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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】ミニファンモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/18 20060101AFI20240417BHJP
   H02K 7/14 20060101ALI20240417BHJP
   H02K 11/30 20160101ALI20240417BHJP
   H02K 16/02 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
H02K3/18 P
H02K7/14 A
H02K11/30
H02K16/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019024620
(22)【出願日】2019-02-14
(65)【公開番号】P2020137183
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-02-09
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 昌亨
(72)【発明者】
【氏名】吉田 実
【審査官】稲葉 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-046285(JP,A)
【文献】特開2018-166353(JP,A)
【文献】特開2008-245504(JP,A)
【文献】特開2010-259189(JP,A)
【文献】実開昭57-191024(JP,U)
【文献】特開平01-047252(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0087514(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/18
H02K 7/14
H02K 11/30
H02K 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミニファンモータであって、
放射状に配置された複数のベーンを有し、軸方向に延びるシャフトに固定されているインペラと、
中央部に吸気口を有し、前記インペラに被さるように配置されるシュラウドと、
磁極を構成する複数のマグネットを有し、前記シャフトに固定されているロータと、
前記ロータと軸方向に所定のギャップを隔てて対向配置されているステータと、
を備え、
前記ステータは、
中心部に前記シャフトを回転可能に支持する軸受が設置されている基板と、
前記軸受の周りに配置された、コイルおよび鉄心からなる複数のアーマチュアと、
を有し、
長方形の断面を有する平角線をその短辺側に曲げることにより、前記平角線の短辺側が前記鉄心に接して巻回されるように、前記コイルが形成されていて、
前記平角線が、短辺側に並列した状態で密着して延びる2本以上の要素平角線で構成されていて、
前記鉄心が、軸方向に延びて、角部が丸められた略三角形の断面を有する巻回部を有し、
前記要素平角線の各々が、曲げる方向の長辺の線幅の3/4以上の曲げRで前記巻回部に巻回されており
前記要素平角線の端部が、互いに離れた位置に配置されている、ミニファンモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のミニファンモータにおいて、
前記要素平角線の各々の全長が略同一である、ミニファンモータ。
【請求項3】
請求項1に記載のミニファンモータにおいて、
前記要素平角線の各々の幅が、互いに異なっている、ミニファンモータ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載のミニファンモータにおいて、
前記ステータは、前記コイルへの通電を制御する制御回路を更に有し、
前記制御回路が、前記基板における前記アーマチュアよりも径方向外側の領域に配置されている、ミニファンモータ。
【請求項5】
請求項4に記載のミニファンモータにおいて、
前記コイルと前記制御回路とが、前記基板に設けられた配線パターンを介して接続されている、ミニファンモータ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1つに記載のミニファンモータにおいて、
前記ロータは、前記ステータ1つに対して2つあり、当該ロータの各々が、前記ステータの両側にそれぞれ配置されていて、
