(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】回転電機システム
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20240417BHJP
H02P 27/06 20060101ALI20240417BHJP
H02H 7/122 20060101ALI20240417BHJP
H02P 25/18 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
H02M7/48 M
H02P27/06
H02H7/122 Z
H02P25/18
(21)【出願番号】P 2019218026
(22)【出願日】2019-12-02
【審査請求日】2022-11-07
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【氏名又は名称】北 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】金城 博文
(72)【発明者】
【氏名】塚本 康裕
(72)【発明者】
【氏名】赤間 貞洋
(72)【発明者】
【氏名】眞貝 知志
(72)【発明者】
【氏名】石田 稔
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/095868(WO,A1)
【文献】特開2017-200370(JP,A)
【文献】特開2017-225236(JP,A)
【文献】特開2009-268304(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02P 27/06
H02H 7/122
H02P 25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置(40)の正極側に接続される第1電気経路(LE)と、
前記蓄電装置の負極側に接続される第2電気経路(LG)と、
上アームダイオード(24)が逆並列接続された上アームスイッチ(22A~22
C)と
下アームダイオード(25)が逆並列接続された下アームスイッチ(23A~23
C)との直列接続体を相ごとに有し、前記上アームスイッチの高電位側端子が前記第1電気経路に接続され、前記下アームスイッチの低電位側端子が前記第2電気経路に接続されたインバータ(20,30)と、
第1巻線(15)及び第2巻線(16)を含む電機子巻線(14)を相ごとに有する回転電機(10)と、
を備え、
各相において、前記第1巻線の第1端が前記上アームスイッチの低電位側端子及び前記下アームスイッチの高電位側端子に接続され、前記第2巻線の第1端が中性点(PN)に接続されており、
各相において、前記第1巻線の第2端と前記第2巻線の第2端との間を接続する開閉スイッチ(64A~64C)と、
各相において、
前記第1巻線の第2端及び前記第2巻線の第2端のうち、前記第2巻線の第2端のみと、前記第1電気経路との間を接続する高電位側整流素子(72A~72C)と、
各相において、
前記第1巻線の第2端及び前記第2巻線の第2端のうち、前記第2巻線の第2端のみと、前記第2電気経路との間を接続する低電位側整流素子(73A~73C)と、
前記回転電機の制御失陥が発生したと判定した場合、前記開閉スイッチをオフに切り替える制御装置(50)と、
を備え、
前記高電位側整流素子は、前記第2巻線側から前記第1電気経路側へと向かう第1規定方向の電流の流通を許可し、該第1規定方向とは逆方向の電流の流通を阻止し、
前記低電位側整流素子は、前記第2電気経路側から前記第2巻線側へと向かう第2規定方向の電流の流通を許可し、該第2規定方向とは逆方向の電流の流通を阻止する、回転電機システム。
【請求項2】
蓄電装置(40)の正極側に接続される第1電気経路(LE)と、
前記蓄電装置の負極側に接続される第2電気経路(LG)と、
直列接続された上アームスイッチ(22A~22C,32A~32C)と下アームスイッチ(23A~23C,33A~33C)とを相ごとに有し、前記上アームスイッチの高電位側端子が前記第1電気経路に接続され、前記下アームスイッチの低電位側端子が前記第2電気経路に接続されたインバータ(20,30)と、
第1巻線(15)及び第2巻線(16)を含む電機子巻線(14)を相ごとに有する回転電機(10)と、
を備え、
前記上アームスイッチ及び前記下アームスイッチにはダイオード(24,25)が逆並列接続されており、
各相において、前記第1巻線の第1端が前記上アームスイッチの低電位側端子及び前記下アームスイッチの高電位側端子に接続され、前記第2巻線の第1端が中性点(PN)に接続されており、
各相において、前記第1巻線の第2端と前記第2巻線の第2端との間を接続する開閉スイッチ(64A~64C)と、
各相において、
前記第1巻線の第2端及び前記第2巻線の第2端のうち、前記第1巻線の第2端のみと、前記第1電気経路との間を接続する高電位側整流素子(72A~72C)と、
各相において、
前記第1巻線の第2端及び前記第2巻線の第2端のうち、前記第1巻線の第2端のみと、前記第2電気経路との間を接続する低電位側整流素子(73A~73C)と、
前記回転電機の制御失陥が発生したと判定した場合、前記開閉スイッチをオフに切り替える制御装置(50)と、
を備え、
前記高電位側整流素子は、前記第1巻線側から前記第1電気経路側へと向かう第1規定方向の電流の流通を許可し、該第1規定方向とは逆方向の電流の流通を阻止し、
前記低電位側整流素子は、前記第2電気経路側から前記第1巻線側へと向かう第2規定方向の電流の流通を許可し、該第2規定方向とは逆方向の電流の流通を阻止する、回転電機システム。
【請求項3】
蓄電装置(40)の正極側に接続される第1電気経路(LE)と、
前記蓄電装置の負極側に接続される第2電気経路(LG)と、
直列接続された第1上アームスイッチ(22A~22C)と第1下アームスイッチ(23A~23C)とを相ごとに有し、前記第1上アームスイッチの高電位側端子が前記第1電気経路に接続され、前記第1下アームスイッチの低電位側端子が前記第2電気経路に接続された第1インバータ(20)と、
直列接続された第2上アームスイッチ(32A~32C)と第2下アームスイッチ(33A~33C)とを相ごとに有し、前記第2上アームスイッチの高電位側端子が前記第1電気経路に接続され、前記第2下アームスイッチの低電位側端子が前記第2電気経路に接続された第2インバータ(30)と、
第1巻線(15)及び第2巻線(16)を含む電機子巻線(14)を相ごとに有する回転電機(10)と、
を備え、
前記第1上アームスイッチ及び前記第1下アームスイッチにはダイオード(24,25)が逆並列接続されており、
各相において、前記第1巻線の第1端が前記第1上アームスイッチの低電位側端子及び前記第1下アームスイッチの高電位側端子に接続され、前記第2巻線の第1端が前記第2上アームスイッチの低電位側端子及び前記第2下アームスイッチの高電位側端子に接続されており、
各相において、前記第1巻線の第2端と前記第2巻線の第2端との間を接続する開閉スイッチ(64A~64C)と、
各相において、前記第1電気経路と、前記第1巻線の第2端との間を接続する高電位側整流素子(72A~72C)と、
各相において、前記第2電気経路と、前記第1巻線の第2端との間を接続する低電位側整流素子(73A~73C)と、
を備え、
前記高電位側整流素子は、前記第1巻線側から前記第1電気経路側へと向かう第1規定方向の電流の流通を許可し、該第1規定方向とは逆方向の電流の流通を阻止し、
前記低電位側整流素子は、前記第2電気経路側から前記第1巻線側へと向かう第2規定方向の電流の流通を許可し、該第2規定方向とは逆方向の電流の流通を阻止する、回転電機システム。
【請求項4】
蓄電装置(40)の正極側に接続される第1電気経路(LE)と、
前記蓄電装置の負極側に接続される第2電気経路(LG)と、
直列接続された第1上アームスイッチ(22A~22C)と第1下アームスイッチ(23A~23C)とを相ごとに有し、前記第1上アームスイッチの高電位側端子が前記第1電気経路に接続され、前記第1下アームスイッチの低電位側端子が前記第2電気経路に接続された第1インバータ(20)と、
直列接続された第2上アームスイッチ(32A~32C)と第2下アームスイッチ(33A~33C)とを相ごとに有し、前記第2上アームスイッチの高電位側端子が前記第1電気経路に接続され、前記第2下アームスイッチの低電位側端子が前記第2電気経路に接続された第2インバータ(30)と、
第1巻線(15)及び第2巻線(16)を含む電機子巻線(14)を相ごとに有する回転電機(10)と、
を備え、
前記第1上アームスイッチ及び前記第2上アームスイッチにはダイオード(24,34)が逆並列接続されており、
各相において、前記第1巻線の第1端が前記第1上アームスイッチの低電位側端子及び前記第1下アームスイッチの高電位側端子に接続され、前記第2巻線の第1端が前記第2上アームスイッチの低電位側端子及び前記第2下アームスイッチの高電位側端子に接続されており、
各相において、前記第1巻線の第2端と前記第2巻線の第2端との間を接続する開閉スイッチ(64A~64C)と、
各相において、前記第2電気経路と、前記第1巻線の第2端との間を接続する第1低電位側整流素子(73A~73C)と、
