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特許7474015故障診断機能付き列車検知装置および故障部位判別方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】故障診断機能付き列車検知装置および故障部位判別方法
(51)【国際特許分類】
   B61L 1/18 20060101AFI20240417BHJP
【FI】
B61L1/18 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020186536
(22)【出願日】2020-11-09
(65)【公開番号】P2022076220
(43)【公開日】2022-05-19
【審査請求日】2023-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000207470
【氏名又は名称】大同信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】松脇 康之
【審査官】冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-175548(JP,A)
【文献】特開2000-315969(JP,A)
【文献】特開2010-274832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車検知信号は通過させるがパルス信号は反射するインピーダンス整合部材を介して一端がレール部の一端に接続され他端が列車検知信号の送信機および受信機のうち何れか一方に接続される列車検知信号伝送ケーブルと、該ケーブルに接続されてパルス信号を送出するとともにその反射信号を測定する時間領域反射率測定部と、その測定結果に基づいて前記列車検知信号伝送ケーブルに係る不具合の有無および部位を判別する診断部とを具備していることを特徴とする故障診断機能付き列車検知装置。
【請求項2】
前記列車検知信号の送信が間欠的に行われるようになっており、前記時間領域反射率測定部が前記列車検知信号の検出を行って該信号の無い時間帯に限って前記パルス信号の送出を行うようになっている、ことを特徴とする請求項1記載の故障診断機能付き列車検知装置。
【請求項3】
前記送信部が前記列車検知信号の送信を間欠的に行うとともに該送信のタイミングを前記時間領域反射率測定部に通知するようになっており、前記時間領域反射率測定部が前記通知に応じて前記パルス信号の送出とその反射信号の測定とを行うようになっている、ことを特徴とする請求項1記載の故障診断機能付き列車検知装置。
【請求項4】
前記列車検知信号が途絶えたことを検出する列車検知信号途絶検出手段が設けられており、その検出に応じて前記時間領域反射率測定部が前記パルス信号の送出とその反射信号の測定とを行うようになっている、ことを特徴とする請求項1記載の故障診断機能付き列車検知装置。
【請求項5】
前記列車検知信号から前記反射信号を弁別する信号弁別手段が設けられており、その弁別にて得られた信号を用いて前記時間領域反射率測定部が反射信号測定を行うようになっている、ことを特徴とする請求項1記載の故障診断機能付き列車検知装置。
【請求項6】
列車検知信号は通過させるがパルス信号は反射するインピーダンス整合部材を介して一端がレール部の一端に接続された列車検知信号送信ケーブルを介して列車検知信号を前記レール部に送信する送信部と、前記列車検知信号は通過させるがパルス信号は反射するインピーダンス整合部材を介して前記レール部の他端に接続された列車検知信号受信ケーブルを介して前記列車検知信号を前記レール部から受信する受信部と、前記列車検知信号送信ケーブルに接続されてパルス信号を送出するとともにその反射信号を測定する送信側時間領域反射率測定部と、その測定結果に基づいて前記列車検知信号送信ケーブルに係る不具合の有無および部位を判別する送信側診断部と、前記列車検知信号受信ケーブルに接続されてパルス信号を送出するとともにその反射信号を測定する受信側時間領域反射率測定部と、その測定結果に基づいて前記列車検知信号受信ケーブルに係る不具合の有無および部位を判別する受信側診断部とを備えている故障診断機能付き列車検知装置。
【請求項7】
前記列車検知信号の送信が間欠的に行われるようになっており、前記送信側時間領域反射率測定部も前記受信側時間領域反射率測定部も前記列車検知信号の無い時間帯にパルス信号送出と反射信号測定とを行うようになっている、ことを特徴とする請求項6記載の故障診断機能付き列車検知装置。
【請求項8】
前記列車検知信号が途絶えたことを検出する列車検知信号途絶検出手段が設けられており、その検出に応じて前記送信側時間領域反射率測定部も前記受信側時間領域反射率測定部も前記列車検知信号の無い時間帯にパルス信号送出と反射信号測定とを行うようになっている、ことを特徴とする請求項6記載の故障診断機能付き列車検知装置。
【請求項9】
前記列車検知信号から前記反射信号を弁別する信号弁別手段が設けられており、その弁別にて得られた信号を用いて前記送信側時間領域反射率測定部も前記受信側時間領域反射率測定部も反射信号測定を行うようになっている、ことを特徴とする請求項6記載の故障診断機能付き列車検知装置。
