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特許7474057車両運行記録システム及び車両運行記録装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】車両運行記録システム及び車両運行記録装置
(51)【国際特許分類】
   G07C 5/00 20060101AFI20240417BHJP
   B60R 16/03 20060101ALI20240417BHJP
   B60R 16/033 20060101ALI20240417BHJP
   H02J 9/04 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
G07C5/00 Z
B60R16/03 A
B60R16/033 B
H02J9/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020011594
(22)【出願日】2020-01-28
(65)【公開番号】P2021117820
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2023-01-27
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】片岡 良平
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 徳彦
(72)【発明者】
【氏名】西 幸二
(72)【発明者】
【氏名】澤田 真一
(72)【発明者】
【氏名】新美 英樹
【審査官】中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-195755(JP,A)
【文献】特開2011-130644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07C 5/00- 5/12
B60R 16/03,16/033
H02J 9/04- 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運行情報を記録する車両運行記録装置と、
前記車両運行記録装置に接続され、車両に設けられた電源から電力の供給を受けて所定電圧の駆動電力を前記車両運行記録装置に供給可能な主電源装置と、
前記車両運行記録装置の外部でかつ前記車両運行記録装置と前記主電源装置との間に設けられ、蓄電池を有し、前記蓄電池からの電力の供給を受けて前記主電源装置とは異なる電圧の駆動電力を前記車両運行記録装置に供給可能な補助電源装置と、を備え、
前記車両運行記録装置は、供給される電圧が、前記所定電圧から異なる電圧に変化した場合に、前記主電源装置から前記補助電源装置に切り替えられたと判定し、前記主電源装置から前記補助電源装置に切り替わった時点の時刻を前記車両の運行終了時刻として取得する、
車両運行記録システム。
【請求項2】
前記主電源装置から前記補助電源装置に切り替えられたと判定した場合に前記車両の運行情報の記録を終了する、
請求項1に記載の車両運行記録システム。
【請求項3】
前記主電源装置は、前記車両に設けられたアクセサリ電源であり、前記補助電源装置は、前記アクセサリ電源とは別に設けられた蓄電池である、
請求項1又は2に記載の車両運行記録システム。
【請求項4】
前記補助電源装置は、前記主電源装置と前記車両運行記録装置との間を接続し、前記主電源装置から駆動電力の供給が停止した場合に前記主電源装置と前記車両運行記録装置との間を遮断することで前記蓄電池からの駆動電力を前記車両運行記録装置に供給されるように切り替える切替部を更に備える、
請求項1から3のいずれか一項に記載の車両運行記録システム。
【請求項5】
前記蓄電池は、連続して駆動電力を供給するリチウムイオンキャパシタで構成されている、
請求項1から4のいずれか一項に記載の車両運行記録システム。
【請求項6】
車両の運行情報を記録する車両運行記録装置であって、
主電源装置から供給される電圧と、前記主電源装置とは異なる補助電源装置から供給される電圧とを検出し、
前記電圧の検出結果に基づき、前記主電源装置から前記補助電源装置に切り替えられたと判定し、前記主電源装置から前記補助電源装置に切り替わった時点の時刻を前記車両の運行終了時刻として取得する、
車両運行記録装置。
【請求項7】
前記主電源装置から前記補助電源装置に切り替えられたと判定した場合に、前記車両の運行情報の記録を終了する、
