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特許7473999耕うん同時畝立て播種機及び耕うん同時畝立て播種方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】耕うん同時畝立て播種機及び耕うん同時畝立て播種方法
(51)【国際特許分類】
   A01B 49/06 20060101AFI20240417BHJP
   A01B 13/02 20060101ALI20240417BHJP
   A01B 63/114 20060101ALI20240417BHJP
   A01C 5/06 20060101ALI20240417BHJP
   A01C 7/16 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
A01B49/06
A01B13/02 C
A01B63/114
A01C5/06 C
A01C5/06 L
A01C7/16 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023011496
(22)【出願日】2023-01-30
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】523032490
【氏名又は名称】今井 俊之
(74)【代理人】
【識別番号】100095740
【弁理士】
【氏名又は名称】開口 宗昭
(74)【代理人】
【識別番号】100225141
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 安司
(72)【発明者】
【氏名】今井 俊之
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-11162(JP,A)
【文献】特開2004-298028(JP,A)
【文献】米国特許第5413056(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 49/06
A01B 13/02
A01B 63/114
A01C 5/06
A01C 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタにロータリ耕耘装置が昇降自在に装着され、このロータリ耕耘装置に複数の播種機が装着され、前記播種機に回動自在に枢支された平行リンクの後端には揺動フレームが枢結されると共に、前記平行リンクの対角線上には付勢バネが介装され、下方に回動するように付勢された前記揺動フレームに付設された作溝ディスクと覆土ディスクと鎮圧輪が、畝表面の凹凸に従って、平行リンクが下方に付勢された状態で回動しながら上下動する耕うん同時畝立て播種機において、前記平行リンクの対角ピン間を繋ぐワイヤを設け、前記ワイヤを前記トラクタの昇降駆動ユニットによる3点リンク機構の昇降駆動を操作する操作機構に連結したことを特徴とする耕うん同時畝立て播種機。
【請求項2】
前記操作機構は前記トラクタの昇降駆動ユニットに駆動連結されるオートワイヤを操作子に締結してなり、前記操作子に前記平行リンクの対角のピン間を繋ぐワイヤーが締結される請求項1記載の耕うん同時畝立て播種機。
【請求項3】
前記ロータリ耕耘装置がアップカットロータリを備える請求項1記載の耕うん同時畝立て播種機。
【請求項4】
前記アップカットロータリの耕うん爪軸をホルダー型にしてなる請求項3記載の耕うん同時畝立て播種機。
【請求項5】
請求項4記載の耕うん同時畝立て播種機を用いて行う耕うん同時畝立て播種方法であって、平高畝を成形し、1畝あたり複数条の播種機を配置することで、大豆の狭畦栽培を行う耕うん同時畝立て播種方法。
【請求項6】
請求項4記載の耕うん同時畝立て播種機を用いて行う耕うん同時畝立て播種方法であって、単条畝を成形し、1畝あたり1条の播種機を配置することで、畦幅を70~75cmとした大豆の普通栽培をする耕うん同時畝立て播種方法。
【請求項7】
