(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】幹細胞移植のための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 35/28 20150101AFI20240417BHJP
A61K 35/51 20150101ALI20240417BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20240417BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20240417BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240417BHJP
C12N 5/071 20100101ALN20240417BHJP
C12N 5/0789 20100101ALN20240417BHJP
【FI】
A61K35/28
A61K35/51
A61P7/00
A61P7/06
A61P43/00 121
C12N5/071
C12N5/0789
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022090788
(22)【出願日】2022-06-03
(62)【分割の表示】P 2018503173の分割
【原出願日】2016-07-19
【審査請求日】2022-07-01
(32)【優先日】2015-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516389363
【氏名又は名称】アンジオクライン・バイオサイエンス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Angiocrine Bioscience, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】ポール・ウィリアム・フィネガン
(72)【発明者】
【氏名】クロード・ジェフリー・デイビス
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ダニエル・ギンズバーグ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・ジョセフ・ノーラン
【審査官】辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0093081(US,A1)
【文献】特表2013-535186(JP,A)
【文献】特開2015-109833(JP,A)
【文献】YILDIRIM S. et al.,Bone Marrow Transplantation,2005年,36,pp.71-79
【文献】Cell Stem Cell,2010年,Vol. 6,pp. 251-264
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K35/00-35/768
C12N5/00-5/28
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
造血幹細胞および/または前駆細胞(HSPC)移植を必要とするヒト対象への投与に
用いるための、(a)ヒト
臍帯血由来HSPC
の増殖細胞集団、(b)E4ORF1+ヒト臍帯静脈内皮細胞(E4ORF1+HUVEC)
、および(c)薬学的に許容される担体を含む
、医薬組成物。
【請求項2】
臍帯血由来HSPCが、造血幹細胞である、請求項
1に記載の
医薬組成物。
【請求項3】
臍帯血由来HSPCが、対象と同種である、請求項1
または2に記載の
医薬組成物。
【請求項4】
臍帯血由来HSPCが、対象に関して自己由来である、請求項1
または2に記載の
医薬組成物。
【請求項5】
E4ORF1+HUVECが、有糸分裂不活性化されている、請求項1から
4のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項6】
E4ORF1+HUVECが、ETV2+である、請求項1から
5のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項7】
E4ORF1+HUVECが、E4ORF6+である、請求項1から
6のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項8】
対象が、骨髄破壊的処置によって引き起こされる造血不全を有するか、または、血液疾患、骨髄造血幹細胞移植を要する障害、感染による免疫不全、T細胞に影響を及ぼす感染性疾患、HIV、遺伝性免疫不全、重症複合免疫不全、赤血球に影響を及ぼす遺伝性疾患、貧血およびファンコニ貧血から選択される障害を有する、請求項1から
7のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2015年7月20日に出願された米国仮特許出願第62/194,460号の優先権を主張し、該仮特許出願の内容は、参照によりその全体が本書に組み込まれる。
【0002】
参照による組み込み
参照による組み込みが認められる管轄のためには、本開示で引用される参照文献は全て、それらの全体が参照により本書に組み込まれる。さらに、本書中で引用または言及する製品についての製造者の指示書またはカタログはいずれも、参照により本書に組み込まれる。参照により本書に組み込まれる文書、またはその中の任意の教示は、本発明の実施において使用され得る。
【0003】
背景
分野
本教示は、改善された幹細胞療法のための方法および組成物に関し、特に、造血幹細胞および前駆細胞の増殖および生着、ならびに幹細胞移植レシピエントの造血系の免疫再構築を促進するための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0004】
緒言
造血幹細胞または前駆細胞移植(HSCT)は、多様な血液学的障害の治療の重要な構成要素である。概して、HSCTには、自家移植および同種移植の2つの種類がある。自家移植においては、骨髄破壊的処置に続いて、レシピエント自身の細胞が輸注される。同種細胞移植では、移植片対宿主病(GVHD)の危険性を最低限に抑え、合併症の低減をもたらす。同種移植においては、通常レシピエントのMHCと適合するドナーを用いて、ドナー幹細胞の輸注がなされる。しかしながら、適合非血縁ドナー(MUD)移植は依然、強い移植片対宿主反応と関連付けられ、したがって高い死亡率をもたらす。
【0005】
造血幹細胞および/または前駆細胞(HSPC)の供給源には主に、骨髄、末梢血および臍帯血の3つがある。臍帯血(UCB)は、血縁および非血縁同種造血幹細胞移植のための他の造血前駆細胞供給源(例えば、骨髄および動員処置された末梢血)に代わる、実用的な代替的供給源である。しかしながら、臍帯血は、容易に入手可能であり、移植片対宿主病のより低い発生率を示す一方で、いずれも免疫再構築の成功と臨床的意義にとって重要な多系列の細胞(multilineage cells)(例えば、好中球、血小板、赤血球)の生着が遅いという特徴を有する。したがって、臍帯血由来のHSPCを用いて血液学的障害を治療することは非常に有望であるものの、造血回復の遅いことが大きな障害となっており[Laughlin, et al., N. Eng. J. Med. 351: 22; 2265-2275 (2004)]、生着効率は未だ、骨髄または末梢血由来のHSCを用いた場合よりも著しく低い[Rocha et al., N. Eng. J. Med. 351: 22; 2276-2285 (2004)]。
【0006】
造血幹細胞は、サイトカインの混合物を含む特別な培地組成物中で増殖させることができる。幹細胞増殖技法は、米国特許第6,326,198号、米国特許第6,338,942号、米国特許第6,335,195号等により、当該技術分野で公知である。KobayashiらおよびButlerらは最近、プロ造血細胞(pro-hematopoietic)生存および増殖シグナルの発現を導くAkt/Mtor経路を最小限に活性化するアデノウイルスE4ORF1遺伝子による形質導入によって初代ヒト内皮細胞(EC)から生成されるプロ造血細胞血管ニッチの生成について報告した[Kobayashi et al., Nature Cell Biology 12, 1046-1056 (2010); Butler et al., Blood 120, 1344-1347 (2012)]。典型的なHSPC/EC増殖手順では、6:1~3:1の初期EC:HSPC比で、小さな細胞培養フラスコ中に堆積した単層のEC上でHSPCを同時培養する。24~48時間後にHSPCを採り、第2のフラスコ中のさらなる単層EC上で培養し、これを、必要数のHSPCが得られるまで繰り返す。しかしながら、かかるフラスコベースの増殖の1つの大きな欠点は、開放イベント(oven event)の数が多く(通常の手順で1800にも登る)、そのため汚染の危険性が非常に高いことである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ヒトCD34+HSPCおよび他の造血要素の臨床上有用な増幅を可能にするインビトロの培養方法および系が、依然必要とされている。ヒトの治療において、例えば骨髄移植、輸注可能な血液構成成分または遺伝子療法として使用するために、ある骨髄要素を十分な量で供給するために、該要素の大量生産を可能とする系が必要とされている。本明細書中に記載する方法は、これらの必要性および他の必要性を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
本発明は、当該技術分野におけるこの長年の必要性を解決し、少なくとも25:1、50:1、100:1、または500:1の、さらに好ましくは1000:1、2000:1または3000:1もの高い初期EC/HSPC比で、閉鎖系のバイオリアクター中でHSPCを内皮細胞と同時培養することによって、先例のないレベルのHSPC増殖を提供するものである。重要なことに、HSPCとECとの間の相互作用は、増殖工程中に乱されることなく保たれ、それによりHSPCとECとの間の連続的な細胞間コミュニケーションを維持し、増殖の効率および全体的な生産量を高めることができる。さらに、培養フラスコなどの開放的な細胞培養環境と比較して開放イベントの数が低減され、それにより汚染の危険性を大幅に低減することができる。
【0009】
本明細書中に記載する方法に従って増殖されるHSPCは、特に、ECとの組み合わせとしてHSCTレシピエントに投与される場合に、有益な薬理学的効果を有し、ここで、HSPCとECとの間で、連続的な相互作用が増殖時および投与時を通して維持される。この同種内皮細胞の、血液循環中および/または組織中の一過性の存在は、多系列の細胞の生着の向上、および生着の持続期間の延長、ならびに比較的迅速な初期生着(例えば好中球数によって測定される)などの、HSCTの有益なインビボ結果を導く。本明細書中で初めて実証するように、このことは、内皮細胞が、HSCとの同時培養の前に照射され、複製することができない場合においても言えることである。
【0010】
したがって、本発明の一側面は、必要とする対象における幹細胞移植の方法であって、(a)造血幹細胞および/または前駆細胞(HSPC)を、HSPCの増殖を可能にする条件下で、内皮細胞(EC)と、初期EC/HSPC比で第1の期間接触させることにより増殖させて、HSPCおよびECを増殖HSPC/EC比で含む増殖細胞集団を製造すること、および(b)工程(a)から得た増殖細胞集団を対象へ輸注すること、を含み、増殖および輸注の工程を通してHSPCとECの間の連続的な相互作用が維持される、方法に関する。
【0011】
本発明のさらなる側面は、必要とする対象における幹細胞移植に使用するためのHSPCおよびECを含む組成物であって、幹細胞移植が、本明細書中に記載する方法を含む、組成物に関する。好ましくは、本明細書中に記載し示すように、ECは増殖工程および輸注工程にわたってHSPCと連続的に近接する。さらに好ましくは、ECは、少なくとも増殖工程中に、HSPCと連続的に接触する。
【0012】
幾つかの実施形態では、初期EC/HSPC比は、少なくとも約200:1である。幾つかの実施形態では、初期EC/HSPC比は、少なくとも約300:1である。幾つかの実施形態では、初期EC/HSPC比は、少なくとも約400:1である。幾つかの実施形態では、初期EC/HSPC比は、少なくとも約500:1である。幾つかの実施形態では、初期EC/HSPC比は、少なくとも約600:1である。幾つかの実施形態では、初期EC/HSPC比は、少なくとも約700:1である。幾つかの実施形態では、初期EC/HSPC比は、少なくとも約1000:1である。幾つかの実施形態では、初期EC/HSPC比は、少なくとも約2000:1である。幾つかの実施形態では、初期EC/HSPC比は、少なくとも約3000:1である。