【請求項10】
前記時間領域反射率測定部による測定結果と前記診断部による判別結果とを含む情報を収集して時系列データに蓄積するデータ蓄積手段を具備している、ことを特徴とする請求項1乃至9のうち何れか一項に記載された故障診断機能付き列車検知装置。
【請求項11】
請求項6乃至10のうち何れか一項に記載された故障診断機能付き列車検知装置を装備した軌道回路について前記列車検知装置の判別結果を利用して不具合の発生部位を探す故障部位判別方法であって、列車検知機能に係る不具合の発生部位を探すときに、前記列車検知信号送信ケーブルに不具合が無いと前記送信側診断部が判定しており且つ前記列車検知信号受信ケーブルに不具合が無いと前記受信側診断部が判定している場合は、前記列車検知信号送信ケーブルの調査と前記列車検知信号受信ケーブルの調査とに先だって前記レール部の調査を行う、ことを特徴とする故障部位判別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、軌道回路を用いて列車在線の有無を検出する列車検知装置に関し、詳しくは、軌道回路に係る通電の良否を診断する故障診断機能付き列車検知装置に関する。
故障診断機能付き列車検知装置を利用して行う故障部位判別方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
軌道回路は(例えば非特許文献1参照)、二本のレールが列車の車輪と車軸とで電気的に短絡することを利用して送電端(一端,始端)から送電した電力が受電端(他端,終端)に届くか否かに応じて列車の在線/非在線を検出する列車検知機能を発揮するものであるが、その機能だけでなく、次のレール破断検知機能も発揮することができる。
すなわち、列車の走行等による大きな外力を受けた軌道に亀裂・破断・折損といったレール破断障害が発生したときも、そこの通電状態が悪化して、列車非在線状態であっても受電側の電圧や電流が低下したり更には途絶するといった状況に至るため、受電信号からレール破断状態の情報を得るというレール破断検知機能も発揮することができる。
【0003】
また、そのような通電悪化時にレール破断箇所などの故障部位を探索する手段として、軌道回路の並走レールの双方について交流電流を測定する人力走行式の軌道回路電流測定装置や(例えば特許文献2参照)、自走式の検測車が(例えば特許文献5段落0008参照)、使用されている。
更に、軌道回路の送電端と受電端とから電圧値と電流値とを継続的に測定して、その蓄積データから所定の特性値を算出して、その算出値に基づく場合分けによって送信ケーブルとレールと受信ケーブルとについて短絡と断線を判別するようになったものがある(例えば特許文献4参照)。
【0004】
更に、列車検知信号の送出を時分割で間欠的に行うようになったものもある(例えば特許文献1参照)。
更に、レール腹部などに光ファイバセンサを貼り付けることで鉄道用レールに沿って光ファイバセンサを布設し、この光ファイバセンサからの歪み情報に基づいて軌道の歪ひいては列車停止位置を検出するようになったシステムもある(例えば特許文献3参照)。このシステムでは、光ファイバに適した歪み測定・変位測定の手法として、BOTDR(Brillouin Optical Time Domain Reflectmetory)などが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-265626号公報
【文献】特開2010-234875号公報
【文献】特開2010-195246号公報
【文献】特開2011-207449号公報
【文献】特開2020-152172号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】鉄道技術者のための信号概論「軌道回路」 社団法人「日本鉄道電気技術協会」出版、平成17年5月20日 改訂版2刷発行、p.3~5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような時間領域反射(TDR,Time Domain Reflectmetory)を利用した反射率測定法は、適用対象が光ファイバに限られる訳でなく、メタル配線などを対象とした断線位置検出等に用いることもできる。
そこで、時間領域反射率測定を軌道回路に対して直に適用すれば、レールに光ファイバを付設しなくて済むため、低廉なコストで、レール破断やケーブル断線といった故障の有無に加えて故障の部位までも検出することができそうに思える。
【0008】
しかしながら、線路に敷設されているレールの大半は鉄製であるうえ長いことから、電気抵抗が大きくなりがちなので、時間領域反射率測定を直にレールへ適用するには大出力の装置が必要になるため、却ってコストが嵩みかねない。
また、軌道回路の重要部であるレールに係る破断位置の検出については、既述したような人力走行式や自走式の検測車を使用するといったことで、リアルタイム性には欠けるが、コストを抑えつつ所望の検出を行うことができる。
【0009】
これに対し、軌道回路のうち送信ケーブルや受信ケーブルといった列車検知信号伝送ケーブルに係る断線位置の検出については、レールと逆の特質が見られる。すなわち、それらの伝送ケーブルは、銅線などの良導体が多用されるので、導電性には優れるが、細く柔らかので、検測車の使用には適していない。そのため、伝送ケーブルに断線等の不具合が発生したことが判明したときには、しばしば伝送ケーブルを丸ごと取り替えるといった対処が行われるので、障害復旧作業の負担が大きい。
