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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】密封装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/74 20060101AFI20240417BHJP
   F16J 15/3212 20160101ALI20240417BHJP
   F16J 15/3204 20160101ALI20240417BHJP
   F16J 15/24 20060101ALI20240417BHJP
   F16C 17/02 20060101ALI20240417BHJP
   F16C 33/14 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
F16C33/74 Z
F16J15/3212
F16J15/3204 201
F16J15/24 A
F16C17/02 Z
F16C33/14 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020001813
(22)【出願日】2020-01-09
(65)【公開番号】P2021110369
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-11-10
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 篤史
【審査官】角田 貴章
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-323139(JP,A)
【文献】特開2001-065703(JP,A)
【文献】米国特許第02273962(US,A)
【文献】特開平04-292824(JP,A)
【文献】特開2010-175020(JP,A)
【文献】特開2017-223293(JP,A)
【文献】特開2015-203491(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第3012496(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 17/00 -17/26
33/00 -33/28
33/72 -33/82
F16J 15/16 -15/32
15/3204
15/3212
15/324 -15/3296
15/46 -15/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体が挿入される孔を有するハウジングと前記軸体との間に形成される環状の空間を密封する密封装置であって、
樹脂材料で構成され、前記孔の内周面に嵌め合わされ、前記軸体の外周面に摺動する環状の軸受部材と、
前記軸受部材に固定され、前記軸体の外周面に摺動する環状のシール部材と、
前記軸受部材に固定され、前記シール部材を前記軸体の外周面に向けて弾性力により押さえるバネ部材と、を有し、
前記軸受部材は、前記シール部材および前記バネ部材をインサート品とするインサート成形品であ
前記バネ部材は、前記軸受部材に周方向での全域にわたり固定される環状の固定部と、前記固定部から前記軸体に向けて突出する複数のバネ部と、を有し、
前記複数のバネ部のそれぞれの途中には、前記軸体側を凸とするように屈曲した部分が設けられる、
密封装置。
【請求項2】
前記軸受部材の外周面には、弾性材料で構成される環状の弾性部材が配置される環状の凹部が設けられる、
請求項に記載の密封装置。
【請求項3】
前記軸受部材の側面には、弾性材料で構成される環状の弾性部材が配置される環状の凹部が設けられる、
請求項1または2に記載の密封装置。
【請求項4】
前記シール部材は、樹脂材料で構成される、
請求項1からのいずれか1項に記載の密封装置。
【請求項5】
前記バネ部材は、金属材料で構成される、
