(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理方法
(51)【国際特許分類】
G06T 1/00 20060101AFI20240417BHJP
G01N 21/892 20060101ALI20240417BHJP
G06T 5/50 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
G06T1/00 310A
G01N21/892 A
G06T5/50
(21)【出願番号】P 2020030846
(22)【出願日】2020-02-26
【審査請求日】2023-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 耕生
【審査官】▲徳▼田 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-271331(JP,A)
【文献】特開2008-162109(JP,A)
【文献】特開2010-066516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/00
G01N 21/892
G06T 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷データに基づいて印刷された
、欠陥のない第1印刷物を読み取ることで得られる第1画像を取得する第1取得手段と、
前記印刷データに基づいて印刷された第2印刷物を読み取ることで得られる1以上の第2画像を取得する第2取得手段と、
前記第1画像と前記1以上の第2画像とを比較することで、前記1以上の第2画像を検査する第1検査手段と、
前記
第1検査手段が検査した1以上の第2画像のうち少なくとも1以上の第2画像と、前記第1画像と、
の合成画像を、前記印刷データに基づいて印刷される第3印刷物を読み取ることで得られる第3画像における欠陥の有無を検査するために該第3画像と比較されるリファレンス画像として生成する生成手段と
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記生成手段は、前記第2取得手段が取得した1以上の第2画像のうち前記第1画像との比較の結果に応じて選択された第2画像と、前記第1画像と、
の合成画像を生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記生成手段は、前記第2取得手段が取得した1以上の第2画像のうち前記第1画像との比較により欠陥が存在しないと判断された第2画像と、前記第1画像と、
の合成画像を生成する
ことを特徴とする請求項1
または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
更に、
前記第3画像を取得する第3取得手段と、
前記第3画像と前記リファレンス画像とを比較することで該第3画像における欠陥の有無を検査する
第2検査手段と、
前記
第2検査手段による検査の結果を出力する出力手段と
を備えることを特徴とする請求項1ないし
3の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記第2印刷物は、複数の印刷物であることを特徴とする請求項1ないし
4の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
画像処理装置が行う画像処理方法であって、
前記画像処理装置の第1取得手段が、印刷データに基づいて印刷された
、欠陥のない第1印刷物を読み取ることで得られる第1画像を取得する第1取得工程と、
前記画像処理装置の第2取得手段が、前記印刷データに基づいて印刷された第2印刷物を読み取ることで得られる1以上の第2画像を取得する第2取得工程と、
前記画像処理装置の第1検査手段が、前記第1画像と前記1以上の第2画像とを比較することで、前記1以上の第2画像を検査する第1検査工程と、
前記画像処理装置の生成手段が、前記
第1検査工程で検査した1以上の第2画像のうち少なくとも1以上の第2画像と、前記第1画像と、
の合成画像を、前記印刷データに基づいて印刷される第3印刷物を読み取ることで得られる第3画像における欠陥の有無を検査するために該第3画像と比較されるリファレンス画像として生成する生成工程と
を備えることを特徴とする画像処理方法。
【請求項7】
コンピュータを、請求項1ないし
5の何れか1項に記載の画像処理装置の各手段として機能させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷物における欠陥の有無を検査するための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