前記ロータの一方が、前記インペラを兼用している、ミニファンモータ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1つに記載のミニファンモータにおいて、
外径が100mm以下、全高が50mm以下であり、吸込仕事率が300W以上である、ミニファンモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示する技術は、アキシャルギャップ型のミニファンモータに関する。
【背景技術】
【0002】
アキシャルギャップ型のモータは、特許文献1に開示されている。そのモータでは、断面が矩形の裸銅線を複数束ねて被覆した電線(平角線)を用いてコイルを形成している。特許文献1にはまた、1本の平角線を短辺側に曲げてコイルを形成することが開示されているが(比較例1)、そうした場合、渦電流損失が大きくなると記載されている。
【0003】
近年、スティック型の掃除機が注目されている。その掃除機は、従来の掃除機、すなわち、車輪の付いた掃除機本体が、吸い込み口が設けられている棒状の操作部分(スティック)にホースで連なっていて、掃除機本体を引き摺りながら掃除しなければならない掃除機とは異なり、スティックの部分のみで構成されている(掃除機本体およびホースに相当する部分が省略)。通常は、電気コードも省略されている(コードレス)。
【0004】
従って、スティック型の掃除機は、操作性、利便性に優れるため、今後、従来の掃除機に取って代わる可能性が高い。しかも、バッテリーの小型化、高性能化が進んでいることから、スティック型の掃除機でも、ハイパワーで長時間の運転が行えるようになってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-72010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
バッテリーが高性能になれば、それに対応した高出力なファンモータが必要になる。スティック型の掃除機の場合、その構造上、更に小型、軽量であることが要求される。例えば、ファンモータの外径が100mmを超えるサイズになると、スティック型の掃除機としては、違和感が生じるし、扱い辛くなる。
【0007】
従って、少なくとも外径が100mm以下の小型のサイズかつ軽量でありながら、掃除機として十分な吸引力が得られる高出力なファンモータ(ミニファンモータ)が要望されている。
【0008】
この点、特許文献1のモータはサイズが大き過ぎ、スティック型の掃除機への適用は無理である。しかも、特許文献1のモータはコアレスモータであることから、出力効率に欠ける。従って、特許文献1のモータを小型化しても、掃除機に見合う出力は得られない。
【0009】
そこで、開示する技術の主たる目的は、スティック型の掃除機に好適な、高出力が発揮できるミニファンモータを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
開示する技術は、ミニファンモータに関する。
【0011】
前記ミニファンモータは、放射状に配置された複数のベーンを有し、軸方向に延びるシャフトに固定されているインペラと、中央部に吸気口を有し、前記インペラに被さるように配置されるシュラウドと、磁極を構成する複数のマグネットを有し、前記シャフトに固定されているロータと、前記ロータと軸方向に所定のギャップを隔てて対向配置されているステータと、を備える。
【0012】
前記ステータは、中心部に前記シャフトを回転可能に支持する軸受が設置されている基板と、前記軸受の周りに配置された、コイルおよび鉄心からなる複数のアーマチュアと、を有している。そして、長方形の断面を有する平角線をその短辺側に曲げることにより、前記平角線の短辺側が前記鉄心に接して巻回されるように、前記コイルが形成されている。
【0013】
すなわち、このミニファンモータでは、遠心ファンと、アキシャルギャップ型のモータとが一体に構成されている。そのモータを構成するステータが、シャフトを軸支する軸受が中心部に設置されている基板を有し、その基板の軸受の周りに複数のアーマチュアが配置されている。そして、これらアーマチュアが、鉄心とコイルとで構成されていて、そのコイルが、長方形の断面を有する平角線をその短辺側に曲げること、すなわちエッジワイズ巻きによって形成されている。
【0014】
平角線であれば、隙間無く積層できるので、丸線に比べて高い占積率が得られる。しかも、エッジワイズ巻きであれば、厚みの小さい短辺側が積層されていくので、巻回方向(軸方向)におけるコイルのサイズも小さくできる。短辺側が小さくても、長辺側を大きくすることで、平角線の断面積を大きく、つまり電線を太くできる。従って、高出力が発揮できるミニファンモータを実現できる。
【0015】
