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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】空気圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 41/02 20060101AFI20240417BHJP
【FI】
F04B41/02 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019134253
(22)【出願日】2019-07-22
(65)【公開番号】P2021017851
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】内田 光
(72)【発明者】
【氏名】大畠 瑛人
【審査官】丹治 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-127506(JP,A)
【文献】特開2019-023435(JP,A)
【文献】特開2018-194005(JP,A)
【文献】特開2010-059974(JP,A)
【文献】特開2010-127272(JP,A)
【文献】特開平05-231324(JP,A)
【文献】特許第7005765(JP,B2)
【文献】特開平07-054775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機本体と、
前記圧縮機本体により圧縮された気体を貯蓄するタンクと、
前記圧縮機本体を制御する制御組と、
一端が前記タンクに接続され、もう一端が前記制御組を向いたエアブロー機構と、を備え、
前記エアブロー機構は、前記制御組により開閉を制御される電磁弁を有しており、
前記制御組が、前記圧縮機本体の再起動時に前記電磁弁を所定の間、開とする圧縮機。
【請求項2】
前記電磁弁と前記タンクとの間に減圧弁を有する請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
前記電磁弁の下流にフィルタを有する請求項2に記載の圧縮機。
【請求項4】
前記制御が、前記圧縮機本体の起動時に前記電磁弁を所定の間、開とする請求項1に記載の圧縮機。
【請求項5】
前記制御の下方の保護部材が、水平面ではない請求項1に記載の圧縮機
【請求項6】
前記保護部材の上面が撥水性である請求項5に記載の圧縮機。
【請求項7】
保護部材が樹脂である請求項5に記載の圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
ケーシング内に圧縮機構および電動機が収容されたスクリュー圧縮機において、ケーシング上面に設置されたターミナル組立品とそれを収容するターミナルケースを持ち、ターミナルケース内で発生した結露による凝縮水を貫通孔および排水チューブによって外部へ排出するが知られており、特許文献1などに記載されている。
【0003】
また、建築現場等で使用される可搬型空気圧縮機として、作業終了時、空気タンク内に残った圧縮空気を減圧弁の先に取り付けられたエアダスタ部によって取り出し、工具等を清掃するために有効活用することが可能となる構成が知られており、特許文献2などに記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-274910
【文献】特開2014-70583
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
可搬型空気圧縮機は、主に工事現場等で大工が釘打ちを行う際に用いられる。このような圧縮機は一般的な圧縮機と比べ、半屋外環境下で使用される可能性がある。そのため、降雨による雨水、木材・石膏等による粉塵、または高湿度環境化での使用による圧縮機内部の結露など、様々な外的要因により、制御基板が破損する可能性がある。外部からの水滴・粉塵の侵入を防ぐためには、制御基板のすべての面をケーシングにて覆ってしまえばよいが、実装されている素子が発熱した際の熱がケーシング内で籠ってしまうため、素子の仕様温度を超え、破損してしまう可能性がある。そのため、制御回路用のケーシングには解放部が存在する。圧縮機の空気取り込み口等から雨水・粉塵が圧縮機内に侵入した場合、制御基板ケーシングの解放部からケーシング内に侵入し、ケーシング下部の制御カバーに滞留する可能性がある。また結露によって水滴が発生した場合にも同様に制御カバー内に滞留する可能性がある。このような場合には、制御ケース内から水滴・粉塵を除去し、基板を保護する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
