(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】操業データ収集システム
(51)【国際特許分類】
B66C 15/00 20060101AFI20240417BHJP
H04Q 9/00 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
B66C15/00 Z
H04Q9/00 311J
(21)【出願番号】P 2021016291
(22)【出願日】2021-02-04
【審査請求日】2023-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】曽根 雄太
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-024718(JP,A)
【文献】特開2014-234260(JP,A)
【文献】中国実用新案第210270585(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00-15/06
H04Q 9/00
G05B 19/418
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操業データを記憶する記憶部を有する移動端末と通信可能に接続されることができ、運転される装置内に設けられた第1通信接続手段と、
前記第1通信接続手段と通信可能に接続されて前記装置の運転を電気的に制御するように前記装置内に設けられたPLCと、
前記移動端末と通信可能に接続されることができ、前記装置とは異なる場所に設けられた第2通信接続手段と、
前記第2通信接続手段と通信可能に接続され、前記異なる場所に設けられたサーバと、
を備え、
前記PLCは、前記第1通信接続手段
と前記移動端末との通信が確立され
た後、前記装置を運転可能とし、
前記PLCは、
前記第1通信接続手段との通信が確立された前記移動端末に前記操業データ
を転
送し、
前記サーバは、
前記第2通信接続手段と前記移動端末との接続が確立された後、前記移動端末に記憶された前記操業データ
の送信を前記移動端末に要求し、
前記移動端末は、前記要求にもとづいて、前記操業データを前記サーバに送信し、
前記第1通信接続手段と前記移動端末との間の接続が確立されているときには、前記第2通信接続手段と前記移動端末との間の接続は確立されない操業データ収集システム。
【請求項2】
前記第1通信接続手段および前記第2通信接続手段は、通信を許可するために設定された同一の識別データを有しており、前記移動端末が有する識別データが一致したときに、前記移動端末と通信を確立する請求項1記載の操業データ収集システム。
【請求項3】
前記第1通信接続手段
と前記
移動端末との通信が確立された後、前記
装置のインタロック
は解除
される請求項2記載の操業データ収集システム。
【請求項4】
前記サーバは、
前記移動端末から転送された前記操業データにもとづいて、データベースを構築し、
前記データベースにもとづいて
、電子操業日誌を
あらかじめ設定した頻度で生成する請求項1~3のいずれか1つに記載の操業データ収集システム。
【請求項5】
前記第1通信接続手段および前記第2通信接続手段は、無線通信局を含み、前記移動端末を携帯するオペレータの作業位置を通信圏内とする請求項1~4のいずれか1つに記載の操業データ収集システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、クレーン等の産業用装置の操業データ収集システムに関する。
【背景技術】
【0002】
クレーン等の産業用装置を制御するシステムでは、その装置を操作するオペレータの操作情報や、装置の故障原因、詳細な状態といった操業データは、装置内に設けられた制御システム内の記憶装置に保存される。
【0003】
このような装置の故障調査や定期・不定期の点検等では、制御システム内の記憶装置に保存された操業データを収集する必要がある。操業データの収集には、クレーンの操作技術とは異なる専門技術知識を必要とするため、装置のオペレータに操業データの収集作業を行わせることは困難である。その一方で、クレーンのような大型の産業用装置では、操業データが必要となる都度、専門技術知識を有する調査員がクレーン機上まで上がり、制御システムにアクセスして操業データを回収する必要がある。そのため、頻繁に操業データを収集することは困難である。
【0004】