前記ミニファンモータはまた、前記鉄心が、軸方向に延びて、角部が丸められた略三角形の断面を有する巻回部を有し、前記巻回部に前記平角線が巻回されている、としてもよい。
【0016】
そうすれば、各アーマチュアを、より密集した状態で基板の中心部に集約して配置することができる。従って、ミニファンモータのサイズを、よりいっそう小さくできる。
【0017】
前記ミニファンモータはまた、前記平角線が、短辺側に並列した状態で密着して延びる2本以上の要素平角線で構成されている、としてもよい。
【0018】
ミニファンモータの場合、コイルは、超ミニサイズになる。そのため、極小の鉄心に対して、断面の大きな平角線を巻回しなければならない。それに対し、平角線の曲げR(品質が保証できる曲げ半径の限界値)は、曲げる方向の線幅の3/4以上とされている。そのため、長辺側が大きな平角線を、極小の鉄心に合わせて曲げると、曲げRの限界を超える。従って、平角線の絶縁膜が破れたり導線が破断したりするおそれがあり、コイルの適正な品質が確保できない。
【0019】
平角線を複数の要素平角線で構成すれば、曲げる方向の線幅は、個々の要素平角線の線幅になるので、曲げRを小さくできる。従って、平角線の大きな断面積を維持しながら、大きく曲げることが可能になるので、コイルの電流密度を下げることができ、高出力が発揮できるミニファンモータを実現できる。
【0020】
前記ミニファンモータはまた、前記要素平角線の端部が、互いに離れた位置に配置されている、としてもよい。
【0021】
詳細は後述するが、各要素平角線の電気抵抗の差に起因して循環電流が流れることで、モータ出力に影響が出るおそれがある。それに対し、要素平角線の端部を、互いに離れた位置に配置すれば、各要素平角線の電気抵抗の差を略同一にして循環電流を抑制できる。従って、モータの高出力を維持できる。
【0022】
具体的には、前記要素平角線の各々の全長を略同一にすればよい。
【0023】
前記ミニファンモータはまた、前記要素平角線の各々の幅が互いに異なっている、としてもよい。
【0024】
この場合も、各要素平角線の抵抗値を略同一にできる。従って、モータの高出力を維持できる。
【0025】
前記ミニファンモータはまた、前記ステータは、前記コイルへの通電を制御する制御回路を更に有し、前記制御回路が、前記基板における前記アーマチュアよりも径方向外側の領域に配置されている、としてもよい。
【0026】
そうすれば、ロータは、アーマチュアの一群と軸方向に対向するので、制御回路とは対向しない。従って、渦電流損の発生が抑制できるので、モータを、よりいっそう高効率化できる。しかも、径方向外側の領域であれば、面積が大きいので、余裕をもって制御回路を配置できる。
【0027】
その場合、前記コイルと前記制御回路とが、前記基板に設けられた配線パターンを介して接続されている、とするのが好ましい。
【0028】
そうすれば、電線が不要になるので、製造が容易になるし、構造も簡素化される。
【0029】
前記ミニファンモータはまた、前記ロータは、前記ステータ1つに対して2つあり、当該ロータの各々が、前記ステータの両側にそれぞれ配置されていて、前記ロータの一方が、前記インペラを兼用している、としてもよい。
【0030】
そうすれば、よりいっそう高出力が発揮できるし、部材点数が削減されて構造が簡素化され、サイズもコンパクトになる。
【0031】
前記ミニファンモータはまた、外径が100mm以下、全高が50mm以下であり、吸込仕事率が300W以上である、としてもよい。
【0032】
そうすれば、サイズ、性能ともに、スティック型の掃除機の掃除機に好適であり、操作性、利便性に優れた掃除機が実現できる。
【発明の効果】
【0033】
開示する技術によれば、高出力が発揮できるミニファンモータを実現できる。従って、スティック型の掃除機に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】実施形態のミニファンモータを搭載したスティック型の掃除機を示す概略図である。
図2】ミニファンモータを側方から見た概略図である。
図3】ミニファンモータの分解斜視図である。
図4】基板を上方から見た概略図である。
図5A】アーマチュアの概略斜視図である。
図5B】アーマチュアの分解斜視図である。
図6A】エッジワイズ巻きを説明するための図である。
図6B】要素平角線を説明するための図である。
図7】応用例を説明するための図である。
図8A】応用例の1つを示す概略図である。
図8B】応用例の他の1つを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、開示する技術の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限するものではない。
【0036】
<スティック型の掃除機>
