(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】ギヤードモータ用ギヤボックス、ギヤードモータ、並びに、コンベヤ装置
(51)【国際特許分類】
F16H 1/10 20060101AFI20240417BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20240417BHJP
F16H 57/04 20100101ALI20240417BHJP
F16H 55/36 20060101ALI20240417BHJP
B65G 13/071 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
F16H1/10
H02K7/116
F16H57/04 Z
F16H55/36 E
B65G13/071 A
(21)【出願番号】P 2021042578
(22)【出願日】2021-03-16
(62)【分割の表示】P 2020062677の分割
【原出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】592026819
【氏名又は名称】伊東電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】伊東 一夫
(72)【発明者】
【氏名】中村 竜彦
(72)【発明者】
【氏名】内貴 英男
(72)【発明者】
【氏名】三木 一生
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-165177(JP,A)
【文献】特開2019-138324(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/10
H02K 7/116
H02K 11/33
F16H 57/04
F16H 55/36
B65G 13/071
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータに対して一体に組み付けてギヤードモータを形成するギヤードモータ用ギヤボックスであって、
前記モータから動力を受けて回転する回転体を有し、
前記回転体は、外郭部材と内部部材とが一体化されており、
前記外郭部材は、
プーリ形状部
、及び、
内部部材固定部であって、
前記プーリ形状部とは異なる位置にあり、
前記内部部材を囲む外郭となる部位であり、かつ、
前記内部部材が固定されてなる
内部部材固定部を有し、
前記内部部材は、
内歯歯車を有し
、
前記モータの出力軸、又は、前記モータの出力軸と共に回動する動力伝達部材と係合するものであり、
かつ、
前記外郭部材よりも硬度が高い
、
ギヤードモータ用ギヤボックス。
【請求項2】
前記回転体は、予め成形された前記内部部材がインサート成形によって前記外郭部材と一体化されたものであることを特徴とする請求項1に記載のギヤードモータ用ギヤボックス。
【請求項3】
前記回転体が回転可能に取り付けられる受け部材を備え、
前記受け部材は、前記回転体の一部を収容する回転体収容部を有し、
前記回転体収容部内にグリスがあり、
前記回転体収容部には、前記回転体収容部の内側空間と外部を連通するグリス漏出孔が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のギヤードモータ用ギヤボックス。
【請求項4】
前記グリス漏出孔の外側に、漏出したグリスを貯留するグリス収容部材、又は、漏出したグリスを含侵するグリス含侵部材が配されていることを特徴とする請求項3に記載のギヤードモータ用ギヤボックス。
【請求項5】
ギヤードモータ用ギヤボックス自身を他部材に固定する固定座を有し、
前記固定座には、締結要素を挿通する締結要素挿通孔があり
、
前記締結要素挿通孔の少なくとも一つは、平面視において、前記内部部材固定部よりも前記プーリ形状部側にあることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のギヤードモータ用ギヤボックス。
【請求項6】
前記外郭部材
が、前記プーリ形状部が形成される出力軸形成部と、前
記内部部材固定部を有し、
前記外郭部材の内部にはグリスを充填するグリス供給部が設けられており、
前記グリス供給部は、窪み部分であり、前記内部部材固定部の内側に向かって開口し、前記内部部材固定部から前記出力軸形成部へ向かう方向に延びていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のギヤードモータ用ギヤボックス。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載のギヤードモータ用ギヤボックスにモータ部が取り付けられてなることを特徴とするギヤードモータ。
【請求項8】
複数のモータ部を有し、前記ギヤードモータ用ギヤボックスに対して複数の前記モータ部の一つを選択的に取り付けて形成されることを特徴とする請求項7に記載のギヤードモータ。
【請求項9】
前記モータ部は、給電ケーブルを有し、当該給電ケーブルは、前記モータ部の前記ギヤードモータ用ギヤボックス側から引き出されていることを特徴とする請求項7又は8に記載のギヤードモータ。
【請求項10】
前記モータ部は、モータ部側外郭部材と、制御基板を有し、当該制御基板は、前記モータ部側外郭部材の内部であって、前記ギヤードモータ用ギヤボックス側の位置に配置されていることを特徴とする請求項7乃至9のいずれかに記載のギヤードモータ。
【請求項11】
モータ部と、請求項1乃至6のいずれかに記載のギヤードモータ用ギヤボックスとを有するギヤードモータを備えたコンベヤ装置であって、
コンベヤフレームと、搬送ローラを有し、
前記ギヤードモータは、前記搬送ローラの下側に位置しており、前記外郭部材と前記搬送ローラの一部にベルト部材が懸架され、前記搬送ローラ対して動力を供給することを特徴とするコンベヤ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギヤードモータの一部を構成するギヤードモータ用ギヤボックスに関する。また、そのようなギヤードモータ用ギヤボックスを使用したギヤードモータ、並びに、コンベヤ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータと減速機が一体化されたギヤードモータが広く知られている。このようなギヤードモータとして、本件出願人が過去に出願したものがある(特許文献1)。