各相において、前記第2電気経路と、前記第2巻線の第2端との間を接続する第2低電位側整流素子(75A~75C)と、
を備え、
前記第1低電位側整流素子は、前記第2電気経路側から前記第1巻線側へと向かう第1規定方向の電流の流通を許可し、該第1規定方向とは逆方向の電流の流通を阻止し、
前記第2低電位側整流素子は、前記第2電気経路側から前記第2巻線側へと向かう第2規定方向の電流の流通を許可し、該第2規定方向とは逆方向の電流の流通を阻止する、回転電機システム。
【請求項5】
蓄電装置(40)の正極側に接続される第1電気経路(LE)と、
前記蓄電装置の負極側に接続される第2電気経路(LG)と、
直列接続された第1上アームスイッチ(22A~22C)と第1下アームスイッチ(23A~23C)とを相ごとに有し、前記第1上アームスイッチの高電位側端子が前記第1電気経路に接続され、前記第1下アームスイッチの低電位側端子が前記第2電気経路に接続された第1インバータ(20)と、
直列接続された第2上アームスイッチ(32A~32C)と第2下アームスイッチ(33A~33C)とを相ごとに有し、前記第2上アームスイッチの高電位側端子が前記第1電気経路に接続され、前記第2下アームスイッチの低電位側端子が前記第2電気経路に接続された第2インバータ(30)と、
第1巻線(15)及び第2巻線(16)を含む電機子巻線(14)を相ごとに有する回転電機(10)と、
を備え、
前記第1下アームスイッチ及び前記第2下アームスイッチにはダイオード(25,35)が逆並列接続されており、
各相において、前記第1巻線の第1端が前記第1上アームスイッチの低電位側端子及び前記第1下アームスイッチの高電位側端子に接続され、前記第2巻線の第1端が前記第2上アームスイッチの低電位側端子及び前記第2下アームスイッチの高電位側端子に接続されており、
各相において、前記第1巻線の第2端と前記第2巻線の第2端との間を接続する開閉スイッチ(64A~64C)と、
各相において、前記第1電気経路と、前記第1巻線の第2端との間を接続する第1高電位側整流素子(72A~72C)と、
各相において、前記第1電気経路と、前記第2巻線の第2端との間を接続する第2高電位側整流素子(76A~76C)と、
を備え、
前記第1高電位側整流素子は、前記第1巻線側から前記第1電気経路側へと向かう第1規定方向の電流の流通を許可し、該第1規定方向とは逆方向の電流の流通を阻止し、
前記第2高電位側整流素子は、前記第2巻線側から前記第1電気経路側へと向かう第2規定方向の電流の流通を許可し、該第2規定方向とは逆方向の電流の流通を阻止する、回転電機システム。
【請求項6】
前記回転電機の制御失陥が発生したと判定した場合、前記開閉スイッチをオフに切り替える制御装置(50)を備える請求項3から5までのいずれか一項に記載の回転電機システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記第1電気経路及び前記第2電気経路の間の電位差が閾値電圧(Vth)よりも高いか否かを判定し、前記閾値電圧よりも高いと判定した場合に、前記制御失陥が発生したと判定する請求項6に記載の回転電機システム。
【請求項8】
前記第1電気経路及び前記第2電気経路のうちの少なくとも一方において、前記蓄電装置との接続点よりも前記インバータ側に設けられた電源スイッチ(60)と、
前記電源スイッチよりも前記インバータ側において、前記第1電気経路と前記第2電気経路との間を接続するコンデンサ(26)と、を備え、
前記制御装置は、前記コンデンサの電圧が前記閾値電圧よりも高いか否かを判定する請求項7に記載の回転電機システム。
【請求項9】
前記制御装置は、前記電機子巻線に流れる電流が閾値電流(Ith)よりも大きいか否かを判定し、前記閾値電流よりも大きいと判定した場合に、前記制御失陥が発生したと判定する請求項6から8までのいずれか一項に記載の回転電機システム。
【請求項10】
前記制御装置は、前記回転電機の弱め界磁制御を行っている場合に前記制御失陥が発生したと判定すると、前記開閉スイッチをオフに切り替える請求項6から9までのいずれか一項に記載の回転電機システム。
【請求項11】
前記高電位側整流素子及び前記低電位側整流素子はダイオードである請求項1から3までのいずれか一項に記載の回転電機システム。
【請求項12】
前記第1低電位側整流素子及び前記第2低電位側整流素子はダイオードである請求項4に記載の回転電機システム。
【請求項13】
前記第1高電位側整流素子及び前記第2高電位側整流素子はダイオードである請求項5に記載の回転電機システム。
【請求項14】
前記第1巻線及び前記第2巻線は、互いに磁気結合されている請求項1から13までのいずれか一項に記載の回転電機システム。
【請求項15】
前記開閉スイッチは、双方向の電流遮断が可能なノーマリオープン式のスイッチである請求項1から14までのいずれか一項に記載の回転電機システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バッテリと、バッテリに接続されるインバータと、インバータに接続され、インバータを介してバッテリとの間で電力の入出力を行うモータと、を備えるシステムが知られている(例えば、特許文献1)。このシステムでは、モータの回転駆動時にインバータの故障等によりモータの制御失陥が生じると、インバータからモータに印加される電圧が低下することにより、インバータに印加されるモータの逆起電圧が増大する。この場合、この逆起電圧がバッテリの耐圧を超えると、バッテリが過電圧故障する。
【0003】
上記システムでは、インバータを構成する上,下アームスイッチのうち少なくとも一方に、このアームスイッチに対して電流を流す方向が逆方向となる逆方向スイッチが設けられている。モータの制御失陥時に上,下アームスイッチ及び逆方向スイッチがオフされることで、モータの逆起電圧がバッテリに印加されることを抑制でき、この逆起電圧によりバッテリが過電圧故障することを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したシステムでは、モータなどの回転電機の制御失陥時に発生する回転電機の逆起電圧の増大を抑制できない。そのため、回転電機の逆起電圧が上,下アームスイッチに印加され、この逆起電圧が上,下アームスイッチの耐圧を超えると、インバータが過電圧故障してしまう。また、回転電機の制御失陥時にバッテリなどの蓄電装置と回転電機との電気的な接続が遮断されると、回転電機に蓄えられていた電磁エネルギの放出経路が失われる。そのため、上,下アームスイッチ及び逆方向スイッチをオフする際に過大なサージ電圧が発生し、このサージ電圧によりインバータが過電圧故障してしまう。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、回転電機の制御失陥時に、インバータ及び蓄電装置の過電圧故障を抑制できる回転電機システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための第1の手段は、蓄電装置の正極側に接続される第1電気経路と、前記蓄電装置の負極側に接続される第2電気経路と、直列接続された上アームスイッチと下アームスイッチとを相ごとに有し、前記上アームスイッチの高電位側端子が前記第1電気経路に接続され、前記下アームスイッチの低電位側端子が前記第2電気経路に接続されたインバータと、第1巻線及び第2巻線を含む電機子巻線を相ごとに有し、各相において、前記上アームスイッチの低電位側端子及び前記下アームスイッチの高電位側端子に前記電機子巻線の一端が接続された回転電機と、各相において、前記第1巻線と前記第2巻線との間を接続する開閉スイッチと、各相において、前記第1電気経路及び前記第2電気経路と、前記第1巻線及び前記第2巻線の少なくとも一方の前記開閉スイッチ側の一端との間、又は前記第1電気経路及び前記第2電気経路の一方と、前記第1巻線及び前記第2巻線の前記開閉スイッチ側の一端との間を接続する整流素子と、を備える。
【0008】
第1の手段では、回転電機は第1巻線及び第2巻線を含む電機子巻線を相ごとに有し、各相の第1巻線と第2巻線との間に開閉スイッチが接続されている。そのため、回転電機の制御失陥時に開閉スイッチがオフされることで、各相の電機子巻線の巻数が減少する。各相の電機子巻線の巻数は、回転電機の制御失陥時に発生する回転電機の逆起電圧に比例する。そのため、各相の電機子巻線の巻数が減少することで、回転電機の制御失陥時に発生する回転電機の逆起電圧の増大を抑制でき、この逆起電圧によるインバータ及び蓄電装置の過電圧故障を抑制できる。
【0009】
また、第1の手段では、各相の第1巻線及び第2巻線の少なくとも一方に接続された整流素子が設けられており、この整流素子を介して、開閉スイッチのオフ時に、電機子巻線に蓄えられていた電磁エネルギを蓄電装置側に放出できる。そのため、回転電機の制御失陥時に開閉スイッチをオフした場合でも過大なサージ電圧の発生を抑制でき、このサージ電圧によるインバータ及び蓄電装置の過電圧故障を抑制できる。
【0010】