そこで、軌道回路に係る通電の良否を診断する故障診断機能付き列車検知装置について軌道回路を障害から容易に復旧させられるように改良することが技術的な課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の故障診断機能付き列車検知装置は(解決手段1)、このような課題を解決するために創案されたものであり、
列車検知信号は通過させるがパルス信号は反射するインピーダンス整合部材を介して一端がレール部の一端に接続され他端が列車検知信号の送信機および受信機のうち何れか一方に接続される列車検知信号伝送ケーブルと、該ケーブルに接続されてパルス信号を送出するとともにその反射信号を測定する時間領域反射率測定部と、その測定結果に基づいて前記列車検知信号伝送ケーブルに係る不具合の有無および部位を判別する診断部とを具備している。
【0011】
また、本発明の故障診断機能付き列車検知装置は(解決手段2)、上記解決手段1の故障診断機能付き列車検知装置であって、
前記列車検知信号の送信が間欠的に行われるようになっており、前記時間領域反射率測定部が前記列車検知信号の検出を行って該信号の無い時間帯に限って前記パルス信号の送出を行うようになっている、ことを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明の故障診断機能付き列車検知装置は(解決手段3)、上記解決手段1の故障診断機能付き列車検知装置であって、
前記送信部が前記列車検知信号の送信を間欠的に行うとともに該送信のタイミングを前記時間領域反射率測定部に通知するようになっており、前記時間領域反射率測定部が前記通知に応じて前記パルス信号の送出とその反射信号の測定とを行うようになっている、ことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の故障診断機能付き列車検知装置は(解決手段4)、上記解決手段1の故障診断機能付き列車検知装置であって、
前記列車検知信号が途絶えたことを検出する列車検知信号途絶検出手段が設けられており、その検出に応じて前記時間領域反射率測定部が前記パルス信号の送出とその反射信号の測定とを行うようになっている、ことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の故障診断機能付き列車検知装置は(解決手段5)、上記解決手段1の故障診断機能付き列車検知装置であって、
前記列車検知信号から前記反射信号を弁別する信号弁別手段が設けられており、その弁別にて得られた信号を用いて前記時間領域反射率測定部が反射信号測定を行うようになっている、ことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の故障診断機能付き列車検知装置は(解決手段6)、上述した課題を高度に解決するために創案されたものであり、
列車検知信号は通過させるがパルス信号は反射するインピーダンス整合部材を介して一端がレール部の一端に接続された列車検知信号送信ケーブルを介して列車検知信号を前記レール部に送信する送信部と、前記列車検知信号は通過させるがパルス信号は反射するインピーダンス整合部材を介して前記レール部の他端に接続された列車検知信号受信ケーブルを介して前記列車検知信号を前記レール部から受信する受信部と、前記列車検知信号送信ケーブルに接続されてパルス信号を送出するとともにその反射信号を測定する送信側時間領域反射率測定部と、その測定結果に基づいて前記列車検知信号送信ケーブルに係る不具合の有無および部位を判別する送信側診断部と、前記列車検知信号受信ケーブルに接続されてパルス信号を送出するとともにその反射信号を測定する受信側時間領域反射率測定部と、その測定結果に基づいて前記列車検知信号受信ケーブルに係る不具合の有無および部位を判別する受信側診断部とを備えている。
【0016】
また、本発明の故障診断機能付き列車検知装置は(解決手段7)、上記解決手段6の故障診断機能付き列車検知装置であって、
前記列車検知信号の送信が間欠的に行われるようになっており、前記送信側時間領域反射率測定部も前記受信側時間領域反射率測定部も前記列車検知信号の無い時間帯にパルス信号送出と反射信号測定とを行うようになっている、ことを特徴とする。
【0017】
また、本発明の故障診断機能付き列車検知装置は(解決手段8)、上記解決手段6の故障診断機能付き列車検知装置であって、
前記列車検知信号が途絶えたことを検出する列車検知信号途絶検出手段が設けられており、その検出に応じて前記送信側時間領域反射率測定部も前記受信側時間領域反射率測定部も前記列車検知信号の無い時間帯にパルス信号送出と反射信号測定とを行うようになっている、ことを特徴とする。
【0018】
また、本発明の故障診断機能付き列車検知装置は(解決手段9)、上記解決手段6の故障診断機能付き列車検知装置であって、
前記列車検知信号から前記反射信号を弁別する信号弁別手段が設けられており、その弁別にて得られた信号を用いて前記送信側時間領域反射率測定部も前記受信側時間領域反射率測定部も反射信号測定を行うようになっている、ことを特徴とする。