【0003】
特許文献1に開示された固定部材付きギヤードモータは、ギヤードモータと固定部材が別途形成されたものである。ギヤードモータは、収納筒内にモータと減速機を収容して形成されており、モータの出力軸が減速機の入力部に連結され、減速機の出力軸の一部が収容筒の内部から外部まで延びている。そして、この減速機の出力軸が駆動軸として機能する。すなわち、駆動軸にプーリが取り付けられ、モータの回転に伴って駆動軸が回転し、駆動軸の回転に伴ってプーリが回転する。
【0004】
また、特許文献1に開示された固定部材付きギヤードモータでは、固定部材が固定台と押さえ部材を有している。そして、ギヤードモータを他部材に固定する際には、固定台の窪み部分にギヤードモータの収納筒の一部を保持させ、この窪み部分の上側に押さえ部材を配し、押さえ部材と固定台にネジを挿通する。そして、このネジの先端部分を他部材に打ち込むことで、ギヤードモータが固定部材を介して他部材に固定された状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、本発明者らは、外側表面にプーリ形状を有する回転体の内側に、モータの出力軸(又はモータの出力軸からの動力を受けて回転する動力伝達部材)と接触する歯車部分を設けたギヤードモータを製造することを考えた。
【0007】
ここで、この回転体の強度を高めるため、回転体を硬い部材で形成した場合、長時間に亘って稼働させると、回転体の外側に懸架したベルト部分が激しく摩耗してしまうことが判明した。また、反対に、この回転体を比較的柔らかい樹脂製の部材で形成すると、長時間に亘って稼働させた場合、内側の歯車部分が破損してしまう場合があった。
【0008】
そこで本発明は、長期間に亘って使用しても不具合が発生し難いギヤードモータ用ギヤボックスを提供することを課題とする。また、そのようなギヤードモータ用ギヤボックスを使用したギヤードモータ、並びに、コンベヤ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明の一つの様相は、モータに対して一体に組み付けてギヤードモータを形成するギヤードモータ用ギヤボックスであって、前記モータから動力を受けて回転する回転体を有し、前記回転体は、外郭部材と内部部材とが一体化されており、前記外郭部材は、プーリ形状部を有し、前記内部部材は、内歯歯車を有し、前記内部部材は、前記モータの出力軸、又は、前記モータの出力軸と共に回動する動力伝達部材と係合するものであり、前記外郭部材よりも硬度が高いことを特徴とするギヤードモータ用ギヤボックスである。
【0010】
本様相のギヤードモータ用ギヤボックスは、プーリ形状部を有する外郭部材と内歯歯車を有する内部部材が一体化され、内部部材が外郭部材よりも硬度が高くなっている。このことから、モータの出力軸又は動力伝達部材と係合(螺合)する内部部材を破損し難くすることが可能となり、且つ、プーリ形状部を有する外郭部材に懸架したベルト部材の摩耗を防ぐことが可能となる。
また、プーリとして機能させる回転体に内歯歯車を設け、ギヤとしても機能させることで、部品点数の削減を図ることが可能となり、製造の簡易化(低コスト化)を図ることができる。
【0011】
上記様相のギヤードモータ用ギヤボックスは、前記回転体は、予め成形された前記内部部材がインサート成形によって前記外郭部材と一体化されたものであることが好ましい。
【0012】
かかる様相では、内部部材を外郭部材に嵌め込んで一体化するような構造に比べて、内部部材と外郭部材とを強固に一体化でき、意図しない内部部材と外郭部材の分離を防止できるので好ましい。
【0013】
上記様相のギヤードモータ用ギヤボックスは、前記回転体が回転可能に取り付けられる受け部材を備え、前記受け部材は、前記回転体の一部を収容する回転体収容部を有し、前記回転体収容部内にグリスがあり、前記回転体収容部には、前記回転体収容部の内側空間と外部を連通するグリス漏出孔が形成されていることが好ましい。
【0014】
かかる様相では、回転体収容部内のグリスをグリス漏出孔から外部に漏出させることができるので、意図しない位置へのグリスの垂れ落ちを防止できる。
【0015】
上記した好ましい様相は、前記グリス漏出孔の外側に、漏出したグリスを貯留するグリス収容部材、又は、漏出したグリスを含侵するグリス含侵部材が配されていることがさらに好ましい。
【0016】
かかる様相では、グリス漏出孔から漏出したグリスを貯留、又は、含侵できるのでギヤードモータ用ギヤボックスの外部へのグリスの垂れ落ちを防止できる。
【0017】
上記様相のギヤードモータ用ギヤボックスは、ギヤードモータ用ギヤボックス自身を他部材に固定する固定座を有し、前記固定座には、締結要素を挿通する締結要素挿通孔があり、前記外郭部材は、前記プーリ形状部とは異なる位置に前記内部部材が固定されている内部部材固定部を有し、前記締結要素挿通孔の少なくとも一つは、平面視において、前記内部部材固定部よりも前記プーリ形状部側にあることが好ましい。
【0018】
かかる様相によると、外部のベルト部材から力が加わるプーリ形状部の近傍に締結要素挿通孔が位置するので、ギヤードモータ用ギヤボックスを他部材に対して強固に固定することができる。
【0019】
上記様相のギヤードモータ用ギヤボックスは、前記外郭部材は、前記プーリ形状部が形成される出力軸形成部と、前記内部部材が固定される内部部材固定部を有し、前記外郭部材の内部にはグリスを充填するグリス供給部が設けられており、前記グリス供給部は、窪み部分であり、前記内部部材固定部の内側に向かって開口し、前記内部部材固定部から前記出力軸形成部へ向かう方向に延びていることが好ましい。
【0020】
かかる様相によると、継続使用時にグリスを内歯歯車に供給し続けることができる。
【0021】
本発明の他の様相は、上記したギヤードモータ用ギヤボックスにモータ部が取り付けられてなることを特徴とするギヤードモータである。
【0022】
本様相においても、上記と同様に、ギヤードモータ用ギヤボックスの回転体の破損や、回転体に懸架したベルト部材の摩耗を防ぐことが可能となり、長期間に亘って使用しても不具合が発生し難い。
【0023】