第2の手段では、各相において、前記第1巻線の第1端が前記上アームスイッチの低電位側端子及び前記下アームスイッチの高電位側端子に接続され、前記第2巻線の第1端が中性点に接続されており、前記整流素子は、各相において、前記第1電気経路と、前記第2巻線の第2端との間を接続する高電位側整流素子と、各相において、前記第2電気経路と、前記第2巻線の第2端との間を接続する低電位側整流素子と、を有し、前記高電位側整流素子は、前記第2巻線側から前記第1電気経路側へと向かう第1規定方向の電流の流通を許可し、該第1規定方向とは逆方向の電流の流通を阻止し、前記低電位側整流素子は、前記第2電気経路側から前記第2巻線側へと向かう第2規定方向の電流の流通を許可し、該第2規定方向とは逆方向の電流の流通を阻止する。
【0011】
第2の手段では、星形結線された巻線を有する回転電機において、高電位側整流素子及び低電位側整流素子を用いて、開閉スイッチのオフ時に電機子巻線に蓄えられていた電磁エネルギが放出される。第2の手段では、電磁エネルギの放出時にインバータに電流が流れないため、例えば上アームスイッチのオープン故障や下アームスイッチのクローズ故障など、インバータの故障による回転電機の制御失陥時でも、第1巻線及び第2巻線に蓄えられていた電磁エネルギを適正に放出することができる。
【0012】
第3の手段では、各相において、前記第1巻線の第1端が前記上アームスイッチの低電位側端子及び前記下アームスイッチの高電位側端子に接続され、前記第2巻線の第1端が中性点に接続されており、前記上アームスイッチ及び前記下アームスイッチにはダイオードが逆並列接続されており、前記整流素子は、各相において、前記第1電気経路と、前記第1巻線の第2端との間を接続する高電位側整流素子と、各相において、前記第2電気経路と、前記第1巻線の第2端との間を接続する低電位側整流素子と、を有し、前記高電位側整流素子は、前記第1巻線側から前記第1電気経路側へと向かう第1規定方向の電流の流通を許可し、該第1規定方向とは逆方向の電流の流通を阻止し、前記低電位側整流素子は、前記第1電気経路側から前記第2巻線側へと向かう第2規定方向の電流の流通を許可し、該第2規定方向とは逆方向の電流の流通を阻止する。
【0013】
第3の手段では、星形結線された巻線を有する回転電機において、高電位側整流素子及び下アームスイッチに逆並列接続されたダイオード、又は上アームスイッチに逆並列接続されたダイオード及び低電位側整流素子を用いて、開閉スイッチのオフ時に電機子巻線に蓄えられていた電磁エネルギが放出される。第3の手段では、電磁エネルギの放出時にインバータと回転電機との間の配線に電流が流れる。そのため、この配線のインダクタンスにより発生するサージ電圧の発生を抑制できる。
【0014】
第4の手段では、前記インバータは、直列接続された第1上アームスイッチと第1下アームスイッチとを相ごとに有し、前記第1上アームスイッチの高電位側端子が前記第1電気経路に接続され、前記第1下アームスイッチの低電位側端子が前記第2電気経路に接続された第1インバータと、直列接続された第2上アームスイッチと第2下アームスイッチとを相ごとに有し、前記第2上アームスイッチの高電位側端子が前記第1電気経路に接続され、前記第2下アームスイッチの低電位側端子が前記第2電気経路に接続された第2インバータと、を有し、前記第1上アームスイッチ及び前記第1下アームスイッチにはダイオードが逆並列接続されており、各相において、前記第1巻線の第1端が前記第1上アームスイッチの低電位側端子及び前記第1下アームスイッチの高電位側端子に接続され、前記第2巻線の第1端が前記第2上アームスイッチの低電位側端子及び前記第2下アームスイッチの高電位側端子に接続されており、前記整流素子は、各相において、前記第1電気経路と、前記第1巻線の第2端との間を接続する高電位側整流素子と、各相において、前記第2電気経路と、前記第1巻線の第2端との間を接続する低電位側整流素子と、を有し、前記高電位側整流素子は、前記第1巻線側から前記第1電気経路側へと向かう第1規定方向の電流の流通を許可し、該第1規定方向とは逆方向の電流の流通を阻止し、前記低電位側整流素子は、前記第2電気経路側から前記第1巻線側へと向かう第2規定方向の電流の流通を許可し、該第2規定方向とは逆方向の電流の流通を阻止する。
【0015】
第4の手段では、オープン結線された巻線を有する回転電機において、高電位側整流素子及び下アームスイッチに逆並列接続されたダイオード、又は上アームスイッチに逆並列接続されたダイオード及び低電位側整流素子を用いて、開閉スイッチのオフ時に電機子巻線に蓄えられていた電磁エネルギが放出される。第4の手段では、電磁エネルギの放出時に、第1インバータと第2インバータとのうち第1インバータのみに電流が流れる。そのため、電磁エネルギの放出時に第2インバータに熱ストレスが加わることを抑制できる。
【0016】
第5の手段では、前記インバータは、直列接続された第1上アームスイッチと第1下アームスイッチとを相ごとに有し、前記第1上アームスイッチの高電位側端子が前記第1電気経路に接続され、前記第1下アームスイッチの低電位側端子が前記第2電気経路に接続された第1インバータと、直列接続された第2上アームスイッチと第2下アームスイッチとを相ごとに有し、前記第2上アームスイッチの高電位側端子が前記第1電気経路に接続され、前記第2下アームスイッチの低電位側端子が前記第2電気経路に接続された第2インバータと、を有し、前記第1上アームスイッチ及び前記第2上アームスイッチにはダイオードが逆並列接続されており、各相において、前記第1巻線の第1端が前記第1上アームスイッチの低電位側端子及び前記第1下アームスイッチの高電位側端子に接続され、前記第2巻線の第1端が前記第2上アームスイッチの低電位側端子及び前記第2下アームスイッチの高電位側端子に接続されており、前記整流素子は、各相において、前記第2電気経路と、前記第1巻線の第2端との間を接続する第1低電位側整流素子と、各相において、前記第2電気経路と、前記第2巻線の第2端との間を接続する第2低電位側整流素子と、を有し、前記第1低電位側整流素子は、前記第2電気経路側から前記第1巻線側へと向かう第1規定方向の電流の流通を許可し、該第1規定方向とは逆方向の電流の流通を阻止し、前記第2低電位側整流素子は、前記第2電気経路側から前記第2巻線側へと向かう第2規定方向の電流の流通を許可し、該第2規定方向とは逆方向の電流の流通を阻止する。
【0017】
第5の手段では、オープン結線された巻線を有する回転電機において、上アームスイッチに逆並列接続されたダイオード及び第1低電位側整流素子又は第2低電位側整流素子を用いて、開閉スイッチのオフ時に電機子巻線に蓄えられていた電磁エネルギが放出される。第5の手段では、整流素子が、第1巻線と開閉スイッチとの間、及び開閉スイッチと第2巻線との間に分散して設けられ、電磁エネルギの放出時に、第1インバータと第2インバータとの両方に電流が流れる。そのため、電磁エネルギの放出時に第1インバータ及び第2インバータに加わる熱ストレスを分散することができ、この熱ストレスによる第1インバータ及び第2インバータの故障を抑制できる。
【0018】
第6の手段では、前記インバータは、直列接続された第1上アームスイッチと第1下アームスイッチとを相ごとに有し、前記第1上アームスイッチの高電位側端子が前記第1電気経路に接続され、前記第1下アームスイッチの低電位側端子が前記第2電気経路に接続された第1インバータと、直列接続された第2上アームスイッチと第2下アームスイッチとを相ごとに有し、前記第2上アームスイッチの高電位側端子が前記第1電気経路に接続され、前記第2下アームスイッチの低電位側端子が前記第2電気経路に接続された第2インバータと、を有し、前記第1下アームスイッチ及び前記第2下アームスイッチにはダイオードが逆並列接続されており、各相において、前記第1巻線の第1端が前記第1上アームスイッチの低電位側端子及び前記第1下アームスイッチの高電位側端子に接続され、前記第2巻線の第1端が前記第2上アームスイッチの低電位側端子及び前記第2下アームスイッチの高電位側端子に接続されており、前記整流素子は、各相において、前記第1電気経路と、前記第1巻線の第2端との間を接続する第1高電位側整流素子と、各相において、前記第1電気経路と、前記第2巻線の第2端との間を接続する第2高電位側整流素子と、を有し、前記第1高電位側整流素子は、前記第1巻線側から前記第1電気経路側へと向かう第1規定方向の電流の流通を許可し、該第1規定方向とは逆方向の電流の流通を阻止し、前記第2高電位側整流素子は、前記第2巻線側から前記第1電気経路側へと向かう第2規定方向の電流の流通を許可し、該第2規定方向とは逆方向の電流の流通を阻止する。
【0019】
第6の手段では、オープン結線された巻線を有する回転電機において、第1低電位側整流素子又は第2低電位側整流素子及び下アームスイッチに逆並列接続されたダイオードを用いて、開閉スイッチのオフ時に電機子巻線に蓄えられていた電磁エネルギが放出される。第6の手段では、整流素子が、第1巻線と開閉スイッチとの間、及び開閉スイッチと第2巻線との間に分散して設けられ、電磁エネルギの放出時に、第1インバータと第2インバータとの両方に電流が流れる。そのため、電磁エネルギの放出時に第1インバータ及び第2インバータに加わる熱ストレスを分散することができ、この熱ストレスによる第1インバータ及び第2インバータの故障を抑制できる。
【0020】
