に、フッ素系樹脂によってモノフィラメントが構成される場合、溶融紡糸後の冷却は、エチレングリコール浴中(約20℃)で行い、次いで、第一段延伸を150~170℃のグリセリン浴中で行うことが通常に行われている。しかしながら、本発明の複合モノフィラメントを得るためには、溶融紡糸した糸条は、5~25℃の水中で冷却した後、65~95℃の温水浴中で第一段延伸を行う。水中冷却を行った後に、特定の温度範囲の温水浴中で第一段延伸を行うことにより、本発明の複合モノフィラメントは、優れた結節強力を有するものとなる。第一段延伸の際、150~170℃のグリセリン浴中で行うと、実用的な機械的強力および優れた結節強力を有するモノフィラメントを得ることができない。これは、150~170℃のグリセリン浴中において、モノフィラメントを構成するポリアミド系樹脂がスーパードローの状態となり、良好な結晶構造を形成しないためであると考える。なお、グリセリンの温度を100℃程度に下げると粘性が高すぎて取り扱い性が悪く製造工程の妨げとなり、後工程において糸表面に付着したグリセリンを完全に除去することが困難であることから、第二段延伸以降の熱処理において、フィラメント表面が荒れたものとなり、品質に劣ったものとなる。本発明において、第一段延伸の際の延伸倍率は、3.0~4.5倍が好ましい。
【0029】
第一段延伸を行った糸条は、次いで、100~250℃で第二段延伸と弛緩熱処理を行うことによって、本発明の水産資材用複合モノフィラメントを得ることができる。100~250℃で第二段延伸および弛緩熱処理により、前述した第一段延伸によってポリアミド系樹脂中に形成した結晶構造がさらに配向することによって、実用的な機械的強力および優れた結節強力を有するモノフィラメントを得ることができると考える。第二段延伸の延伸倍率は1.3~2.0倍が好ましく、さらに必要に応じて第三段延伸を行い、全延伸倍率は5.0~7.0倍が好ましい。なお、必要に応じて行う第三段延伸は1倍を超え、1.5倍以下がよい。
【0030】
第二段延伸および弛緩熱処理は、100℃であれば温水バス中にて行うとよい。100℃を超える温度で行う場合は、加熱ヒーターを用いた乾熱雰囲気下で熱延伸するとよい。 熱延伸および弛緩熱処理後は、巻取って、複合モノフィラメントが得られる。
【発明の効果】
【0031】
本発明における水産資材用芯鞘型複合モノフィラメントは、フッ素系樹脂とポリアミド系樹脂とが芯鞘複合型に複合されて構成してなる糸であって、水産資材用として好適な比重と機械的強力を有し、かつ優れた結節強力を有し、また、取り扱い性に優れている。
【実施例
【0032】
次に、本発明を実施例に基づいて説明する。なお、本発明は、下の実施例に限定されるものではない。また、実施例における特性値等の測定方法は次のとおりである。
(1)繊度(dtex)
モノフィラメントを一定長(10m)採取し、その質量を測定し10,000m当たりの質量を算出した。
(2)引張強さおよび伸び率(N/mm
JIS L-1013 引張強さおよび伸び率の標準時試験に準じて、定速伸長形引張試験機(島津製作所オートグラフDSS-500)を用い、つかみ間隔25cm、引張速度30cm/分で測定した。また、試料の糸径を、ミツトヨ製デジマチックマイクロメーターMDH-25MBを用いて測定し、前記で得られた引張強さの値と糸径から、断面積(mm)当たりの強力を算出した。
(3)モノフィラメントの比重
上記(1)と(2)で求めた繊度と糸径から、下記計算式を用いて比重を算出した。
【0033】
比重=繊度(g/10,000m)÷(糸半径(cm)×糸半径(cm)×π×10,000(m)×100)
【0036】
実施例
鞘部に配するポリアミド系樹脂として、ナイロン6・66共重合樹脂(DSM社製、商 品名「ノバミッド2030J」)を準備した。また、芯部に配するフッ素系樹脂として、 ポリフッ化ビニリデン樹脂(Zejiang Fluorine Chemical New Material社製 商品名「Zheflon FL2005」)を準備した。
【0037】
ポリアミド系樹脂(鞘部)/フッ素系樹脂(芯部)=74.4/25.6(体積比)となるように計量し、ポリマー温度を255℃で1.8mmφ×6Hの紡糸口金から、紡糸速度17.4m/分の条件で溶融紡糸した(芯部の数は1)。溶融紡糸した糸条は、速度17.4m/分で10℃の水浴中で冷却した後、巻き取ることなく、85℃の温浴中にて3.2倍で延伸し(第一段延伸)、次いで巻き取ることなく、225℃の乾熱雰囲気中で1.8倍で延伸し(第二段延伸)、その後、リラックスさせた後、巻き取った(総延伸倍率5.8倍)。得られた複合モノフィラメントは、糸径0.275mm、繊度845dtex、引張強さ846N/mm、伸度24.0%、結節強度619N/mm、比重1.42であった。
【0038】
比較例1
ポリフッ化ビニリデン樹脂(3M社製 商品名「Dyneon PVDF6012/0000」)のみを用い、単成分のモノフィラメントを製造した。すなわち、ポリマー温度250℃で1.1mmφ×6Hの紡糸口金から、紡糸速度5.4m/分の条件で溶融紡糸した(単層のフィラメント)。溶融紡糸した糸条は、速度5.4m/分で60℃のエチレングリコール浴中で冷却した後、巻き取ることなく、157℃のグリセリン浴中で延伸し(延伸倍率3.3倍)、さらに巻き取ることなく、160℃の乾熱雰囲気中で延伸し(延伸倍率1.4倍)、さらに巻き取ることなく170℃の乾熱雰囲気中で延伸し(延伸倍率1.28倍)、その後、リラックスさせた後、巻き取った(総延伸倍率5.9倍)。得られたモノフィラメントは、糸径0.305mm、繊度1314dtex、引張強さ865N/mm、切断伸度27.0%、結節強度461N/mm、比重1.79であった。
【0039】
実施例1のモノフィラメントは、水産資材として良好に用いうる比重を有するものであって、実用的な引張強さを有し、また、結節強度は優れたものであった。