印刷装置によって出力される印刷物において、インクやトナー等の色材が、意図しない箇所に付着する汚れが発生する場合がある。あるいは、色材が付着し、画像を形成すべき箇所に、十分な色材が付着せず、本来よりも色が薄くなってしまう色抜けが発生する場合がある。こうした、汚れや色抜けといった、いわゆる、印刷欠陥は、印刷物の品質を低下させるものである。そこで、印刷物に欠陥がないかを検査し、印刷物の品質を保証する場合がある。欠陥の有無を検査員が目視にて検査する目視検査は、多くの時間とコストを必要とするため、近年、目視に頼らずに、自動で検査を行う検査システムが提案されている。
【0003】
印刷物における欠陥の有無を自動で検査する検査システムにおいて、欠陥の無い印刷物をスキャンした画像データをリファレンスとし、検査対象となる印刷物のスキャンデータとの差分値から欠陥の有無を算出する方法がある。ここで、検査精度を向上させるための方法として、特許文献1には、複数のリファレンス画像を用意する方法が開示されている。この方法は、検査対象画像と、複数のリファレンス画像それぞれの差異を算出し、差異が最も小さな組み合わせから、欠陥の有無を判断する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている技術においては、リファンレンス画像にノイズが多く含まれる場合、あるいは、リファレンス画像そのものに欠陥が含まれていた場合に、過検出または誤検出の原因となってしまう。本発明では、印刷物における欠陥の有無を検査する際の検査精度を向上させるための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一様態は、印刷データに基づいて印刷された、欠陥のない第1印刷物を読み取ることで得られる第1画像を取得する第1取得手段と、
前記印刷データに基づいて印刷された第2印刷物を読み取ることで得られる1以上の第2画像を取得する第2取得手段と、
前記第1画像と前記1以上の第2画像とを比較することで、前記1以上の第2画像を検査する第1検査手段と、
前記第1検査手段が検査した1以上の第2画像のうち少なくとも1以上の第2画像と、前記第1画像と、の合成画像を、前記印刷データに基づいて印刷される第3印刷物を読み取ることで得られる第3画像における欠陥の有無を検査するために該第3画像と比較されるリファレンス画像として生成する生成手段と
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の構成によれば、印刷物における欠陥の有無を検査する際の検査精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】画像処理装置100の機能構成例を示すブロック図。
【
図2】画像処理装置100が行う処理のフローチャート。
【
図3】選択画像に欠陥があるか否かを判断する判断処理の詳細を示す図。
【
図4】画像処理装置100の機能構成例を示すブロック図。
【
図5】画像処理装置100が行う処理のフローチャート。
【
図8】コンピュータ装置のハードウェア構成例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
[第1の実施形態]
まず、印刷物における欠陥の有無を検査する検査処理装置として動作する画像処理装置100の機能構成例について、
図1のブロック図を用いて説明する。ここで、「印刷物における欠陥」とは、上記の通り、印刷物における汚れや色抜けといった、いわゆる、印刷欠陥(印刷物の品質を劣化させるもの)のことを指すものとする。
【0011】
画像出力装置2は、電子写真プリンタ、インクジェットプリンタ等の印刷装置であり、画像処理装置100から供給される印刷データに基づいて紙などの印刷媒体に画像や文字を形成することで印刷物を生成する。画像入力装置3は、スキャナ等の画像読取装置であり、印刷物をスキャンすることで、該印刷物の読み取り画像を生成する。画像出力制御部4は、画像出力装置2の動作制御を行うものであり、画像出力装置2に印刷させる画像や文字の印刷データを生成し、該生成した印刷データを画像出力装置2に供給して、該印刷データに基づく印刷処理を行わせる。画像入力部5は、画像入力装置3が生成した印刷物の読み取り画像を取得し、該取得した読み取り画像を画像記憶部6に格納する。画像比較部7は、画像同士の比較を行って、一方の画像に欠陥が存在するか否かを判断する。画像合成部8は、画像合成により、欠陥の有無を検査する際の基準となるリファレンス画像を生成する。出力部9は、欠陥の有無を検査する対象となる印刷物の読み取り画像に対する検査結果を出力する。