第7の手段では、前記整流素子はダイオードである。そのため、ダイオードの整流機能により、規定方向の電流の流通を許可し、その規定方向とは逆方向の電流の流通を阻止することができる。
【0021】
第8の手段では、前記第1巻線及び前記第2巻線は、互いに磁気結合されている。そのため、例えば第1巻線に接続された整流素子が設けられ、第2巻線に接続された整流素子が設けられていない場合でも、開閉スイッチのオフ時に第2巻線に蓄えられていた電磁エネルギを、磁気結合された第1巻線を介して放出できる。これにより、回転電機システムの構成を簡略化しつつ、過大なサージ電圧の発生を抑制できる。
【0022】
第9の手段では、前記回転電機の制御失陥が発生したと判定した場合、前記開閉スイッチをオフに切り替える制御装置を備える。そのため、回転電機の制御失陥が発生していない場合には、開閉スイッチがオンされることで、各相の電機子巻線の巻数を多くすることができる。そして、回転電機の制御失陥が発生した場合には、開閉スイッチがオフされることで、回転電機の逆起電圧の増大を抑制できる。
【0023】
第10の手段では、前記制御装置は、前記第1電気経路及び前記第2電気経路の間の電位差が閾値電圧よりも高いか否かを判定し、前記閾値電圧よりも高いと判定した場合に、前記制御失陥が発生したと判定する。
【0024】
各相の上アームスイッチと下アームスイッチのうちのいずれか1つにオープン故障が発生すると、インバータから回転電機に印加される電圧が低下することによりインバータに印加される回転電機の逆起電圧が増大し、第1電気経路及び第2電気経路の間の電位差が増加する。第10の手段では、この電位差が閾値電圧よりも高いと判定した場合に、開閉スイッチをオフする。そのため、1つのスイッチのオープン故障により、他の正常なスイッチが過電圧故障することを抑制できる。
【0025】
第11の手段では、前記第1電気経路及び前記第2電気経路のうちの少なくとも一方において、前記蓄電装置との接続点よりも前記インバータ側に設けられた電源スイッチと、前記電源スイッチよりも前記インバータ側において、前記第1電気経路と前記第2電気経路との間を接続するコンデンサと、を備える。
【0026】
電源スイッチは、回転電機の駆動中においてオンされており、この電源スイッチにオープン故障が発生すると、インバータから回転電機に印加される電圧が低下することによりインバータに印加される回転電機の逆起電圧が増大し、第1電気経路及び第2電気経路の間の電位差が増加する。第11の手段では、この電位差が閾値電圧よりも高いと判定した場合に、開閉スイッチをオフする。そのため、電源スイッチのオープン故障により、インバータに含まれるスイッチが過電圧故障することを抑制できる。
【0027】
第12の手段では、前記制御装置は、前記電機子巻線に流れる電流が閾値電流よりも大きいか否かを判定し、前記閾値電流よりも大きいと判定した場合に、前記制御失陥が発生したと判定する。
【0028】
直列接続された上アームスイッチと下アームスイッチとを有するインバータでは、一方のスイッチにクローズ故障が発生すると、上アームスイッチと下アームスイッチとの双方が同時にオンされる上下アーム短絡により、電機子巻線に過大な電流が流れる。第12の手段では、電機子巻線に流れる電流が閾値電流よりも大きいと判定した場合に、開閉スイッチをオフする。そのため、一方のスイッチのクローズ故障による回転電機の制御失陥時に、他方の正常なスイッチが過電圧故障することを抑制できる。
【0029】
第13の手段では、前記制御装置は、前記回転電機の弱め界磁制御を行っている場合に前記制御失陥が発生したと判定すると、前記開閉スイッチをオフに切り替える。
【0030】
回転電機の弱め界磁制御を行っている場合に回転電機に制御失陥が発生すると、弱め界磁制御が停止されることにより回転電機に過剰な逆起電圧が発生する。第13の手段では、回転電機の弱め界磁制御を行っている場合に制御失陥が発生したと判定すると、開閉スイッチをオフする。そのため、弱め界磁制御の停止による回転電機の過剰な逆起電圧を抑制でき、この逆起電圧によるインバータ及び蓄電装置の過電圧故障を抑制できる。
【0031】
第14の手段では、前記開閉スイッチは、双方向の電流遮断が可能なノーマリオープン式のスイッチング素子である。
【0032】
第14の手段では、開閉スイッチが双方向の電流遮断が可能なスイッチング素子である。そのため、回転電機の制御失陥時に開閉スイッチをオフすることで、第1巻線と第2巻線とを確実に分離することができ、各相の電機子巻線の巻数を減少させることができる。また、第14の手段では、開閉スイッチがノーマリオープン式のスイッチング素子である。そのため、制御装置の電力喪失時において、開閉スイッチをオフすることができる。これにより、制御装置の電力喪失時に回転電機の逆起電圧を抑制でき、この逆起電圧によるインバータ及び蓄電装置の過電圧故障を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】第1実施形態の回転電機システムの全体構成図。
【
図2】第1実施形態の遮断処理の手順を示すフローチャート。
【
図3】回転電機の制御失陥時における回転電機の逆起電圧の推移を示す図。
【
図4】比較例における回転電機の逆起電圧の推移を示す図。
【
図5】第2実施形態の回転電機システムの全体構成図。
【
図6】第3実施形態の回転電機システムの全体構成図。
【
図7】第3実施形態の遮断処理の手順を示すフローチャート。
【
図8】第4実施形態の回転電機システムの全体構成図。
【
図9】第5実施形態の回転電機システムの全体構成図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る回転電機システムを、車載の回転電機システム100として具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0035】
図1に示すように、本実施形態に係る回転電機システム100は、回転電機10と、インバータ20と、蓄電装置としてのバッテリ40と、回転電機10を制御対象とする制御装置50と、を備えている。
【0036】
回転電機10は、力行駆動及び回生駆動の機能を有し、具体的には、MG(Motor Generator)である。回転電機10は、バッテリ40との間で電力の入出力を行うものである。具体的には、力行駆動時には、バッテリ40から入力される電力により駆動し、車両に推進力を付与し、回生駆動時には、車両の減速エネルギを用いて発電を行い、バッテリ40に電力を出力する。
【0037】
回転電機10は、ロータ11とステータ13とを備えている。ロータ11には、界磁を行う永久磁石12が設けられている。つまり、回転電機10は、永久磁石界磁型回転電機である。永久磁石12は、例えばネオジム磁石やフェライト磁石である。
【0038】
ステータ13には、3相の巻線14が設けられている。各巻線14は、例えば波巻にて構成され、第1巻線15と第2巻線16とを含む。第1巻線15と第2巻線16とは、開閉部62を介して接続されており、図示しないステータコアを介して互いに磁気結合されている。開閉部62の構成については、後述する。なお、本実施形態において、巻線14が「電機子巻線」に相当する。
【0039】
各相の第1巻線15の第1端は、インバータ20を介してバッテリ40に接続されている。バッテリ40は、充放電可能な蓄電池であり、例えば複数のリチウムイオン蓄電池が直列接続された組電池である。なお、バッテリ40は、他の種類の蓄電池であってもよい。
【0040】
各相の第2巻線16の第1端は、中性点PNに接続されている。つまり、ステータ13の3相の巻線14は、星形結線されている。各相の第1巻線15の第2端は、開閉部62を介して第2巻線16の第2端に接続されている。
【0041】
インバータ20は、高電位側のスイッチング素子である上アームスイッチ22(22A,22B,22C)、及び低電位側のスイッチング素子である下アームスイッチ23(23A,23B,23C)の直列接続体が、並列に接続されて構成されている。なお、本実施形態では、スイッチ22,23として、電圧制御形の半導体スイッチング素子を用いており、より具体的にはIGBTを用いている。各相において、上アームスイッチ22のエミッタ端子及び下アームスイッチ23のコレクタ端子には、第1巻線15の第1端が接続されている。上アームスイッチ22には、フリーホイールダイオードである上アームダイオード24が逆並列接続されており、下アームスイッチ23には、フリーホイールダイオードである下アームダイオード25が逆並列接続されている。なお、本実施形態において、コレクタ端子が「高電位側端子」に相当し、エミッタ端子が「低電位側端子」に相当する。
【0042】
バッテリ40の正極側と上アームスイッチ22のコレクタ端子とは、第1電気経路としての電源線LEにより接続されており、バッテリ40の負極側と下アームスイッチ23のエミッタ端子とは、第2電気経路としての接地線LGにより接続されている。つまり、インバータ20は、電源線LE及び接地線LGを介してバッテリ40に接続されている。電源線LEにおいて、バッテリ40との接続点よりもインバータ20側には、電源スイッチ60が設けられている。電源スイッチ60は、回転電機10の駆動時において通常オンされている。また、電源線LEと接地線LGとは、コンデンサ26により接続されている。コンデンサ26は、電源スイッチ60よりもインバータ20側において、電源線LEと接地線LGとの間を接続する。