上記した様相は、複数のモータ部を有し、前記ギヤードモータ用ギヤボックスに対して複数の前記モータ部の一つを選択的に取り付けて形成されることが好ましい。
【0024】
かかる構成によると、出力の異なるモータをそれぞれ備えた複数のモータ部から一つを選択してギヤードモータ用ギヤボックスに取り付けることが可能となる。このことから、ギヤードモータの出力変更を容易に行うことが可能となる。
【0025】
上記した様相は、前記モータ部は、給電ケーブルを有し、当該給電ケーブルは、前記モータ部の前記ギヤードモータ用ギヤボックス側から引き出されていることが好ましい。
【0026】
かかる構成によると、モータ部を大型化し、モータ部の一端側がギヤードモータ用ギヤボックス側からより離れた位置に配される構造としても、モータ部の一端側から給電ケーブルを引き出す構造とは異なり、給電ケーブルの長さを長くする必要がない。
【0027】
上記した様相は、前記モータ部は、モータ部側外郭部材と、制御基板を有し、当該制御基板は、前記モータ部側外郭部材の内部であって、前記ギヤードモータ用ギヤボックス側の位置に配置されていることが好ましい。
【0028】
本発明のさらに他の様相は、モータ部と、上記したギヤードモータ用ギヤボックスとを有するギヤードモータを備えたコンベヤ装置であって、コンベヤフレームと、搬送ローラを有し、前記ギヤードモータは、前記搬送ローラの下側に位置しており、前記外郭部材と前記搬送ローラの一部にベルト部材が懸架され、前記搬送ローラ対して動力を供給することを特徴とするコンベヤ装置である。
【0029】
本様相においても、上記と同様に、ギヤードモータ用ギヤボックスの回転体の破損や、回転体に懸架したベルト部材の摩耗を防ぐことが可能となり、長期間に亘って使用しても不具合が発生し難い。
【発明の効果】
【0030】
本発明によると、長期間に亘って使用しても不具合が発生し難く、製造が容易なギヤードモータ用ギヤボックスを提供できる。また、そのようなギヤードモータ用ギヤボックスを使用したギヤードモータ、並びに、コンベヤ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】(a)は、本発明の実施形態に係るコンベヤ装置を示す平面図であり、(b)は、(a)のギヤードモータ、駆動ローラ、丸ベルトを模式的に示す説明図である。
【
図2】
図1のギヤードモータ周辺を模式的に示す図であり、(a)は斜視図、(b)は平面図である。
【
図5】
図3のギヤードモータを示す分解斜視図である。
【
図6】
図3の回転体を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は(a)とは別方向からみた斜視図、(c)は断面図である。
【
図7】
図3の受け部材を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は正面図である。
【
図8】
図7の受け部材を示す図であり、
図7(a)とは別方向からみた斜視図である。
【
図10】
図3のモータ部を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【
図11】
図3のギヤードモータを示す断面図である。
【
図12】
図3のギヤードモータを示す説明図であり、(a)、(b)はそれぞれ異なるモータ部を受け部材に取り付けた様子を示す。
【
図13】
図3のギヤードモータを示す説明図であり、(a)、(b)はそれぞれ異なる回転体を受け部材に取り付けた様子を示す。
【
図14】
図6とは異なる実施形態に係る回転体を示す分解斜視図である。
【
図16】
図7とは異なる実施形態に係る受け部材を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態に係るコンベヤ装置1について、図面を参照しつつ詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、上下方向は、
図1の状態を基準として説明する。
【0033】
本実施形態のコンベヤ装置1は、
図1(a)で示されるように、所謂ローラコンベヤであり、コンベヤフレーム3と、複数の搬送ローラ4と、ギヤードモータ5を備えている。
【0034】
コンベヤフレーム3は、互いに平行に延びる2つのフレーム部材3aを有する。そして、この2つのフレーム部材3aに複数の搬送ローラ4がそれぞれ取り付けられている。
複数の搬送ローラ4は、それぞれが2つのフレーム部材3aに回転可能に軸支され、物品の搬送方向で所定間隔を空けて並列配置されている。また、並列方向で隣り合う2つの搬送ローラ4は、ローラ間ベルト部材10を介して連結されており、一方の搬送ローラ4の回転に伴って、他方の搬送ローラ4が回転する。
【0035】
ここで、複数の搬送ローラ4のうち、一つの搬送ローラ4aは、
図1(b)で示されるように、ギヤードモータ5と丸ベルト11で連結されている。具体的には、ギヤードモータ5の回転体35(詳しくは後述する)と搬送ローラ4aの一部に、丸ベルト11が一定以上の張力を持つように懸架されている。このことから、一つの搬送ローラ4aは、ギヤードモータ5からの動力を受けて回転する駆動ローラとなり、他の搬送ローラ4は、駆動ローラの回転に伴って回転する従動ローラとなる。
【0036】
ギヤードモータ5は、駆動ローラとなる搬送ローラ4aの下方側(斜め下方側)に配されている。具体的には、
図2で示されるように、このギヤードモータ5は、モータ取付部材12(他部材)を介してフレーム部材3aの内側に固定されている。
【0037】
モータ取付部材12は、載置台部20と、2つの側壁部21と、2つの取付片部22を有する。このモータ取付部材12は、固定対象部材であるフレーム部材3aに片持ち状に固定され、フレーム部材3aの内側面から内側に離れる方向に延びている。
【0038】
載置台部20は、ギヤードモータ5が載置される平板状の部材であり、モータ取付部材12の幅方向における中央側となる位置に欠落部25を有する。欠落部25は、モータ取付部材12の先端側から基端側(長手方向の一端側から他端側)に向かって延びている。つまり、載置台部20は、欠落部25を挟んだ両側に第一載置板部20aと第二載置板部20bを有しており、これら第一載置板部20aと第二載置板部20bがそれぞれ細長く延びる板状部分となっている。
【0039】