請求項6に記載の車両運行記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、車両運行記録システム及び車両運行記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばドライブレコーダ等のような車両運行記録装置は、一般に車両のアクセサリ電源から電力供給を受けて動作する。この場合、例えば後付けの車両運行記録装置は、車両のシガーライターソケットやアクセサリソケット等に主電源装置となる電源プラグを差し込むことで、車両のアクセサリ電源に接続される。このような車両運行記録装置においては、車両のアクセサリ電源からの電力供給が断たれると、車両運行記録装置の全ての機能が停止してしまう。そのため、例えば車両運行記録装置がメモリ等にデータの書き込みを行っている際中や外部と通信している際中に車両のアクセサリ電源が落とされると、データの書き込みや通信が途中で停止してしまい、これらのデータが破損してしまうおそれもある。
【0003】
そこで、このような車両運行記録装置においては、車両のアクセサリ電源からの電力供給が断たれた後も一定期間動作させるため、例えば蓄電池を用いることが考えられている。例えば主電源装置と並列に蓄電池を設けることで、車両運行記録装置は、主電源装置からの電力供給が停止した場合であっても、蓄電池からの電力供給を受けて一定期間動作することができる。
【0004】
しかしながら、主電源装置と並列に蓄電池を設けた場合、車両運行記録装置は、主電源装置からの電力供給が断たれた後も、蓄電池の残量が減って電圧が低下するまで一定期間動作するため、主電源装置から蓄電池に切り替わったことを検出することが難しい。すなわち、一般に車両の運行終了時刻は、車両のアクセサリ電源が落とされたことにより判断するが、上記構成では車両の運行終了時刻を検出することが難しい。
【0005】
これに対し、蓄電池を車両運行記録装置に内蔵し、車両運行記録装置が備えるCPUにより主電源装置から蓄電池への切り替えを制御することで、車両運行記録装置は、車両のアクセサリ電源が落とされた時点、つまり車両の運行終了時刻を判断することができる。しかしながら、ドライブレコーダ等の車両運行記録装置は、一般的にフロントガラスの裏側等、車内において特に高温になり易い箇所に設置されることが多い。そのため、蓄電池を車両運行記録装置に内蔵すると、周囲温度の影響を受けて蓄電池の劣化が早まる懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-182214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記した事情に鑑みてなされてものであり、その目的は、車両運行記録装置の外部に補助用の蓄電池を設けたものにおいて、主電源装置から蓄電池への切り替えを検出することで車両の運行終了を検知することができる車両運行記録システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の車両運行記録システムは、車両運行記録装置と、主電源装置と、補助電源装置と、を備える。車両運行記録装置は、車両の運行情報を記録可能な機能部と、前記機能部の動作を制御する制御部と、を有し、駆動電力の供給を受けて動作する。主電源装置は、前記車両運行記録装置に接続され、車両に設けられた電源から電力の供給を受けて所定電圧の駆動電力を前記車両運行記録装置に供給可能である。補助電源装置は、前記車両運行記録装置の外部でかつ前記車両運行記録装置と前記主電源装置との間に設けられ、蓄電池を有し、前記蓄電池からの電力の供給を受けて前記主電源装置とは異なる電圧の駆動電力を前記車両運行記録装置に供給可能である。前記補助電源装置は、前記主電源装置から前記車両運行記録装置に対する前記駆動電力の供給が停止した場合に、前記駆動電力の供給源を前記主電源装置から前記補助電源装置に切り替える切替部、を更に有している。そして、前記制御部は、前記車両運行記録装置に供給される前記駆動電力の電圧が前記所定電圧から変化したことに基づいて前記駆動電力の供給源の切り替えを判定する電源切替判定処理を実行可能である。
【0009】
