(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】包装用容器
(51)【国際特許分類】
A61M 35/00 20060101AFI20240417BHJP
A61J 1/14 20230101ALI20240417BHJP
B65D 25/28 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
A61M35/00 Z
A61J1/14
B65D25/28 105D
(21)【出願番号】P 2020115229
(22)【出願日】2020-07-02
【審査請求日】2023-06-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成1年7月3日~平成1年7月5日のインターフェックスWeek2019における展示
(73)【特許権者】
【識別番号】391013025
【氏名又は名称】阪神化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100228511
【氏名又は名称】佐藤 彩秋
(74)【代理人】
【識別番号】100173462
【氏名又は名称】宮本 一浩
(74)【代理人】
【識別番号】100194179
【氏名又は名称】中澤 泰宏
(74)【代理人】
【識別番号】100166442
【氏名又は名称】鈴木 洋雅
(74)【代理人】
【識別番号】110002996
【氏名又は名称】弁理士法人宮田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 湧稀
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-170184(JP,A)
【文献】特表2006-513826(JP,A)
【文献】登録実用新案第3035876(JP,U)
【文献】特開2014-233587(JP,A)
【文献】実開平5-35727(JP,U)
【文献】特開平11-105913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 35/00
A61J 1/14
B65D 25/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体(L)が充填される本体(11乃至15)と、該本体(11乃至15)の外側に配置され且つ該本体(11乃至15)に対して揺動可能な持ち手(41乃至45)と、からなり、該本体(11乃至15)の上部には該液体(L)の流路となる首部(18)を形成してあり、
前記持ち手(41乃至45)は、真上から見た状態において前記本体(11乃至15)の側面の概ね半分を覆う湾曲形状で、その両端部には該本体(11乃至15)を挟み込む脚板(53)を設けてあり、
前記本体(11乃至15)の側面下部には、該本体(11乃至15)の内部空間を挟んで対向するように支持部(21乃至25)を設けてあり、また個々の前記脚板(53)には、該支持部(21乃至25)に嵌まり込む支点部(61乃至65)を設けてあり、該支点部(61乃至65)は該支持部(21乃至25)を軸として揺動可能であり、
前記持ち手(41乃至45)を前記首部(18)側に旋回させた状態では、該持ち手(41乃至45)の内側に前記本体(11乃至15)が入り込み、
前記持ち手(41乃至45)を前記首部(18)から離れるように旋回させた状態では、該持ち手(41乃至45)が前記本体(11乃至15)の底面から突出し、全長が増大することを特徴とする包装用容器。
【請求項2】
前記持ち手(41乃至45)を前記首部(18)から離れるように旋回させた際、該持ち手(41乃至45)の外縁部が前記本体(11乃至15)に接触し、その先の旋回が規制されることを特徴とする請求項1記載の包装用容器。
【請求項3】
前記持ち手(41乃至45)の自由な揺動を規制するため、前記支持部(21乃至25)と前記支点部(61乃至65)との境界面において、そのいずれか一方には局地的に突出する凸部(29または68)を設け、残る一方には該凸部(29または68)が嵌まり込む凹部(69または28)を設けてあることを特徴とする請求項1または2記載の包装用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液の塗布などに適した包装用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