そこで、装置と装置内に保存された操業データを回収してデータ処理等を行う場所まで有線通信ケーブルを敷設して、所望のタイミングで操業データを収集することが考えられる。しかしながら、すでに設置されている装置とデータ収集場所との間に通信ケーブルを敷設するのでは、多大なコストや時間を要することになる。
【0005】
携帯端末を用いて産業用機械の稼働履歴データを収集し、公衆無線通信ネットワークを経由して管理サーバに収集した稼働履歴を伝送し、管理する稼働データ収集装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。そこで、有線通信技術に代えて、このような無線通信技術を用いて操業データを収集することとすれば、通信ケーブル敷設に要する費用等を抑制することができる。無線通信技術に5G等の高速無線通信技術を用いれば、迅速に大量の操業データを収集することが可能になる。
【0006】
しかしながら、無線通信技術を応用する場合であっても、データ伝送のためのシステム構築を1から行わなければならない場合が多い。また、収集する操業データは、装置の運転状態や故障などによる警報状態を含んでいる場合があり、そのようなデータをリアルタイムで入手したいとの要求も強い。リアルタイムでのデータ収集には、携帯端末は、常時通信状態を維持している必要があり、動作寿命や通信コスト等の問題を生じ得る。また、大形のクレーン等の場合には、公衆無線通信網のない場所や、電波が弱い場所に設置されている場合も多いとの問題もある。さらに、無線通信の場合には、外部から干渉されてデータを改竄されたり、データを盗まれたりするなどの問題も生じ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の実施形態は、上記のような課題を解決するためのものであり、既存の装置や制御システムの大きな変更を行うことなく、確実に操業データを収集できる操業データ収集システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態に係る操業データ収集システムは、操業データを記憶する記憶部を有する移動端末と通信可能に接続されることができ、運転される装置内に設けられた第1通信接続手段と、前記第1通信接続手段と通信可能に接続されて前記装置の運転を電気的に制御するように前記装置内に設けられたPLCと、前記移動端末と通信可能に接続されることができ、前記装置とは異なる場所に設けられた第2通信接続手段と、前記第2通信接続手段と通信可能に接続され、前記異なる場所に設けられたサーバと、を備える。前記PLCは、前記第1通信接続手段と前記移動端末との通信が確立された後、前記装置を運転可能とする。前記PLCは、前記第1通信接続手段との通信が確立された前記移動端末に前記操業データを転送する。前記サーバは、前記第2通信接続手段と前記移動端末との接続が確立された後、前記操業データの送信を前記移動端末に要求する。前記移動端末は、前記要求にもとづいて、前記操業データを前記サーバに送信する。前記第1通信接続手段と前記移動端末との間の接続が確立されているときには、前記第2通信接続手段と前記移動端末との間の接続は確立されない。
【発明の効果】
【0010】
本実施形態では、既存の装置や制御システムの大きな変更を行うことなく、確実に操業データを収集できる操業データ収集システムが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態に係る操業データ収集システムを例示する模式的なブロック図である。
【
図2】産業用クレーンを例示する模式的な側面図である。
【
図3】第1の実施形態の操業データ収集システムの動作を説明するための模式的なブロック図である。
【
図4】第1の実施形態の操業データ収集システムの動作を説明するためのフローチャートの例である。
【
図5】第1の実施形態の操業データ収集システムの使用方法を説明するための模式図である。
【
図6】第2の実施形態に係る操業データ収集システムの一部を例示する模式的ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係る操業データ収集システムを例示する模式的なブロック図である。
