(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】ショベル
(51)【国際特許分類】
E02F 9/26 20060101AFI20240417BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
E02F9/26 B
H04N7/18 J
(21)【出願番号】P 2018057171
(22)【出願日】2018-03-23
【審査請求日】2020-10-14
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】因藤 雅人
【合議体】
【審判長】古屋野 浩志
【審判官】西田 秀彦
【審判官】佐藤 史彬
(56)【参考文献】
【文献】実開平7-20354(JP,U)
【文献】再公表特許第2015/025989(JP,A1)
【文献】特開2010-48026(JP,A)
【文献】特開2017-166293(JP,A)
【文献】特開2015-21246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F9/26
H04N7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、
前記下部走行体に旋回自在に搭載された上部旋回体と、
前記上部旋回体に取り付けられたブームと、
前記ブームの腹側で前記上部旋回体に取り付けられた撮像装置と、を備え、
前記撮像装置が出力する画像には、作動油ホースの画像、旋回フレームの画像、前記ブームの画像、アームの画像、バケットの画像、及び、運転室によるオクルージョンが生じている領域をもたらす前記運転室の画像が含まれ、
前記撮像装置が出力する画像に占める、前記運転室によるオクルージョンが生じている領域の比率は25%未満である、
ショベル。
【請求項2】
下部走行体と、
前記下部走行体に旋回自在に搭載された上部旋回体と、
前記上部旋回体に取り付けられたブームと、
前記ブームの腹側で前記上部旋回体に取り付けられた
、バケットの内側を真後ろから捉えた画像を出力する撮像装置と、
前記上部旋回体に取り付けられた慣性計測装置と、を備え、
前記慣性計測装置は、前記上部旋回体の左前部を構成する一方で1つの剛体を構成しない運転室と前記上部旋回体の右前部との間で、ブームフートブラケットとともに前記1つの剛体を構成する旋回フレームに取り付けられて
おり、
前記慣性計測装置が出力する計測データと前記撮像装置が出力する画像とを同期して記録するように構成されている、
ショベル。
【請求項3】
前記撮像装置及び前記慣性計測装置は、前記1つの剛体に取り付けられている、
請求項2に記載のショベル。
【請求項4】
前記撮像装置が出力する画像に占める、前記運転室によるオクルージョンが生じている領域の比率は25%未満である、
請求項2又は3に記載のショベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ショベルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上部旋回体の側方及び後方の死角を監視できるように上部旋回体の側部及び後部にカメラが取り付けられているショベルが知られている(特許文献1参照。)。このショベルでは、操作者は、上部旋回体の左前部にある運転室からバケットを肉眼で見ながらアタッチメントを操作する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のショベルでは、操作者は、バケットを左斜め後ろから見ているため、例えばバケットの幅方向の端線が水平になっているか否かを確認し難い場合がある。そのため、アタッチメントを操作し難い場合がある。
【0005】
そこで、アタッチメントの動きを後ろから撮像できるショベルを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係るショベルは、下部走行体と、前記下部走行体に旋回自在に搭載された上部旋回体と、前記上部旋回体に取り付けられたブームと、前記ブームの腹側で前記上部旋回体に取り付けられた撮像装置と、を備え、前記撮像装置が出力する画像には、作動油ホースの画像、旋回フレームの画像、前記ブームの画像、アームの画像、バケットの画像、及び、運転室によるオクルージョンが生じている領域をもたらす前記運転室の画像が含まれ、前記撮像装置が出力する画像に占める、前記運転室によるオクルージョンが生じている領域の比率は25%未満である。
【発明の効果】
【0007】
上述の手段により、アタッチメントの動きを後ろから撮像できるショベルが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係るショベルの側面図である。