【0043】
制御装置50は、CPU、ROM、RAM、及びフラッシュメモリ等からなる周知のマイクロコンピュータを備えている。制御装置50は、各種信号を取得し、取得した情報に基づき、各種制御を実施する。
【0044】
具体的には、制御装置50は、回転電機10の駆動時に、コンデンサ26の電圧VBを検出する電圧センサ51、回転電機10の各相の巻線14に流れる電流IMを検出する相電流センサ53、及び回転電機10の電気角θを検出する回転角センサ54等から検出値を取得する。制御装置50は、取得した検出値に基づき、回転電機10の制御量をその指令値に制御すべく、インバータ20を制御する。本実施形態において、制御量は出力トルクTEである。
【0045】
具体的には、制御装置50は、インバータ20の制御において、デッドタイムを挟みつつスイッチ22,23を交互にオンとすべく、スイッチ22,23それぞれに対応する駆動信号SGを、スイッチ22,23に出力する。駆動信号SGは、スイッチ22,23をオンとするオン指令と、オフとするオフ指令とのいずれかをとる。
【0046】
また、制御装置50は、取得した検出値に基づいて、電源スイッチ60のオンオフを切り替えるべく、切替信号SCを生成し、生成した切替信号SCを電源スイッチ60に出力する。
【0047】
ところで、回転電機システム100では、回転電機10の回転駆動時に、インバータ20を構成するスイッチ22,23の故障等により回転電機10の制御失陥が生じることがある。この場合、ロータ11の回転速度、具体的には回転電機10の電気角θの時間微分値としての電気角速度ωに応じて、インバータ20に印加される回転電機10の逆起電圧VRが発生する。特に、回転電機10の高回転駆動時において回転電機10の弱め界磁制御を実施している場合には、回転電機10の制御失陥によりバッテリ40からの電力供給が断たれて弱め界磁制御が停止され、回転電機10に過大な逆起電圧VRが発生する。ここで弱め界磁制御は、回転電機10のdq座標系におけるd軸電流Idを所定の負の値にして、回転電機10の巻線14に生じる逆起電圧VRを減少させる制御である。
【0048】
回転電機10の逆起電圧VRがバッテリ40やインバータ20に含まれるスイッチ22,23に印加され、この逆起電圧VRがバッテリ40やスイッチ22,23の耐圧VL(
図4参照)を超えると、バッテリ40やスイッチ22,23が過電圧故障する。
【0049】
そこで、本実施形態では、回転電機システム100に開閉部62及びダイオード整流回路70が設けられている。開閉部62は、開閉スイッチ64(64A,64B,64C)を備えている。各相において、開閉スイッチ64は、第1巻線15と第2巻線16との間を接続する。具体的には、開閉スイッチ64の両端子のうち、第1端子X(XA,XB,XC)は、第1巻線15の第2端に接続されており、第2端子Z(ZA,ZB,ZC)は、第2巻線16の第2端に接続されている。開閉スイッチ64は、双方向の電流遮断が可能なスイッチング素子であり、例えば2つIGBTが、電流を流す方向が互いに逆方向となるように直列接続された素子である。ここで双方向の電流遮断が可能とは、開閉スイッチ64に寄生ダイオード等が形成されておらず、この寄生ダイオードによる意図しない流通がないことを意味する。また、開閉スイッチ64は、ノーマリオープン式のスイッチング素子である。
【0050】
制御装置50は、コンデンサ26の電圧VBや回転電機10に流れる電流IMに基づいて、開閉スイッチ64のオンオフを切り替えるべく、制御信号SAを生成し、生成した制御信号SAを開閉スイッチ64に出力する。
【0051】
また、ダイオード整流回路70は、高電位側整流素子としての高電位側ダイオード72(72A,72B,72C)、及び低電位側整流素子としての低電位側ダイオード73(73A,73B,73C)の直列接続体が、並列に接続されて構成されている。各相において、ダイオード整流回路70は、開閉スイッチ64と第2巻線16との間に接続されている。
【0052】
各相において、高電位側ダイオード72は、電源線LEと第2巻線16の第2端、つまり第2巻線16の開閉スイッチ64側の端部とを接続する。高電位側ダイオード72は、第2巻線16側から電源線LE側に向かう方向が順方向となるように接続されている。また、低電位側ダイオード73は、接地線LGと第2巻線16の第2端とを接続する。低電位側ダイオード73は、接地線LG側から第2巻線16側に向かう方向が順方向となるように接続されている。
【0053】
本実施形態では、制御装置50は、回転電機10の制御失陥時に、開閉スイッチ64をオフに切り替える遮断処理を実施する。これにより、各相の巻線14の巻数は、第1巻線15の第1巻数NA1と第2巻線16の第2巻数NA2とを加算した巻数(=NA1+NA2)から、各巻線15,16の巻数NA1,NA2へと減少する。各相の巻線14の巻数は、回転電機10の制御失陥時に発生する回転電機10の逆起電圧VRに比例する。そのため、各相の巻線14の巻数が減少することで、回転電機10の制御失陥時に発生する回転電機10の逆起電圧VRを抑制でき、この逆起電圧VRによるインバータ20及びバッテリ40の過電圧故障を抑制できる。なお、本実施形態では、第1巻数NA1と第2巻数NA2とが等しくなるように設定されている。
【0054】
また、回転電機システム100にはダイオード整流回路70が設けられており、第2巻線16に接続されたダイオード72,73が設けられている。そのため、このダイオード72,73を介して、開閉スイッチ64のオフ時に、第1巻線15に蓄えられていた電磁エネルギをコンデンサ26に放出することができる。また、第2巻線16は、第1巻線15と磁気結合されているため、開閉スイッチ64のオフ時に第2巻線16に蓄えられていた電磁エネルギを、第1巻線15を介してコンデンサ26に放出することができる。そのため、回転電機10の制御失陥時に開閉スイッチ64をオフした場合でも過大なサージ電圧の発生を抑制でき、このサージ電圧によるインバータ20及びバッテリ40の過電圧故障を抑制できる。
【0055】
図2に、本実施形態の遮断処理のフローチャートを示す。制御装置50は、回転電機10の駆動時に、所定の制御周期ごとに遮断処理を繰り返し実施する。
【0056】
遮断処理を開始すると、まずステップS10において、電圧センサ51を用いてコンデンサ26の電圧VBを取得する。続くステップS12において、ステップS10で取得した電圧VBが閾値電圧Vthよりも高いか否かを判定する。
【0057】
回転電機10では、電源スイッチ60にオープン故障が発生したり、インバータ20に含まれるスイッチ22,23のいずれか1つにオープン故障が発生したりすると、インバータ20から回転電機10に印加される電圧が低下する。これにより、インバータ20に印加される回転電機10の逆起電圧VRが増大し、コンデンサ26の電圧VBが閾値電圧Vthよりも増加する。
【0058】
電源スイッチ60にオープン故障が発生しているか、又はインバータ20に含まれるスイッチ22,23のいずれか1つにオープン故障が発生している場合、ステップS12で肯定判定する。この場合、ステップS20に進む。一方、電源スイッチ60及びインバータ20に含まれるスイッチ22,23のいずれにもオープン故障が発生していない場合、ステップS12で否定判定する。この場合、ステップS14において、相電流センサ53を用いて回転電機10に流れる電流IMを取得する。続くステップS16において、ステップS14で取得された電流IMが閾値電流Ithよりも大きいか否かを判定する。
【0059】
回転電機10では、インバータ20に含まれるスイッチ22,23のいずれか1つにクローズ故障が発生すると、上アームスイッチ22と下アームスイッチ23との双方が同時にオンされる上下アーム短絡により、回転電機10に過大な電流IMが流れる。これにより、回転電機10に流れる電流IMが閾値電流Ithよりも増加する。
【0060】
インバータ20に含まれるスイッチ22,23のいずれか1つにクローズ故障が発生している場合、ステップS16で肯定判定する。この場合、ステップS20に進む。一方、インバータ20に含まれるスイッチ22,23のいずれにもクローズ故障が発生していない場合、ステップS16で否定判定する。この場合、続くステップS18において、開閉スイッチ64をオンに維持し、遮断処理を終了する。
【0061】
ステップS12又はステップS14で肯定判定すると、ステップS20に進む。つまり、電源スイッチ60やインバータ20に含まれるスイッチ22,23に故障が発生し、回転電機10の制御失陥が生じると、ステップS20に進む。ステップS20では、インバータ20を停止させる。具体的には、電源スイッチ60をオフするための切替信号SCを電源スイッチ60に出力する。また、インバータ20に含まれるスイッチ22,23のすべてをオフするための駆動信号SGを、スイッチ22,23に出力する。続くステップS22において、開閉スイッチ64をオフに切り替え、遮断処理を終了する。具体的には、開閉スイッチ64をオフするための制御信号SAを開閉スイッチ64に出力する。
【0062】
続いて、
図3に、本実施形態の遮断処理の一例を示す。