2つの側壁部21は、モータ取付部材12の幅方向の両端側となる位置にそれぞれ立設された立板状部分であり、モータ取付部材12の長手方向に沿って互いに平行になるように延びている。それぞれの側壁部21は、モータ取付部材12の幅方向に厚さを有しており、モータ取付部材12の先端側の部分の高さが、基端側の部分の高さよりも低い。
【0040】
2つの取付片部22は、モータ取付部材12の基端側に位置する部分であり、2つの側壁部21のそれぞれから互いに近づく方向に延びている。すなわち、取付片部22は、モータ取付部材12の長手方向に厚さを有する板状の部分である。この取付片部22には、締結要素を挿通可能な貫通孔(図示しない)が形成されている。
なお、ここでいう「締結要素」は、ネジ、釘、ボルト、クランプ、ピン等の上位概念であり、被締結物を原則的に破壊せずに締結解除可能な機械構成要素の総称であり、本実施形態ではボルトである。
【0041】
したがって、2つの取付片部22をフレーム部材3aと重ねた状態とし、それぞれの取付片部22及びフレーム部材3aにボルト等の締結要素を挿通することで、モータ取付部材12がフレーム部材3aに固定される。
【0042】
ギヤードモータ5は、
図3乃至
図5で示されるように、ギヤボックス部30(ギヤードモータ用ギヤボックス)とモータ部31とを有しており、これらが連結されて形成されている。
以下のギヤードモータ5の説明において、特に断りのない限りギヤボックス部30側を前側、モータ部31側を後側として説明する。しかしながら、前後方向、上下方向、左右方向は、説明のために便宜上使用する方向であり、当然のことながら、ギヤードモータ5の取り付け姿勢に応じてこれらの方向は変化する。
【0043】
ギヤボックス部30は、回転体35と受け部材36を有している。
【0044】
回転体35は、
図6で示されるように、前方側の出力軸形成部40と後方側のギヤ部41とが一体となって形成される略円筒状の部分である。出力軸形成部40とギヤ部41とは、径の大きさが異なっており、ギヤ部41は、出力軸形成部40よりも拡径された部分となっている。したがって、出力軸形成部40は、ギヤ部41の前端面から前方へ突出しており、出力軸形成部40の外周面とギヤ部41の外周面とは、段差を介して連続している。
【0045】
出力軸形成部40の外周面は、
図6(a)、
図6(b)で示されるように、凹凸形状を有しており、前側部分と後側部分にそれぞれ別種のベルト部材を懸架可能となっている。すなわち、出力軸形成部40の外周面は、前方側に第一懸架領域45(プーリ形状部)を有し、その後方に第二懸架領域46(プーリ形状部)を有する。そして、第一懸架領域45は、リブドベルト(図示しない)を懸架可能(係合可能)な部分であり、第二懸架領域46は、丸ベルト11(
図1参照)を懸架可能な部分である。
【0046】
具体的には、第一懸架領域45では、複数の細い溝部分が出力軸形成部40の長手方向で並列するように形成されている。それぞれの溝部分は、出力軸形成部40の周方向で環状に連続する溝であり、横断面の形状が略三角形状となる溝である。すなわち、この複数の溝部分は、プーリ溝として機能する部分であり、言い換えると、第一懸架領域45が形成されている部分は、リブドベルトを懸架するプーリの外側部分のような形状を有する(プーリの形状を有する)。
【0047】
また、第二懸架領域46では、一つの溝部分が形成されている。この溝部分は、出力軸形成部40の周方向で環状に連続する溝であり、出力軸形成部40の径方向内側に向かって丸みを帯びて凸となるように窪んだ溝である。すなわち、この溝部分もまた、プーリ溝として機能する部分であり、言い換えると、第二懸架領域46が形成されている部分は、丸ベルト11を懸架するプーリの外側部分のような形状有する(プーリの形状を有する)。
【0048】
回転体35は、
図6(b)で示されるように、ギヤ部41の内側に歯車形成部47(内部部材)を有している。ここで、回転体35は、インサート成形によって形成されており、歯車形成部47は、インサート部品として予め形成される部分である。
【0049】
すなわち、回転体35は、出力軸形成部40及びギヤ部41の大部分をなす樹脂製の外郭部材48と、外郭部材48の内側に一体化された歯車形成部47とを有する。言い換えると、回転体35は、一体化された外郭部材48と歯車形成部47に対し、金属製の部材(ベアリング部材50)等の適宜な部材を取り付けて形成される。
すなわち、外郭部材48は、回転体35のうち、歯車形成部47と金属製の部材を除いた部分を形成する。そして、歯車形成部47は、セラミックスの成形体を焼結して形成される焼結体であり、外郭部材48よりも硬度が高い部分となっている。
【0050】
歯車形成部47は、略短筒状であり、円環状に連続する部分の内側に歯車状の凹凸(歯列)を有する。つまり、この凹凸部分によって内歯歯車が形成されている。より詳細には、この内歯歯車は、はすば歯車であり、歯すじがツルマキ線状となっている。
以上のことから、ギヤ部41は、外郭部材48の後側部分(内部部材固定部)と歯車形成部47が一体化して形成された部分であるといえる。
【0051】
ここで回転体35の内部には、前端よりもやや後方となる位置に、ベアリング部材50が設けられている。このベアリング部材50は、内孔部分である前側軸挿通孔51を有する。
回転体35の内部空間は、出力軸形成部40の内部空間とギヤ部41の内部空間とが一体となった空間であり、回転体35の前端側部分と後端側部分のそれぞれで外部と連通する空間である(前端部分と後端部分が外部に開放された空間である)。そして、前側軸挿通孔51は、断面形状が円形で前後方向に延びる孔である。
【0052】
受け部材36は、
図7乃至
図9で示されるように、本体部55と固定座部56(固定座)を有している。
【0053】
本体部55は、前方側に回転体取付部57が設けられ(
図7参照)、その反対側となる後方側にモータ固定部58(
図9参照)が設けられている。
【0054】
回転体取付部57は、
図7で示されるように、回転体収容部60と、回転軸取付部61と、軸部材62とを有している。
【0055】
回転体収容部60は、前側に開口部分を有する略有底円筒状の部分であり、後方に窪んだ凹部を有している。すなわち、回転体収容部60は、水平軸まわりに円環状に連続する周壁部70と後端側に位置する底部71を有し、底部71の前方に周壁部70によって囲まれた収容空間72(内側空間)が形成されている。
【0056】
また、回転体収容部60の周壁部70には、
