(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】測距センサ、および、距離測定方法
(51)【国際特許分類】
G01C 3/06 20060101AFI20240417BHJP
【FI】
G01C3/06 120R
G01C3/06 140
(21)【出願番号】P 2020160741
(22)【出願日】2020-09-25
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】598098526
【氏名又は名称】株式会社ユニバーサルエンターテインメント
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】▲配▼島 淳
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-185412(JP,A)
【文献】特開2017-027379(JP,A)
【文献】国際公開第2018/079031(WO,A1)
【文献】特開2006-259931(JP,A)
【文献】特開2003-240545(JP,A)
【文献】特開2006-337254(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カジノ場に設置され、プレイヤーがゲームに関する操作を行うことができる入力装置を備えるゲーミングマシンに設けられた測距センサであって、
撮像装置と、
前記撮像装置が撮像する画角範囲内に赤外光を照射する発光装置と、
コントローラと、
を有し、
前記コントローラは、
前記発光装置が前記赤外光を照射したタイミングで前記撮像装置が撮像した顔領域を含む第1の画像データを取得し、
前記発光装置が前記赤外光を照射しないタイミングで前記撮像装置が撮像した顔領域を含む第2の画像データを取得し、
前記第1の画像データと、前記第2の画像データとの対応する各ピクセルの明度の差分に基づく判定データを生成し、
前記判定データに基づいて前記入力装置の操作を行うプレイヤーを含む対象物の有無を判定するとともに前記判定データの各ピクセルの明度に基づいて
前記対象物との距離を測定して距離の分布が示される距離情報データを生成し、
前記入力装置の操作を行うプレイヤーとして検知された画像に係る前記距離情報データにおいて顔領域での距離のばらつきがあるか否かを判定する
ことで不正の有無を判定する
ことを特徴とする測距センサ。
【請求項2】
前記撮像装置の撮像方向に、赤外線のみを透過させるIR(Infrared)帯域フィルタを有していることを特徴とする請求項1に記載の測距センサ。
【請求項3】
前記IR帯域フィルタを、前記撮像装置の撮像方向を遮蔽するように設けられる第1位置と、前記撮像装置の撮像方向を遮蔽しない第2位置と、に切り替えるシャッタ機構を有していることを特徴とする請求項2に記載の測距センサ。
【請求項4】
カジノ場に設置され、プレイヤーがゲームに関する操作を行うことができる入力装置を備えるゲーミングマシンにおいて、撮像装置と、前記撮像装置が撮像する画角範囲内に赤外光を照射する発光装置と、を用いた距離測定方法であって、
前記発光装置が前記赤外光を照射したタイミングで前記撮像装置が撮像した顔領域を含む第1の画像データを取得することと、
前記発光装置が前記赤外光を照射しないタイミングで前記撮像装置が撮像した顔領域を含む第2の画像データを取得することと、
前記第1の画像データと、前記第2の画像データとの対応する各ピクセルの明度の差分に基づく判定データを生成することと、
前記判定データに基づいて前記入力装置の操作を行うプレイヤーを含む対象物の有無を判定するとともに前記判定データの各ピクセルの明度に基づいて
前記対象物との距離を測定して距離の分布が示される距離情報データを生成
し、前記入力装置の操作を行うプレイヤーとして検知された画像に係る前記距離情報データにおいて顔領域での距離のばらつきがあるか否かを判定する
ことで不正の有無を判定することと、