この構成によれば、車両運行記録装置は、駆動電力の電圧の変化に基づいて主電源装置から蓄電池を有する補助電源装置への切り替えを検出することができる。この場合、一般に運転手は、車両の運行終了とほぼ同時に車両の電源を落とすため、車両に設けられた電源が落とされた時点を、車両の運行終了とみなすことができる。そのため、本構成によれば、車両運行記録装置は、駆動電力の電圧の変化に基づいて主電源装置から補助電源装置への切り替えを検出することで、車両の運行終了を比較的正確に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態による車両運行記録システムの構成の一例を概念的に示す図
図2】第1実施形態による車両運行記録システムにおいて車両運行記録装置で実行される制御フローの一例を示す図
図3】第2実施形態による車両運行記録システムの構成の一例を概念的に示す図
図4】第2実施形態による車両運行記録システムにおいて車両運行記録装置で実行される制御フローの一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、複数の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各実施形態において実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0012】
(第1実施形態)
図1に示す車両運行記録システム1は、例えば後付けのドライブレコーダ等を含む構成であって、車両運行に関する情報を内部又は外部の記録装置に記録する機能を有する。本実施形態において、車両運行に関する情報とは、例えば車両の位置、走行ルート、速度、加速度、車両の状態、ドライバーの眠気やわき見の情報、総運転時間、総運転距離等の車両運行に関する各種の情報であり、車両運行記録システム1は、これらの情報の少なくとも1つを記録することができる。
【0013】
車両運行記録システム1は、主電源装置10、補助電源装置20、及び車両運行記録装置30を備えている。本実施形態の場合、主電源装置10、補助電源装置20、及び車両運行記録装置30は、それぞれ異なる筐体を有しており、電源線2によって、主電源装置10、補助電源装置20、及び車両運行記録装置30の順に直列に接続されている。
【0014】
主電源装置10は、例えばシガープラグで構成することができ、シガーライターソケット又はアクセサリソケット等に挿入されて車両に設けられたアクセサリ電源に接続される。主電源装置10は、例えば内部に電圧変換回路を有しており、補助電源装置20を介して車両運行記録装置30に接続される。主電源装置10は、車両に設けられたアクセサリ電源から電力供給を受けて、アクセサリ電源からの供給電力の電圧を所定電圧に変換して、車両運行記録装置30の駆動電力として車両運行記録装置30に供給する機能を有する。
【0015】
主電源装置10の出力電力の電圧は、車両運行記録装置30の許容電圧範囲内に設定されている。本実施形態の場合、アクセサリ電源は、12Vの電力を供給する。そして、主電源装置10は、アクセサリ電源から供給される12Vの電力を5Vに変換し、この5Vの出力電力を駆動電力として車両運行記録装置30に供給する機能を有している。
【0016】
補助電源装置20は、車両運行記録装置30の外部にあって、かつ、車両運行記録装置30と主電源装置10との間に設けられている。補助電源装置20の出力電力の電圧は、車両運行記録装置30の許容電圧範囲内で、かつ、主電源装置10の出力電圧とは異なる値に設定されている。すなわち、補助電源装置20は、主電源装置10とは異なる電圧の駆動電力、この場合、4.5Vの駆動電力を車両運行記録装置30に供給する機能を有している。
【0017】
補助電源装置20は、充電回路21、蓄電池22、昇圧電圧安定化回路23、ダイオード24、切替部25、及びコンパレータ26を有している。充電回路21は、切替部25の入力側の電源線2に接続されており、電源線2を介して主電源装置10に接続されている。充電回路21は、主電源装置10から供給される5Vの駆動電力を受けてその駆動電力を蓄電池22に供給し、蓄電池22の充電を制御する機能を有する。
【0018】
蓄電池22は、補助電源装置20の内部において、車両運行記録装置30に対して主電源装置10と並列に接続されている。蓄電池22は、放充電可能な構成であり、リチウムイオン電池やニッケル・カドミウム電池等の二次電池や、キャパシタ等を用いることができる。本実施形態において、蓄電池22にはキャパシタが採用されている。急速充放電が可能なキャパシタを蓄電池22に用いることで、蓄電池22から車両運行記録装置30に供給される駆動電力の一時的な減少をも防ぐことができ、その結果、車両運行記録装置30に対して連続して安定的に駆動電力を供給することができる。
