(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】露光ヘッド、キャリブレーションシステム、及び描画装置
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20240417BHJP
G03F 7/24 20060101ALN20240417BHJP
【FI】
G03F7/20 501
G03F7/24
(21)【出願番号】P 2022568035
(86)(22)【出願日】2021-04-14
(86)【国際出願番号】 JP2021015516
(87)【国際公開番号】W WO2022123804
(87)【国際公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-05-10
(31)【優先権主張番号】P 2020203601
(32)【優先日】2020-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594076533
【氏名又は名称】インスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142734
【氏名又は名称】安 裕 希
(72)【発明者】
【氏名】菅原 雅史
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/100446(WO,A1)
【文献】特開2020-098346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20
G03F 7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の方向に搬送される基板に対して露光用のビームを1次元的に走査しながら照射するための露光ヘッドであって、
複数の反射面を有し、回転可能に設けられたポリゴンミラーと、
光源から出射し、ビーム状に成形され
たビームを前記ポリゴンミラーに入射させるように構成された光学素子と、
前記ポリゴンミラーにより反射された前記ビームを前記基板の露光面に結像させるように構成された結像光学系と、
ビーム状に成形された前記ビームが前記光学素子に入射す
る光路
の前記光学素子の直前に挿抜可能に設けられ、該光路に挿入されている間、前記ビームを前記光路と異なる方向に反射するように構成された反射ミラーと、
前記反射ミラーによって反射された前記ビームが入射可能な位置に配置され、前記ビームの強度を検出可能な受光素子と、
を備える露光ヘッド。
【請求項2】
光源と、
前記光源から出力された光をビーム状に成形するように構成されたビーム成形光学系と、
をさらに備える請求項1に記載の露光ヘッド。
【請求項3】
前記反射ミラーを支持するミラー支持部と、
前記ミラー支持部を回転させることにより、前記光路に対して前記反射ミラーを挿抜するように構成された回転駆動機構と、
をさらに備える請求項1又は2に記載の露光ヘッド。
【請求項4】
前記回転駆動機構は、前記光路と、前記反射ミラーにより反射された前記ビームが前記受光素子に向かう第2の光路とを含む面と平行な面内において、前記ミラー支持部を回転させるように構成されている、請求項3に記載の露光ヘッド。
【請求項5】
露光ヘッドから出射し、1次元的に走査されながら、所定の方向に搬送される基板に照射される露光用のビームの強度をキャリブレーションするためのキャリブレーションシステムであって、
前記露光ヘッドは、複数の反射面を有し、回転可能に設けられたポリゴンミラーと、光源から出射し、ビーム状に成形され
たビームを前記ポリゴンミラーに入射させるように構成された光学素子と、前記ポリゴンミラーにより反射された前記ビームを前記基板の露光面に結像させるように構成された結像光学系と、を有し、
前記露光ヘッドの内部であって、ビーム状に成形された前記ビームが前記光学素子に入射す
る光路
の前記光学素子の直前に挿抜可能に設けられ、該光路に挿入されている間、前記ビームを前記光路と異なる方向に反射するように構成された反射ミラーと、
前記露光ヘッドの内部であって、前記反射ミラーによって反射された前記ビームが入射可能な位置に配置され、前記ビームの強度を検出可能な受光素子と、
前記受光素子から出力される検出信号に基づき、前記ビームの強度を表すデータを生成するように構成された制御部と、
前記データをキャリブレーションデータとして記憶するように構成された記憶部と、
を備えるキャリブレーションシステム。
【請求項6】
前記光路に対して前記反射ミラーを挿抜するように構成された挿抜機構をさらに備え、
