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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】バルブ用緩み止め具およびバルブ
(51)【国際特許分類】
   F16K 51/00 20060101AFI20240417BHJP
   F16B 7/20 20060101ALI20240417BHJP
   F16B 39/10 20060101ALI20240417BHJP
   E05F 3/12 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
F16K51/00 Z
F16B7/20 B
F16B39/10 P
E05F3/12
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021180556
(22)【出願日】2021-11-04
(65)【公開番号】P2023069016
(43)【公開日】2023-05-18
【審査請求日】2023-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000229380
【氏名又は名称】日本ドアーチエック製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004129
【氏名又は名称】弁理士法人石田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】出向井 康司
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04148111(US,A)
【文献】特表2010-531962(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 51/00
F16B 7/20
F16B 39/10
E05F 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブ取付穴内に形成される雌螺子に対応した、雄螺子を有するバルブの緩み止めを行うための弾性部材からなるバルブ用緩み止め具において、
筒状の緩み止め具本体を備え、
前記緩み止め具本体の内周面をバルブ保持部とし、
前記緩み止め具本体の外周面を緩み止め部とし、
前記バルブ保持部の下端の開口縁をバルブ頭部への差し込み口とし、
前記バルブ頭部に対して軸方向に前記差し込み口を差し込むことを特徴とするバルブ用緩み止め具。
【請求項2】
前記緩み止め具本体の外周面の一部を凹状とした空隙形成部を備えたことを特徴とする請求項1に記載のバルブ用緩み止め具。
【請求項3】
前記空隙形成部は軸方向に延設される溝形状とし、当該空隙形成部を周方向に一定間隔で複数設けたことを特徴とする請求項2に記載のバルブ用緩み止め具。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のバルブ用緩み止め具を取着可能なバルブであって、バルブ頭部の外径寸法を、前記バルブ用緩み止め具の内周直径寸法よりも大きく形成したことを特徴とするバルブ。
【請求項5】
前記バルブ頭部よりも先端側に連続して拡径部を設け、バルブ頭部へ当該バルブ用緩み止め具を圧入した際に、前記拡径部によって前記バルブ用緩み止め具が先端側へ移動しないようにしたことを特徴とする請求項4に記載のバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、ドアクローザ、フロアヒンジ、ヒンジクローザ等におけるバルブの緩み止めを行うためのバルブ用緩み止め具と、当該バルブ用緩み止め具に対応したバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドアクローザ等に用いられるバルブ(例えば、流量調整バルブ)には、環状のシール部材が設けられている。シール部材は、ドアクローザ等における作動油の漏れを防止するために設けられるものである。そして、バルブには、シール部材とは別に、バルブ自体の緩み止めを目的として、バルブ用緩み止め具を有するものがある。
【0003】