【0019】
また、本発明の故障診断機能付き列車検知装置は(解決手段10)、上記解決手段1~9の故障診断機能付き列車検知装置であって、
前記時間領域反射率測定部による測定結果と前記診断部による判別結果とを含む情報を収集して時系列データに蓄積するデータ蓄積手段を具備している、ことを特徴とする。
【0020】
また、本発明の故障部位判別方法は(解決手段11)、上述した解決手段6~10のうち何れか一つに記載された故障診断機能付き列車検知装置を装備した軌道回路について前記列車検知装置の判別結果を利用して不具合の発生部位を探す故障部位判別方法であって、列車検知機能に係る不具合の発生部位を探すときに、前記列車検知信号送信ケーブルに不具合が無いと前記送信側診断部が判定しており且つ前記列車検知信号受信ケーブルに不具合が無いと前記受信側診断部が判定している場合は、前記列車検知信号送信ケーブルの調査と前記列車検知信号受信ケーブルの調査とに先だって前記レール部の調査を行う、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
このような本発明の故障診断機能付き列車検知装置にあっては(解決手段1)、レール部の両端に分かれて列車検知信号の送信部と受信部とが接続された軌道回路について、送信部は列車検知信号送信ケーブルを介してレール部へ列車検知信号を送出し、受信部は列車検知信号受信ケーブルを介してレール部から列車検知信号を受信し、その列車検知信号の送受信が適切に行われたか否かに応じて列車の在線・非在線を判別する列車検知装置の存在が前提になっており、その列車検知装置における列車検知信号送信ケーブルと列車検知信号受信ケーブルとの何れかに該当する列車検知信号伝送ケーブルに対して、時間領域反射率測定部がパルス信号を送出してその反射信号を測定し、その反射率の時間変化に基づいて診断部が列車検知信号伝送ケーブルに係る不具合の有無および部位を判別する。
【0022】
これにより、列車検知信号伝送ケーブルに係る断線等の不具合については不具合の有無ばかりか不具合の発生部位まで把握できることになる。しかも、列車検知信号伝送ケーブルを接続先から取り外すことなく不具合を把握することできる。更に、検測車などの移動機器を用いることなく簡便かつ迅速に不具合の発生位置まで確認することができる。
そのため、多くの場合に、列車検知信号伝送ケーブルのうち不具合発生部分だけ良品と交換して接続し直すといった簡便な修理などで迅速かつ適切に対処できるので、障害復旧作業の負担が軽減される。
したがって、この発明によれば軌道回路を障害から容易に復旧させることができる。
【0023】
さらに、本発明の故障診断機能付き列車検知装置にあっては(解決手段2,3,4)、列車検知信号の送信が間欠的に行われる軌道回路や、列車検知信号の送信が途絶えた軌道回路について、列車検知信号の無い時間帯にしか時間領域反射率測定用のパルス信号が送出されないようにしたことにより、列車検知信号もパルス信号も邪魔しあうことなく明瞭に伝送されるので、波形の異なる二種類の信号が同じケーブルで伝送されても、不所望な相互作用は生じない。しかも、時間帯の切り分けが、列車検知信号の検出や(解決手段2)、列車検知信号の送信タイミングの通知(解決手段3)、列車検知信号の途絶検出(解決手段4)に基づいて行われるので、簡素な構成の回路等で容易に具現化しうる。
したがって、この発明によれば、列車検知機能を阻害するなく故障診断機能を付加することが簡便にできる。
更に、列車検知信号の途絶検出に基づいて時間領域反射率測定を行う態様では(解決手段4)、送信機の故障といった特定状況下で集中的に故障診断が行われる。
【0024】
また、本発明の故障診断機能付き列車検知装置にあっては(解決手段5)、時間領域反射率測定用のパルス信号の反射信号を列車検知信号から弁別する信号弁別手段を設けたことにより、列車検知信号の送受信中も含めて随時、時間領域反射率測定を行うことができる。
したがって、この発明によれば、列車検知動作に制約を課すことなく故障診断機能を付加することができる。
【0025】
また、本発明の故障診断機能付き列車検知装置にあっては(解決手段6)、列車検知信号伝送ケーブルのうち列車検知信号の送信側に当たる列車検知信号送信ケーブルについては、送信側時間領域反射率測定部および送信側診断部によって、不具合の有無が判別され、不具合が有ればその部位まで検出される。また、列車検知信号伝送ケーブルのうち列車検知信号の受信側に当たる列車検知信号受信ケーブルについては、受信側時間領域反射率測定部および受信側診断部によって、不具合の有無が判別され、不具合が有ればその部位まで検出される。
【0026】
さらに(解決手段7,8)、送信側と受信側いずれの時間領域反射率測定も、列車検知信号の無い時間帯に限定して行われるので、不具合の有無も部位も的確に検出される。
あるいは(解決手段9)、送信側と受信側いずれの時間領域反射率測定も、パルス信号の反射信号を列車検知信号から弁別することで行われるので、列車検知動作に制約を課すことなく実施することができる。