【0013】
幾つかの実施形態では、増殖HSPC/EC比は、約10:1~約1:10である。幾つかの実施形態では、増殖HSPC/EC比は、約10:1~約1:1である。幾つかの実施形態では、増殖HSPC/EC比は、約9:1~約2:1である。幾つかの実施形態では、増殖HSPC/EC比は、約8:1~約3:1である。幾つかの実施形態では、増殖HSPC/EC比は、約7:1~約4:1である。幾つかの実施形態では、増殖HSPC/EC比は、約6:1~約5:1である。
【0014】
本発明のさらなる側面は、本明細書中に記載する方法に従って、HSPCおよび内皮細胞を、単離、増殖、保存および投与するためのキットまたは系に関する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図面の簡単な説明
図面は、単に説明のためのものであり、本教示の範囲の限定を意図するものではないことは、当業者に理解される。
【
図1】E4ORF1+改変ECに対する放射線曝露の影響を示す位相差顕微鏡画像を示す。ECを、標準的な培養条件下に採取して、E4ORF1形質導入した。次に、細胞を2つのフラスコに分け入れ、100%コンフルエントになるまでさらに培養した。一方の容器は未処理とし(左図)、他方の容器には、セシウム照射器により1500cGyで照射した(右図)。位相差顕微鏡検査によって、2つのフラスコ間に差は検出されなかった。
【
図2】1週間の培養期間にわたる、照射(下段)および非照射(上段)E4ORF1+改変ECの一連の位相差顕微鏡画像を示す。2つのフラスコの細胞を半コンフルエトになるまで培養し、その時点で、一方のフラスコ(下段)には、セシウム照射器を使用して1500cGyで照射した。両フラスコをさらに1週間の培養に付し、照射の1日後、5日後および7日後に位相差顕微鏡画像を撮影した。
【
図3】照射(下段)および非照射(上段)E4ORF1+改変ECを用いて同時培養したHSPCの位相差顕微鏡画像を示す。6ウェルプレート中で、臍帯血由来の精製HSPC(CD34+)を、非照射および1500cGy照射E4ORF1 ECのコンフルエントな単層と同時培養した。11日間の細胞増殖および連続継代培養の最後に、元の培養ウェル(「マザーウェル」、左の列)と連続継代培養によって得た最終ウェルの1つ(「エンドウェル」、右の列)との両方の位相差顕微鏡画像を撮影した。
【
図4】照射(下段)および非照射(上段)E4ORF1+改変ECとのHSPC同時培養のフローサイトメトリーデータを示す。6ウェルプレート中で、臍帯血由来の精製HSPC(CD34+)を、照射または非照射E4ORF1 ECいずれかのコンフルエントな単層と同時培養した。11日間の増殖の最後に、造血細胞をフローサイトメトリーによって分析した。左の列の図は、CD45(汎造血細胞表面マーカー)の発現に関して染色された細胞の結果を示す。右の列の図は、CD34(HSPC陽性マーカー)およびCD38(HSPC陰性マーカー)の発現に関して二重染色された細胞の結果を示す。
【
図5】短期(左図)および長期(右図)のHSPC-E4ORF1+改変EC同時培養および生じたEC減少を示す代表的な位相差顕微鏡画像を示す。6ウェルプレート中で、臍帯血由来の精製HSPC(CD34+)を、ECのコンフルエントな単層と同時培養した。HSPC集団の増殖につれ、該非接着細胞は穏やかに離されて、より大きい新鮮なEC層上に配置される。この「マザーウェル」と称される元のウェルに、さらなる培地を再供給する。全ての同時培養ウェルに対して、このプロセスをおよそ48時間毎に繰り返す。新鮮なE4ORF1 EC上で播種した同じ増殖HSPCの1日だけの同時培養(左図)と比較して、7日間の同時培養の間にマザーウェル中のE4ORF1+改変ECは減少する(右図)。
【
図6】連続的にE4ORF1+改変ECおよびHSPCを接触させた場合のバイオリアクター中における総造血細胞増殖の測定結果を、サイトカイン単独を用いて増殖させた場合、および不連続的にE4ORF1+改変ECおよびHSPCを接触させて増殖させた場合と比較して示す。臍帯血由来の精製HSPC(CD34+)を、フラスコ中でサイトカイン単独を用いて、フラスコ中でE4ORF1+改変ECの単層上で、またはE4ORF1+改変ECを予め導入した中空繊維バイオリアクター中で、増殖させた。フラスコ中でのサイトカイン単独を用いる増殖およびE4ORF1+改変EC上の増殖においては、増殖中に細胞を濯いで再播種するために、培養プロセスを中断する必要があった。培養の6日目に、CD45+細胞集団の細胞の計数およびフローサイトメトリー計測を行った。
【
図7】連続的にE4ORF1+改変ECおよびHSPCを接触させた場合のバイオリアクター中におけるHSPC増殖のコロニー形成アッセイ測定結果を、サイトカイン単独を用いて増殖させた場合、および不連続的にE4ORF1+改変ECおよびHSPCを接触させて増殖させた場合と比較して示す。略号「CFU」は、コロニー形成単位である。複数の顕微鏡視野におけるコロニーの頻度を用いて外挿することにより、総増殖集団におけるCFUの数を計算した。
【発明を実施するための形態】
【0016】
詳細な説明
定義
本開示に関して、本明細書中で使用する技術用語および科学用語は、特に別途定義されない限り、当業者に一般的に理解される意味を有しうる。したがって、下記用語は、下記意味を有することが意図される。
【0017】
「同種」は、同じ種の成員から誘導されるか、同じ種の成員に由来するか、または同じ種の成員であることを指し、ここで、成員は、遺伝的関係があるか、または遺伝的関係はないが遺伝的に類似する。「同種移植」は、ドナーからレシピエントへの細胞または臓器の移動であって、レシピエントがドナーと同じ種であるものを指す。
【0018】
「自家」は、その同じ対象もしくは患者にから誘導されるか、またはその同じ対象もしくは患者に由来することを指す。「自家移植」は、対象自身の細胞または臓器を収集し再移植することを指す。
【0019】
「委任(committed)骨髄系前駆細胞」または「骨髄系前駆細胞」または「MP」は、最終的に骨髄系列の最終分化細胞のいずれかになることが可能であるが、リンパ系列の細胞には通常分化しない、多能性または単能性の前駆細胞を指す。したがって、「骨髄系前駆細胞」は、骨髄系列における任意の前駆細胞を指す。骨髄系列の委任前駆細胞は、本明細書中で定義されるような寡能性(oligopotent)CMP、GMPおよびMEPを包含し、また、単能性赤血球前駆細胞、巨核球前駆細胞、顆粒球前駆細胞およびマクロファージ前駆細胞をも包含する。骨髄系前駆細胞の異なる細胞集団は、それらの分化能、および細胞マーカーの特徴的なセットの存在によって、他の細胞と区別可能である。
【0020】
「骨髄系共通前駆細胞」または「CMP」は、顆粒球/単球(GMP)前駆細胞および巨核球/赤血球(MEP)前駆細胞を生じる能力により特徴付けられる細胞を指す。これらの前駆細胞は、自己再生能力は小さいかまたは無いが、骨髄系樹状、骨髄系赤血球、赤血球、巨核球、顆粒球/マクロファージ、顆粒球およびマクロファージ細胞を生じることが可能である。
【0021】
本明細書中で使用する用語「連続的な相互作用」は、少なくとも、本明細書中に記載する1つまたは複数のプロセス工程中のHSPCのECとの連続的な近接を指す。この文脈における「近接」は、同一の培地、例えば細胞培養培地、輸注培地、または増殖工程と輸注工程の間の任意の工程(例えば、増殖細胞集団の収集、または増殖細胞集団を含む医薬組成物の調製)に使用される任意の培地における、HSPCおよびECの組み合わされた存在を指す。幾つかの実施形態では、HSPCおよびECは、組み合わされた増殖工程および輸注工程中に、連続的に近接する。換言すると、HSPCおよびECは、増殖工程全体にわたって、かつ輸注工程が完了するまで、同じ培地中に同時に存在する。例えば、増殖工程中のどの時点でも、(例えばHSPCをさらなるECと接触させるために)HSPCが増殖培地から取り出される、ということがない。さらに、幾つかの実施形態では、本明細書中に記載する方法は、輸注工程に先立ち増殖HSPCを含む増殖細胞集団から内皮細胞を除去する精製工程を含まない。本明細書中で使用する用語「連続的な相互作用」はまた、本明細書中に記載する1つまたは複数のプロセス工程中のHSPCとECの間の連続的な接触を指しうる。幾つかの実施形態では、HSPCおよびECは、増殖工程中に連続的に接触する。この文脈において、HSPCと内皮細胞の間の「接触」という用語は、HSPCとECの間の距離が500μm以下であるという距離関係にあることを指す。幾つかの実施形態では、HSPCとECの間の距離は、400μm以下である。幾つかの実施形態では、HSPCとECの間の距離は、300μm以下である。幾つかの実施形態では、HSPCとECの間の距離は、200μm以下である。幾つかの実施形態では、HSPCとECの間の距離は、増殖を行う容器の内部寸法未満であるか、またはそれに等しい。
【0022】
「培養すること」は、様々な種類の培地上もしくは培地中での細胞または生物の繁殖を指す。「同時培養すること」は、様々な種類の培地上もしくは培地中での2つまたはそれ以上の異なる型の細胞または生物の繁殖を指し、例えば、幾つかの実施形態では、HSPCおよび内皮細胞が同時培養され得る。
【0023】
「改変」という用語は、本明細書中で細胞に関して使用される場合、そこで記載される表現型(例えば、E4ORF1+)を生じるように、またはそこで記載される核酸分子もしくはポリペプチドを発現するように、人間によって改変された細胞を指す。「改変細胞」という用語は、自然に存在する細胞を包含することを意図せず、その代わりに、例えば、組換え核酸分子を含む細胞、または別の方法で人工的に(例えば、遺伝子修飾によって)変更された細胞(この変更は、例えば、細胞が、変更されなければ発現しないポリペプチドを発現するように、または細胞が、未改変の内皮細胞で観察されるよりも実質的に高いレベルでポリペプチドを発現するように、なされる)を包含することが意図される。
【0024】
細胞の文脈における「増殖」は、同一であるかまたは同一でない初期集団の細胞からの、1つまたは複数の特徴的な細胞型の増加を指す。増殖に使用される初期細胞は、増殖により生じる細胞と同じである必要はない。例えば、増殖した細胞は、初期集団の細胞の成長および分化によって生じるものであり得る。細胞の分化能を特徴付けるために用いられる限界希釈(limiting dilution)アッセイは、増殖という用語から除外される。
【0025】
「遺伝子修飾(遺伝的修飾)」または「遺伝子修飾された」は、細胞の正常なヌクレオチドに対する任意の付加、欠失または破壊を指す。本発明の方法は、HSPCまたは内皮細胞への外因性または外来遺伝子導入(または核酸配列導入)の任意の遺伝子修飾方法を包含することが意図される。「遺伝子修飾(遺伝的修飾)」という用語は、遺伝子デリバリービヒクルの使用を含み、形質導入(インビボまたはインビトロのいずれかでの、ウイルスによるレシピエントへの核酸導入)、トランスフェクション(単離核酸の細胞による取込み)、リポソームによる導入、および当該技術分野で周知の他の手段を含むが、これらに限定されない。
【0026】
「移植片対宿主病」または「GVH」または「GVHD」は、異なるMHCクラスのリンパ球が宿主に導入され、宿主に対する反応を起こすときに生じる細胞応答を指す。
【0027】
「顆粒球/マクロファージ前駆細胞」または「GMP」は、骨髄系共通前駆細胞に由来し、顆粒球およびマクロファージ細胞を生じる能力により特徴付けられるが、骨髄系列の赤血球細胞または巨核球は通常生じない細胞を指す。
【0028】
「造血器疾患」は、造血器悪性腫瘍、異常ヘモグロビン症、および免疫不全を含むが、これらに限定されない、任意の血液障害を指す。
【0029】
「造血幹細胞および/または前駆細胞」または「HSPC」は、本明細書中で定義するようなHSC、ならびに造血系の全ての細胞型へ最終的に分化することが可能である多能性非自己再生前駆細胞、および造血系のある特定の細胞型へ分化することが可能な寡能性および単能性前駆細胞を包含する。HSPCは、本明細書中で定義するようなCMP、MP、MEP、およびGMPを含む。
【0030】
「造血幹細胞」または「HSC」は、B細胞、T細胞、NK細胞、リンパ球樹状細胞、骨髄系樹状細胞、顆粒球、マクロファージ、巨核球および赤血球細胞を含む造血系の全ての細胞型へ最終的に分化することが可能な、クローン原性の自己再生多能性細胞を指す。造血系の他の細胞と同様に、HSCは、通常、細胞マーカーの特徴的なセットの存在によって規定される。
【0031】
「単離された」は、生成物、化合物または組成物が、天然におけるか合成的にもたらされるかに関わらずその自然に生じる状態において伴う少なくとも1つの他の生成物、化合物または組成物から分離されていることを指す。
【0032】