例えば、ドアクローザのための弁(バルブ)であって、該弁が、ドアクローザのシリンダ内に配置されたピストンによって負荷されるようになっており、弁の弁ピンが、弁座に接触可能な弁円錐部を備えていて、かつ弁ピンに配置された雄ねじ山で、ドアクローザのシリンダまたはケーシングに配置された雌ねじ山にねじ結合されており、弁ピンを、無圧室に対してシールし、かつ弁ピンの、弁円錐部とは反対側で、弁ピンの円形の溝に配置されたシールリングが設けられている形式のものにおいて、弁ピンとドアクローザのシリンダまたはケーシングとの間に、弁ピンの雄ねじ山を、シリンダまたはケーシングの雌ねじ山に対してロックする回り止め(バルブ用緩み止め具)が配置されていることを特徴とする、ドアクローザのための弁が公知である(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2008-509304
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
当該バルブにおけるバルブ用緩み止め具は、合成樹脂によって構成されており、短手方向断面が略C形状で側面に開口部を有している。当該回り止めは、バルブの軸に対して側方から開口部を近接させ、プレス嵌めにより装着される。
【0006】
ところで、ドアクローザ等の製造工程中には、ドアクローザ等の本体(シリンダ)を組み立てて作動油を充填しバルブを取着・調整した半製品に対して、塗装およびその後の乾燥を行う塗装・乾燥工程を有する。塗装・乾燥工程における塗装後の乾燥処理は、乾燥機を用いて高温乾燥処理を行う。
【0007】
ここで、上記したバルブ用緩み止め具をバルブとともに取り付けた後に塗装・乾燥工程を行うと、バルブ用緩み止め具は、合成樹脂により形成されているため、乾燥機で高温乾燥処理されることにより変形、変質して弾性力がなくなり、バルブの回転に対する摩擦抵抗が減少し、緩み止め機能が損なわれることとなる。
【0008】
このため、塗装・乾燥工程の前にバルブ用緩み止め具を取り付けたのちに塗装・乾燥工程を行うことはできず、当該塗装・乾燥工程が終了した後にドアクローザ等に取り付けられたバルブを緩めて(若しくは取り外して)バルブ用緩み止め具を装着することとなるが、再度、バルブの調整を行う必要が生じ、生産効率の低下を招来していた。
【0009】
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、塗装・乾燥工程が終了した後に、ドアクローザ等のバルブの調整を不要として装着できるバルブ用緩み止め具、および当該バルブ用緩み止め具に対応したバルブの提供を、発明が解決しようとする課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、バルブ取付穴内に形成される雌螺子に対応した、雄螺子を有するバルブの緩み止めを行うための弾性部材からなるバルブ用緩み止め具において、筒状の緩み止め具本体を備え、前記緩み止め具本体の内周面をバルブ保持部とし、前記緩み止め具本体の外周面を緩み止め部とし、前記バルブ保持部の下端の開口縁をバルブ頭部への差し込み口とし、前記バルブ頭部に対して軸方向に前記差し込み口を差し込むことを特徴とするバルブ用緩み止め具を、上記課題を解決するための手段とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、バルブ保持部によるバルブの保持と、緩み止め部によるバルブの緩み止めの機能を確保しつつ、バルブ保持部の下端の開口縁をバルブ頭部への差し込み口とし、前記バルブ頭部に対して軸方向に前記差し込み口を差し込むことで、塗装・乾燥工程が終了した後に、バルブを動かすことなくバルブ頭部に対して設置でき、バルブを再調整する必要性が生じないものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例に係るバルブ用緩み止め具の(a)平面図、(b)正面図、(c)A-A断面図、(d)斜視図である。
図2】本発明の実施例に係るバルブ用緩み止め具を取着するバルブの(a)正面図、(b)縦断面図である。
図3】(a)バルブ取付穴、(b)バルブ取付穴にバルブ2を取り付けた状態を示す縦断面図である。
図4】(a)本発明の実施例に係るバルブ用緩み止め具をバルブの頭部に圧入した状態を示すドアクローザ本体の一部縦断面図、(b)ドアクローザ本体の表面に押さえ板を当接させた状態を示すドアクローザの一部縦断面図である。
図5】本発明の実施例に係るバルブ用緩み止め具およびバルブを、ドアクローザに適用した状態を示す説明図である。