【0012】
次に、印刷物における欠陥の有無を検査するために画像処理装置100が行う処理について、
図2のフローチャートに従って説明する。
図2のフローチャートに従った処理は、欠陥の有無を検査する際の基準となるリファレンス画像を生成するための処理と、該リファレンス画像を用いて印刷物における欠陥の有無を検査する処理と、を含む。
【0013】
画像入力装置3は、画像出力制御部4から供給された印刷データに基づいて画像出力装置2が生成した「欠陥のない印刷物(無欠陥印刷物)」を読み取って該無欠陥印刷物の読み取り画像を生成する。ステップS201では、画像入力部5は、該無欠陥印刷物の読み取り画像を該画像入力装置3から取得し、該取得した読み取り画像を基準画像として画像記憶部6に格納する。
【0014】
次に、無欠陥印刷物の生成後、画像出力制御部4は、該無欠陥印刷物の印刷データと同じ印刷データを画像出力装置2に供給して、1枚以上の印刷物を生成させるよう制御する。これにより画像出力装置2は、該印刷データに基づいて1枚以上の印刷物(サンプル印刷物)を生成する。サンプル印刷物はすべて「欠陥のない印刷物」である可能性もあるし、「欠陥のない印刷物」と「欠陥のある印刷物」とが混在している可能性もある。画像入力装置3は、このような1枚以上のサンプル印刷物を読み取って該サンプル印刷物の読み取り画像を生成する。ステップS202では、画像入力部5は、このような1枚以上のサンプル印刷物の読み取り画像を該画像入力装置3から取得し、該取得した読み取り画像を合成候補画像として画像記憶部6に格納する。
【0015】
ステップS203では、画像比較部7は、画像記憶部6に格納されている1以上の合成候補画像のうち未選択の合成候補画像を選択画像として選択する。そして画像比較部7は、該選択画像と、画像記憶部6に格納されている基準画像と、を比較する。
【0016】
そしてステップS204では、画像比較部7は、ステップS203における比較の結果、選択画像(サンプル印刷物)に欠陥があるか否かを判断する。ステップS203およびステップS204における処理の詳細については後述する。この判断の結果、選択画像に欠陥があると判断した場合には、処理はステップS206に進み、選択画像に欠陥がないと判断した場合には、処理はステップS205に進む。ステップS205では、画像合成部8は、選択画像を、基準画像と合成する対象となるリファレンス合成画像に設定する。
【0017】
ステップS206では、画像比較部7は、画像記憶部6に格納されている1以上の合成候補画像の全てを選択画像として選択したか否かを判断する。この判断の結果、画像記憶部6に格納されている1以上の合成候補画像の全てを選択画像として選択した場合には、処理はステップS207に進む。一方、画像記憶部6に格納されている1以上の合成候補画像のうち、未だ選択画像として選択していない合成候補画像が残っている場合には、処理はステップS203に進む。
【0018】
ステップS207では、画像合成部8は、基準画像と、全てのリファレンス合成画像と、を合成した合成画像を、リファレンス画像として生成する。ステップS207における処理の詳細については後述する。そしてステップS208では、画像合成部8は、ステップS207において生成したリファレンス画像を画像記憶部6に格納(登録)する。
【0019】
次に、画像出力制御部4は、無欠陥印刷物の印刷データと同じ印刷データを画像出力装置2に供給して、印刷物を生成させるよう制御する。これにより画像出力装置2は、該印刷データに基づいて印刷物を「欠陥の有無を検査する対象となる印刷物(検査対象印刷物)」として生成する。画像入力装置3は、検査対象印刷物を読み取って該検査対象印刷物の読み取り画像を生成する。ステップS209では、画像入力部5は、このような検査対象印刷物の読み取り画像を該画像入力装置3から検査対象画像として取得する。
【0020】
ステップS210では、画像比較部7は、ステップS208において画像記憶部6に格納したリファレンス画像と、ステップS209で取得した検査対象画像と、を比較して、該検査対象画像(検査対象印刷物)に欠陥があるか否かを判断する。ステップS210における処理は、上記のステップS203およびステップS204と同様にして行われる。そして出力部9は、画像比較部7による判断の結果を出力する。
【0021】
例えば出力部9は、検査対象画像(検査対象印刷物)に欠陥があった場合は、検査対象印刷物に欠陥があった旨を不図示の表示部に表示し、検査対象画像に欠陥がなかった場合は、検査対象印刷物には欠陥がなかった旨を表示部に表示するようにしてもよい。また、出力部9は、検査対象画像を表示して、該検査対象画像において欠陥のあった箇所に枠などの指標を重ねて表示して、該箇所を明示的にユーザに通知するようにしてもよい。なお、画像比較部7による判断の結果の出力先や出力形態は特定の出力先や特定の出力形態に限らない。