図1に示すように、本実施形態の操業データ収集システム100は、アクセスポイント(A)(第1通信接続手段)10と、PLC20と、アクセスポイント(B)30(第2通信接続手段)と、サーバ40と、を備える。アクセスポイント(A)10およびPLC20は、操業データの収集対象となる装置に設けられる。この例では、操業データの収集対象となる装置は、産業用のクレーンであり、本実施形態の操業データ収集システム100は、産業用のクレーン等の操作に熟練を要する装置に好適に用いられる。アクセスポイント(A)10およびPLC20は、クレーン機上設備102内に設けられる。後に詳述するように、産業用のクレーンでは、クレーン機上設備102として、運転室や電気室を備えており、アクセスポイント(A)10およびPLC20は、コントローラ22やドライブ装置24とともに配置されている。
【0014】
アクセスポイント(B)30およびサーバ40は、事務所設備106に設置されている。事務所設備106は、クレーンが設置されている場所とは異なる場所に設置された事務所に設けられている。ここで、事務所とは、クレーンを日常的に操作するオペレータが出退勤管理その他の事務処理業務等を行う施設である。そのため、オペレータは、クレーンの操作を行う業務に従事する際には、必ず、事務所に入室し、その後、操作すべきクレーンに移動する。そして、クレーンの操作の終了時には、オペレータは、必ず、事務所に帰還する。
【0015】
本実施形態の操業データ収集システム100では、オペレータは、移動端末104を携帯する。オペレータが携帯する移動端末104は、アクセスポイント(A)10およびアクセスポイント(B)30と通信可能に接続することができる。たとえばアクセスポイント(A)10およびアクセスポイント(B)30は、無線によるデータ通信を可能とするインタフェースを備えており、オペレータが携帯する移動端末104が所定の範囲内にある場合に無線通信を確立させ、PLC10やサーバ40とのデータ通信を行うことが可能になる。
【0016】
移動端末104は、記憶装置を備えており、アクセスポイント(A)10を介して、PLC20に接続されると、PLC10に導入されたプログラムによって、記憶装置に操業データを転送され(ダウンロード)、PLC10の記憶装置から操業データを読み出す。移動端末104は、アクセスポイント(B)30を介して、サーバ40に接続されると、サーバ40に導入されたプログラムによって、移動端末104の記憶装置に保存された操業データを、サーバ40に転送(アップロード)することができる。
【0017】
アクセスポイント(A)10およびアクセスポイント(B)30は、固有の識別データを有している。移動端末104が同一の識別データを有する場合には、アクセスポイント(A)10およびアクセスポイント(B)30は、移動端末104との通信の確立後に、操業データのダウンロードおよびアップロードを許可する。
【0018】
移動端末104は、アクセスポイント(A)10およびアクセスポイント(B)30との無線通信可能で、操業データのダウンロードおよびアップロードが可能な任意の端末でよい。移動端末104は、たとえば、スマートフォンやタブレット端末のような汎用の可搬性のある端末でもよいし、このシステム用に設計された専用の無線端末等であってもよい。
【0019】
本実施形態の操業データ収集システム100の構成について詳細に説明する。
クレーン機上設備102には、アクセスポイント(A)10およびPLC20のほか、コントローラ22およびドライブ装置24が設けられている。コントローラ22は、PLC20に接続されている。コントローラ22は、オペレータが操作する用品であり、オペレータは、コントローラ22を操作することによって、クレーンの吊り荷を横行させたり、巻き上げたり、巻き下ろしたりすることができる。オペレータがコントローラ22を操作すると、操作に応じた制御信号が生成され、生成された制御信号は、PLC20に送信される。
【0020】
ドライブ装置24は、PLC20に接続されている。ドライブ装置24は、吊り荷の横行、巻き上げ、巻き下ろしを行う電動機を駆動する。PLC20は、コントローラ22からの制御信号やドライブ装置24が取得する電動機の速度信号やトルク信号を受信して、ドライブ装置24に適切な制御信号を送信し、電動機の動作を制御する。
【0021】
オペレータによってクレーンの電源が投入されると、アクセスポイント(A)10は、移動端末104と通信可能な状態となる。アクセスポイント(A)10は、移動端末104が接近すると、無線による通信を確立し、PLC20と移動端末104とのデータ通信を可能にする。移動端末104は、アクセスポイント(A)10に通信可能に接続されると、アクセスポイント(A)10を介して、PLC20と通信可能な状態となる。PLC20は、制御信号等を含む操業データを移動端末104に転送することが可能になる。