前記制御部はさらに、前記挿抜機構の動作を制御するように構成されている、
請求項5に記載のキャリブレーションシステム。
【請求項7】
前記記憶部は、前記ビームの基準強度を表す基準データをさらに記憶するように構成され、
前記制御部は、前記キャリブレーションデータ及び前記基準データに基づき、前記受光素子に入射したビームの強度が所定範囲に収まるか否かを判定するように構成された判定部を有する、
請求項5又は6に記載のキャリブレーションシステム。
【請求項8】
前記制御部は、前記判定部による判定結果に基づき、前記受光素子に入射したビームの強度が前記所定範囲に収まらない場合に、前記光源の出力を補正するための補正データを生成するように構成された補正部をさらに有する、請求項7に記載のキャリブレーションシステム。
【請求項9】
露光ヘッドから出射し、1次元的に走査されながら、所定の方向に搬送される基板に照射される露光用のビームの強度をキャリブレーションするためのキャリブレーションシステムと、
前記基板を搬送するように構成された搬送手段と、
を備え、
前記露光ヘッドは、複数の反射面を有し、回転可能に設けられたポリゴンミラーと、光源から出射し、ビーム状に成形され
たビームを前記ポリゴンミラーに入射させるように構成された光学素子と、前記ポリゴンミラーにより反射された前記ビームを前記基板の露光面に結像させるように構成された結像光学系と、を有し、
前記キャリブレーションシステムは、
前記露光ヘッドの内部であって、ビーム状に成形された前記ビームが前記光学素子に入射す
る光路
の前記光学素子の直前に挿抜可能に設けられ、該光路に挿入されている間、前記ビームを前記光路と異なる方向に反射するように構成された反射ミラーと、
前記露光ヘッドの内部であって、前記反射ミラーによって反射された前記ビームが入射可能な位置に配置され、前記ビームの強度を検出可能な受光素子と、
前記受光素子から出力される検出信号に基づき、前記ビームの強度を表すデータを生成するように構成された制御部と、
前記データをキャリブレーションデータとして記憶するように構成された記憶部と、
を備え、
前記露光ヘッドは、前記基板の搬送方向と直交する方向に前記ビームを走査するように配置されている、描画装置。
【請求項10】
前記露光ヘッドは、前記基板の搬送方向と直交する方向に複数並べて設けられている、請求項9に記載の描画装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光用のビームを出射する露光ヘッド、キャリブレーションシステム、及び描画装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車や航空機等の輸送機において使用される電子機器の数は増加の一途を辿っている。これに伴い、電子機器への電源供給や信号の送受信に用いられるワイヤーハーネスの数も増加している。その一方で、輸送機においては軽量化や省スペース化が要請されており、ワイヤーハーネスの増加に伴う重量増やスペース増が問題になっている。
【0003】
このような問題から、輸送機で用いられるワイヤーハーネスを、長尺のシート状をなすフレキシブルプリント回路基板(Flexible Printed Circuit:FPC)により代替することも検討されている。
【0004】
長尺のシート状の基板に対するパターン形成技術として、非特許文献1には、ロールトゥロール(Roll To Roll)方式でフィルム搬送を停止することなく連続的に搬送しながら処理を行うために、アライメント計測、重ね合わせ露光、ワーク交換を並列に行う技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献1には、ロールトゥロール方式の描画装置において随時キャリブレーションを行うことができるシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【文献】鬼頭義昭、他、「ロールトゥロール方式高精度ダイレクトウェブ露光装置の開発」、映像情報メディア学会誌、第71巻、第10号、第J230~J235頁(2017)、一般社団法人映像情報メディア学会、2017年9月8日採録
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
自動車や航空機など高度な安全性が要求される機器においては、機器を構成する1つひとつの部品について高い信頼性を担保するため、トレーサビリティが必要とされている。そのため、パターン形成された基板に関しては、当該基板へのパターン形成工程において、露光用のビームの強度等を確認するためのキャリブレーションを定期的に行い、キャリブレーションデータを保存しておかなくてはならない。