また(解決手段10)、データ蓄積手段を具備していて時間領域反射率測定部や診断部による測定結果や判別結果を一定周期等で収集・蓄積して時系列データを作成保持することも行うものにあっては、定常的に又は適宜な時期にデータ解析等を行って列車検知信号伝送ケーブルの状態を監視することで、例えば、明白な故障に至るまでに時間を要するような不具合についても、状態基準保全(CBM)による予防保全が可能となる。
【0027】
そのため、列車検知信号送信ケーブルについても列車検知信号受信ケーブルについても不具合が生じると直ちに発生の事実と部位とが判明するので、該当ケーブルの該当箇所を修理する等のことで容易かつ迅速に軌道回路を障害から復旧させることができる。
また、何れの列車検知信号伝送ケーブルについても診断部では不具合が検出されない状況の下で、列車検知機能に不具合が見つかったときには、例えば列車検知装置の上位に位置する列車運行管理システム等によって列車検知装置の検知結果について誤りが検出されたようなときには、レール破断といったレール部の不具合が想定されるため、直ちに検測車等を用いた故障部位の探索に取り掛かることで(即ち解決手段11の故障部位判別方法を実施することで)、容易かつ迅速に軌道回路を障害から復旧させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施例1について、故障診断機能付き列車検知装置の構成を示すブロック図である。
図2】信号の波形例を示し、(a)が列車検知信号だけのものであり、(b)がそれにパルス信号や反射信号を加えたものである。
図3】信号の波形例を示し、(a)がパルス信号と反射信号とを個別に図示したものであり、(b)は、列車検知信号伝送ケーブル等が正常なときのパルス信号と反射信号とを示し、(c)は、列車検知信号伝送ケーブルが途中で破損している異常時のパルス信号と反射信号とを示し、(d)は、パルス信号の幅を広げたときのパルス信号と反射信号とに係り、実線の反射信号が正常時の波形例を示し、破線の反射信号が異常時の波形例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0029】
このような本発明の故障診断機能付き列車検知装置について、これを実施するための具体的な形態を、以下の実施例1により説明する。
図1~3に示した実施例1は、上述した解決手段1,6,7,10(出願当初の請求項1,6,7,10)を具現化したものである。
なお、それらの図示に際しては、簡明化等のため、ブロック図や記号図を用いて、発明の説明に必要なものや関連するものを中心に図示した。
【実施例1】
【0030】
本発明の故障診断機能付き列車検知装置の実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。
図1は、故障診断機能付き列車検知装置10のブロック構成図であり、レール区間2Tに係る部分を示している。
【0031】
また、図2は、(a)がレール区間1T~9Tそれぞれにおける列車検知信号の波形を示し、(b)がレール区間2Tにおける列車検知信号Aとパルス信号B,Cと反射信号BR,CRの波形を示している。
さらに、図3は、(a)がパルス信号B,Cとその反射信号BR,CRの波形例を個別に図示したものであり、(b)が列車検知信号伝送ケーブル32,42等が正常なときのパルス信号B,Cと反射信号BR,CRの波形例を示し、(c)が列車検知信号伝送ケーブル32,42が途中で破損している異常時のパルス信号B,Cと反射信号BR,CRの波形例を示している。
なお、図示した波形例は、何れも、要旨を逸脱しない範囲内で簡略化されている。
【0032】
故障診断機能付き列車検知装置10は(図1参照)、既成の列車検知装置20+30+40に対して新規な送信側付加部50と受信側付加部60と総合診断部70とを付設するとともに制御部80の機能を向上させたものである。
列車検知装置20+30+40は、レール区間2Tのレール部20と、列車検知信号Aをレール部20に送信する送信部30と、列車検知信号Aをレール部20から受信する受信部40とを具備している。列車5が走行する一連のレール区間1T,2T,3T,…のうち途中のレール区間2Tに付設されたものを図示したが、付設予定品でも良い。
【0033】
レール部20は、並走状態の一対のレール21,22と、そのレール対の一端部に接続されたインピーダンスボンド25(列車検知信号Aは通過させるがパルス信号Bは通過させないで反射するインピーダンス整合部材)と、レール対21,22の他端部に接続されたインピーダンスボンド26(列車検知信号Aは通過させるがパルス信号Cは通過させないで反射するインピーダンス整合部材)とを含んでいる。
【0034】
レール21,22の一端側と隣のレール区間1Tのレール対との間には絶縁部23a,23bが設けられ、レール21,22の他端側と隣のレール区間3Tのレール対との間には絶縁部23c,23dが設けられていて、インピーダンスボンド25に送り込まれた列車検知信号Aがレール対21,22を介してインピーダンスボンド26に伝送されるようになっている。
そのようなレール区間の境界(1Tと2Tとの境23a,23b),(2Tと3Tとの境2ca,23d)の近傍には、信号機24a,24bが設置されることが多い。
【0035】
送信部30は、列車検知信号Aを送出する送信機31と、一端が送信機31に接続され他端がインピーダンスボンド25に接続されていて列車検知信号Aを送信機31からインピーダンスボンド25へ伝送する列車検知信号送信ケーブル32(列車検知信号伝送ケーブル)とを具備したものである。