図1に、開示する技術に好適な、スティック型の掃除機1を例示する。この掃除機1は、コードレスタイプであり、内蔵するバッテリー8の電力で駆動できるように構成されている。
【0037】
この掃除機1に、開示する技術を適用したミニファンモータ2が搭載されている。掃除機1は、吸込部3、管部4、本体部5、ダストケース6、把手部7などで構成されている。
【0038】
吸込部3は、下面に吸込口3aを有し、回動自在なローラ3bにより、床面に沿ってスライド自在に構成されている。管部4は、伸縮可能な細長い筒状の部材からなる。管部4は、その下端部は吸込部3に接続され、その上端部は本体部5に接続されている。管部4は、吸込口3aと本体部5とを連通させている。
【0039】
本体部5は、管部4よりもやや大きなサイズに形成されている。本体部5に、ミニファンモータ2、バッテリー8、制御部9などが収容されている。制御部9は、ミニファンモータ2の駆動を制御する。バッテリー8は、充電可能な二次電池であり、ミニファンモータ2に電力を供給する。
【0040】
把手部7は、ユーザが把持する部分であり、本体部5と一体に設けられている。把持部は、本体部5の後側から後方に突き出すように設けられている。掃除機1は、ユーザが把持部を片手で持った状態で扱えるように構成されている。
【0041】
把持部の下側にダストケース6が設置されている。ダストケース6は、本体部5から脱着可能に構成されている。ミニファンモータ2は、ダストケース6に隣接した位置に配置されている。ミニファンモータ2は、制御部9の制御に従い、バッテリー8から供給される電力によって駆動する。ミニファンモータ2が駆動すると、強力な吸引力が形成される。それにより、吸込口3aから吸い込まれるダストが、管部4を通ってダストケース6に集積される。
【0042】
<ミニファンモータ2>
図2に、ミニファンモータ2を示す。ミニファンモータ2は、ファンとモータとが一体に構成されている小型の装置である。ファンは、いわゆる遠心ファンであり、白抜き矢印で示すように、ファンの中心から空気を吸い込んで、細矢印で示すように、径方向外側に吐出する。
【0043】
本体部5に収容できるように、ミニファンモータ2の外径Dおよび全高Hは、非常に小さく設計されている。例えば、図例のミニファンモータ2の場合、外径Dは略70mm、全高Hは略40mm程度の大きさ(いわゆる手のひらサイズ)である。従って、その重量も軽く、手のひらに載せても苦にならないレベルである。
【0044】
しかも、バッテリー8の電力を用いて、掃除機1として十分な性能が得られるように、高効率で高出力が得られるように構成されている。図例のミニファンモータ2の場合、600Wの消費電力で、100000rpm以上の高速で回転駆動でき、300W以上の吸込仕事率が得られるように構成されている。
【0045】
図3に、ミニファンモータ2の構造を示す。ミニファンモータ2は、シュラウド10、第1ロータ20、第2ロータ30、ステータ40、フレーム50、シャフト60などで構成されている。シャフト60は、棒状の部材であり、ミニファンモータ2の回転軸Aと同軸に設けられている。
【0046】
(シュラウド10)
シュラウド10は、ハット形状の外観を呈しており、環状のボトム部11と、ボトム部11の内縁に連なって、先に行くほど次第に径が小さくなるように突出したファネル部12とを有している。シュラウド10の中央に位置するファネル部12の上部に、円形の吸気口12aが形成されている。ボトム部11の裏側には、周方向に互いに間隔を隔てて配置された複数のフィン13が立設されている。
【0047】
(第1ロータ20)
第1ロータ20は、シュラウド10よりも外径が小さく、厚みの大きな円板状の部材からなる。第1ロータ20は、外周が円形の主壁部21と、主壁部21の中心に凸設されたボス部22と、ボス部22の周囲を二重に囲む円筒状の内側周壁部23および外側周壁部24と、を有している。主壁部21、ボス部22、および周壁部は、金属などの強磁性体により、一体に形成されている(いわゆるヨークに相当)。
【0048】
内側周壁部23と外側周壁部24との間には、円弧状の複数(図例では4つ)のマグネット25が嵌め込まれている。各マグネット25は、N極とS極とが周方向に交互に位置するように配置されている。これらマグネット25により、第1ロータ20の磁極が構成されている。
【0049】
(第2ロータ30)
第2ロータ30は、第1ロータ20とほぼ同じ大きさ、構造を有している。すなわち、第1ロータ20と同じ、主壁部(区別するため符号31で示す)、差込孔が開口するボス部22、内側周壁部23、および外側周壁部24を有し、内側周壁部23と外側周壁部24との間には、第1ロータ20と同様にマグネット25が嵌め込まれている(図示せず)。