請求項1からのいずれか1項に記載の密封装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密封装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軸体が挿入される孔を有するハウジングと当該軸体との間に形成される環状の空間を密封する密封装置が知られている。例えば、特許文献1に記載の密封装置は、ハウジングの孔の内周面に嵌合される金属環と、金属環に加締め固定される環状の樹脂製シールおよび環状の板バネと、を有する。樹脂製シールは、金属環から軸体の外周面に向けて突出する部分を有する。当該部分は、板バネにより軸体の外周面に向けて押さえられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-203491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の密封装置では、金属環の内径が軸体の外径よりも大幅に大きいため、安定したシール状態を得るには、ハウジングに対する軸体の偏心を防止するための軸受が別途必要となる。このため、特許文献1に記載の密封装置では、装着される機器の高コスト化を招いたり、装着される機器に当該軸受のための設置スペースを確保する結果、当該機器の大型化を招いたりするという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本発明の一態様に係る密封装置は、軸体が挿入される孔を有するハウジングと前記軸体との間に形成される環状の空間を密封する密封装置であって、樹脂材料で構成され、前記孔の内周面に嵌め合わされ、前記軸体の外周面に摺動する環状の軸受部材と、前記軸受部材に固定され、前記軸体の外周面に摺動する環状のシール部材と、前記軸受部材に固定され、前記シール部材を前記軸体の外周面に向けて弾性力により押さえるバネ部材と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態に係る密封装置を用いた機器を示す断面図である。
図2】第1実施形態に係る密封装置の未装着状態を示す断面図である。
図3】第1実施形態に係る密封装置が有する軸受部材をX1方向からみた平面図である。
図4】第1実施形態に係る密封装置が有するシール部材をX1方向からみた平面図である。
図5】第1実施形態に係る密封装置が有するバネ部材をX1方向からみた平面図である。
図6】第1実施形態に係る密封装置の使用状態を示す断面図である。
図7】第2実施形態に係る密封装置の使用状態を示す断面図である。
図8】第3実施形態に係る密封装置の使用状態を示す断面図である。
図9】第4実施形態に係る密封装置を用いた機器を示す断面図である。
図10】変形例1に係る密封装置の未装着状態を示す断面図である。
図11】変形例1に係る密封装置が有するバネ部材をX1方向からみた平面図である。
図12】変形例1に係る密封装置の使用状態を示す断面図である。
図13】変形例2におけるバネ部材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態を説明する。なお、図面において各部の寸法または縮尺は実際と適宜に異なり、理解を容易にするために模式的に示している部分もある。また、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られない。
【0008】
1.第1実施形態
1-1.密封装置10を用いた機器100の概要
図1は、第1実施形態に係る密封装置10を用いた機器100を示す断面図である。機器100は、車両等の機械が有する機器である。当該機器の典型例は、自動車等の排気ガス系統における排熱回収システム等の機器である。ここで、密封装置10は、当該排気ガス系統からの排気ガスの漏れを防止する。
【0009】
なお、当該機器は、密封すべき環状の空間がハウジングと軸体との間に形成される機器であればよく、排気ガス系統のための機器に限定されない。ただし、当該機器としては、当該環状の空間が貧潤滑条件となる機器が好適である。
【0010】
図1に示すように、機器100は、軸体200とハウジング300と密封装置10とを有する。
【0011】
軸体200は、軸線AXまわりに沿う外周面210を有する構造体である。図1では、軸体200の外径が軸線AXに沿って一定である場合が例示される。ただし、軸体200の形状は、図1に示す例に限定されず、例えば、外径の異なる複数の部分を有してもよいし、軸線AXに交差する方向に延びる部分を有してもよい。軸体200は、ハウジング300に対して、軸線AXまわりに相対的に揺動または回転するか、軸線AXに沿って相対的に移動する。
【0012】