滞留した水滴及び粉塵を外部に排出ために、タンク内の圧縮空気を取り出し、制御カバー内に滞留した水滴及び粉塵を外部に排出させることで、基板の破損を未然に防ぐ構造とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、可搬型圧縮機の水滴及び粉塵等の外的要因に起因する制御基板の破損を防止でき、製品の信頼性向上につながる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施例1に係る可搬型空気圧縮機の断面図の一例
図2】本発明の実施例1に係る圧縮機外観の上面図の一例
図3】本発明の実施例1に係る圧縮機の断面図の一例
図4】本発明の実施例1における、圧縮機の構成図の一例
図5】本発明の実施例1における、圧縮機構成のブロック図の一例
図6】本発明の実施例1における、運転開始時のエアブロー機構付き圧縮機の動作の一例を示すフローチャート
図7】本発明の実施例3における、制御組30及び形状変更後の制御ケース32の構成図の一例
図8】本発明の実施例1における、インラインフィルタの配置例を示す図の一例
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施例を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0010】
まず、本発明の実施例1に係る可搬型空気圧縮機の構造を、図1、2、3を参照し、以下にて説明する。
【0011】
図1は可搬型空気圧縮機の断面図の一例である。図1は大きく空気を圧縮する圧縮機本体1と、圧縮機本体1を駆動するモータ6と、圧縮機本体1とモータ6を冷却する冷却ファン10とから構成されている。
【0012】
圧縮機本体1は、圧縮機本体1及びモータ6を覆うクランクケース1Aとクランクケース1Aに取り付けられた高圧側シリンダ18A、低圧側シリンダ18B、クランクケース1Aのモータ6と反対側に軸受箱5が勘合されている。
【0013】
クランクケース1Aにはモータ6のシャフト(回転軸)6Aが貫通しており、クランクケース1Aに配置されたベアリング3と、軸受箱5に配置されたベアリングとにより支持されている。
【0014】
シャフト6Aの中央部にはキー12によってエキセントリック16A、16Bとバランス17が固定され、シャフト6Aと共に回転する。また、エキセントリック16A、16Bにはベアリング15A、15Bを介して連接棒組14A、14Bが回転自在に接続されている。連接棒組14Aのピストン外周には作動室の空気をシール、圧縮するためのピストンリング13が備えられている。
【0015】
クランクケースに取り付けられた高圧側シリンダ18A、低圧側シリンダ18Bはクランクケースを挟んで互いに対向するように取り付けられている。クランクケース1Aにはシリンダ18を取り付けるためのフランジ19が設けられており、シリンダ18には、空気弁20、シリンダヘッド21、シリンダヘッド21をシリンダ18に接続する通しボルト22を備える。シリンダ1、空気弁20、シリンダヘッド21が、通しボルト22によって前記フランジ19に固定され、圧縮室23を形成している。
【0016】
モータ6はステータ2、シャフト6A、キー7、ロータ8、ワッシャ9を有している。クランクケース1Aの一端側にはステータ2が直接固定されており、また、シャフト6Aの一端側にキー7を介してロータ8が装着されている。ロータ8はワッシャ9と冷却ファン10を取り付けるためのファンシャフト11によって、軸方向に固定されている。
【0017】
冷却ファン10は冷却カバー26の内部に冷却風を供給し、圧縮機本体1、貯留タンク24、25などのタンク一体式空気圧縮機の構成要素を冷却する。冷却ファン10はファンシャフト11によってシャフト6Aの端部に設けられ、シャフト6Aの回転に伴い回転する。
【0018】
図2は可搬型空気圧縮機の上面図を示す。圧縮機本体1は貯タンク24、25の上部に配置され、冷却カバー26によって覆われている。圧縮機本体1は電源投入後、操作部29に配置されたスイッチにより、動作を行う。