図3は、インバータ20に含まれる各スイッチ22,23に印加される素子電圧VAとその波高値の推移を示す。ここでスイッチ22,23は、デッドタイムを挟みつつ交互にオンされる。そのため、素子電圧VAの波高値は、コンデンサ26の電圧VBに等しい。
【0063】
また、
図4には、開閉部62及びダイオード整流回路70が設けられていない構成(以下、比較例)における素子電圧VAとその波高値VBの推移を示す。ここで、
図3,
図4において、(A)は、素子電圧VAとその波高値VBとの推移を示し、(B)は、回転電機10の第1巻線15に流れる第1電流IM1の推移を示し、(C)は、回転電機10の第2巻線16に流れる第2電流IM2の推移を示す。また、
図3(D)は、ダイオード整流回路70に含まれるダイオード72,73に流れる放出電流IDの推移を示す。
【0064】
図3の時刻t1から時刻t2までの期間に示すように、電源スイッチ60及びインバータ20に含まれるスイッチ22,23のいずれにも故障が発生していない場合、電源スイッチ60及び開閉スイッチ64はオンされている。そして、回転電機10は、例えばPWM制御されている。PWM制御では、回転電機10への電圧指令値と、三角波信号等のキャリア信号との大小比較に基づいて、インバータ20に含まれるスイッチ22,23の状態が制御される。
【0065】
具体的には、
図3(A)に示すように、インバータ20の各スイッチ22,23には、バッテリ40の電圧VDを振幅とする素子電圧VAが印加される。なお、閾値電圧Vthは、バッテリ40の電圧VDよりも大きい値に設定されている。また、
図3(B),(C)に示すように、回転電機10の第1巻線15及び第2巻線16には、位相が互いに120°ずれた正弦波信号となる各相の電流IM1,IM2が流れる。なお、
図3(D)に示すように、電源スイッチ60及びインバータ20に含まれるスイッチ22,23のいずれにも故障が発生していない場合、放出電流IDは流れない。
【0066】
時刻t2に、電源スイッチ60にオープン故障が発生し、回転電機10の制御失陥が生じると、インバータ20から回転電機10に印加される電圧が低下し、回転電機10の第1巻線15及び第2巻線16に流れる電流IM1,IM2が減少する。また、インバータ20に印加される回転電機10の逆起電圧VRが増大し、これにより波高値VBがバッテリ40の電圧VDよりも増加する。
【0067】
そして、時刻t3に波高値VB、つまり電源線LE及び接地線LGの間の電位差が閾値電圧Vthよりも高くなると、インバータ20に含まれるスイッチ22,23をオフする。また、開閉スイッチ64をオフする。本実施形態では、第2巻線16は、ダイオード整流回路70に含まれるダイオード72,73を介してコンデンサ26に接続されている。そのため、開閉スイッチ64のオフ時に、第2巻線16に蓄えられていた電磁エネルギをコンデンサ26に放出することができる。また、第1巻線15は第2巻線16に磁気結合されており、開閉スイッチ64のオフ時に、第1巻線15に蓄えられていた電磁エネルギを第2巻線16を介してコンデンサ26に放出することができる。そのため、開閉スイッチ64のオフ時に、過大なサージ電圧の発生が抑制される。
【0068】
時刻t3に、インバータ20に含まれるスイッチ22,23及び開閉スイッチ64をオフすることで、回転電機10の第1巻線15に流れる第1電流IM1が停止する。一方、回転電機10の第2巻線16に流れる第2電流IM2は、ダイオード整流回路70に含まれるダイオード72,73を介して流れ続ける。これにより、第1巻線15及び第2巻線16に蓄えられていた電磁エネルギがコンデンサ26に放出され、この際に放出電流IDが流れる。そして、時刻t5に波高値VB、つまりコンデンサ26の電圧VBが回転電機10の逆起電圧VRの最大値VXまで増加すると、コンデンサ26の電圧VBと回転電機10の逆起電圧VRとが釣り合うことにより、第2電流IM2及び放出電流IDが停止する。
【0069】
図4に示すように、開閉部62が設けられていない比較例では、回転電機10の逆起電圧VRの最大値VXは、第1巻線15の第1巻数NA1と第2巻線16の第2巻数NA2とを加算した巻数(=NA1+NA2)に比例した値となる。そのため、波高値VBが回転電機10の逆起電圧VRの最大値VXまで増加する時刻t5よりも前の時刻t4において、回転電機10の逆起電圧VRが、バッテリ40及びインバータ20に含まれるスイッチ22,23の耐圧VLを超えて増大し、インバータ20及びバッテリ40が過電圧故障してしまう。
【0070】
本実施形態では、開閉部62が設けられており、回転電機10の第1巻線15と第2巻線16との間に開閉スイッチ64が接続されている。そのため、回転電機10の制御失陥時に開閉スイッチ64をオフすることで、回転電機10の逆起電圧VRの最大値VXが、各巻線15,16の巻数NA1,NA2に比例する値へと減少する。そのため、回転電機10の制御失陥時に回転電機10に発生する逆起電圧VRが、バッテリ40やスイッチ22,23の耐圧VLを超えて増大することが抑制される。これにより、インバータ20及びバッテリ40の過電圧故障を抑制できる。
【0071】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0072】
・本実施形態では、回転電機10は第1巻線15と第2巻線16とを含む巻線14を相ごとに有し、各相の第1巻線15と第2巻線16との間に開閉スイッチ64が接続されている。そのため、回転電機10の制御失陥時に開閉スイッチ64がオフされることで、各相の巻線14の巻数が減少する。各相の巻線14の巻数は、回転電機10の制御失陥時に発生する回転電機10の逆起電圧VRに比例する。そのため、各相の巻線14の巻数が減少することで、回転電機10の制御失陥時に発生する回転電機10の逆起電圧VRの増大を抑制でき、この逆起電圧VRによるインバータ20及びバッテリ40の過電圧故障を抑制できる。
【0073】
・本実施形態では、第2巻線16に接続されたダイオード72,73が設けられており、このダイオード72,73を介して、開閉スイッチ64のオフ時に、巻線14に蓄えられていた電磁エネルギをコンデンサ26に放出できる。そのため、回転電機10の制御失陥時に開閉スイッチ64をオフした場合でも過大なサージ電圧の発生を抑制でき、このサージ電圧によるインバータ20及びバッテリ40の過電圧故障を抑制できる。
【0074】
・具体的には、ダイオード72,73は、第2巻線16に接続されている。そのため、開閉スイッチ64のオフ時に第2巻線16に蓄えられていた電磁エネルギを、ダイオード72,73を介してコンデンサ26に放出することができる。一方、第1巻線15に接続されたダイオードは設けられていない。本実施形態では、第1巻線15及び第2巻線16は、互いに磁気結合されている。そのため、開閉スイッチ64のオフ時に第1巻線15に蓄えられていた電磁エネルギを、第2巻線16を介して放出できる。これにより、回転電機システム100の構成を簡略化しつつ、過大なサージ電圧の発生を抑制できる。
【0075】
・本実施形態では、星形結線された巻線14を有する回転電機10において、ダイオード整流回路70に含まれるダイオード72,73を用いて、開閉スイッチ64のオフ時に第1巻線15及び第2巻線16に蓄えられていた電磁エネルギが放出される。この構成では、電磁エネルギの放出時にインバータ20に電流IMが流れない。そのため、例えば上アームスイッチ22のオープン故障や下アームスイッチ23のクローズ故障など、インバータ20の故障による回転電機10の制御失陥時でも、第1巻線15及び第2巻線16に蓄えられていた電磁エネルギを適正に放出することができる。
【0076】
・本実施形態では、遮断処理において、回転電機10の制御失陥が発生したか否かを判定し、制御失陥が発生したと判定した場合、開閉スイッチ64がオフに切り替えられる。そのため、回転電機10の制御失陥が発生していない場合には、開閉スイッチ64がオンされることで、各相の巻線14の巻数を多くすることができる。そして、回転電機10の制御失陥が発生した場合には、開閉スイッチ64がオフされることで、回転電機10の逆起電圧VRの増大を抑制できる。
【0077】
・具体的には、インバータ20に含まれる複数のスイッチ22,23のうちのいずれか1つ、又は電源スイッチ60にオープン故障が発生すると、回転電機10に発生する逆起電圧VRが増大し、コンデンサ26の電圧VBが増加する。本実施形態では、コンデンサ26の電圧VBが閾値電圧Vthよりも高いと判定した場合に、開閉スイッチ64をオフする。そのため、インバータ20に含まれるスイッチ22,23、又は電源スイッチ60のオープン故障による回転電機10の制御失陥時に、他の正常なスイッチ22,23が過電圧故障することを抑制できる。
【0078】
・また、直列接続された上アームスイッチ22と下アームスイッチ23とを有するインバータ20では、一方のスイッチ22,23にクローズ故障が発生すると、上アームスイッチ22と下アームスイッチ23との双方が同時にオンされる上下アーム短絡により、巻線14に過大な電流IMが流れる。本実施形態では、巻線14に流れる電流IMが閾値電流Ithよりも大きいと判定した場合に、開閉スイッチ64をオフする。そのため、一方のスイッチ22,23のクローズ故障による回転電機10の制御失陥時に、他方の正常なスイッチ22,23が過電圧故障することを抑制できる。