【
図2】
図1のショベルに搭載される基本システムの構成例を示す図である。
【
図5】前カメラが出力するデジタル画像の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係るショベルについて説明する。各図面において、同じ構成要素には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係るショベルPSの側面図である。ショベルPSの下部走行体1には、旋回機構2を介して旋回自在に上部旋回体3が搭載されている。上部旋回体3には、ブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端には、アーム5が取り付けられている。アーム5の先端には、エンドアタッチメントとしてバケット6が取り付けられている。
【0011】
ブーム4、アーム5及びバケット6は、アタッチメントの一例として掘削アタッチメントを構成し、ブームシリンダ7、アームシリンダ8及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。ブームシリンダ7は、左ブームシリンダ7L及び右ブームシリンダ7R(
図1では不可視)を含む。ブーム4にはブーム角度センサS1が取り付けられ、アーム5にはアーム角度センサS2が取り付けられ、バケット6にはバケット角度センサS3が取り付けられている。ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2及びバケット角度センサS3を集合的に「姿勢センサ」と称することもある。姿勢センサは、アタッチメントの姿勢を検出する。例えば、バケット6の爪先等を含むアタッチメントの作業部位の位置を導き出すことができるようにするためである。
【0012】
ブーム角度センサS1は、ブーム4の回動角度を検出する。ブーム角度センサS1は、例えば、水平面に対する傾斜を検出して、上部旋回体3に対するブーム4の回動角度を検出する加速度センサである。
【0013】
アーム角度センサS2は、アーム5の回動角度を検出する。アーム角度センサS2は、例えば、水平面に対する傾斜を検出して、ブーム4に対するアーム5の回動角度を検出する加速度センサである。
【0014】
バケット角度センサS3は、バケット6の回動角度を検出する。バケット角度センサS3は、例えば、水平面に対する傾斜を検出して、アーム5に対するバケット6の回動角度を検出する加速度センサである。
【0015】
ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2及びバケット角度センサS3は、可変抵抗器を利用したポテンショメータ、対応する油圧シリンダのストローク量を検出するストロークセンサ、連結回りの回動角度を検出するロータリエンコーダ、加速度センサとジャイロセンサの組み合わせを含む慣性計測装置等であってもよい。
【0016】
上部旋回体3には、運転室としてのキャビン10、動力源としてのエンジン11、慣性計測装置S4、撮像装置80等が搭載されている。
【0017】
慣性計測装置S4は、上部旋回体3の慣性を計測する。本実施形態では、慣性計測装置S4は、ジャイロセンサと加速度センサの組み合わせで構成されている。具体的には、慣性計測装置S4は、例えば、3軸ジャイロセンサと3軸加速度センサの組み合わせで構成されている。但し、3軸ジャイロセンサは2軸ジャイロセンサであってもよく、3軸加速度センサは2軸加速度センサであってもよい。また、慣性計測装置S4は、加速度センサのみで構成されていてよく、GNSSセンサ等の他のセンサで構成されていてもよい。慣性計測装置S4は、計測データをコントローラ30に対して出力する。
【0018】
撮像装置80は、ショベルの周囲を撮像する装置である。本実施形態では、撮像装置80は、ショベルの前側の空間を撮像する前カメラ80F、左側の空間を撮像する左カメラ80L、右側の空間を撮像する右カメラ80R、及び、後方の空間を撮像する後カメラ80Bを含む。前カメラ80F、左カメラ80L、右カメラ80R及び後カメラ80Bは、例えば、CCDやCMOS等の撮像素子を有する単眼デジタルカメラであり、それぞれ取得したデジタル画像をコントローラ30に出力する。表示装置40に直接出力してもよい。撮像装置80は、レーザレンジファインダ、距離画像カメラ、ステレオカメラ、赤外線カメラ等であってもよい。
【0019】
キャビン10の頂部には、測位装置G1及び通信装置T1が設けられている。測位装置G1は、例えばGNSS受信機であり、ショベルPSの位置を検出し、検出した位置に関するデータをコントローラ30に出力する。通信装置T1は、外部との通信を制御し、外部から取得したデータをコントローラ30に出力する。通信装置T1は、慣性計測装置S4が出力する計測データ、撮像装置80が出力するデジタル画像等を外部に送信するように構成されていてもよい。外部の管理者等が計測データ、デジタル画像等を利用できるようにするためである。