「マーカー表現型決定」は、細胞の表現型(例えば、分化状態および/または細胞型)を決定するための、その細胞上のマーカーまたは抗原の同定を指す。これは、細胞上に存在する抗原を認識する抗体を使用する免疫表現型決定によって行われ得る。抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルであってよいが、一般的には他の細胞マーカーと最小の交差反応性を有するように選択される。ある細胞分化または細胞表面マーカーはその細胞が由来する動物種に特有であり、別の細胞マーカーは種間で共通であり得ることを理解すべきである。種間で等価な細胞型を規定するそのようなマーカーには、種が構造(例えば、アミノ酸配列)において相異しても、同一マーカーの同定がなされる。細胞マーカーは、細胞表面分子[ある状況下では、細胞分化(CD)マーカーとも称される]、および遺伝子発現マーカーを包含する。遺伝子発現マーカーは、細胞型または分化状態を示す発現された遺伝子のセットである。遺伝子発現プロフィールは、細胞表面マーカーを反映し得るが、一部として非細胞表面分子を含んでもよい。
【0033】
「巨核球/赤血球前駆細胞」または「MEP」は、骨髄系共通前駆細胞に由来し、赤血球細胞および巨核球を生じる能力により特徴付けられるが、顆粒球、マクロファージまたは骨髄系樹状細胞を通常生じない細胞を指す。
【0034】
「骨髄破壊的」または「骨髄破壊」は、通常細胞毒性剤または放射線への曝露による、造血系の機能障害または破壊を指す。骨髄破壊は、造血系を破壊する高用量の細胞毒性剤または全身照射によってもたらされる完全な骨髄破壊を包含する。骨髄破壊はまた、非骨髄破壊的なコンディショニングによって引き起こされる、完全に満たない骨髄破壊の状態をも包含する。したがって、非骨髄破壊的コンディショニングは、対象の造血系を完全には破壊しない処置を指す。
【0035】
「自己再生」は、分裂して親細胞と同一の(例えば、自己再生)特性を有する少なくとも1つの娘細胞を生成する、細胞の能力を指す。別の娘細胞は、特定の分化経路に進むものであり得る。例えば、自己再生造血幹細胞は、分裂して、娘幹細胞、および骨髄系またはリンパ系経路の分化に向かう別の娘細胞を形成する。委任前駆細胞は通常、自己再生能力を失っており、細胞分裂により、より分化の進んだ(即ち、限定された)表現型を示す2つの娘細胞を生成する。
【0036】
「分別」は、それが細胞に関する場合、マーカーの物理学的特性または存在に基づいて細胞を分離すること(例えば、側方散乱(SSC)および前方散乱(FSC)を用いる分別、または標識抗体を使用する蛍光活性化細胞ソーティング(FACS))、または細胞マーカーの存在に基づいて細胞を解析すること、例えば分離を行わないFACSを指す。
【0037】
「幹細胞」は、筋、上皮、神経および骨幹細胞などの、様々な細胞型の幹細胞を指す。本発明は、特にHSPCに関する。
【0038】
「対象」または「患者」は、互換的に使用され、特に示されている場合を除いて、ヒトおよび非ヒト霊長類、ならびにウサギ、ラット、マウス、ヤギ、ブタおよび他の哺乳動物種などの哺乳動物を指す。
【0039】
「実質的に純粋な細胞集団」は、総細胞集団を構成する細胞のうち、ある特定の細胞マーカー特性および分化能を有する細胞の集団の占める割合が、少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約75~80%、より好ましくは少なくとも約85~90%、最も好ましくは少なくとも約95%であることを指す。したがって、「実質的に純粋な細胞集団」は、細胞集団において、指定のアッセイ条件下に特定のマーカー特性および分化能を示さない細胞の占める割合が、約50%よりも少ない、好ましくは約20~25%よりも少ない、より好ましくは約10~15%よりも少ない、最も好ましくは約5%よりも少ないことを指す。
【0040】
「治療用遺伝子」は、遺伝子全体、または遺伝子の機能的に活性な断片を指す。治療用遺伝子は、内因性遺伝子の欠陥または欠損によって起こる患者における欠乏を補うことが可能であり得る。さらに、治療用遺伝子は、感染性因子の産生または機能に拮抗し、病理学的プロセスに拮抗し、宿主の遺伝子構成を改善し、生着を促進し、または幹細胞の治療効果を高めるものであり得る。
【0041】
「異種」は、異なる種、例えば、ヒトと齧歯類、ヒトとブタ、ヒトとチンパンジー等の成員から誘導されるか、それらの成員に由来するか、またはそれらの成員であることを指す。「異種移植」は、ドナーからレシピエントへの細胞または臓器の導入において、レシピエントがドナーとは異なる種であることを指す。
【0042】
造血幹細胞および/または前駆細胞の増殖
本開示は、HSPC生着を促進するための方法、組成物、および系またはキットについて記載する。一側面においては、必要とする患者においてHSPCの生着を向上する方法であって、HSPCとECの間の連続的な相互作用を維持しながら、HSPCをECと同時培養することおよび同時輸注することを含む方法を提供する。本明細書において初めて実証するように、増殖および輸注の工程全体を通してHSPCとECの間で連続的な相互作用を維持することにより、増殖の効率、および得られた増殖HSPCの生着を向上し、それにより、免疫再構築の速度および完全性を改善し、したがってHSPC移植を受ける移植患者の生存を改善する。
【0043】
造血幹細胞は、自己再生が可能な多能性幹細胞であり、許容条件下で造血系のあらゆる種類の細胞を生じる能力により特徴付けられる。HSC自己再生とは、HSC細胞が分裂して、同じ自己再生および分化能を有する少なくとも1つの娘細胞を産生する(即ち、細胞分裂によりさらなるHSCを生じる)能力を指す。自己再生は、造血系の補充のための未分化幹細胞の継続的な供給源を提供する。HSCを同定するのに有用なマーカー表現型は、当該技術分野で公知のものでありうる。ヒトHSCの場合、細胞マーカー表現型は好ましくは、CD34+CD38-CD90(Thy1)+Lin-を含む。マウスHSCの場合、例示的な細胞マーカー表現型は、Sca-1+CD90+[例えば、Spangrude, G. J. et al., Science 1:661-673 (1988)を参照]、またはc-kit+ThyloLin-Sca-1+[例えば、Uchida, N. et al., J. Clin. Invest. 101(5):961-966 (1998)を参照]である。アルデヒド脱水素酵素[Storms et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. 96:9118-23 (1999)を参照]、AC133[Yin et al., Blood 90:5002-12 (1997)を参照]、およびCD150(SLAM)[Kiel Cell 2005, 121(7) 1109-21を参照]などの他のHSCマーカーも有用でありうる。
【0044】
HSCは、骨髄、末梢血、臍帯血、ならびに造血および骨髄前駆細胞を含むことが知られる他の供給源(肝臓、特に胎児肝臓を包含する)を包含する様々な供給源から得ることができる。末梢血および臍帯血は、HSCの豊富な供給源である。細胞を得るために、当該技術分野において知られ、一般的に実施される方法を用いる。例えば、骨髄細胞を調製する方法は、Sutherland et al., Bone Marrow Processing and Purging: A Practical Guide (Gee, A. P. ed.), CRC Press Inc. (1991)に記載されている。HSCはまた、胚幹細胞[Thomson et al., Science 282:1145 (1998)]および生殖細胞[Shamblott et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:13726 (1998)]などの始原幹細胞供給源から、適切な増殖および分化技法を用いて誘導することもできる。
【0045】
HSC細胞は、本明細書中で一般的に記載するように、造血系を有する任意の動物種に由来する。好ましくは、適切な動物は、例として、齧歯類、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウマ、ウシ、霊長類(例えば、ヒト)等を包含するがそれらに限定されない哺乳動物である。
【0046】
本発明の一側面は、必要とする対象における幹細胞移植の方法であって、(a)造血幹細胞および/または前駆細胞(HSPC)を、HSPCの増殖を可能にする条件下で、内皮細胞(EC)と、初期EC/HSPC比で第1の期間接触させることにより増殖させて、HSPCおよびECを増殖HSPC/EC比で含む増殖細胞集団を製造すること、および(b)工程(a)から得た増殖細胞集団を対象へ輸注すること、を含み、増殖および輸注の工程を通してHSPCとECの間の連続的な相互作用が維持される、方法に関する。
【0047】
本発明のさらなる側面は、必要とする対象における幹細胞移植に使用するためのHSPCおよびECを含む組成物であって、幹細胞移植が、
(a)HSPCを、HSPCの増殖を可能にする条件下で、内皮細胞(EC)と、初期EC/HSPC比で第1の期間接触させることにより増殖させて、HSPCおよびECを増殖HSPC/EC比で含む増殖細胞集団を製造すること、および(b)工程(a)から得た増殖細胞集団を対象へ輸注すること、を含み、ここで、増殖および輸注の工程を通してHSPCとECの間の連続的な相互作用が維持される、
組成物に関する。
【0048】
幾つかの実施形態では、HSPCは、造血幹細胞である。幾つかの実施形態では、HSPCは、対象と同種である。幾つかの実施形態では、HSPCは、臍帯血HSPCである。幾つかの実施形態では、HSPCは、対象に関して自己由来である。幾つかの実施形態では、HSPCは、遺伝子修飾定常状態骨髄由来HSPCである。
【0049】
幾つかの好ましい実施形態では、内皮細胞は、遺伝子改変されている。アデノウイルス初期4(E4)領域は、少なくとも6つのオープンリーディングフレームを含有する(E4ORF)。E4領域全体は、内皮細胞の血管形成を調節し生存を促進するが、増殖は促進しないことが示されている[例えば、Zhang et al. (2004), J. Biol. Chem. 279(12):11760-66を参照]。臨床的または実験的に、内皮細胞の血管形成を誘導するため、または内皮細胞の生存もしくは増殖を促進するために、E4領域全体を使用することは、E4ORFの幾つかが有害な作用を有し得るので、望ましくない場合がある。例えば、E4ORF6遺伝子は、アポトーシスを誘導することが知られている[Yamano et al. (1999) J. Virol. 73:10095-103]。また、E4ORFは免疫原性であり、したがって、E4ORF全てを対象に投与することは望ましくない場合がある。Rafiiら(国際公開第2008089448号)により、内皮細胞の血管形成の誘導ならびに生存および増殖の促進に有用なE4ORF領域内の配列が同定されている。
【0050】
ETV2[Lee et al., Cell stem cell, 2: 497-507 (2008); Sumanas et al., Blood, 111: 4500-4510 (2008)]、FLU[Liu et al., Current Bio. 18: 1234-1240 (2008)]、およびERG[McLaughlin et al., Blood, 98: 3332-3339 (2001)]を含む、E-26(ETS)ファミリーの転写因子(TF)の幾つかの成員が、血管発生および血管形成の調節に関連付けられている[De Val et al., Dev Cell, 16: 180-195 (2009); Sato et al., Cell Struct Funct, 26: 19-24 (2001)]。これらのTFは、ECの発生および機能に関連する遺伝子の発現を直接的に調節する。成体ECは、FLU、ERG(アイソフォーム1および2)、ETS1、ETS2、Elfl、Elkl、VEZFおよびETV6などの幾つかのETS因子を構成的に発現するが、ETV2は、胚発生中に一過性に発現され、成体ECには存在しない[Kataoka et al., Blood, 118: 6975-6986 (2011); Lelievre et al., The International Journal Of Biochemistry and Cell Biology, 33: 391-407 (2001)]。
【0051】