肩こりや虫刺されなどへの対処法として、自身で患部に薬液を塗布することがある。このような薬液は、利便性を向上するため専用の容器に充填されており、この容器の形状例としては、上部に筒状の首部が形成され、その先端に薬液が滲み出すスポンジヘッドが組み込まれたものが挙げられる。このような容器の一部には、首や肩などに塗布する際の利便性を考慮し、首部を屈曲させ、真上ではなく斜方向に突出するものも存在する。
【0003】
このような容器を用い、背中の中央などに自力で薬液を塗布する場合、患部を直視できないほか、不自然な姿勢を伴うためスポンジヘッドを患部に接近させることが容易ではない。そこで、より簡単に塗布を行うための技術開発が以前から進められており、その具体例として後記の特許文献が挙げられる。そのうち特許文献1では、体の中で届きにくい部位についても容易に塗布可能で、しかも不必要時にはコンパクトに収納できるケースが開示されている。このケースは円筒状で、その内部に塗布容器本体を挿入可能で、ケースから塗布容器本体を引き出すこともできれば、押し込むこともできる。しかも双方の境界に発生する摺動圧力により、塗布容器本体をあらゆる位置で安定して停止させることができる。
【0004】
特許文献2では、自ら背中に消炎鎮痛薬などの塗布ができる薬液容器が開示されている。この薬液容器は円断面であり、その一端には薬液漏湿塗布手段(スポンジヘッド)が組み込まれているほか、薬液容器に対してスライド自在の伸張手段を設けてある。この伸張手段により、使用時の利便性を確保しながら薬液容器の小型化が実現し、携帯性に優れている。
【0005】
特許文献3では、人体背中など、手の届きにくい箇所への薬液塗布を容易に行うための薬液塗布補助具が開示されている。この補助具は「孫の手」のような機能を有しており、中空棒体で構成される外ケースと、外ケースの内部に組み込まれる伸縮可能なロッドと、ロッドに接続する回動アームと、回転アームに取り付けた保持体で構成され、保持体の中に薬液収納容器を差し込む。そしてロッドは、外ケースに対してスライド可能で、ロッドを外ケースから突出させることができ、しかも回動アームによって保持体の姿勢を自在に調整可能である。その結果、人体のあらゆる箇所に薬液を正確かつ容易に塗布することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実開平6-69142号公報
【文献】実開平8-397号公報
【文献】実用新案登録第3211841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記の特許文献3のような補助具は、その全長を伸縮可能であり、しかも薬液収納容器の姿勢を自在に調整可能で、あらゆる箇所に無理なく到達可能で、利便性に優れている。ただしこの補助具は、複雑な構造でしかも大掛かりであるため、薬液収納容器と一体で販売することは極めて難しく、その利便性を多くの人々が享受することも難しいと予想される。対して特許文献1や特許文献2については、塗布容器本体または薬液容器を取り囲む筒状の部品を組み込むだけの単純な構成であるため、薬液との一体販売を実現しやすい。
【0008】
ただし特許文献1や特許文献2のように、薬液容器などに筒状の部品を組み込む場合、必然的に二重構造になるため、その分だけ容器の横断面が増大し、製造コストも増大するほか、輸送や保管についても従来よりも効率が低下する。また使用時に全長を増大させる際は、不意に変形しないよう、何らかの固定手段を設けることが望ましく、構造が一段と複雑化する恐れがある。なおこの固定手段については、双方の接触面での摩擦を利用するものが最も単純だが、その加減の設定が難しく、摩擦が緩いと不意に変形する恐れがあるほか、摩擦がきついと取り扱いに支障をきたすことになる。加えて、薬液容器などの形状が単純な棒状に限定されてしまい、直立させた際の安定性や、容量の確保といった面でも課題がある。
【0009】