列車検知信号Aには、一般に数十Hzから数十kHzの交流信号が多用されており、本例でも、その周波数範囲に属する所定周波数の交流信号が採用されている。
【0036】
受信部40は、列車検知信号Aを受信する受信機41と、一端が受信機41に接続され他端がインピーダンスボンド26に接続されていて列車検知信号Aをインピーダンスボンド26から受信機41へ伝送する列車検知信号受信ケーブル42(列車検知信号伝送ケーブル)とを具備したものである。
バンドパスフィルタを用いた周波数弁別や、制御部80による時間軸上での送受信可否状態の切り替え制御などによって、送信機31からレール部20を経て受信機41に至る列車検知信号Aの送受信が間欠的に行われるようになっている(図2(a)参照)。
【0037】
制御部80は(図1図2参照)、レール区間2Tに係る送信機31などの動作制御を担うのに加え、他のレール区間1T,3T,…,9T,…の送信機などについても動作制御を行うようになっている。しかも、その動作制御にて、列車検知信号Aに加え他の列車検知信号についても、送受信を時分割で間欠的に行わせるようになっている。
本例では(図2(a)参照)、連続した六つのレール区間1T,…,6Tからなるレール区間群1T…6Tや、それに連なる他のレール区間群7T…毎に、列車検知信号の送信先を時間枠経過毎に一区間ずつずらしながら各レール区間群から一区間だけ順次選出して、それぞれの選出区間へ列車検知信号を送信させるようになっている。
【0038】
送信側付加部50は(図1参照)、列車検知信号送信ケーブル32のうち送信機31に近い部位に接続された短めのケーブルと、このケーブルに介挿された切替スイッチ51と、そのケーブル及び切替スイッチ51を介して列車検知信号送信ケーブル32へパルス信号Bを送出するとともにその反射信号BRを受信して測定する列車検知信号送信側の時間領域反射率測定部52と(図2(b),図3(a)参照)、その測定結果に基づいて具体的には反射信号BRに係る反射タイミングの早遅に基づいて列車検知信号送信ケーブル32に係る不具合の有無および部位を判別する(図3(b),(c)参照)とともに判別結果BAを総合診断部70に通知する送信側診断部53とを具備したものである。
【0039】
受信側付加部60は(図1参照)、列車検知信号受信ケーブル42のうち受信機41に近い部位に接続された短めのケーブルと、このケーブルに介挿された切替スイッチ61と、そのケーブル及び切替スイッチ61を介して列車検知信号受信ケーブル42へパルス信号Cを送出するとともにその反射信号CRを受信して測定する列車検知信号受信側の時間領域反射率測定部62と(図2(b),図3(a)参照)、その測定結果に基づいて具体的には反射信号CRに係る反射タイミングの早遅に基づいて列車検知信号受信ケーブル42に係る不具合の有無および部位を判別する(図3(b),(c)参照)とともに判別結果CAを総合診断部70に通知する受信側診断部63とを具備したものである。
【0040】
パルス信号Bもパルス信号Cもパルス幅が例えば数ns程度の短いものであり、それに対応した反射信号BR,CRも、波形が崩れて少し幅が広がることが多いが、やはりパルス状のものになる。
そして、パルス信号Bの送出時刻t1から反射信号BRの受信時刻t2までの経過時間(t2-t1)が列車検知信号送信ケーブル32の全長に係る伝搬遅延時間に対応していれば(図3(b)参照)、列車検知信号送信ケーブル32が正常であることを示す判別結果BAを送信側診断部53が出し、パルス信号Cの送出時刻t1から反射信号CRの受信時刻t2までの経過時間(t2-t1)が列車検知信号送信ケーブル42の全長に係る伝搬遅延時間に対応していれば(図3(b)参照)、列車検知信号送信ケーブル42が正常であることを示す判別結果CAを受信側診断部63が出すようになっている。
【0041】
これに対し、パルス信号Bの送出時刻t1から反射信号BRの受信時刻t3までの経過時間(t3-t1)が上述の正常時の経過時間(t2-t1)より短いときには(図3(c)参照)、列車検知信号送信ケーブル32に破断等の不具合が発生しており、その不具合の発生位置がケーブル32を経過時間の比{(t3-t1)/(t2-t1)}で分けた部位であることを示す判別結果BAを、送信側診断部53が出すようになっている。
また、パルス信号Cの送出時刻t1から反射信号CRの受信時刻t3までの経過時間(t3-t1)が上述の正常時の経過時間(t2-t1)より短いときには(図3(c)参照)、列車検知信号受信ケーブル42に破断等の不具合が発生しており、その不具合の発生位置がケーブル42を経過時間の比{(t3-t1)/(t2-t1)}で分けた部位であることを示す判別結果CAを、受信側診断部63が出すようになっている。
【0042】
総合診断部70は(図1参照)、送信側付加部50から判別結果BAを受け取るとともに、受信側付加部60から判別結果CAを受け取って、判別結果BA,CAのうち何れかの一方が又は双方が不具合状態を示していれば、レール区間2Tの軌道回路が故障していると判定し、その旨を赤ランプ点灯等にて管理者に知らせるとともに電文送出等にて上位装置に通知するようになっている。これに対し、判別結果BA,CAが共に正常状態を示していれば、電文送出等は行わずに緑ランプ点灯等を継続するようになっている。