幾つかの実施形態では、ECは、アデノウイルスE4ORF1ポリペプチドを発現するように改変されている(即ち、E4ORF1+改変内皮細胞である)。幾つかの実施形態では、内皮細胞は、上記に列挙するものなどの1つまたは複数のETSファミリー転写因子を発現するように改変されている(即ち、ETS+改変内皮細胞である)。幾つかの実施形態では、内皮細胞は、ETSファミリー転写因子ETV2を発現するように改変されている(即ち、それらは、ETV2+改変内皮細胞である)。幾つかの実施形態では、ECは、E4ORF1+ETV2+改変内皮細胞である。幾つかの実施形態では、ECは、E4ORF1+ETS+改変内皮細胞である。幾つかの実施形態では、ECは、E4ORF6+である。幾つかの実施形態では、ECは、ETSファミリー転写因子をコードする組換え核酸分子を含む。幾つかの実施形態では、ECは、ETV2ポリペプチドをコードする組換え核酸分子を含む。幾つかの実施形態では、ECは、アデノウイルスE4ORF1ポリペプチドをコードする組換え核酸分子を含む。幾つかの実施形態では、ECは、アデノウイルスE4ORF6ポリペプチドをコードする組換え核酸分子を含む。幾つかの実施形態では、核酸分子は、プラスミドベクターの形態である。幾つかの実施形態では、核酸分子は、改変ECのゲノムDNAに組み込まれている。幾つかの実施形態では、ECは、分化したECである。幾つかの実施形態では、ECは、成体ECである。幾つかの実施形態では、ECは、胚ECではない。幾つかの実施形態では、ECは、ヒトECである。幾つかの実施形態では、ECは、初代ECである。幾つかの実施形態では、ECは、ヒト臍帯静脈EC(HUVEC)である。
【0052】
幾つかの実施形態では、初期EC/HSPC比は、少なくとも約200:1である。幾つかの実施形態では、初期EC/HSPC比は、少なくとも約300:1である。幾つかの実施形態では、初期EC/HSPC比は、少なくとも約400:1である。幾つかの実施形態では、初期EC/HSPC比は、少なくとも約500:1である。幾つかの実施形態では、初期EC/HSPC比は、少なくとも約600:1である。幾つかの実施形態では、初期EC/HSPC比は、少なくとも約700:1である。幾つかの実施形態では、初期EC/HSPC比は、少なくとも約800:1である。幾つかの実施形態では、初期EC/HSPC比は、少なくとも約900:1である。幾つかの実施形態では、初期EC/HSPC比は、少なくとも約1000:1である。幾つかの実施形態では、初期EC/HSPC比は、少なくとも約1100:1である。幾つかの実施形態では、初期EC/HSPC比は、少なくとも約1200:1である。幾つかの実施形態では、初期EC/HSPC比は、少なくとも約1300:1である。幾つかの実施形態では、初期EC/HSPC比は、少なくとも約1400:1である。幾つかの実施形態では、初期EC/HSPC比は、約1500:1である。幾つかの実施形態では、初期EC/HSPC比は、約2000:1である。幾つかの実施形態では、初期EC/HSPC比は、約3000:1である。
【0053】
幾つかの実施形態では、第1の期間は、約1日~約24日である。幾つかの実施形態では、第1の期間は、約1日~約12日である。幾つかの実施形態では、第1の期間は、約1日である。幾つかの実施形態では、第1の期間は、約2日である。幾つかの実施形態では、第1の期間は、約3日である。幾つかの実施形態では、第1の期間は、約4日である。幾つかの実施形態では、第1の期間は、約5日である。幾つかの実施形態では、第1の期間は、約6日である。幾つかの実施形態では、第1の期間は、約7日である。幾つかの実施形態では、第1の期間は、約8日である。幾つかの実施形態では、第1の期間は、約9日である。幾つかの実施形態では、第1の期間は、約10日である。幾つかの実施形態では、第1の期間は、約11日である。幾つかの実施形態では、第1の期間は、約12日である。幾つかの実施形態では、第1の期間は、約13日である。幾つかの実施形態では、第1の期間は、約14日である。幾つかの実施形態では、第1の期間は、約15日である。幾つかの実施形態では、第1の期間は、約16日である。幾つかの実施形態では、第1の期間は、約17日である。幾つかの実施形態では、第1の期間は、約18日である。幾つかの実施形態では、第1の期間は、約19日である。幾つかの実施形態では、第1の期間は、約20日である。幾つかの実施形態では、第1の期間は、約21日である。幾つかの実施形態では、第1の期間は、約22日である。幾つかの実施形態では、第1の期間は、約23日である。幾つかの実施形態では、第1の期間は、約24日である。幾つかの実施形態では、第1の期間は、約25日である。幾つかの実施形態では、第1の期間は、約26日である。幾つかの実施形態では、第1の期間は、約27日である。幾つかの実施形態では、第1の期間は、約28日である。
【0054】
幾つかの実施形態では、増殖HSPC/EC比は、約10:1~約1:10である。幾つかの実施形態では、増殖HSPC/EC比は、約9:1~約1:9である。幾つかの実施形態では、増殖HSPC/EC比は、約8:1~約1:8である。幾つかの実施形態では、増殖HSPC/EC比は、約7:1~約1:7である。幾つかの実施形態では、増殖HSPC/EC比は、約6:1~約1:6である。幾つかの実施形態では、増殖HSPC/EC比は、約5:1~約1:5である。幾つかの実施形態では、増殖HSPC/EC比は、約4:1~約1:4である。幾つかの実施形態では、増殖HSPC/EC比は、約3:1~約1:3である。幾つかの実施形態では、増殖HSPC/EC比は、約2:1~約1:2である。幾つかの実施形態では、増殖HSPC/EC比は、約10:1~約1:1である。幾つかの実施形態では、増殖HSPC/EC比は、約9:1~約2:1である。幾つかの実施形態では、増殖HSPC/EC比は、約8:1~約3:1である。幾つかの実施形態では、増殖HSPC/EC比は、約7:1~約4:1である。幾つかの実施形態では、増殖HSPC/EC比は、約6:1~約5:1である。幾つかの実施形態では、増殖HSPC/EC比は、約10:1である。幾つかの実施形態では、増殖HSPC/EC比は、約9:1である。幾つかの実施形態では、増殖HSPC/EC比は、約8:1である。幾つかの実施形態では、増殖HSPC/EC比は、約7:1である。幾つかの実施形態では、増殖HSPC/EC比は、約6:1である。幾つかの実施形態では、増殖HSPC/EC比は、約5:1である。幾つかの実施形態では、増殖HSPC/EC比は、約4:1である。幾つかの実施形態では、増殖HSPC/EC比は、約3:1である。幾つかの実施形態では、増殖HSPC/EC比は、約2:1である。幾つかの実施形態では、増殖HSPC/EC比は、約1:1である。
【0055】
幾つかの実施形態では、HSPCは、増殖工程中に約20倍~約30000倍増殖する。幾つかの実施形態では、HSPCは、増殖工程中に約1000倍~約10000倍増殖する。幾つかの実施形態では、HSPCは、増殖工程中に約1000倍増殖する。幾つかの実施形態では、HSPCは、増殖工程中に約2000倍増殖する。幾つかの実施形態では、HSPCは、増殖工程中に約3000倍増殖する。幾つかの実施形態では、HSPCは、増殖工程中に約3500倍増殖する。幾つかの実施形態では、HSPCは、増殖工程中に約4000倍増殖する。幾つかの実施形態では、HSPCは、増殖工程中に約5000倍増殖する。幾つかの実施形態では、HSPCは、増殖工程中に約6000倍増殖する。幾つかの実施形態では、HSPCは、増殖工程中に約7000倍増殖する。幾つかの実施形態では、HSPCは、増殖工程中に約8000倍増殖する。幾つかの実施形態では、HSPCは、増殖工程中に約9000倍増殖する。幾つかの実施形態では、HSPCは、増殖工程中に約10000倍増殖する。
【0056】
幾つかの実施形態では、HSPCとECの間の連続的な相互作用は、増殖工程中のHSPCとECの間の連続的な接触、ならびに組み合わせた増殖工程および輸注工程中のHSPCおよびECの連続的な近接を含む。幾つかの実施形態では、本明細書中に記載する方法は、増殖細胞集団を収集すること、および輸注工程で使用するための増殖細胞集団を含む医薬組成物を調製することをさらに含む。幾つかの実施形態では、HSPCとECの間の連続的な相互作用は、組み合わせた増殖工程、収集工程、医薬組成物調製工程および輸注工程中のHSPCおよびECの連続的な近接を含む。幾つかの実施形態では、本明細書中に記載する方法は、輸注に先立ち増殖HSPCから内皮細胞を分離する精製工程を含まない。幾つかの実施形態では、第1の期間中に、人的な相互作用または増殖妨害は存在しない。幾つかの実施形態では、追加のサイトカインが、第1の期間中に添加される。幾つかの実施形態では、50ng/mLのトロンボポエチン(TPO)、Flt3(FMS関連チロシンキナーゼ3)リガンド、および幹細胞因子(SCF)が、第1の期間中に添加される。幾つかの実施形態では、増殖工程における開放イベント数は6以下である。
【0057】
増殖に先立って、HSPCおよびECを、選択および精製(陽性および陰性選択方法の両方を包含しうる)に付して、実質的に純粋な細胞集団を得ることができる。一態様では、フローサイトメトリーとも称される蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)を使用して、異なる細胞集団を分別および分析する。HSPCまたはEC集団に特異的な細胞マーカーを有する細胞を、細胞マーカーに結合する抗体、または通常は抗体の混合物でタグ付けする。異なるマーカーに対する各抗体は、検出可能な分子、特に、他の抗体に結合された他の蛍光色素との識別が可能な蛍光色素に結合される。一連のタグ付けされたか、または「染色された」細胞を、蛍光色素を励起する光源を通過させて流し、細胞からの蛍光スペクトルを検出することにより、特定の標識抗体の存在を決定する。異なる蛍光色素を同時検出することによって(当該技術分野でマルチカラー蛍光細胞ソーティングとも称される)、提示する細胞マーカーの組み合わせが異なる細胞を同定し、細胞集団中の他の細胞から単離することができる。例として側方散乱(SSC)、前方散乱(FSC)、および生体色素染色(例えば、ヨウ化プロピジウムによる)を包含するがこれらに限定されない、他のFACSパラメーターは、大きさおよび生存性に基づく細胞の選択を可能にする。FACSによるHSPCの分別および解析は、とりわけ、米国特許第5,137,809号、同第5,750,397号、同第5,840,580号、同第6,465,249号;Manz, M.G. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99: 11872-11877 (2002)、およびAkashi, K. et al., Nature 404(6774): 193-197 (2000)に記載されている。蛍光活性化細胞ソーティングに関する一般的なガイダンスは、例えば、Shapiro, H.M., Practical Flow Cytometry, 4th Ed., Wiley-Liss (2003)およびOrmerod, M.G., Flow Cytometry: A Practical Approach, 3rd Ed., Oxford University Press (2000)に記載されている。
【0058】
細胞の精製は、本明細書中に記載する方法の組み合わせをも包含すると理解すべきである。典型的な組み合わせは、例えば白血球アフェレーシスのような、望ましくない細胞および細胞物質の大部分を除去するのに有効な初期手順を含みうる。第2の工程は、基質と結合された抗体を用いる免疫吸着によって、前駆細胞集団の1つまたは複数に共通するマーカーを発現する細胞を単離することを含みうる。例えば、抗CD34抗体を含有する磁気ビーズは、CD34抗原を通常発現する、HSC、CMPおよびGMP細胞を、結合および捕捉することができる。特異的な細胞マーカーのセットに対する抗体を用いるFACS分別などの、異なる細胞型の分別能がより高いさらなる工程を行って、所望の細胞の実質的に純粋な集団を得ることができる。別の組み合わせでは、抗CD34抗体を結合した磁気ビーズを用いて初期分離を行った後、FACSによるさらなる精製を行いうる。
【0059】
増殖を行うための場は当業者周知であり、例えば、開放細胞培養環境(例えば培養フラスコ)、および閉鎖細胞培養環境(例えば、細胞接着に関して変更が加えられているか、または加えられていない閉鎖系ウェーブバッグバイオリアクター、および閉鎖系ミニバイオリアクター、例えば、中空繊維または所望の場合に細胞の接着を可能にする他の系もしくはコーティングを含むミニバイオリアクター)を包含する。幾つかの実施形態では、増殖を行うための場は、Quantum(登録商標)Cell Expansion System(Terumo BCT, Lakewood, CO)である。
【0060】
治療効果を達成するのに必要な細胞の量は、当該目的のための従来の手順に従って、経験的に決定しうる。概して、治療目的で細胞を投与するのに、細胞は、薬理学的有効用量で投与される。「薬理学的有効量」または「薬理学的有効用量」とは、所望の生理学的効果をもたらすのに十分な量、または、特に生着または患者の生存に関して、所望の結果を達成することが可能な量を意味する。治療的有益性はまた、軽快が実現されるかどうかにかかわらず、基礎疾患または障害の進行を阻止または遅延することを包含する。上記で定義するような薬理学的有効用量はまた、以下でさらに記載するような、細胞と組み合わせて使用される治療化合物にも当てはまる。
【0061】
