(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】タッチセンサユニット
(51)【国際特許分類】
G06F 3/02 20060101AFI20240417BHJP
G06F 3/0362 20130101ALI20240417BHJP
【FI】
G06F3/02 F
G06F3/0362 464
(21)【出願番号】P 2020056571
(22)【出願日】2020-03-26
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】508236240
【氏名又は名称】公立大学法人公立はこだて未来大学
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】安井 重哉
【審査官】岩橋 龍太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-211954(JP,A)
【文献】特開2016-170591(JP,A)
【文献】特開2018-073356(JP,A)
【文献】特開2018-037941(JP,A)
【文献】特開2015-035166(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0043174(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/01-3/04895
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作面上に設けられた第1のタッチセンサ面、第2のタッチセンサ面および第3のタッチセンサ面を有するタッチセンサと、
前記第1のタッチセンサ面、前記第2のタッチセンサ面および前記第3のタッチセンサ面のそれぞれにおける接触を検知する検知部と、
前記第1のタッチセンサ面における接触の検知が途切れてから前記第2のタッチセンサ面における接触が検知され、かつ、当該第2のタッチセンサ面における接触の検知が途切れてから前記第3のタッチセンサ面における接触が検知された場合、所定の操作入力を受け付ける操作入力部と、
を備え、
前記操作入力部は、前記第1のタッチセンサ面における接触の検知が途切れる前に前記第2のタッチセンサ面における接触が検知された場合、または、当該第2のタッチセンサ面における接触の検知が途切れる前に前記第3のタッチセンサ面における接触が検知された場合、前記所定の操作入力をキャンセル
し、
前記第2のタッチセンサ面は、前記第1のタッチセンサ面と前記第3のタッチセンサ面の間に配置され、
前記第1のタッチセンサ面と前記第3のタッチセンサ面の触感は、前記操作面の触感と異なり、
前記第2のタッチセンサ面の触感は、前記操作面の触感と同じである、
ことを特徴とするタッチセンサユニット。
【請求項2】
前記操作面は凹面である、ことを特徴とする請求項
1に記載のタッチセンサユニット。
【請求項3】
前記操作面は、凸部上に設けられている、ことを特徴とする請求項
1または2に記載のタッチセンサユニット。
【請求項4】
前記所定の操作入力は、所定の部品を移動または傾動させる操作入力であり、
前記第1のタッチセンサ面、前記第2のタッチセンサ面および前記第3のタッチセンサ面は、前記部品の移動方向または傾動方向に沿って並ぶ、
ことを特徴とする請求項
1から
3のいずれかに記載のタッチセンサユニット。
【請求項5】
前記操作入力部は、前記第1のタッチセンサ面における接触が検知されてから所定時間内に、前記第2のタッチセンサ面と前記第3のタッチセンサ面のそれぞれにおける接触が未検知の場合、前記所定の操作入力をキャンセルする、
ことを特徴とする請求項1
から4のいずれかに記載の
タッチセンサユニット。
【請求項6】
前記操作入力部は、(1)前記第1のタッチセンサ面における接触の検知が途切れてから前記第2のタッチセンサ面における接触が未検知のまま前記第1のタッチセンサ面もしくは前記第3のタッチセンサ面における接触が検知された場合、または、(2)前記第1のタッチセンサ面における接触の検知が途切れてから前記第2のタッチセンサ面における接触が検知され、当該第2のタッチセンサ面における接触の検知が途切れてから前記第1のタッチセンサ面もしくは前記第2のタッチセンサ面における接触が検知された場合、前記所定の操作入力をキャンセルする、