【0019】
更に本実施形態において、蓄電池22は、例えばリチウムイオンキャパシタを採用することができる。リチウムイオンキャパシタは、周囲温度が85℃の高温環境下でも容量を維持することができるとともに内部抵抗の増加も小さく、また、放充電サイクルの繰り返しによる劣化が少ない、という特性を有している。このため、リチウムイオンキャパシタは、補助電源装置20のように、高温になり易い車内で使用され、かつ、繰り返して放充電される使用態様に適している。この場合、蓄電池22からの出力電圧は、主電源装置10からの出力電圧よりも低い例えば2.2V~3.8V程度である。
【0020】
昇圧電圧安定化回路23は、ダイオード24を介して電源線2及び車両運行記録装置30に接続されている。ダイオード24は、昇圧電圧安定化回路23から車両運行記録装置30に向かう方向を順方向として、昇圧電圧安定化回路23と電源線2との間に設けられている。
【0021】
昇圧電圧安定化回路23は、蓄電池22の出力電力を、主電源装置10の出力電圧とは異なる電圧に昇圧するとともに安定化して、車両運行記録装置30に供給する機能を有する。この場合、昇圧電圧安定化回路23は、2.2V~3.8Vの蓄電池22の出力電力を、主電源装置10の出力電圧5Vよりも低い4.5Vに昇圧して出力する。
【0022】
なお、昇圧電圧安定化回路23は、蓄電池22の出力電力を、主電源装置10の出力電圧よりも高い値に昇圧して出力しても良い。ただし、昇圧電圧安定化回路23は、蓄電池22の出力電力を、主電源装置10の出力電圧よりも低い値に昇圧して出力することが望ましい。これは次の理由による。すなわち、蓄電池22の出力電力を、主電源装置10の出力電圧よりも高い値に昇圧して出力すると、主電源装置10から車両運行記録装置30に駆動電力の供給を行おうとする際に、主電源装置10から主電源装置10から駆動電力が供給されずに、主電源装置10よりも出力電圧の高い蓄電池22から車両運行記録装置30に駆動電力が供給されてしまう。すると、蓄電池22及び充電回路21から駆動電力が供給され続けることになり、充電回路21が蓄電池22を正しく充電できない可能性があるからである。
【0023】
切替部25は、主電源装置10から車両運行記録装置30に対する駆動電力の供給が停止した場合に、駆動電力の供給源を主電源装置10から補助電源装置20に切り替える機能を有する。切替部25は、例えばリレー等の開閉器で構成されている。切替部25は、主電源装置10と車両運行記録装置30との間に配置されて、主電源装置10と車両運行記録装置30との間を開閉する機能を有する。切替部25は、コンパレータ26からの出力を受けて動作する。コンパレータ26は、切替部25の両端部の電圧を比較、つまり主電源装置10側と昇圧電圧安定化回路23側の電圧を比較し、その電圧差に応じてHigh又はLowを出力する。
【0024】
本実施形態の場合、コンパレータ26は、例えば昇圧電圧安定化回路23側の電圧に比べて主電源装置10側の電圧が高い場合にはHighを出力し、昇圧電圧安定化回路23側の電圧に比べて主電源装置10側の電圧が低い場合にはLowを出力する。そして、この場合、切替部25は、コンパレータ26の出力がHighの場合に主電源装置10と車両運行記録装置30との間を閉じ、コンパレータ26の出力がLowの場合に主電源装置10と車両運行記録装置30との間を開く。
【0025】
すなわち、車両アクセサリ電源がON状態となって主電源装置10から5Vの駆動電力が供給されている場合、切替部25は、主電源装置10と車両運行記録装置30との間を接続する。これにより、主電源装置10から出力された5Vの駆動電力が、車両運行記録装置30に供給される。一方、車両アクセサリ電源がOFF状態となって主電源装置10から5Vの駆動電力の供給が停止した場合、切替部25は、主電源装置10と車両運行記録装置30との間を遮断する。これにより、蓄電池22から昇圧電圧安定化回路23を介して出力された4.5Vの駆動電力が、車両運行記録装置30に供給される。
【0026】
車両運行記録装置30は、主電源装置10から出力される5Vの駆動電力、又は補助電源装置20から出力される4.5Vの駆動電力のいずれか一方を受けて動作する。車両運行記録装置30は、複数の機能部31、電圧検出部32、及び制御部33を有している。
【0027】
機能部31は、駆動電力の供給を受けて機能するデバイスであり、例えば画像や映像を録画するカメラ等の撮影装置、音声を集音し記録する録音装置、GPS電波等を用いて位置情報を取得するGPS受信装置、車両の情報を取得する車両情報取得装置、車両の位置情報やスピードの情報を記録する記録装置、無線又は有線により車内又は車外の外部機器と接続する通信装置、等である。