を有することを特徴とする距離測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測距センサ、および、距離測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対象物との距離を測定するものとして、ToF(Time of Flight)方式を用いたものがある。例えば、特許文献1には、対象物に投光し、その反射光を受光することにより、所定の最大測定距離よりも近い領域内に配置される前記対象物との距離を測定する光測距センサが開示される。光測距センサは、投光を開始した時間と、受光した時間と、の時間差に基づいて、対象物との距離を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のToF方式では、アナログ的に処理する専用の装置を用いて非常に短時間の時間差を測定する必要があるため、一般的に用いられているCMOSイメージセンサ等の撮像装置では対応できないという問題があった。
【0005】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、従来の撮像装置を用いて距離を測定することが可能な測距センサ、および、距離測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の測距センサは、
撮像装置と、
前記撮像装置が撮像する画角範囲内に赤外光を照射する発光装置と、
コントローラと、
を有し、
前記コントローラは、
前記発光装置が前記赤外光を照射したタイミングで前記撮像装置が撮像した第1の画像データを取得し、
前記発光装置が前記赤外光を照射しないタイミングで前記撮像装置が撮像した第2の画像データを取得し、
前記第1の画像データと、前記第2の画像データとの対応する各ピクセルの明度の差分に基づく判定データを生成し、
前記判定データの各ピクセルの明度に基づいて、対象物との距離を測定することを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、第1の画像データは、発光装置が赤外光を照射したタイミングで撮像されて取得されたものであり、対象物からの環境光と赤外光との反射光を受光したものとなる。また、第2の画像データは、発光装置が赤外光を照射しないタイミングで撮像されて取得されたものであり、対象物からの環境光の反射光を受光したものとなる。したがって、第1の画像データと、前記第2の画像データとの対応する各ピクセルの明度の差分に基づいて生成される判定データは、第1の画像データおよび第2の画像データが有する環境光に基づく成分が除外されて、発光装置から照射された赤外光の反射光のみの影響下にあるものとなる。すなわち、判定データの各ピクセルの明度は、発光装置からの距離を示すものとなる。これにより、一般的な画像を撮像する撮像装置を用いて明度から距離を測定することが可能となる。
【0008】
本発明の測距センサにおいて、
前記撮像装置の撮像方向に、赤外線のみを透過させるIR(Infrared)帯域フィルタを有していてもよい。
【0009】
上記構成によれば、撮影時の環境光による影響を軽減することができる。
【0010】
本発明の測距センサにおいて、
前記IRフィルタを、前期撮像装置の撮像方向を遮蔽するように設けられる第1位置と、前期撮像装置の撮像方向を遮蔽しない第2位置と、に切り替えるシャッタ機構を有していてもよい。
【0011】
上記構成によれば、撮像装置を、通常用にも使用でき、適用範囲を拡大することができる。
【0012】
本発明は、
撮像装置と、
前記撮像装置が撮像する画角範囲内に赤外光を照射する発光装置と、
を用いた距離測定方法であって、
前記発光装置が前記赤外光を照射したタイミングで前記撮像装置が撮像した第1の画像データを取得することと、
前記発光装置が前記赤外光を照射しないタイミングで前記撮像装置が撮像した第2の画像データを取得することと、
前記第1の画像データと、前記第2の画像データとの対応する各ピクセルの明度の差分に基づく判定データを生成することと、
前記判定データの各ピクセルの明度に基づいて、対象物との距離を測定することと、
を有することを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、第1の画像データは、発光装置が赤外光を照射したタイミングで撮像されて取得されたものであり、対象物からの環境光と赤外光との反射光を受光したものとなる。また、第2の画像データは、発光装置が赤外光を照射しないタイミングで撮像されて取得されたものであり、対象物からの環境光の反射光を受光したものとなる。したがって、第1の画像データと、前記第2の画像データとの対応する各ピクセルの明度の差分に基づいて生成される判定データは、第1の画像データおよび第2の画像データが有する環境光に基づく成分が除外されて、発光装置から照射された赤外光の反射光のみの影響下にあるものとなる。すなわち、判定データの各ピクセルの明度は、発光装置からの距離を示すものとなる。これにより、一般的な画像を撮像する撮像装置を用いて明度から距離を測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図5】測距センサをスロットマシンに適用した一例を示す概要図である。