【0079】
・本実施形態では、開閉スイッチ64が双方向の電流遮断が可能なスイッチング素子である。そのため、回転電機10の制御失陥時に開閉スイッチ64をオフすることで、第1巻線15と第2巻線16とを確実に分離することができ、各相の巻線14の巻数を減少させることができる。また、この構成では、開閉スイッチ64がノーマリオープン式のスイッチング素子であるため、制御装置50の電力喪失時において、開閉スイッチ64をオフすることができる。これにより、制御装置50の電力喪失時に回転電機10の逆起電圧VRを抑制でき、この逆起電圧VRによるインバータ20及びバッテリ40の過電圧故障を抑制できる。
【0080】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に
図5を参照しつつ説明する。
図5において、先の
図1に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付して説明を省略する。
【0081】
本実施形態では、ダイオード整流回路70が、第1巻線15と開閉スイッチ64との間に設けられており、開閉スイッチ64と第2巻線16との間に設けられていない点で、第1実施形態と異なる。
【0082】
各相において、高電位側ダイオード72は、電源線LEと第1巻線15の第2端、つまり第1巻線15の開閉スイッチ64側の端部とを接続する。高電位側ダイオード72は、第1巻線15側から電源線LE側に向かう方向が順方向となるように接続されている。また、低電位側ダイオード73は、接地線LGと第1巻線15の第2端とを接続する。低電位側ダイオード73は、接地線LG側から第1巻線15側に向かう方向が順方向となるように接続されている。
【0083】
本実施形態では、遮断処理において、インバータ20に含まれるスイッチ22,23及び開閉スイッチ64をオフすることで、回転電機10の第2巻線16に流れる第2電流IM2が停止する。一方、回転電機10の第1巻線15に流れる第1電流IM1は、ダイオード整流回路70に含まれるダイオード72,73、及びインバータ20に含まれるダイオード24,25を介して流れ続ける。
【0084】
具体的には、
図5に矢印YAで示すように、第1電流IM1がインバータ20からダイオード整流回路70に向かって流れている場合には、第1電流IM1は高電位側ダイオード72及び下アームダイオード25を介して流れる。また、
図5に矢印YBで示すように、第1電流IM1がダイオード整流回路70からインバータ20に向かって流れている場合には、第1電流IM1は上アームダイオード24及び低電位側ダイオード73を介して流れる。
【0085】
そのため、本実施形態では、各スイッチ22,23,64をオフした後でも、インバータ20と回転電機10とを接続する配線LS(LSA,LSB,LSC)に第1電流IM1が流れ続ける。
【0086】
以上詳述した本実施形態によれば、星形結線された巻線14を有する回転電機10において、高電位側ダイオード72及び下アームダイオード25、又は上アームダイオード24及び低電位側ダイオード73を用いて、開閉スイッチ64のオフ時に第1巻線15及び第2巻線16に蓄えられていた電磁エネルギが放出される。この構成では、電磁エネルギの放出時にインバータ20と回転電機10との間の配線LSに第1電流IM1が流れ続ける。そのため、この配線LSのインダクタンスにより発生するサージ電圧の発生を抑制できる。
【0087】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について、第2実施形態との相違点を中心に
図6,
図7を参照しつつ説明する。
図6において、先の
図5に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付して説明を省略する。
【0088】
本実施形態では、回転電機システム100がインバータ20に加えてインバータ30を備えている点で、第2実施形態と異なる。以下では、区別のために、インバータ20を第1インバータ20と呼び、インバータ30を第2インバータ30と呼ぶ。また、第1インバータ20の上アームスイッチ22を第1上アームスイッチ22と呼び、第1インバータ20の下アームスイッチ23を第1下アームスイッチ23と呼ぶ。
【0089】
第2インバータ30は、高電位側のスイッチング素子である第2上アームスイッチ32(32A,32B,32C)、及び低電位側のスイッチング素子である第2下アームスイッチ33(33A,33B,33C)の直列接続体が、並列に接続されて構成されている。なお、本実施形態では、スイッチ32,33として、電圧制御形の半導体スイッチング素子を用いており、より具体的にはIGBTを用いている。各相において、第2上アームスイッチ32のエミッタ端子及び第2下アームスイッチ33のコレクタ端子には、第2巻線16の第2端、つまり第2巻線16の開閉スイッチ64とは反対側の端部が接続されている。つまり、ステータ13の3相の巻線14は、オープン結線されている。第2上アームスイッチ32には、フリーホイールダイオードである上アームダイオード34が逆並列接続されており、第2下アームスイッチ33には、フリーホイールダイオードである下アームダイオード35が逆並列接続されている。
【0090】
バッテリ40の正極側、第1上アームスイッチ22のコレクタ端子、及び第2上アームスイッチ32のコレクタ端子とは、電源線LEにより接続されている。また、バッテリ40の負極側、第1下アームスイッチ23のエミッタ端子、及び第2下アームスイッチ33のエミッタ端子とは、接地線LGにより接続されている。
【0091】
制御装置50は、第2インバータ30の制御において、デッドタイムを挟みつつスイッチ32,33を交互にオンとすべく、スイッチ32,33それぞれに対応する駆動信号SGを、スイッチ32,33に出力する。以下では、区別のために、第1インバータ20の駆動信号SGを第1駆動信号SG1と呼び、第2インバータ30の駆動信号SGを第2駆動信号SG2と呼ぶ。
【0092】
続いて、
図7に、本実施形態の遮断処理のフローチャートを示す。
図7において、先の
図2に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一のステップ番号を付して説明を省略する。
【0093】
本実施形態の遮断処理では、ステップS12,S16で肯定判定すると、つまり回転電機10の制御失陥時に、ステップS30において、インバータ20,30を停止させる。具体的には、電源スイッチ60をオフするための切替信号SCを電源スイッチ60に出力する。また、第1インバータ20に含まれるスイッチ22,23のすべてをオフするための第1駆動信号SG1を、スイッチ22,23に出力し、第2インバータ30に含まれるスイッチ32,33のすべてをオフするための第2駆動信号SG2を、スイッチ32,33に出力する。
【0094】
続くステップS32において、ステップS46において、回転電機10の弱め界磁制御が実施されているか否かを判定する。制御装置50は、インバータ20,30を用いて回転電機10の弱め界磁制御を実施するものであり、特に回転電機10の高回転駆動時に回転電機10の弱め界磁制御を実施する。
【0095】
ステップS32で否定判定すると、ステップS18に進み、開閉スイッチ64をオンに維持する。一方、ステップS32で肯定判定すると、つまり回転電機10の弱め界磁制御を実施している場合に制御失陥が発生したと判定すると、ステップS22に進み、開閉スイッチ64をオフする。
【0096】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0097】
・本実施形態では、オープン結線された巻線14を有する回転電機10において、高電位側ダイオード72及び下アームダイオード25、又は上アームダイオード24及び低電位側ダイオード73を用いて、開閉スイッチ64のオフ時に第1巻線15及び第2巻線16に蓄えられていた電磁エネルギが放出される。この構成では、電磁エネルギの放出時に、第1インバータ20と第2インバータ30とのうち第1インバータ20のみに電流IMが流れる。そのため、電磁エネルギの放出時に第2インバータ30に熱ストレスが加わることを抑制できる。
【0098】
・回転電機10の弱め界磁制御を実施している場合に回転電機10に制御失陥が発生すると、バッテリ40からの電力供給が断たれ、弱め界磁制御が停止されることにより回転電機10に過剰な逆起電圧VRが発生する。本実施形態では、回転電機10の弱め界磁制御を実施している場合に制御失陥が発生したと判定すると、開閉スイッチ64をオフする。そのため、弱め界磁制御の停止による回転電機10の過剰な逆起電圧VRを抑制でき、この逆起電圧VRによるインバータ20,30及びバッテリ40の過電圧故障を抑制できる。
【0099】
(第4実施形態)
以下、第4実施形態について、第3実施形態との相違点を中心に
図8を参照しつつ説明する。
図8において、先の
図6に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付して説明を省略する。
【0100】