なお、以下では、軸線AXに沿う一方向を「X1方向」といい、X1方向とは反対の方向を「X2方向」という。ここで、X1方向は、密封装置10から軸線AXに沿ってハウジング300における密封される対象となる内部空間に向かう方向であり、X2方向は、密封装置10から軸線AXに沿ってハウジング300の外部空間に向かう方向である。また、軸線AXまわりの一方向を「C1方向」といい、C1方向とは反対の方向を「C2方向」という。さらに、軸線AXに垂直な方向のうち、軸線AXに近づく方向(内周側に向かう方向)を「R1方向」といい、軸線AXから遠ざかる方向(外周側に向かう方向)を「R2方向」という。
【0013】
ただし、X1方向およびX2方向を総称して「軸方向」という場合がある。また、C1方向およびC2方向を総称して「周方向」という場合がある。さらに、R1方向およびR2方向を総称して「径方向」という場合がある。また、X1方向またはX2方向からみることを「平面視」という場合がある。
【0014】
ハウジング300は、軸体200が挿入される孔HOを有する構造体である。孔HOは、軸線AXまわりに沿う内周面310で囲まれる空間である。内周面310は、前述の軸体200の外周面210よりも小径である。このため、外周面210と内周面310との間には、環状の空間Sが形成される。また、ハウジング300には、図示しないが、孔HOに連通する空間が内部空間として設けられる。当該内部空間は、例えば、前述の排気ガスが流通する空間に連通する。
【0015】
密封装置10は、ハウジング300に対する軸体200の相対的な移動、回転または揺動を許容しつつ、前述の環状の空間Sを密封する構造体である。前述の空間Sは、密封装置10により、ハウジング300の内部空間に連通する第1空間S1と、ハウジング300の外部に連通する第2空間S2とに区分される。このように空間Sに密封装置10が配置されることにより、例えば、前述の排気ガスの漏れが防止される。
【0016】
図1に示す例では、密封装置10は、軸受部材20とシール部材30とバネ部材40とを有する。
【0017】
各部材を概略的に説明すると、軸受部材20は、樹脂材料で構成され、軸体200をハウジング300に対して支持するすべり軸受として機能する環状の部材である。シール部材30は、軸受部材20と軸体200の外周面210との間の隙間を塞ぐ環状の部材である。バネ部材40は、シール部材30を軸体200の外周面210に向けて弾性力により押さえる環状の板バネである。
【0018】
このような密封装置10では、前述のように軸受部材20がすべり軸受として機能するので、密封装置10とは別途軸受を用いずに、ハウジング300に対する軸体200の偏心を低減することができる。このため、安定したシール状態を実現しつつ、密封装置10とは別途軸受を用いる場合に比べて機器100の低コスト化および小型化を図ることができる。以下、密封装置10の各部を詳細に説明する。
【0019】
1-2.密封装置10の詳細
図2は、第1実施形態に係る密封装置10の未装着状態を示す断面図である。図3は、第1実施形態に係る密封装置10が有する軸受部材20をX1方向からみた平面図である。図4は、第1実施形態に係る密封装置10が有するシール部材30をX1方向からみた平面図である。図5は、第1実施形態に係る密封装置10が有するバネ部材40をX1方向からみた平面図である。図6は、第1実施形態に係る密封装置10の使用状態を示す断面図である。
【0020】
前述のように、密封装置10は、軸受部材20とシール部材30とバネ部材40とを有する。
【0021】
軸受部材20は、前述のように、樹脂材料で構成され、軸体200をハウジング300に対して支持するすべり軸受として機能する環状の部材である。
【0022】
軸受部材20を構成する樹脂材料としては、すべり軸受に適した耐荷重性および耐摩耗性等の特性を有すればよく、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の樹脂材料等が挙げられる。
【0023】
なお、当該樹脂材料には、必要に応じて、例えば、ガラス繊維、有機繊維、金属繊維、カーボン繊維または鉱物繊維等の繊維基材が含まれてもよいし、アルミナ等の金属酸化物、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、または窒化ホウ素等の窒化物で構成される粒子状のフィラーが含まれてもよい。
【0024】
軸受部材20は、射出成形等の公知の成形方法を用いて製造される。ここで、軸受部材20は、シール部材30およびバネ部材40をインサート品とするインサート成形品であることが好ましい。すなわち、軸受部材20は、シール部材30およびバネ部材40をインサート品とするインサート成形によりシール部材30およびバネ部材40と一体化された部材であることが好ましい。この場合、軸受部材20の成形と同時に軸受部材20に対してシール部材30およびバネ部材40を固定することができる。また、軸受部材20に対してシール部材30およびバネ部材40を強固に固定することができ、この結果、密封装置10によるシール状態を長期にわたり維持することができる。