【0015】
以下、本発明を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の測距センサ1は、制御部10と、発光部11、と撮像部12と、フィルタ13と、シャッタ部14と、外部接続インタフェース15と、を有している。
【0017】
発光部11は、所謂ストロボであり、例えばLED等の赤外光を発光する発光装置と、当該発光装置の発光を駆動する駆動回路とを有している。発光部11は、制御部10からの制御信号に応じて、制御信号が示すタイミングおよび発光態様(発光時間等)で、赤外光を照射する。発光部11は、撮像部12が撮像する画角範囲内に赤外光を照射する光軸となるように設けられる。なお、画角範囲内とは、撮像部12が撮像する画角範囲の一部であってもよいし、画角範囲全体であってもよい。
【0018】
撮像部12は、撮像を行う撮像装置と、当該撮像装置の撮像を駆動する駆動回路とを有している。撮像部12は、制御部10からの制御信号に応じて、制御信号が示すタイミングで、被写体の撮像を行う。本実施形態において、撮像部12の撮像装置はCMOSセンサであるが、例えばCCDセンサ等であってもよい。
【0019】
例えば、測距センサ1が、ATMやゲーミングマシンに設けられる場合、発光部11及び撮像部12の光軸は、これら電子機器の正面方向へ設定される。
【0020】
フィルタ13は、赤外光のみを透過させるIR(Infrared)帯域フィルタである。フィルタ13は、シャッタ部14により、撮像部12の撮像方向を遮蔽するように設けられる第1位置と、撮像部12の撮像方向を遮蔽しない第2位置と、に切り替え可能にされている。これにより、撮像部12は、フィルタ13が第1位置にある場合には、赤外光のみの画像データを取得することができ、フィルタ13が第2位置にある場合には、通常の画像データを取得することができる。フィルタ13は、撮影時の環境光による影響を軽減するために設けられるが、フィルタ13を設けることに限定されない。シャッタ部14は、フィルタ13を切り替えるシャッタ機構と、制御部10からの制御信号に応じて当該シャッタ機構を駆動する駆動回路とを有している。シャッタ機構は既知のものを適用でき、特に限定されない。
【0021】
外部接続インタフェース15は、測距センサ1が設けられる電子機器の制御部(電子機器制御部2)と接続し、データ通信を行うためのインタフェースである。制御部10は、電子機器制御部2に対し、所定のタイミングで、外部接続インタフェース15を介して、距離情報を含む信号を出力する。
【0022】
測距センサ1が設けられる電子機器は特に限定されないが、スマートフォン、タブレット端末、テレビ装置、コンシューマーゲーム機、ATM(Automatic Teller Machine)、および、カジノ場に設置されるゲーミングマシン等が例示される。
【0023】
制御部10は、例えばCPU、RAM、及び、ROM等を含み、測距センサ1を構成する要素の制御を行う。例えば、制御部10は、測距センサ1の全体動作を制御するように、種々の制御信号を生成する。制御部10は、画像データ取得部101と、記憶部102と、判定データ生成部103と、距離算出部104と、を有している。
【0024】
画像データ取得部101は、一定の周期でタイミング信号を出力するタイミングジェネレータを有し、タイミングジェネレータから出力されるタイミング信号に基づいて発光部11と撮像部12とに制御信号を送信し、撮像部12から第1の画像データと第2の画像データとを得る。
【0025】