【0020】
キャビン10の内部には、コントローラ30、表示装置40、音声出力装置43等が設けられている。コントローラ30は、ショベルPSの駆動制御を行う主制御部として機能する。コントローラ30は、CPU及び内部メモリを含む演算処理装置で構成されている。コントローラ30の各種機能は、CPUが内部メモリに格納されているプログラムを実行することで実現される。表示装置40は、コントローラ30からの指令に応じて各種作業情報を含む画像を表示する。表示装置40は、例えば、コントローラ30に接続される液晶ディスプレイである。音声出力装置43は、コントローラ30からの指令に応じて音声情報を出力する。音声出力装置43は、例えば、コントローラ30に接続されるスピーカを含む。音声出力装置43は、ブザー等の警報器であってもよい。
【0021】
また、コントローラ30は、取得したデータを時系列で記録するように構成されている。本実施形態では、コントローラ30は、慣性計測装置S4が出力する計測データと、撮像装置80が出力するデジタル画像とを同期して記録するように構成されている。「データの記録」は、例えば、揮発性記憶媒体に記憶されているデータを不揮発性記憶媒体に保存することを意味する。ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3等の他のセンサが出力するデータを追加的に同期して記録するようにしてもよい。
【0022】
コントローラ30は、ショベルPSの稼働中にデータを継続的に記録するように構成されていてもよく、所定の条件が満たされた場合に限ってデータを記録するように構成されていてもよい。所定の条件は、例えば、慣性計測装置S4が出力する計測データが閾値を超えた場合を含む。また、慣性計測装置S4が出力する計測データが異常値を示すことを含んでいてもよい。この場合、コントローラ30は、慣性計測装置S4が出力する計測データが異常値を示した瞬間を含む所定時間にわたるデジタル画像DGを計測データ等と共に記録するように構成されていてもよい。計測データ等と共に記録されるデジタル画像DGは、一時記憶装置(揮発性記憶装置)に記録された後で、その一時記憶装置から永久記憶装置(不揮発性記憶装置)に移されてもよく、永久記憶装置に直接的に記録されてもよい。
【0023】
図2は、ショベルPSに搭載されている基本システムの構成例を示す図である。基本システムは、エンジン11、コントローラ30、表示装置40等を含む。表示装置40は、例えば、CAN、LIN等の通信ネットワーク、専用線等を介してコントローラ30に接続されている。そして、表示装置40は、コントローラ30から供給される作業情報等を含む画像を表示する。
【0024】
具体的には、表示装置40は、画像表示部41、入力部42、及び、画像表示部41に表示する画像を生成する変換処理部40aを含む。
【0025】
変換処理部40aは、例えば、撮像装置80が出力するデジタル画像を含む画像を生成する。表示装置40には、前カメラ80F、左カメラ80L、右カメラ80R、及び後カメラ80Bのそれぞれからデジタル画像が入力される。また、変換処理部40aは、コントローラ30から表示装置40に入力されるデータのうち画像表示部41に表示させるデータを画像信号に変換する。コントローラ30から表示装置40に入力されるデータは、例えば、エンジン冷却水の温度を示すデータ、作動油の温度を示すデータ、尿素水の残量を示すデータ、燃料の残量を示すデータ等を含む。
【0026】
変換処理部40aは、変換した画像信号を画像表示部41に出力し、撮像装置80からのデジタル画像、コントローラ30からのデータに基づいて生成した画像を画像表示部41に表示させる。変換処理部40aは、表示装置40ではなく、コントローラ30に設けられてもよい。
【0027】
入力部42は、ショベルPSの操作者がコントローラ30に情報を入力するための装置である。
図2の例では、入力部42は、スイッチパネルに設けられた押しボタンスイッチを含む。入力部42は、メンブレンスイッチであってもよく、タッチパネルであってもよい。本実施形態では、入力部42は、表示切換ボタン42a及び方向ボタン42bを有する。
【0028】
表示切換ボタン42aは、画像表示部41に表示される画像を切り換えるための操作部の一例である。表示切換ボタン42aは、押される度に、画像表示部41に表示される画面を切り換えるように構成されている。画像表示部41に表示される画面は、メイン画面及び前方表示画面を含む。
【0029】