【0022】
移動端末104へ転送する操業データの種類や頻度は、PLC20にあらかじめ導入されているプログラムによって決定されている。たとえば、クレーンの制御システムの動作に必要な複数の操業データのうち、あらかじめ設定されたいくつかの操業データを、PLC20から移動端末104へ転送するようにしてもよいし、すべての操業データを移動端末104に転送するようにしてもよい。PLC20は、操業データを移動端末104へ常時転送するようにしてもよいし、PLC20に接続された記憶装置(図示せず)に操業データを一旦格納し、所定のデータ容量に達したときに、一旦格納された操業データを移動端末104に転送するようにしてもよい。
【0023】
事務所設備106のアクセスポイント(B)30は、サーバ40に接続されている。アクセスポイント(B)30およびサーバ40は、常時電源が供給されており、通信可能な状態にある。オペレータが携帯する移動端末104がアクセスポイント(B)30に接近すると、無線通信が確立され、サーバ40は、移動端末104に対して、操業データの送信を要求する。移動端末104に記憶された操業データは、アクセスポイント(B)30を介してサーバ40に転送される。サーバ40には、あらかじめデータベースが設定されており、あらかじめ導入されたプログラムによって、転送された操業データをデータベースに格納する。
【0024】
図2は、産業用クレーンを例示する模式的な側面図である。
図2に示すように、クレーン1は、たとえば港湾に設置されたコンテナクレーンである。クレーン1は、運転室2a、電気室2b、一対の脚部4およびガーダー5を含んでいる。図示しないが、クレーン1には、これらのほか、横行トロリーやスプレッダが設けられている。クレーン1は、岸壁Wに接岸した輸送船からコンテナヤードYへ荷揚げし、あるいは、コンテナヤードYに積まれたコンテナを、接岸した輸送船に荷積みするのに用いられる。クレーン1は、このようなコンテナクレーンに限らず、他のクレーン、たとえば建設クレーンや、ケーブルクレーン、天井クレーン、ゴライアスクレーン等であってもよい。また、上述したように、操業データ収集システム100は、クレーン1に限らず、他の産業用装置やプラント等のような作業現場と事務所とが別々に設けられ、作業をするオペレータが作業現場と事務所とを往復する就業形態がとられる場合に適用が可能である。
【0025】
運転室2aは、この例では、ガーダー5に設けられている。運転室2aは、たとえば、ガーダー5に設けられた横行レールに沿って、横行トロリー等とともに、あるいは横行トロリーとは独立して横行する。あるいは、運転室2aは、ガーダー5のいずれかの位置に固定されていてもよい。
【0026】
運転室2aには、横行トロリー等の横行操作や、スプレッダの巻き上げ、巻き下ろし操作、レール走行の操作のための操作レバーや各種表示パネル等が設けられている。操作レバーは、コントローラ22に設けられており、コントローラ22は、操作レバーの動きに応じて制御信号を生成する。表示パネルには、PLC20が入出力する検出信号、制御信号等にもとづいて、スプレッダの高さや、巻き上げや巻きお下ろし時の速度や高さ等のデータを表示する。これらの操作や表示等のために検出信号や制御信号等が用いられ、操業データの収集対象となり得る。
【0027】
電気室2bは、この例では、クレーン1の後方、上部に設けられている。具体的には電気室2bは、一対の脚部4によってコンテナヤードYとほぼ水平に支持されたガーダー5上に設けられている。
【0028】
電気室2bには、横行トロリーやスプレッダを動作させるモーターや駆動機構、ドライブ装置24等が収納されている。
【0029】
本実施形態の操業データ収集システム100の動作について説明する。
図3は、本実施形態の操業データ収集システムの動作を説明するための模式的なブロック図である。
図3に示すように、クレーン機上設備102は、運転室102aおよび電気室102bを含んでいる。
図1において説明したアクセスポイント(A)10およびPLC20は、運転室102aおよび電気室102bにそれぞれ設けられている。すなわち、運転室102aには、アクセスポイント(A)10a、PLC20aおよびコントローラ22が設けられている。電気室102bには、アクセスポイント(A)10b、PLC20bおよびドライブ装置24が設けられている。
【0030】