ことを特徴とする請求項1
から5のいずれかに記載の
タッチセンサユニット。
【請求項7】
前記所定の操作入力は、操作入力量を増加または減少させる操作入力であり、
前記操作入力部は、前記所定の操作入力を受け付けた場合、前記第3のタッチセンサ面における接触の検知の継続時間に応じて操作入力量を増加または減少させる、
ことを特徴とする請求項1から
6のいずれかに記載の
タッチセンサユニット。
【請求項8】
前記操作入力部は、前記所定の操作入力を受け付けた場合、前記第3のタッチセンサ面における接触の検知が途切れてから前記第2のタッチセンサ面における接触が検知され、かつ、当該第2のタッチセンサ面における接触の検知が途切れてから前記第1のタッチセンサ面における接触が検知されると、前記所定の操作入力とは異なる操作入力を受け付ける、
ことを特徴とする請求項1から
7のいずれかに記載の
タッチセンサユニット。
【請求項9】
前記操作入力部は、前記所定の操作入力を受け付けた場合、前記第3のタッチセンサ面における接触の検知が途切れてから当該第3のタッチセンサ面における接触が再び検知され、当該第3のタッチセンサ面における接触の検知が途切れてから前記第2のタッチセンサ面における接触が検知され、かつ、当該第2のタッチセンサ面における接触の検知が途切れてから前記第1のタッチセンサ面における接触が検知されると、前記所定の操作入力とは異なる操作入力を受け付ける、
ことを特徴とする請求項1から
8のいずれかに記載の
タッチセンサユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチセンサのコントローラ、タッチセンサユニットおよび操作入力方法に関する。
【背景技術】
【0002】
操作スイッチにタッチセンサを用いて、ユーザが指先で触れることにより、スイッチ操作を可能にする技術が利用されている。機械的なスイッチは、スイッチ操作によってスイッチ部分が摩耗したり、破損することで故障する原因となるが、タッチセンサスイッチではそのような機械的な故障が起きないという利点がある。
【0003】
一般的に、触れる操作に対するタッチセンサの感度は、機械的なスイッチよりも高い。そのため、意図せず触れた場合にタッチセンサは機械的なスイッチよりも誤動作しやすい。特許文献1には、誤動作を抑制するために、カメラの筐体に2つのタッチセンサを設け、2つのタッチセンサに順に触れた場合にスイッチ操作を行い画像を取り込む技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、意図せずに1つの指で一方のタッチセンサに触れた状態で、別の指で他方のタッチセンサに触れた場合にも、誤ってスイッチ操作が行われる可能性がある。そのため、誤動作の抑制には改善の余地がある。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、より高い精度で誤動作を抑制できるタッチセンサのコントローラ、タッチセンサユニットおよび操作入力方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のタッチセンサのコントローラは、操作面上に設けられた第1のタッチセンサ面、第2のタッチセンサ面および第3のタッチセンサ面のそれぞれにおける接触を検知する検知部と、第1のタッチセンサ面における接触の検知が途切れてから第2のタッチセンサ面における接触が検知され、かつ、当該第2のタッチセンサ面における接触の検知が途切れてから第3のタッチセンサ面における接触が検知された場合、所定の操作入力を受け付ける操作入力部と、を備える。
【0008】
本発明の別の態様は、タッチセンサユニットである。このタッチセンサユニットは、操作面上に設けられた第1のタッチセンサ面、第2のタッチセンサ面および第3のタッチセンサ面を有するタッチセンサと、第1のタッチセンサ面、第2のタッチセンサ面および第3のタッチセンサ面のそれぞれにおける接触を検知する検知部と、第1のタッチセンサ面における接触の検知が途切れてから第2のタッチセンサ面における接触が検知され、かつ、当該第2のタッチセンサ面における接触の検知が途切れてから第3のタッチセンサ面における接触が検知された場合、所定の操作入力を受け付ける操作入力部と、を備える。