方向ボタン42bは、方向を入力する操作部の一例である。本実施形態では、上下左右の4方向を入力できるように構成された十字ボタンが採用されている。上ボタン、下ボタン、左ボタン、及び右ボタンの独立した4つのボタンであってもよい。操作者は、方向ボタン42bの操作により、画面を切り替えたり、画面内に表示されるカーソルを移動させたり、カーソル移動により選択された項目の数値を変更したりすることができる。
【0030】
表示装置40は、蓄電池70から電力の供給を受けて動作する。蓄電池70は、エンジン11のオルタネータ11a(発電機)で発電した電力で充電される。蓄電池70の電力は、スタータ11b、電装品72等にも供給される。スタータ11bは、蓄電池70からの電力で駆動されてエンジン11を始動させる。
【0031】
エンジン11は、メインポンプ14及びパイロットポンプ15に接続されている。そして、エンジンコントロールユニット74により制御される。エンジンコントロールユニット74は、所定の制御周期でエンジン11の状態を示すデータをコントローラ30に対して出力する。エンジン11の状態を示すデータは、水温センサ11cで検出される冷却水温を示すデータ等を含む。コントローラ30は、内部の記憶部30aにこのデータを蓄積し、このデータに関する情報を必要に応じて表示装置40に表示させる。
【0032】
メインポンプ14は、作動油ラインを介してコントロールバルブ17に作動油を供給する。メインポンプ14は、例えば、斜板式可変容量型油圧ポンプである。
【0033】
パイロットポンプ15は、パイロットラインを介して油圧制御機器に作動油を供給する。パイロットポンプ15は、例えば、固定容量型油圧ポンプである。
【0034】
コントロールバルブ17は、ショベルPSにおける油圧システムを制御する油圧制御装置である。本実施形態では、コントロールバルブ17は、複数のスプール弁を含むバルブブロックであり、メインポンプ14が吐出する作動油を1又は複数の油圧アクチュエータに選択的に供給できる。油圧アクチュエータは、例えば、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、走行用油圧モータ及び旋回用油圧モータを含む。
【0035】
操作装置26は、キャビン10内に設けられ、操作者によって油圧アクチュエータの操作に用いられる。操作装置26が操作されると、パイロットポンプ15から油圧アクチュエータのそれぞれに対応するスプール弁のパイロットポートに作動油が供給される。各パイロットポートには、対応する操作装置26の操作方向及び操作量に応じた圧力(パイロット圧)の作動油が供給される。
【0036】
コントローラ30は、例えば以下で説明するデータを取得する。コントローラ30が取得したデータは、記憶部30aに格納される。
【0037】
可変容量式油圧ポンプであるメインポンプ14のレギュレータ14aは、斜板角度を示すデータをコントローラ30に出力する。吐出圧センサ14bは、メインポンプ14の吐出圧を示すデータをコントローラ30に出力する。メインポンプ14が吸入する作動油が貯蔵されたタンクとメインポンプ14との間の管路に設けられている油温センサ14cは、管路を流れる作動油の温度を示すデータをコントローラ30に出力する。操作圧センサ15a、15bは、操作装置26が操作された際に生成されるパイロット圧を検出し、検出したパイロット圧を示すデータをコントローラ30に出力する。
【0038】
操作装置26としての操作レバーには、入力部42の別の一例としてのスイッチボタン26Sが設けられている。操作者は、操作レバーを操作しながらスイッチボタン26Sを操作することで、コントローラ30に指令信号を入力できる。
【0039】
エンジン回転数調整ダイヤル75は、エンジンの回転数を調整するためのダイヤルである。本実施形態では、キャビン10内に設けられている。そして、エンジン回転数を段階的に切り換えることができるように構成されている。具体的には、エンジン回転数調整ダイヤル75は、SPモード、Hモード、Aモード、及びアイドリングモードの4段階でエンジン回転数を切り換えることができるように構成されている。エンジン回転数調整ダイヤル75は、エンジン回転数の設定状態を示すデータをコントローラ30に出力する。
図2は、エンジン回転数調整ダイヤル75によりHモードが選択された状態を示す。
【0040】
SPモードは、作業量を優先したい場合に選択される回転数モードであり、最も高いエンジン回転数を利用する。Hモードは、作業量と燃費を両立させたい場合に選択される回転数モードであり、二番目に高いエンジン回転数を利用する。Aモードは、燃費を優先させながら低騒音でショベルPSを稼働させたい場合に選択される回転数モードであり、三番目に高いエンジン回転数を利用する。アイドリングモードは、エンジンをアイドリング状態にしたい場合に選択される回転数モードであり、最も低いエンジン回転数を利用する。エンジン11は、エンジン回転数調整ダイヤル75で設定された回転数モードのエンジン回転数で一定回転数に制御される。