【0028】
なお、図1では、2つ以上の機能部31を省略しているが、機能部31の数は特に限定されるものではない。また、機能部31の種類は、上述したものに限定されない。また、車両運行記録装置30は、例えばSDカードやUSBメモリ等の外部の記憶媒体90を着脱可能に構成することができる。そして、機能部31の機能の1つのとして、この外部の記憶媒体90に運行情報等の各種情報を書き込む機能を有することができる。更に、機能部31の1つの機能として、現在時刻を計時するタイマ機能を有することができる。
【0029】
電圧検出部32は、車両運行記録装置30の筐体内に内蔵されている。電圧検出部32は、電源線2から分岐して、電源線2と制御部33との間に設けられている。電圧検出部32は、車両運行記録装置30に供給される駆動電力の電圧を検出し、その検出結果を制御部33に出力する機能を有する。電圧検出部32は、例えばA/Dコンバータで構成されている。A/Dコンバータ等による電圧検出機能は、この種の車両運行記録装置が通常備えている構成である。そのため、電圧検出部32を車両運行記録装置30に内蔵されたA/Dコンバータ等で構成することにより、車両運行記録装置30は、駆動電力の電圧変化を検出するための新たな構成を追加することなく、駆動電力の電圧変化を検出することができる。
【0030】
制御部33は、主電源装置10又は補助電源装置20から供給された駆動電力を、各機能部31に分配したり、各機能部31の動作を制御する機能を有する。制御部33は、例えばCPU331や、ROM、RAM、及び書き換え可能なフラッシュメモリなどの記憶領域332を有するマイクロコンピュータを主体に構成されている。記憶領域332は、車両運行記録装置30を制御するための制御プログラムを記憶している。そして、制御部33は、CPU331において記憶領域332に記憶している制御プログラムを実行することで、各機能部31に各機能部31の目的に合致した機能を発揮させる。
【0031】
また、制御部33は、CPU331において記憶領域332に記憶している制御プログラムを実行することで、電源切替判定処理を実行可能である。電源切替判定処理は、車両運行記録装置30に供給される駆動電力の電圧が所定電圧から変化したことに基づいて駆動電力の供給源の切り替えを判定する処理である。本実施形態の場合、電源切替判定処理は、電圧検出部32の検出結果に基づいて駆動電力の供給源の切り替えを判定する処理である。
【0032】
すなわち、車両の運行が終了して車両のアクセサリ電源がOFFになると、切替部25及びコンパレータ26の機能により、車両運行記録装置30に供給される駆動電力の電力源が、主電源装置10から補助電源装置20に切り替わる。すると、車両運行記録装置30に供給される駆動電力の電圧は、主電源装置10の5Vから補助電源装置20の4.5Vに低下する。制御部33は、電源切替判定処理の実行により、電圧検出部32で検出している駆動電力に所定の電圧変化が生じたこと、この場合、5Vから4.5Vに低下したことを検出すると、駆動電力の電力源が主電源装置10から補助電源装置20に切り替わったと判定する。
【0033】
また、制御部33は、CPU331において記憶領域332に記憶している制御プログラムを実行することで、運行終了処理を実行可能である。本実施形態の場合、制御部33は、電圧検出部32で検出している駆動電力に所定の電圧変化が生じたこと、この場合、5Vから4.5Vに低下したこと検出すると、運行終了処理を実行する。すなわち、本実施形態の場合、制御部33は、電源切替判定処理の実行によって駆動電力の電力源が主電源装置10から補助電源装置20に切り替わったと判定した場合に、車両の運行が終了したと判断して、運行終了処理を実行する。また、この場合、制御部33は、駆動電力の電力源が主電源装置10から補助電源装置20に切り替わった時点の時刻を、運行終了時刻として取得する。
【0034】
運行終了処理は、車両運行記録装置30に供給される駆動電力の電圧が所定電圧から変化した場合に各機能部31のうち必要とされる機能部31を制御して運行情報の記録を安全に終了させるための処理である。例えば機能部31によって内部の記憶領域332や外部の記憶媒体90に運行情報等のデータを書き込んでいる際中に主電源装置10から補助電源装置20に切り替わった場合、運行終了処理は、現在書き込んでいるデータを全て記憶領域332や記憶媒体90に書き込んでその書き込みを破損等させることなく安全に終了させる処理を含む。