【0022】
次に、上記のステップS203における画像比較の結果に基づいて選択画像に欠陥があるか否かを判断する判断処理の詳細について、
図3を例にとり説明する。
図3(a)は、ステップS201で取得した基準画像の一例を示し、
図3(b)は、ステップS203で選択した選択画像の一例を示す。この場合、先ず画像比較部7は、
図3(a)の基準画像と
図3(b)の選択画像との差分画像を生成する。周知のごとく、2枚の画像の差分画像の画素位置Pにおける画素の画素値は、該2枚の画像において一方の画像の画素位置Pにおける画素の画素値と、該2枚の画像において他方の画像の画素位置Pにおける画素の画素値と、の差分値(絶対値)を示す。
図3(a)の基準画像と
図3(b)の選択画像との差分画像の一例を
図3(c)に示す。そして画像比較部7は、差分画像において画素値が閾値以上となる画素で構成されている画像領域があれば、選択画像において該画像領域に対応する画像領域を「選択画像における欠陥の箇所」として特定する。なお、差分画像において画素値が閾値以上となる画素で構成されている画像領域がなければ、選択画像には欠陥がないと判断する。ステップS210の場合は、選択画像の代わりに検査対象画像を用いて同様の処理を行うことで、該検査対象画像における欠陥の有無を検査することができる。
【0023】
次に、上記のステップS207における合成画像の生成処理について説明する。一般に、印刷物の読み取り画像には、印刷時に発生したノイズや読み取り時に発生したノイズが発生している。よって、本実施形態では、リファレンス合成画像と基準画像との平均画像を、上記の合成画像として生成する。周知のごとく、平均画像の画素位置Pにおける画素の画素値は、基準画像の画素位置Pにおける画素の画素値と、リファレンス合成画像の画素位置Pにおける画素の画素値と、の平均値を示す。このような平均画像では、ノイズ成分が低減し、S/N比の良好な画像となる。リファレンス画像に発生したノイズは、検出精度低下の原因となってしまうため、本実施形態では、このような平均画像をリファレンス画像として生成している。
【0024】
なお、画像合成では、合成対象となる画像の読み取り時における位置ずれを考慮し、一般的に用いられるような位置合わせ技術を用いて、リファレンス合成画像を基準画像に合わせるように位置合わせを行ってから画像合成を行ってもよい。
【0025】
また、画像合成では、元の画像の色空間(例えば、RGB)において平均画像を生成してもよいが、画像合成するそれぞれの画像の画素値を、別の色空間における画素値(例えば、sRGB値、もしくはAdobeRGB値のような標準化されたRGB値)に変換してから画像合成を行ってもよい。もしくは、画像合成するそれぞれの画像のRGB値を三刺激値XYZ値に変換してから画像合成し、合成画像の画素値を再度RGB値に逆変換するようにしても良い。すなわち、ユーザが所望する合成処理を行うことが可能な色空間であれば、その種類を限定するものではない。
【0026】
このように、本実施形態によれば、印刷物における欠陥の有無の検査において、欠陥の無い画像のみを合成した合成画像を使用することができるため、リファレンスとなる画像のノイズを低減させ、欠陥の有無の検査の精度を向上させることが可能となる。
【0027】
[第2の実施形態]
本実施形態を含む以下の各実施形態では、第1の実施形態との差分について説明し、以下で特に触れない限りは、第1の実施形態と同様であるものとする。第1の実施形態では、欠陥が無いと判断された選択画像のみをリファレンス合成画像とし、該リファレンス合成画像を基準画像と合成するケースについて説明した。これに対し、本実施形態では、全ての合成候補画像をリファレンス合成画像とし、それぞれのリファレンス合成画像を、該リファレンス合成画像内の欠陥の箇所のサイズに応じた重みづけを行ってから基準画像と合成するケースについて説明する。
【0028】
まず、本実施形態に係る画像処理装置100の機能構成例について、
図4のブロック図を用いて説明する。
図4に示した構成は、
図1に示した構成に算出部401を加えた構成となる。算出部401は、選択画像中における欠陥の箇所のサイズに応じた重み係数を算出する。画像合成部8は、全ての選択画像をリファレンス合成画像とし、基準画像と、重み係数で重みづけされたリファレンス合成画像(選択画像)と、を合成した合成画像を、リファレンス画像として生成する。
【0029】
次に、印刷物における欠陥の有無を検査するために画像処理装置100が行う処理について、