【0025】
図2に示すように、軸受部材20は、孔21および22と溝23とを有する。これらは、軸線AXを中心として同軸的に設けられており、X2方向に向かって、孔21、溝23、孔22の順に配置される。
【0026】
孔21および22のそれぞれは、軸線AXまわりに沿う内周面で囲まれる空間である。図3に示すように、孔21および22のそれぞれは、平面視で円形をなす。
【0027】
孔21の直径D21は、軸体200の外径D0よりも若干大きい。このため、ハウジング300に対する軸体200の軸線AXまわりの回転または軸線AXに沿う移動が許容される。直径D21と外径D0との差は、軸体200の偏心を許容範囲内とするべく、軸体200の外径D0および線膨張係数等に応じて決められ、特に限定されないが、例えば、軸体200の外径D0に対して、5/100以上20/100以下の範囲内である。
【0028】
孔21の内周面は、平滑面であってもよいし、粗面化された面であってもよい。孔21の内周面が粗面化された面である場合、軸受部材20と軸体200との間の摩擦を低減することができる。また、孔21の内周面には、耐摩耗性を高めるべく、金属材料等で構成されるシートが接合されてもよい。
【0029】
孔22の直径D22は、孔21の直径D21よりも大きい。孔22の内周面と軸体200の外周面210との間の空間は、バネ部材40によるR1方向の弾性力のもとでシール部材30を軸体200に接触させる領域として用いられる。このため、直径D22の大きさは、シール部材30およびバネ部材40の構成に応じて適宜に決められる。
【0030】
溝23は、シール部材30およびバネ部材40を軸受部材20に対して固定するための周方向に沿って延びる窪みである。図3に示す例では、平面視における溝23の外周縁が円形をなす。溝23の外径D23は、前述の孔22の直径22よりも大きい。直径D22と外径D23との差は、シール部材30およびバネ部材40を軸受部材20に対して固定するのに必要な強度等に応じて決められる。
【0031】
なお、平面視における溝23の外周縁の形状は、円形に限定されない。ただし、後述するようにインサート成形により軸受部材20を製造する場合、通常、平面視における溝23の外周縁の形状は、平面視におけるシール部材30またはバネ部材40の外周縁の形状におよそ一致する。
【0032】
シール部材30は、前述のように、軸受部材20と軸体200の外周面210との間の隙間を塞ぐ環状の部材である。
【0033】
シール部材30を構成する材料としては、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の樹脂材料等が挙げられる。シール部材30が樹脂材料で構成されることにより、密封装置10に必要なシール状態を実現しつつ、シール部材30がゴム材料で構成される場合に比べてシール部材30と軸体200との間の摩擦抵抗を低減することができる。
【0034】
中でも、当該弾性材料としては、低摩擦および高耐久等の特性を有することから、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂を用いることが好ましい。なお、シール部材30を構成する弾性材料は、前述の軸受部材20を構成する樹脂材料と同じであっても異なってもよい。
【0035】
図2に示すように、密封装置10が機器100に装着されない状態で、シール部材30は、孔31を有する平板状をなす。孔31には、軸体200が挿入される。なお、以下では、密封装置10が機器100に装着されない状態を「自然状態」ともいう。
【0036】
密封装置10が機器100に装着されない状態で、シール部材30の内径(孔31の直径)D31は、軸体200の外径D0よりも小さい。したがって、シール部材30を弾性変形させた状態で、孔31に軸体200が挿入される。これにより、シール部材30を軸体200の外周面に全周にわたって密着させることができる。内径D31と外径D0との差は、外径D0、シール部材30の厚さおよび構成材料等に応じて決められる。
【0037】