【0009】
本発明のさらに別の態様は、操作入力方法である。この方法は、操作面上に設けられた第1のタッチセンサ面、第2のタッチセンサ面および第3のタッチセンサ面を有するタッチセンサにおいて、当該第1のタッチセンサ面における接触を検知するステップと、第1のタッチセンサ面における接触の検知が途切れてから第2のタッチセンサ面における接触が検知され、かつ、当該第2のタッチセンサ面における接触の検知が途切れてから第3のタッチセンサ面における接触が検知された場合、所定の操作入力を受け付けるステップと、を含む。
【0010】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、コンピュータプログラム、データ構造、記録媒体などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、タッチセンサにおいてより高い精度で誤動作を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態に係るタッチセンサユニットの構成図である。
【
図2】
図1のタッチセンサの構成例を説明する図である。
【
図3】
図2のタッチセンサのX-X’線に沿った断面図である。
【
図4】
図1のタッチセンサユニットによる検知例を示す図である。
【
図5】
図1のタッチセンサユニットによる別の検知例を示す図である。
【
図6】
図1のタッチセンサユニットによるさらに別の検知例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、実施の形態に係るタッチセンサユニット100の構成図である。タッチセンサユニット100は、タッチセンサスイッチとして機能する。タッチセンサユニット100は、タッチセンサ110と、コントローラ120とを含む。
【0014】
タッチセンサ110は、各種方式で、指などによる接触点と、その接触点における接触状態を示す静電容量や電気抵抗量などの状態量を検出する入力装置である。タッチセンサ110は、一例として、静電容量方式、抵抗膜方式または赤外線方式のタッチセンサである。あるいはタッチセンサ110は、複数の圧電素子から構成される超音波表面弾性波方式のタッチセンサであってもよい。タッチセンサ110は一例として、自動車のドアの車室内側、各種装置の操作パネルなどに設けられてもよく、壁に埋め込まれてもよい。
【0015】
タッチセンサ110は、第1のタッチセンサ面(A面とも呼ぶ)10a、第2のタッチセンサ面(M面とも呼ぶ)10b、第3のタッチセンサ面(B面とも呼ぶ)10c、および、操作面20を含む。第1、第2および第3のタッチセンサ面10a,10b,10cをまとめてタッチセンサ面10とも呼ぶ。A面10a、M面10bおよびB面10cは、同一の操作面20上に設けられる。M面10bは、A面10aとB面10cの間に配置され、中間面ともいえる。A面10a、M面10bおよびB面10cの直径は特に限定されないが、たとえばユーザの指の幅より小さくてよい。A面10aとM面10bとの間隔、および、M面10bとB面10cとの間隔は、ユーザの指の幅より大きい。タッチセンサ110は、A面10a、M面10bおよびB面10cの各面においてその面への接触があったかどうかをセンシングする。
【0016】
コントローラ120は、タッチセンサ110に接続され、タッチセンサ110上の接触点と状態量を検知し、検知された信号について所定の信号処理を行う。コントローラ120は、タッチセンサ110に対してユーザの指先などにより操作面20をなぞる所定のスライド操作がなされたか否かを判定し、所定のスライド操作があった場合に所定の操作入力を受け付けてその操作を実行に移す。操作面20は、なぞりエリアとも呼べる。所定のスライド操作は、A面10aからM面10bを介するB面10cへの第1のスライド操作、または、B面10cからM面10bを介するA面10aへの第2のスライド操作である。
【0017】
所定の操作入力は、操作入力量を増加または減少させる操作入力であり、たとえば、自動車のシート位置やシート角度の調整、自動車のパワーウインドウの操作、エアコンの温度設定、照明の明るさの調整、音量の調整、ビデオやオーディオ機器の再生や早送りなどの操作、画面のスクロール調整、様々な設定値の調整の操作入力である。
【0018】