【0050】
第2ロータ30は、第1ロータ20とは異なり、その主壁部31の壁面(マグネット25の反露出側)に複数のベーン36が放射状に設置されている。すなわち、第2ロータ30は、インペラを兼用している。
【0051】
(フレーム50)
フレーム50は、環状のリング枠51、複数の(図例では6つ)ピラー52、円板状の軸受カバー53、複数(図例では6つ)のアーム54などを有している。フレーム50は、ステータ40に対し、シュラウド10および第2ロータ30を所定の位置に支持する。
【0052】
各ピラー52は、周方向に等間隔で配置されており、リング枠51から軸方向に延びている。軸受カバー53は、リング枠51の中心に、リング枠51から軸方向をピラー52の側にずれて配置されている。各アーム54は、その軸受カバー53から放射状に延びてL状に屈曲し、リング枠51の内縁に接続されている。
【0053】
(ステータ40)
ステータ40は、基板41、複数(図例では6つ)のアーマチュア42、制御回路43などで構成されている。
【0054】
図4にも示すように、基板41は、シュラウド10よりも外径が大きな円盤状の部材からなる。基板41の表面の中心部には、軸受カバー53が被さるように、内部にベアリングを有する円柱状の軸受40aが設置されている。軸受40aにシャフト60が回転可能な状態で支持されている。シャフト60は、基板41に対して垂直な軸方向に延びている。
【0055】
基板41の外周部には、複数(図例では6つ)のネジ孔41aが形成されている。基板41の裏面からこれらネジ孔41aに差し込まれるネジ44が、各アーム54の下端に締結されることにより、フレーム50は、基板41に取り付けられている。シャフト60の一端は、軸受40aに被さった軸受カバー53から突出し、シャフト60の他端は、基板41の裏面から突出している。
【0056】
アーマチュア42は、コイル42aと、鉄心42bとで構成されている。各アーマチュア42は、軸受40aの周りに密集した状態で、周方向に並ぶように配置されている(アーマチュア42の詳細については後述)。
【0057】
基板41は絶縁性の素材で構成されていて、基板41に制御回路43が設けられている。制御回路43は、コンデンサ43aや素子43bなどの電気部品を含み、各アーマチュア42のコイル42aへの通電を制御するように構成されている。制御回路43は、基板41における各アーマチュア42よりも径方向外側の環状の領域(環状領域R)に配置されている。環状領域Rであれば、比較的面積が大きいので、電機部品が多数であっても、支障無く配置できる。
【0058】
制御回路43は、コネクタが付いているケーブル43cを有する端子部43dも含む。ケーブル43cは、制御部9との接続に用いられる。制御回路43はまた、基板41に沿って延びる導電体で構成された配線パターン43eも含む。
【0059】
図示は省略するが、各アーマチュア42のコイル42aの端部は、基板41に差し込むことにより、配線パターン43eと接続されている。制御回路43はまた、配線パターン43eを介して端子部43dと接続されている。すなわち、このステータ40では、電気部品やコイル42aの接続に、電線424は用いられていない。基板41に形成された配線パターン43eで接続されているので、製造が容易になるし、構造も簡素化される。
【0060】
環状領域Rであれば、配線パターン43eも余裕を持って形成できるので、短絡や断線などの不具合を抑制できる。特に、このモータでは、コイル42aに大きな電流が供給されるので、配線パターン43eもそれに応じた大きな断面積が要求される。環状領域Rであれば、そのような断面積の大きな配線パターン43eも余裕をもって形成できる。
【0061】
軸受カバー53から突出したシャフト60の一端は、マグネット25の露出側から第2ロータ30のボス部22の差込孔に圧入されて固定されている。基板41の裏面から突出したシャフト60の他端は、マグネット25の露出側から第1ロータ20のボス部22の差込孔に圧入されて固定されている。
【0062】
それにより、第1ロータ20は、ステータ40と軸方向に所定のギャップを隔てて対向配置されている。第2ロータ30は、軸受カバー53、各アーム54、およびリング枠51に囲まれたスペースに収容されていて、第2ロータ30も、ステータ40と軸方向に所定のギャップを隔てて対向配置されている。
【0063】
具体的には、第1ロータ20および第2ロータ30の各々のマグネット25は、ステータ40に設けられたアーマチュア42の一群と、軸方向に対向するように構成されている。そして、第1ロータ20および第2ロータ30の各々のマグネット25は、環状領域R(ステータ40に設けられた制御回路43)と、軸方向に対向しないように構成されている。
【0064】