【0043】
制御部80は(図1参照)、上述のように列車検知信号Aの送受信を時分割で間欠的に行わせる制御を行うのに加え、切替スイッチ51,61や時間領域反射率測定部52,62の動作を制御するときに、いずれの測定部52,62にも、列車検知信号Aの無い時間帯にパルス送出と反射波測定とを行わせるようになっている。そのため(図2(b)参照)、送信側付加部50によるパルス信号Bの送信と反射信号BRの受信が列車検知信号Aの合間を縫って行われるとともに、受信側付加部60によるパルス信号Cの送信と反射信号CRの受信も列車検知信号Aの合間を縫って行われる。
【0044】
この実施例1の故障診断機能付き列車検知装置10について、その使用態様及び動作を、上述した図面を引用して説明する。
【0045】
上述したようにレール区間2Tの軌道回路は(図1参照)、基本構成の列車検知装置に該当する構成部分20~40に対して故障診断機能部50~80が付加されたことで、故障診断機能付き列車検知装置10になっている。
そのため(図2(a)における2Tの波形を参照)、基本の列車検知装置20~40に該当する部分によって一連の列車検知信号送信ケーブル32とレール部20と列車検知信号受信ケーブル42とに係る列車検知信号Aの送受信が所定周期で間欠的に行われる。
【0046】
しかも(図2(b)参照)、その繰り返しにおいて前後になる二つの列車検知信号A,Aの合間毎に、送信側付加部50によってパルス信号Bの送信とその反射信号BRの受信と列車検知信号送信ケーブル32の診断とが行われるとともに、受信側付加部60によってパルス信号Cの送信とその反射信号CRの受信と列車検知信号受信ケーブル42の診断とが行われる。
【0047】
そして(図3(b)参照)、列車検知信号送信ケーブル32に不具合が無ければ、時間領域反射率測定部52から切替スイッチ51を介して列車検知信号送信ケーブル32へ時刻t1に送出されたパルス信号Bの反射信号BRが時刻t2に測定される。
これに対し(図3(c)参照)、列車検知信号送信ケーブル32に破断等の不具合が有れば、反射信号BRが時刻t2より早い時刻t3に測定される。
更に(図1参照)、そのような測定結果に基づいて送信側診断部53から判別結果BAが出され、その判別結果BAが総合診断部70に伝達される。
【0048】
また(図3(b)参照)、列車検知信号受信ケーブル42に不具合が無ければ、時間領域反射率測定部62から切替スイッチ61を介して列車検知信号受信ケーブル42へ時刻t1に送出されたパルス信号Cの反射信号CRが時刻t2に測定される。
これに対し(図3(c)参照)、列車検知信号受信ケーブル42に破断等の不具合が有れば、反射信号CRが時刻t2より早い時刻t3に測定される。
更に(図1参照)、そのような測定結果に基づいて受信側診断部63から判別結果CAが出され、その判別結果CAが総合診断部70に伝達される。
【0049】
こうして、列車検知信号送信ケーブル32に係る不具合の有無および部位に係る判別結果BAと、列車検知信号受信ケーブル42に係る不具合の有無および部位に係る判別結果CAとが、随時、総合診断部70に集められる。
そのため、軌道回路の管理者等は、ランプの点灯状態を目視確認する等のことで容易に、列車検知信号伝送ケーブル32,42に係る不具合の有無を確認することができる。さらに、不具合の発生時には、判別結果BA,CAのデータを確認することで速やかに不具合の発生部位を高い確度で把握するが出来、直ちに修理等に取り掛かることもできる。
【0050】
レール部20にレール破断等の不具合が発生したときには、レール区間2Tに列車5が進入していなくても、基本構成部分20~40の列車検知機能によってレール区間2Tに列車5が在線していると判定されるが、他の手段たとえばCTC(列車集中制御装置)やPRC(自動進路制御装置)といった上位の管理装置あるいは/更には信号係や指令といった人的な列車運行管理手段によってレール区間2Tは列車非在線の状態であると判定され、両者の判定が矛盾するため、列車検知信号Aの伝送経路の調査が必要になる。
【0051】
具体的には、送信機31と列車検知信号送信ケーブル32とインピーダンスボンド25とレール部20のレール21,22とインピーダンスボンド26と列車検知信号受信ケーブル42と受信機41とに亘って、不具合発生箇所を探索しなければならない。
そのうち送信機31とインピーダンスボンド25,26と受信機41は、局所に設置されているので、動き回らなくても不具合の有無を調べることができ、それで足りる。
これに対し、列車検知信号送信ケーブル32とレール部20と列車検知信号受信ケーブル42とについては、長物なので、不具合の有無調査にとどまらず不具合発生部位まで探索することが求められる。
【0052】
もっとも、それらの長物のうち列車検知信号送信ケーブル32と列車検知信号受信ケーブル42とについては、送信側付加部50と受信側付加部60とによって、上述したように不具合が有ればその有無に加えて発生部位まで自動検出されるので、故障診断機能付き列車検知装置10を設置したレール区間2Tに係る不具合調査では、列車検知信号送信ケーブル32の不具合が送信側付加部50によって検出されたときや、列車検知信号受信ケーブル42の不具合が受信側付加部60によって検出されたときには、それらの検出部位を率先して調べることにより、修理等を速やかに行うことができる。