シール部材30の外径D30は、前述の軸受部材20の溝23の外径D23に実質的に等しい。このため、外径D30は、前述の軸受部材20の孔22の直径D22よりも大きい。ここで、シール部材30は、平面視で、溝23の外周縁を境界として、前述の軸受部材20に固定される固定部32と、軸受部材20から突出するシール部33とに区分される。本実施形態のシール部33は、密封装置10が機器100に装着されない状態で、固定部32からR1方向に延びる。
【0038】
バネ部材40は、前述のように、シール部材30を軸体200の外周面210に向けて押さえる環状の板バネである。バネ部材40は、例えば、ステンレス鋼等のバネ鋼材で構成される。バネ部材40が金属材料で構成されることにより、バネ部材40が長期にわたり安定した弾性力を発揮することができる。このため、シール部材30の弾性力が経時的に低下しても、バネ部材40の弾性力により長期にわたりシール部材30を軸体200の外周面210に向けて押さえることができる。この結果、密封装置10によるシール状態が長期にわたり維持される。
【0039】
図2に示すように、バネ部材40は、シール部材30に対してX2方向の位置で、シール部材30に重ねた状態で配置される。バネ部材40は、軸受部材20に周方向での全域にわたり固定される環状の固定部41と、固定部41から軸体200に向けて突出する複数のバネ部42と、を有する。当該複数のバネ部42は、固定部41の周方向に沿って並んで配置される。
【0040】
密封装置10が機器100に装着されない状態で、バネ部材40の内径D41は、軸体200の外径D0よりも小さい。したがって、バネ部材40を弾性変形させた状態で、バネ部材40の内側に軸体200が挿入される。これにより、バネ部材40の弾性力によりシール部材30を軸体200の外周面210に向けて押さえることができる。内径D41と外径D0との差は、外径D0、バネ部材40の厚さおよび構成材料等に応じて決められる。
【0041】
バネ部材40の外径D40は、前述の軸受部材20の溝23の外径D23に実質的に等しい。このため、外径D40は、前述の軸受部材20の孔22の直径D22よりも大きい。ここで、バネ部材40は、平面視で、溝23の外周縁を境界として、前述の固定部41と複数のバネ部42とに区分される。本実施形態の各バネ部42は、図2に示すように、密封装置10が機器100に装着されない状態で、固定部41からX2方向に傾斜した状態でR1方向に延びる。このため、バネ部材40は、固定部41と各バネ部42との間に屈曲した部分43を有する。
【0042】
また、本実施形態のバネ部材40は、各バネ部42の途中に、軸体200側を凸とするように屈曲した部分44を有する。バネ部材40が部分44を有することにより、部分44を省略した場合に比べて、バネ部材40とシール部材30との接触状態を安定させやすいという利点がある。
【0043】
以上の部材を有する密封装置10は、軸受部材20がハウジング300の孔HOに圧入されるとともに、軸受部材20の孔21および22にX2方向で軸体200が挿入されることで、機器100に装着される。このような状態にある密封装置10は、図6に示すように、軸受部材20の外周面がハウジング300の内周面310に密着した状態で固定される一方、軸受部材20の内周面が軸体200の外周面210に摺動する。また、シール部材30のシール部33がX2方向に傾斜した状態で弾性変形される。このとき、シール部33は、軸体200に向けて凸湾曲した状態で、軸体200の外周面210に接触する。また、バネ部材40の複数のバネ部42のそれぞれは、軸線AXから離れる方向に弾性変形した状態で、外周面210との間にシール部33を挟んで配置される。
【0044】
以上のように、密封装置10は、軸体200が挿入される孔HOを有するハウジング300と軸体200との間に形成される環状の空間Sを密封する。ここで、密封装置10は、環状の軸受部材20と環状のシール部材30とバネ部材40とを有する。軸受部材20は、樹脂材料で構成され、孔HOの内周面310に嵌め合わされ、軸体200の外周面210に摺動する。シール部材30は、軸受部材20に固定され、軸体200の外周面210に摺動する。バネ部材40は、軸受部材20に固定され、シール部材30を軸体200の外周面210に向けて弾性力により押さえる。
【0045】
以上の密封装置10では、軸受部材20がハウジング300に対して軸体200を支持するすべり軸受として機能する。このため、ハウジング300に対する軸体200の偏心を防止するための軸受が別途不要である。この結果、密封装置10が装着される機器100の低コスト化および小型化を図ることができる。
【0046】
2.第2実施形態