播種深さを3cm~5cmに予め設定し、その設定播種深さを維持して行う請求項5又は請求項6記載の耕うん同時畝立て播種方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタや管理機等の牽引車輌によって牽引されるロータリ耕耘装置の後部に装着されると共に、畝立て成形機と播種機とから成る耕うん同時畝立て播種機及びこれを用いる耕うん同時畝立て播種方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、重粘土質土壌での麦・大豆等の安定栽培を可能とする湿害軽減技術である「耕うん同時畝立て播種」開発され、実施化されている。
【0003】
ところが、この耕うん同時畝立て播種を行う場合に、土の状態や耕起条件によって牽引車両の機体が上下動することは避けられず、同様に装着されたロータリも上下動し耕うん深さが一定とならないことに起因して、形成される畝高さが変動してしまい、播種機の高さや姿勢を適正に調整しても、播種機が畝表面の凹凸に追従しきれず、種子が繰り出されなかったり、播種深さが不均一となり作物の正常な生育が妨げられることがあった。この場合に適切な播種深さは3cm~5cmである。
【0004】
そこでこの様な事態を防止するために耕うん同時畝立て播種機を牽引するトラクタの座席でトラクタを直進運転させながら後方の形成される畝の形状ならびに播種機の高さや姿勢を監視する作業を行う場合には、危険でもあり、困難なだけでなく、機械作業後に手作業によって種子の追い播きや畝表面に露出した種子への覆土が必要となり、これが耕うん同時畝立て播種作業の生産性を大きく悪化させる原因ともなっていた。また播種深さを予め設定した3cm~5cmに維持するためには、播種作業中は調整時点の畝高さを持続させることが必要であり、そのためにはロータリの耕うん深さが一定になるよう監視しロータリの上げ下げを繰り返さなければならず、極めて困難であった。
【0005】
ロータリの耕うん深さを一定に保つ自動耕深制御の機構は各メーカのトラクタに標準装備されている現状であり、例えば特許文献1に示されている。これは主に水稲作における粗耕起や代掻き作業、畑作における播種前の耕起整地作業等に利用されており、ロータリ後部の均平板の上下動をトラクタに伝えることで自動耕深制御を実現している。一方、耕うん同時畝立て播種においてはロータリで畝を立てる即ち均平版を跳ね上げて作業することが必要であるため、そもそも均平版の上下動をトラクタに伝えることが前提として無く、したがってロータリにその機構が装備されていないもしくはその機構を機能させないよう取り外して運用する。現状において均平版を跳ね上げた状態で耕うん深さを一定にする対策としては、ロータリにゲージ輪や尾輪を装着し接地させ、ロータリの高さを地面に追従させる方法がとられている。しかし、土の状態や耕起条件によってゲージ輪や尾輪の地面への食い込み沈下量は安定せず、都度手作業で調整する必要があり、作業性の悪いものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2020?191842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上の従来技術における問題に鑑み、シンプルな構成で耕うん同時畝立て播種に好適に適用され、特に播種深さを精密に制御して常に適正に保つことができる耕うん同時畝立て播種機及び耕うん同時畝立て播種方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明の耕うん同時畝立て播種機はトラクタにロータリ耕耘装置が昇降自在に装着され、このロータリ耕耘装置に複数の播種機が装着され、前記播種機に回動自在に枢支された平行リンクの後端には揺動フレームが枢結されると共に、前記平行リンクの対角線上には付勢バネが介装され、下方に回動するように付勢された前記揺動フレームに付設された作溝ディスクと覆土ディスクと鎮圧輪が、畝表面の凹凸に従って、平行リンクが下方に付勢された状態で回動しながら上下動する耕うん同時畝立て播種機において、前記平行リンクの対角ピン間を繋ぐワイヤを設け、前記ワイヤを前記トラクタの昇降駆動ユニットによる3点リンク機構の昇降駆動を操作する操作機構に連結したことを特徴とする。
【0009】
前記操作機構は前記トラクタの昇降駆動ユニットに駆動連結されるオートワイヤを操作子に締結してなり、前記操作子に前記平行リンクの対角のピン間を繋ぐワイヤーが締結される。
【0010】
本発明の耕うん同時畝立て播種方法は、本発明の耕うん同時畝立て播種機を用いて行う耕うん同時畝立て播種方法であって、アップカットロータリを用い、土壌を下から上に耕うんする工程を含むことを特徴とする。