【0009】
この点、特許文献1においては、長尺の基板に連続的なパターンを形成する場合であっても、基板を搬送ドラムから取り外すことなく、随時キャリブレーションを行うことができる。しかしながら、特許文献1においては、ビームの強度をキャリブレーションする場合であっても、露光ヘッド支持部を移動させ、センサユニットを配置可能な空間を形成する必要があるため、描画装置が大型化してしまうことも考えられる。
【0010】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、描画装置を大型化させることなく、基板を走査する露光用のビームの強度を随時キャリブレーションすることができる露光ヘッド、キャリブレーションシステム、及び描画装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の一態様である露光ヘッドは、所定の方向に搬送される基板に対して露光用のビームを1次元的に走査しながら照射するための露光ヘッドであって、複数の反射面を有し、回転可能に設けられたポリゴンミラーと、光源から出射し、ビーム状に成形された前記ビームを前記ポリゴンミラーに入射させるように構成された光学素子と、前記ポリゴンミラーにより反射された前記ビームを前記基板の露光面に結像させるように構成された結像光学系と、前記光学素子に入射する前記ビームの光路に挿抜可能に設けられ、該光路に挿入されている間、前記ビームを前記光路と異なる方向に反射するように構成された反射ミラーと、前記反射ミラーによって反射された前記ビームが入射可能な位置に配置され、前記ビームの強度を検出可能な受光素子と、を備えるものである。
【0012】
上記露光ヘッドは、光源と、前記光源から出力された光をビーム状に成形するように構成されたビーム成形光学系と、をさらに備えても良い。
【0013】
上記露光ヘッドは、前記反射ミラーを支持するミラー支持部と、前記ミラー支持部を回転させることにより、前記光路に対して前記反射ミラーを挿抜するように構成された回転駆動機構と、をさらに備えても良い。
【0014】
上記露光ヘッドにおいて、前記回転駆動機構は、前記光路と、前記反射ミラーにより反射された前記ビームが前記受光素子に向かう第2の光路とを含む面と平行な面内において、前記ミラー支持部を回転させるように構成されていても良い。
【0015】
本発明の別の態様であるキャリブレーションシステムは、露光ヘッドから出射し、1次元的に走査されながら、所定の方向に搬送される基板に照射される露光用のビームの強度をキャリブレーションするためのキャリブレーションシステムであって、前記露光ヘッドは、複数の反射面を有し、回転可能に設けられたポリゴンミラーと、光源から出射し、ビーム状に成形された前記ビームを前記ポリゴンミラーに入射させるように構成された光学素子と、前記ポリゴンミラーにより反射された前記ビームを前記基板の露光面に結像させるように構成された結像光学系と、を有し、前記光学素子に入射する前記ビームの光路に挿抜可能に設けられ、該光路に挿入されている間、前記ビームを前記光路と異なる方向に反射するように構成された反射ミラーと、前記反射ミラーによって反射された前記ビームが入射可能な位置に配置され、前記ビームの強度を検出可能な受光素子と、前記受光素子から出力される検出信号に基づき、前記ビームの強度を表すデータを生成するように構成された制御部と、前記データをキャリブレーションデータとして記憶するように構成された記憶部と、を備えるものである。
【0016】
上記キャリブレーションシステムは、前記光路に対して前記反射ミラーを挿抜するように構成された挿抜機構をさらに備え、前記制御部はさらに、前記挿抜機構の動作を制御するように構成されても良い。
【0017】
上記キャリブレーションシステムにおいて、前記記憶部は、前記ビームの基準強度を表す基準データをさらに記憶するように構成され、前記制御部は、前記キャリブレーションデータ及び前記基準データに基づき、前記受光素子に入射したビームの強度が所定範囲に収まるか否かを判定するように構成された判定部を有しても良い。
【0018】
上記キャリブレーションシステムにおいて、前記制御部は、前記判定部による判定結果に基づき、前記受光素子に入射したビームの強度が前記所定範囲に収まらない場合に、前記光源の出力を補正するための補正データを生成するように構成された補正部をさらに有しても良い。
【0019】