【0041】
次に、
図3及び
図4を参照し、前カメラ80Fの設置例について説明する。
図3は、ショベルPSの正面図であり、ブーム4の腹側が見えるように描画されている。
図4は、上部旋回体3の上面図であり、ブーム4及びブームシリンダ7の図示が省略されている。
図3及び
図4では、旋回フレーム3Fには細かいドットパターンが付され、ブームフートブラケット3B、ブーム4、ブームシリンダ7及びブームシリンダフートブラケット60には粗いドットパターンが付されている。
【0042】
前カメラ80Fは、ブーム4の腹側で上部旋回体3に取り付けられるように構成されている。本実施形態では、ブームフートブラケット3Bの前部に配置された一対のブームシリンダフートブラケット60の間で上部旋回体3に取り付けられている。すなわち、後カメラ80B、左カメラ80L及び右カメラ80Rと比べ、障害物等の他の物体と接触し難い位置に配置されている。他の物体は、例えば、掘削作業中にバケット6等で弾かれてショベルPSに向かって飛んでくる石を含む。
【0043】
具体的には、前カメラ80Fは、左ブームシリンダフートブラケット60Lと右ブームシリンダフートブラケット60Rとの間で旋回フレーム3Fに剛結された慣性計測装置S4の筐体の上面(+Z側の面)に取り付けられている。また、光軸が上部旋回体3の中心面A1を通るように取り付けられている。また、左ブームシリンダ7Lと右ブームシリンダ7Rとの間でブーム4の腹側の表面に沿うように配索されている作動油ホース65の下側(-Z側)に配置されている。
【0044】
ブームフートブラケット3Bは、
図4に示すように、左ブームフートブラケット3BL、右ブームフートブラケット3BR及び中央プレート3BCを含む。左ブームシリンダフートブラケット60Lは、左ブームフートブラケット3BLの前部に配置されている。右ブームシリンダフートブラケット60Rは、右ブームフートブラケット3BRの前部に配置されている。
【0045】
前カメラ80Fは、旋回フレーム3Fに剛結されていてもよい。この場合、慣性計測装置S4は、旋回フレーム3F、又は、ブームシリンダフートブラケット60等の旋回フレーム3Fに剛結された部材に剛結されていてもよい。そして、慣性計測装置S4は前カメラ80Fの近傍に配置されてもよい。すなわち、慣性計測装置S4は、前カメラ80Fが剛結されている位置とは別の位置に剛結されていてもよい。例えば、慣性計測装置S4は、上部旋回体3の左前部3LFを構成するキャビン10と、上部旋回体3の右前部3RFとの間で旋回フレーム3Fに剛結されていてもよい。上部旋回体3の右前部3RFには、例えば、階段状カバーで覆われた工具箱が配置されている。具体的には、慣性計測装置S4は、破線ブロックで示すように、キャビン10と左ブームシリンダフートブラケット60Lとの間で左ブームシリンダフートブラケット60Lに剛結されていてもよい。以下では、前カメラ80Fが剛結されている位置とは別の位置に剛結された慣性計測装置S4を慣性計測装置S4Aとする。慣性計測装置S4Aは、望ましくは、キャビン10に近い位置に配置される。キャビン10に近いほど、ショベルPSの操作者が感じる振動等をより正確に検出できるためである。
【0046】
前カメラ80F及び慣性計測装置S4は、望ましくは、1つの剛体に取り付けられている。1つの剛体は、例えば、旋回フレーム3F、ブームフートブラケット3B及びブームシリンダフートブラケット60のうちの少なくとも1つで構成される。本実施形態では、キャビン10は、1つの剛体を構成する要素には含まれない。衝撃緩衝装置を介して旋回フレーム3Fに取り付けられているためである。すなわち、慣性計測装置S4がキャビン10に取り付けられると、旋回フレーム3Fに作用する衝撃力を正確に検出できなくなるためである。具体的には、旋回フレーム3Fに作用する直接的(一次的)な振動ではなく、その一次的な振動によってもたらされる二次的な振動を検出してしまうためである。右前部3RFを構成する階段状カバー、上部旋回体カバー3V、エンジンフード3E等部材も、同様の理由により、1つの剛体を構成する要素には含まれない。
【0047】
また、前カメラ80F及び慣性計測装置S4は、望ましくは、一体的に動くように配置される。つまり、ショベルPSが振動した場合、前カメラ80Fと慣性計測装置S4との振動方向が同一の振動方向となるように配置される。慣性計測装置S4が検出した振動と前カメラ80Fが捉えた光景(振動の原因を映し出すデジタル画像)の変化とを対応させるためである。慣性計測装置S4が検出した振動のタイミングと前カメラ80Fが捉えた光景の変化のタイミングとが対応する場合、管理者は、振動が発生した瞬間を含む短時間に記録されたデジタル画像を見るだけで、振動が発生した瞬間のアタッチメントの様子を確認できるためである。
【0048】