【0011】
前記アップカットロータリの耕うん爪軸をホルダー型とし、耕うん爪の配列を変更することで平高畝または単条畝を成形する請求項==記載の耕うん同時畝立て播種方法。
【0012】
平高畝を成形し、1畝あたり複数条の播種機を配置することで、大豆の狭畦栽培を行うようにできる。
【0013】
単条畝を成形し、1畝あたり1条の播種機を配置することで、畦幅を70~75cmとした大豆の普通栽培を行うようにできる。
【0014】
播種深さを予め設定された3cm~5cmに維持することができる。播種深さが3cm未満では土壌が乾燥しやすく発芽率が低下するという問題があり、一方播種深さが5cmを越えると、降雨後など地下水位が高い場合には畝立ての利点が活かせず、湿害による発芽不良や生育不良が発生しやすくなるという問題がある。
【発明の効果】
【0015】
本発明の耕うん同時畝立て播種機及び耕うん同時畝立て播種方法によればシンプルな構成で耕うん同時畝立て播種に好適に適用され、特に播種深さを精密に制御して常に適正に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第一の実施の形態の耕うん同時畝立て播種機の斜視図である。
図2図1に示す耕うん同時畝立て播種機の側面図である。
図3図1に示す耕うん同時畝立て播種機の部分側面図である。
図4図1に示す耕うん同時畝立て播種機の他の部分側面図である。
図5図1に示す耕うん同時畝立て播種機の別の部分側面図である。
図6図1に示す耕うん同時畝立て播種機のさらに別の部分側面図である。
図7図1に示す耕うん同時畝立て播種機のまた別の部分側面図である。
図8図1に示す耕うん同時畝立て播種機の部分斜視図である。
図9図1に示す耕うん同時畝立て播種機のまた別の部分斜視図である。
図10】本発明の第二の実施の形態の耕うん同時畝立て播種機の側面図である。
図11】本発明の耕うん同時畝立て播種方法の一実施の形態の説明図である。
図12】本発明の耕うん同時畝立て播種方法の一実施の形態の他の説明図である。
図13】本発明の耕うん同時畝立て播種方法の一実施の形態の別の説明図である。
図14】本発明の耕うん同時畝立て播種方法の一実施の形態のまた別の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の第一の実施の形態を説明する。
トラクタ1の後部に本発明の第一の実施の形態に係わる耕うん同時畝立て播種機3を装着した場合の全体構成について、図1乃至図3により説明する。
トラクタ1の後部の作業機装着装置にはロータリ耕耘装置2が昇降自在に装着され、このロータリ耕耘装置2の後部に、畝立て成形機4が装着され、さらにその後部に複数の1条2台構成の播種機5から成る耕うん同時畝立て播種機3が装着されている。なお実施の形態によっては後述するように畝立て成形機4を設けずロータリ耕耘装置2に複数の播種機5を直結するようにすることもできる。
【0018】
図1図2に示すように、このうちのロータリ耕耘装置2には、左右中央にギアボックス6が配置され、このギアボックス6より前方に入力軸が突出される。この入力軸は、ユニバーサルジョイント7やドライブ軸等を介してトラクタ1のPTO軸と連結され、トラクタ1からの動力をギアボックス6内に伝達するようにしている。このギアボックス6の側面より両側方にはビーム8・8が突出され、このビーム8・8のそれぞれの中途部には本体プレート9がUボルト29・29によって固定される。この本体プレート9の左右略中央部の前端からは左右の支持杆11・11が前方に突設されており、この支持杆11・11は、それぞれ左右のピン12・12によってトラクタ1のロアリンク10・10に連結されている。更に、この支持杆11・11近傍の本体プレート9前部からは正面視門型状のマスト13が立設され、このマスト13上部の連結杆13aの左右略中央部には左右の取付プレート14・14が固設されている。この取付プレート14・14の前端間には、トラクタ1のトップリンク16がピン15によって連結されている。このようなトップリンク16、マスト13、ロアリンク10・10を介することにより、ロータリ耕耘装置2をトラクタ1の後部に確実に連結支持した上で牽引できるようにされている。
【0019】