図5のフローチャートに従って説明する。
図5において
図2に示した処理ステップと同じ処理ステップには同じステップ番号を付しており、該処理ステップに係る説明は省略する。
【0030】
ステップS504では、算出部401は、選択画像中における欠陥の箇所のサイズに応じた重み係数を算出する。欠陥の箇所のサイズは、欠陥の箇所を構成する画素の数であっても良いし、欠陥の箇所を包含する矩形領域の画素数であっても良く、その定義は特定の定義に限らない。欠陥の箇所のサイズに応じた重み係数の算出方法の詳細については後述する。
【0031】
ステップS505では、画像合成部8は、選択画像をリファレンス合成画像に設定する。ステップS506では、画像比較部7は、画像記憶部6に格納されている1以上の合成候補画像の全てを選択画像として選択したか否かを判断する。この判断の結果、画像記憶部6に格納されている1以上の合成候補画像の全てを選択画像として選択した場合には、処理はステップS507に進む。一方、画像記憶部6に格納されている1以上の合成候補画像のうち、未だ選択画像として選択していない合成候補画像が残っている場合には、処理はステップS203に進む。
【0032】
ステップS507では、画像合成部8は、それぞれのリファレンス合成画像を、該リファレンス合成画像に対してステップS504において求めた重み係数で重みづけする。そして画像合成部8は、全ての重みづけしたリファレンス合成画像と、基準画像と、を合成した合成画像を、リファレンス画像として生成する。ステップS507における処理の詳細については後述する。
【0033】
次に、上記のステップS504における「欠陥の箇所のサイズに応じた重み係数の算出」について説明する。本実施形態では、選択画像における欠陥の有無を判別する際に、基準画像と選択画像とで対応する画素位置における画素の画素値の差分値を用いる。そこで、基準画像と、i(1≦i≦N:Nは合成候補画像の総数)番目の選択画素と、で対応する画素位置における画素の画素値の差分値の総和をEとする。この時、i番目の選択画像に対する重み係数wは、
図6(a)~(c)のいずれかに示すような、単調減少関数を用いて算出する。
【0034】
図6(a)~(c)において横軸は総和E、縦軸は重み係数wを示しており、
図6(a)~(c)に示すいずれの単調減少関数も、総和Eが増加するに従って重み係数wが減少するような関数である。
【0035】
よって、ステップS504では、
図6(a)~(c)に示すような単調減少関数において、総和Eに対応する重み係数wを特定し、該特定した重み係数wを、選択画像に対する重み係数として特定する。なお、欠陥が存在しない選択画像に対する重み係数は「1」とすればよい(総和E=0に対応する重み係数を1とすればよい)。
【0036】
なお、選択画像の重み係数を決定する方法は上記の方法に限らず、基準画像と選択画像との差異が大きくなるほど、該選択画像の重み係数が小さくなるような決定方法であれば、その方法は特定の方法に限らない。次に、上記のステップS507における画像合成について説明する。リファレンス画像内の着目画素位置における画素の画素値Rは、以下の式に従って求める。
【0037】
【0038】
この式においてRsは、基準画像内の着目画素位置における画素の画素値、wiは、i番目の選択画像に対して求めた重み係数、Rc_iは、i番目の選択画像内の着目画素位置における画素の画素値、である。
【0039】
このように、本実施形態によれば、印刷物における欠陥の有無の検査処理において、選択画像に欠陥があった場合でも、重み係数を掛けて合成することにより、リファレンス画像のノイズを低減させ、検査処理の精度を向上させることが可能となる。
【0040】
[第3の実施形態]
本実施形態では、外部の印刷装置から供給された印刷物における欠陥の有無を検査する画像処理装置100を含む印刷システムについて説明する。まず、本実施形態に係る印刷システムの構成例について、
図7を用いて説明する。印刷システムは、印刷ジョブを供給する印刷用サーバ180、該印刷ジョブに基づいて紙などの印刷媒体に印刷を行うことで印刷物を生成する印刷装置190、該印刷物における欠陥の有無を検査する検査処理装置としての画像処理装置100、を有する。
【0041】
まず、印刷用サーバ180について説明する。印刷用サーバ180は、印刷するページの印刷ジョブを印刷装置190に供給する。印刷ジョブは印刷用サーバ180が生成して印刷装置190に供給してもよいし、印刷用サーバ180と通信可能な端末装置が生成したものを印刷用サーバ180が該端末装置から受信して印刷装置190に供給してもよい。
【0042】