【0053】
また、送信側付加部50の判別結果BAが列車検知信号送信ケーブル32に不具合の無いことを示すとともに、受信側付加部60の判別結果CAも列車検知信号受信ケーブル42に不具合の無いことを示しているときには、長物のうちではレール部20にレール破断などの不具合が発生している可能性が高いので、列車検知信号送信ケーブル32の調査や列車検知信号受信ケーブル42の調査よりも先に、レール部20に対して調査を行う。
レール部20に係る不具合調査は、既述したように人力走行式の軌道回路電流測定装置や自走式の検測車などを使用して行うことができる。
【0054】
[他の実施形態]
上記実施例では、送信機31が列車検知信号Aの送出を間欠的に行うとともに時間領域反射率測定部52,62がパルス信号B,Cの送出と反射信号BR,CRの受信とを列車検知信号Aの送出の無い時間帯に限定するというタイミング調整が、送信機31に加えて時間領域反射率測定部52,62も制御部71が制御することによって具現化されていたが、上記タイミング調整の具体化はそれに限定される訳でない。
【0055】
例えば、時間領域反射率測定部52,62が列車検知信号Aを検出して該信号Aの無い時間帯を把握することでタイミング調整が行われるようにしても良い(解決手段2,7)。
或いは、列車検知信号Aの送信タイミングが送信機31から時間領域反射率測定部52,62へ通知され、その通知に応じて時間領域反射率測定部52,62がパルス信号B,Cの送出等を行うことで、タイミングが調整されるようにしても良い(解決手段3,7)。
【0056】
或いは、列車検知信号Aが途絶えたことを検出する列車検知信号途絶検出手段を設けて(図示せず)、その検出に応じて時間領域反射率測定部52,62がパルス信号B,Cの送出等を行うことで、タイミングが調整されるようにしても良い(解決手段4,8)。
或いは、列車検知信号Aから反射信号BR,CRを弁別する信号弁別手段を設けて(図示せず)、その弁別にて得られた信号を用いて時間領域反射率測定部52,62が反射信号BR,CRの測定を行うようにしても良い(解決手段5,9)。
【0057】
上記実施例では、送信側付加部50も受信側付加部60も総合診断部70も、測定結果や診断結果をデータ蓄積するようになっていなかったが、後の詳細な解析と確実性の高い判定などのために、データ蓄積を行うようにしても良い。
例えば、時間領域反射率測定部52,56による測定結果と診断部53,63による判別結果BA,CAとを含む情報を収集して時系列データに蓄積するデータ蓄積手段を設けて(図示せず)、その時系列データを解析する等のことにより列車検知信号伝送ケーブル32,42の状態を監視するようにしても良い(解決手段10)。
【0058】
[その他]
上記実施例では、レール部20の端部と列車検知信号送信ケーブル32,42の端部とに介在するインピーダンス整合部材として、インピーダンスボンド25,26を挙げたが、インピーダンス整合部材は、インピーダンスボンドに限定される訳でなく、列車検知信号Aは通過させるがパルス信号B,Cは通過させないで反射するものであれば良く、例えばマッチングトランスでも良い。
【0059】
上記実施例では、送信側付加部50や受信側付加部60が検出する不具合としてケーブル破断を挙げたが、反射信号BR,CRの波形解析も行うことで、短絡等の不具合状態を把握することも可能であり、不具合の程度まで把握することもできる。
上記実施例では、パルス信号B,Cの送出タイミングが同時刻t1になっていたが、列車検知信号Aの伝送タイミングと重ならなければ、同時でなく、ずれていても、良い。
上記実施例では、パルス信号B,Cのパルス幅が小さめであったが、例えば始端の検出などでパルス伝搬時間が測定できれば足りるので、パルス信号B,Cのパルス幅は大きめであっても良い(図3(d)参照)。
【0060】
上記実施例では、パルス信号B,Cの変形について言及しなかったが、送信側付加部50や受信側付加部60に対してパルス調整手段を付加する等のことにより、パルス信号B,Cのパルス幅や振幅レベルを変更しうるようにしても良い。
パルス調整手段を手動操作等にて作動させることで簡便に、パルス信号B,Cに係るパルス幅や振幅レベルを列車検知信号伝送ケーブル32,42の測定対象部分の長さに適合させるといったことができる。
【符号の説明】
【0061】
1T,2T,3T…レール区間、5…列車、
10…故障診断機能付き列車検知装置、
20…レール部(軌道回路の央部)、
21,22…レール、23a,23b,23c,23d…絶縁部、
24a,24b…信号機、
25,26…インピーダンスボンド(インピーダンス整合部材)、
30…送信部(軌道回路の一端部)、
31…送信機、32…列車検知信号送信ケーブル(列車検知信号伝送ケーブル)、
40…受信部(軌道回路の他端部)、
41…受信機、42…列車検知信号受信ケーブル(列車検知信号伝送ケーブル)、
50…送信側付加部、
51…切替スイッチ、52…時間領域反射率測定部、53…送信側診断部、
60…受信側付加部、
61…切替スイッチ、62…時間領域反射率測定部、63…受信側診断部、
70…総合診断部、80…制御部、
A…列車検知信号、B,C…パルス信号、BR,CR…反射信号
図1
図2
図3