【0019】
本実施例における圧縮機本体1の動作について説明する。本実施例における圧縮機本体1は前記ロータ8の駆動によりシャフト6Aが回転すると、エキセントリック16によって連接棒組14およびピストンリング13が圧縮室23内を往復運動する。このピストンリング13が上死点から下死点へ向かう吸い込み工程ではシリンダヘッド21、空気弁20を通じて圧縮室23内へ空気を吸い込み、逆に上死点へ向かう吐き出し工程では吸い込んだ空気を圧縮しつつ、空気弁20、シリンダヘッド21を通じて吐き出す構造である。シリンダヘッド21を通じて吐き出された空気は貯留タンク24、25に貯留される。
【0020】
次に本実施例における制御組30による圧縮機本体1の制御について図3を参照し説明する。図3は可搬型空気圧縮機の断面図である。本実施形態では、2つの貯留タンク24、25の上部に圧縮機本体1が配置され、2つの貯留タンク24、25の間にはタンク一体式空気圧縮機の運転を制御する制御組30が配置されている。
【0021】
制御組30の下部には、制御組30を保護するための制御ケース32が取り付けられている。前記タンク一体式空気圧縮機は圧力運転制御方式を採用しており、貯留タンク24に取り付けた圧力センサ31にてセンシングした圧力に応じて、前記制御組30で運転制御を行う。
【0022】
次に本発明における実施形態及び動作について、図2、4、5、6を用いて説明する。貯タンク24には、常圧用減圧弁33及び高圧用減圧弁34が取り付けられており、それぞれに常圧用圧力計35、高圧用圧力計36が取り付けられている。さらに、常圧用カプラ37、高圧用カプラ38が二口ずつ取り付けられており、ユーザーはカプラの先に対したホース及び釘打ち機などを取り付けることで、貯タンク24、25内の圧縮空気を取り出す。本発明においては、図4に示す通り、常圧用減圧弁33下部にT字継手39、減圧弁40、電磁弁41、、インラインフィルタ43、にて構成される制御カバー内用のエアブロー機構45が設けられている。
【0023】
エアブロー機構45の制御フローを図6に示す。本実施形態では、ユーザーが作業を開始する際、プラグをコンセントに差し込み、電源を圧縮機へ投入(「電源投入」)し、操作部29により圧縮本体1の運転を開始(「運転SwON」)することにより、圧縮機の動作が開始(「圧縮機動作開始」)する。
【0024】
圧縮機動作開始後、運転直後の一定時間(例えば3秒程)の間は減圧弁40の先に取り付けられた電磁弁41が解放された状態(「電磁弁解放」)となり、インラインフィルタ43を通してエアブローを行う。
【0025】
一定時間が経過した後、電磁弁を閉じ(「電磁弁 閉」)、通常運転を開始する。通常運転では、貯留タンク24、25内の圧力が目標圧力を超えたか否かを判定(「タンク内圧>目標圧力」)し、超えていなければ(「No」)判定を継続、超えていれば(「Yes」)圧縮機を停止(「圧縮機停止」)する。
【0026】
圧縮機停止後は、貯留タンク24、25内の圧力が再起動圧力P0を下回ったか否かを判定(「タンク内圧力<再起動圧力」)し、下回っていなければ(「No」)判定を継続、下回っていれば(「Yes」)圧縮機を再起動(「再起動」)する。
【0027】
制御組30は図示しない記憶部に再起動回数を記憶する領域を有しており、再起動の際に制御組30はこの再起動回数をインクリメントする。
【0028】
その後、再起動回数が所定値であるかどうかを判定し(「再起動回数=N×10」)、所定値でなければ(「No」)「タンク内圧>目標圧力」の判定に戻り、所定値であれば(「Yes」)、一定時間(例えば1秒程)電磁弁を開放し(「電磁弁解放」)、一定時間後に電磁弁を閉じ(「電磁弁 閉」)、「タンク内圧>目標圧力」の判定に戻る。
【0029】
以上の動作により、作業開始時に制御ケース内に滞留されていた水滴及び粉塵を外部へ排出させる構成である。
【0030】
ここで、排出する空気に水分が多い場合、インラインフィルタ43が吸湿してフィルタの効果がなくなり制御組30にブローされる空気の水分量が増加してしまう。これを避けるため、インラインフィルタ43に隣接する貯タンク24の熱量を利用してインラインフィルタ43を乾燥させる必要がある。
【0031】