運転室102aのPLC20aは、コントローラ22からの制御信号を受信し、これにもとづいて、必要な制御信号や制御指令等を生成して電気室102bのPLC20bに送信する。電気室102bのPLC20bは、受信した制御信号や制御指令等にもとづいて、ドライブ装置24に供給する速度指令等を生成してドライブ装置24に供給する。
【0031】
電気室102bのPLC20bは、ドライブ装置24やその他のセンサ等の検出信号を受信し、運転室102aのPLC20aに送信する。運転室102aのPLC20aは、受信した信号等にもとづいて、たとえば吊り荷の位置や高さ等の情報を表示パネル等に表示する。
【0032】
このように、複数のPLC20a,20bが複数の場所に設けられている場合には、少なくとも1つのPLCにアクセスポイントを接続しておけばよい。アクセスポイント(A)10および移動端末104は、それぞれ固有の識別データを有し、識別データの照合により、PLC20a,20bを含む制御システムのインタロックを解除する。そのため、アクセスポイント(A)10は、オペレータがクレーン1を日常的に操作業務を行う場所に設けることが好ましい。
【0033】
PLCごとにアクセスポイントを設けた場合には、オペレータ以外の調査員等が移動端末104を携帯して、電気室102bに向かった場合でも、運転室102aに立ち寄らずに、操業データの転送をすることが可能になる。電気室102b内のドライブ装置24等の装置や設備等の点検等を行いつつ、その際の操業データの収集も合わせて行うことができるとのメリットがある。
【0034】
移動端末(
図3では端末と表記)104は、PLCに接続されたアクセスポイント(A)10aの通信範囲に到達すると、アクセスポイント(A)10aとの通信が確立される。移動端末104は、アクセスポイント(A)10aとの通信が確立され、PLC20aとの通信が可能になる。PLC20aは、電気室102bのPLC20bと通信可能に接続されているので、PLC20bが扱う操業データもPLC20bから取得し、移動端末104に転送することができる。
【0035】
なお、移動端末104を携帯して調査員等が電気室102bに入室した場合には、移動端末104は、アクセスポイント(B)10bとの通信が確立され、PLC20bとの通信が可能になる。PLC20bは、PLC20aからの操業データの取得が必要な場合には、あらかじめPLC20bに設定されたプログラムにしたがって、PLC20aから操業データを取得し、移動端末104に転送することができる。
【0036】
事務所設備106は、事務所内のいずれか、たとえば電気室に設置されている。アクセスポイント(B)30は、移動端末104が接近したときに通信可能な範囲となり、電源の供給が受けられるような位置に設けられていればよく、必ずしも事務所設備106の内部に設けられていなくてもよい。
【0037】
図4は、本実施形態の操業データ収集システムの動作を説明するためのフローチャートの例である。
図4には、クレーン機上設備102における操業データ収集システム100の動作フローが示されている。
図4に示すように、ステップS1において、クレーンの電源が投入される。電源の投入は、オペレータの手動により行われる。
【0038】
ステップS2において、移動端末104がアクセスポイント(A)10aの通信圏内に入ると移動端末104は、アクセスポイント(A)10aとの通信が確立され、通信可能に接続される。
【0039】
ステップS3において、アクセスポイント(A)10aは、移動端末104の識別データを受信し、識別データが登録されたオペレータのものと一致するか否かを判定する。一致した場合には、アクセスポイント(A)10aは、処理を次のステップS4に遷移させる。一致しない場合には、アクセスポイント(A)10aは、一致する識別データを受信するまで待機する。
【0040】
ステップS4において、PLC20aは、クレーン1のインタロックを解除して、クレーン1の運転を可能にする。
【0041】
ステップS5において、PLC20aは、クレーン1のシステムを起動する。クレーン1のシステムは、たとえば、ステップS4で起動可能状態とされ、オペレータがプッシュボタンを押すことによってシステムを起動するようにしてもよいし、ステップS4のインタロック解除と同時あるいは所定時間経過後にシステムを自動的に起動するようにしてもよい。動力が内燃機関を用いたエンジンの場合には、オペレータによるプッシュボタンの押下によって、エンジンを起動させる。
【0042】
ステップS6において、PLC20aは、移動端末104にデータをダウンロードさせる。ダウンロードする操業データをPLC20bが扱っている場合には、PLC20aは、PLC20bが扱う操業データを移動端末104に転送させる。