図6】本発明のバルブ用緩み止め具の他の各実施例を示す各平面図(a)~(f)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態に係るバルブ用緩み止め具は、バルブ取付穴内に形成される雌螺子に対応した、雄螺子を有するバルブの緩み止めを行うための弾性部材からなるバルブ用緩み止め具において、筒状の緩み止め具本体を備え、前記緩み止め具本体の内周面をバルブ保持部とし、前記緩み止め具本体の外周面を緩み止め部とし、前記バルブ保持部の下端の開口縁をバルブ頭部への差し込み口とし、前記バルブ頭部に対して軸方向に前記差し込み口を差し込む構成とすることができる(第1の構成)。
【0014】
上記第1の構成によれば、バルブ保持部によるバルブの保持と、緩み止め部によるバルブの緩み止めの機能を確保しつつ、バルブ保持部の下端の開口縁をバルブ頭部への差し込み口とし、前記バルブ頭部に対して軸方向に前記差し込み口を差し込むことで、塗装・乾燥工程が終了した後に、バルブを操作することなくバルブ頭部に対して設置でき、バルブを再調整する必要性が生じないものとすることができる。
【0015】
また本発明の実施形態に係るバルブ用緩み止め具は、上記第1の構成において、前記緩み止め具本体の外周面の一部を凹状とした空隙形成部を備えた構成とすることができる(第2の構成)。
【0016】
上記第2の構成によれば、第1の構成の作用効果を奏する上に、空隙形成部によって、外周面となる緩み止め部の接触面積を低減するように調節できることから、適度なバルブ回転抵抗を実現することができる。また、空隙形成部を設けることによって、バルブへの圧入の際に余剰の体積が上方にはみ出さないようにすることで、バルブ回転抵抗を安定化させることができる。
【0017】
また本発明の実施形態に係るバルブ用緩み止め具は、上記第2の構成において、前記空隙形成部は軸方向に延設される溝形状とし、当該空隙形成部を周方向に一定間隔で複数設けた構成とすることができる(第3の構成)。
【0018】
上記第3の構成によれば、第2の構成の作用効果を奏する上に、周方向全域にわたって均一に、安定して、適度なバルブ回転抵抗を実現することができる。
【0019】
また本発明の実施形態に係るバルブは、上記第1の構成から第3の構成のいずれかのバルブ用緩み止め具を取り付け可能なバルブであって、バルブ頭部の外径寸法を、前記バルブ用緩み止め具の内周直径寸法よりも大きく形成したバルブである(第4の構成)。
【0020】
上記第4の構成によれば、バルブのバルブ頭部とバルブ緩み止め具のバルブ保持部とが密着し、バルブが上記第1から第3のいずれかの構成のバルブ用緩み止め具と協働することで、バルブの緩みが抑制され、上記第1から第3のいずれかの構成による作用効果を奏するものとすることができる。
【0021】
また本発明の実施形態に係るバルブは、上記第4の構成において、前記バルブ頭部よりも先端側に連続して拡径部を設け、バルブ頭部へ当該バルブ用緩み止め具を圧入した際に、前記拡径部によって前記バルブ用緩み止め具が先端側へ移動しないようにしたことを特徴とするバルブである(第5の構成)。
【0022】
上記第5の構成によれば、バルブ頭部へ当該バルブ用緩み止め具を圧入した際に、前記拡径部によって前記バルブ用緩み止め具が先端側へ移動しないようにしたことにより、バルブは、その拡径部がバルブ用緩み止め具の底面と当接すると、それ以上はバルブ用緩み止め具1に対して相対的に上方へ移動できなくなり、バルブの抜け止め機能を発揮させることができる。
【実施例
【0023】
以下、図面を参照し、本発明の実施例に係るバルブ用緩み止め具1について説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。尚、説明を分かりやすくするために、以下で参照する図面においては、構成が簡略化または模式化して示されたり、一部の構成部材が省略されたりしている。また、各図に示された構成部材間の寸法比は、必ずしも実際の寸法比を示すものではない。
【0024】
また、本発明の実施例に係るバルブ用緩み止め具1、ならびに、バルブ2を説明するに際し、いずれも使用するドアクローザ4に適用した構成について説明するものとしているが、本発明は当該ドアクローザ4を用途とするものに限定されるものでなく、フロアヒンジやヒンジクローザ等においても適用可能であり、また、いずれも本発明が開示する技術思想の範囲内で、種々の変形、設計変更される発明を含むものである。
【0025】