本発明はこうした実情を基に開発されたもので、使用時に全長を増大させることで利便性が向上するほか、簡素な構成で取り扱いも容易な包装用容器の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の課題を解決するための請求項1記載の発明は、液体が充填される本体と、該本体の外側に配置され且つ該本体に対して揺動可能な持ち手と、からなり、該本体の上部には該液体の流路となる首部を形成してあり、前記持ち手は、真上から見た状態において前記本体の側面の概ね半分を覆う湾曲形状で、その両端部には該本体を挟み込む脚板を設けてあり、前記本体の側面下部には、該本体の内部空間を挟んで対向するように支持部を設けてあり、また個々の前記脚板には、該支持部に嵌まり込む支点部を設けてあり、該支点部は該支持部を軸として揺動可能であり、前記持ち手を前記首部側に旋回させた状態では、該持ち手の内側に前記本体が入り込み、前記持ち手を前記首部から離れるように旋回させた状態では、該持ち手が前記本体の底面から突出し、全長が増大することを特徴とする包装用容器である。
【0011】
本発明による包装用容器は、本体に持ち手を組み込んだ構造であり、本体は従来と同様、合成樹脂を中空状に成形したもので、その内部で各種液体を蓄えるほか、その上部には筒状の首部を形成してあり、首部をキャップで塞ぐことで内部が密閉される。また本体の底部は、様々な水平面に接触させた際、全体が安定して直立できるような形状としてある。なお、本体や持ち手などの各部の構造は、本体の底部を水平面に載せ、首部が上方に突出する姿勢を前提に記載してある。
【0012】
持ち手は、本体に対して揺動可能であり、包装用容器の不使用時は、本体の側面を覆うように持ち手を旋回させる。このように持ち手が収納された状態では、包装用容器全体の占有空間の増大を抑制することができる。しかし使用時は、持ち手を旋回させ、本体の底部から下方に突出させる。そのため持ち手は、本体を途切れることなく取り囲む筒状とすることが不可能で、本体側面の右半分または左半分だけを取り囲む殻のような湾曲形状になり、包装用容器の不使用時においては、本体側面の概ね半分は持ち手で覆い隠されるが、その反対側では本体側面が外部に露出する。なお不使用時においては、持ち手が本体の底部から突出することはなく、本体を水平面に載せる際に影響を与えることはない。そのほか、本体や持ち手の詳細形状は自在であり、持ち手が本体側面の半分以上を覆い隠す場合もある。
【0013】
脚板は、湾曲形状の持ち手の両端部に形成した平面状の部位で、その間で本体の側面を挟み込み、本体と持ち手との接続部になるほか、持ち手の揺動の中心となる。したがって脚板は、持ち手の下部に配置するが、脚板が本体の底部から突出することはない。なお持ち手は、一体成形されることが多く、脚板とその隣接部位との間で明確な境界が存在しない場合もある。
【0014】
支持部は、本体の側面下部に設け、持ち手を取り付けるための部位で、持ち手の揺動の軸として機能する。この揺動は、対向する脚板を結ぶ線が軸となるため、必然的に支持部は、本体の内部空間を挟むように左右二箇所に配置される。そして支持部は、持ち手を脱落することなく保持できるよう、円断面や多角形断面を基調とした「へこみ」や「張り出し」になる。
【0015】
支点部は、持ち手の脚板に設け、支持部と対になる部位で、支点部が支持部に嵌まり込むことで持ち手が本体に取り付けられる。しかも支点部と支持部との境界で滑りを生じることで、持ち手の揺動が実現する。当然ながら支点部は、左右の脚板で同心に揃うように配置する。さらに支点部の形状は、対になる支持部に応じたものになり、仮に支持部が円断面のへこみであれば、支点部は丸棒状になる。逆に支持部が円断面の張り出しであれば、支点部は丸穴状になる。
【0016】
持ち手の詳細形状は自在に決めることができ、仮に持ち手の形状を本体に倣うものとするならば、包装用容器の不使用時、本体と持ち手は隙間なく並び、持ち手が本体の一部側面を覆い隠すことになる。ただし汎用性の確保などのため、本体と持ち手で形状が異なり、包装用容器の不使用時、本体と持ち手に隙間が生じることもある。そのほか、本発明品の用途や、内部に充填される液体の種類については、何らの制限もない。
【0017】