本発明の別の態様である描画装置は、露光ヘッドから出射し、1次元的に走査されながら、所定の方向に搬送される基板に照射される露光用のビームの強度をキャリブレーションするためのキャリブレーションシステムと、前記基板を搬送するように構成された搬送手段と、を備え、前記露光ヘッドは、複数の反射面を有し、回転可能に設けられたポリゴンミラーと、光源から出射し、ビーム状に成形された前記ビームを前記ポリゴンミラーに入射させるように構成された光学素子と、前記ポリゴンミラーにより反射された前記ビームを前記基板の露光面に結像させるように構成された結像光学系と、を有し、前記キャリブレーションシステムは、前記光学素子に入射する前記ビームの光路に挿抜可能に設けられ、該光路に挿入されている間、前記ビームを前記光路と異なる方向に反射するように構成された反射ミラーと、前記反射ミラーによって反射された前記ビームが入射可能な位置に配置され、前記ビームの強度を検出可能な受光素子と、前記受光素子から出力される検出信号に基づき、前記ビームの強度を表すデータを生成するように構成された制御部と、前記データをキャリブレーションデータとして記憶するように構成された記憶部と、を備え、前記露光ヘッドは、前記基板の搬送方向と直交する方向に前記ビームを走査するように配置されているものである。
【0020】
上記描画装置において、前記露光ヘッドは、前記基板の搬送方向と直交する方向に複数並べて設けられていても良い。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、露光ヘッドにおいてビームをポリゴンミラーに入射させるための光学素子への光路上に反射ミラーを挿抜可能に設けると共に、この反射ミラーによって反射されたビームが入射可能な位置に受光素子を配置するので、描画装置を大型化させることなく、基板を走査する露光用のビームの強度を随時キャリブレーションすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係る描画装置の概略構成を示す模式図である。
【
図3A】露光ヘッドの内部の概略構成を示す模式図である。
【
図3B】露光ヘッドの内部の概略構成を示す模式図である。
【
図4】
図1に示す露光ヘッドを基板側から見た模式図である。
【
図5】
図1に示す制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図6】
図1に示す描画装置のキャリブレーション時における動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態に係る露光ヘッド、キャリブレーションシステム、及び描画装置について、図面を参照しながら説明する。なお、これらの実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、各図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
【0024】
以下の説明において参照する図面は、本発明の内容を理解し得る程度に形状、大きさ、及び位置関係を概略的に示しているに過ぎない。即ち、本発明は各図で例示された形状、大きさ、及び位置関係のみに限定されるものではない。また、図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係る描画装置の概略構成を示す模式図である。
図2は、同描画装置の平面図である。
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る描画装置1は、長尺のシート状をなす基板2を搬送する搬送システム3と、基板2に露光用のビームLを照射することによりパターンを形成する描画ユニット4と、搬送システム3及び描画ユニット4の動作を制御する制御装置5とを備える。以下においては、基板2の搬送方向をx方向、基板2の幅方向をy方向、鉛直方向をz方向(下向きが正)とする。
【0026】
本実施形態においては、フレキシブルプリント回路基板(Flexible Printed Circuit:FPC)を処理対象の基板2としている。FPCは、ポリイミド等の絶縁性を有する樹脂製のベースフィルムに銅等の金属箔を貼り合わせた、可撓性を有する回路基板である。基板2は、例えば数m~数十mの帯状に成形されたFPCであり、巻出しリール31にロール状に巻かれた状態から巻き出され、搬送システム3により搬送されつつ描画ユニット4によりパターンが形成された後、巻取りリール32に巻き取られる。このように、帯状のワークをロールから巻き出し、所定の処理を施した後でロールに巻き取る搬送方式は、ロールトゥロール(Roll to Roll)方式とも呼ばれる。
【0027】