以下、本発明の第2実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用または機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0047】
図7は、第2実施形態に係る密封装置10Aの使用状態を示す断面図である。密封装置10Aは、軸受部材20に代えて軸受部材20Aおよび弾性部材50を有する以外は、前述の第1実施形態の密封装置10と同様である。
【0048】
軸受部材20Aは、その外周面に周方向に沿って延びる凹部24を有する以外は、前述の第1実施形態の軸受部材20と同様である。凹部24は、弾性部材50を配置するための溝である。弾性部材50は、弾性材料で構成されるOリング等の環状の部材である。当該弾性材料としては、例えば、ニトリルゴム(NBR)、水素添加ニトリルゴム(H-NBR)、アクリルゴム(ACM)またはフッ素ゴム(FKM)等のゴム材料が挙げられる。
【0049】
以上のように、軸受部材20Aの外周面には、弾性材料で構成される環状の弾性部材50が配置される環状の凹部24が設けられる。以上の密封装置10Aでは、ハウジング300が軸受部材20Aの外周面に沿う面を有する場合、弾性部材50によりハウジング300と軸受部材20Aとの間の隙間を塞ぐことができる。このため、ハウジング300と軸受部材20Aとの線膨張係数差が大きい場合であっても、ハウジング300と軸受部材20Aとの間の気密性または液密性を高く維持することができる。また、密封装置10Aは、前述の第1実施形態の密封装置10と同様の効果も得られる。
【0050】
3.第3実施形態
以下、本発明の第3実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用または機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0051】
図8は、第3実施形態に係る密封装置10Bの使用状態を示す断面図である。密封装置10Bは、軸受部材20に代えて軸受部材20Bおよび弾性部材50Bを有する以外は、前述の第1実施形態の密封装置10と同様である。
【0052】
軸受部材20Bは、その側面(本実施形態ではX1方向側の側面)に周方向に沿って延びる凹部24Bを有する以外は、前述の第1実施形態の軸受部材20と同様である。凹部24Bは、弾性部材50Bを配置するための溝である。弾性部材50Bは、前述の第2実施形態の弾性部材50と同様、弾性材料で構成されるOリング等の環状の部材である。
【0053】
以上のように、軸受部材20Bの側面には、弾性材料で構成される環状の弾性部材50Bが配置される環状の凹部24Bが設けられる。以上の密封装置10Bでは、ハウジング300が軸受部材20Bの側面に沿う面を有する場合、弾性部材50Bによりハウジング300と軸受部材20Bとの間の隙間を塞ぐことができる。このため、ハウジング300と軸受部材20Bとの線膨張係数差が大きい場合であっても、ハウジング300と軸受部材20Bとの間の気密性または液密性を高く維持することができる。また、密封装置10Bは、前述の第1実施形態の密封装置10と同様の効果も得られる。
【0054】
4.第4実施形態
以下、本発明の第4実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用または機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0055】
図9は、第4実施形態に係る密封装置10Cを用いた機器100Cを示す断面図である。機器100Cは、密封装置10およびハウジング300に代えて密封装置10Cおよびハウジング300Cを有する以外は、前述の第1実施形態の機器100と同様である。
【0056】
ハウジング300Cは、筒部320および底部330を有する有底筒状をなす。筒部320は、軸線AXまわりに沿う内周面を有する。底部330は、筒部320のX2方向での端に接続され、軸線AXに対して垂直な平面に沿う板状をなす。底部330には、軸体200が挿入される孔340が設けられる。軸体200と筒部320との間には、環状の空間S3が形成される。
【0057】
密封装置10Cは、ハウジング300Cに対する軸体200の相対的な移動、回転または揺動を許容しつつ、前述の環状の空間S3を密封する構造体である。密封装置10Cは、軸受部材20に代えて軸受部材20Cおよび弾性部材50Cを有する以外は、前述の第1実施形態の密封装置10と同様である。
【0058】