このように、包装用容器を本体と持ち手で構成し、持ち手は、本体側面の約半分を覆う湾曲形状にするほか、本体側面の下部には、持ち手の揺動の軸となる支持部を設け、さらに持ち手の脚板には、支持部に嵌まり込む支点部を設けることで、包装用容器の不使用時は、本体側面の外側に持ち手を収納することができる。しかし使用時は、持ち手を旋回させることで包装用容器の全長が伸びた状態になり、到達可能な範囲が拡大され、利便性が向上する。また持ち手は筒状ではないため、その占有空間の増大を最小限に抑制できるほか、持ち手の軽量小形化も容易である。そのほか本発明では、本体と持ち手との接点が限られるため、本体の形状に大きな制約を生じることがない。
【0018】
請求項2記載の発明は、持ち手の揺動範囲を規制するためのもので、持ち手を首部から離れるように旋回させた際、持ち手の外縁部が本体に接触し、その先の旋回が規制されることを特徴とする。このように本体と持ち手の双方の形状を調整し、持ち手を本体から大きく突出させた際、持ち手の外縁部を本体に接触させることで、本体がストッパとしての機能を果たし、持ち手の揺動範囲が規制される。その結果、使用時、本体の首部を表皮などに接触させると、その反力で持ち手の外縁部が本体に接触し、この接触面で双方が押し合う状態になり、必然的に本体と持ち手が不動状態を維持するため、塗布作業を円滑に行うことができる。なお、持ち手の旋回を規制するストッパとして機能する箇所は、本体の底面やその近傍になることが多い。
【0019】
請求項3記載の発明は、持ち手の自由な揺動を規制するためのもので、支持部と支点部との境界面において、そのいずれか一方には局地的に突出する凸部を設け、残る一方には該凸部が嵌まり込む凹部を設けてあることを特徴とする。持ち手の揺動は、支点部が支持部を軸として旋回することで実現するが、持ち手が不意に揺動することは好ましくない。そこでこの発明では、支持部と支点部との境界面において、一方には凹部を設け、他方には凸部を設け、これらが嵌まり込むことで持ち手の揺動を規制する。なお凹部や凸部の形状や大きさは、人為的な操作によって双方の嵌まり込みが解除できる程度に調整する。その結果、自然な状態では持ち手が固定されるものの、外力を加えることで容易に旋回させることができる。
【0020】
凹部と凸部は、支持部と支点部との境界面であれば、その配置は自在で、環状の面にこれらを設けることもあれば、揺動の軸に対して直交するツバ状の面にこれらを設けることもある。さらに凹部は、支持部と支点部のいずれにも設けることができ、残る一方に凸部を設ける。なお、凹部や凸部を複数組設けることで、持ち手を様々な姿勢で保持することが可能になる。
【発明の効果】
【0021】
請求項1記載の発明のように、包装用容器を本体と持ち手で構成し、持ち手は、本体側面の約半分を覆う湾曲形状にするほか、本体側面の下部には、持ち手の揺動の軸となる支持部を設け、さらに持ち手の脚板には、支持部に嵌まり込む支点部を設けることで、包装用容器の不使用時は、本体側面の外側に持ち手を収納することができる。しかし使用時は、持ち手を旋回させることで包装用容器の全長が伸びた状態になり、到達可能な範囲が拡大され、利便性が向上する。
【0022】
また持ち手は筒状ではないため、その占有空間の増大を最小限に抑制できるほか、持ち手の軽量小形化も容易であり、製造コストの抑制を期待できる。そのほか本発明では、本体と持ち手との接点が限られるため、本体の形状に大きな制約を生じることがなく、本体の下部を膨らますことも容易で、安定性の確保や容量の増大も無理なく実現できる。
【0023】
請求項2記載の発明のように、本体と持ち手の双方の形状を調整し、持ち手を首部から離れるように旋回させた際、持ち手の外縁部を本体に接触させることで、持ち手の揺動範囲を規制することができる。その結果、使用時、本体の首部を表皮などに接触させると、その反力で持ち手の外縁部が本体に接触し、この接触面で双方が押し合う状態になり、必然的に本体と持ち手が不動状態を維持する。そのため、持ち手が不意に揺動するといったトラブルを招くことがなく、塗布作業を円滑に行うことができる。
【0024】
請求項3記載の発明のように、支持部と支点部との境界面において、そのいずれか一方には凸部を設け、残る一方には凹部を設け、双方が嵌まり込むことで持ち手の揺動を規制することができる。そのため不使用時は、持ち手が収納された状態を維持できるほか、持ち手が振り子のように揺動することを回避でき、使用時の取り扱いが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明による包装用容器の形状例を示す斜視図だが、本体と持ち手を分離した状態で描いてある。なお持ち手については、上下反転させた姿勢も描いてある。