そこで、本実施形態では、前カメラ80F及び慣性計測装置S4は何れも、旋回軸A2の前側(+X側)で且つ中心面A1を横切るように配置されている。或いは、両者は、
図4に示すように、旋回軸A2の前側(+X側)で、且つ、前カメラ80Fと旋回軸A2を結ぶ線分と、慣性計測装置S4Aと旋回軸A2を結ぶ線分との間に形成される角度θが90度以下となるように配置されていてもよい。より望ましくは、角度θが30度以下となるように配置されていてもよい。また、両者は、望ましくは、Z軸方向においてほぼ同じ高さとなるように配置される。また、慣性計測装置S4は、望ましくは、旋回軸2Aにできるだけ近い位置に配置される。上部旋回体3の動きをできるだけ正確に計測するためである。例えば、旋回軸A2に関する力のモーメントは旋回軸2Aから離れるほど大きくなるためである。
【0049】
また、前カメラ80F及び慣性計測装置S4は何れも、コントローラ30との接続に使用される信号ケーブルCBが容易に配索されるように配置されている。蓄電池70等の電源に接続される電力ケーブル(図示せず。)についても同様である。信号ケーブルCBは、前カメラ80Fとコントローラ30とを接続する信号ケーブルCB1、慣性計測装置S4とコントローラ30とを接続する信号ケーブルCB2、及び、コントローラ30と表示装置40とを接続する信号ケーブルCB3を含む。本実施形態では、信号ケーブルCB1及びCB2は何れも、
図4に示すように、中央プレート3BCに形成された開口3H1を通り、且つ、旋回用油圧モータ21の左側の空間を通って延びる。そして、左ブームフートブラケット3BLに形成された開口3H2を通り、且つ、キャビン10の右側壁に形成された開口(図示せず。)を通って延び、キャビン10内に設置されたコントローラ30に接続されている。左ブームシリンダフートブラケット60Lに剛結されている慣性計測装置S4Aの場合には、信号ケーブルCB2は、例えば、キャビン10と左ブームフートブラケット3BLとの間を通って延び、キャビン10内に設置されたコントローラ30に接続される。信号ケーブルCB1のこのような配索経路により、前カメラ80Fは確実にコントローラ30に接続される。慣性計測装置S4に関する信号ケーブルCB2についても同様である。なお、キャビン10内に設置されたコントローラ30から延びる信号ケーブルCB3は、例えば、キャビン10の右側内壁に沿って延び、キャビン10内に設置された表示装置40に接続される。
【0050】
次に、
図5を参照し、前カメラ80Fが出力するデジタル画像DGについて説明する。
図5は、表示装置40の画像表示部41に表示されたデジタル画像DGの一例を示す。コントローラ30は、例えば、操作レバーの先端に設けられたスイッチボタン26Sが押下された場合にデジタル画像DGを表示装置40の画像表示部41に表示させるように構成されている。
【0051】
図5に示すように、デジタル画像DGは、旋回フレーム3Fの画像G3F、ブーム4の画像G4、アーム5の画像G5、バケット6の画像G6、左ブームシリンダ7Lの画像G7L、右ブームシリンダ7Rの画像G7R、キャビン10の画像G10、及び、作動油ホース65の画像G65を含む。破線で囲まれた領域VAは、オクルージョンが生じていない領域を表す。「オクルージョン」は、手前にあるショベルPSの構成要素が背後にある物体を隠して見えないようにする状態を意味する。一点鎖線で囲まれた領域VBは、キャビン10によるオクルージョンが生じている領域を表す。なお、本実施形態では、領域VAの範囲を表す破線は画像表示部41には表示されない。領域VBの範囲を表す一点鎖線についても同様である。
【0052】
図5に示すように、前カメラ80Fは、バケット6の内側を真後ろから捉えたデジタル画像DGを出力できるように配置されている。この配置により、デジタル画像DGを見るショベルPSの操作者は、バケット6の幅方向の端線6Eと水平面との間に形成される角度をより正確に把握できる。すなわち、バケット6の幅方向の端線6Eが水平になっているか否かをより正確に把握できる。なお、画像表示部41には端線6E及び水平補助線が表示されてもよい。この場合、コントローラ30は、例えば、姿勢センサの出力に基づいて端線6Eの位置及び傾きを決定し、慣性計測装置S4の出力に基づいて水平補助線の位置及び傾きを決定する。
【0053】
また、操作者は、ブーム4を上昇させたときにバケット6の画像G6が画面の斜め上方ではなく上方に移動する様子をデジタル画像DGで確認できる。そのため、キャビン10の内側からバケット6を肉眼で見ている場合よりも、すなわち、左斜め後方からバケット6を見ている場合よりも、バケット6と地面との間の距離の変化をより正確に違和感無く把握できる。
【0054】