ビーム8・8の外側端には、チェーンケース17上部とサイドサポート18の上部が固設され、これらチェーンケース17下部とサイドサポート18下部の間に耕うん爪軸19が横架され、この耕うん爪軸19上にナタ爪よりなる多数の耕うん爪20・20・・・が側面視で放射状に植設されている。この耕うん爪20の回転軌跡21の上方は、ゴム等の軟質材から成る耕耘カバー22によって覆われ、この耕耘カバー22は本体プレート9の後端より垂設されて耕土が飛散しないようにしている。これにより、耕うん爪軸19は、入力軸よりギアボックス6内のギア、ビーム8内の伝動軸、チェーンケース17内のスプロケット、チェーンを介して回転駆動され、耕うん爪20・20・・・が回転して耕耘できるようにしている。
【0020】
図1に示すように、ビーム8・8を挟んで、支持杆11・11と反対側の本体プレート9後部には左右の連結杆23・23が固設され、この連結杆23・23の後部23a・23aには第1ツールバー24が左右方向に延設されており、この第1ツールバー24の後面には固定板26が配設されている。そして、この固定板26を、上下のボルト27・27によって後面から連結杆23・23の後部23a・23a側に締め付けることにより、第1ツールバー24を連結杆23・23に固定するようにしている。
【0021】
畝立て成形機4は、第1ツールバー24に係止具30がボルト31によって左右摺動では、この第1ツールバー24の左右端と左右略中央の3箇所に3個の畝立器28が装着されている。この畝立器28で可能に固定され、この係止具30の後面には縦パイプ33が固設され、この縦パイプ33には、吊杆34が側面のボルト32・32によって上下摺動可能に挿着されている。この吊杆34の下端には畝立てを行う畝立板35が固着され、この畝立板35では、尖端板35aと、この尖端板35a後部に平面視でハ字状に後方に拡がる両側板35b・35bとから成り、この両側板35b・35bの後下部は下すぼまりに傾斜して支持フレーム36によって連結されている。これにより、この支持フレーム36によって剛性を高めた畝立板35を上下左右にスライドさせ、第1ツールバー24に対する左右位置と高さとを自由に変更することができ、形成する畝の幅・高さ・形状に適した位置に畝立板35を配置できるようにしている。
【0022】
これら3個の畝立器28の間には均平板37が介設されている。この均平板37の前縁は耕耘カバー22の後縁に蝶番などで連結されると共に、均平板37の平面視略中央部には吊杆41の下端が固定されている。そして、この吊杆41の上部は、ボルト42・42によって縦パイプ40に上下摺動可能に挿着され、この縦パイプ40は、第1ツールバー24にボルト39によって左右摺動可能に固定された係止具38の後面に固設されている。これにより、均平板37についても、畝立器28と同様に、上下左右にスライドさせ、第1ツールバー24に対する左右位置と高さとを自由に変更することができ、畝形成に適した状態に地面を均せるようにしている。
【0023】
図1図2図3に示すように、播種機5は、第1ツールバー24に連結された第2ツールバー25に装着されている。この第2ツールバー25は左右方向に延設されており、播種機5では、前上部の嵌合体45が第2ツールバー25に外嵌され、フックネジ46によって左右位置調節可能に固定されると共に、この嵌合体45からは播種フレーム47が垂設されている。この播種フレーム47の下部には平行リンク48・49の前部が回動自在に枢支され、この平行リンク48・49の後端には揺動フレーム50が枢結されると共に、平行リンク48・49の対角線上には付勢バネ51が介装され、揺動フレーム50は、常に下方に回動するように付勢されている。
【0024】
この揺動フレーム50の前面より下方には、作溝器である作溝ディスク52の支持杆53が突出され、この支持杆53の下端に作溝ディスク52の回転軸54が軸支されている。この作溝ディスク52は、前方が閉じた平面視V字状の2枚ディスクから構成されると共に、作溝ディスク52の外側には、支持杆53より後斜め下方に突出した掻き落とし板55が配設され、この掻き落とし板55によって、付着した土等を除去するようにしている。そして、作溝ディスク52後部の空間内には、播種ガイドパイプ56の先部が挿入され、作溝ディスク52間に播種できるようにしている。
【0025】