【
図2】
図1の本体と持ち手を一体化した状態を示す斜視図で、図の上方には、持ち手を収納した状態を描いてあり、図の下方には、持ち手を下方に突出させた状態を描いてある。
【
図3】
図1の包装用容器において、本体の凹部と持ち手の凸部との関係を示す側面図である。なお持ち手については、その支点部以外を仮想線(二点鎖線)で描いてある。
【
図4】支持部と支点部について、
図1とは異なる形状例を示す斜視図で、支持部の内周面は完全な円断面としてある。なお持ち手については、上下反転させた姿勢も描いてある。
【
図5】支持部と支点部について、
図1や
図4とは異なる形状例を示す斜視図で、本体の側面下部から支持部が突出しており、これが持ち手の支点部に嵌まり込む。なお持ち手については、上下反転させた姿勢も描いてある。
【
図6】これまでの各図とは異なる形状例を示す側面図で、図の左側のものは本体の角部を階段状にしてあり、図の右側のものは持ち手が本体側面に埋め込まれる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、本発明による包装用容器の形状例を示しており、本体11と持ち手41を分離した状態で描いてある。この包装用容器は、いずれも合成樹脂製の本体11と持ち手41で構成され、本体11の内部には薬液などの液体Lが充填されるほか、本体11をテーブルなどの水平面に安定して載置できるよう、その底面は平面状に仕上げてあり、また本体11の上部については、細長い筒状の首部18が形成されている。首部18は、使用時の利便性を考慮し、真上を向くことなく途中で屈曲しており、先端側ではほぼ横向きになっており、そこに内部を密閉するキャップ34を組み込む。なお本体11の中間部は、首部18と滑らかに接続させるため、上方に向かうに連れ、外形が徐々に絞り込まれていく。
【0027】
持ち手41は、本体11の側面に覆い被さるエプロンのような形状をしており、その中央に位置する前板51と、前板51の両側部からほぼ直角に突出する側板52などで構成され、前板51を挟んで左右の側板52が対向している。そのため前板51と側板52は、真上から見てU字状に並んでいる。次に脚板53は、個々の側板52の下方に位置する半島状の部位でだが、脚板53と側板52は一体的に成形されており、双方に明確な境界は存在しない。ただし、対向する脚板53の間については、前板51が存在しておらず、この箇所に限っては本体11が覆い隠されることなく露出する。
【0028】
持ち手41を本体11に取り付けるため、本体11の側面下部には、支持部21を設けてあり、また持ち手41の脚板53の中心付近には、支点部61を設けてある。なお持ち手41は、左右の脚板53を貫くように伸びる軸を中心に揺動する構造であり、支持部21と支点部61は、この軸と同心になるように配置してある。したがって支持部21と支点部61は、本体11の内部空間を挟んで二箇所が同心で並ぶことになる。そして支持部21は、本体11の側面下部を内側に向けて凹ませたもので、その内周面は円形である。ただし持ち手41の自由な揺動を規制するため、支持部21の内周面の四箇所には、局地的に外周側に食い込んだ凹部28を設けてある。
【0029】
支点部61は、脚板53の中央付近から内側に向けて突出する円筒状の部位で、その外周面が支持部21の内周面に接触し、支持部21に支点部61が嵌まり込むことで持ち手41の揺動が実現する。なお支点部61の外周面には、対向する二箇所に凸部68を設けてある。凸部68は、支持部21の内周面に設けた凹部28に嵌まり込み、持ち手41の自由な揺動を規制する。また支点部61は、完全な円筒状ではなく、一箇所がスリット55で途切れたC字状になっている。したがって、スリット55を潰すように支点部61が変形することで、支点部61の直径が縮小する。この変形により、凸部68を凹部28から離脱させることができる。
【0030】
図2は、
図1の本体11と持ち手41を一体化した状態を示しており、本体11の支持部21に持ち手41の支点部61が嵌まり込み、持ち手41は本体11に対し、揺動可能な状態で取り付けられている。そして持ち手41は、前板51と側板52と脚板53で構成され、前板51と側板52は、真上から見てU字状に並んでいるほか、脚板53は側板52の下方に位置しており、脚板53の中央に支点部61を配置してある。