以下、自動車のシートの前後位置の調整のためのタッチセンサ110を一例として説明する。つまり所定の操作入力は、所定の部品であるシートを移動させる操作入力である。タッチセンサ110は、自動車のドアの車室内側に設けられているとする。
【0019】
図2は、
図1のタッチセンサ110の構成例を説明する図である。
図3は、
図2のタッチセンサ110のX-X’線に沿った断面図である。
【0020】
操作面20は、操作方向に直線状に延びる凸部22上に設けられている。操作方向は、シートの前後方向、すなわちシートの移動方向である。凸部22の側面24は、傾斜面になっている。ユーザは、手元を見ることなく、手探りで凸部22の位置を確認してから操作面20をスライド操作できる。つまり、タッチセンサ110をブラインド操作しやすく、暗い場所での操作にも適している。
【0021】
操作面20は凹面である。そのため、ユーザは、触れただけで操作面20を認識しやすく、凹んだ領域に沿ってスライド操作を行いやすい。操作面20と側面24の境界は、稜線を構成している。稜線が指先に触れることにより、スライド操作方向のガイドになる。ユーザは、操作面20と凸部22の形状から操作方向とシートの移動方向を容易に認識できる。
【0022】
A面10aとB面10cのそれぞれは、凸面になっており、操作面20から突出している。凸面の形状は任意であり、ユーザが指をスライドさせたときに何らかの感触が与えられる形状であればよい。A面10aとB面10cの触感は、操作面20の触感と異なる。これにより、A面10aに触れてからB面10cまでスライド操作したとき、または、B面10cに触れてからA面10aまでスライド操作したときに、ユーザには一方の凸面から他方の凸面までスライドしたという指の感触がフィードバックされるので、操作入力を行ったという操作感が与えられる。よって、操作入力が受け付けられたことをユーザに把握させることができる。
【0023】
タッチセンサ110に凸面を設けるだけでよいため、振動素子などで機械的な振動などを与える場合に比べて部品数が少なく安価で製造することができ、構造的にも簡単であるから故障することも少ない。
【0024】
M面10bは、操作面20と同一面を構成している。そのため、M面10bの触感は、操作面20の触感と同じである。
【0025】
図1に戻る。コントローラ120は、検知部40と、判定部50と、操作入力部60とを含む。これらの機能構成は、ハードウェア、ソフトウェアまたはその組み合わせによって実装することができる。
【0026】
検知部40は、タッチセンサ110における指先などによる接触の有無を検知する。検知部40は、A面10a、M面10bおよびB面10cのそれぞれにおける接触を検知する。
【0027】
判定部50は、検知部40により検知された接触の有無にもとづいて、A面10aにおける接触が検知されてから所定時間内に、A面10aにおける接触の検知が途切れてからM面10bにおける接触が検知され、かつ、当該M面10bにおける接触の検知が途切れてからB面10cにおける接触が検知された場合、第1のスライド操作がなされたと判定し、B面10cにおける接触の検知の継続時間を取得する。
【0028】
また判定部50は、B面10cにおける接触が検知されてから所定時間内に、B面10cにおける接触の検知が途切れてからM面10bにおける接触が検知され、かつ、当該M面10bにおける接触の検知が途切れてからA面10aにおける接触が検知された場合、第2のスライド操作がなされたと判定し、A面10aにおける接触の検知の継続時間を取得する。
【0029】
所定時間は、特に限定されないが、たとえば1~2秒以下であってよく、その最適値は実験によって適宜定めることができる。
【0030】
判定部50によりスライド操作がなされたと判定された場合、操作入力部60は、当該スライド操作に対応する所定の操作入力を受け付け、実行に移す。たとえば、操作入力部60は、第1のスライド操作に対応してシートを前方向に移動させる操作入力を受け付け、当該操作が実行されるように制御する。また操作入力部60は、第2のスライド操作に対応してシートを後方向に移動させる操作入力を受け付け、当該操作が実行されるように制御する。操作入力部60は、第1のスライド操作がなされた場合、継続時間が長いほど操作入力量を増加させ、第2のスライド操作がなされた場合、継続時間が長いほど操作入力量を減少させる。操作入力量は、シートの位置を表し、大きいほどシートが前方に位置し、小さいほどシートが後方に位置することを表す。