第1の画像データは、発光部11が赤外光を照射したタイミングで撮像部12が撮像した画像データである。すなわち、第1の画像データは、環境光と照射した赤外光とが撮像対象物に照射され反射された反射光に基づく画像データとなる。また、第2の画像データは、発光部11が赤外光を照射しないタイミングで撮像部12が撮像した画像データである。すなわち、第2の画像データは、環境光が撮像対象物に照射され反射された反射光に基づく画像データとなる。画像データ取得部101は、取得した第1の画像データおよび第2の画像データを、記憶部102に記憶する。
【0026】
記憶部102は、第1の画像データおよび第2の画像データを記憶するほか、制御部10は、測距センサ1を制御するために必要な各種プログラムや各種プログラムが用いる各種のデータを格納する。換言すれば、当該プログラムは、制御部10等を備えるコンピュータである測距センサ1に、各種プログラムが有する処理を実行させる。このように、測距センサ1の処理や動作をプログラムや制御方法として置き換えることができる。すなわち、、測距センサ1の処理や動作は、プログラム、プログラムが記憶されたコンピュータが読み取り可能な非一過性の記録媒体、及び、制御方法等として置き換えることができる。
【0027】
判定データ生成部103は、記憶部102に記憶された、第1の画像データと、第2の画像データとを取得し、これらの対応する各ピクセルの明度の差分に基づく判定データを生成する。具体的に、判定データ生成部103は、第1の画像データ、及び、第2の画像データのそれぞれについて、ピクセル座標ごとに明度を算出する。そして、判定データ生成部103は、第1の画像データ、及び、第2の画像データのピクセル座標のそれぞれにおいて差分をとり、発光部11が照射した赤外光による反射光のみに基づく判定データを生成する。
【0028】
距離算出部104は、判定データ生成部103が生成した判定データの各ピクセルの明度に基づいて、対象物との距離を測定する。距離算出部104は、各ピクセルの対象物に対する距離を算出するのみであってもよいし、最も近いピクセルを対象物との距離として決定してもよい。また、各ピクセルの対象物に対する距離に基づいて、各種の情報を検出してもよい。例えば、距離算出部104は、ゲーミングマシンをプレイするために着席しているプレイヤーの存在、ゲーミングマシンのプレイ映像を見るために着席している見物客の存在やその数、ゲーミングマシンが配置される通路に存在する見物客、通行人やその数、等を検出し、電子機器へ送信してもよい。
【0029】
上述のように、本実施形態では、測距センサ1を、測距センサ1が設けられ電子機器と独立したユニットとして構成しているがこれに限定されない。例えば、制御部10の機能は、電子機器の電子機器制御部2が有していてもよい。すなわち、電子機器が測距センサ1を含む構成とし、電子機器制御部2が発光部11、撮像部12、および、シャッタ部14等に直接制御信号を送信して制御する構成であってもよい。
【0030】
このように、測距センサ1は、撮像部12と、撮像部12が撮像する画角範囲内に赤外光を照射する発光部11と、を有している。そして、測距センサ1は、発光部11が赤外光を照射したタイミングで撮像部12が撮像した第1の画像データを取得し、発光部11が赤外光を照射しないタイミングで撮像部12が撮像した第2の画像データを取得し、第1の画像データと、第2の画像データとの対応する各ピクセルの明度の差分に基づく判定データを生成し、判定データの各ピクセルの明度に基づいて、対象物との距離を測定する。
【0031】
上記構成によれば、第1の画像データは、発光部11が赤外光を照射したタイミングで撮像されて取得されたものであり、対象物からの環境光と赤外光との反射光を受光したものとなる。また、第2の画像データは、発光部11が赤外光を照射しないタイミングで撮像されて取得されたものであり、対象物からの環境光の反射光を受光したものとなる。したがって、第1の画像データと、第2の画像データとの対応する各ピクセルの明度の差分に基づいて生成される判定データは、第1の画像データおよび第2の画像データが有する環境光に基づく成分が除外されて、発光部11から照射された赤外光の反射光のみの影響下にあるものとなる。すなわち、判定データの各ピクセルの明度は、発光部11からの距離を示すものとなる。これにより、一般的な画像を撮像する撮像装置を用いて明度から距離を測定することが可能となる。
【0032】
次に、
図2を参照して、具体的な距離の測定の内容について説明する。