【0035】
また、例えば機能部31によって外部機器へ運行情報等のデータを送信している際中に主電源装置10から補助電源装置20に切り替わった場合、運行終了処理は、例えば現在送信中のデータを全て外部機器へ送信してその送信を最後まで終了させる処理を含む。この場合、制御部33は、記憶領域332や記憶媒体90に書き込まれるデータや、外部の装置に送信されるデータに、運行終了時刻を含めることができる。
【0036】
次に、図2も参照して、制御部33によって実行される制御フローの一例について説明する。なお、ステップS12は、電源切替判定処理の一例である。この場合、制御部33は、主電源装置10から供給される駆動電力の電圧を5Vと記憶し、補助電源装置20から供給される駆動電力の電圧を4.5Vと記憶している。
【0037】
制御部33は、車両運行記録装置30に駆動電力が投入されると(スタート)、ステップS11において、電圧検出部32の機能により車両運行記録装置30に供給されている駆動電力の電圧を検出する。次に、制御部33は、ステップS12において、ステップS11で検出した駆動電力の電圧を判断する。そして、ステップS11で検出した駆動電力の電圧が5Vであれば、制御部33は、現在、主電源装置10から駆動電力の供給を受けていると判定する、つまり主電源装置10から補助電源装置20への切り替えは行われていないと判定する。そして、制御部33は、ステップS11へ処理を戻し、ステップS11、S12を繰り返す。
【0038】
一方、ステップS11で検出した駆動電力の電圧が4.5Vであれば、制御部33は、現在、補助電源装置20から駆動電力の供給を受けていると判定する、つまり主電源装置10から補助電源装置20への切り替えが行われたと判定する。そして、制御部33は、ステップS13へ処理を移行させ、運行終了処理を実行し、一連の処理を終了する(エンド)。
【0039】
以上説明した実施形態によれば、車両運行記録システム1は、主電源装置10と、補助電源装置20と、車両運行記録装置30と、を備える。主電源装置10は、車両運行記録装置30に接続され、車両に設けられたアクセサリ電源から電力の供給を受けて所定電圧この場合5Vの駆動電力を車両運行記録装置30に供給する機能を有している。補助電源装置20は、車両運行記録装置30の外部でかつ車両運行記録装置30と主電源装置10との間に設けられており、蓄電池22を有している。補助電源装置20は、蓄電池22からの電力の供給を受けて主電源装置10とは異なる電圧の駆動電力、この場合、4.5Vの駆動電力を車両運行記録装置30に供給する機能を有している。また、車両運行記録装置30は、主電源装置10又は補助電源装置20から駆動電力の供給を受けて動作するものであり、車両の運行情報を記録可能な機能部31と、機能部31の動作を制御する制御部33と、を有している。
【0040】
また、補助電源装置20は、切替部25を有している。切替部25は、主電源装置10から車両運行記録装置30に対する駆動電力の供給が停止した場合に、駆動電力の供給源を主電源装置10から補助電源装置20に切り替える機能を有する。そして、車両運行記録装置30に搭載された制御部33は、電源切替判定処理を実行可能である。電源切替判定処理は、車両運行記録装置30に供給される駆動電力の電圧が所定電圧から変化したこと基づいて駆動電力の供給源の切り替えを判定する処理である。本実施形態の場合、制御部33は、車両運行記録装置30に供給される駆動電力が主電源装置10の5Vから補助電源装置20の4.5Vに変化したことに基づいて、駆動電力の供給源が主電源装置10から補助電源装置20に切り替わったと判定する。
【0041】
これによれば、車両運行記録システム1は、主電源装置10に加えて、補助電源装置20を備えている。このため、車両のアクセサリ電源が切られて主電源装置10からの電力供給が断たれた後も、車両運行記録装置30は、補助電源装置20からの駆動電力の供給を受けてある程度の期間動作を継続することができる。更に、本実施形態によれば、補助電源装置20は、車両運行記録装置30の外部に設けられている。このため、補助電源装置20を、車両運行記録装置30とは異なる位置、例えば車内で高温になり難い箇所に設置することができる。これにより、補助電源装置20に内蔵された蓄電池22に対する周囲温度の影響を極力低減することができ、蓄電池22の劣化を極力抑制することができる。
【0042】