本発明の実施例に係るバルブ用緩み止め具1は、合成樹脂であるナイロン6若しくはナイロン6,6で形成されるものであり、図1(a)~(d)に示すように、中央穴15を有する緩み止め具本体10を備え、中央穴15の内周面をバルブ保持部11とし、外周面は、軸方向に延設される溝部を一定間隔で複数備え、外周面のうち溝部を除いた部分を緩み止め部12とし、当該溝部を空隙形成部14とした構成である。当該構成によって、外周面はスプライン形状として形成される。緩み止め具本体10における中央穴15の下端の開口縁を、バルブ頭部20への差し込み口13とする。バルブ用緩み止め具1の高さHは、バルブ2に当該バルブ用緩み止め具1を取着し、バルブ2をバルブ取付穴に取着した状態で、ドアクローザ本体4A(シリンダ)の表面から当該バルブ用緩み止め具1が突出しない寸法に設定されている。
【0026】
緩み止め部12は、バルブ取付穴に対して摩擦抵抗による緩み止め機能を有する。また中央穴15の内周面であるバルブ保持部11は、取着対象であるバルブ2の頭部20に対して摩擦抵抗による緩み止め機能を有する。
【0027】
本実施例に係るバルブ用緩み止め具1は、空隙形成部14を設けることで、緩み止め部12の接触面積を低減するように調節できることから適度なバルブ回転抵抗を実現することができる。また、空隙形成部14を設けることで、単に円筒状とする場合と比較して、バルブ2への圧入時に変形を生じる余剰体積が低減され、バルブ用緩み止め具1の変形による余剰のはみ出し部分の形成を抑制し、ドアクローザ本体4Aと押さえ板4Bとの取付において余剰のはみ出し部分に阻害されることがなく、加工精度を高めることができる。
【0028】
本発明の実施例に係るバルブ2は、流量調整弁であり、図2(a)(b)に示すように、頭部20から先端側に向けて、拡径部22、シール体保持部23、雄螺子部24、調整部25を順次備えた構成である。
【0029】
頭部20の上面には、回転操作用穴(六角穴)が設けられている。また頭部20の側面には、摩擦抵抗を向上させる加工部21が設けられている。加工部21は、平目のローレット加工により構成されている。平目の畝部が軸方向となるように配置されており、畝部が周方向への回転の際に摩擦抵抗を生じるようになっている。シール体保持部23には、環状のシール部材26が設けられている。
【0030】
バルブ2は、バルブ用緩み止め具1よりも先端側にシール部材26が配置されることで、当該バルブ用緩み止め具1は、シール部材26によって環境(例えば作動油に浸漬されるような環境)からの悪影響を受け難いようになっており、緩み止めの機能をより安定的に行えるものとしている。
【0031】
本発明の実施例に係るドアクローザ4におけるドアクローザ本体4Aには、図3(a)に示すように、バルブ取付穴5(第1バルブ取付穴5A、第2バルブ取付穴5B)が設けられている。バルブ取付穴5はバルブ2を取り付けるための穴であり、バルブ2の形状に合わせて形成されている。バルブ取付穴5内の上部は、バルブ用緩み止め具1を収容可能で、かつ、バルブ用緩み止め具1の緩み止め部12と当接する内壁52を有するように緩み止め具収容空間50が確保されている。またバルブ取付穴5における緩み止め具収容空間50の下方部分は、バルブ2の径に適合する大きさに形成されている。バルブ取付穴5内には、バルブ2の雄螺子部24に対応する雌螺子部51が形成されている。バルブ取付穴5は、流路と繋がっており、バルブ2の開閉によって、流路の開放、閉塞が制御される。
【0032】
本実施例においては、ドアクローザ4は、ドアクローザ本体4Aの上面に対して取着する押さえ板4Bを有する(図4(b)参照。)。押さえ板4Bは、ドアクローザ本体4Aのバルブ取付穴に重合する貫通穴を有する。貫通穴の直径寸法はバルブ用緩み止め具1の外径寸法よりも小さく形成されている。
【0033】
図3(b)に示すように、ドアクローザ本体4Aにおけるバルブ取付穴5にバルブ2が取着され、バルブ2の位置調節がされた状態で、当該ドアクローザ本体4Aの塗装・乾燥工程を行い、当該塗装・乾燥工程が完了したドアクローザ本体4Aについて、図4(a)に示すように、バルブ用緩み止め具1を、その差し込み口13側からバルブ2の頭部20に圧入する。
【0034】