図2に示すように、測距センサ1の制御部10は、撮像部12が撮像するタイミングで発光部11に赤外光を照射させて、第1の画像データを取得する。すなわち、第1の画像データは、環境光と照射した赤外光が影響した画像となる。また、測距センサ1の制御部11は、第1の画像データを撮像した異なるタイミングで撮像部12が撮像した第2の画像データを取得する。制御部10は、第2の画像データを撮像したタイミングでは、発光部11に赤外光を発光させないように制御する。
【0033】
図示しないが、第1の画像データ、及び、第2の画像データは、ピクセル毎に明度のみが示される中間データに変換される。ピクセル毎の明度は、ピクセル毎にRGB値の平均(明度L = (R値+G値+B値)/3)から算出される。すなわち、これらの中間データは、画像データの明度の分布を示すものとなる。
【0034】
制御部10は、第1の画像データ、及び、第2の画像データから変換したそれぞれの中間データから明度の差分を示す判定データを生成する。このように、赤外光のみの影響を示す明度の分布が示される判定データが生成される。
【0035】
ここで、判定データの各ピクセルの明るさは、光源から対象物までの距離dの二乗に反比例することが知られている(明度L ∝ 基準の明度L0/d^2)。すなわち、基準明度に対する基準距離の関係を予め定義しておくことで、判定データの各ピクセルの明るさに対応する距離を算出することが可能となる。例えば、判定データのあるピクセルにおいて、基準明度の1/4倍の明るさであれば、当該ピクセルにおける対象物との距離は、基準距離の2倍の距離となる。また、例えば、判定データのあるピクセルにおいて、基準明度の2倍の明るさであれば、基準距離の0.7倍(1/√2)の距離となる。このように、単に撮像した画像の解析のみで距離を算出するため、光源やカメラを含む光学系全体での校正が不要となる。
【0036】
制御部10は、明度の分布が示される判定データに基づいて、各ピクセルの距離を上記の方法で測定し、距離の分布が示される距離情報データを生成する。距離情報データに基づいて種々の利用方法が考えられ得るが、例えば本実施形態では、人等の対象物の有無と、対象物がない状態である背景の特定やデータ蓄積を行う。例えば、背景である距離情報データを蓄積することで、環境光の変動等によるノイズの低減を行うことが可能となる。例えば、差異の少ない距離情報データを蓄積して、ピクセル毎に、多いデータ数の距離を採用し、背景となる距離情報データを生成してもよい。また、差異の少ない距離情報データを蓄積して、ピクセル毎に平均化してもよい。また、複数の距離情報データから可動可変の領域を特定して、この領域での距離判定を行わないようにしてもよい。また、背景となる距離情報データに対し変化を検出した場合には対象物が存在することを検出できる。また、距離情報データの距離の分布から画角内の人数を特定してもよいし、撮像を連続して行い、間欠的に距離情報データを生成することで、人等の移動方向を特定してもよい。なお、これらは、フィルタ13を介さずに撮像データによる画像解析と組み合わせておこなってもよい。
【0037】
次に、
図3を参照して、測距センサ1の制御部10により実行される距離測定処理のフローチャートについて説明する。距離測定処理は、制御部10が自立的に実行して、結果を電子機器制御部2へ送信するものであってもよいし、電子機器制御部2からの要求に応じて実行されるものであってもよい。
【0038】
図3に示すように、制御部10は、撮像部12による撮像処理を実行する(S1)。制御部10は、第1の画像データと第2の画像データとを得るために、少なくとも2回の撮影を短時間に連続して行う。発光部11による発光の影響を回避するために、最初に第2の画像データの撮像を行ってから、第1の画像データの撮像を行う。
【0039】
そして、制御部10は、ステップS1において、発光部11を発光させたか否かを判定する(S2)。すなわち、第1の画像データの撮像であったか否かが判定される。発光させていない場合(S2:NO)、制御部10は、取得した画像を第2の画像データとして記憶部102に記憶する、第2の画像データ保存処理を実行する(S3)。その後、制御部10は、記憶した第2の画像データを過去の環境光データと比較して、差分からノイズを消去する(S4)。具体的に、ステップS4の処理では、これまで撮像された過去の環境光データ(第2の画像データ)との比較が行われる。比較する過去の環境光データは、複数の環境光データから平均化等が行われてノイズが除去されたデータ等があげられる。例えば、ステップS3で保存した第2の画像データにおいて極端に明度が高い領域(例えば電子機器の電飾による過度な明度の領域)があれば、この領域を判定対象から除外したり、過去の背景データに置き換えたりする等の処理を行う。