更に、本実施形態によれば、車両運行記録装置30は、駆動電力の電圧の変化に基づいて主電源装置10から蓄電池22を有する補助電源装置20への切り替えを検出することができる。この場合、一般に運転手は、車両の運行終了とほぼ同時に車両の電源を落とすため、車両のアクセサリ電源が落とされた時刻を、車両の運行終了時刻とみなすことができる。そのため、本実施形態によれば、車両運行記録装置30は、駆動電力の電圧の変化に基づいて主電源装置10から補助電源装置20への切り替えを検出することで、車両の運行終了時刻を比較的正確に検知することができる。
【0043】
制御部33は、運行終了処理を更に実行可能である。運行終了処理は、電源切替判定処理によって車両運行記録装置30に供給される駆動電力の電力源が主電源装置10から補助電源装置20に切り替わったと判定した場合に、機能部31を制御して運行情報の記録を安全に終了させる処理である。これによれば、例えば機能部31が内蔵の記憶領域332や外部の記憶媒体90に書き込みを行っている際中や外部と通信している際中に車両のアクセサリ電源が落とされて主電源装置10からの駆動電力の供給が停止しても、データの書き込みや通信を最後まで行うことができ、その結果、これらのデータの破損を抑制することができる。
【0044】
車両運行記録装置30は、駆動電力の電圧を検出する例えばA/Dコンバータ等の電圧検出部32を内蔵している。そして、制御部33は、電圧検出部32の検出結果に基づいて電源切替判定処理を実行する。A/Dコンバータ等による電圧検出機能は、この種の車両運行記録装置が一般的に備えている構成である。そのため、電圧検出部32を車両運行記録装置30に内蔵されたA/Dコンバータ等で構成することにより、車両運行記録装置30は、駆動電力の電圧変化を検出するための新たな構成を追加することなく、駆動電力の電圧変化を検出することができる。
【0045】
そして、これによれば、車両運行記録装置30は、従来から備える電源線2を介して供給された駆動電力の電圧に基づいて電源の切り替えを判定するため、補助電源装置20と車両運行記録装置30との間で通信は不要である。したがって、電力源の切替を検出するために、補助電源装置20と車両運行記録装置30との間に信号線等の配線を新たに追加する必要がない。その結果、車両運行記録装置30の外部に補助電源装置20を設けた構成であっても、電気配線の増加を抑えて配線周りをすっきりとしたものにすることができる。
【0046】
また、蓄電池22は、リチウムイオンキャパシタで構成されている。これによれば、高温環境下でも容量を維持でき、かつ内部抵抗の増加が小さく、更には放充電サイクルの繰り返しによる劣化が少ない、というリチウムイオンキャパシタの特性により、高温になり易い車内で使用され、かつ、繰り返して放充電される使用態様となる補助電源装置20において優れた性能を発揮することができる。
【0047】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について図3及び図4を参照して説明する。
本実施形態において、補助電源装置20は、切替部25によって駆動電力の動力源が主電源装置10から補助電源装置20に切り替えられた場合に、駆動電力の供給源が切り替えたことを示す切替信号を出力する機能を有する。そして、制御部33は、切替信号の受信に基づいて電源切替判定処理を実行する。この場合、車両運行記録装置30は、電圧検出部32を有していなくても良い。すなわち、本実施形態を実現する場合に限っては、電圧検出部32は不要である。
【0048】
具体的には、本実施形態において、車両運行記録装置30は、信号線34及びコネクタ35を更に備えている。信号線34は、通信規格等で規定された伝送路を構成する物理的な電気配線であり、外部機器と少なくともデータ通信可能に接続することができる。コネクタ35は、信号線34に対応したものであり、外部機器のコネクタと着脱可能に接続される。信号線34及びコネクタ35の規格としては、例えばUSB, HDMI(登録商標), PoE(Power over Ethernet) Thunderbolt(登録商標), SDI等がある。すなわち、信号線34はUSB等の入出力バスとしても使用される配線である。
【0049】