揺動フレーム50からは、作溝ディスク52後方で種子落下位置の後方に、覆土体である覆土ディスク57が突設支持されており、この覆土ディスク57によって種子が軽く覆土されるようにしている。更に、揺動フレーム50の後端からは支持杆58が後方に突出され、この支持杆58の後端に鎮圧輪59が軸支されており、この鎮圧輪59によって、覆土後の種子が鎮圧される。本実施例では、鎮圧輪59は駆動輪としても機能する構成となっており、この鎮圧輪59の回動軸は側方へ突出してチェーンケース60内に挿入され、このチェーンケース60内のスプロケット及びチェーンを介して、揺動フレーム50に横架した播種装置61の入力軸62が駆動されるようにしている。なお、鎮圧輪59の側部にはラグ59a・59a・・・が突設されており、畝44の上面に対して滑らないようにすると共に、スクレーパ63を付設して付着土を除去し、作業効率の向上を図るようにしている。
【0026】
また、この播種装置61は種子ホッパ83を有し、この種子ホッパ83の直下には目皿タイプの繰出装置84が配設されている。この繰出装置84では、繰出ケース85内に形成された収納部86に円盤状の繰出回転体87が収納され、この繰出回転体87の中央には回転軸88の上端が装着されている。この回転軸88の下端にはベベルギア89が固設され、このベベルギア89は入力軸62に固設されたベベルギア90と噛合されており、鎮圧輪59から入力軸62に入力された動力が、ベベルギア89・90、回転軸88を介して繰出回転体87に伝達され、この繰出回転体87が回転駆動される。
【0027】
繰出回転体87には複数の図示せぬ搬送孔が穿孔されており、種子ホッパ83から流下してきた多数の種子91の一部は、回転する繰出回転体87の搬送孔内に入ると、収納部86に形成された繰出口86aまで搬送され、この繰出口86aに連通された播種ガイドパイプ56を通って、作溝ディスク52間に播種されるようにしている。
【0028】
以上の播種装置61によれば揺動フレーム50に付設された作溝ディスク52、覆土ディスク57、鎮圧輪59は、畝表面の凹凸に従って、平行リンク48・49が下方に付勢された状態で回動しながら上下動するので、播種作業においてトラクタ1の機体が上下動等しても、各々の条毎に、しかも畝表面に対して、略水平を保ちながら上下するため、播種深さを均一に保ち、しかも、播種装置61の繰出装置の駆動も確実に確保することができるとされている。
【0029】
図4は平行リンク48・49が下がった状態を示し耕深が浅く低い畝になった時はこの状態になる。
また図5は平行リンク48・49が上がった状態を示し耕深が深く高い畝になった時はこの状態になる。すなわち播種機5は畝44に対し鎮圧輪59で乗っかっている(播種機5の自重を支えている)状態で、平行リンク48・49より後方の部分が畝44の高さに追従して上下する。種子は作溝ディスク52で開けられた溝に落ちる。作溝ディスク52は平行リンク48・49によって鎮圧輪59と一体的に上下するので、畝44に対し一定の深さで刺さり、種子の落ちる深さを適切に保つ。
しかし実際の播種作業においては、平行リンク48・49が追従できる範囲を超える畝44高さの変動が生じる。
【0030】
その原因としては、作業開始時に機械を適切に調整しても、圃場の柔らかさとか土の深さのばらつきによってトラクタ1本体やロータリ耕耘装置2が沈み込んだり、浮き上がったりしてロータリ耕耘装置2の耕深が変動し、ロータリ耕耘装置2の耕うん爪20・20・・・で耕うんされる土の量に過不足が生じる点を挙げることができる。
【0031】
特に圃場の柔らかい地点で調整した機械では、硬い地点にさしかかると、機械の沈み込みが減少し、ロータリ耕耘装置2の耕うん爪20・20・・・によって耕うんされる土の量が不足し畝立器28および均平板37で形成される畝は、平行リンク48・49の下限よりも低い畝44になる事態が発生する。
こうなると、鎮圧輪59が空中に浮いてしまい、鎮圧輪59の回転に連動した種子の繰出装置が動作せず、種子を出さずに空走する事態となる。
一方、この様な事態の発生を防止するために播種機5を監視しながらトラクタ1を操縦する作業を行うことはオペレータの重い負担となる。
【0032】
これを防止するために本発明の実施の形態の耕うん同時畝立て播種機3によれば、耕うん同時畝立て播種機3の平行リンク48・49の作動位置をトラクタ1の自動耕深システムに連動することで、確実な播種を可能にした。
具体的には図3に示すように本発明の実施の形態の耕うん同時畝立て播種機3では平行リンク48・49の対角のピン101a、101b間を繋ぐ一体なインナーケーブルとアウターケーブルとからなるワイヤー102を設けた。