バルブ用緩み止め具1をバルブ2の頭部20に圧入することにより、バルブ用緩み止め具1のバルブ保持部11とバルブ頭部20の側面の加工部21とが密着し、バルブ取付穴の内壁とバルブの緩み止め部12とが当接する。バルブ用緩み止め具1は、バルブ2に取着された状態において、バルブ2の拡径部22よりも下端側へは移動しない構成になっている。換言すれば、バルブ2は、その拡径部22がバルブ用緩み止め具1の底面と当接すると、それ以上は、バルブ用緩み止め具1に対して相対的に上方へ移動できない構成になっている。また、上記したように、バルブ用緩み止め具1は、バルブ2の頭部20に圧入された状態で、ドアクローザ本体4Aの表面から突出しない。
バルブ用緩み止め具1の圧入により緩み止めを行う際に、バルブ2の位置は変化しないことから、バルブ2の位置を再調整する必要は生じない。
【0035】
この状態において、図4(b)に示すように、バルブ2およびバルブ用緩み止め具1が取着されたバルブ取付穴5の中心と、押さえ板4Bの貫通穴の中心とを一致させて、押さえ板4Bをドアクローザ本体4Aの上面に対して取着する。
【0036】
以上の構成によって、通常状態では、バルブ2は、その頭部20がバルブ保持部11と密着し、バルブ用緩み止め具1により一体に保持されており、かつ、バルブ用緩み止め具1の緩み止め部12がバルブ取付穴5の内壁52と当接することによって、緩み止め機能が発揮される。
【0037】
尚、バルブ2の位置の調整(バルブの開閉の調整)を事後的に行う場合には、押さえ板4Bの貫通穴から露呈するバルブ2の頭部20の回転操作用穴20Aにバルブ回転用工具(例えば、六角レンチ)を差し込み、バルブ2を回転させることで、行うことができる。この際に、バルブ用緩み止め具1はバルブ2とともに回転するが、貫通穴の直径寸法は、バルブ用緩み止め具1の外径寸法よりも小さく形成されていることから、バルブ用緩み止め具1は、押さえ板4Bから抜けることがない。
【0038】
また、バルブ2の位置の調整を行う際に、バルブ用緩み止め具1は、バルブ取付穴の内壁と摩擦抵抗を生じながら、バルブ2とともに回転するが、上記したように、空隙形成部14を設けることで、緩み止め部12の接触面積を低減するように調節できることから適度なバルブ回転抵抗を実現することができる。
【0039】
以上の構成を有する本発明の実施例に係るバルブ用緩み止め具1およびバルブ2を、ドアクローザ本体4Aに用いた状態について以下に説明する。尚、説明上、図5において左側を前方、右側を後方とする。また図5中、前方に向かう方向(開扉方向)を矢印P、後方に向かう方向(閉扉方向)を矢印Qで示す。
【0040】
本実施例に係るバルブ2は、例えば、図5に示すように、ドアクローザ本体4A内で、作動油の流量を調整することで扉の自閉速度を制御するバルブ2(第1調整バルブ2A、第2調整バルブ2B)として使用している。
【0041】
本実施例に係るバルブ用緩み止め具1およびバルブ2を用いるドアクローザ本体4Aは、内部にシリンダ室42を備え、アームに連結するための回転軸40と、前記回転軸40の回転に応じて内部空間で長手方向に往復動が可能なピストン41と、前記シリンダ室42内にピストン41を押圧する圧縮コイルバネ43を備え、前記シリンダ室42内には作動油が充填され、前端及び後端は蓋部48で閉塞されている。また前記ピストン41はボール弁41Aを備える。
【0042】
ドアクローザ本体4Aの後部上方には、前記シリンダ室42から作動油を逃すための流路である第1作動油通路44及び第2作動油通路45と、これに接続され長手方向に設けられる第3作動油通路46と、該第3作動油通路46の前端側からシリンダ室42へ通じる第4作動油通路47を有する。
前記第3作動油通路46の後端側には流路を塞ぐ栓部材49を備える。
【0043】
前記第3作動油通路46と第4作動油通路47の交差位置から上方に開口する第1バルブ取付穴5Aを備え、前記第3作動油通路46と第2作動油通路45の交差位置から上方に開口する第2バルブ取付穴5Bを有する。第1バルブ取付穴5Aには本発明の実施例となる前記第1調整バルブ2Aが取着される。同様に、第2バルブ取付穴5Bには実施例に係る前記第2調整バルブ2Bが取着される。
【0044】
以上の構成により開扉時にはピストン41が前方へ移動し、圧縮コイルばね43が圧縮され、前記ボール弁は開状態となり、作動油は後方へ移動する。閉扉時には圧縮コイルばね43の押圧力によってピストン41が後方へ移動し、ボール弁は閉状態となり、作動油は前記シリンダ室42から前記第1作動油通路44へ移動する。
【0045】
ピストン41が第1作動油通路44を閉塞するまでは、作動油は、第3作動用通路46へ流入し、第4作動油通路47へ移動し、第1調整バルブ2Aによって第1段階の流量調整がされる。作動油の流量を調整することによって、第1段階の所定速度で、一定角度まで閉方向へ扉が移動する。