すなわち、第1ロータ20および第2ロータ30の各々のマグネット25は、アーマチュア42の一群のみと、軸方向に対向するように構成されていて、制御回路43や配線パターン43eとは対向していないので、渦電流損の発生が抑制できる。従って、モータを、よりいっそう高効率化できる。
【0065】
シュラウド10は、フィン13が立設されているボトム部11の裏側をリング枠51に向け、第2ロータ30に被さる状態で、フレーム50に固定されている。それにより、シュラウド10、およびインペラを兼用する第2ロータ30により、軸流型のファンが構成されている。
【0066】
(アーマチュア42)
各アーマチュア42は、図5Aに拡大して示すように、指先に乗るレベルの微小な部品からなる。アーマチュア42は、このような微小な大きさであることから、高効率、高出力なモータを実現するために、その素材や形状が工夫されている。
【0067】
モータを高出力にするには、できるだけ大きな電流をコイル42aに供給して、強い磁力を発生させる必要がある。大きな電流をコイル42aに流すためには、太い電線424が好ましく、高効率で強い磁力を発生するには、コイル42aに鉄心42bを設けたり占積率を高めたりするのが好ましい。
【0068】
そこで、図5Bにも示すように、アーマチュア42は、コイル42aと、鉄心42bとで構成されている。鉄心42bは、鉄粉等を圧縮成形して形成されており、一対のフランジ部420および巻回部421で構成されている。フランジ部420は、板状の部分であり、角部が丸められた略扇形に形成されている。巻回部421は、フランジ部420に直交して延びる柱状の部分であり、角部が丸められた略三角形の断面を有している。巻回部421は、一方のフランジ部420の中央部に立設されている。
【0069】
予め所定形状のコイル42aを形成し、そのコイル42aを鉄心42bに装着することにより、アーマチュア42は形成されている。すなわち、コイル42aには、巻回部421よりも僅かに大きな略三角形の断面を有する挿入孔423が設けられていて、この挿入孔423に巻回部421が差し込まれる。そうして、挿入孔423から突出する巻回部421の突端に、他方のフランジ部420を取り付けることにより、アーマチュア42は形成されている。
【0070】
図6Aに示すように、コイル42aは、銅等の電気導体424aを絶縁膜424bで被覆して構成された電線424を巻回して形成されている。このモータでは、その電線424に、長方形の断面を有する平角線が用いられている。図6Aに矢印で示すように、平角線を、その短辺側に曲げることによってコイル42aが形成されている(いわゆるエッジワイズ巻き)。
【0071】
平角線であれば、隙間無く積層できるので、丸線に比べて高い占積率が得られる。しかも、エッジワイズ巻きであれば、厚みの小さい短辺側が積層されていくので、巻回方向(軸方向)におけるコイル42aのサイズも小さくできる。短辺側が小さくても、長辺側を大きくすることで、平角線の断面積を大きく、つまり電線424を太くできる。
【0072】
ところが、このミニファンモータ2の場合、コイル42aは、上述したように超ミニサイズになる。そのため、極小の鉄心42bに対して、断面の大きな平角線を巻回しなければならない。それに対し、このアーマチュア42では、予め所定の巻回形状に形成したコイル42aを鉄心42bに装着することによって構成されている。従って、極小の鉄心42bに対し、断面の大きい平角線を、しかも曲げ難いエッジワイズ巻きで巻き付ける必要がない。従って、製造が容易にできる。
【0073】
更に、平角線の曲げR(品質が保証できる曲げ半径の限界値)は、曲げる方向の線幅の3/4以上とされている。そのため、長辺側が大きな平角線を、極小の巻回部421の断面形状に合わせて、そのまま曲げると、曲げRの限界を超える。従って、絶縁膜424bが破れたり導線が破断したりするおそれがあり、適正な品質が確保できない。
【0074】
そこで、このミニファンモータ2では、平角線(電線424)を、短辺側に並列した状態で密着して延びる2本以上の要素平角線425で構成している。各要素平角線425の端部は、平角線の端部と同様に、配線パターン43eに接続される(並列接続)。
【0075】
図6Bに、その一例を示す。このミニファンモータ2では、上段に示すサイズの平角線(基準平角線424S)が要求されているとする。中段には、2本の要素平角線425,425で、その基準平角線424Sを構成する場合を示している。下段には、3本の要素平角線425,425,425で、その基準平角線424Sを構成する場合を示している。要素平角線425の構造は、平角線424と同じである。
【0076】