【0043】
図示しないが、オペレータは、作業が終了した後には、クレーン1の電源を遮断することによって、クレーン1のシステムを停止する。電源の遮断によって、移動端末104との接続は切断され、クレーン1のシステムは、インタロックされる。その後、オペレータは、運転室102aを離れることができる。
【0044】
本実施形態の操業データ収集システム100の使用方法について説明する。
図5は、本実施形態の操業データ収集システムの使用方法を説明するための模式図である。
図5に示すように、本実施形態の操業データ収集システム100では、オペレータOPは、移動端末104を携帯して、事務所Fとクレーン1との間を往復する。
【0045】
(1)移動端末104は、好ましくは、アクセスポイント(B)30の通信範囲内に配置されている。オペレータOPは、事務所Fに出勤すると、事務所Fの所定の位置に配置された移動端末104を手にとり、携帯する。オペレータOPは、移動端末104を携帯して、クレーン1に移動する。
【0046】
(2)オペレータOPは、移動端末104を携帯したまま、クレーン1に搭乗する。オペレータOPは、移動端末104を携帯したまま、電気室102bまたは運転室102aへ向かう。
【0047】
(3)オペレータOPは、移動端末104を携帯したまま、運転室102aの中に入る。
図4によって説明した動作フローによって、移動端末104とアクセスポイント(A)10aとが通信によって接続され、インタロックが解除されてクレーンシステムが起動する。その後、PLC20aから移動端末104への操業データのダウンロードが開始され、あるいはダウンロードが可能とされる。
【0048】
(4)オペレータOPは、クレーン1での作業が終了すると、電源を遮断し、運転室102aから退出する。電源の遮断により、クレーンシステムはインタロックされるが、電源遮断以前に、PLC10aからの操業データのダウンロードは終了している。
【0049】
(5)オペレータOPは、移動端末104を携帯しまま、クレーン1を降り、事務所Fに帰還する。
【0050】
(6)オペレータOPがアクセスポイント(B)30に接近し、移動端末104がアクセスポイント(B)30の通信圏内となると、アクセスポイント(B)30は、移動端末104の識別データを、あらかじめ登録された識別データと一致するかを判定する。アクセスポイント(B)30は、識別データが一致した場合には、移動端末104との通信を確立させる。通信確立後には、サーバ40は、アクセスポイント(B)30を介して、移動端末104に収集した操業データのアップロードを要求し、移動端末104は、操業データをサーバ40に送信する。
【0051】
このようにして、本実施形態の操業データ収集システム100では、オペレータOPが携帯する移動端末104で操業データを収集することができる。
【0052】
上述では、PLC20やサーバ40は、アクセスポイント(A)10およびアクセスポイント(B)30を介して、移動端末104と無線通信インタフェースを用いて接続することとしたが、これに限らない。オペレータOPがクレーン1を運転し、操作するために必要なキー等の代わりに、識別データを有する移動端末104を日常的に携帯して、業務ルーチンの中に組み込まれればよい。たとえば、PLC20およびサーバ40に専用または汎用の有線接続端末やコネクタ等を設け、移動端末104のプラグを挿入等することによって、有線通信接続により、クレーン1のインタロックを解除し、その後操業データのダウンロード等を行うようにしてもよい。
【0053】
本実施形態の操業データ収集システム100の効果について説明する。
本実施形態の操業データ収集システム100では、アクセスポイント(A)10aをオペレータが日常の業務で入室する運転室102a等に設け、アクセスポイント(A)10の識別データと移動端末104の識別データとを照合する。日常の作業場所での識別データの照合により、クレーン1の制御システムを起動させ、クレーン1の操作を可能にするので、オペレータOPは、クレーン1に搭乗する場合には必ず移動端末を携帯する。
【0054】
移動端末104は、PLC20a,20bを含むクレーン1の制御システムの記憶装置として、制御システムに接続されるので、確実に操業データを収集することができる。
【0055】
オペレータOPは、クレーン1の作業が終了すると、移動端末104を携帯して、事務所Fに帰還する。事務所Fにも識別データが設定されたアクセスポイント(B)30が設置されているので、移動端末104は、アクセスポイント(B)30を介して、サーバ40に接続されることができ、保存した操業データをサーバ40に確実にアップロードすることができる。