【0031】
図の上方のように、持ち手41が収納された状態では、その前板51と側板52が本体11の側面に覆い被さっているが、持ち手41は、本体11を筒状に取り囲む必要がないため、持ち手41の大形化を回避でき、製造コストなどを抑制できる。また持ち手41が適正な範囲で揺動できるならば、本体11や持ち手41の形状に制約は少なく、本体11を下膨れ形状とすることも容易である。なお持ち手41が収納された状態において、支持部21の内周面に設けた凹部28には、支点部61の外周面に設けた凸部68が嵌まり込む。そのため持ち手41の揺動が規制され、一定の状態が維持される。
【0032】
次に
図2の下方のように、持ち手41を首部18から遠ざけるように引き出すと、その支点部61が支持部21の中で旋回し、本体11の底面から持ち手41が突出した状態になり、実質的に包装用容器の全長が増大し、到達可能な範囲を拡大させることができる。このように持ち手41を引き出すと、やがて前板51の外縁部が本体11の底面に接触し、その先の移動が不可能になる。そのほかキャップ34を外すと、液体Lを塗布するためのスポンジヘッド33が現れるが、スポンジヘッド33の付け根付近の外周面には、キャップ34を取り付けるため、オネジ32を形成してある。
【0033】
図2の下方の状態においても、凹部28と凸部68が嵌まり込んでおり、持ち手41が自然に揺動することはない。しかも使用時、スポンジヘッド33を表皮などに接触させると、支持部21や持ち手41などの配置により、前板51の外縁部と本体11の底面が押し合う状態になり、持ち手41が揺動することなく下方に突出した状態を維持できる。なお使用時、左右の支点部61を指先などで挟み込むならば、支点部61の変形が規制されるため、嵌まり込んだ凹部28と凸部68との離脱が困難になり、外力に対抗して持ち手41の揺動を防止でき、安定した状態で塗布作業を行うことができる。
【0034】
図3は、
図1の包装用容器において、本体11の凹部28と持ち手41の凸部68との関係を側面から見たもので、持ち手41については、その支点部61以外を仮想線(二点鎖線)で描いてある。支点部61は、支持部21の内周面に嵌まり込み、双方の境界面は環状になり、これを軸として持ち手41は揺動可能になる。なお支持部21は、本体11の側面下部を円断面状にへこませたもので、支持部21の内周面には、等間隔で四箇所に半円状の凹部28を設けてある。
【0035】
持ち手41の支点部61は、支持部21に緩みなく嵌まり込む円筒状だが、その外周面には、対向するように二箇所に凸部68を設けてある。凸部68は、半径方向に突出するように形成され、支持部21の凹部28に嵌まり込む。さらに支点部61の断面は、途切れることのない筒状ではなく、スリット55によって一箇所が途切れたC字状で、支点部61の変形を誘発することができる。そのため、凹部28と凸部68が嵌まり込んだ状態においても、持ち手41に外力を加えると支点部61が変形し、凸部68が凹部28から離脱し、持ち手41を旋回させることができる。
【0036】
図3の左上には、本体11と持ち手41を分離した状態を描いてあるが、その支点部61を支持部21に嵌め込むと、図の右上のように、本体11と持ち手41が一体化する。この状態では持ち手41が収納されており、持ち手41の前板51や側板52が本体11と倣うように配置されている。しかも凹部28と凸部68との嵌まり込みにより、持ち手41の揺動が規制される。
【0037】
次に、
図3の左下のように外力で持ち手41を旋回させると、凸部68は、凹部28から離れて支持部21の内周面に接触し、凸部68が中心側に押し込まれるため、スリット55が潰されるように変形して支点部61の直径が縮小する。以降、凸部68は支持部21の内周面に沿って移動するが、凸部68と支持部21との摩擦により、旋回時、適度な抵抗を得られる。そして旋回を継続すると、やがて
図3の右下のように、持ち手41が横倒しになり、同時に凹部28と凸部68が嵌まり込み、持ち手41が静止する。なお凹部28の配置を増やすことで、持ち手41の静止位置がより小刻みになる。
【0038】