各要素平角線425の断面における短辺側の大きさは、基準平角線424Sと同じである。一方、各要素平角線425の断面における長辺側の大きさ(線幅)は、基準平角線424Sに対し、ほぼ、その本数で割った大きさになっている(絶縁膜424bの厚みの分の差異はあるが、その差異は僅か)。従って、各要素平角線425の電気導体424aの断面積の総和は、基準平角線424Sの電気導体424aの断面積と略同じである。
【0077】
このように、平角線を複数の要素平角線425で構成すれば、曲げる方向の線幅は、個々の要素平角線425の線幅になるので、曲げRを小さくできる。従って、電気導体424aの大きな断面積を維持しながら、極小の巻回部421の断面形状に合わせて曲げることが可能になる。
【0078】
要素平角線425の本数は、仕様に応じて適宜選択できる。このミニファンモータ2の場合、中段の構成(2本の要素平角線425)が採用されている。3本以上になると、短辺側に並列した状態で密着させるのが難しくなるが、2本であれば、比較的容易に短辺側に並列した状態で密着させることができる。すなわち、製造が容易である。
【0079】
このように、このミニファンモータ2によれば、平角線424をエッジワイズ巻きすることによって、コイル42aが形成されているので、軸方向にコイル42aを小さくしながら、占積率を高めることができる。アーマチュア42に鉄心42bが設けられているので、高効率で強い磁力を発生することができる。
【0080】
平角線424が、短辺側に並列した状態で密着して延びる複数の要素平角線425で構成されているので、曲げRを小さくでき、極小の巻回部421に、電気導体424aの断面積の大きな電線424を巻回することができる。従って、電流密度を下げることができるので、大電流を効率的かつ安定して流すことができる。
【0081】
予め所定形状に巻回したコイル42aを鉄心42bに装着するので、アーマチュア42の製造も容易にできる。
【0082】
<応用例>
図7に示すように、配置の関係上、曲げる方向の内側に位置する要素平角線425(符号425iで表す)よりも、曲げる方向の外側に位置する要素平角線425(符号425oで表す)の方が、全長が長くなる。線幅が大きくなると、それだけ、全長に差が生じる。
【0083】
要素平角線425i,425oの全長に差があると、それに伴って電気抵抗も差が生じる。要素平角線425i,425oの電気抵抗に差があると、電位差が発生し、図7に矢印Yで示すように、要素平角線425i,425oの端部、すなわち、それぞれを覆っている絶縁膜が剥がされて導体が露出している部位(同じ端子に接続される部位)の間で循環電流が流れる。全長の差が大きくなると、循環電流による損失が大きくなるため、モータ出力に影響が出るおそれがある。
【0084】
そこで、そのような場合には、各要素平角線425の電気抵抗の値が略同一になるようにするのが好ましい。
【0085】
例えば、図8Aに示すように、要素平角線425の端部が、互いに離れて位置するように配置するとよい。具体的には、曲げる方向の外側に位置する要素平角線425oよりも、曲げる方向の内側に位置する要素平角線425iの方が、曲げ中心に対して外周側に位置するよう、互い違いに配置すればよい。
【0086】
そうすることで、各要素平角線425i,425oの全長を略同一できる。全長が略同一になれば、電気抵抗の値が略同一になるので、循環電流を抑制できる。従って、高いモータ出力を維持できる。
【0087】
図8Bに示すように、要素平角線425i,425oの各々の幅WI,WOを、互いに異なるようにしてもよい。この場合も、各要素平角線425i,425oの抵抗値を略同一にできる。端部の位置が同じであるため、配置面で利点である。
【0088】
なお、開示する技術にかかるミニファンモータは、上述した実施形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。
【0089】
適用できる掃除機は、スティック型に限らない。例えば、ロボット型の掃除機にも好適である。ロータは2つが好ましいが、1つであってもよい。ロータの一方は、鋼板などの磁性体で代用してもよい。平角線は、2本の要素平角線で構成したが、3本以上の要素平角線で構成してもよい。
【符号の説明】
【0090】
1 掃除機
2 ミニファンモータ
10 シュラウド
20 第1ロータ
30 第2ロータ(インペラ)
40 ステータ
40a 軸受
41 基板
42 アーマチュア
42a コイル
42b 鉄心
43 制御回路
420 フランジ部
421 巻回部
424 電線(平角線)
424a 電気導体
424b 絶縁膜
425 要素平角線
50 フレーム
60 シャフト
A 回転軸
R 環状領域
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8A
図8B