【0031】
判定部50は、A面10aにおける接触が検知されてから所定時間内に、M面10bとB面10cのそれぞれにおける接触が未検知の場合、第1のスライド操作が未完了であると判定する。判定部50は、B面10cにおける接触が検知されてから所定時間内に、M面10bとA面10aのそれぞれにおける接触が未検知の場合、第2のスライド操作が未完了であると判定する。操作入力部60は、判定部50によりスライド操作が未完了であると判定された場合、操作入力の受け付けをキャンセルする。これにより、意図せずにタッチセンサ面に触れた場合に誤入力を抑制できる。
【0032】
図4は、
図1のタッチセンサユニット100による検知例を示す。
図4は、ユーザがシートを1ノッチ分または複数ノッチ分前進させる例である。ユーザは、A面10aからB面10cまで操作面20上をスライド操作している。A面10aにおける接触が検知され、A面10aにおける接触の検知が途切れた後でM面10bにおける接触が検知され、M面10bにおける接触の検知が途切れた後でB面10cにおける接触が検知されている。A面10aにおける接触が検知されてからB面10cにおける接触が検知されるまでの時間t1は、所定時間より短いため、シートを前進させる操作入力が受け付けられる。
【0033】
実線で示す例では、B面10cにおける接触が検知されてから接触の検知が途切れるまでの時間t2は、所定の基準時間より短い。そのため、1ノッチ分だけシートを前進させる。この操作は、B面10cの単押しまたはクリックとも呼べる。
【0034】
一方、破線で示す例では、B面10cにおける接触が検知されてから接触の検知が途切れるまでの時間t2’は、基準時間より長い。そのため、時間t2’に応じた複数ノッチ分、シートを前進させる。この操作は、B面10cの長押しまたはホールドとも呼べる。
【0035】
このように、スライド操作を行った後、タッチセンサ110に触れたまま操作入力量を調節できる。
【0036】
なお、A面10aに触れた後、上記順序以外でタッチセンサ面10に触れた場合、操作入力の受け付けはキャンセルされ、キャンセルされたときに触れていた位置から判定が再開される。これは、操作入力部60が、(1)A面10aにおける接触の検知が途切れてからM面10bにおける接触が未検知のままA面10aもしくはB面10cにおける接触が検知された場合、または、(2)A面10aにおける接触の検知が途切れてからM面10bにおける接触が検知され、当該M面10bにおける接触の検知が途切れてからA面10aもしくはM面10bにおける接触が検知された場合、操作入力をキャンセルすることに相当する。
【0037】
同様に操作入力部60は、(1)B面10cにおける接触の検知が途切れてからM面10bにおける接触が未検知のままA面10aもしくはB面10cにおける接触が検知された場合、または、(2)B面10cにおける接触の検知が途切れてからM面10bにおける接触が検知され、当該M面10bにおける接触の検知が途切れてからB面10cもしくはM面10bにおける接触が検知された場合、操作入力をキャンセルする。これにより、意図せずにタッチセンサ面10に触れた場合に誤入力を抑制できる。
【0038】
図5は、
図1のタッチセンサユニット100による別の検知例を示す。
図5は、ユーザがシートを前進させ続けた後、前進し過ぎたシートを1ノッチ分または複数ノッチ分後退させる例である。ユーザは、A面10aからB面10cまで操作面20上をスライド操作し、B面10cに触れ続けた後、B面10cからA面10aまで操作面20上をスライド操作している。ユーザは、A面10aから出発してA面10aに戻るまで、操作面20から指を離していない。
【0039】
時間t2’の経過までは
図4の破線の例と同様である。B面10cからA面10aに戻るとき、B面10cにおける接触の検知が途切れた後でM面10bにおける接触が検知され、M面10bにおける接触の検知が途切れた後でA面10aにおける接触が検知されている。B面10cにおける接触の検知が途切れてからA面10aにおける接触が検知されるまでの時間t3は、所定時間より短いため、操作入力が受け付けられる。
【0040】