図7(a)で示されるように、グリス漏出孔73が形成されている。このグリス漏出孔73は、周壁部70の下方側であり、収容空間72の前端開口に隣接する位置に設けられ、周壁部70の周方向に延びる長孔である。そして、グリス漏出孔73は、周壁部70を貫通しており、収容空間72と周壁部70の下方側に位置する外部の空間を連通する。
【0057】
なお、本体部55のうち、回転体収容部60の下方側に位置する部分には、
図9で示されるように、グリスタンク74(グリス収容部材)が取り付けられている。グリスタンク74のグリス導入口74aは、グリス漏出孔73の下方側に位置しており、グリス漏出孔73と重なっている。以上のことから、グリス漏出孔73から下方に流れたグリス(潤滑剤)は、グリスタンク74に入り込み、グリスタンク74に貯留される。
【0058】
回転軸取付部61は、
図7(a)、
図9で示されるように、回転体収容部60の底部71から前方に向かって延びる部分であり、後方側の基台部75と、基台部75の前面からさらに前方に延びる前側延出部76を有している。
【0059】
基台部75は、
図7で示されるように、下側の一部が欠落した略横倒円柱状の部分である。したがって、この基台部75は、外周部分に、左右方向の一方側から上側を経て左右方向の他方側へ至る円弧面75aを有する。この円弧面75aと、回転体収容部60の底部71と周壁部70の間には、溝状に延びる空間が形成される。
【0060】
前側延出部76は、細長く延びる略横倒円柱状の外形を有する部分であり、基台部75よりも細く(前後方向の長さ及び左右方向の長さが小さく)なるように形成されている。
【0061】
この回転軸取付部61は、前端側の一部(前側延出部76の一部)が収容空間72の前端開口よりも前方に位置し、他の部分が収容空間72の前端開口よりも後方に位置している(
図9参照)。また、前側延出部76の前面と、基台部75の前面と、回転体収容部60の底部71の前面とが段状に連続した状態となっている。
【0062】
また、回転軸取付部61には、前端面から後方側へ延びる軸取付用孔78が設けられている。この軸取付用孔78は、断面形状が略円形で水平方向に延びる孔であり、軸部材62の後側部分が挿通される孔である。
【0063】
軸部材62は、略丸棒状の金属製の部材である。つまり、受け部材36は、軸部材62を除く他の部分が樹脂で形成される一方で、軸部材62が金属で形成されている。軸部材62は、前側部分が回転軸取付部61の前端部よりも前方に位置しており、同前端部から前方に延びている。
【0064】
ここで、回転軸取付部61及び軸部材62の下方側には、庇状突起部80が形成されている。庇状突起部80は、回転体収容部60の底部71から前方に延びる突起部分であり、断面形状が略円弧状で延びている。
なお、庇状突起部80の上側部分は、上記した基台部75の下端部よりも上方に位置している。詳細には、基台部75は、上記したように下側の一部が欠落した略横倒円柱状の部分であるが、この欠落部分に庇状突起部80の上側部分が位置するように、庇状突起部80が設けられている。
【0065】
また、庇状突起部80の下側に隣接する位置には、
図7(b)で示されるように、軸挿通用孔81が設けられている。軸挿通用孔81は、開口形状が円形となる孔であり、底部71に前端側の開口面を有し、後方に延びる孔である。すなわち、軸挿通用孔81は、
図9で示されるように、回転体収容部60の底部71からモータ固定部58に至るまでの部分を前後方向に貫通する孔である。
【0066】
モータ固定部58は、
図8で示されるように、モータ部31の前側部分(
図10参照)と係合可能な部分であり、複数の固定用孔83と、上側係合片部84と、下側係合片部85とを有する。
【0067】
固定用孔83は、締結要素(ネジ)を挿通可能な有底孔であり、具体的にはネジ孔である。
上側係合片部84は、断面形状が略円弧状で後方側に延びる薄板状の突起片である。
下側係合片部85は、上側係合片部84から下方に離れた位置に設けられ、略円環を成しつつ後方側に延びる薄板状の突起片である。詳細には、この下側係合片部85は、周方向の一部に欠落部85aを有しており、この欠落部85a除く部分が円環状に連続している。
【0068】
ここで、下側係合片部85の内側となる部分には、前方に窪んだ凹部である後方側凹部86が形成されており、この後方側凹部86の底部分に軸挿通用孔81の後端開口が位置している。言い換えると、軸挿通用孔81の後方には、円環状に連続する周壁部分90によって囲まれた空間があり、この空間の後端側部分が外部に開放されている。
【0069】
固定座部56は、本体部55の側方に位置し、上下方向に厚さを有する厚板状の部分である。本実施形態の受け部材36は、左右方向で離れた位置に一つずつ、2つの固定座部56を有している。
【0070】
固定座部56は、前後方向に延びており、
図7(a)で示されるように、前側部分が回転体収容部60よりも前方に位置しており、
図8で示されるように、後端部分が回転体収容部60やモータ固定部58よりも後方に位置している。
【0071】
ここで、固定座部56には、前後方向に離れた位置に一つずつ、締結要素挿通孔92が設けられている。締結要素挿通孔92は、締結要素を上下方向に貫通する貫通孔であり、締結要素(ボルト)を挿通可能な孔である。
具体的には、締結要素挿通孔92の上側部分は、ボルトの頭部を嵌め込み可能な形状であり、下側部分は、ボルトの軸部を挿通可能な形状となっている(
図4参照)。すなわち、上側部分は、下側部分に比べて横断面の面積が大きい(
図4参照)。
また、一つの固定座部56に設けられた前側の締結要素挿通孔92は、回転体収容部60よりも前方に位置し(
図7(a)参照)、後側の締結要素挿通孔92は、回転体収容部60やモータ固定部58よりも後方に位置している(
図8参照)。
【0072】
さらに、本実施形態の受け部材36は、
図7(b)で示されるように、下端部よりも上方に2つの固定座部56が位置している。すなわち、本体部55のうち、2つの固定座部56の間に位置する部分は、2つの固定座部56よりも下方側に位置しており、下端側部分が丸みを帯びて下方側に凸となる形状となっている。
【0073】
モータ部31は、
図10で示されるように、モータケース部95(モータ部側外郭部材)と、モータ96と、モータ96を制御する制御基板97を有している。また、制御基板97には、モータケース部95の内外に亘って延びるケーブル部材98(給電ケーブル)の一端側が接続されている。ケーブル部材98は、給電線と信号線とを複合化したケーブルであり、給電ケーブルとして機能する。