【0046】
回転軸40が前記一定角度まで回転し、ピストン41によって前記第1作動油通路44が塞がると、作動油は第2作動油通路45から第3作動油通路46への流路へ移動する。この際に作動油は第2調整バルブ2Bによって第2段階の流量調整される。作動油の流量を調整することによって、第2段階の所定速度で、閉扉する。当該作動油はその後第4作動油通路47からシリンダ室42内へ還流される。
【0047】
この閉扉時において、圧縮コイルばね43がピストン41を押圧することで、圧力が作動油を介してバルブ2に負荷をかける。また、作動油の移動に伴い、振動が生じる。当該負荷及び振動を、本実施例に係るバルブ2(第1調整バルブ2A及び第2調整バルブ2B)に取着されたバルブ用緩み止め具1が吸収することによって、不用意なバルブ2の回転(緩み)を阻止することができる。
【0048】
以上に示した本発明の実施例に係るバルブ2は、流量調節弁の他、開閉弁等他の弁機構を備えるものとすることも可能である。
【0049】
上記実施例に係るバルブ用緩み止め具1は、中央穴15を有する緩み止め具本体10の外周面をスプライン形状としたものであるが、本発明は、上記実施例には限定されない。例えば、図6(a)に示すように、円筒形状とすることもできる。また図6(b)に示すように、平面視において円弧状に切欠した溝状の空隙形成部14を有するものとすることもできる。
【0050】
また図6(c)(d)のように、平面視においてV字状に切欠した溝状の空隙形成部14を有するものとすることもできる。空隙形成部14の幅を調整することで、緩み止め部12の幅を調整することができる。緩み止め部12は、図6(c)に示すように一定の幅を有するが、図6(d)に示すように、軸方向へ連続する線状とすることもできる。また図6(e)(f)のように、平面視において多角形状に切欠した溝状の空隙形成部14を有するものとすることもできる。
【0051】
また、図6(a)を除き、空隙形成部14はいずれも周方向に8箇所設けた構成を例示しているが、空隙形成部14は複数あればよく、例えば、3箇所、12箇所等とすることも可能である。
【0052】
尚、図6(a)の円筒形状のバルブ用緩み止め具1のみ空隙形成部14がないが、本発明は当該構成を排除するものではない。円筒形状のバルブ用緩み止め具1については、高さH(図1参照。)を調整することによって、接触面積の調整が可能である。
【0053】
上記実施例においては、バルブ2には、加工部21を設けているが、加工部21は必須の構成ではなく、例えば、加工部21を設けることなく、頭部20の直径寸法と、バルブ用緩み止め具1のバルブ保持部の直径寸法とのはめあい交差を調整することによって、バルブ2が保持される構成とすることもできる。
【0054】
尚、本発明においてはバルブ用緩み止め具1は、弾性材料として、樹脂弾性を有する合成樹脂であるナイロン6若しくはナイロン6,6用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)等の樹脂弾性を有する合成樹脂を用いることも可能である。
【0055】
また本発明においては、樹脂弾性を有する合成樹脂に限らず、弾性材料として、合成ゴムを用いることも可能である。本発明において使用可能な合成ゴムとしては、例えば、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、フッ素ゴム等がある。
【符号の説明】
【0056】
1 バルブ用緩み止め具
10 緩み止め具本体
11 バルブ保持部
12 緩み止め部
13 差し込み口
14 空隙形成部
15 中央穴
2 バルブ
2A 第1調整バルブ
2B 第2調整バルブ
20 頭部
20A 回転操作用穴
21 加工部
22 拡径部
23 シール体保持部
24 雄螺子部
25 調整部
26 シール部材
4 ドアクローザ
4A ドアクローザ本体(シリンダ)
4B 押さえ板
40 回転軸
41 ピストン
41A ボール弁
42 シリンダ室
43 圧縮コイルばね
44 第1作動油通路
45 第2作動油通路
46 第3作動油通路
47 第4作動油通路
48 蓋部
49 栓部材
5 バルブ取付穴
5A 第1バルブ取付穴
5B 第2バルブ取付穴
H 高さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6