本実施形態では、ダイオード整流回路70が、第1巻線15と開閉スイッチ64との間、及び開閉スイッチ64と第2巻線16との間にそれぞれ設けられている点で、第3実施形態と異なる。ダイオード整流回路70は、第1巻線15と開閉スイッチ64との間に設けられた第1整流回路71と、開閉スイッチ64と第2巻線16との間に設けられた第2整流回路74とを備えている。
【0101】
第1整流回路71は、第1低電位側整流素子としての第1低電位側ダイオード73を備えている。第1低電位側ダイオード73は、接地線LGと第1巻線15の第2端、つまり第1巻線15の開閉スイッチ64側の端部とを接続する。第1低電位側ダイオード73は、接地線LG側から第1巻線15側に向かう方向が順方向となるように接続されている。
【0102】
第2整流回路74は、第2低電位側整流素子としての第2低電位側ダイオード75(75A,75B,75C)を備えている。第2低電位側ダイオード75は、接地線LGと第2巻線16の第2端、つまり第2巻線16の開閉スイッチ64側の端部とを接続する。第2低電位側ダイオード75は、接地線LG側から第2巻線16側に向かう方向が順方向となるように接続されている。
【0103】
一方、第1整流回路71及び第2整流回路74には、高電位側ダイオードが設けられていない。つまり、本実施形態では、回転電機10の巻線14は、ダイオード整流回路70を介して電源線LEに接続されていない。
【0104】
本実施形態では、遮断処理において、第1インバータ20に含まれるスイッチ22,23、第2インバータ30に含まれるスイッチ32,33、及び開閉スイッチ64をオフすることで、各相において、第1電流IM1と第2電流IM2との一方が停止し、他方が流れ続ける。
【0105】
具体的には、
図8に矢印YCで示すように、第1電流IM1が第1インバータ20から第1整流回路71に向かって流れており、第2電流IM2が第2整流回路74から第2インバータ30に向かって流れている場合には、第1電流IM1が停止し、第2電流IM2が流れ続ける。この場合、第2電流IM2は、第2インバータ30の上アームダイオード34、及び第2整流回路74の第2低電位側ダイオード75を介して流れ続ける。
【0106】
また、
図8に矢印YDで示すように、第1電流IM1が第1整流回路71から第1インバータ20に向かって流れており、第2電流IM2が第2インバータ30から第2整流回路74に向かって流れている場合には、第2電流IM2が停止し、第1電流IM1が流れ続ける。この場合、第1電流IM1は、第1インバータ20の上アームダイオード24、及び第1整流回路71の第1低電位側ダイオード73を介して流れ続ける。
【0107】
回転電機10では、矢印YCに示す向きに電流IM1,IM2が流れる相と、矢印YDに示す向きに電流IM1,IM2が流れる相とが混在している。そのため、各スイッチ22,23,32,33,64をオフした後において、第1インバータ20と第2インバータ30との両方に電流IM1,IM2が流れる。
【0108】
以上詳述した本実施形態によれば、オープン結線された巻線14を有する回転電機10において、第1インバータ20の上アームダイオード24及び第1低電位側ダイオード73、又は第2インバータ30の上アームダイオード34及び第2低電位側ダイオード75を用いて、開閉スイッチ64のオフ時に第1巻線15及び第2巻線16に蓄えられていた電磁エネルギが放出される。この構成では、ダイオード整流回路70が、第1巻線15と開閉スイッチ64との間、及び開閉スイッチ64と第2巻線16との間に分散して設けられ、電磁エネルギの放出時に、第1インバータ20と第2インバータ30との両方に電流IMが流れる。そのため、電磁エネルギの放出時に第1インバータ20及び第2インバータ30に加わる熱ストレスを分散することができ、この熱ストレスによる第1インバータ20及び第2インバータ30の故障を抑制できる。
【0109】
(第5実施形態)
以下、第5実施形態について、第4実施形態との相違点を中心に
図9を参照しつつ説明する。
図9において、先の
図8に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付して説明を省略する。
【0110】
本実施形態では、第1整流回路71が、第1高電位側整流素子としての第1高電位側ダイオード72を備えている点で、第4実施形態と異なる。第1高電位側ダイオード72は、電源線LEと第1巻線15の第2端とを接続する。第1高電位側ダイオード72は、第1巻線15側から電源線LE側からに向かう方向が順方向となるように接続されている。
【0111】
また、本実施形態では、第2整流回路74が、第2高電位側整流素子としての第2高電位側ダイオード76(76A,76B,76C)を備えている点で、第4実施形態と異なる。第2高電位側ダイオード76は、電源線LEと第2巻線16の第2端とを接続する。第2高電位側ダイオード76は、第2巻線16側から電源線LE側からに向かう方向が順方向となるように接続されている。
【0112】
一方、第1整流回路71及び第2整流回路74には、低電位側ダイオードが設けられていない。つまり、本実施形態では、回転電機10の巻線14は、ダイオード整流回路70を介して接地線LGに接続されていない。
【0113】
本実施形態では、
図9に矢印YCで示すように、第1電流IM1が第1インバータ20から第1整流回路71に向かって流れており、第2電流IM2が第2整流回路74から第2インバータ30に向かって流れている場合には、第2電流IM2が停止し、第1電流IM1が流れ続ける。この場合、第1電流IM1は、第1インバータ20の下アームダイオード25、及び第1整流回路71の第1高電位側ダイオード72を介して流れ続ける。
【0114】
また、
図9に矢印YDで示すように、第1電流IM1が第1整流回路71から第1インバータ20に向かって流れており、第2電流IM2が第2インバータ30から第2整流回路74に向かって流れている場合には、第1電流IM1が停止し、第2電流IM2が流れ続ける。この場合、第2電流IM2は、第2インバータ30の下アームダイオード35、及び第2整流回路74の第2高電位側ダイオード76を介して流れ続ける。
【0115】
以上詳述した本実施形態によれば、オープン結線された巻線14を有する回転電機10において、第1インバータ20の下アームダイオード25及び第1高電位側ダイオード72、又は第2インバータ30の下アームダイオード35及び第2高電位側ダイオード76を用いて、開閉スイッチ64のオフ時に第1巻線15及び第2巻線16に蓄えられていた電磁エネルギが放出される。この構成では、ダイオード整流回路70が、第1巻線15と開閉スイッチ64との間、及び開閉スイッチ64と第2巻線16との間に分散して設けられ、電磁エネルギの放出時に、第1インバータ20と第2インバータ30との両方に電流IMが流れる。そのため、電磁エネルギの放出時に第1インバータ20及び第2インバータ30に加わる熱ストレスを分散することができ、この熱ストレスによる第1インバータ20及び第2インバータ30の故障を抑制できる。
【0116】
(その他の実施形態)
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0117】
・蓄電装置は、バッテリに限られず、キャパシタであってもよい。
【0118】
・回転電機10としては、3相のものに限らず、2相のものまたは4相以上のものであってもよい。
【0119】
・巻線14は、第1巻線15と第2巻線16との他に第3巻線や第4巻線を有していてもよい。つまり、開閉スイッチ64をオフすることにより、オンしている場合に比べて巻線14の巻数が減少する構成であればよい。
【0120】
・ダイオード整流回路70は、第1巻線15及び第2巻線16に蓄えられた電磁エネルギをコンデンサ26に放出する構成に限らず、例えばグランドに接続された接地線LGに放出してもよい。
【0121】
・ダイオード整流回路70を構成する素子は、ダイオード72,73,75,76に限られず、サイリスタやリレー等のスイッチにより構成されていてもよい。この場合、制御装置50は、回転電機10の駆動時においてスイッチを通常オフしておき、遮断処理のステップS22において、開閉スイッチ64をオフに切り替えるのと同時に、又は開閉スイッチ64をオフに切り替えるタイミングよりも所定期間前にスイッチをオンすればよい。ここで、このスイッチは、オフされることにより双方向の電流を遮断可能なものとしてもよい。
【0122】
・なお、ダイオード整流回路70を構成する素子としてダイオード72,73,75,76を用いることが好ましい。ダイオード72,73,75,76を用いることで、このダイオード72,73,75,76の整流機能により、制御装置50により制御を実施することなく、第1規定方向,第2規定方向としての順方向の電流IMの流通を許可し、順方向とは逆方向の電流IMの流通を阻止することができる。
【0123】
・第3実施形態において、ダイオード整流回路70が、開閉スイッチ64と第2巻線16との間に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0124】
10…回転電機、14…巻線、15…第1巻線、16…第2巻線、20,30…インバータ、22,32…上アームスイッチ、23,33…下アームスイッチ、40…バッテリ、64…開閉スイッチ、72,73,75,76…ダイオード、LE…電源線、LG…接地線。