【0074】
モータケース部95は、金属製の部材であり、モータ96及び制御基板97を収容するモータ収容部95aと、ケーブル部材98の一部を収容するケーブル収容部95bとを有する。
また、モータケース部95の前端側部分には、周縁部分から外側に隆起する取付片部99が設けられている。この取付片部99は、前後方向に厚さを有する板状部分であり、固定用孔99aを有する。固定用孔99aを厚さ方向に貫通する孔であり、締結要素(ネジ)を挿通可能な孔である。
【0075】
モータ収容部95aは、横断面形状が略円形で前後方向に延びる空間を形成する部分である。ケーブル収容部95bは、横断面形状が略三日月形で前後方向に延びる空間を形成する部分である。モータ収容部95a、ケーブル収容部95bは、いずれも前端部分が開放されており、後方側へ向かって深さを有する。また、モータ収容部95aは、ケーブル収容部95bよりも深く延びた空間となっている。
【0076】
モータ収容部95aとケーブル収容部95bの境界に位置する仕切り部分には、ケーブル部材98の一部を配するための欠落部95cが設けられている。また、ケーブル収容部95bには、ケーブル部材98の一部を保持する(挟持する)保持片100が設けられている。さらに、ケーブル収容部95bには、ケーブル収容部95bの内外を連通するケーブル挿通孔101が形成されている。
【0077】
モータ96は、ブラシレスモータであり、固定子105と、回転子106と、出力軸107を有する。そして、固定子105としてコイルが使用され、回転子106として永久磁石が使用されており、回転子106が出力軸107の一部に巻かれた状態となっている。つまり、回転子106と出力軸107は一体化されている。
したがって、回転子106の回転に伴って出力軸107が回転する。出力軸107は、モータ収容部95aの内部から外部に亘って延びており、前側部分がモータ収容部95a(モータケース部95)よりも前方に位置している。さらに、出力軸107の前側部分には、上記した歯車形成部47(
図6(b)、
図6(c)参照)と噛合可能(係合可能)な歯列が形成されている。
【0078】
制御基板97は、略円環状の基板であり、モータ96に対して給電を行う部材でもある。本実施形態では、モータ96と共にモータ収容部95aに収容され、モータ96よりも前方に配されている。
具体的には、制御基板97は、モータ収容部95aの前後方向の中心よりも前方であり、モータ収容部95aの前端よりもやや後方側となる位置に配されている。
【0079】
ケーブル部材98は、
図10(b)で示されるように、モータ部31の前端から所定距離L1だけ離れた位置から外部に引き出されている。つまり、ケーブル部材98の引き出し位置は、モータ部31の前端から所定距離L1だけ離れた位置となる。なお、ここでいう「ケーブル部材98の引き出し位置」とは、ケーブル挿通孔101の後端側開口の位置とする。所定距離L1は、モータ部31の長さ(前後方向の長さ)をL2としたとき、L2/2よりも短い距離(小さい値)となる。すなわち、ケーブル部材98は、モータ部31の前後方向の中心よりも前方であり、モータ部31の前端側となる位置から外部に引き出されている。
【0080】
続いて、本実施形態のギヤードモータ5の組み立て構造について説明する。
【0081】
ギヤードモータ5は、
図11で示されるように、受け部材36の前方側に回転体35を回転可能に取り付けた状態とし、受け部材36の後方側にモータ部31を固定した状態として形成する。すなわち、モータ部31は、前側部分が受け部材36に固定され、受け部材36に対して片持ち状に固定された状態となる。
【0082】
具体的には、受け部材36の上側係合片部84を、モータ部31のケーブル収容部95bに挿入し、ケーブル収容部95bの内周壁部分に内側から当接した状態とする。また、受け部材36の下側係合片部85を、モータ部31のモータ収容部95aに挿入し、モータ収容部95aの周壁部分に内側から当接した状態とする。
また、受け部材36の固定用孔83(
図8参照)と、モータ部31の固定用孔99a(
図10a参照)を前後方向で重ねた状態とし、後方側からネジを挿通する。このことにより、受け部材36とモータ部31とが一体に固定される。
【0083】
このとき、
図11で示される用に、出力軸107を受け部材36の軸挿通用孔81に後方側から挿通した状態とし、出力軸107の前側部分が軸挿通用孔81よりも前方に位置した状態とする。出力軸107は、中心軸の周方向に回転可能な状態で軸挿通用孔81に挿通される。
【0084】
また、受け部材36の前方側では、回転体35の後側部分(ギヤ部41)を回転体収容部60(収容空間72内に)に収容した状態とする。このとき、回転体35の内歯歯車と出力軸107を噛合させた状態とする。ここで、内歯歯車と出力軸107が接触する部分、すなわち、ギヤ部41の内側部分に一定量のグリス(潤滑剤)を入れておく。つまり、回転体収容部60の内部(収容空間72内)であり、ギヤ部41の内側部分にグリスが入れられた状態となる。
なお、本実施形態のギヤードモータ5は、上記したように、グリスタンク74が設けられており、回転体35の回転に伴ってグリスがギヤ部41の内側から漏れ出しても、収容空間72の外部への漏れ出しを防止できる。
【0085】
また、ギヤードモータ5の前側では、前側軸挿通孔51に軸部材62を後方側から挿通した状態とする。このことにより、回転体35は、軸部材62を回転軸として回転可能な状態で、受け部材36に取り付けられる(軸支される)。そして、出力軸107の回転に伴って回転体35が回転する。
【0086】
このとき、回転体35の回転軸と出力軸107とは上下方向にずれた位置にある。当然のことながら、回転体35の回転中心線(仮想線であり、図示しない)と、出力軸107の回転中心線(仮想線であり、図示しない)は、上下方向でずれた位置となる。
【0087】
本実施形態では、回転体35の出力軸形成部40の一部(後端側部分)が、回転体収容部60の内側(収容空間72内)に位置する。また、第一懸架領域45、第二懸架領域46はいずれも回転体収容部60よりも前方に位置する。
【0088】
また、