次に、印刷装置190について説明する。給紙部191には、印刷媒体の一例である紙(印刷用紙)の束が積載されている。印刷装置190は、印刷用サーバ180から供給された印刷ジョブを受けると、給紙部191に積載されている紙を搬送路192に搬送し、該搬送された紙の両面若しくは片面に該印刷ジョブに基づく印刷を行う。そして印刷装置190は、印刷済みの紙を、搬送路192とつながっている画像処理装置100の搬送路110に搬送する。
【0043】
次に、画像処理装置100について説明する。画像処理装置100は、印刷装置190から搬送された印刷物を搬送路110に搬送し、該搬送している印刷物を読み取って該印刷物の読み取り画像を生成し、該読み取り画像から、該印刷物における欠陥の有無を検査する。そして画像処理装置100は、該印刷物に欠陥があれば(検査不合格)、該印刷物をトレイ112に排紙し、該印刷物に欠陥がなければ(検査合格)、該印刷物をトレイ111に排紙する。
【0044】
CPU101は、RAM102やROM103に格納されているコンピュータプログラムやデータを用いて各種の処理を実行する。これによりCPU101は、画像処理装置100全体の動作制御を行うとともに、画像処理装置100が行うものとして説明した各処理を実行もしくは制御する。
【0045】
RAM102は、ROM103や主記憶装置104からロードされたコンピュータプログラムやデータを格納するためのエリア、画像読取装置105が印刷物を読み取ったことで生成された読み取り画像を格納するためのエリア、を有する。さらにRAM102は、CPU101が各種の処理を実行する際に用いるワークエリアを有する。このようにRAM102は、各種のエリアを適宜提供することができる。
【0046】
ROM103には、画像処理装置100全体の動作制御をCPU101に実行させるためのコンピュータプログラムやデータが格納されている。また、ROM103には、画像処理装置100が行うものとして説明した各処理をCPU101に実行もしくは制御させるためのコンピュータプログラムやデータが格納されている。
【0047】
主記憶装置104には、各種のアプリケーションプログラムや、各種の画像処理に用いられるパラメータが保存されている。なお、RAM102やROM103に格納されているものとして説明したコンピュータプログラムやデータの一部を主記憶装置104に保存させてもよい。
【0048】
画像読取装置105は、搬送路110に搬送される印刷物の両面若しくは片面を読み取って該印刷物の読み取り画像を生成し、該読み取り画像をRAM102や主記憶装置104に格納する。
【0049】
I/F(インターフェース)106は、印刷装置190との間のデータ通信を行うためのインターフェースとして機能するものである。画像処理装置100はI/F106を介して、印刷装置190と印刷物の処理タイミングの同期を取ったり、互いの稼働状況を連絡し合ったりする。
【0050】
I/F107は、USBやIEEE1394等のシリアルバスインターフェースであり、画像処理装置100に対するデータの読み書きを行うための各種装置(メモリ装置など)を接続するためのインターフェースとして機能する。
【0051】
UI(ユーザインターフェース)パネル108は、液晶画面及びタッチパネル画面を有している。UIパネル108は、印刷、スキャン、データ送信などの各種の操作を行うためのユーザインターフェースなど、CPU101による各種の処理結果を表示する表示機能や、ユーザからの操作入力を受け付ける受付機能を有する。なお、画像処理装置100はUIパネル108に加えて、各種の指示入力が可能なボタン群を備えてもよい。
【0052】
CPU101、RAM102、ROM103、主記憶装置104、画像読取装置105、I/F106、I/F107、UIパネル108、は何れも、メインバス109に接続されている。
【0053】
なお、
図7では図示を省略しているが、画像処理装置100は、搬送路110に搬送されている印刷物の排紙先を、CPU101による制御に従ってトレイ111およびトレイ112の何れかに切り替えて排紙するための機構も有する。
【0054】
このような印刷システムにおいては、画像処理装置100は、印刷装置190から供給された印刷物を画像読取装置105で読み取ることで基準画像や合成候補画像を取得することができる。然るに、本実施形態に係る画像処理装置100は、このようにして取得した基準画像や合成候補画像を用いて第1の実施形態や第2の実施形態で説明した処理を行うことでリファレンス画像を生成することができる。また、このような印刷システムにおいては、画像処理装置100は、印刷装置190から供給された印刷物を画像読取装置105で読み取ることで検査対象画像を取得することができる。然るに、本実施形態に係る画像処理装置100は、このようにして取得した検査対象画像を用いて第1の実施形態や第2の実施形態で説明した処理を行うことで、検査対象印刷物における欠陥の有無を検査することができる。