造血幹細胞移植の移植片は、患者の年齢、体重および健康状態、適応症の性質および重篤性に応じて広範に変えることができる。そのような条件の考慮により、HSPCの適切な投与量範囲は様々である。幾つかの実施形態では、移植片は、対象1kg当たり約1×106個~約1.0×108個のHSPCを含有する。幾つかの実施形態では、増殖細胞集団は、対象1kg当たり約1.0×106個~約1.0×108個のHSPCを含む。幾つかの実施形態では、増殖細胞集団は、対象1kg当たり約1.0×106個のHSPCを含む。幾つかの実施形態では、増殖細胞集団は、対象1kg当たり約2.0×106個のHSPCを含む。幾つかの実施形態では、増殖細胞集団は、対象1kg当たり約3.0×106個のHSPCを含む。幾つかの実施形態では、増殖細胞集団は、対象1kg当たり約4.0×106個のHSPCを含む。幾つかの実施形態では、増殖細胞集団は、対象1kg当たり約5.0×106個のHSPCを含む。幾つかの実施形態では、増殖細胞集団は、対象1kg当たり約6.0×106個のHSPCを含む。幾つかの実施形態では、増殖細胞集団は、対象1kg当たり約7.0×106個のHSPCを含む。幾つかの実施形態では、増殖細胞集団は、対象1kg当たり約8.0×106個のHSPCを含む。幾つかの実施形態では、増殖細胞集団は、対象1kg当たり約9.0×106個のHSPCを含む。幾つかの実施形態では、増殖細胞集団は、対象1kg当たり約1.0×107個のHSPCを含む。幾つかの実施形態では、増殖細胞集団は、対象1kg当たり約2.0×107個のHSPCを含む。幾つかの実施形態では、増殖細胞集団は、対象1kg当たり約3.0×107個のHSPCを含む。幾つかの実施形態では、増殖細胞集団は、対象1kg当たり約4.0×107個のHSPCを含む。幾つかの実施形態では、増殖細胞集団は、対象1kg当たり約5.0×107個のHSPCを含む。幾つかの実施形態では、増殖細胞集団は、対象1kg当たり約6.0×107個のHSPCを含む。幾つかの実施形態では、増殖細胞集団は、対象1kg当たり約7.0×107個のHSPCを含む。幾つかの実施形態では、増殖細胞集団は、対象1kg当たり約8.0×107個のHSPCを含む。幾つかの実施形態では、増殖細胞集団は、対象1kg当たり約9.0×107個のHSPCを含む。幾つかの実施形態では、増殖細胞集団は、対象1kg当たり約1.0×108個のHSPCを含む。
【0062】
臍帯血ユニットは、単一の胎盤および臍帯から収集される血液である。臍帯血ユニット中の有核細胞の数は様々である。さらに、臍帯血ユニット中の有核細胞の数は、凍結および解凍後に減少している場合がある。したがって、HSPCを投与するのに、有核細胞数を測定したのが、ユニットを解凍する前であったか後であったかを記録することは有益である。
【0063】
患者への細胞の移植は、当該技術分野で一般的に用いられる方法で行う。好ましい投与方法は、静脈内輸注である。上述するように、輸注する細胞の数は、性別、年齢、体重、疾患または障害のタイプ、障害のステージ、その細胞集団中の所望の細胞の割合(例えば、細胞集団の純度)、および治療的有益性をもたらすのに必要な細胞数などの要因を考慮して決定しうる。
【0064】
細胞は、1回の輸注によって投与するか、または治療効果を生じるのに十分な規定される期間にわたる継続的な輸注によって投与することができる。治療が継続的な輸注を含む場合、異なる細胞集団の輸注を行ってもよい。以下でさらに記載するように、薬学的に許容される担体を、患者への細胞輸注のために使用しうる。このような担体は通常、例えば、生理食塩水(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)もしくは補充されていない基本細胞培養培地、または当該技術分野で公知であるような培地を含みうる。
【0065】
本明細書中に記載する造血幹細胞移植の方法は、様々な障害の治療に使用することができる。幾つかの実施形態では、障害は、疾患または骨髄破壊的処置によって引き起こされる造血不全に関する。幾つかの実施形態では、障害は、造血器疾患である。幾つかの実施形態では、障害は、骨髄造血幹細胞移植を要する障害である。幾つかの実施形態では、障害は、感染によるかまたは遺伝性の免疫不全である。幾つかの実施形態では、障害は、感染による免疫不全である。幾つかの実施形態では、障害は、HIVである。幾つかの実施形態では、障害は、遺伝性免疫不全である。幾つかの実施形態では、障害は、T細胞に影響を及ぼす感染性疾患/遺伝子疾患(例えば、それぞれ、HIV、SCID)、および赤血球に影響を及ぼす遺伝性疾患(異常ヘモグロビン症)を包含する血液疾患である。幾つかの実施形態では、障害は、貧血である。幾つかの実施形態では、障害は、ファンコニ貧血である。幾つかの実施形態では、障害は、造血器悪性腫瘍である。本明細書中で使用する場合、「治療」は、疾患、障害または望ましくない状態のための、治療的もしくは予防的処置または抑制手段を指す。治療は、疾患の重篤度を低下させるか、疾患の進行を抑制するか、または疾患を解消するために、本発明の細胞を適切な形態で、疾患症状の発症に先立って、および/または疾患もしくは症状が臨床的もしくはそれ以外に現れた後に、投与することを包含する。疾患の予防は、障害もしくは疾患の症状の発症を、好ましくはその障害に対する感受性が高い対象において、延期または遅延させることを包含する。幾つかの実施形態では、対象はヒトである。
【0066】
本開示はさらに、実質臓器、細胞または組織移植の分野における改善されたHSCTの方法をも提供する。例として、本開示は、心臓、肺、肝臓、腎臓、島細胞、皮膚、内分泌臓器または膵臓の移植で使用するための内皮細胞増殖HSPCをさらに提供するが、それに限定されない。
【0067】
幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の血小板数は、対象への増殖細胞集団輸注から約15日~約35日後までに少なくとも約20000/μLとなる。幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の血小板数は、対象への増殖細胞集団輸注から約20日~約30日後までに少なくとも約20000/μLとなる。幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の血小板数は、対象への増殖細胞集団輸注から約20日後までに少なくとも約20000/μLとなる。幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の血小板数は、対象への増殖細胞集団輸注から約21日後までに少なくとも約20000/μLとなる。幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の血小板数は、対象への増殖細胞集団輸注から約22日後までに少なくとも約20000/μLとなる。幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の血小板数は、対象への増殖細胞集団輸注から約23日後までに少なくとも約20000/μLとなる。幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の血小板数は、対象への増殖細胞集団輸注から約24日後までに少なくとも約20000/μLとなる。幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の血小板数は、対象への増殖細胞集団輸注から約25日後までに少なくとも約20000/μLとなる。幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の血小板数は、対象への増殖細胞集団輸注から約26日後までに少なくとも約20000/μLとなる。幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の血小板数は、対象への増殖細胞集団輸注から約27日後までに少なくとも約20000/μLとなる。幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の血小板数は、対象への増殖細胞集団輸注から約28日後までに少なくとも約20000/μLとなる。幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の血小板数は、対象への増殖細胞集団輸注から約29日後までに少なくとも約20000/μLとなる。幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の血小板数は、対象への増殖細胞集団輸注から約30日後までに少なくとも約20000/μLとなる。
【0068】
幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の好中球絶対数は、対象への増殖細胞集団輸注から約5日~約20日後までに少なくとも約100/μLとなる。幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の好中球絶対数は、対象への増殖細胞集団輸注から約5日後までに少なくとも約100/μLとなる。幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の好中球絶対数は、対象への増殖細胞集団輸注から約6日後までに少なくとも約100/μLとなる。幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の好中球絶対数は、対象への増殖細胞集団輸注から約7日後までに少なくとも約100/μLとなる。幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の好中球絶対数は、対象への増殖細胞集団輸注から約8日後までに少なくとも約100/μLとなる。幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の好中球絶対数は、対象への増殖細胞集団輸注から約9日後までに少なくとも約100/μLとなる。幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の好中球絶対数は、対象への増殖細胞集団輸注から約10日後までに少なくとも約100/μLとなる。幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の好中球絶対数は、対象への増殖細胞集団輸注から約11日後までに少なくとも約100/μLとなる。幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の好中球絶対数は、対象への増殖細胞集団輸注から約12日後までに少なくとも約100/μLとなる。幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の好中球絶対数は、対象への増殖細胞集団輸注から約13日後までに少なくとも約100/μLとなる。幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の好中球絶対数は、対象への増殖細胞集団輸注から約14日後までに少なくとも約100/μLとなる。幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の好中球絶対数は、対象への増殖細胞集団輸注から約15日後までに少なくとも約100/μLとなる。幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の好中球絶対数は、対象への増殖細胞集団輸注から約16日後までに少なくとも約100/μLとなる。幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の好中球絶対数は、対象への増殖細胞集団輸注から約17日後までに少なくとも約100/μLとなる。幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の好中球絶対数は、対象への増殖細胞集団輸注から約18日後までに少なくとも約100/μLとなる。幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の好中球絶対数は、対象への増殖細胞集団輸注から約19日後までに少なくとも約100/μLとなる。幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の好中球絶対数は、対象への増殖細胞集団輸注から約20日後までに少なくとも約100/μLとなる。
【0069】
幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の好中球絶対数は、対象への増殖細胞集団輸注から約10日~約25日後までに少なくとも約500/μLとなる。幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の好中球絶対数は、対象への増殖細胞集団輸注から約10日後までに少なくとも約500/μLとなる。幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の好中球絶対数は、対象への増殖細胞集団輸注から約11日後までに少なくとも約500/μLとなる。幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の好中球絶対数は、対象への増殖細胞集団輸注から約12日後までに少なくとも約500/μLとなる。幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の好中球絶対数は、対象への増殖細胞集団輸注から約13日後までに少なくとも約500/μLとなる。幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の好中球絶対数は、対象への増殖細胞集団輸注から約14日後までに少なくとも約500/μLとなる。幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の好中球絶対数は、対象への増殖細胞集団輸注から約15日後までに少なくとも約500/μLとなる。幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の好中球絶対数は、対象への増殖細胞集団輸注から約16日後までに少なくとも約500/μLとなる。幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の好中球絶対数は、対象への増殖細胞集団輸注から約17日後までに少なくとも約500/μLとなる。幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の好中球絶対数は、対象への増殖細胞集団輸注から約18日後までに少なくとも約500/μLとなる。幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の好中球絶対数は、対象への増殖細胞集団輸注から約19日後までに少なくとも約500/μLとなる。幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の好中球絶対数は、対象への増殖細胞集団輸注から約20日後までに少なくとも約500/μLとなる。幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の好中球絶対数は、対象への増殖細胞集団輸注から約21日後までに少なくとも約500/μLとなる。幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の好中球絶対数は、対象への増殖細胞集団輸注から約22日後までに少なくとも約500/μLとなる。幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の好中球絶対数は、対象への増殖細胞集団輸注から約23日後までに少なくとも約500/μLとなる。幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の好中球絶対数は、対象への増殖細胞集団輸注から約24日後までに少なくとも約500/μLとなる。幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の好中球絶対数は、対象への増殖細胞集団輸注から約25日後までに少なくとも約500/μLとなる。
【0070】
幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の好中球絶対数は、対象への増殖細胞集団輸注から約100日後に少なくとも約500/μLとなる。幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の好中球絶対数は、対象への増殖細胞集団輸注から約200日後に少なくとも約500/μLとなる。幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の好中球絶対数は、対象への増殖細胞集団輸注から約300日後に少なくとも約500/μLとなる。幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の好中球絶対数は、対象への増殖細胞集団輸注から約400日後に少なくとも約500/μLとなる。幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の好中球絶対数は、対象への増殖細胞集団輸注から約500日後に少なくとも約500/μLとなる。幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の好中球絶対数は、対象への増殖細胞集団輸注から約600日後に少なくとも約500/μLとなる。幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の好中球絶対数は、対象への増殖細胞集団輸注から約700日後に少なくとも約500/μLとなる。幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の好中球絶対数は、対象への増殖細胞集団輸注から約800日後に少なくとも約500/μLとなる。幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の好中球絶対数は、対象への増殖細胞集団輸注から約900日後に少なくとも約500/μLとなる。幾つかの実施形態では、対象の循環血液中の好中球絶対数は、対象への増殖細胞集団輸注から約1000日後に少なくとも約500/μLとなる。
【0071】
補助的処置
様々な補助的処置が、本明細書中に記載する方法とともに使用され得る。一態様では、補助的処置として、とりわけ、抗真菌剤、抗細菌剤、および抗ウイルス剤が挙げられる。
【0072】
一態様では、補助的に投与される作用物質は、抗真菌剤である。真菌感染は、骨髄破壊的処置およびHSCTを受けた患者において重大な問題である。生着の遅いレシピエント、およびGVHDを発症する患者は、通常、真菌感染の危険性が高い。真菌感染のタイプは多様であり、とりわけ、カンジダ症[例えば、カンジダ・クルセイ(Candida krusei)、カンジダ・グラブラタ(Candida glabrata)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)による)、アスペルギルス症(例えば、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)による]、ムコール症[例えば、リゾビウム・アールヒズス(Rhizobium arrhizus)、アブシディア・コリムビフェラ(Absidia corymbifera)、リゾムコール・プシルス(Rhizomucor pusillus)による]、クリプトコッカス症、ヒストプラズマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、およびコクシジオイデス・イミティス(Coccidioides immitis)を含む。
【0073】
補助的投与用の抗真菌剤は一般的に、全身性抗真菌剤でありうる。このタイプの有用な抗真菌剤の1つは、ポリエンマクロライド系抗生物質のファミリーに属するアンホテリシンBである。アンホテリシンBは、デオキシコール酸との複合体としての製剤、コレステリル硫酸(cholestearyl sulfate)を含むコロイド懸濁液中の製剤、ならびに大豆レシチン、コレステロールおよびジステアロイルホスファチジルグリセロールで作られるリポソームに封入された製剤を包含する様々な製剤中で利用可能であり、他の製剤は、当該技術分野で公知である。
【0074】
別の抗真菌剤は、フッ化ピリミジンであるフルシトシンである。フルシトシンは真菌により脱アミノ化されて、代謝拮抗薬かつDNA合成阻害剤である5-フルオロウラシルを生成する。フルシトシンは通常、クリプトコッカス(cryptococcus)感染およびカンジダ症(candiadosis)に使用される。フルシトシンは、単独でも使用されるが、一般的にアンホテリシンBと併用される。
【0075】
イミダゾールおよびトリアゾールは、広範なアゾールベース抗真菌剤の代表的なものである。イミダゾールおよびトリアゾールは、ステロール14-α-デメチラーゼを阻害し、その結果、エルゴステロール生合成を阻害し、電子伝達などの細胞膜ベースの活性を阻害すると考えられる。アゾールベースの抗真菌剤は、カンジダ・アルビカンス、カンジダ・グラブラタ、およびカンジダ・ネオフォルマンス(Candida neoformans)などのある特定のタイプのカンジダ症に対して有効である。全身投与に適するアゾール抗真菌剤の例としては、とりわけケトコナゾール(ketoconzaole)、イトラコナゾール(itracanazole)、フルコナゾール、エコナゾール、ボリコナゾール、およびテルコナゾール(tercanozole)が挙げられる。
【0076】
真菌感染に加え、好中球減少症を伴う患者は、様々な細菌病原体に感染しやすい。骨髄破壊的レジメンおよびHSCTを受けた患者においては、グラム陽性菌(例えば、連鎖球菌および黄色ブドウ球菌)およびグラム陰性菌(例えば、大腸菌および緑膿菌)の両方の細菌による感染率が高い。敗血症(Septecemia)はよく見受けられる。さらに、生着の遅延、ならびに肺炎連鎖球菌およびインフルエンザ菌(Haemophilus influenza)などの被包性細菌に対する免疫応答回復の障害は、GVHDを伴う移植レシピエントの罹患率を増加させる。
【0077】
補助的抗細菌療法には、特定の細菌病原体に適している任意の公知の抗生物質を使用することができる。これは、広域スペクトラム抗生物質、およびより標的が絞られた抗細菌化合物の両方を包含する。増殖骨髄系細胞を用いた場合に適している様々な種類の抗細菌剤としては、例えば、キノロンおよびフルオロキノロン、β-ラクタム抗生物質、アミノグリコシド、テトラサイクリン、マクロライド、および様々なそれらの関連物質(cogeners)が挙げられるが、それに限定されない。例示的なキノロン化合物として、シプロフロキサシン、オフロキサシン、スパルフロキサシン、ロメフロキサシン、およびモキシフロキサシンが挙げられる。例示的なβ-ラクタム抗生物質として、ペニシリン(例えば、ペニシリンG、ペニシリンV)、アンピシリン、カルベニシリン、メチシリン、カルバペネム、およびセファロスポリン[例えば、セファロチン、セファマンドール、セファクロール、セフォニシド、セフォテタン、セフォタキシム(cefatoxaime)、セフタジジム、セフチゾキシム、セフェピム]が挙げられる。例示的なアミノグリコシドとしては、ネオマイシン、ストレプトマイシン、カナマイシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシン、およびネチルマイシンが挙げられる。例示的なマクロライドとしては、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシンおよびソリスロマイシンが挙げられる。他の抗生物質は、当業者に明らかである。
【0078】
骨髄破壊を受けた患者およびHSCTにおいては、ウイルス感染も問題となる。概して、ウイルス感染の危険性の増加は、骨髄破壊的処置によってもたらされる細胞性免疫の障害に起因する。そのような感染の多くが、血清陽性患者中または血清陽性ドナーの細胞中に存在する潜伏ウイルスの再活性化に起因する。一般的に遭遇するウイルスは、とりわけ、サイトメガロウイルス、単純疱疹ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、ヘルペスウイルス-6、エプスタインバーウィルス、アデノウイルス等を包含する。細胞輸注の補助薬として選択される抗ウイルス化合物は、患者が遭遇するウイルスに適切なものである。有用な抗ウイルス化合物は、例えば、アシクロビル、シドホビル、ガンシクロビル、イドクスウリジン、ペンシクロビル、バルガンシクロビル、バラシクロビル、ビダラビン、アマンタジン、リマンタジン、ザナミビル、ホミビルセン、イミキモドおよびリバビリンを包含するが、それに限定されない。レトロウイルスに対する治療剤としては、とりわけ、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤[例えば、ジドブジン、ジダノシン、スタブジン、ザルシタビン、ラミブジン(lamividudine)]、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(例えば、ネビラピン、エファビレンツ、デラビルジン(delvirudine)]、およびプロテアーゼ阻害剤[例えば、サキナビル(saquinivir)、インジナビル、リトナビル、ネルフィナビル、アンプレナビルおよびロピナビル]が挙げられる。