また、ブーム4の画像G4、アーム5の画像G5及びバケット6の画像G6を含むアタッチメントの画像は、真後ろから捉えられた画像であるため、アタッチメントの左右両側にある地物の画像を覆い隠して見えなくしてしまうことはない。そのため、操作者は、例えば、キャビン10の内側からバケット6を肉眼で見ている場合には、バケット6の存在によりバケット6の右斜め前方の空間で作業する作業者の様子を確認できないが、デジタル画像DGを見ることでその様子を確認できる。このように、前カメラ80Fは、キャビン10の内側から見た場合にアタッチメントの陰に隠れてしまう地物を確実に撮像できる。
【0055】
また、デジタル画像DGは、アタッチメントの画像がデジタル画像DGの縦中心線VLと重なるように構成されている。なお、本実施形態では、縦中心線VLは画像表示部41には表示されない。この構成により、デジタル画像DGを見る操作者は、アタッチメントの左右両側の様子を同時に視認しながらアタッチメントを操作できる。
【0056】
また、前カメラ80Fは、キャビン10によるオクルージョンが生じている領域VBが、デジタル画像DGの全体の4分の1未満となるように配置されている。すなわち、前カメラ80Fが出力するデジタル画像DGに占める領域VBの比率が25%未満となるように配置されている。そのため、前カメラ80Fは、バケット6が到達可能な範囲のほぼ全てを撮像できる。
【0057】
また、施工事業者、施工管理業者、ショベルのレンタル業者、ショベルのリース業者、ショベルの修理業者等の管理者は、デジタル画像DGを見ることで、ショベルがどのように操作されていたかを確認できる。そのため、コントローラ30は、記録したデジタル画像DGと計測データ等との組み合わせを所定のタイミングで外部の管理者に送信する。
【0058】
例えば、管理者は、デジタル画像DGを見ることでアタッチメントの操作が適切であるか否かを確認できる。そして、不適切な操作が行われていることを認識した場合には、ショベルPSの操作者に適切な操作を指導することができる。
【0059】
また、管理者は、例えば、慣性計測装置S4が出力する計測データが異常値を示した瞬間を含む所定時間にわたるデジタル画像DGを見ることで、アタッチメントの動きがその異常値の原因になっているか否かを確認できる。また、本実施形態では、計測データとデジタル画像DGとが同期するように構成されているため、管理者は、計測データが異常値を示した瞬間を含む所定時間にわたるデジタル画像DGのみを選択的に見ることができる。すなわち、計測データが異常値を示していない期間に関するデジタル画像DGを見る必要はない。そのため、管理者は、確認すべき期間に記録された画像のみを効率的に見ることができる。ショベルPSは、計測データが異常値を示した瞬間を含む所定時間にわたるデジタル画像DGのみを計測データと共に外部に送信するように構成されていてもよい。通信量をできるだけ少なくするためである。
【0060】
また、管理者は、デジタル画像DGを見ることで、標準装備のバケットが大型のバケットに無断で交換されてしまっているか否かを確認してもよい。
【0061】
上述のように、本発明の実施形態に係るショベルPSは、下部走行体1と、下部走行体1に旋回自在に搭載された上部旋回体3と、上部旋回体3に取り付けられたブーム4と、ブーム4の腹側で上部旋回体3に取り付けられた撮像装置80(前カメラ80F)と、を備える。この構成により、ショベルPSは、アタッチメントの動きを後ろから撮像できる。そのため、ショベルPSの操作者は、例えば
図5に示すような前カメラ80Fが出力するデジタル画像DGを見ることで、バケット6の幅方向の端線6Eが水平になっているか否かをより正確に把握できる。また、バケット6と地面との間の距離の変化をより正確に把握できる。
【0062】
ショベルPSは、上部旋回体3に取り付けられた慣性計測装置S4を備えていてもよい。この場合、慣性計測装置S4は、望ましくは、上部旋回体3の左前部3LFを構成するキャビン10と上部旋回体3の右前部3RFとの間で旋回フレーム3Fに取り付けられる。より望ましくは、前カメラ80Fと共に、1つの剛体に取り付けられる。第1に、旋回フレーム3Fに作用する二次的な振動ではなく、旋回フレーム3Fに作用する一次的な振動を慣性計測装置S4が計測できるようにするためである。第2に、慣性計測装置S4が検出した一次的な振動と前カメラ80Fが捉えた光景(振動の原因を映し出すデジタル画像)の変化とを対応させるためである。すなわち、振動が発生した瞬間を含む短時間に記録されたデジタル画像を見るだけで、振動が発生した瞬間のアタッチメントの様子を操作者が確認できるようにするためである。そのため、上述の実施形態では、前カメラ80Fは、旋回フレーム3Fに剛結された慣性計測装置S4の筐体の上面(+Z側の面)に取り付けられ、慣性計測装置S4と一体的に動くように配置されている。この配置により、前カメラ80Fは、上部旋回体3の前部を浮き上がらせるような衝撃が加わった場合、領域VAに映る画像が画面の下方に移動する一連のデジタル画像を取得できる。