【0055】
[第4の実施形態]
図1,4に示した画像処理装置100の各機能部はハードウェアで実装してもよいが、一部をソフトウェア(コンピュータプログラム)で実装してもよい。後者の場合、画像記憶部6を除く各機能部に対応するコンピュータプログラムを実行可能なコンピュータ装置は画像処理装置100に適用することができる。
【0056】
第1の実施形態に係る画像処理装置100や第2の実施形態に係る画像処理装置100に適用可能なコンピュータ装置のハードウェア構成例について、
図8のブロック図を用いて説明する。
【0057】
CPU801は、RAM802やROM803に格納されているコンピュータプログラムやデータを用いて各種の処理を実行する。これによりCPU801は、コンピュータ装置全体の動作制御を行うとともに、コンピュータ装置を適用した画像処理装置100が行うものとして上述した各処理を実行もしくは制御する。
【0058】
RAM802は、ROM803や外部記憶装置806からロードされたコンピュータプログラムやデータを格納するためのエリアを有する。さらにRAM802は、I/F807を介して外部から受信したデータ(例えば、画像入力装置3から入力された読み取り画像)を格納するためのエリアを有する。またRAM802は、CPU801が各種の処理を実行する際に用いるワークエリアを有する。このようにRAM802は、各種のエリアを適宜提供することができる。ROM803には、コンピュータ装置の設定データや起動プログラムなどが格納されている。
【0059】
操作部804は、キーボード、マウス、タッチパネル画面などのユーザインターフェースであり、ユーザが操作することで各種の指示をCPU801に対して入力することができる。
【0060】
表示部805は、液晶画面やタッチパネル画面などの表示画面を有し、CPU801による処理結果を画像や文字などでもって表示することができる。例えば、出力部9による出力結果を表示部805に表示させることができる。
【0061】
外部記憶装置806は、ハードディスクドライブ装置などの大容量情報記憶装置である。外部記憶装置806には、OS(オペレーティングシステム)、画像処理装置100が行うものとして上述した各処理をCPU801に実行もしくは制御させるためのコンピュータプログラムやデータが保存されている。外部記憶装置806に保存されているコンピュータプログラムには、
図1,4に示した画像処理装置100が有する機能部のうち画像記憶部6を除く各機能部に対応するコンピュータプログラムが含まれている。また、外部記憶装置806に保存されているデータには、上記の説明において既知の情報として取り扱った情報が含まれている。
【0062】
外部記憶装置806に保存されているコンピュータプログラムやデータは、CPU801による制御に従って適宜RAM802にロードされ、CPU801による処理対象となる。なお、上記の画像記憶部6は、RAM802や外部記憶装置806で実装することができる。
【0063】
I/F807は、コンピュータ装置が外部装置との間のデータ通信を行うための通信インターフェースとして機能するものである。例えば、コンピュータ装置は、印刷データをI/F807を介して画像出力装置2に出力し、画像入力装置3による読み取り画像を該画像入力装置3からI/F807を介して取得する。
【0064】
CPU801、RAM802、ROM803、操作部804、表示部805、外部記憶装置806、I/F807、は何れもバス808に接続されている。なお、
図8に示した構成は、画像処理装置100に適用可能なコンピュータ装置のハードウェア構成の一例にすぎず、適宜変更/変形が可能である。
【0065】
なお、上記の説明において使用した数値、処理タイミング、処理順などは、具体的な説明を行うために一例として挙げたものであり、これらの数値、処理タイミング、処理順などに限定することを意図したものではない。
【0066】
また、以上説明した各実施形態の一部若しくは全部を適宜組み合わせて使用しても構わない。また、以上説明した各実施形態の一部若しくは全部を選択的に使用しても構わない。
【0067】
(その他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0068】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0069】
100:画像処理装置 2:画像出力装置 3:画像入力装置 4:画像出力制御部 5:画像入力部 6:画像記憶部 7:画像比較部 8:画像合成部 9:出力部