搬送システム3には、巻出しリール31を回転可能に支持する回転軸31aと、巻き取りリール32を回転可能に支持する回転軸32aと、搬送ドラム33と、搬送ドラム33の上流側(
図1においては左側)及び下流側(
図1においては右側)にそれぞれ設けられたテンションプーリ34、35と、複数の案内ローラ36、37とが設けられている。
【0028】
搬送ドラム33は、全体として円筒形状をなし、駆動源から供給される回転駆動力により回転する回転軸33aに支持されている。搬送ドラム33は、外周面33bの略上半分の領域において基板2を支持すると共に、自身が回転することにより基板2を搬送するように構成された搬送手段である。また、搬送ドラム33には、搬送ドラム33の回転量を測定するエンコーダ33cが設けられている。
【0029】
2つのテンションプーリ34、35の各々は、上下方向に移動可能な回転軸34a、35aに回転可能に支持され、搬送ドラム33よりも下方に設置されている。各回転軸34a、35aは、当該回転軸34a、35aを下方に向けて付勢するテンション調整機構が連結されている。このテンション調整機構により回転軸34a、35aを介してテンションプーリ34、35を下方に付勢することにより、搬送ドラム33に巻き掛けられた基板2を、所定のテンションがかかった状態で搬送することができる。
【0030】
各案内ローラ36は、回転軸36aに回転可能に支持されており、巻出しリール31から巻き出された基板2を上流側のテンションプーリ34に案内する。各案内ローラ37は、回転軸37aに回転可能に支持されており、パターン形成処理がなされた基板2を下流側のテンションプーリ35から巻き取りリール32に案内する。
【0031】
なお、ロールトゥロール方式の搬送システム3の構成としては、基板2を搬送し、且つ、搬送ドラム33の外周面33bに支持された基板2に対してパターン形成処理を施すことができれば、
図1及び
図2に示す構成に限定されない。また、巻出しリール31から基板2が巻き出された後、搬送ドラム33に至るまでの間、又は、搬送ドラム33から基板2が搬出された後、巻取りリール32に巻き取られるまでの間に、さらに別の処理を行うユニット(前処理ユニット、後処理ユニット等)を設けても良い。なお、搬送システム3には、通常、基板搬送時の蛇行を防ぐため、基板2の端部位置を検出し、巻出し装置又は巻取り装置を微動させるエッジ・ポジション・コントロール(Edge Position Control:EPC)装置が設けられる。
【0032】
描画ユニット4には、基板2に対して露光用のビームLを1次元的に走査しながら照射するための複数の露光ヘッド41が設けられている。これらの露光ヘッド41は、基板2の搬送方向と直交する方向(y方向)にビームLを走査するように配置されており、基板2にビームLを照射することによって回路や配線等のパターンを描画する。
【0033】
図3A及び
図3Bは、露光ヘッド41の内部の概略構成を示す模式図である。このうち、
図3Aは、ビームLによって基板2に描画している状態を示し、
図3Bは、ビームLのキャリブレーションを行っている状態を示している。
【0034】
図3Aに示すように、露光ヘッド41の内部には、レーザ光を出力する光源411と、ビーム成形光学系412と、第1反射ミラー413と、ポリゴンミラー414と、第2反射ミラー415と、結像光学系416と、キャリブレーション用ミラー421と、受光素子422とが設けられている。また、キャリブレーション用ミラー421と受光素子422との間に、NDフィルタ(減光フィルタ)423を配置しても良い。
【0035】
ビーム成形光学系412は、コリメータレンズ、シリンドリカルレンズ、光量調整用のフィルタ、偏光フィルタ等の光学素子を含み、光源411から出力されたレーザ光をビーム状に成形するように構成されている。
【0036】
第1反射ミラー413は、光源411から出射し、ビーム成形光学系412によりビーム状に成形されたビームLを反射することによりポリゴンミラー414に入射させるように構成された光学素子である。
【0037】
ポリゴンミラー414には、該ポリゴンミラー414を回転軸414a回りに回転させる駆動装置が設けられている。ポリゴンミラー414は、回転軸414a回りに回転しながら、第1反射ミラー413の方向から入射するビームLを反射することにより、ビームLを等角速度で走査する。
【0038】
第2反射ミラー415は、ポリゴンミラー414によって反射されたビームLを反射することにより、ビームLを折り曲げる。
【0039】
結像光学系416は、fθレンズ又はテレセントリックfθレンズ等の光学素子を含み、ポリゴンミラー414により反射され、第2反射ミラー415を経由したビームLを、基板2の露光面に結像させるように構成されている。これにより、基板2上の1次元的な走査ラインP1に沿ってビームLを等速度で走査することができる。