これは、操作入力部60が、所定の操作入力を受け付けた場合、B面10cにおける接触の検知が途切れてからM面10bにおける接触が検知され、かつ、当該M面10bにおける接触の検知が途切れてからA面10aにおける接触が検知されると、所定の操作入力とは異なる操作入力を受け付けることに相当する。
【0041】
M面10bにおける接触の検知により、スライド操作の連続性を損なわず、スライド操作方向の切り替わり、即ち入力動作の切り替わりを判別できる。よって、タッチセンサ110に触れたままで、所定の操作入力を行った後、それとは異なる操作入力を行うことができる。
【0042】
実線で示す例では、A面10aにおける2回目の接触が検知されてから接触の検知が途切れるまでの時間t4は、所定の基準時間より短い。そのため、1ノッチ分だけシートを後退させる。
【0043】
一方、破線で示す例では、A面10aにおける2回目の接触が検知されてから接触の検知が途切れるまでの時間t4’は、所定の基準時間より長い。そのため、時間t4’に応じた複数ノッチ分シートを後退させる。
【0044】
図6は、
図1のタッチセンサユニット100によるさらに別の検知例を示す。
図6も、ユーザがシートを前進させ続けた後、前進し過ぎたシートを1ノッチ分または複数ノッチ分後退させる例である。ユーザは、A面10aからB面10cまで操作面20上をスライド操作し、B面10cに触れ続けた後、操作面20から一旦指を離し、その後、再びB面10cに触れてA面10aまで操作面20上をスライド操作する。
【0045】
時間t2’の経過までは
図4の破線の例と同様である。B面10cにおける接触の検知が途切れた後、B面10cにおける接触が再度検知され、B面10cにおける接触の再度の検知が途切れた後でM面10bにおける接触が検知され、M面10bにおける接触の検知が途切れた後でA面10aにおける接触が検知されている。B面10cにおける接触が検知されてからA面10aにおける接触が検知されるまでの時間t3’は、所定時間より短いため、操作入力が受け付けられる。その後のA面10aでの処理は、
図5と同様である。
【0046】
これは、操作入力部60が、所定の操作入力を受け付けた場合、B面10cにおける接触の検知が途切れてから当該B面10cにおける接触が再び検知され、当該B面10cにおける接触の検知が途切れてからM面10bにおける接触が検知され、かつ、当該M面10bにおける接触の検知が途切れてからA面10aにおける接触が検知されると、所定の操作入力とは異なる操作入力を受け付けることに相当する。
【0047】
これにより、所定の操作入力を行った後、それとは異なる操作入力を続けて行うことができる。
【0048】
このように3つのタッチセンサ面10に所定の順番で触れなければ操作入力を受け付けないので、1以上のタッチセンサ面10に意図せず触れた場合にスイッチが誤動作することを抑制できる。
【0049】
また、操作時に、3つのタッチセンサ面10に順次触れるという、ユーザが注意を払わなければならない能動的な動作が必要となるため、1ヶ所に触れるだけで操作できてしまう従来のタッチスイッチよりも、操作入力をしたことがユーザにはっきりと認識される。
【0050】
また判定部50は、A面10aにおける接触の検知が途切れる前にM面10bにおける接触が検知された場合、または、M面10bにおける接触の検知が途切れる前にB面10cにおける接触が検知された場合にもタッチ操作が未完了であると判定する。判定部50は、B面10cにおける接触の検知が途切れる前にM面10bにおける接触が検知された場合、または、M面10bにおける接触の検知が途切れる前にA面10aにおける接触が検知された場合にもタッチ操作が未完了であると判定する。つまり、A面10aとM面10bの両方で、または、M面10bとB面10cの両方で同時に接触が検知された場合、タッチ操作が未完了であると判定する。
【0051】
A面10aとM面10bとの間隔およびM面10bとB面10cとの間隔が指の幅より大きいため、スイッチ操作を意図したスライド操作では、A面10aとM面10bの両方に同時に接触すること、および、M面10bとB面10cの両方に同時に接触することはないと想定される。
【0052】
一方、スライド操作ではなく、複数の指などで意図せずにA面10a、M面10bおよびB面10cに触れた場合に、操作入力が誤って受け付けられるという誤動作を抑制できる。したがって、より高精度に誤動作を抑制できる。