図4は、支持部22と支点部62について、
図1とは異なる形状例を示している。この図の本体12についても、先の
図1と同様、その側面下部をへこませた支持部22を左右両側に設けてあるが、この支持部22の内周面は完全な円断面としてある。しかし支持部22の奥面は、単純な平面ではなく十字状に伸びる凹部28を設けてある。また持ち手42については、その脚板53の内側に支点部62を設けてある。この支点部62は円断面で、内側に向けて突出しており、その端面には凸部68を二箇所に設けてある。そして持ち手42を本体12に取り付けた際は、支点部62が支持部22に嵌まり込むことで持ち手42が揺動可能になり、しかも凸部68が凹部28に嵌まり込むことで、持ち手42の揺動が規制される。
【0039】
この図において、持ち手42を本体12に組み込んだ後、持ち手42を外力で移動させると、凸部68が凹部28から離脱し、必然的に脚板53が外側に押し出される。この状態においても、支点部62が支持部22に嵌まり込んだ状態は維持され、持ち手42が脱落することはなく、再び凸部68が凹部28に嵌まり込むと、持ち手42が静止する。なおここでも、左右の脚板53を指などで挟み込むと、凸部68が凹部28から離脱できなくなり、持ち手42の揺動が規制される。
【0040】
図5は、支持部23と支点部63について、
図1や
図4とは異なる形状例を示している。この図では、本体13の側面下部から支持部23が突出しており、これが持ち手43の支点部63に嵌まり込む。ここでの支持部23は、へこみではなく円断面の張り出しだが、その外周面の上下二箇所に凸部29を設けてある。対して持ち手43の支点部63は、脚板53の中心付近を円形に切り抜いたもので、その内周面には複数の凹部69を設けてあるほか、脚板53の変形を誘発させるため、スリット55を設けてある。そして支持部23が支点部63に嵌まり込むことで、持ち手43は本体13に取り付けられ、さらに、凸部29と凹部69との嵌まり込みにより、持ち手43の自由な揺動が規制されるが、スリット55によって脚板53が変形することで、凹部69は凸部29から離脱可能である。
【0041】
図6は、これまでの各図とは異なる形状例を示しており、図の左側のものは本体14の角部を階段状にしてあり、図の右側のものは持ち手45が本体15側面に埋め込まれる。この図の各包装用容器についても、本体14、15の基本的な形状はこれまでの物と同じだが、図の左側の本体14は、その底面の角部を階段状にしてあり、この箇所において下向きになった面を係止面19としている。そして持ち手44を下方に突出させた際は、持ち手44の外縁部がこの係止面19と接触し、持ち手44の旋回を規制するストッパとして機能する。なお図の左下では、持ち手44が真下に突出しており、しかも持ち手44の前板51が係止面19に接触しており、本体14の首部18が外力で押し込まれた場合でも、持ち手44が本体14に対して旋回することはない。そのほか、本体14には支持部24を形成してあり、持ち手44には支点部64を形成してあり、支点部64が支持部24に嵌まり込むことで、持ち手44が揺動可能になる。
【0042】
図6の右側の包装用容器は、美観の向上を目的として、本体15の側面に段差20を設け、そこに持ち手45を埋め込む構造になっている。そのため包装用容器を使用しない際は、図の右上のように持ち手45が本体15の側面と滑らかに並び、持ち手45の存在が希薄化されて美観が向上する。また本体15の側面において、段差20を取り囲む境界線で最も下方に位置する箇所を係止面19としている。この係止面19は、持ち手45を下方に突出させた際、その前板51の外縁部と接触し、その先の旋回を規制するストッパとして機能する。なお持ち手45を下方に突出させた際は、本体15の側面に段差20が露出する。そのほか、本体15には支持部25を形成してあり、持ち手45には支点部65を形成してあり、支点部65が支持部25に嵌まり込むことで、持ち手45が揺動可能になる。
【符号の説明】
【0043】
11乃至15 本体
18 首部
19 係止面
20 段差
21乃至25 支持部
28 凹部
29 凸部
32 オネジ
33 スポンジヘッド
34 キャップ
41乃至45 持ち手
51 前板
52 側板
53 脚板
55 スリット
61乃至65 支点部
68 凸部
69 凹部
L 液体(薬液)