【0040】
なお、露光ヘッド41のうち、ポリゴンミラー414の後段の構成は、
図3Aに示すものに限定されない。例えば、第2反射ミラー415を省略し、結像光学系416を、ポリゴンミラー414からのビームLの出射面の方向に結像光学系416の入射面を向けて設置し、ポリゴンミラー414により反射されたビームLを結像光学系416に直接入射させても良い。描画ユニット4において設置される露光ヘッド41の向きは、結像光学系416から出射するビームLの出射方向及び走査方向に応じて適宜設定すれば良い。
【0041】
キャリブレーション用ミラー421は、ビーム成形光学系412から出射し、第1反射ミラー413に入射するビームLの光路R1に挿抜可能に設けられた反射ミラーである。
図3Bに示すように、キャリブレーション用ミラー421は、光路R1に挿入されている間、ビームLを光路R1とは異なる方向に反射するように構成されている。
図3Bにおいて、キャリブレーション用ミラー421は、その反射面が光路R1に対して45度となるように挿入されており、光路R1の鉛直上方(-z方向)にビームLが反射されている(光路R2参照)。
【0042】
本実施形態において、キャリブレーション用ミラー421は、ミラー支持部424により支持されている。ミラー支持部424は、回転軸425a回りに回転する回転駆動機構(例えばモータ)425に取り付けられており、回転駆動機構425によってミラー支持部424を回転させることにより、光路R1に対してキャリブレーション用ミラー421が挿抜される。本実施形態においては、光路R1及び光路R2を含む面と平行な面内においてミラー支持部424を回転させている。
【0043】
なお、光路R1に対してキャリブレーション用ミラー421を挿抜する機構は、回転駆動機構425に限定されない。例えば、キャリブレーション用ミラー421を平行移動させることにより、光路R1に挿抜しても良い。
【0044】
受光素子422は、キャリブレーション用ミラー421によって反射されるビームLが入射可能な位置に配置されており、入射したビームLの強度を検出して検出信号を出力する。受光素子422としては、一般的な位置検出素子(Position Sensitive Detector:PSD)や光強度検出素子を用いることができる。
【0045】
NDフィルタ423は、キャリブレーション用ミラー421によって反射されたビームLの光量を減衰させることにより、受光素子422を保護する。
【0046】
図4は、描画ユニット4に設けられた複数の露光ヘッド41を基板2側から見た平面図である。
図4においては4つの露光ヘッド41を示しているが、露光ヘッド41の数は4つに限定されない。露光ヘッド41の数は1つ以上であれば良く、基板2の幅、露光ヘッド41の走査範囲SR(
図3A参照)、及び、ビームLの出力等に応じて適宜設定することができる。
【0047】
各露光ヘッド41は、描画ユニット4内に設けられた支持機構に、調整ステージ42を介して取り付けられている。調整ステージ42は、露光ヘッド41のx方向及びy方向における位置と鉛直方向に対する角度とを、手動で微調整するために設けられている。これらの露光ヘッド41は、ビーム出射口41aから出射するビームLの走査範囲SRが、基板2の幅方向(y方向)において隣り合う領域を走査するビームLとの間で、端部同士が僅かに重なり合うか、或いは、隙間なく隣接するように配置されている。これにより、基板2の幅方向を、複数のビームLにより隙間なく走査することが可能となる。
【0048】
図5は、制御装置5の概略構成を示すブロック図である。制御装置5は、描画装置1の各部の動作を統括的に制御する装置であり、外部インタフェース51と、記憶部52と、制御部53とを備える。本実施形態におけるキャリブレーションシステムは、この制御装置5と、露光ヘッド41内のキャリブレーション用ミラー421と、受光素子422とを含む。
【0049】
外部インタフェース51は、各種外部機器を当該制御装置5に接続するためのインタフェースである。制御装置5に接続される外部機器としては、露光ヘッド41(即ち、光源411、受光素子422、回転駆動機構425)、エンコーダ33c、搬送システム3を駆動する基板搬送駆動装置61、キーボードやマウスなどの入力デバイス62、液晶モニタ等の表示デバイス63、パターンデータ等を当該制御装置5に読み込むためのデータ読込装置64等が挙げられる。
【0050】