【0079】
抗真菌剤、抗細菌剤、および抗ウイルス剤は、感染の発生を低減するための予防として、または感染が起こってから使用され得る。予防は、特に、免疫抑制患者によく起こる真菌感染に対して、および血清陽性患者または血清陽性移植ドナーにおけるウイルス感染に対して適用される。したがって、治療目的のための実施形態は、HSPC、MP細胞、および抗真菌化合物、抗細菌化合物または抗ウイルス化合物の組み合わせを含む。
【0080】
さらなる実施形態では、補助的に投与される作用物質は、最終的に分化される骨髄系細胞、特に顆粒球、マクロファージ、巨核球および赤血球細胞の分化および動員を向上する、サイトカインまたは増殖因子である。顆粒球発生を向上するために、サイトカインC-CSFおよびGM-CSFを使用しうる。G-CSFは、HSCTにおいて好中球の生着および産生を加速させるのに有効である。別の実施形態では、サイトカインまたは増殖因子は、トロンボポエチンである。TPOの投与は、移植された前駆細胞の生着を向上し、巨核球および血小板の発生を促進する[Fox, N et al., J. Clin. Invest. 110:389-394 (2002); Akahori, H. et al., Stem Cells 14(6):678-689 (1996)]。
【0081】
当業者には明らかなように、補助的療法には、様々な賦形剤および媒体ならびに投与経路を用いうる。代表的な処方技術は、とりわけ、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th Ed., Mack Publishing Co., Easton, PA (1995)およびHandbook of Pharmaceutical Excipients, 3rd Ed, Kibbe, A.H. ed., Washington DC, American Pharmaceutical Association (2000)に教示されている。
【0082】
医薬組成物は概して、薬学的に許容される担体、および薬理学的有効量の化合物もしくはその混合物、またはその適切な塩を含む。医薬組成物は、粉末、顆粒、溶液、懸濁液、エアロゾル、固体、丸剤、錠剤、カプセル、ゲル、外用クリーム、坐剤、経皮パッチ、および当該技術分野で公知の他の剤形として製剤化され得る。
【0083】
本明細書中で使用する場合、「薬学的に許容される担体」は、医薬組成物の製剤化における、当業者に公知の標準的な薬学的に許容される担体のいずれをも含む。したがって、化合物は、それ自体、例えば薬学的に許容される塩として、またはコンジュゲートとして存在するように、薬学的に許容される希釈剤[例えば、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、水性エタノール、または溶液形態としたグルコース、マンニトール、デキストラン、プロピレングリコール、油(例えば、植物油、動物油、合成油等)、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、硫酸マグネシウム、リン酸カルシウム、ゼラチン、ポリソルベート80等]中の製剤として、または適切な賦形剤中の固形製剤として調製され得る。
【0084】
医薬組成物は多くの場合、必要に応じて、1つまたは複数の緩衝剤(例えば、中性緩衝生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水)、炭水化物(例えば、グルコース、マンノース、スクロースまたはデキストラン)、マンニトール、タンパク質、ポリペプチドまたはグリシンなどのアミノ酸、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール等)、静菌薬、EDTAまたはグルタチオンなどのキレート剤、レシピエントの血液に対し製剤を等張、低張またはやや高張にする溶質、懸濁化剤、増粘剤、防腐剤、香味剤、甘味剤、および着色化合物をさらに含む。
【0085】
組成物中に当業者に公知の任意の適切な担体を用い得るが、担体のタイプは通常、投与様式に応じて異なり得る。治療用組成物は、例えば、経口、経鼻、粘膜、直腸、膣内、局所外用、静脈内、腹腔内、皮内、皮下および筋内内投与を包含する任意の適切な投与様式のために製剤化され得る。
【0086】
本明細書中に記載する医薬組成物は、密封アンプルまたはバイアルなどの、単位用量または複数回用量容器で提供し得る。かかる容器は通常、使用するまで製剤の滅菌性および安定性を保つように密封される。製剤は概して、前記のように、油性もしくは水性媒体中の懸濁液、溶液またはエマルジョンとして貯蔵し得る。あるいは、医薬組成物は、使用直前に滅菌液体担体の添加のみを要する凍結乾燥状態で貯蔵し得る。
【0087】
宿主への投与量は、投与物、予防または治療といった投与目的、宿主の状態、投与様式、投与回数、投与の間隔等に応じて異なり得る。これらは、当業者が経験的に決定することができ、治療応答の程度に応じて調節し得る。適切な用量を決定する際に考慮すべき要因として、対象の大きさおよび体重、対象の年齢および性別、症状の重篤度、疾患のステージ、作用物質のデリバリー方法、作用物質の半減期、および作用物質の効力が挙げられるが、これらに限定されない。考慮すべき疾患のステージには、疾患が急性期であるか慢性期であるか、再発期であるか寛解期であるかということ、および疾患の進行性が含まれる。
【0088】
治療上有効量の投与量および投与回数の決定は、当業者がその技能の範囲内で十分行うことができる。例えば、細胞培養または他のインビトロアッセイにより、初期有効用量を推定することができる。次いで、循環濃度または組織濃度(細胞培養アッセイによって決定される循環または組織IC50を包含する)を導く動物モデルにおいて用量を検討し得る。
【0089】
キット
本明細書中に記載する方法は、HSPC生着を向上するためのキットによって促進され得る。キットは、増殖および/または単離細胞を包含するHSPC、ECを包含するがそれに限定されない細胞、および/または補助的治療用化合物、HSPCおよびECを単離または増殖させるための手段、細胞を患者に投与するための手段、またはそれらの任意の組み合わせを含有し得る。キットは、薬学的に許容される担体、生理学的に許容される担体、使用説明書、容器、投与用の容器、抗体のいずれかもしくは全て、またはそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。キットには通常、ラベルが付けられ、ラベルは、キットの内容物の使用に関する説明または他の情報を提供する任意の文書または記録物[電子的またはコンピューターが読める形態(例えば、ディスク、光ディスク、メモリーチップまたはテープ)であり得る]を含む。
【0090】
本発明の実施には、別途示さない限り、当業者の技能における細胞生物学、分子生物学、細胞培養、免疫学等の従来の技法を用い得る。これらの技法は現在文献に十分に開示されており、特に、Sambrook, Fritsch and Maniatis eds., "Molecular Cloning A Laboratory Manual", 2nd Ed., Cold Springs Harbor Laboratory Press, 1989;Methods of Enzymology のシリーズ(Academic Press, Inc.)、およびAntibodies: A Laboratory Manual, Harlow et al., eds., (1987)が参照される。
【0091】
実施例
本教示の態様は、下記実施例に照らしてさらに理解され得る。実施例は、いかなる場合でも本教示の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0092】
実施例1:非照射ECを用いたHSPCの増殖
非照射E4ORF1+改変ECは、伝統的なフラスコベースの培養で、およそ15~20回、1:4のスプリットで継代培養する増殖能力を有する。本方法において、非照射E4ORF+1改変ECを、コンフルエントになるまで表面の平坦な培養容器中で十分量にまで増殖させることができる。平板培養細胞の量は、出発材料の量および増殖の長さに依存し得る。例えば、10日間の増殖には、(それぞれ、直径がおよそ35mmの)6ウェルのディッシュ3プレート分相当が必要であり得る。E4ORF1+ECを、これらのウェルにおいてコンフルエントになるまで、完全成長培地中で培養する。コンフルエントの時点で、培地をコンディショニング培地に切り替える。コンディショニング培地中で24時間後、CD34+精製細胞(例えば臍帯血(UCB)由来)を、E4ORF1+ECを予め播種したウェル上に、それぞれ50ng/mlのトロンボポエチン(TPO)、Fms関連チロシンキナーゼ3リガンド(Flt-3L)および幹細胞因子(SCF)からなるサイトカインと共に播種することができる。2日後、培地を収集し、細胞をペレット化し、新鮮なサイトカイン含有培地中に再懸濁させ、最初と同様に前もって調整した2つのさらなるウェルに分散させる。「マザーウェル」または「マザーフラスコ」と称される第1のウェルにもまた、さらなるサイトカイン含有培地を再供給する。10日目まで、このプロセスを1日おきに繰り返す。この時点で、全てのウェルが、増殖HSPCおよびE4ORF1+ECを含有する。場合によっては、中空繊維バイオリアクターなどのバイオリアクターを利用してもよい。中空繊維を、プライミングし、コーティングし、調整して(例えば、製造者の指示書に従って)、完全成長培地中におよそ5×107個のE4ORF1+ECを播種することができる。バイオリアクターはこの細胞を「養い」、6日間増殖させることができる。この時点で、コンフルエントに近くなったバイオリアクターにおいて、培地を、サイトカインを含まないコンディショニング培地と交換して、HSPCの早期の分化を駆動し得る血清[例えば、ウシ胎児血清(FBS)]を除去する。24時間後、E4ORF1+ECは、HSPCを受け入れる準備が整っている。USB試料は、ジメチルスルホキシド(DMSO)中の赤血球(RBC)除去製品として凍結保管することができる。原始CD34+集団の精製および増殖に先立って、この細胞材料を洗浄する。そのために、試料を37℃のビーズ浴中で解凍する。氷が残存しないか目視検査し、ユニットを、Miltenyi Prodigyデバイスまたは類似のシステムの流体工学に無菌接合する。この時点で細胞をDNアーゼとともにインキュベートする。これは、解凍後に生育不能細胞があった場合に、その核酸が凝集および粘性をもたらし得るからである。Miltenyi Prodigyデバイスまたは同等のデバイスは、冷凍保存剤を除去するために細胞を洗浄することができ、さらに試料からRBCを除去することができる。依然Miltenyi Prodigyデバイス中において、HSPCを精製するために、細胞をCD34マイクロビーズとともにインキュベートする。最後に、洗浄工程を行う。続いて、マイクロビーズ結合CD34+細胞を、Miltenyi CliniMacsデバイスまたは類似のデバイスに注入して、該標識CD34+細胞を磁気精製する。利用可能なCD34+の50~70%の回収率が見込まれる。
【0093】
次に、精製CD34+分画を、サイトカインのSCF、TPOおよびFlt3Lをそれぞれ50ng/ml補充した、総量200mlのHSPC増殖培地に注入する。続いて、この環境を、バイオリアクターの、E4ORF1+改変ECと同じ内部チャンバーに導入する(増殖の0日目)。増殖を通して、HSPC増殖培地(サイトカインを含まない)は、代謝産物の交換のためにおよそ0.4ml/分の速度で外部チャンバーから連続的に供給され、90%N2、5%O2および5%CO2が供給されるガス交換モジュールを含む再循環ループにおいておよそ30ml/分の速度で循環する。さらに、増殖の2日目および4日目に、サイトカインのSCF、TPOおよびFlt3Lをそれぞれ50ng/ml補充したHSPC増殖培地200mlのボーラスを、内部チャンバーに添加する。増殖6日目後に増殖を停止させ、その時点で、細胞材料全体を収集する。
【0094】
実施例2:照射ECを用いたHSPCの増殖
E4ORF1+改変ECは、放射線またはマイトマイシンCなどの有糸分裂不活性化刺激を受けた後も、HSPCを増殖させるのに十分に有用である。有糸分裂不活性化後の細胞を使用するために、その最終培養容器中にコンフルエントで存在する細胞に、有糸分裂不活性化刺激を与え、コンディショニング培地に切り替える前に完全培地中で24時間回復させる。有糸分裂不活性化した細胞をバイオリアクター中で使用する場合は、E4ORF1+改変EC、またはETV2+E4ORF1+改変EC、またはE4ORF1+E4ORF6+改変ECを、細胞数がおよそ10億個になるまで増殖させる。細胞は、有糸分裂不活性化刺激による処理後に冷凍保存し得る。次に、有糸分裂不活性化されたEC試料の全体をバイオリアクターに注入して、24時間付着させる。その後、培地のコンディショニングをさらに24時間行う。続いて、CD34+細胞(例えばUCB由来)を、サイトカイン(50ng/mlのTPO、Flt-3L、SCF)を補充した、E4ORF1+改変ECと同じバイオリアクター区画に導入する。この時点以降、細胞は互いに解離されない。2日目および4日目に、サイトカインを補充した培地の200mlボーラスを供給する。収集条件および全ての他の条件は、実施例1のものと同じである。