【0056】
アクセスポイント(A)10と移動端末104との接続確立後には、PLC20を含む制御システムのシーケンスは、アクセスポイント(A)10およびPLC20に制御のためのプログラムを導入することによって実現することができる。アクセスポイント(B)30を介するサーバ40と移動端末104との通信接続の確立やデータ伝送については、サーバ40に制御のためのプログラムを導入することによって、実現することができる。したがって、現状の制御システムやデータ管理システムの構成を大きく変更することなく、容易に実現することができる。
【0057】
アクセスポイント(A)10と移動端末104との間の通信は、近距離の無線LANによるものであり、暗号化も可能なので、通信時のデータの改竄や盗用を防止することができる。
【0058】
このようにして、本実施形態の操業データ収集システム100では、オペレータが専門技術知識を習得することなく、クレーン1等の装置で作業するたびに、確実に操業データを収集することができる。
【0059】
この例のように、アクセスポイント(A)10bを、オペレータOPが日常的には入室せず、調査員等が入室する電気室102b等にも設けることによって、調査員等による操業データ収集作業を、他の装置の点検等のタイミングで実施することが可能になる。たとえば、PLC20bに一時的に試験用プログラムを導入した場合等に、その試験結果を操業データとして収集することができ、不具合の調査等を効率的に行うことができる。
【0060】
(第2の実施形態)
図6は、本実施形態に係る操業データ収集システムの一部を例示する模式的なブロック図である。
本実施形態では、サーバ240の構成が上述した他の実施形態の場合と相違する。上述の他の実施形態では、収集した操業データは、任意で適切な形式のデータベースに保存される。本実施形態では、サーバ240は、データベースを定期的に読み出して、操業データにもとづく電子操業日誌を生成して出力する。
【0061】
サーバ240は、アクセスポイント(B)30に接続されている。オペレータOPは、移動端末104を携帯して、事務所Fに帰還し、アクセスポイント(B)30の通信圏内に入ると、アクセスポイント(B)30は、上述の他の実施形態の場合と同様に、移動端末104との通信を確立する。サーバ240は、移動端末104で操業データの送信を要求し、移動端末104は、収集した操業データをサーバ240にアップロードする。
【0062】
サーバ240は、受信した操業データをデータベースに格納し、たとえば、電子操業日誌242のためのフォーマットデータを出力する。電子操業日誌242のためのフォーマットデータは、あらかじめサーバ240に設定されている。このフォーマットデータは、データサーバ中の各データを所定の位置に割り振るためのフレームである。
【0063】
サーバ240は、たとえば、その日の操業データをデータベースから読み出して、フォーマットデータに入力する。これによって、操業日ごとの電子操業日誌242を生成し、出力することができる。
【0064】
電子操業日誌242を生成し、出力する頻度は、操業日ごとでもよいし、操業週ごとや操業月ごとでもよい。好ましくは、操業日ごとに電子操業日誌242を生成し、出力することにより、移動端末104によって回収された操業データのアップロードを確実に行うように、業務ルーチン化することができる。
【0065】
電子操業日誌242で出力する項目に、オペレータOPごとの操作履歴を表す操業データを出力することによって、オペレータOPの技能の定量化に役立てることもできる。
【0066】
以上説明した実施形態によれば、既存の装置や制御システムの大きな変更を行うことなく、確実に操業データを収集できる操業データ収集システムを実現することができる。
【0067】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明およびその等価物の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 クレーン、2a 運転室、2b 電気室、10,10a,10b アクセスポイント(A)、20,20a,20b PLC、22 コントローラ、24 ドライブ装置、30 アクセスポイント(B)、40,240 サーバ、100 操業データシステム、104 移動端末、242 電子操業日誌