図4で示されるように、固定座部56の前側の一部、及び、固定座部56の前側の締結要素挿通孔92は、受け部材36の本体部55(回転体収容部60)よりも前方に位置する。具体的には、
図3で示されるように、回転体35の出力軸形成部40の一部から側方(左右方向の外側)に離れた位置であり、回転体35よりも下方となる位置に締結要素挿通孔92が位置している。したがって、ギヤードモータ5を平面視すると、
図4で示されるように、2つの前側の締結要素挿通孔92の間であり、2つの固定座部56の前側部分同士の間に出力軸形成部40が配された状態となる。
【0089】
ここで、
図1(b)で示されるように、出力軸形成部40の回転体収容部60よりも前方に位置する部分は、ギヤードモータ5の使用時に斜め上側に引っ張られる力が加わる部分となる。このため、この部分に近い位置となる上記の位置に前側の締結要素挿通孔92を設けることで、ギヤードモータ5の意図しない脱落(モータ取付部材12からの分離)を抑制できる。
また、本実施形態のギヤードモータ5は、上記したように、部品点数が少ないため、組み込みが容易である。
【0090】
加えて、固定座部56の後側の一部、及び、固定座部56の後側の締結要素挿通孔92の少なくとも一部は、受け部材36の本体部55よりも後方に位置する。具体的には、モータ部31の一部から側方(左右方向の外側)に離れた位置に固定座部56の後側の一部が位置する。したがって、ギヤードモータ5を平面視すると、2つの固定座部56の後側部分同士の間にモータ部31が配された状態となる。
【0091】
本実施形態のギヤードモータ5は、
図12で示されるように、複数(本実施形態では2つ)のモータ部31,331から一つを選択し、受け部材36に固定することが可能となっている。
【0092】
ここで、もう一つのモータ部331は、上記したモータ部31に比べ、前後方向(
図12では左右方向)の長さが長く、内蔵されるモータ96の出力が高いものとなっている。また、複数(2つ)のモータ部31,331は、いずれも上記したように前端側を受け部材36に固定するものであり、且つ、いずれもモータ部31,331の前端からケーブル部材98の引き出し位置までの距離が同一(所定距離L1)となっている。このことから、複数のモータ部31,331のいずれを選択してもコンベヤ装置1の配線構造を変更する必要がない(ケーブル部材98そのもの、又は、ケーブル部材98と接続する外部のケーブル(図示しない)の長さを変更する必要がない)。
【0093】
また、
図2で示されるように、ギヤードモータ5は、回転体35の先端側部分がフレーム部材3aの内側面と近接して離間対向している。その一方で、モータ部31は、回転体35よりもフレーム部材3aから離れた位置に配され、広い空間に面している。そして、上記したように、受け部材36にモータ部31を固定するときの締結要素の挿通方向は、ギヤードモータ5の前後方向(
図2(b)の左右方向であり、搬送方向と交わる(直交する)方向)としている。
以上のことから、ギヤードモータ5は、受け部材36をモータ取付部材12に固定したまま、モータ部31の交換が可能となっている。したがって、ギヤードモータ5の出力を変更する際の作業が容易である。
【0094】
さらに、本実施形態のギヤードモータ5は、
図13で示されるように、複数(本実施形態では2つ)の回転体35,335から一つを選択し、受け部材36に取り付けることが可能となっている。
【0095】
複数の回転体35,335は、いずれも外部のベルト部材と係合する懸架領域(プーリ形状部であり、第一懸架領域45及び第二懸架領域46,346)を有しており、それぞれでこの懸架領域の形状が異なっている。本実施形態では、一方の回転体35と他方の回転体335で第二懸架領域46,346の形状が異なるものとしている。すなわち、一方の回転体35の第二懸架領域46が丸ベルト11と係合可能な部分であるのに対し、他方の回転体335の第二懸架領域346がVベルトと係合可能な部分となっている。
【0096】
このように、ベルト部材と係合する部分の形状が異なる複数の回転体35,335から一つを選択して受け部材36に取り付ける構成によると、回転体35,335を交換するだけで別のベルト部材と係合可能となる。
以上のように、本実施形態のギヤードモータ5は、複数の回転体35,335と、複数のモータ部31,331を有し、これらからそれぞれ一つずつを選択して、受け部材36に対して取り付けて形成することができる。このことより、本実施形態のギヤードモータ5は、モータ96の出力の変更や、懸架するベルト部材の変更に対応可能な汎用性の高いものとなっている。
【0097】
上記した実施形態では、回転体35をインサート成形によって形成し、インサート部品と形成される歯車形成部47と、他の部分をなす外郭部材48を一体化した。しかしながら、本発明はこれに限るものではない。
例えば、これら外郭部材と歯車形成部を別途形成した後に、組み立てによって一体化してもよい。この場合、外郭部材の後端側の内周面と歯車形成部の外周面のそれぞれに互いに係合する係合部を設ける。すなわち、一方に一又は複数の突起部分を設け、他方にこれと係合する複数の溝部分を設けるといった具合である。
また、別途形成した外郭部材と歯車形成部は、圧入によって一体化してもよく、接着固定によって一体化してもよい。
しかしながら、組み立てを容易化するという観点や、意図しない脱落を防止するという観点から、上記したように、回転体35をインサート成形によって形成することが好ましい。
【0098】
上記した実施形態では、モータ96の出力軸107が歯車形成部47と直接接触する例について説明したが、本発明はこれに限るものではない。
例えば、出力軸107の先端側(前端側)部分に動力伝達部材を取り付け、動力伝達部材が歯車形成部47と接触する(内歯歯車と噛合する)構成としてもよい。すなわち、モータ96の回転子106の回転に伴って、歯車形成部47と接触する部分が回転すればよい。したがって、出力軸107に対して動力伝達部材を取り付けるとき、直接取り付けてもよく、一又は複数の部材を介して取り付けてもよい。
【0099】
上記した実施形態では、グリス漏出孔73の下側にグリスタンク74を設け、グリス漏出孔73から漏れ出たグリスをグリスタンク74に貯留する例について説明したが、本発明はこれに限るものではない。
例えば、グリスタンク74に替わってフェルト(グリス含侵部材)のようなグリスを含侵可能な部材を設け、漏れ出たグリスを含侵する構成としてもよい。