【0095】
実施例3:CFUアッセイ
コロニー形成単位または「CFU」は、インビトロモデルにおいて細胞の幹細胞性(stemness)を判断するための手段である。既知数の細胞を、規定培地(即ち、Methocult)を含む、メチルセルロースでコーティングした培養フラスコ上で平板培養する。2週後、規定の形態を有するコロニーが、仮定の幹細胞によって形成される。そのようなコロニーは定量可能であり、所定の集団中のHPSCの決定のために用いることができる。HSPCの増殖速度は、E4ORF1+ECを用いた場合の、バイオリアクターでの増殖において最も大きく、フラスコベースの増殖がそれに続き、サイトカイン単独を用いた増殖によるHSPC増殖量は最も少なかった(
図7を参照)。
【0096】
実施例4:フローサイトメトリー
単離したばかりの臍帯血由来(未処理)、サイトカイン単独を用いて6日間増殖させた細胞由来、フラスコ中でE4ORF1+EC上で6日間増殖させた細胞由来、または中空繊維バイオリアクター中でE4ORF1+EC上で6日間増殖させた細胞由来の造血細胞のいずれも、フローサイトメトリーによって分析した。細胞集団を、CD34、CD45およびCD38に関して同時染色した。これら細胞表面抗原に特異的な抗体に結合した異なるフルオロフォアによって、各パラメーターを識別することが可能であった。CD45-細胞を、E4ORF1+改変細胞として同定した。CD45は、汎造血細胞マーカーである。CD45+集団全体の中で、CD45+CD34+細胞はCD45+CD34-細胞と比較して、より原始的なHSPC集団を含む。CD45+CD34+CD38-細胞は、さらに原始的なHSPC集団を含む。これらの原始的細胞集団の増殖速度は、一貫して、E4ORF1+改変ECを用いた場合の、バイオリアクターでの増殖において最も大きく、フラスコベースの増殖がそれに続き、サイトカイン単独を用いて処理した場合の増殖量は最も少なかった
【0097】
実施例4:増殖ESPCの移植
E4ORF1+改変ECとの連続的な接触によって増殖されるHSPCは、例えば相互作用がHSPCの連続継代および再播種によって中断される増殖によって得られるHSPCと比較した場合、生着性に優れた産物をもたらし得る。この中断を排除することによって、本新規様式で増殖されるHSPCは、リンパ系、骨髄系および赤血球系列のより迅速な生着をもたらし、より迅速な、骨髄破壊後の各血球数の回復をもたらし得る。それはまた、増殖のためのE4ORF1+改変ECの使用が、長期再増殖幹細胞を維持すると考えられるので、長期の生着も改善し得る。E4ORF1+改変ECとの連続的な接触による増殖はまた、1個の成体が単一ドナー由来の単一UCBユニットに由来する移植片を受け取るために、またはさらに、単一成体への移植片の複数回輸注のために、あるいは複数の成体に単一UCBドナーからの複数の輸注を行うために、十分なHSPC材料の生成をもたらし得る。予想される迅速な生着はまた、入院の短縮の可能性、全ての等級のGVHDの発生率の低下、再発のレベルの低下、移植関連死亡率(TRM)の低下、感染の危険性の低下、移植不全の発生の低減、他の場合では使用不可能であるような少ない提供量の臍帯血でも利用可能であること、稀なHLA型の臍帯血に関するUCB提供へのアクセスの向上、治療費の全体的な低減、移植レシピエントの寿命の延長、および/または移植レシピエントの生活の質の向上を包含する、一連の他の有益性をもたらし得る。
【0098】
本発明の実施形態を、以下、さらに記載する:
[項1]
必要とする対象における幹細胞移植の方法であって、
(a)造血幹細胞または造血前駆細胞(HSPC)を、HSPCの増殖を可能にする条件下で、内皮細胞(EC)と、初期EC/HSPC比で第1の期間接触させることにより増殖させて、HSPCおよびECを増殖HSPC/EC比で含む増殖細胞集団を製造すること、および
(b)工程(a)から得た増殖細胞集団を対象へ輸注すること、
を含み、増殖および輸注の工程を通してHSPCとECの間の連続的な相互作用が維持される、方法。
[項2]
HSPCが、造血幹細胞である、上記項1に記載の方法。
[項3]
HSPCが、対象と同種である、上記項1に記載の方法。
[項4]
HSPCが、臍帯血HSPCである、上記項3に記載の方法。
[項5]
HSPCが、対象に関して自己由来である、上記項1に記載の方法。
[項6]
HSPCが、遺伝子修飾定常状態骨髄由来HSPCである、上記項5に記載の方法。
[項7]
ECが、血管ECである、上記項1に記載の方法。
[項8]
ECが、増殖に先立って有糸分裂が不活性化されている、上記項1に記載の方法。
[項9]
ECが、E4ORF1+改変ECである、上記項1に記載の方法。
[項10]
ECが、E4ORF1+ETV2+改変ECである、上記項1に記載の方法。
[項11]
ECが、E4ORF6+でもある、上記項10に記載の方法。
[項12]
ECが、ETV2ポリペプチドをコードする組換え核酸分子を含む、上記項10に記載の方法。
[項13]
ECが、アデノウイルスE4ORF1ポリペプチドをコードする組換え核酸分子を含む、上記項10に記載の方法。
[項14]
ECが、アデノウイルスE4ORF6ポリペプチドをコードする組換え核酸分子を含む、上記項11に記載の方法。
[項15]
核酸分子が、プラスミドベクターの形態である、上記項12~14のいずれか一項に記載の方法。
[項16]
核酸分子が、改変ECのゲノムDNAに組み込まれている、上記項12~14のいずれか一項に記載の方法。
[項17]
ECが、分化したECである、上記項12~16のいずれか一項に記載の方法。
[項18]
ECが、成体ECである、上記項12~16のいずれか一項に記載の方法。
[項19]
ECが、胚ECではない、上記項12~16のいずれか一項に記載の方法。
[項20]
ECが、ヒトECである、上記項12~16のいずれか一項に記載の方法。
[項21]
ECが、初代ECである、上記項12~16のいずれか一項に記載の方法。
[項22]
ECが、ヒト臍帯静脈EC(HUVEC)である、上記項12~16のいずれか一項に記載の方法。
[項23]
初期EC/HSPC比が、少なくとも約200:1である、上記項1に記載の方法。
[項24]
第1の期間が、約1日~約24日である、上記項1に記載の方法。
[項25]
増殖細胞集団が、対象1kg当たり約1.0×10
6
個~約1.0×10
8
個のHSPCを含む、上記項1に記載の方法。
[項26]
増殖HSPC/EC比が、約10:1~約1:10である、上記項1に記載の方法。
[項27]
HSPCとECの間の連続的な相互作用が、増殖工程中のHSPCとECの間の連続的な接触、ならびに組み合わせた増殖工程および輸注工程中のHSPCおよびECの連続的な近接を含む、上記項1に記載の方法。
[項28]
対象の循環血液中の血小板数が、対象への増殖細胞集団輸注から約15日~約35日後までに少なくとも約20000/μLとなる、上記項1に記載の方法。
[項29]
対象の循環血液中の好中球絶対数が、対象への増殖細胞集団輸注から約5日~約20日後までに少なくとも約100/μLとなる、上記項1に記載の方法。
[項30]
対象の循環血液中の好中球絶対数が、対象への増殖細胞集団輸注から約10日~約25日後までに少なくとも約500/μLとなる、上記項1に記載の方法。
[項31]
対象の循環血液中の好中球絶対数が、対象への増殖細胞集団輸注から約1000日後に少なくとも約500/μLとなる、上記項1に記載の方法。
[項32]
対象が、骨髄破壊的処置によって引き起こされる造血不全を有するか、または、血液疾患、骨髄造血幹細胞移植を要する障害、感染による免疫不全、T細胞に影響を及ぼす感染性疾患、HIV、遺伝性免疫不全、重症複合免疫不全、赤血球に影響を及ぼす遺伝性疾患、貧血およびファンコニ貧血から選択される障害を有する、上記項1に記載の方法。
[項33]
対象がヒトである、上記項1に記載の方法。
[項34]
必要とする対象における幹細胞移植に使用するためのHSPCおよびECを含む組成物であって、幹細胞移植が、上記項1に記載の方法を含む、組成物。
[項35]
HSPCが、造血幹細胞である、上記項34に記載の組成物。
[項36]
HSPCが、対象と同種である、上記項34または35に記載の組成物。
[項37]
HSPCが、臍帯血HSPCである、上記項36に記載の組成物。
[項38]
HSPCが、対象に関して自己由来である、上記項34または35に記載の組成物。
[項39]
HSPCが、遺伝子修飾定常状態骨髄由来HSPCである、上記項38に記載の組成物。
[項40]
ECが、血管ECである、上記項34に記載の組成物。
[項41]
ECが、増殖に先立って有糸分裂が不活性化されている、上記項34に記載の組成物。
[項42]
ECが、E4ORF1+改変ECである、上記項34に記載の組成物。
[項43]
ECが、E4ORF1+ETV2+改変ECである、上記項34に記載の組成物。
[項44]
ECが、E4ORF6+でもある、上記項43に記載の組成物。
[項45]
ECが、ETV2ポリペプチドをコードする組換え核酸分子を含む、上記項43に記載の組成物。
[項46]
ECが、アデノウイルスE4ORF1ポリペプチドをコードする組換え核酸分子を含む、上記項43に記載の組成物。
[項47]
ECが、アデノウイルスE4ORF6ポリペプチドをコードする組換え核酸分子を含む、上記項44に記載の組成物。
[項48]
核酸分子が、プラスミドベクターの形態で存在する、上記項45に記載の組成物。
[項49]
核酸分子が、改変ECのゲノムDNAに組み込まれている、上記項45に記載の組成物。
[項50]
ECが、分化したECである、上記項45に記載の組成物。
[項51]
ECが、成体ECである、上記項45に記載の組成物。
[項52]
ECが、胚ECではない、上記項45に記載の組成物。
[項53]
ECが、ヒトECである、上記項45に記載の組成物。
[項54]
ECが、初代ECである、上記項45に記載の組成物。
[項55]
ECが、ヒト臍帯静脈EC(HUVEC)である、上記項45に記載の組成物。
[項56]
初期EC/HSPC比が、少なくとも約200:1である、上記項34に記載の組成物。
[項57]
第1の期間が、約1日~約24日である、上記項34に記載の組成物。
[項58]
増殖細胞集団が、対象1kg当たり約1.0×10
6
個~約1.0×10
8
個のHSPC細胞を含む、上記項34に記載の組成物。
[項59]
増殖HSPC/EC比が、約10:1~約1:10である、上記項34に記載の組成物。
[項60]
HSPCとECの間の連続的な相互作用が、増殖工程中のHSPCとECの間の連続的な接触、ならびに組み合わせた増殖工程および輸注工程中のHSPCおよびECの連続的な近接を含む、上記項34に記載の組成物。
[項61]
対象の循環血液中の血小板数が、対象への増殖細胞集団輸注から約15日~約35日後までに少なくとも約20000/μLとなる、上記項34に記載の組成物。
[項62]
対象の循環血液中の好中球絶対数が、対象への増殖細胞集団輸注から約5日~約20日後までに少なくとも約100/μLとなる、上記項34に記載の組成物。
[項63]
対象の循環血液中の好中球絶対数が、対象への増殖細胞集団輸注から約10日~約25日後までに少なくとも約500/μLとなる、上記項34に記載の組成物。
[項64]
対象の循環血液中の好中球絶対数が、対象への増殖細胞集団輸注から約1000日後に少なくとも約500/μLとなる、上記項34に記載の組成物。
[項65]
対象が、骨髄破壊的処置によって引き起こされる造血不全を有するか、または、血液疾患、骨髄造血幹細胞移植を要する障害、感染による免疫不全、T細胞に影響を及ぼす感染性疾患、HIV、遺伝性免疫不全、重症複合免疫不全、赤血球に影響を及ぼす遺伝性疾患、貧血およびファンコニ貧血から選択される障害を有する、上記項34に記載の組成物。
[項66]
対象がヒトである、上記項34に記載の組成物。
本発明の特定の実施形態の上記記載は、説明を目的とするものである。それらは、網羅的であること、または本発明を開示される特定の形態に限定するものであること、を意図するものではなく、明らかに、上記の教示に照らして多くの修飾および変更が可能である。上記の実施形態は、本発明の原理およびその実際の適用を最も良く説明するため、そしてそれにより、他の当業者が、本発明および様々な実施形態を、意図する特定の使用に適するように様々な修飾を伴って、最も良く利用できるようにするために、選択し記載したものである。
【0099】
本明細書において、引用する特許、特許出願、刊行物および参照文献は全て、各刊行物または特許出願が具体的かつ個別に参照により組み込まれることが示されるのと同等に、参照により明らかに組み込まれる。