貯留タンク24は圧縮後の高温の圧縮空気が蓄えられるために高温となりやすく、また、制御組30は圧縮機駆動による電流増加によって発熱するため、インラインフィルタ43を制御組30と貯タンク24の間に配置することで、図8に示すようにインラインフィルタ43を高温にさすことができ、インラインフィルタ43の乾燥剤に熱を伝え、乾燥させることができる。
【0032】
一方、当該圧縮機については、建築現場にて使用されることが主であり、作業中に木材・石膏等による粉塵や急な降雨による水滴の侵入が考えられる。そこで、通算の再起動回数(例えば通算10回目、20回目、・・・)によって、所定の再起動時には電磁弁を解放する制御にすることで作業中に侵入した水滴・粉塵を適宜排出させる動作を行う。これによって作業中に混入した水滴・粉塵による制御基板の破損を防止する。
【0033】
なお、目標圧力や再起動圧力は圧縮機の動作モードに応じて変更可能であり、標準動作と比較して再起動圧力を高く設定することで使用量が多い場合に圧縮空気の枯渇を防ぐことができ、標準動作と比較して目標圧力を低く設定することで圧縮空気の使用量が少ない場合に静音性を高めることができる。
【実施例2】
【0034】
本発明における実施例2について、図3、7を用いて説明する。常圧用減圧弁33の下部に取り付けられたエアブロー機構45によって、特定の状況で制御ケース32内の水滴・粉塵を外部に排出できる可搬型圧縮機において、制御ケース32の形状を変更することにより、内部の水滴を任意の方向に誘導させやすくする。実施例1では、制御ケース32を制御組30とともに貯タンク24、25の間へ取り付けた際、地面に対して制御ケース32の底面部が平行になる構成である。
【0035】
この場合、エアブロー機構45からのエアブローがなければ制御ケース32内滞留した水滴・粉塵は圧縮機の動作による振動で若干排出がされる他、ユーザーが持ち上げて圧縮機が傾くなどの場合にのみ制御ケース32外に排出され、エアブローをされていない期間にケース内に水滴や粉塵が滞留しやすくなる。そこで、制御ケース32の底面を水平面に対して傾斜させた構造とすることにより、制御ケース32内に滞留した水滴を特定の方向に移動させ易くすることができる。
【0036】
図7に示す通り、例えば制御ケース32の底面部を地面に対して5°程度、エアブロー機構の風上から風下の方向に傾けることによって、一方向に水滴が流れやすくさせることができる。そのうえでエアブロー機構を用いることによって、傾斜させた方向により水滴・粉塵を移動させやすくなり、水滴や粉塵から製品を保護することができる。
【0037】
制御ケース32内のレイアウトに関しては、図7のように防水皮膜されているもののできるだけ濡らさないようが良い電源コードなどは傾斜面の上部に配置することで電源コードが浸水して漏電する危険性を下げることができる。実施例1に関しても同様であるが、図7左上のエアブローによる異物排出の効果が高い部分には制御基板の主要部品を配置することで、より安全性を高めることができる。
【0038】
制御ケース32の底面部を傾斜させたことによる水滴の排出効果をさらに高めるために、制御ケース32の材質を変更させてもよい。例えば底面部に樹脂板を取り付ける、または制御ケース32そのものを樹脂とすることにより、撥水性が高くなり、水滴を移動させやすくさせる。もしくは親水性の高い樹脂などの素材を底面部に採用することで、エアブローがない期間に水滴がより排出されやすくすることもできる。
【0039】
なお、制御ケースの材料を樹脂にすることで、軽量化や形状を変更し、制御基板を止める部分に爪のような形状ではめ込んでもよい。または、アルミ板金のケース内部に撥水コーティングを施すことによって、樹脂とした場合と同程度の効果を得られるため、安価に制御基板の保護を行うことができる。
【符号の説明】
【0040】
1 圧縮機本体
2 ステータ
3、4 ベアリング
5 軸受箱
6 モータ
6A シャフト
10 冷却ファン
13 ピストンリング
14 連接棒組
16 エキセントリック
18 シリンダ
20 空気弁
21 シリンダヘッド
24、25 貯留タンク
26 冷却カバー
29 操作部
30 制御組
31 圧力センサ
32 制御ケース
33 常圧用減圧弁
34 高圧用減圧弁
35 常圧用圧力計
36 高圧用圧力計
37 常圧用カプラ
38 高圧用カプラ
39 T字継手
40 減圧弁
41 電磁弁
42 エルボ
43 インラインフィルタ
44 吐出管
45 エアブロー機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8