【0063】
前カメラ80Fが出力するデジタル画像DGは、望ましくは、キャビン10によるオクルージョンが生じている領域VBの比率が25%未満となるように構成されている。デジタル画像DGを見る操作者が、キャビン10とアタッチメントとの位置関係を容易に把握できるようにした上で、操作者がアタッチメントの左右両側の様子を容易に把握できるようにするためである。なお、操作者は、デジタル画像DGではキャビン10の画像G10によって遮られて視認できない部分を肉眼で見ることができる。キャビン10の画像G10によって遮られて視認できない部分は、キャビン10の前方の空間に対応するためである。
【0064】
また、
図5に示したデジタル画像DGは、ショベルPSのキャビン10内に配置された表示装置40だけでなく、管理装置の表示装置においても表示される。更に、支援装置の表示装置において表示されてもよい。この場合、ショベルPS、管理装置及び携帯端末(支援装置)によりショベルPSの管理システムが構成される。管理装置は、ショベルPSの作業を管理する装置であり、例えば、作業現場外に位置する管理センタ(事務所)等に設置される、表示装置を備えたコンピュータである。管理装置は、使用者が持ち運び可能な可搬性のコンピュータであってもよい。携帯端末は、表示装置を備えた通信端末であり、スマートフォン、タブレット端末、ノートパソコン等を含む。これにより、管理者はショベルPSの外部においてもデジタル画像DGを確認することができる。
【0065】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳説した。しかしながら、本発明は、上述した実施形態に制限されることはない。上述した実施形態は、本発明の範囲を逸脱することなしに、種々の変形、置換等が適用され得る。また、別々に説明された特徴は、技術的な矛盾が生じない限り、組み合わせが可能である。
【0066】
例えば、上述の実施形態では、前カメラ80Fは、慣性計測装置S4又は旋回フレーム3Fに直接取り付けられているが、取り付けステーを介して取り付けられていてもよい。また、ブームフートブラケット3Bの中央プレート3BCに取り付けられていてもよい。
【0067】
また、慣性計測装置S4は、旋回フレーム3F又はブームシリンダフートブラケット60に剛結されているが、ブームフートブラケット3Bに剛結されていてもよい。
【0068】
また、前カメラ80Fとコントローラ30とを接続する信号ケーブルCB1と、慣性計測装置S4とコントローラ30とを接続する信号ケーブルCB2は、1本の信号ケーブルにまとめられていてもよい。また、前カメラ80F及び慣性計測装置S4のそれぞれとコントローラ30とは無線通信を介して接続されていてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1・・・下部走行体 2・・・旋回機構 3・・・上部旋回体 3B・・・ブームフートブラケット 3BC・・・中央プレート 3BL・・・左ブームフートブラケット 3BR・・・右ブームフートブラケット 3E・・・エンジンフード 3F・・・旋回フレーム 3H1、3H2・・・開口 3LF・・・左前部 3RF・・・右前部 3V・・・上部旋回体カバー 4・・・ブーム 5・・・アーム 6・・・バケット 7・・・ブームシリンダ 7L・・・左ブームシリンダ 7R・・・右ブームシリンダ 8・・・アームシリンダ 9・・・バケットシリンダ 10・・・キャビン 11・・・エンジン 11a・・・オルタネータ 11b・・・スタータ 11c・・・水温センサ 14・・・メインポンプ 14a・・・レギュレータ 14b・・・吐出圧センサ 14c・・・油温センサ 15・・・パイロットポンプ 15a、15b・・・操作圧センサ 17・・・コントロールバルブ 21・・・旋回用油圧モータ 26・・・操作装置 26S・・・スイッチボタン 30・・・コントローラ 30a・・・記憶部 40・・・表示装置 40a・・・変換処理部 41・・・画像表示部 42・・・入力部 42a・・・表示切換ボタン 42b・・・方向ボタン 43・・・音声出力装置 60・・・ブームシリンダフートブラケット 60L・・・左ブームシリンダフートブラケット 60R・・・右ブームシリンダフートブラケット 65・・・作動油ホース 70・・・蓄電池 72・・・電装品 74・・・エンジンコントロールユニット 75・・・エンジン回転数調整ダイヤル75 80・・・撮像装置 80F・・・前カメラ 80B・・・後カメラ 80L・・・左カメラ 80R・・・右カメラ CB、CB1~CB3・・・信号ケーブル G1・・・測位装置 PS・・・ショベル S1・・・ブーム角度センサ S2・・・アーム角度センサ S3・・・バケット角度センサ S4、S4A・・・慣性計測装置 T1・・・通信装置