【0040】
一方、ステップS2において、撮像時に発光部11を発光させた場合(S2:YES)、制御部10は、取得した画像を第1の画像データとして記憶部102に記憶する、第1の画像データ保存処理を実行する(S5)。そして、制御部10は、第1の画像データの明度分布および第2の画像データの明度分布の差分から、判定データを生成する(S6)。その後、制御部10は、生成した判定データが、背景を示すデータであるか否かを判定する(S7)。背景でない場合(S7;NO)、制御部10は、距離情報データ生成処理を実行する(S8)。すなわち、制御部10は、赤外光の反射による明度の分布が示される判定データに基づいて、距離の分布を示す距離情報データに変換する。
【0041】
一方、ステップS7において、生成した判定データが背景を示すデータであると判定した場合(S7:YES)、制御部10は、背景データの蓄積を行う(S9)。この処理により、制御部10は、今後の背景データの検出の精度向上を図ることが可能となる。
【0042】
ステップS4の後、ステップS8の後、または、ステップS9の後、制御部10は、終了するか否かを判定する(S10)。ステップS10において、制御部10は、距離測定処理が実行される際に設定される終了条件を判定する。終了条件に合致する場合(S9:YES)、判定部10は本ルーチンを終了し、終了条件に合致しない場合(S9:NO)、判定部10は処理をステップS1へ戻す。例えば、人の移動方向を判定する場合には、所定期間連続した距離情報データの生成が必要となり、繰り返しステップS1~S9の処理が実行されることになる。
【0043】
次に、
図4を参照して、
図3の距離測定処理を利用した一例として、顔認証処理について説明する。顔認証処理は、電子機器制御部2の要求に応じて制御部10により実行される。
【0044】
まず、制御部10は、電子機器制御部2から、顔認証処理の要求があったか否かを判定する(S20)。顔認証処理の要求がない場合(S20:NO)、制御部10は、本ルーチンを終了する。一方、顔認証処理の要求があった場合(S20:YES)、制御部10は、シャッタ部14を駆動させて、フィルタ13を第2位置へ移動させる(S21)。そして、制御部10は、撮像処理を実行する(S22)。これにより、撮像部12によって通常のカラー画像を取得することが可能となる。なお、制御部10は、電子機器制御部2からの要求と共に、認証対象となる人物の顔画像データ等の認証情報を取得する。
【0045】
その後、制御部10は、シャッタ部14を駆動させて、フィルタ13を第1位置へ移動させ(S23)、撮像する画像を赤外光でフィルタ出来る状態とする。そして、制御部10は、
図3で説明した距離測定処理を実行する(S24)。距離測定処理の終了条件は、ステップS8(距離情報データ生成処理)またはステップS9(背景データの蓄積)の何れかが実行されることとする。そして、制御部10は、認証処理を実行する(S25)。具体的には、制御部10は、ステップS23で取得した画像と、電子機器制御部2からの画像とで、特徴部の抽出・比較等を行う既知の顔認証処理を行う。さらに、制御部10は、ステップS8で生成された距離情報データにおいて、顔領域での凹凸(距離のばらつき)があるか否かを判定する。これにより、写真やディスプレイの映像を用いて不正に認証しようとする行為を防止することが可能となる。
【0046】
そして、制御部10は、認証結果を、電子機器制御部2へ送信して(S26)、本ルーチンを終了する。例えば、制御部10は、距離情報データにおいて顔領域での凹凸がないような距離を示すような場合には不正であると判定する。不正や不具合により認証できない場合は、再度ステップS1から処理を実行してもよいし、電子機器制御部2からの要求を待機してもよい。
【0047】
次に、測距センサ1を、カジノ場等に設置されるゲーミングマシンに適用した例について説明する。本変形例では、ゲーミングマシンとして、スロットマシン1010を例示する。
【0048】