また、補助電源装置20は、信号線27及びコネクタ28を更に有している。信号線27は、コンパレータ26の出力側とコネクタ28とを接続している。信号線27及びコネクタ28は、信号線34及びコネクタ35の規格に対応したもので構成されている。補助電源装置20側のコネクタ28と車両運行記録装置30側のコネクタ35とは、相互に着脱可能に構成されている。そして、コネクタ28、35が接続されると、信号線27と信号線34も接続されて、コンパレータ26の出力側と制御部33とが接続される。これにより、コンパレータ26から切替部25側へ出力されるHigh又はLow信号が、切替信号として制御部33にも送信される。そして、制御部33は、コンパレータ26から送信されるHigh又はLow信号つまり切替信号に基づいて、電源切替判定処理を実行する。
【0050】
具体的には、制御部33は、図4に示すように、制御部33は、車両運行記録装置30に駆動電力が投入されると(スタート)、ステップS14において、補助電源装置20から受信した切替信号を判断する。切替信号がHighである場合、制御部33は、主電源装置10からの駆動電力の供給を受けていると判定して、ステップS14を繰り返す。
【0051】
一方、切替信号がLow又は切替信号の受信が無い場合、制御部33は、補助電源装置20からの駆動電力の供給を受けている、つまり駆動電力の電力源が主電源装置10から補助電源装置20に切り替わったと判定し、ステップS13へ処理を移行させる。以降は、上記第1実施形態と同様に、制御部33は、ステップS13において運行終了処理を実行し、その後、一連の処理を終了する。
【0052】
以上の本実施形態によれば、補助電源装置20は、切替部25によって駆動電力の動力源が主電源装置10から補助電源装置20に切り替えられた場合に、駆動電力の供給源が切り替えたことを示す切替信号を出力する機能を有する。そして、制御部33は、切替信号の受信に基づいて電源切替判定処理を実行する。
【0053】
これによれば、上記第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
また、車両運行記録装置30の仕様によっては、A/Dコンバータ等の電圧検出部を有していないことも考えられる。本実施形態によれば、車両運行記録装置30がA/Dコンバータ等の電圧検出部を内蔵していない場合であっても、車両運行記録装置30のハードウェアを変更することなく、上記第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0054】
また、車両運行記録装置30は、外部機器を接続可能な信号線34を更に有している。そして、補助電源装置20は、信号線34に着脱可能に接続されて信号線34を用いて制御部33に前記切替信号を送信することができる。信号線34及びコネクタ35の規格としては、例えばUSB, HDMI(登録商標), PoE(Power over Ethernet), Thunderbolt(登録商標), SDI等がある。
【0055】
ここで、この種の車両運行記録装置30においては、車両運行記録装置30に蓄積されているデータ等を外部機器に転送するため、上記のうち少なくともいずれか1つの規格の信号線34及びコネクタ35を有していることが多い。一方で、車両が運行されて車両運行記録装置30が動作している際中は、通常は車両運行記録装置30を外部機器に接続しないため、信号線34及びコネクタ35は使用されていない。
【0056】
そこで、本実施形態によれば、車両運行記録装置30が本来的に有するとともに車両の運行時は使用されない可能性の高い信号線34及びコネクタ35を、補助電源装置20からの切替信号の送信に利用することで、切替信号の送信のための配線を新たに追加する必要なく、電力源の切り替えを正確に検出することができる。すなわち、車両運行記録装置30が本来的に有するとともに車両の運行時は使用されない可能性の高い信号線34及びコネクタ35を、切替信号の送信のための信号線及びコネクタとして共用することで、切替信号の送信のための配線及びコネクタを新たに追加する必要がなくなる。
【0057】
(その他の実施形態)
なお、本発明は上記し且つ図面に記載した各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で任意に変形、組み合わせ、あるいは拡張することができる。
上記各実施形態で示した数値などは例示であり、それに限定されるものではない。
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0058】
1…車両運行記録システム、10…主電源装置、20…補助電源装置、22…蓄電池、25…切替部、30…車両運行記録装置、31…機能部、32…電圧検出部、33…制御部、34…信号線
図1
図2
図3
図4