【0053】
図7は、タッチセンサ110の他の構成例を示す。上述のタッチセンサ110に加え、タッチセンサ110a、タッチセンサ110bおよびタッチセンサ110cが自動車のドアの内側に設けられている。タッチセンサ110との相違点を中心に説明する。
【0054】
タッチセンサ110aは、シートの座面の角度調整の操作入力を受け付ける。タッチセンサ110bは、シートのバックレストの角度調整の操作入力を受け付ける。タッチセンサ110cは、シートのヘッドレストの角度調整の操作入力を受け付ける。つまり所定の操作入力は、シートの座面、バックレストまたはヘッドレストを傾動させる操作入力である。
【0055】
タッチセンサ110aでは、スライド操作の操作方向はシートの座面の傾動方向である。タッチセンサ110bでは、操作方向はシートのバックレストの傾動方向である。タッチセンサ110cでは、操作方向はシートのヘッドレストの傾動方向である。
【0056】
凸部22aは、操作方向に沿って円弧状に延びる。操作面20aも操作方向に沿って円弧状に延びる。A面10a、M面10bおよびB面10cは、操作方向に沿って並ぶ。よって、ユーザは、操作面20aと凸部22aの形状から操作方向とシートの各部の傾動方向を認識できる。
【0057】
以上のタッチセンサユニット100による他の作用効果を説明する。
【0058】
(1)故障しにくい
本実施の形態のタッチセンサ110には、通常のボタンやスイッチなどの可動機構が存在しないため、それに起因する装置の変形もしくは破損などが発生せず、また、故障もしにくい。
【0059】
(2)安価に製造できる
本実施の形態のタッチセンサ110は、スイッチとしての形状をあらわす構成部材とタッチセンサという、いずれも既存の安価な部材で構成される。また、複雑な機械的機構を必要としないため、加工にかかる手間は一般的なスイッチを製造するより少ない。これらの特徴により、タッチセンサユニット100を安価に製造することが可能になる。
【0060】
(3)適用環境を拡張しやすい
本実施の形態のタッチセンサ110は、構造が比較的単純であるため、大きさや形状の制限を受けにくい。その結果、大きさや形状の自由度が高まるため、狭い場所や曲面上などにも設置可能であり、多様な環境や場面に適用することができる。また一般に、ある装置に可動式のスイッチ部材が存在すると、スイッチを可動させるために必要な隙間部分から水や埃が侵入するため、防塵性や防水性を確保することが困難になる。本実施の形態のタッチセンサユニット100には可動機構が存在しないため、単純なコーティングによってスイッチの密閉性を確保でき、防塵や防水などの保護等級を上げることが容易である。なお、防水性を考慮する場合は、操作面のタッチセンサのセンシング方式は静電容量ではなく、抵抗膜などのように水濡れの影響を受けにくいものにする必要がある。
【0061】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0062】
たとえば、A面10aとB面10cの間に複数のM面10bが設けられてもよい。2つのM面10bの例を説明する。操作入力部60は、A面10aにおける接触の検知が途切れてから一方のM面10bにおける接触が検知され、当該一方のM面10bにおける接触の検知が途切れてから他方のM面10bにおける接触が検知され、当該他方のM面10bにおける接触の検知が途切れてからB面10cにおける接触が検知された場合、所定の操作入力を受け付ける。この変形例によれば、さらに高精度に誤動作を抑制できる。
【0063】
また、操作入力部60は、A面10aにおける接触が検知されてから所定の第1時間内にM面10bにおける接触が未検知の場合、または、M面10bにおける接触が検知されてから所定の第2時間内にB面10cにおける接触が未検知の場合、所定の操作入力をキャンセルしてもよい。この場合、コントローラ120の構成の自由度を向上できる。
【符号の説明】
【0064】
10…タッチセンサ面、10a…A面、10b…M面、10c…B面、20,20a…操作面、22,22a…凸部、40…検知部、50…判定部、60…操作入力部、100…タッチセンサユニット、110,110a,110b,110c…タッチセンサ、120…コントローラ。