軸受部材20Cは、その側面(本実施形態ではX2方向側の側面)に周方向に沿って延びる凹部24Cを有するとともに外周面の形状が異なる以外は、前述の第1実施形態の軸受部材20と同様である。
【0059】
軸受部材20Cは、筒状の本体部25と、本体部25からR2方向に突出するフランジ部26と、を有する。フランジ部26は、前述の底部330に接触または近接する。フランジ部26には、凹部24Cが設けられる。
【0060】
凹部24Cは、弾性部材50Cを配置するための溝である。弾性部材50Cは、前述の第2実施形態の弾性部材50と同様、弾性材料で構成されるOリング等の環状の部材である。
【0061】
以上のように、軸受部材20Cの側面には、弾性材料で構成される環状の弾性部材50Cが配置される環状の凹部24Cが設けられる。以上の密封装置10Cでは、ハウジング300Cが軸受部材20Cの側面に沿う面を有しており、弾性部材50Cによりハウジング300Cと軸受部材20Cとの間の隙間を塞ぐことができる。このため、ハウジング300Cと軸受部材20Cとの線膨張係数差が大きい場合であっても、ハウジング300Cと軸受部材20Cとの間の気密性または液密性を高く維持することができる。また、密封装置10Cは、前述の第1実施形態の密封装置10と同様の効果も得られる。
【0062】
5.変形例
以上に例示した各形態は多様に変形され得る。前述の各形態に適用され得る具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0063】
5-1.変形例1
前述の形態では、バネ部材40が自然状態で屈曲する部分を有する構成が例示されるが、当該構成に限定されない。例えば、バネ部材の自然状態における形状は、平板状でもよい。
【0064】
図10は、変形例1に係る密封装置10Dの未装着状態を示す断面図である。図11は、変形例1に係る密封装置10Dが有するバネ部材40DをX1方向からみた平面図である。図12は、変形例1に係る密封装置10Dの使用状態を示す断面図である。
【0065】
密封装置10Dは、バネ部材40に代えてバネ部材40Dを有する以外は、前述の第1実施形態の密封装置10と同様である。図10に示すように、バネ部材40Dは、機器に装着されない状態で、平板状をなす。図11に示すように、バネ部材40Dは、軸受部材20に周方向での全域にわたり固定される環状の固定部41と、固定部41から軸体200に向けて突出する複数のバネ部42Dと、を有する。複数のバネ部42Dは、バネ部材40Aの内周側に径方向に延びる複数のスリットを設けることで形成される。
【0066】
図12に示すように、バネ部材40Dの内側に軸体200が挿入された状態で、複数のバネ部42Dのそれぞれは、軸線AXから離れる方向に弾性変形した状態で、外周面210との間にシール部33を挟んで配置される。以上の変形例1によっても、前述の第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0067】
5-2.変形例2
バネ部材の形状は、前述の形態または変形例に限定されず、固定部およびバネ部のそれぞれの形状は、任意であり、バネ部の数も任意である。
【0068】
図13は、変形例2におけるバネ部材40Eの平面図である。図13に示すように、バネ部材40Eは、平面視で、溝23の外周縁を境界として、複数の固定部41Eと複数のバネ部42Eとに区分される。複数の固定部41Eと複数のバネ部42Eとは、バネ部材40Eの内周側および外周側のそれぞれに径方向に延びる複数のスリットを設けることで形成される。ここで、バネ部材40Eの内周側に設けられる複数のスリットと、バネ部材40Eの外周側に設けられる複数のスリットとは、周方向で重ならない位置となるように、交互に周方向に並ぶ。以上の変形例2によっても、前述の第1実施形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0069】
10…密封装置、10A…密封装置、10B…密封装置、10C…密封装置、10D…密封装置、20…軸受部材、20A…軸受部材、20B…軸受部材、20C…軸受部材、24…凹部、24B…凹部、24C…凹部、30…シール部材、40…バネ部材、40A…バネ部材、40D…バネ部材、40E…バネ部材、50…弾性部材、50B…弾性部材、50C…弾性部材、100…機器、100C…機器、200…軸体、300…ハウジング、300C…ハウジング、340…孔、HO…孔、S…空間、S3…空間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13