図5に示すように、スロットマシン1010は、筐体1011と、筐体1011の上側に設置されたトップボックス1012と、を備えている。筐体1011は、前面側を覆うメインドア1013を有している。メインドア1013には、上部に、ゲーム画面が表示されるディスプレイ装置として機能する下側画像表示パネル1141が設けられる。下側画像表示パネル1141の前面には、タッチパネル1069が設けられていて、プレイヤーはタッチパネル1069を操作して各種の指示を入力することができる。
【0049】
下側画像表示パネル1141の下方には、前面側が露出されるように、PTS(Player Tracking System)装置1700が筐体1011に組み込まれている。即ち、
図1に示すように、PTS装置1700は、前面側が、筐体1011の前面側の中央領域を両端に渡って占有するように、筐体1011に引き出し状に収容される。PTS装置1700は、前面側に、LCD(Liquid Crystal Display)1719を有している。LCD1719には、ゲームに関する情報や会員情報、会員向け情報等が表示される。また、LCD1719は、タッチパネル1720を前面に備えており、プレイヤーからのゲームに関する操作入力を受け付けることが可能となっている。本変形例では、PTS装置1700が測距センサとして機能する。
【0050】
また、LCD1719の右側には、撮像窓1712が設けられており、フィルタとしての撮像窓1712の裏側に配置された撮像部としての人体検出カメラ1713が、この撮像窓1712を介してプレイヤーなどを撮像する。撮像窓1712は、赤外線のみを透過させるIR(Infrared)帯域フィルタである。
【0051】
また、筐体1011のメインドア1013は、LCD1719の下方において、前方に突出する操作テーブル1031を有している。操作テーブル1031の上面には、コントロールパネル1030が設けられる。コントロールパネル1030は、スロットマシン1010の筐体から前方に突出する操作テーブル1031の上面に設けられた複数のボタン
び後述する紙幣識別器1022の紙幣投入口により構成される。即ち、プレイヤーは、コントロールパネル1030のボタンを押下することにより、ベット処理、ビデオリールの回転の開始等のスロットゲームに関する操作を行うことが可能となっている。このように、コントロールパネル1030は、プレイヤーからのゲームに関する操作入力を受け付けるための入力装置として機能する。
【0052】
このように、コントロールパネル1030を操作するために、スロットマシン1010の前面側を人体検出カメラ1713により撮像し、人が存在する場合には、人までの距離を測定して、着座しているか否かを判定することができる。
【0053】
以上、本発明の実施形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、各手段等の具体的構成は、適宜設計変更可能である。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0054】
また、上述した詳細な説明では、本発明をより容易に理解できるように、特徴的部分を中心に説明した。本発明は、上述した詳細な説明に記載する実施形態に限定されず、その他の実施形態にも適用することができ、その適用範囲は多様である。また、本明細書において用いた用語及び語法は、本発明を的確に説明するために用いたものであり、本発明の解釈を制限するために用いたものではない。また、当業者であれば、本明細書に記載された発明の概念から、本発明の概念に含まれる他の構成、システム、方法等を推考することは容易であると思われる。従って、請求の範囲の記載は、本発明の技術的思想の範囲を逸脱しない範囲で均等な構成を含むものであるとみなされなければならない。また、要約書の目的は、特許庁及び一般的公共機関や、特許、法律用語又は専門用語に精通していない本技術分野に属する技術者等が本出願の技術的な内容及びその本質を簡易な調査で速やかに判定し得るようにするものである。従って、要約書は、請求の範囲の記載により評価されるべき発明の範囲を限定することを意図したものではない。また、本発明の目的及び本発明の特有の効果を十分に理解するために、すでに開示されている文献等を充分に参酌して解釈されることが望まれる。
【符号の説明】
【0055】
1 測距センサ
2 電子機器制御部
10 制御部
11 発光部
12 撮像部
13 フィルタ
14 シャッタ部
101 画像データ取得部
102 記憶部
103 判定画像データ生成部
104 距離算出部