記憶部52は、ディスクドライブやROM、RAM等の半導体メモリなどのコンピュータ読取可能な記憶媒体を用いて構成される。記憶部52は、オペレーティングシステムプログラムやドライバプログラムの他、当該制御装置5に所定の動作を実行させるためのプログラムや、該プログラムの実行中に使用される各種データ及び設定情報等を記憶する。
【0051】
詳細には、記憶部52は、プログラム記憶部521と、パターンデータ記憶部522と、基準データ記憶部523と、キャリブレーションデータ記憶部524と、補正データ記憶部525とを含む。プログラム記憶部521は、上述した各種プログラムを記憶する。パターンデータ記憶部522は、描画ユニット4に描画させるパターンを表すデータを記憶する。基準データ記憶部523は、ビームLの強度の基準データを記憶する。ここで、基準データとは、基板2の露光面におけるビームLの所定の照射強度に対応する受光素子422におけるビームLの強度(以下、基準強度ともいう)を表すデータである。キャリブレーションデータ記憶部524は、ビームLのキャリブレーションデータ、つまり、受光素子422に入射したビームLの強度を表すデータを記憶する。補正データ記憶部525は、キャリブレーションデータに基づいて光源411の出力を調整するための補正データを記憶する。
【0052】
制御部53は、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアを用いて構成され、プログラム記憶部521に記憶されているプログラムを読み込むことにより、制御装置5及び描画装置1の各部へのデータ転送や指示を行い、描画装置1の動作を統括的に制御して基板2へのパターン形成処理を実行させる。また、制御部53は、プログラム記憶部521に記憶されたキャリブレーションプログラムを読み込むことにより、露光ヘッド41のキャリブレーションを定期的に行ってキャリブレーションデータを記憶すると共に、キャリブレーションデータに基づいて光源411の出力の調整を行う。
【0053】
詳細には、制御部53が上記プログラムを実行することにより実現される機能部には、描画制御部531と、キャリブレーション制御部532と、判定部533と、補正部534とが含まれる。
【0054】
描画制御部531は、パターンデータ記憶部522からパターンデータを読み出し、各露光ヘッド41によるビームLの出力及び走査並びに搬送システム3による基板2の搬送速度等の制御データを生成し、露光ヘッド41及び基板搬送駆動装置61に出力する。これにより、搬送システム3によって基板2が所定の速度で搬送されると共に、各露光ヘッド41から出射したビームLが基板2の所定の露光領域に照射され、幅方向に走査される。このようにして、基板2に2次元的なパターンが形成される。
【0055】
キャリブレーション制御部532は、ビームLの強度をキャリブレーションするための制御を行う。詳細には、入力デバイス62から入力された命令に従って、或いは、予め設定されたタイミングで、露光ヘッド41の回転駆動機構425を動作させることにより、光路R1に対してキャリブレーション用ミラー421を挿抜する。
【0056】
判定部533は、受光素子422が検出したビームLの強度の測定値(キャリブレーション値)を表すデータ(キャリブレーションデータ)を生成すると共に、キャリブレーションデータ及び基準データ記憶部523に記憶された基準データに基づき、キャリブレーション値が所定範囲内に収まっているか否かを判定する。
【0057】
補正部534は、キャリブレーション値が所定範囲内に収まっていない場合に、ビームLの強度を補正するための補正データを生成し、該補正データに基づいて光源411の出力を制御する。
なお、このような制御装置5は、1つのハードウェアにより構成しても良いし、複数のハードウェアを組み合わせて構成しても良い。
【0058】
次に、本実施形態に係るキャリブレーション方法について説明する。
図6は、描画装置1のキャリブレーション時における動作を示すフローチャートである。
まず、ステップS10において、制御装置5は各露光ヘッド41に対し、基板2へのビームLの照射を停止させる。
【0059】
続くステップS11において、制御装置5は搬送システム3に対し、基板2の搬送を停止させる。
続くステップS12において、制御装置5は、各露光ヘッド41の回転駆動機構425に回転駆動させることにより、キャリブレーション用ミラー421を光路R1に挿入させる(
図3B参照)。
【0060】
続くステップS13において、制御装置5は、光源411にビームLを出射させる。光源411から出射し、ビーム状に成形されたビームLは、キャリブレーション用ミラー421により反射され、NDフィルタ423を介して受光素子422に入射する。これにより、受光素子422がビームLの強度を表す検出信号を出力する。