図6に示すように平行リンク48・49が下がった状態で、対角のピン101a、101b間を繋ぐインナーケーブルの長さ、すなわちピン101a、101b間の間隔は175mmと短くなっている。
図7に示すように平行リンク48・49が上がった状態では、対角のピン101a、101b間をつなぐインナーケーブルの長さ、すなわちピン101a、101b間の間隔は200mmとなる。これはインナーケーブルが25mm引き戻され、ピン101a、101b間の間隔が長くなったことを示し、その分、トラクタ1のオートワイヤを引っぱることとなる。
【0033】
一方、トラクタ1は昇降駆動ユニット(図示せず)を備え、この昇降駆動ユニットによって3点リンク機構(図示せず)を昇降駆動可能にされており、この3点リンク機構の昇降駆動に応じて、3点リンク機構に取り付けられたロータリ耕耘装置2が昇降する。
図8図9は、3点リンク機構に組み付けられるオートヒッチフレーム103を示し、このオートヒッチフレーム103には昇降駆動ユニットによる3点リンク機構の昇降駆動を操作する操作機構104が取り付けられる。
この操作機構104は昇降駆動ユニットに駆動連結されるオートワイヤ105を操作子106に締結してなり、操作子106は軸部106aを軸心として回動可能にされている。
【0034】
またこの操作子106には平行リンク48・49の対角のピン101a、101b間を繋ぐ一体なインナーケーブルとアウターケーブルとからなるワイヤー102の一端が締結される。
本発明の実施の形態の耕うん同時畝立て播種機3では以上のように構成した結果、図6に示すように平行リンク48・49が下がった状態で、対角のピン101a、101b間を繋ぐインナーケーブルの長さ、すなわちピン101a、101b間の間隔は175mmと短くなっている状態では操作子106を介してオートワイヤ105が引き戻され、トラクタ1が備える昇降駆動ユニットによって駆動される3点リンク機構に応じて、3点リンク機構に取り付けられたロータリ耕耘装置2は下降する。
ロータリ耕耘装置2が下降する結果、ロータリ耕耘装置2に畝立て成形機4を介して装着された播種機5は下降することで畝上面により鎮圧輪が押し上げられて平行リンクが上昇に転じ、対角のピン101a、101b間を繋ぐインナーケーブルの長さは長くなっていき、その分、トラクタ1のオートワイヤ105を引っぱり予め設定された耕耘深さに達すると自動耕深制御によりロータリ耕耘装置2の下降は停止する。
【0035】
一方、図7に示すように平行リンク48・49が上がった状態では、対角のピン101a、101b間をつなぐインナーケーブルの長さ、すなわちピン101a、101b間の間隔が長くなった状態では、その分、トラクタ1のオートワイヤ105を引っぱることになり、トラクタ1が備える昇降駆動ユニットによって駆動される3点リンク機構に応じて、3点リンク機構に取り付けられたロータリ耕耘装置2は上昇する。
ロータリ耕耘装置2が上昇する結果、ロータリ耕耘装置2に畝立て成形機4を介して装着された播種機5は上昇することで付勢バネ51により鎮圧輪が押し下げられて平行リンクが下降に転じ、対角のピン101a、101b間を繋ぐインナーケーブルの長さは短くなっていき、その分、トラクタ1のオートワイヤ105は引き戻され予め設定された耕耘深さに達すると自動耕深制御によりロータリ耕耘装置2の上昇は停止する。
また以上のロータリ耕耘装置2の下降、上昇の程度はトラクタ1の備える昇降駆動ユニットの既存の調整ダイヤルで微調整することができる。
【0036】
次に、本発明の第二の実施の形態に係わる耕うん同時畝立て播種機3につき説明する。
図10に示すようにこの第二の実施の形態に係わる耕うん同時畝立て播種機3は畝立て成形機4を備えず、ロータリ耕耘装置2に播種機5が直接装着される。この第二の実施の形態でも、第一の実施の形態と同様に播種機5の平行リンク48・49の対角のピン101a、101b間を繋ぐ一体なインナーケーブルとアウターケーブルとからなるワイヤー102が設けられる。
このワイヤー102の一端は第一の実施の形態と同様にトラクタ1の昇降駆動ユニットに駆動連結されるオートワイヤ105が締結される操作子106に締結される。
また第二の実施の形態に係わる耕うん同時畝立て播種機3にあっては、ロータリ耕耘装置2はアップカットロータリ方式とされている。