【0100】
以下、上記した実施形態とは異なる実施形態に係る回転体435と受け部材436について説明する。なお、上記した実施形態と同様の部分については、同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0101】
本実施形態の回転体435は、
図14で示されるように、外郭部材448と、歯車形成部447(内部部材)を別途形成し、これらを圧入によって一体化するものである。
【0102】
外郭部材448は、出力軸形成部440と後方側の歯車取付部441(内部部材固定部)を有する略円筒状の部分である。出力軸形成部440と歯車取付部441は、径の大きさが異なっており、歯車取付部441は、出力軸形成部440よりも拡径された部分となっている。
【0103】
外郭部材448の内部には、
図15で示されるように、ベアリング取付部464と、グリスボックス部465(グリス供給部)と、外郭側係合部467が設けられている。
ベアリング取付部464は、ベアリング部材450(軸受部材)を内嵌可能な部分であり、一部が歯車取付部441の内側に位置している。すなわち、ベアリング取付部464の後側部分464aは、歯車取付部441の内側で円環状に連続する。
外郭部材448の内側には、前後方向(
図15では左右方向)に離れた位置に一つずつベアリング部材50,450が取り付けられており、後方側(
図15では右側)のベアリング部材450は、出力軸形成部440の内側と歯車取付部441の内側に跨って設けられている。
【0104】
グリスボックス部465は、歯車取付部441の内側空間に開口し、前側に底を有する窪み部分であって、内部にグリスを充填することが可能な部分である。本実施形態では、
図14で示されるように、歯車取付部441の周方向で並列する複数のグリスボックス部465を有している。
また、
図15で示されるように、グリスボックス部465の側壁部分の一部は、ベアリング取付部464によって形成されている。ベアリング取付部464の後端部分は、グリスボックス部465の開口よりも後方(
図15では右側)に位置する。グリスボックス部465は、出力軸形成部440の内側と歯車取付部441の内側に跨って設けられている。グリスボックス部465の大部分(又は全体)は、組み立て時に出力軸107が位置する部分(
図11参照)よりも前方に位置している。すなわち、出力軸107と内歯歯車が係合する部分よりも前方にグリスを溜めておくことができる。
【0105】
外郭側係合部467は、
図15で示されるように、歯車取付部441の内周面に形成されており、歯車取付部441の周方向で並列する突起列(歯列)によって構成される第一外郭側係合部467aと、第二外郭側係合部467bとをそれぞれ複数有する。
【0106】
第二外郭側係合部467bは、2つの異なる第一外郭側係合部467aの間に形成されている。この第二外郭側係合部467bは、略直方体状の突起状部分と、この突起状部分に形成された溝部分468を有する。溝部分468は、歯車取付部441の周方向に延びる溝であり、突起状部分の幅方向の一端から他端までの間で延びている。
【0107】
歯車形成部447は、
図14で示されるように、円環状に連続する筒状の本体部447aと、本体部447aの前側部分と一体に形成された円環板状をなす前側板部447bを有する。
【0108】
本体部447aの内周面には、内歯歯車が形成されており、外周面には内部部材側係合部479が設けられている。
内部部材側係合部479は、本体部447aの周方向で並列する突起列(歯列)によって構成される第一内部部材側係合部479aと、第二内部部材側係合部479bとをそれぞれ複数有する。
【0109】
第二内部部材側係合部479bは、2つの異なる第一内部部材側係合部479aの間に形成されている。この第二内部部材側係合部479bは、本体部447aの周方向に延びる突起部分である。
【0110】
外郭側係合部467、内部部材側係合部479は、歯車形成部447を外郭部材448に圧入するときに互いに係合する係合部であり、係合することで、歯車形成部447の外郭部材448に対する回り止め機能と抜け止め機能を発揮する。すなわち、歯車形成部447を外郭部材448に固定した状態において、歯車形成部447の外郭部材448に対する周方向への相対回転と、前後方向への移動を規制する。
【0111】
具体的には、第一外郭側係合部467aと第一内部部材側係合部479aとが係合し、一方の突起列(歯列)のそれぞれの突起(歯)の間に、他方の突起列のそれぞれの突起が嵌まり込む。このことにより、回り止め機能を発揮する。
さらに、第二外郭側係合部467bと第二内部部材側係合部479bとが係合し、第二内部部材側係合部479bの突起部分が第二内部部材側係合部479bの溝部分468に入り込む。このことにより、抜け止め機能を発揮する。
【0112】
また、
図16で示されるように、受け部材436において、庇状突起部80の上側であり、庇状突起部80と基台部75の間に形成された隙間部分は、グリスを入れておく受部材側グリス貯留部487となる。
本実施形態では、受部材側グリス貯留部487に仕切部488を設けており、仕切部488によって受部材側グリス貯留部487が2つの空間487a,487bに分けられている。すなわち、2つの空間487a,487bのそれぞれがグリスを入れておく部分となる。仕切部488は、庇状突起部80の上面から回転軸取付部61までの間で延びる縦板状部分であり、左右方向に厚さを有する。
【符号の説明】
【0113】
1 コンベヤ装置
3 コンベヤフレーム
4 搬送ローラ
5 ギヤードモータ
12 モータ取付部材(他部材)
30 ギヤボックス部(ギヤードモータ用ギヤボックス)
31,331 モータ部
35,335,435 回転体
36,436 受け部材
41 ギヤ部
45 第一懸架領域(プーリ形状部)
46,346 第二懸架領域(プーリ形状部)
47,447 歯車形成部(内部部材)
48,448 外郭部材
56 固定座部(固定座)
60 回転体収容部
72 収容空間(内側空間)
73 グリス漏出用孔
74 グリスタンク(グリス収容部材)
92 締結要素挿通孔
95 モータケース部(モータ部側外郭部材)
96 モータ
97 制御基板
98 ケーブル部材(給電ケーブル)
107 出力軸
441 歯車取付部(内部部材固定部)
465 グリスボックス部(グリス供給部)