【0061】
続くステップS14において、制御装置5の判定部533は、受光素子422から出力された検出信号に基づき、ビームLの強度の測定値を表すデータ(キャリブレーションデータ)を生成し、キャリブレーションデータ記憶部524に保存する。
【0062】
続くステップS15において、判定部533は、ステップS14において生成されたキャリブレーションデータを、基準データ記憶部523に記憶された基準データと比較し、ビームLの強度が所定範囲内であるか否かを判定する。詳細には、判定部533は、ビームLの強度の測定値の基準強度に対する差分を算出し、この差分が所定の閾値以下であるか否かを判定する。
【0063】
ビームLの強度が所定範囲内である場合(ステップS15:Yes)、動作はステップS17に移行する。
他方、ビームLの強度が所定範囲から外れる場合(ステップS15:No)、補正部534は、光源411の出力を補正するための補正データを生成し、補正データ記憶部525に保存する(ステップS16)。詳細には、補正部534は、光源411の出力パラメータを補正する。この際、補正部534は、補正データを表示デバイス63に表示させても良い。
【0064】
続くステップS17において、制御装置5は、各露光ヘッド41の回転駆動機構425に回転駆動させることにより、キャリブレーション用ミラー421を光路R1から抜去させる(
図3A参照)。これにより、描画装置1におけるビームLの強度のキャリブレーション動作は終了する。キャリブレーションの終了後、描画動作を再開すると、ステップS16において補正されたパラメータに基づいて各部が動作し、強度が補正されたビームLにより基板2への描画を行うことができる。
【0065】
以上説明したように、本実施形態によれば、各露光ヘッド41にキャリブレーション用ミラー421及び受光素子422を設けるので、描画装置1を大型化させることなく、各露光ヘッド41から出射するビームLの強度を随時キャリブレーションすることが可能となる。
【0066】
また、本実施形態によれば、ミラー支持部424を光路R1及び光路R2を含む面と平行な面内において回転させるので、キャリブレーション時に使用される各部材(キャリブレーション用ミラー421~回転駆動機構425)を露光ヘッド41内にコンパクトに配置することができる。従って、露光ヘッド41の大型化も抑制することができる。
【0067】
ここで、上記実施形態においては、キャリブレーションにおいて取得された測定値が所定範囲内に収まるか否かを判定し、収まらない場合には、ビームLの強度を補正するための処理を実行した。しかしながら、キャリブレーションを行い、単にキャリブレーションデータを保存しておくだけでも良いし、キャリブレーションデータに基づく補正データを保存しておくだけでも良い。
【0068】
以上説明した本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、上記実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の発明を形成することができる。例えば、上記実施形態に示した全構成要素からいくつかの構成要素を除外して形成しても良い。一例として、光源を露光ヘッドの外部に設け、光源から出射したビームを分岐して複数の露光ヘッドに導光する描画装置に対し、上述したキャリブレーション機構を適用しても良い。
【符号の説明】
【0069】
1…描画装置、2…基板、3…搬送システム、4…描画ユニット、5…制御装置、31,32…リール、31a,32a,33a,34a,35a,36a,37a,415a,425a…回転軸、33…搬送ドラム、33c…エンコーダ、33b…外周面、
34,35…テンションプーリ、36,37…案内ローラ、41…露光ヘッド、41a…ビーム出射口、42…調整ステージ、51…外部インタフェース、52…記憶部、53…制御部、61…基板搬送駆動装置、62…入力デバイス、63…表示デバイス、64…データ読込装置、411…光源、412…ビーム成形光学系、413…第1反射ミラー、414…ポリゴンミラー、415…第2反射ミラー、416…結像光学系、421…キャリブレーション用ミラー、422…受光素子、423…NDフィルタ、424…ミラー支持部、425…回転駆動機構、521…プログラム記憶部、522…パターンデータ記憶部、523…基準データ記憶部、524…キャリブレーションデータ記憶部、525…補正データ記憶部、531…描画制御部、532…キャリブレーション制御部、533…判定部、534…補正部