図11に示すようにアップカットロータリ方式による耕うん同時畝立て播種は一般的なロータリによる耕うん作業が、土壌を上から下に耕うん(「ダウンカット」または 「正転」と称する)する方法で行われているのに対し(図11(a))、アップカットロータリは、土壌を下から上に耕うん(「アップカット」または「逆転」と称する)する作業機である(図11(b))。
【0037】
このアップカットロータリは、砕土性に優れるとともに、粗い土塊が下層に、細かい土塊が表層に分布する特長がある(図11(b))。
また第二の実施の形態に係わる耕うん同時畝立て播種機3では、このアップカットロータリの耕うん爪軸を従来のフランジ型(図12(b))から、砕土性に優れるホルダー型に改良(図12(a))している。耕うん爪20の配列を変更することで平高畝または単条畝を成形し、後方の施肥播種機で畝の高い位置に麦類・大豆等を播種することができる。
【0038】
この耕うん同時畝立て播種に適用される耕うん同時畝立て播種機3は、耕うん爪20の配列を変更することで、図13(a)(b)に示すように1台で平高畝と単条畝の両方を成形することができる。
平高畝を成形し、1畝あたり複数条の播種機を配置することで、大豆の狭畦栽培に適用できる。また、単条畝を成形し、1畝あたり1条の播種機を配置することで、畦幅を70~75cmとした大豆の普通栽培にも適用できる。この場合平高畝・単条畝とも、従来慣行の平面耕に比べ約5cm高い位置に作物を生育させることができる(図14)。
【0039】
また耕うん同時畝立て播種は、アップカットロータリによる耕うんと、耕うん爪軸後方のスクリーンによって、高い砕土率が得られ、砕土率は、特に表層付近で高い特長がある(図11右)。これによって大豆の種子近傍の土塊が細かく、作物の出芽に好適な条件となり、苗立率が高まる。
【0040】
また第二の実施の形態に係わる耕うん同時畝立て播種機3では、砕土性に優れるアップカットロータリを用いることで、通常のダウンカットロータリでは作業ができないような過湿な圃場条件でも播種作業が可能で、このため、大豆の播種時期に降雨があっても、降雨後に比較的速やかに作業を開始することができ、計画的な播種作業が可能である。
【0041】
加えて第二の実施の形態に係わる耕うん同時畝立て播種機3では耕うん同時畝立て播種によって、作物を高い位置に生育させるとともに、畝間での表面排水が可能であり、作物を高い位置に生育させることで、出芽や初期生育が優れる。また、生育期間中の土壌水分を低く保つことができ、出芽後の生育も優れる特長があり、また、畝間への表面排水により、降雨時の播種条での湛水を抑えることができる。これらの効果により、耕うん同時畝立て播種では湿害が軽減され、作物の苗立率が高まるとともに、生育が優れ、多収となる。
【0042】
さらに加えて第二の実施の形態に係わる耕うん同時畝立て播種機3では耕うん同時畝立て播種を行うことによって、未耕起圃場に1工程で播種しても、高い砕土と前作残渣等のすき込み性が得られるという特徴が有る。播種時間のみを比較する場合、アップカットロー タリを用いて行う耕うん同時畝立て播種は、播種前に耕起整地作業を行いダウンカットロータリを用いる従来の畝立て播種よりも長時間を要する。しかし、アップカットロータリを用いて行う耕うん同時畝立て播種は播種前の耕起整地作業を省略できるため、耕起から播種の一連の作業に要する時間は、従来の畝立て播種よりも短くなる。
一方、耕うん同時畝立て播種において播種前の耕起整地作業を省略した場合には、未整地であるがゆえに播種前に耕起整地作業を行った場合と比較し、畝高さを安定させるには耕うん深さの細かな調整が必要で、その点でオペレータの熟練度が必要となる。
特に圃場の柔らかい地点で調整した機械では、硬い地点にさしかかると、機械の沈み込みが減少し、ロータリ耕耘装置2の耕うん爪20・20・・・が土を十分にかき寄せず低い畝となり、平行リンク48・49の下限よりも低い畝44になる事態が発生する。
こうなると、鎮圧輪59が空中に浮いてしまい、鎮圧輪59の回転に連動した種子の繰出装置が動作せず、種子を出さずに空走する事態となる。
また耕深が深すぎると、畝立ての土の量が過大となるため畝幅が広くなり、畝間の谷部分まで土で埋まり、排水性が悪化すると共に播種機も下方向に押し付けられた低い位置で牽引されることとなり、湿害の原因となる。
しかし第二の実施の形態に係わる耕うん同時畝立て播種機3では播種機5の平行リンク48・49の対角のピン101a、101b間を繋ぐ一体なインナーケーブルとアウターケーブルとからなるワイヤー102が設けられ、このワイヤー102の一端はトラクタ1の昇降駆動ユニットに駆動連結されるオートワイヤ105が締結される操作子106に締結される結果、以下のような機構でオペレータの熟練度を補うことができる。
図6に示すように平行リンク48・49が下がった状態で、対角のピン101a、101b間を繋ぐインナーケーブルの長さ、すなわちピン101a、101b間の間隔は175mmと短くなっている状態では操作子106を介してオートワイヤ105が引き戻され、トラクタ1が備える昇降駆動ユニットによって駆動される3点リンク機構に応じて、3点リンク機構に取り付けられたロータリ耕耘装置2が下降する結果、ロータリ耕耘装置2に装着された播種機5は下降することで畝上面により鎮圧輪が押し上げられて平行リンクが上昇に転じ、対角のピン101a、101b間を繋ぐインナーケーブルの長さは長くなっていき、その分、トラクタ1のオートワイヤ105を引っぱり予め設定された耕耘深さに達すると自動耕深制御によりロータリ耕耘装置2の下降は停止する。
【0043】
一方、図7に示すように平行リンク48・49が上がった状態では、対角のピン101a、101b間をつなぐインナーケーブルの長さ、すなわちピン101a、101b間の間隔が長くなった状態では、その分、トラクタ1のオートワイヤ105を引っぱることになり、トラクタ1が備える昇降駆動ユニットによって駆動される3点リンク機構に応じて、3点リンク機構に取り付けられたロータリ耕耘装置2が上昇する結果、ロータリ耕耘装置2に装着された播種機5は上昇することで付勢バネ51により鎮圧輪が押し下げられて平行リンクが下降に転じ、対角のピン101a、101b間を繋ぐインナーケーブルの長さは短くなっていき、その分、トラクタ1のオートワイヤ105は引き戻され予め設定された耕耘深さに達すると自動耕深制御によりロータリ耕耘装置2の上昇は停止する。以上のロータリ耕耘装置2の下降、上昇の程度はトラクタ1の備える昇降駆動ユニットの既存の調整ダイヤルで微調整することができる。
【0044】
以上のように第二の実施の形態に係わる耕うん同時畝立て播種機3によれば圃場条件が変化しても畝立て高さを自動的に一定に保つことを可能とし、播種深さを予め設定された3cm~5cmに維持することを可能とする結果、作物の発芽を確実にすることができる。
【0045】
以下に以上の第二の実施の形態の耕うん同時畝立て播種機3を用いて行う本発明の耕うん同時畝立て播種方法について説明する。
第二の実施の形態に係わる耕うん同時畝立て播種機3を用い平高畝を成形し、1畝あたり複数条の播種機を配置することで、大豆の狭畦栽培を行う。又は単条畝を成形し、1畝あたり1条の播種機を配置することで、畦幅を70~75cmとした大豆の普通栽培を行う。
この場合に播種深さは3cm~5cmに予め設定し、第二の実施の形態に係わる耕うん同時畝立て播種機3を用いることによって、その設定播種深さを維持して大豆の狭畦栽培若しくは普通栽培を行う。




【符号の説明】
【0046】
3・・・播種機、48・49・・・平行リンク、101a、101b・・・ピン、102・・・ワイヤー、1・・・トラクタ、2・・・ロータリ耕耘装置、103・・・オートヒッチフレーム、104・・・操作機構、105・・・オートワイヤ、106・・・操作子。
【要約】
【課題】簡単な構成で耕うん同時畝立て播種に好適に適用され、特に畝立ての高さと播種深さを予め設定された範囲に維持して常に適正に保つことができる耕うん同時畝立て播種機及び耕うん同時畝立て播種方法を提供する。
【解決手段】 トラクタにロータリ耕耘装置が昇降自在に装着され、このロータリ耕耘装置に、複数の播種機が装着され、前記播種機に回動自在に枢支された平行リンクの後端には揺動フレームが枢結されると共に、前記平行リンクの対角線上には付勢バネが介装され、下方に回動するように付勢された前記揺動フレームに付設された作溝ディスクと覆土ディスクと鎮圧輪が、畝表面の凹凸に従って、平行リンクが下方に付勢された状態で回動しながら上下動する耕うん同時畝立て播種機において、前記平行リンクの対角ピン間を繋ぐワイヤを設け、前記ワイヤを前記トラクタの昇降駆動ユニットによる3点リンク機構の昇降駆動を操作する操作機構に連結した。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14